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発明の名称 液滴吐出ヘッドの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−76141(P2007−76141A)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
出願番号 特願2005−266479(P2005−266479)
出願日 平成17年9月14日(2005.9.14)
代理人 【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
発明者 北原 浩司 / 大谷 和史
要約 課題
液滴吐出ヘッドを構成するキャビティ基板を効率よくしかも高精度に加工し、高精度の液滴吐出ヘッドを得る。

解決手段
電極8が形成されたガラス基板2と、液体を貯えて吐出させる吐出室5となる凹部を含む液体流路が形成されるシリコン基板41とを、電極8と吐出室5となる底面部分とをギャップGを介して対向させて接合した後、シリコン基板41に液体流路を形成する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、ガラス基板2と接合されたシリコン基板41を機械加工して薄板化し、その機械加工が施された面を鏡面化し、さらにシリコン基板41の鏡面化された面の加工変質層をエッチングにより除去した後、ウェットエッチングを利用して該シリコン基板41に液体流路を形成する。
特許請求の範囲
【請求項1】
電極が形成された電極基板と、液体を貯えて吐出させる吐出室となる凹部を含む液体流路が形成されるシリコン基板とを、前記電極と前記凹部となる底面部分とをギャップを介して対向させて接合した後、前記シリコン基板に前記液体流路を形成する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
前記電極基板と接合された前記シリコン基板を機械加工して薄板化し、前記シリコン基板の前記機械加工が施された面を鏡面化し、前記シリコン基板の鏡面化された面の加工変質層をエッチングにより除去した後、前記シリコン基板に前記液体流路を形成する、ことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記シリコン基板の鏡面化をドライポリッシングにより行うことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記加工変質層の除去をドライエッチングにより行うことを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記加工変質層の除去をスピンエッチングにより行うことを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記シリコン基板に対する前記液体流路の形成をウェットエッチングを利用して行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はインクやその他の液体を吐出する液滴吐出装置に用いられる液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドなどの液滴吐出ヘッドの製造方法において、電極が形成されたガラス基板にシリコン基板を接合した後、そのシリコン基板をエッチングして吐出液体の流路となるキャビティを形成する方法が知られている(例えば特許文献1)。
また、電極が形成されたガラス基板にシリコン基板を接合した後、そのシリコン基板を機械加工により薄型化し、その薄型化された面の加工変質層をウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去して、その後そのシリコン基板をエッチングして吐出液体の流路となるキャビティを形成する方法が知られている(例えば特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−993号公報
【特許文献2】特開2005−81620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電極基板に接合されたシリコン基板を機械加工して生じた加工変質層を、ウェットエッチングまたはドライエッチングだけを利用して除去したのでは、加工変質層は除去できても、その除去面はエッチングに起因して表面粗さの粗い面となる。