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発明の名称 マスク及びそのマスクの製造方法並びに液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出装置の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−83464(P2007−83464A)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
出願番号 特願2005−273082(P2005−273082)
出願日 平成17年9月21日(2005.9.21)
代理人 【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
発明者 八木 浩 / 小松 洋 / 山崎 成二
要約 課題
マスクとの接触によるダメージを低減するとともに、目的部分に的確に薄膜を形成し、加工形状歩留まりに優れたマスク及びそのマスクの製造方法並びに液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出装置の製造方法を提供する。

解決手段
液滴吐出用の吐出室13となる流路が形成されたキャビティ基板2に薄膜を形成するために使用される単結晶シリコン50aからなるマスク50であって、キャビティ基板2の薄膜形成部分(共通電極部30)に対応した形状に形成された開口部51を備え、少なくとも吐出室13となる流路範囲に対向する領域を開口部51から隔離されたザグリ52(凹部)として形成したことを特徴とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
被成膜材に薄膜を形成するために使用される単結晶シリコンからなるマスクであって、
前記被成膜材の薄膜形成部分に対応した形状に形成された開口部を備え、
前記被成膜材の前記薄膜形成部分を除いた所定の有効パターン領域に対向する範囲を前記開口部から隔離された凹部として形成した
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
被成膜材に薄膜を形成するために使用される単結晶シリコンからなるマスクの製造方法であって、
前記被成膜材の薄膜形成部分に対応した形状の開口部を形成する工程と、
前記薄膜形成部分を除いた所定の有効パターン領域に対向する範囲を前記開口部から隔離された凹部として形成する工程とを有する
ことを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項3】
前記開口部及び前記凹部が結晶方位依存性を利用した異方性ウエットエッチングによって形成される
ことを特徴とする請求項2に記載のマスクの製造方法。
【請求項4】
前記単結晶シリコンが(100)面方位を有するものである
ことを特徴とする請求項2に記載のマスクの製造方法。
【請求項5】
液滴吐出用の吐出室となる流路が形成されたキャビティ基板に薄膜を形成する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
単結晶シリコンからなり、前記キャビティ基板の薄膜形成部分に対応した形状の開口部を有し、少なくとも前記吐出室となる流路範囲に対向する領域を前記開口部から隔離された凹部として形成したマスクを前記キャビティ基板にセットする工程と、
前記マスクがセットされた後に、前記キャビティ基板の薄膜形成部分に薄膜を形成する工程とを有する
ことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記キャビティ基板の薄膜形成部分に薄膜を形成する工程において、
スパッタまたは真空蒸着、イオンプレーティングのいずれかによって該キャビティ基板に薄膜を形成する
ことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記請求項5または6に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を含む
