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発明の名称 液体噴射ヘッド
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−21840(P2007−21840A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−205597(P2005−205597)
出願日 平成17年7月14日(2005.7.14)
代理人 【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
発明者 堀江 一基
要約 課題
簡単な構造で装置内を浮遊し不具合の原因となる液体ミストを回収することが可能な液体噴射ヘッドを提供する。

解決手段
複数のノズル開口16´を有し、インク滴吐出側の表面上に撥液被膜層35を形成したノズルプレート17を備え、圧力発生源の作動によって前記ノズル開口16´からインク滴を吐出する記録ヘッドであって、前記撥液被膜層35が、前記ノズル開口16´を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域36と、該第1の撥液被膜領域36から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域37とからなり、該第2の撥液被膜領域37が、絶縁性被膜層からなることを特徴とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
複数のノズル開口を有し、液滴吐出側の表面上に撥液被膜層を形成したノズル形成基板を備え、圧力発生源の作動によって前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドであって、
前記撥液被膜層が、前記ノズル開口を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域と、該第1の撥液被膜領域から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域とからなり、該第2の撥液被膜領域が、絶縁性被膜層からなることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第1の撥液被膜領域が、導電性被膜層からなることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記ノズル開口から吐出される液滴は、メイン液滴とメイン液滴の後に吐出されて画像の形成に供されないサテライト液滴とからなり、
前記第2の撥液被膜領域は、前記サテライト液滴が帯電する電荷と反対の極性の電荷に帯電させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記絶縁性被膜層を、下地膜と、前記下地膜の表面に形成した金属アルコキシドの撥液膜とで構成したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記絶縁性被膜層を、下地膜と、フッ素を含む長鎖高分子基を有する金属アルコキシドが重合した分子膜を上記下地膜の表面に形成した撥液膜とで構成したことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
複数のノズル開口を有し、液滴吐出側の表面上に撥液被膜層を形成したノズル形成基板を備え、圧力発生源の作動によって前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドであって、
前記撥液被膜層が、前記ノズル開口を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域と、該第1の撥液被膜領域から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域と、を備え、
前記ノズル開口から吐出される液滴は、メイン液滴とメイン液滴の後に吐出されて画像の形成に供されないサテライト液滴とからなり、
該サテライト液滴が、第2の撥液被膜領域上に吸着され易いようにしたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに係り、特に、複数のノズル開口を有したノズル形成基板を備え、ノズル開口から液滴を吐出可能な液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口から液滴として吐出させる液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等がある。
【0003】
このような液体噴射ヘッドには種々の形式があるが、例えば、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンタという)におけるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)は、リザーバから圧力室を経てノズル開口に至る一連の液体流路が形成された流路ユニットや圧力室の容積を変動可能な圧力発生素子を有するアクチュエータユニット等を備えたヘッドユニットと、液体流路に連通する複数のノズル開口を列設してなるノズル列を有する金属製のノズルプレート(ノズル形成基板の一種)と、これらのヘッドユニット及びノズルプレートが固定される樹脂製のヘッドケースとを備えたものがある。