従って、その後に上記加工面側から吐出室などをウェットエッチングにより形成する際、そのために形成するパターンに欠陥が生じたり、そのパターンが精度良く形成できないため、吐出室形状やその他の流路形状を高精度に形成できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、吐出室を含む流路が形成されるキャビティプレートを、効率よくしかも高精度に加工するための方法を提案することにより、結果として、キャビティプレートを備える液滴吐出ヘッドを、高精度で生産性良く製造できる方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、電極が形成された電極基板と、液体を貯えて吐出させる吐出室となる凹部を含む液体流路が形成されるシリコン基板とを、前記電極と前記凹部となる底面部分とをギャップを介して対向させて接合した後、前記シリコン基板に前記液体流路を形成する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、前記電極基板と接合された前記シリコン基板を機械加工して薄板化し、前記シリコン基板の前記機械加工が施された面を鏡面化し、前記シリコン基板の鏡面化された面の加工変質層をエッチングにより除去した後、前記シリコン基板に前記液体流路を形成するものである。
【0007】
鏡面化しかつ加工変質層をエッチングにより除去したシリコン基板の表面は、単にエッチングしただけのシリコン基板の表面よりその表面の面粗さが細かくなる。すなわち面の凹凸の度合いが低減する。このため、吐出室などをウェットエッチングにより形成する際のパターンの欠陥発生が抑制され、またそのパターンの精度も改善されるため、吐出室形状やその他の流路形状を高精度に形成できる。
【0008】
なお、前記シリコン基板の鏡面化はドライポリッシングにより行うことが好ましい。これによれば、その処理時、電極基板に形成した液体供給口などの貫通穴からシリコン基板のポリッシング面と反対面にポリッシング液が侵入することがないため、加工に際して特別な処置が不要となる。
【0009】
また、前記加工変質層の除去はドライエッチングまたはスピンエッチングにより行うことが好ましい。これらのエッチングによれば、その処理時、電極基板に形成した液体供給口などの貫通穴からシリコン基板のエッチング面と反対面にエッチング液が侵入することがないため、加工に際して特別な処置が不要となる。
【0010】
さらに、前記シリコン基板に対する前記液体流路の形成をウェットエッチングを利用して行うことが好ましい。鏡面化しかつ加工変質層をエッチングにより除去した後のウェットエッチングは、エッチング速度のばらつきが小さくなり、吐出室形状やその他の流路形状を高精度にしかも効率良く形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1
図1は本発明の第1の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。図1はフェイス吐出型の液滴吐出ヘッドを表している。図1に示すように、この液滴吐出ヘッドは、キャビティプレート1、ガラス基板2、ノズルプレート3の3つの基板が積層されてなる。
キャビティプレート1は、例えば厚さ約50μmで、110面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板という)から構成されている。キャビティプレート1には、吐出される前の液滴が保持される複数の吐出室5、各吐出室5に供給する液体をためておく各吐出室に共通のリザーバ7などの流路が形成されている。なお、吐出室5の底面を構成する底壁は吐出室5の液圧を変化させる振動板4として作用する。
【0012】
また、キャビティプレート1の下面(ガラス基板2と対向する面)には、絶縁膜となるTEOS膜(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシランを用いてできるSiO2 膜をいう)14を、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて0.1μm程度成膜している。これは、液滴吐出ヘッドを駆動させた時の絶縁膜破壊及び短絡を防止するためである。さらに、キャビティプレート1の上面(ノズルプレート3と対向する面)には、液体保護膜15となるSiO2 膜(TEOS膜を含む)を、プラズマCVD法又はスパッタリング法により成膜している。これはインク等の液体によって流路が腐食するのを防ぐためである。また、液体保護膜15の応力とキャビティプレート1の下面に成膜したTEOS膜14の応力とを相殺させ、振動板4の反りを小さくすることができる効果も期待できる。
また、キャビティプレート1には、キャビティプレート1の通電部として共通電極19が設けられている。
【0013】