ことを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク及びそのマスクの製造方法並びに液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出装置の製造方法に関し、特にマスクとの接触によるダメージを低減するとともに、目的部分に的確に薄膜を形成し、加工形状歩留まりに優れたマスク及びそのマスクの製造方法並びに液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メタルマスクを用いて薄膜を成膜することが行われている。このようなメタルマスクは、一般的に、ステンレススチール等の金属で作製されており、キャビティ基板等の被成膜材に成膜しようとする部分に対応させた開口部を設けてその被成膜材に薄膜パターンを直接形成するようになっていた。すなわち、被成膜材の全面に薄膜を形成した後にフォトリソグラフィー及びエッチングを施してパターニングするという方法ではなく、メタルマスクを用いて初めから薄膜パターンを形成し、被成膜材に直接薄膜を成膜するという方法であった。
【0003】
このメタルマスクを用いて薄膜を成膜する方法には、微細な薄膜パターンに対応させた開口部を形成するために板厚を薄くしたり、開口部同士の間隔を狭くしたりすると、取り扱い時にマスクが撓んだり変形し易くなるといった問題があった。そして、マスクが撓むことを防止しようとすると、成膜時にマスクに張力をかける必要があり、その際に開口部に変形が生じ易いといった問題もあった。その結果、メタルマスクを正しい位置に配置しても、メタルマスクの開口部が被成膜材の薄膜パターンに対応した位置からずれてしまうという恐れがあった。また、メタルマスクの開口部の加工精度は、高くても±3μm程度であった。
【0004】
このような問題を解決するために、「被成膜面にフォトリソグラフィ工程を行わずに直接薄膜パターンを形成する(すなわち、被成膜面に薄膜を所定パターンで形成する)ために使用されるマスクにおいて、板厚が薄く開口部同士の間隔が狭い場合でも取り扱い時に撓みや変形が生じ難く、成膜時に張力をかけなくても撓むことがなく、開口部の加工精度が高精細画素に対応できる程度に高い(例えば±1μm程度である)マスク」が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。このマスクは、シリコン単結晶基板で形成されており、上記の問題を解決していた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−305079
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のマスクには、このマスクと薄膜を成膜しようとする被成膜面とが直接接触しないように、凹部が設けてある。したがって、マスクとの接触によって被成膜面に生じる接触ダメージを回避し、欠陥品の生成を低減している。しかしながら、そのマスクは、開口部が凹部の上に作製されている。すなわち、開口部と凹部とが連通するようになっている。そのために、薄膜の成膜を真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング等の成膜方法で行うと、薄膜が成膜される前の薄膜の構成材料が凹部内に拡散してしまうことになる。すなわち、薄膜を形成したい目的の場所以外の場所にも薄膜が成膜されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、マスクとの接触によるダメージを低減するとともに、目的部分に的確に薄膜を形成し、加工形状歩留まりに優れたマスク及びそのマスクの製造方法並びに液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るマスクは、被成膜材に薄膜を形成するために使用される単結晶シリコンからなるマスクであって、被成膜材の薄膜形成部分に対応した形状に形成された開口部を備え、被成膜材の薄膜形成部分を除いた所定の有効パターン領域に対向する範囲を開口部から隔離された凹部として形成したことを特徴とする。したがって、開口部の加工精度が高くなるとももに、凹部(ザグリ)を形成することで被成膜材とマスクとの接触による有効パターンの接触ダメージを回避することが可能となる。
【0009】
本発明に係るマスクの製造方法は、被成膜材に薄膜を形成するために使用される単結晶シリコンからなるマスクの製造方法であって、被成膜材の薄膜形成部分に対応した形状の開口部を形成する工程と、薄膜形成部分を除いた所定の有効パターン領域に対向する範囲を開口部から隔離された凹部として形成する工程とを有することを特徴とする。したがって、開口部の加工精度が高くなるとももに、凹部を形成することで被成膜材とマスクとの接触による有効パターンの接触ダメージを回避することが可能となる。
【0010】