【0004】
このような記録ヘッドにおいて、ノズル開口周りの状態、すなわち、ノズル開口周囲のインク等の液体の濡れの状態によっては、吐出する液滴に飛行曲がりが発生する場合がある。つまり、ノズル開口の周囲がインク等の液体で濡れていると、この部分の表面張力によって吐出時の液滴が引っ張られ、その結果、飛行曲がりが発生する。このような飛行曲がり等の吐出不具合を防止すべく、ノズル開口周囲のインク等の液体の付着を無くすための撥液処理をノズルプレートの液滴吐出側の表面に施すことが一般的となっている。
【0005】
この記録ヘッドにおけるノズルプレートは、ノズルプレートのノズル開口を露出可能な露出窓部が開設された金属製のヘッドカバーによって被われた状態でヘッドケースに固定されるようになっている。このヘッドカバーは、ヘッドユニットやノズルプレートを保護し、各部の剥離を防止する機能を果たすものである。また、このヘッドカバーは、接地電位に設定されており、ノズルプレートに接触して導通することで、記録紙等から発生した静電気をノズルプレートから除電するようになっている。これにより、例えば、静電気がノズルプレートを通じて伝達することによる駆動回路等の静電破壊や、この静電気がノイズとして駆動信号に重畳することによる誤作動等の不具合を防止するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−74676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種のプリンタ等で使用される記録ヘッドでは、近年、画像向上等の要求に応えるため、吐出するインク滴(液滴の一種)の滴量を小さくする傾向がある。小量のインク滴を記録媒体に着弾させるため、吐出するインク滴の初速を高くする方法も考えられるが、これにより、インク滴が引き伸ばされてメインインク滴とそれに付随するサテライトインク滴に分離してしまう場合がある。このサテライトインク滴は空気の粘性抵抗により速度が急激に低下し、記録媒体に到達することなくミスト化してしまう。このことより、ミスト化したサテライトインク滴(インクミスト)は、装置内を汚染し、電気回路等への付着によって動作不良を発生させたり、インクカートリッジ等に堆積してユーザーの手を汚したりする問題を生じることがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造で装置内を浮遊し不具合の原因となる液体ミストを回収することが可能な液体噴射ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射ヘッドは、複数のノズル開口を有し、液滴吐出側の表面上に撥液被膜層を形成したノズル形成基板を備え、圧力発生源の作動によって前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドであって、
前記撥液被膜層が、前記ノズル開口を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域と、該第1の撥液被膜領域から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域とからなり、該第2の撥液被膜領域が、絶縁性被膜層からなることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、撥液被膜層が、前記ノズル開口を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域と、該第1の撥液被膜領域から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域とからなり、該第2の撥液被膜領域が、絶縁性被膜層からなるので、第2の撥液被膜領域を帯電させて静電気を溜めることができる。これにより、浮遊する液体ミストを、静電気によって吸着させて第2の撥液被膜領域上に回収することが可能となる。また、ワイピングを行うことにより、第2の撥液被膜領域上に回収して貯留された液体ミストを除去できるだけでなく、再び帯電させて静電気による吸着力を回復することができる。
【0011】
上記構成において、前記第1の撥液被膜領域が、導電性被膜層からなることが望ましい。
上記構成によれば、第1の撥液被膜領域が、導電性被膜層からなるので、発生した静電気等をノズル形成基板から速やかに除電することができる。したがって、静電気による駆動回路等の静電破壊や、駆動信号に重畳することによる誤作動等の不具合を防止することができる。
【0012】
上記構成において、前記ノズル開口から吐出される液滴は、メイン液滴とメイン液滴の後に吐出されて画像の形成に供されないサテライト液滴とからなり、
前記第2の撥液被膜領域は、前記サテライト液滴が帯電する電荷と反対の極性の電荷に帯電させることが望ましい。