ガラス基板2(電極基板ともいう)は、厚さ約1mmであり、図1で見るとキャビティプレート1の下面に接合される基板である。本実施の形態では、ガラス基板2となるガラスとして、ホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いることにする。ガラス基板2には、キャビティプレート1に形成される各吐出室5に合わせて、エッチングにより深さ約0.2μmの凹部9が設けられる。そして、凹部9の内側に、個別電極8、リード部10及び電極端子11からなる複数の電極を設ける。リード部10は個別電極8と電極端子11を繋ぐ部分であり、電極端子11は個別電極8を外部機器(例えば電源)に接続する際などに利用される部分である。なお、特に区別する必要がない場合は、個別電極8、リード部10及び電極端子11を合わせて個別電極(又は電極)8として説明する。
【0014】
本実施の形態では、個別電極8の材料として酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、例えばスパッタ法を用いて0.1μmの厚さで凹部9内側に形成するものとする。その際、後述するように、個別電極8とガラス基板2に接合するシリコン基板とを等電位にするための接点(以下、等電位接点という)となるITOパターン24も個別電極8と同時に成膜しておく。
なお、個別電極8の材料はITOに限定するものではなく、クロム等の金属等を材料に用いてもよい。本実施の形態においては、透明であるので放電したかどうかの確認が行い易い等の理由でITOを用いることとする。
また、ガラス基板2には、リザーバ7と連通して外部タンク(図示せず)からリザーバ7への流路となる液体供給口13も設けられている。
【0015】
振動板4と個別電極8との間には、後述する図2に示すように、振動板4の振動空間として機能するギャップGが構成されるが、その幅は凹部9の深さ、個別電極8及び振動板4(TEOS膜14)の厚さにより決まる。この例の場合、そのギャップ幅は約0.1μmとなっている。ギャップGの幅は液滴吐出ヘッドの吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が行われる。
【0016】
ノズルプレート3は、例えば厚さ約180μmのシリコン基板で構成され、ガラス基板2とは反対の面(図1の場合には上面)で、キャビティプレート1と接合されている。図1から見て、ノズルプレート3の上面には、吐出室5で加圧されたインク等の液体を液滴として吐出するノズル孔12が形成されている。また、キャビティプレート1のリザーバ7に対応する部分には、リザーバ7内の液体の圧力変動を吸収するためのダイヤフラム18が形成されている。さらに、ノズルプレート3の下面には、吐出室5とリザーバ7とを連通させるオリフィス6も形成されている。
なお、ここではノズル孔12を有するノズルプレート3を上面とし、ガラス基板2を下面として説明するが、実際には、ノズルプレート3の方がガラス基板2よりも下面となって用いられることが多い。
【0017】
図2は図1の液滴吐出ヘッドの断面図である。図2(a)は吐出室5を長手方向に割断した部分の断面図、図2(b)は等電位接点部分の拡大断面図を表している。吐出室5は吐出前の液体を溜めておき、吐出室5の底壁を構成する振動板4を撓ませることにより、吐出室5内の圧力を高めて、液滴をノズル孔12から吐出させる作用を果たす。本実施の形態で振動板4は、高濃度のボロン(B)をシリコン基板に拡散したボロンドープ層から構成している。振動板4となるボロンドープ層の厚さは、例えば約0.8μmである。
また、ギャップGに、異物、水分(水蒸気)等が浸入しないように、ギャップGを外気から遮断し、密閉する封止材26がギャップGの端部に設けられている。
【0018】
キャビティプレート1の共通電極19は、ワイヤ23を介して発振回路22に接続されている。また、ガラス基板2の電極端子11も、ワイヤ23を介して発振回路22に接続されている。発振回路22は、例えば24kHzで発振し、個別電極8に0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷の供給及び停止を行う。すなわち、発振回路22が発振駆動することで、例えば個別電極8に電荷を供給して正に帯電させ、振動板4を相対的に負に帯電させると、静電気力により個別電極8に引き寄せられて撓む。これにより吐出室5の容積は広がる。そして電荷供給を止めると振動板4は元に戻るが、そのときの吐出室5の容積も元に戻るから、その圧力により差分の液滴20が吐出する。この液滴20が例えば記録対象となる記録紙21に着弾することによって印刷等の記録が行われる。なお、このような方法は引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
【0019】