本発明に係るマスクの製造方法は、開口部及び凹部が結晶方位依存性を利用した異方性ウエットエッチングによって形成されることを特徴とする。したがって、異方性ウエットエッチングで開口部及び凹部を形成するので、単純なプロセスでマスクを形成することが可能となる。また、異方性ウエットエッチングで開口部及び凹部を形成するので、複雑な操作や作業を要することなく取り扱いが容易となる。
【0011】
本発明に係るマスクの製造方法は、単結晶シリコンが(100)面方位を有するものであることを特徴とする。したがって、(100)面方位の単結晶シリコン基板でマスクを構成するので、開口部及び凹部の加工精度を高くするとともに、異方性ウエットエッチングにより形成される開口部及び凹部は上面から下面に向かって小さくなるように(テーパ状に)形成される。
【0012】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴吐出用の吐出室となる流路が形成されたキャビティ基板に薄膜を形成する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、単結晶シリコンからなり、キャビティ基板の薄膜形成部分に対応した形状の開口部を有し、少なくとも吐出室となる流路範囲に対向する領域を開口部から隔離された凹部として形成したマスクをキャビティ基板にセットする工程と、マスクがセットされた後に、キャビティ基板の薄膜形成部分に薄膜を形成する工程とを有することを特徴とする。したがって、開口部の加工精度が高くなるとももに、凹部を形成することでキャビティ基板とマスクとの接触による有効パターンの接触ダメージを回避することが可能となる。
【0013】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、キャビティ基板の薄膜形成部分に薄膜を形成する工程において、スパッタあるいは真空蒸着、イオンプレーティングのいずれかによって該キャビティ基板に薄膜を形成することを特徴とする。したがって、キャビティ基板の薄膜を形成したい目的の部分に的確に薄膜を成膜することが可能となる。すなわち、キャビティ基板の有効パターンを接触ダメージから保護しつつ、目的部分に的確に薄膜を形成することができるのである。
【0014】
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、請求項5または6に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を含むことを特徴とする。したがって、上記のいずれかの液滴吐出ヘッドの製造方法で製造方法された液滴吐出ヘッドが搭載されているため、上記のような効果を得ることが可能となる。さらに、加工形状歩留まりに優れた液滴吐出装置の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッド100の分解斜視図であり、図2は、液滴吐出ヘッド100の要部の断面を示す縦断面図である。なお、この液滴吐出ヘッド100は、静電気力により駆動される静電駆動方式の静電アクチュエータの代表として、ノズル基板の表面側に設けられたノズル孔から液滴を吐出するフェイスイジェクトタイプの液滴吐出ヘッドを表している。
【0016】
図1に示すように、液滴吐出ヘッド100は、シリコン製のキャビティ基板2を電極基板1とシリコン製のノズル基板3とが上下から挟む構造になっている。そして、この液滴吐出ヘッド100は、電極基板1、キャビティ基板2、ノズル基板3の順に積層接合して構成されている3層構造である。なお、ここでは液滴吐出ヘッド100が3層構造である場合を例に説明するが、これに限定するものではなく、4層構造であってもよい。
【0017】
[ノズル基板3]
ノズル基板3は、たとえば厚さ100μm(マイクロメートル)のシリコン基板からなり、複数のノズル孔32が形成されている。このノズル孔32は、キャビティ基板2との接合面の反対面に開口するように形成されている。また、このノズル基板3には、細溝状のオリフィス31が形成されている。このオリフィス31は、各吐出室13(圧力室)に対して1つずつ形成されている。なお、オリフィス31は、ノズル基板3ではなく、キャビティ基板2に形成するようにしてもよい。
【0018】
図2に示すように、ノズル孔32を2段に形成して液滴を吐出する際の直進性を向上させるようにしている。また、電極基板1、キャビティ基板2及びノズル基板3を接合するときに、シリコンからなる基板とホウ珪酸ガラスからなる基板を接合する場合は陽極接合により、シリコンからなる基板同士を接合する場合は直接接合によって接合することができる。また、シリコンからなる基板同士は、接着剤を用いて接合することもできる。なお、ノズル基板3をシリコン製に限定するものでない。たとえば、ノズル基板3をホウ珪酸ガラス等で形成してもよい。