上記構成によれば、第2の撥液被膜領域は、前記サテライト液滴が帯電する電荷と反対の極性の電荷に帯電させるので、画像形成に供されないサテライト液滴を優先的に第2の撥液被膜領域上に吸着させることができる。そして、サテライト液滴と第2の撥液被膜領域がお互いに電気的に引き合うため、少ない電荷の帯電でも、効率よくサテライト液滴を回収することができる。
【0013】
上記構成において、前記絶縁性被膜層を、下地膜と、前記下地膜の表面に形成した金属アルコキシドの撥液膜とで構成することが望ましい。
【0014】
上記構成において、前記絶縁性被膜層を、下地膜と、フッ素を含む長鎖高分子基を有する金属アルコキシドが重合した分子膜を上記下地膜の表面に形成した撥液膜とで構成することが望ましい。
上記構成によれば、縁性被膜層を、下地膜と、フッ素を含む長鎖高分子基を有する金属アルコキシドが重合した分子膜を上記下地膜の表面に形成した撥液膜とで構成したので、分子膜が高密度な状態となり、液体が浸透し難くなる。したがって、薄く、耐摩擦性に優れ、撥液性の高い絶縁性被膜層を形成することができる
【0015】
また、本発明の液体噴射ヘッドは、複数のノズル開口を有し、液滴吐出側の表面上に撥液被膜層を形成したノズル形成基板を備え、圧力発生源の作動によって前記ノズル開口から液滴を吐出する液体噴射ヘッドであって、
前記撥液被膜層が、前記ノズル開口を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域と、該第1の撥液被膜領域から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域と、を備え、
前記ノズル開口から吐出される液滴は、メイン液滴とメイン液滴の後に吐出されて画像の形成に供されないサテライト液滴とからなり、
該サテライト液滴が、第2の撥液被膜領域上に吸着され易いようにしたことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、撥液被膜層が、前記ノズル開口を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域と、該第1の撥液被膜領域から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域と、を備え、前記ノズル開口から吐出される液滴は、メイン液滴とメイン液滴の後に吐出されて画像の形成に供されないサテライト液滴とからなり、該サテライト液滴が、第2の撥液被膜領域上に吸着され易いようにしたので、画像形成に供されないサテライト液滴を優先的に第2の撥液被膜領域上に吸着して回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面等を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明は、本発明の液体噴射ヘッドとして、インクジェット式記録装置(液体噴射装置の一種。以下、単にプリンタという)に搭載されるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を例に挙げて行う。
【0018】
まず、プリンタの概略構成について、図1を参照して説明する。プリンタ1は、記録紙等の記録媒体2の表面へ液体状のインクを吐出して画像等の記録を行う装置である。このプリンタ1は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッド3(本発明の液体噴射ヘッドの一種に相当。以下、記録ヘッドという)、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送するプラテンローラ6等を備えている。ここで、上記のインクは、本発明の液体の一種であり、インクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。
【0019】
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモータ等のパルスモータ9により駆動される。従ってパルスモータ9が作動すると、キャリッジ4は、プリンタ1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。
【0020】
プリンタ1の非記録領域であるホームポジションには、例えばキャリッジ4に搭載された記録ヘッド3のノズル形成面(ノズルプレート17のインク吐出側の表面/図3,5参照)を払拭(ワイピング)するワイピング機構15が配設されている。このワイピング機構15は、ワイパーブレード15´を有しており、このワイパーブレード15´としては、ゴムやエラストマー等の弾性部材により構成される。このワイピング機構15は、ワイピング時において、ワイパーブレード15´をその先端部が記録ヘッド3のノズル形成面の移動方向と交差する方向に位置付け、記録ヘッド3の通過に伴ってワイパーブレード15´の先端部がノズルプレート17の表面を摺接し、これによりノズルプレート17の表面が払拭されるように構成されている。
【0021】