図3はガラス基板2を上面から見た図である。通常、液滴吐出ヘッドはウェハー単位で作られ、最終的に各液滴吐出ヘッド(ヘッドチップ)に切り離される。本実施の形態では、等電位接点を各ヘッドチップに独立して設け、それを利用して陽極接合時にキャビティプレート1と個別電極8との間を等電位に保つようにする。等電位接点となる部分については、ガラス基板2に凹部9を形成する際、エッチングせず残しておく。そして、その上に、導電性であるITO0.1μmを個別電極8とともに成膜し、ITOパターン24を形成する。したがって、等電位接点は、ガラス基板2表面よりもITOパターン24の分だけ0.1μm突出していることとなる。一方、キャビティプレート1においては、等電位接点に対応する部分のTEOS膜(0.1μm)を取り除き、キャビティプレート1の主となる材料であるシリコン基板(ボロンドープ層)を露出する窓を形成する。この窓を介してシリコン基板とITOパターン24とを接触させることで、陽極接合時において、ITOパターン24と電気的に接続されている個別電極8とシリコン基板との等電位を確保する。
【0020】
大気開放穴28はこの液滴吐出ヘッドの外部と凹部9とを連通させ、陽極接合によって形成される前述したギャップGが密閉された状態になるのを防ぐためのものである。たとえば、陽極接合時等、各基板への加熱等による酸素等の気体発生によってギャップG内が加圧されるのを防ぐためのものである。なお、この大気開放穴28は、サンドブラスト法や切削加工等により形成する。また大気開放穴28は、最終的にはダイシングにより液滴吐出ヘッドと切り離されるので、完成した液滴吐出ヘッドには残らない。
【0021】
ダイシングライン27は、ウェハーに一体形成された複数の液滴吐出ヘッドを切り離す際のラインである。したがって、図3においてダイシングライン27よりも右側及び上側にある部分は、完成した液滴吐出ヘッドには残らない。なお、図3の液滴吐出ヘッドでは、個別電極8等の部材を5つしか記載していないが、実際には1つの液滴吐出ヘッドには多くのノズル孔12が存在し、その数に応じた個別電極8が形成されている。
【0022】
図4及び図5は第1の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドの製造工程を表す図である。以下、これらの図4及び図5に示す工程に沿って上記液滴吐出ヘッドの製造方法を説明する。なお、これらの図では、吐出室5と個別電極8からなる静電アクチュエータの部分が基本的に表されているが、図の左端部はその静電アクチュエータの部分ではなく、等電位接点の部分を表している。
【0023】
(a)ここではガラス基板2を作製する。まず約1mmのガラス基板を用意し、その一方の面に対し、個別電極8の形状パターンに合わせて0.2μmの深さの凹部9を形成する。凹部9は、例えばクロム/金の膜をガラス基板2にスパッタで形成し、それをフォトリソグラフィーによりパターニングしてマスクとし、その後、ふっ酸水溶液でガラス基板2をエッチングして形成することができる。なお、等電位接点となる部分については、エッチングを行わずに残しておく。等電位接点の形状については、キャビティプレート1のシリコン基板と個別電極8とを接触させて等電位にすることができればその形状は問わない。凹部9及び等電位接点の形成後、例えばスパッタリング法を用いて、0.1μmの厚さの個別電極8及びITOパターン24を同時に形成する。最後に液体供給口13及び大気開放穴28をサンドブラスト法または切削加工により形成する。これにより、ガラス基板2が作製される。
【0024】
(b)一方で、ガラス基板2に接合されてキャビティプレート1となるシリコン基板を準備する。表面が(110)面方位の酸素濃度の低いシリコン基板41の片面(ガラス基板2との接合面側となる)を鏡面研磨し、例えば220μmの厚みのシリコン基板41を作製する。
次に、シリコン基板41の鏡面研磨した面を、B23を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。さらに縦型炉に石英ボートをセットして、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1050℃に上昇させて7時間保持することで、ボロンをシリコン基板中に拡散させ、ボロンドープ層42を形成する。ここでボロンドープ層42の形成工程においては、炉へのシリコン基板41(石英ボート)の投入温度を800℃とし、さらにシリコン基板41の取出し温度も800℃とする。これにより、シリコン基板41内の酸素による酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過させることができる為、酸素欠陥の発生を抑えることができる。取り出したボロンドープ層42の表面にはボロン化合物が形成されているが(図示なし)、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、ふっ酸水溶液によるエッチングが可能なB23+SiO2 に化学変化させることができる。B23+SiO2 に化学変化させた状態で、B23+SiO2 をふっ酸水溶液にてエッチング除去する。