【0019】
[キャビティ基板2]
キャビティ基板2は、たとえば厚さ約50μmの(110)面方位のシリコン基板で形成されている。このシリコン基板にドライエッチングまたはウエットエッチングのいずれかあるいは双方を行い、底壁が振動板12を形成する吐出室13が複数形成される。この複数の吐出室13は、電極ガラス基板1の個別電極17の電極列に対応して形成されるようになっており、図1の紙面手前側から紙面奥側にかけて平行に並んで形成されているものとする。この複数の吐出室13が、キャビティ基板2における有効パターンである。なお、電極ガラス基板1とキャビティ基板2とを接合すると個別電極17と振動板12との間に空隙である空間部21(ギャップ)が形成される。この空間部21は、たとえば深さ0.2μmとなるように形成されている。
【0020】
また、キャビティ基板2には、各吐出室13にインク等の液滴を供給するためのリザーバ14が形成される。このリザーバ14には、キャビティ基板2を貫通するインク供給孔18が形成されている。ここでは、リザーバ14が単一の凹部から形成されている場合を例に示している。さらに、キャビティ基板2には、振動板12に電圧を印加するための共通電極部30が形成されるようになっている。そして、共通電極部30には、図示省略の駆動回路がフレキシブル基板(FPC)を介して接続されるようになっている。この駆動回路は、ドライバIC等の集積回路で構成するのが好ましい。また、この駆動回路が、液滴吐出ヘッドの内部に備えられていてもよく、外部に備えられていてもよい。
【0021】
キャビティ基板2は、単結晶シリコンからなり、その全面にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)によって、TEOS(TetraEthylOrthoSilicate)からなる絶縁膜16を0.1μm形成している。これは、振動板12の駆動時における絶縁破壊及びショートを防止するためと、インク等の液滴によるキャビティ基板2のエッチングを防止するためのものである。なお、この絶縁膜16は、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ装置を用いて成膜するとよい。
【0022】
なお、振動板12は、高濃度のボロンドープ層で形成するようにしてもよい。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液による単結晶シリコンのエッチングにおけるエッチングレートは、ドーパントがボロンの場合、約5×1019atoms/cm3 以上の高濃度の領域において、非常に小さくなる。このため、振動板12の部分を高濃度のボロンドープ層とし、アルカリ溶液による異方性エッチングによって吐出室13を形成する際に、ボロンドープ層が露出してエッチングレートが極端に小さくなる、いわゆるエッチングストップ技術を用いることにより、振動板12を所望の厚さに形成することができる。
【0023】
ここでは、絶縁膜16がTEOSからなる場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、絶縁性能が向上する物質(比誘電率が高い物質)を絶縁膜16とすればよい。たとえば、酸化アルミニウム(Al23)や酸窒化シリコン(SiON)、酸化タンタル(Ta25)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)、窒化シリコン(Si34)、ハフニウム−アルミニウム酸化物(HfAlOx)、ダイヤモンド、酸化ジルコニウム(ZrO2)等を絶縁膜16とすることが可能である。
【0024】
[電極ガラス基板1]
キャビティ基板2の振動板12側には、たとえばホウ珪酸ガラスからなる電極ガラス基板1が接合されるようになっている。ここでは、電極ガラス基板1がホウ珪酸ガラスで形成されている場合を例に示すが、これに限定するものではない。たとえば、電極ガラス基板1を単結晶シリコンで形成してもよい。電極ガラス基板1には、振動板12と対向する複数の個別電極17(対向電極)が形成されている。この個別電極17は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)をECRスパッタ装置で0.1μmの厚さに作製するとよい。
【0025】
また、電極ガラス基板1には、リザーバ14と連通するインク供給孔18が形成されている。このインク供給孔18は、リザーバ14の底壁に設けられた孔と繋がっており、リザーバ14にインク等の液滴を外部から供給するために設けられている。なお、電極ガラス基板1には、各個別電極17を装着できるように、これらの形状に類似したやや大きめの形状の空間部21がパターン形成されている。