図2及び図3は、上記記録ヘッド3の構成を説明する図であり、図2は記録ヘッド3を斜め上方から観た分解斜視図、図3は記録ヘッド3を斜め下方から観た分解斜視図である。この記録ヘッド3は、上記インクカートリッジ7内のインクを記録ヘッド3内部に導入するインク供給針11が複数配設された供給針ユニット12と、アクチュエータユニット13や流路ユニット14等のヘッド構成部材を有するヘッドユニット26とをヘッドケース18に備えて概略構成される。また、この記録ヘッド3において、ヘッドケース18の先端側には、ヘッドユニット26やヘッドユニット26の底面に接合されたノズルプレート17(ノズル形成基板の一種)の側部を保護すると共に、ノズルプレート17を接地電位に調整するためのヘッドカバー19が取り付けられるようになっている。
【0022】
ヘッドケース18は、上記供給針ユニット12と配線基板20が取り付けられるベース部21と、このベース部21の底部から下方に向けて延出し、開口面にヘッドユニット26が取り付けられる中空箱体状のケース部22とにより構成される部材である。このヘッドケース18と供給針ユニット12の材料としては、例えば、エポキシ系の合成樹脂等が用いられる。
【0023】
ヘッドケース18のベース部21には、配線基板20が配設される基板配設部23が区画されている。配線基板20は、各種駆動信号用の電子部品が実装されると共に、アクチュエータユニット13のフレキシブルケーブル24の一端側端子が接続される接続端子が形成された基板である。また、この配線基板20はコネクタ25を備えており、このコネクタ25には、制御装置からのFFC(フレキシブルフラットケーブル)等の制御ケーブル(何れも図示せず)が電気的に接続されるようになっている。
【0024】
上記ヘッドユニット26は、アクチュエータユニット13と流路ユニット14とから構成されており、これらを重ね合わせた状態で一体化してある。アクチュエータユニット13は、ノズル開口16´に対応する圧力室を形成した圧力室プレート、連通口を形成した連通口プレート、及び、圧電振動子を実装した振動子プレートを積層した状態で備え、また、TCP(テープキャリアパッケージ)等のフレキシブルケーブル24を、その他端側端子を圧電振動子の端子部に電気的に接続した状態で備えている。このアクチュエータユニット13における圧電振動子は、所謂撓み振動モードの圧電振動子であり、この圧電振動子を駆動、即ち、撓み振動させると、圧力室の容積が変化し、ノズル開口16´からインク滴(液滴の一種)が吐出されるようになっている。
【0025】
流路ユニット14は、インク供給口30とリザーバの圧力変動を緩和するコンプライアンス部31とを形成した供給口プレート32、インクカートリッジ側から導入されたインクが供給される複数のリザーバ33が形成されたリザーバプレート34、及び、複数のノズル開口16´を列設してなるノズル列16を有するノズルプレート17により構成されている。供給口プレート32とリザーバプレート34とは、積層した状態で熱溶着フィルム等によって接合されており、リザーバ33からノズル開口16´に至るまでのインク流路を形成している。そして、このリザーバプレート34の供給口プレート32接合面とは反対側の面、即ち、ヘッドユニット26の底面は、ノズルプレート17が接合される。
【0026】
このノズルプレート17の材料としては、導電性を有する材料、例えばステンレス鋼等の大型の素材基板が用いられる。そして、この素材基板に対してノズル開口16´の開設や、一方の面(インク滴吐出側の表面)上に撥液処理が施された後、この素材基板から複数のノズルプレート17が切り出される。したがって、撥液被膜層35は、ノズルプレート17のインク滴吐出側の表面のみに形成されるようになっている。この撥液被膜層35は、ノズルプレート17の表面、特に、ノズル開口16´の周囲を撥液性にすることで、インク等の液体が付着するのを極力防止し、インク等の濡れによる吐出する液滴の飛行曲がり等の吐出不具合を防止するためのものである。なお、撥液被膜層35については、後で詳述する。
また、本実施形態では、ステンレス鋼等の金属基板(素材基板の一種)から構成されたノズルプレート17を例示したが、これに限らず、少なくとも液滴吐出側の表面が導電性を有する金属基材で構成されたものであれば、どのようなものでもよい。
【0027】
次にヘッドカバー19について説明する。図4は、ヘッドカバー19の構成を説明する図、図5は、ヘッドカバー19がヘッドケース18に取り付けられた状態の記録ヘッド3を示す図である。このヘッドカバー19は、ノズルプレート17と同様に、例えば、ステンレス鋼等の導電性を有する金属板で作製されており、中央部分に露出窓部43が開設された額縁状のフレーム部40と、このフレーム部40の外周縁からヘッドケース18側に延出した側壁部44とにより概略構成されている。そして、ノズル列直交方向における両側の側壁部44には、側方に向けて耳片状の止着部45を延出しており、この止着部45には、ヘッドケース18に取り付けるための止着ピン46を挿通する止着孔47が開設されている。また、側壁部44は、ガイドロッド10を介してプリンタ1側に通じるアースライン(図示せず)に接続されるようになっている。これにより、ヘッドカバー19が接地電位に調整されるように構成されている。
【0028】