【0025】
続いて、シリコン基板41のボロンドープ層42を形成した面に、プラズマCVD法により、TEOS膜14を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で0.1μm成膜する。さらに、成膜したTEOS膜14の表面にレジストを塗布し、等電位接点においてシリコンを露出させる窓を作り込む為のレジストパターニングを施す。そして、ふっ酸水溶液でウェットエッチングを行ってTEOS膜14をパターニングし、窓を形成する。パターニングした後レジストを剥離する。
【0026】
(c)その後、シリコン基板41とガラス基板2を360℃に加熱した後、ガラス基板2に負極、シリコン基板41に正極を接続して、800Vの電圧を印加して陽極接合を行う。この時、電圧の昇圧レートを速くし過ぎると、等電位接点に大電流が流れ、電極8となるITOにダメージが加わってしまう為、電流が10mAを越さないように確認しながら、接合すると良い。この陽極接合時に、シリコン基板41とガラス基板2の界面において、ガラスが電気化学的に分解され酸素が気体となって発生する場合がある。また加熱によって表面に吸着していたガス(気体)が発生する場合もある。しかしながら、これらの気体が大気開放穴28から逃げる為、ギャップ内が正圧になることは無い。
【0027】
(d)続いて、陽極接合後のシリコン基板41の厚みが約60μmになるまでシリコン基板41表面の機械加工(研削加工)を行う。この加工によって、シリコン基板41の表面には研削跡が残り、その表面粗さ(Rmax)は100nm程度となる。さらに、シリコン基板41の機械加工面を、研削面が残らないノンダイヤモンド砥石からなるドライポリッシャーなどを利用したドライポリッシングにより2μm程度研削しながら、その表面を鏡面化する。これによりシリコン基板41の表面粗さを10nm程度とすることができる。ドライポリッシングの条件は、例えば、スピンドル回転数1500rpm、ウェハー(シリコン基板41)回転数300rpm、加工荷重50−60Nである。
その後、シリコン基板41の鏡面化した側の全面をドライエッチングにより8〜10μm程度エッチングし、機械加工により生じた加工変質層を除去する。このドライエッチングには、CF4をエッチングガスとした反応性イオンエッチング(RIE)、またはSF6をエッチングガスとした誘導結合型プラズマ(ICP)エッチングなどが利用できる。
【0028】
このようにシリコン基板41の表面をドライポリッシングにより鏡面化した後、ドライエッチングすることにより、シリコン基板41の表面は鏡面化した状態よりは悪化するが、研削加工したままの表面より面粗さを細かくできる。すなわち、表面粗さ(Rmax)を100nm以下に抑制できる。これにより、この表面に形成する流路形成のためのパターンの欠陥が低減し、そのパターン精度も向上する。また、ドライエッチングは、基板の全体をエッチング液に浸す加工方法ではないため、ガラス基板2に形成された液体供給口13などから、シリコン基板41側にエッチング液が入り込むのを回避する処理が不要となり、エッチング工程も簡略化できる。
【0029】
なお、ドライエッチングに代えて、基板を回転させながらエッチングを行うスピンエッチングにより、シリコン基板41の表面をエッチングして上記加工変質層を除去してもよい。その場合に基板上に塗布するエッチング液としては、例えばふっ酸と硝酸の混合液などを用いることができる。スピンエッチングも基板の全体をエッチング液に浸す加工方法ではないため、ガラス基板に形成された液体供給口13などから、シリコン基板41側にエッチング液が入り込むのを回避する処理が不要となりエッチング工程を簡略化できる。
【0030】
(e)次に、ウェットエッチングを行った面に対し、TEOSによるエッチングマスク(以下、TEOSエッチングマスクという)43をプラズマCVD法により成膜する。成膜条件としては、例えば、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は700W、圧力は33.3Pa(0.25Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で1.0μm成膜する。TEOSを用いた成膜は比較的低温で行うことができるので、基板の加熱をできる限り抑えられる点で都合がよい。
【0031】
(f)続いて、大気開放穴28に例えばエポキシ系接着剤28Aを流し込み、大気開放穴28を封止する。これによりギャップGは密閉状態となるため、以後の工程で大気開放穴28からギャップGへ液体等が入り込むことが無くなる。なお、大気開放穴28の封止は、TEOSエッチングマスクを成膜した後に行うのが好ましい。TEOSエッチングマスクの成膜前に大気開放穴28の封止を行うと、閉じこめられたギャップG内の気圧が、TEOSエッチングマスク成膜時に膨張し、薄くなったシリコン基板を押し上げて、シリコン基板が割れる可能性があるからである。