【0026】
この空間部21は、各振動板12に対向する位置に細長い一定の深さを有するように形成されている。なお、この空間部21は、電極ガラス基板1に凹部を形成する他に、キャビティ基板2に凹部を形成したり、スペーサを挟むことによって設けたりすることも可能である。また、キャビティ基板2が単結晶シリコンからなり、電極ガラス基板1がホウ珪酸ガラスからなる場合には、キャビティ基板2と電極ガラス基板1との接合を陽極接合によって行うこと一般的となっている。
【0027】
個別電極17は、その一端が図示省略の駆動回路とFPCを介して接続されており、この駆動回路から駆動信号が供給されるようになっている。この個別電極17は、一定の間隔の隙間をもって振動板12に対向しており、空間部21の底面に沿って電極ガラス基板1の末端(電極取出部27)まで伸びている。そして、この個別電極17は、電極取出部27で駆動回路と接続されるようになっている。
【0028】
次に、液滴吐出ヘッド100の動作について説明する。液滴吐出ヘッド100のキャビティ基板2と各個別電極17とには、上述したように、図示省略の駆動回路が接続されている。そして、この駆動回路によりキャビティ基板2と個別電極17との間にパルス電圧が印加される。そうすると、キャビティ基板2と個別電極17との間に電位差が生じ、静電気力が発生する。そのために、振動板12が個別電極17側に撓み、リザーバ14の内部に溜まっていたインク等の液滴が吐出室13に流れ込む。その後、キャビティ基板2と個別電極17との間に印加されていたパルス電圧がなくなると、振動板12が元の状態位置に復元して吐出室13の内部の圧力が高くなり、ノズル孔32からインク液滴が吐出される。
【0029】
図3は、本発明の実施の形態に係るマスク50の斜視図であり、図4は、マスク50がキャビティ基板2にセットされた状態を示す説明図である。図3に示すように、マスク50は、キャビティ基板2にセットされるようになっている。このマスク50には、開口部51とザグリ52(凹部)とが形成されている。開口部51は、マスク50の特定の部分を開口して形成されるようになっている。ここでは、開口部51がキャビティ基板2に形成される共通電極部30に対向する位置に形成されている場合を例に示している。また、ザグリ52は、キャビティ基板2の有効パターンと対向する位置に、その有効パターンよりやや大きめに形成されるようになっている。
【0030】
図4に示すように、有効パターンとは、アクチュエータの機能を果たす部分に相当する領域をいう。すなわち、キャビティ基板2の有効パターンとは、キャビティ基板2に形成される複数の吐出室13に該当する領域のことである。キャビティ基板2の有効パターンは、極めて精巧(高精度)に作製することが望ましい。それは、アクチュエータの性能及び吐出信頼性を低下しないようにするためである。したがって、キャビティ基板2とマスク50との接触により、有効パターンにダメージを受けないように、マスク50にザグリ52を形成したのである。
【0031】
マスク50は、(100)面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板と称する)で形成されている(図5参照)。このシリコン基板に結晶方位依存性を利用した異方性ドライエッチングで、開口部51とザグリ52とが形成されるようになっている。この開口部51は、マスク50を貫通するように形成される。つまり、開口部51は、その4つの壁面がそれぞれ(111)面方位となるように形成されるのである。なお、開口部51は、正方形や長方形の形状にパターニングされる。ここでは、この開口部51が、キャビティ基板2に形成される共通電極部30の形状に対応するように形成されているものとする。
【0032】
ザグリ52は、マスク50を貫通させないように形成される。つまり、ザグリ52は、結晶方位依存性を利用した異方性ドライエッチングで形成されるが、ハーフエッチングすることでマスク50を貫通させずに、その4つの壁面が(111)面方位となるように形成されるのである。なお、ザグリ52は、正方形や長方形の形状にパターニングされる。ここでは、このザグリ52が、キャビティ基板2に形成される有効パターンの形状に対応するように、その有効パターンよりもやや大きめに形成されているものとする。
【0033】