ついで、吐出室5に対応する部分のTEOSエッチングマスク43をエッチングするために、レジストパターニングを施す。そしてRIE(Reactive Ion Etching)プラズマエッチング装置を用いて、TEOSエッチングマスク43がなくなるまでエッチングし、TEOSエッチングマスク43をパターニングする。エッチング条件は、例えば、高周波出力250W、圧力は1.3Pa(0.01Torr)、CHF3ガス流量5cm3 /min(5sccm)である。エッチング後、レジストを剥離する。このように、TEOSエッチング膜43をドライエッチングによりパターニングすることで、吐出室5に対応する部分を垂直に開口させることができ、パターン寸法精度を向上させることができる。
【0032】
(g)さらに、リザーバ7及び電極取出し口25となる部分のTEOSエッチングマスク43をエッチングするため、レジストパターニングを施す。そして、ふっ酸水溶液でそれらの部分のTEOSエッチングマスク43を0.7μmエッチングしてTEOSエッチングマスク43をパターニングする。これによりリザーバ及び電極取出し口となる部分に残っているTEOSエッチングマスク43の厚みは0.3μmとなるがシリコン基板は露出しない。ここでは、残すTEOSエッチングマスク43の厚みを0.3μmとするが、所望するリザーバ7の深さによって、この厚みを調整する必要がある。そして、エッチングした後にレジストを剥離する。
【0033】
(h)次に、接合済み基板を35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、吐出室5となる部分の厚みが約10μmになるまでウェットエッチングを行う。
【0034】
(i)そしてリザーバ7及び電極取出し口と25なる部分のTEOSエッチングマスク43を除去する為、ふっ酸水溶液に接合済み基板を浸してエッチングを行い、除去する。
【0035】
(j)さらに、接合済み基板を3wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、ボロンドープ層42において、エッチングストップが十分効いたものと判断するまでエッチングを続ける。このように、前記2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を用いたエッチングを行うことによって、形成される振動板4の面荒れを抑制し、厚み精度を0.80±0.05μm以下にすることができる。その結果、液滴吐出ヘッドの吐出性能を安定化することができる。
【0036】
ここで、本実施の形態ではリザーバ7及び電極取出し口25となる部分の厚みが所定の厚さとなるようにウェットエッチングを行う時間を制御する。本実施の形態では、約5μm又はそれ以上(より好ましくは20μm)となるようにウェットエッチングを行う時間を制御する。電極取出し口25となる部分は、吐出室5(振動板4)となる部分に比べ、大きな面積を有する。そのため、ウェットエッチングにより、電極取出し口25となる部分に振動板4と同じ厚みの薄膜(ボロンドープ層42)しか残らないようにしてしまうと、この部分の剛性が非常に弱くなってしまい、機械的な振動、ギャップ内に挟まった異物が押し上げる力等によって、割れる場合がある。特にギャップ内に気体が発生すると、成膜等、真空チャンバ内での工程を行う場合には、ギャップ内外の気圧差が大きくなるため割れやすくなる。そのため、割れた際の破片等の異物がギャップに混入したり、後の工程でエッチャント等の液体がギャップに浸入するおそれがある。とはいえ、ウェットエッチングを全く行わずに残したままでは、後の工程で電極取出し口25となる部分を除去するのに時間がかかることになる。
【0037】
そこで、電極取出し口25となる部分にウェットエッチングを行う際に、その工程の後も電極取出し口25となる部分に対して必要な厚さを持たせ、剛性を持たせる構造にする。そして、ウェットエッチング工程、またその後の工程において、電極取出し口25となる部分からシリコン基板41が割れるのを防ぎ、ギャップ内に異物、薬液等が浸入するのを防ぐ。
【0038】
一方、リザーバ7となる部分に対して、20μm程度の厚みによる剛性を持たせるのは、リザーバ7の下側(図1等参照)にも位置する電極8(リード部10)により、静電引力が生じるが、これによりリザーバ7が撓んで変形するのを防ぐためである。ここで、本実施の形態では、前述した(g)の工程において、TEOSエッチングマスク43のパターニングを同時に行って、同じ厚さのTEOSエッチングマスク43を残す関係で、リザーバ7及び電極取出し口25となる部分の厚みが同じになっているが、それに限定されるものではない。その目的に応じた剛性を持たせることができれば、それぞれ異なる厚さにしてもよい。