このように、マスク50を単結晶シリコンで形成すれば、基板の厚さを薄くすることが可能となり、取り扱いが容易となるという効果を得ることができる。すなわち、マスク50は撓みや変形が生じにくいので、開口部51やザグリ52を高精度に形成することができるのである。ここでは、開口部51が共通電極部30に対応している場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、開口部51は、キャビティ基板2の有効パターン(ザグリ52)以外の薄膜を形成したい部分であれば、どこに形成してもよい。
【0034】
次に、キャビティ基板2の薄膜形成について説明する。ここでは、キャビティ基板2の共通電極部30に薄膜を形成する場合を例に説明する。まず、共通電極部30に対応する位置に開口部51を設けたマスク50を用意する。このマスク50には、上述したようにザグリ52が形成されているものとする。そして、キャビティ基板2の電極ガラス基板1との接合する面の反対側の面にマスク50をセットする。
【0035】
マスク50のセットは、キャビティ基板2に設けてある図示省略のアライメントマーク利用して位置合わせするとよい。この位置合わせは、ピンやカメラ等によって行うとよい。そして、位置合わせが完了すると、マスク50の開口部51がキャビティ基板2の共通電極部30に対応し、ザグリ52がキャビティ基板2の有効パターンに対応していることになる。このような状態のもと、共通電極部30に薄膜が形成されるようになっている。すなわち、キャビティ基板2に密着されたマスク50の開口部51を介して選択的に薄膜が形成されるのである。
【0036】
薄膜は、スパッタリングや真空蒸着、イオンプレーティング等の成膜方法で形成することができる。すなわち、マスク50は、スパッタリングマスクとして使用することが可能である他に、真空蒸着やイオンプレーティング等の成膜方法におけるマスクとしても使用することが可能である。どのような成膜方法であっても、開口部51とザグリ52とは別個独立に形成されているので、キャビティ基板2の有効パターンにダメージを与えることがないのである。キャビティ基板2に薄膜を形成したら、マスク50を剥離し、ノズル基板3を接合して液滴吐出ヘッド100が組み立てられるようになっている。
【0037】
図5は、マスク50の製造工程の一例を示す断面工程図である。図5に基づいて、マスク50の製造工程について説明する。まず、(100)面方位のシリコン基板50aを用意する(a)。このシリコン基板50aの表面全体に保護膜である熱酸化膜55(SiO2 膜)を形成する(b)。この熱酸化膜55は、CVD装置によって厚さ約1μm(マイクロメートル)に形成されるようになっている。
【0038】
その後、熱酸化膜55の開口部51に対応する部分51a及びザグリ52に対応する部分52aをフォトリソグラフィー(ステッパーやマスクアライナー等)によりパターニングし、これらの部分をBHF(緩衝フッ化水素)を使用したウエットエッチングにより除去する(c)。この開口部51に対応する部分51aとザグリ52に対応する部分52aとは、シリコン基板50aのそれぞれ反対側の面に形成されるようになっている。なお、ザグリ52に対応する部分52aの熱酸化膜55は完全に除去しないようにハーフエッチングする。
【0039】
それから、シリコン基板50aを25重量%、80℃の水酸化カリウム水溶液に浸し、開口部51に対応する部分51aエッチングする(d)。このシリコン基板50aは(100)面方位であるので、エッチングにより形成される開口部51は上面から下面に向かって小さくなるように(テーパ状に)形成される。次に、ザグリ52に対応する部分52aに残した熱酸化膜55を完全に除去する(e)。ザグリ52に対応する部分52aの除去も、BHF(Buffered Hydrofluoric Acid:緩衝フッ化水素)を使用したウエットエッチングにより行う。そうすると、ザグリ52に対応する部分52aにハーフエッチングにより残っていた熱酸化膜55が完全に除去される。
【0040】
ザグリ52に対応する部分52aの熱酸化膜55を除去したら、シリコン基板50aを25重量%、80℃の水酸化カリウム水溶液に浸し、ザグリ52に対応する部分52aエッチングする(f)。このザグリ52も開口部51と同様にテーパ状に形成される。開口部51及びザグリ52を形成したら、シリコン基板50a表面に残っている熱酸化膜55を全部除去する(g)。この熱酸化膜55の除去は、DHF(Diluted Hydrofluoric Acid:希釈フッ化水素)を使用したウエットエッチングにより行う。このようにして、マスク50が完成する。
【0041】