【0039】
(k)ウェットエッチングを終了すると、接合済み基板をふっ酸水溶液に浸し、シリコン基板41表面のTEOSエッチングマスク43を剥離する。
【0040】
(l)次に、シリコン基板41の電極取出し口25となる部分のシリコンを除去する為に、電極取出し口25となる部分が開口したシリコンマスクを接合済み基板のシリコン基板41側の表面に取り付ける。そして、例えば、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4 流量30cm3 /min(30sccm)の条件で、RIEドライエッチング(異方性ドライエッチング)を2時間行い、電極取出し口25となる部分のみにプラズマを当てて、開口する。開口することでギャップについても大気開放される。
【0041】
従来は電極取出し口25となる部分に残った薄膜をピン等で突いて壊し、大気開放させる方法を採っていた。しかしながら、壊した際に異物が周囲に飛び散り、ノズルプレート3とキャビティプレート1との接着不良、ギャップへの異物混入による封止不良を引き起こしていた。このようにドライエッチングにより電極取出し口25となる部分のシリコンを除去することで、異物を発生させずに大気開放することができる。ここで、本実施の形態では、接合済み基板とシリコンマスクとのアライメント精度を高めるため、シリコンマスクの装着は、接合済み基板とシリコンマスクとにピンを通すピンアライメントにより行うものとする。
【0042】
(m)キャビティプレート1の上面にプラズマCVD法によりTEOS膜による液体保護膜15を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で0.1μm成膜する。液体保護膜15は、上述したように、プラズマCVD法以外にもスパッタリング法によって成膜したSiO2 膜で形成してもよい。
【0043】
本実施の形態では、電極取出し口25となる部分を開口した後に液体保護膜15を成膜している。電極取出し口25の開口前に液体保護膜15を成膜するとなると、ギャップ内が密閉状態になっているので、成膜時の処理温度によってギャップ内の気体が膨張して、薄膜部を破壊する可能性があるからである。したがって、このように、まず電極取出し口25となる部分を開口してギャップ内を大気開放するのが好ましい。
【0044】
(n)電極取出し口部25(電極端子11)に残っている液体保護膜15を除去する為に、再度、シリコンマスクをシリコン基板41表面に取り付け、例えば、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4 流量30cm3 /min(30sccm)の条件でRIEドライエッチングを20分間行い、電極取出し口部25のみに、プラズマにより励起されたイオンを当てて、異方性エッチングを行う。ここで、本工程においても、シリコンマスクの装着は、接合済み基板とシリコンマスクとにピンを通して行うピンアライメントにより行う。
【0045】
(o)そして、例えばエポキシ樹脂からなる封止材26を、電極取出し口25の端部(キャビティプレート1とガラス基板2の凹部との間で形成されるギャップの開口部分)に沿って流し込み、ギャップGを封止する。これにより、接合済み基板に行う加工処理は完了する。
【0046】
(p)その後、あらかじめ作製していたノズルプレート3を例えば、エポキシ系接着剤により、接合済み基板のキャビティプレート1側から接着する。
【0047】
(q)さらに、ダイシングライン27に沿ってダイシングを行い、個々の液滴吐出ヘッドに切断し、液滴吐出ヘッドが完成する。ここで、陽極接合時に、電気的につながっていた各電極8は分断され、ノズル毎に独立する。また、大気開放穴28及びそこに連通するガラス溝も切断される。
【0048】
以上のような方法によれば、ガラス基板2とシリコン基板41を接合した後に、接合されたシリコン基板41に対して吐出室等の各流路を形成するため、取り扱いが容易で、基板の割れも低減することができ、且つ基板の大口径化が可能となる。大口径化が可能となれば、一枚の基板から多くの液滴吐出ヘッドを取出すことができるため、生産性を向上させることができる。
また、機械加工により生じた加工変質層を鏡面化した後、エッチングにより除去したことで、その面粗さが細かくなる。このため、その面側から吐出室などをウェットエッチングにより形成する際のパターンの欠陥発生が抑制され、またそのパターンの精度も改善されるため、吐出室形状やその他の流路形状を高精度にしかも効率よく形成できる。
【0049】
さらに、電極取出し口25となる部分を機械的に割るのではなく、ドライエッチング法を用いて電極取出し口25となる部分の開口を行うようにしたので、破片等の異物が発生することなく、異物付着によるノズルプレート3とキャビティプレート1との接着不良、封止材26を用いた際のギャップ封止不良等を防ぐことができる。また、TEOSを用いたプラズマCVD、スパッタリングにより、液体保護膜15を成膜するようにしたので、低温で緻密な成膜を行うことができる。