以上のように、フォトリソグラフィーによるパターニング及びアルカリ異方性エッチングといった単純なプロセスを組み合わせてマスク50を作製するので、複雑な作業に煩わされることなく、マスク50を容易に作製することが可能となる。また、シリコン基板を用いてマスク50を作製するので、微細な形状でも精度良く加工することができる。すなわち、薄膜を形成したい目的の場所に的確に薄膜を成膜することが可能となる。さらに、このマスク50は、ザグリ52を設けキャビティ基板2の有効パターンを接触ダメージから保護するので、キャビティ基板2の加工形状品質が良いものとなる。したがって、加工形状歩留まりが高い製造方法を提供することができる。
【0042】
図6〜図9は、液滴吐出ヘッド100の製造工程の一例を示す断面工程図である。図6〜図9に基づいて、液滴吐出ヘッド100の製造工程を詳細に説明する。なお、この液滴吐出ヘッド100は、上述したマスク50を使用することによって、キャビティ基板2の有効パターンにダメージを与えることなく、かつ、加工形状歩留まりに優れた液滴吐出ヘッド100を製造することを目的としている。
【0043】
図6は、キャビティ基板2の製造工程を示す断面工程図である。液滴吐出ヘッド100のキャビティ基板2となる一面が研磨された厚さ525μmのシリコン基板2aを用意する(a)。シリコン基板2aの研磨された面にボロンを高濃度に拡散し、ボロン拡散層12aを形成する(b)。続けて、シリコン基板2aの下面にプラズマCVD装置により絶縁膜16を形成する(c)。この絶縁膜16は、上述したようにTEOSからなり、厚さ0.1μmとして形成されている。
【0044】
図7は、電極ガラス基板1の製造工程を示す断面工程図である。液滴吐出ヘッド100の電極ガラス基板1となる硼珪酸ガラス製のガラス基板1a(厚さ1mm)の一面にCr/Au膜60(クロム・金合金膜)をスパッタにより形成する(a)。次に、フォトリソグラフィーにより空間部21に対応する形状にCr/Au膜60をパターニングし、エッチングによりCr/Au膜60の空間部21に対応する部分を除去する(b)。そして、Cr/Au膜60をエッチングマスクとして、フッ酸水溶液でガラス基板1aをエッチングして空間部21を形成する(c)。
【0045】
その後、Cr/Au膜60をエッチングによりすべて除去する(d)。Cr/Au膜60を除去したら、上面全体にITO膜17aをスパッタにより成膜する(e)。次に、フォトリソグラフィーによりITO膜17aに個別電極17に対応する形状をパターニングし、個別電極17となる部分以外のITO膜17aをエッチングにより除去して個別電極17を形成する(f)。そして、インク供給孔18を形成する部分をダイヤモンドドリルで穿孔してインク供給孔18を形成する(g)。
【0046】
図8及び図9は、シリコン基板2aとガラス基板1aとを接合する工程及びそれ以降の製造工程を示す断面工程図である。図4の工程で示したボロン拡散層12a及び絶縁膜16を形成したシリコン基板2aと、図5の工程で示したインク供給孔18を形成したガラス基板1aとを準備する(a)。そして、シリコン基板2aとガラス基板1aとの間に電圧をかけて陽極接合し、接合基板61を作成する(b)。
【0047】
次に、シリコン基板2aの表面をグラインダーで研削して厚さを約150μmにする。このとき、基板の表面には中心から放物線を描く研削跡が残り、その表面粗さ(Rmax)は0.1μm程度である。続いて、32重量%、80℃の水酸化カリウム水溶液でSi基板1aの上面全体をエッチングし、機械加工(グラインダーで研削)で発生した加工変質層を除去する(c)。このエッチングによってシリコン基板2a表面は荒れてしまうことになるが、シリコン基板2aの表面粗さは前述のように1μm以下であることから後工程のノズルプレート接着に問題はない。
【0048】
続いて、接合基板61のシリコン基板2aの表面に、CVD装置によって厚さ1μmのSiO2 膜62(シリコン酸化膜)を形成する(d)。その後、SiO2 膜62の吐出室13に対応する部分13a、リザーバ14に対応する部分14a及び電極取出し27に対応する部分27aをフォトリソグラフィーによりパターニングし、これらの部分のSiO2 膜62をエッチングにより除去する(e)。なお、リザーバ14となる部分11aのSiO2 膜62は完全に除去しないようにハーフエッチングする。
【0049】
次に、接合基板61を35重量%、80℃の水酸化カリウム水溶液に浸し、吐出室13、電極取出部27を途中までエッチングする。そして、リザーバ14に残したフッ酸水溶液でSiO2 膜62を除去し、35重量%、80℃の水酸化カリウム水溶液でエッチングを継続する。こうして、ボロン拡散層12aがエッチングされずに残り、吐出室13の底面のボロン拡散層12aは振動板12となるようになっている。一方、エッチングのスタートを遅らせたリザーバ14は、ボロン拡散層12aまでエッチングが進行せずに、底部となるシリコンを厚く残すことができる(f)。それから、接合基板61をフッ酸水溶液に浸し、シリコン基板2aの表面に残るSiO2 膜62をすべて除去する(g)。
【0050】
ここまでの工程では、キャビティ基板2と電極ガラス基板1との間に形成された空間部21は完全に密閉されているため、途中工程の処理液が空間部21内(すなわち、アクチュエータ内部)に入り込むということはない。そして、電極取出部27に残るボロン拡散層12aと絶縁膜16である薄膜と除去するために、電極取出部27に対応する部分27aを開口したメタルマスクをキャビティ基板2に重ねて、ボロン拡散層12aと絶縁膜16をドライエッチングで除去する(h)。
【0051】
次に、封止材28を電極取出部27の開口部からキャビティ基板2と電極ガラス基板1との間に形成されている空間部21を塞ぐように塗布し、アクチュエータを封止する(i)。それから、図示してはいないが、キャビティ基板2にマスク50をセットする(図3参照)。そして、キャビティ基板2の共通電極部30に薄膜を形成した後、マスク50を剥離する。その後、キャビティ基板2の上面にノズル基板3を接合剤で接合する(j)。最後に、ダイシング(切断)して不要な部分除去することで液滴吐出ヘッド100が完成する(k)。
【0052】
図10は、実施の形態で製造した液滴吐出ヘッド100を搭載した液滴吐出装置150の一例を示した斜視図である。この液滴吐出装置150は、一般的なインクジェットプリンタである。液滴吐出装置150に搭載される液滴吐出ヘッド100は、上述したように、キャビティ基板2の振動板12を作製する際に、ボロン拡散層12a表面を平滑化するので、絶縁信頼性及び発生圧力を高いものとすることができる。
【0053】
なお、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法で得られた液滴吐出ヘッド100は、図10に示したインクジェットプリンタの他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することが可能である。また、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、本発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において変形可能である。たとえば、静電アクチュエータを用いたマイクロポンプやミラーデバイス等のMEMS(micro Electro Mechanical Systems)デバイスの製造にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの要部の断面を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るマスクの斜視図であり。
【図4】マスクがキャビティ基板にセットされた状態を示す説明図である。
【図5】マスクの製造工程の一例を示す断面工程図である。
【図6】キャビティ基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図7】電極ガラス基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図8】シリコン基板とガラス基板とを接合する製造工程を示す断面工程図である。
【図9】シリコン基板及びガラス基板の接合以降の工程を示す断面工程図である。
【図10】液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 電極ガラス基板、1a ガラス基板、2 キャビティ基板、2a シリコン基板、3 ノズル基板、12 振動板、12a ボロン拡散層、13 吐出室、13a 吐出室に対応する部分、14 リザーバ、14a リザーバに対応する部分、16 絶縁膜、17 個別電極、17a ITO膜、18 インク供給孔、21 空間部、27 電極取出部、27a 電極取出部に対応する部分、28 封止材、31 オリフィス、32 ノズル孔、50 マスク、50a シリコン基板、51 開口部、51a 開口部に対応する部分、52 ザグリ、52a ザグリに対応する部分、55 熱酸化膜(SiO2 膜)、60 Cr/Au膜、61 接合基板、62 SiO2 膜、100 液滴吐出ヘッド、150 液滴吐出装置。




 

 


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