さらに、電極取出し口25となる部分をドライエッチングする際、開口位置を高精度に作製することができるSiO2膜をマスクに用いたので、電極取出し口25となる部分だけを高精度にドライエッチングすることができる。
【0050】
また、シリコン基板41とガラス基板2との陽極接合の際、あらかじめガラス基板2に大気開放穴28を設け、ギャップの密閉状態を防ぐようにしたので、陽極接合時にギャップ部分に発生した気体によりシリコン基板41を加圧して、薄膜化した部分から割れるのを防ぐことができる。そして、ウェットエッチングが行われる前に大気開放穴28を塞ぐようにしたので、大気開放穴28からのエッチャントの浸入を防ぐことができる。
なお、上記に示した液滴吐出ヘッドの製造方法は一例であり、そこで使用した温度、圧力、時間、厚みなどの値は上記に説明したものに限られるものではない。
【0051】
実施の形態2
図6は上述の実施の形態で製造した液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置の概略構成図である。図6の液滴吐出装置はインクジェット方式による印刷を目的とするプリンタである。図6において、被印刷物であるプリント紙100が支持されるドラム101と、プリント紙100にインクを吐出し、記録を行う液滴吐出ヘッド102とで主に構成される。また、図示していないが、液滴吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給手段がある。プリント紙110は、ドラム101の軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ103により、ドラム101に圧着して保持される。そして、送りネジ104がドラム101の軸方向に平行に設けられ、液滴吐出ヘッド102が保持されている。送りネジ104が回転することによって液滴吐出ヘッド102がドラム101の軸方向に移動するようになっている。
【0052】
一方、ドラム101は、ベルト105等を介してモータ106により回転駆動される。また、プリント制御手段107は、印画データ及び制御信号に基づいて送りネジ104、モータ106を駆動させ、また、ここでは図示していないが、発振駆動回路を駆動させて振動板4を振動させ、制御をしながらプリント紙110に印刷を行わせる。
【0053】
ここでは液体をインクとしてプリント紙110に吐出するようにしているが、液滴吐出ヘッドから吐出する液体はインクに限定されない。例えば、カラーフィルタとなる基板に吐出させる用途においては、カラーフィルタ用の顔料を含む液体、有機EL等の表示基板に吐出させる用途においては、発光素子となる化合物を含む液体、基板上に配線する用途においては、例えば導電性金属を含む液体を、それぞれの装置において設けられた液滴吐出ヘッドから吐出させるようにしてもよい。また、液滴吐出ヘッドをディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids :デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。その他、布等の染料の吐出等にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドの分解図。
【図2】図1の液滴吐出ヘッドの断面図であり、吐出室の部分を長手方向に割断した部分の断面図(a)、等電位接点部分の拡大部分断面図(b)。
【図3】図1の液滴吐出ヘッドを構成するガラス基板を上面から見た図。
【図4】実施の形態1の液滴吐出ヘッドの製造工程図。
【図5】図4に続く液滴吐出ヘッドの製造工程図。
【図6】実施の形態1の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0055】
1 キャビティプレート、2 ガラス基板、3 ノズルプレート、4 振動板、5 吐出室、6 オリフィス、7 リザーバ、8 個別電極、9 凹部、10 リード部、11 電極端子、12 ノズル孔、13 液体供給口、14 TEOS膜、15 液体保護膜、18 ダイヤフラム、19 共通電極、20 液滴、21 記録紙、22 発振回路、23 ワイヤ、24 ITOパターン、25 電極取出し口、26 封止材、27 ダイシングライン、28 大気開放穴、28A 接着剤、41 シリコン基板、42 ボロンドープ層、43 TEOSエッチングマスク、100 プリンタ、102 液滴吐出ヘッド。




 

 


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