ヘッドカバー19の露出窓部43は、上記ノズル列16を露出するように開口した窓枠状の形状をしており、その寸法(内寸)は、ノズルプレート17よりも小さめに設定されている。したがって、ヘッドカバー19をヘッドケース18に取り付けると、図5に示すように、ノズルプレート17がこのヘッドカバー19のフレーム部40の一部に重畳する状態で、露出窓部43から露出するようになっている。このように、ヘッドユニット26とノズルプレート17を外側から包囲するように、ヘッドケース18の先端側にヘッドカバー19が取り付けられるので、ノズルプレート17の表面、若しくは側面とヘッドカバー19とが当接(導通)し、これにより、ヘッドカバー19を介してノズルプレート17を接地電位に調整することができる。
【0029】
ところで、上述した記録ヘッド3において、画質向上を図るためインク滴の滴量を小さくして吐出すると、記録媒体2に着弾し難くなることがあった。その小量のインク滴を確実に着弾させるため、吐出の初速度を上げるという方法がある。しかし、初速度を上げて行くと、インク滴がメインインク滴50(メイン液滴の一種)とこのメインインク滴50に対し微量の滴量であるサテライトインク滴51(サテライト液滴の一種)とに分離して吐出される現象が生じた(図8参照)。このサテライトインク滴51は、結果的にメインインク滴50の後に吐出され、画像の形成に供されないインク滴となる場合があった。すなわち、このサテライトインク滴51が空気の粘性抵抗により速度が急激に低下し、記録媒体2に到達することなくミスト化してしまっていた。これにより、このインクミスト51´が浮遊して、プリンタ1内を汚染し、電気回路等への付着によって動作不良を発生させたり、インクカートリッジ7等に堆積してユーザーの手を汚したりする問題を生じることがあった。
【0030】
そこで、本発明は、ノズルプレート17のインク滴吐出側の表面上に形成された撥液被膜層35を、ノズル開口16´を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域36と、この第1の撥液被膜領域36から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域37とに区分けして構成し、この第2の撥液被膜領域37を、絶縁性被膜層とすることによりインクミスト51´が絶縁性被膜層に付着して回収されるようにした。また、本発明は、第1の撥液被膜領域36が、導電性被膜からなることが望ましい。以下、この第1の実施形態における撥液被膜層35について説明する。
【0031】
図6(a)は、表面に第1の撥液被膜領域36と第2の撥液被膜領域37とからなる撥液被膜層35が形成されたノズルプレート17の平面図、(b)は、(a)の領域Pにおける拡大図、図7は、図6(b)におけるA−A断面図、図8は、インク滴吐出時のメインインク滴50とサテライトインク滴51の動きを説明する模式図である。
【0032】
本実施形態では、図6(a)に示すように、撥液被膜層35を、ノズル開口16´を列設してなるノズル列16ごと内包した領域を第1の撥液被膜領域36とし、この第1の撥液被膜領域36から外れた領域を第2の撥液被膜領域37として構成している。この第1の撥液被膜領域36は、導電性被膜層で構成し、ノズル開口16´の周囲においてインク等の液体が付着すると吐出不具合を発生する領域(吐出不具合発生領域S)を含む領域、すなわち、吐出不具合発生領域Sより大きい領域としている。これにより、ノズル列16を内包する第1の撥液被膜領域36にインクミスト51´(サテライトインク滴51)を付着させることなく、第2の撥液被膜領域37の絶縁性被膜層のみにインクミスト51´を付着させて回収する。
【0033】
次に、撥液被膜層35について詳しく説明する。第1の撥液被膜領域36を構成する導電性被膜層として、例えば、共析めっき層がノズルプレート17のインク滴吐出側の表面に形成される。具体的には、ニッケルイオン等の金属イオンとフッ素樹脂等の撥液性高分子樹脂の粒子を含む電解質溶液中に、電極に接続したノズルプレート17を浸漬し、その表面にめっきを付着させた後、荷重を加えて反りを抑えながら加熱処理することで導電性の撥液被膜層が得られる。本実施形態では、まず、ノズルプレート17の表面全体に導電性被膜となる共析めっき層を形成する。このように、ノズルプレート17の表面に導電性(撥液)被膜層が形成されると、ノズル開口16´の周囲のインク等の濡れによるインク滴の飛行曲がり等の吐出不具合を未然に防止することができる。さらに、導電性被膜層とノズルプレート17とが導通するので、記録紙等の記録媒体2から発生した静電気をノズルプレート17から速やかに除電することができる。
【0034】
一方、第2の撥液被膜領域37は、ノズルプレート17の表面上の第1の撥液被膜領域36とする部分を、例えば、紫外線硬化樹脂等を用いてマスキングし(図示せず)、このマスキングされた部分以外、すなわち、第1の撥液被膜領域36から外れたすべての領域に形成する。
【0035】
この第2の撥液被膜領域37には、例えば、下地膜とこの下地膜の表面に形成した金属アルコキシドの撥液膜とで構成した絶縁性皮膜を用いる。この金属アルコキシドの撥液膜として、フッ素を含む長鎖高分子基を有する金属アルコキシドが重合した分子膜を下地膜の表面に形成して絶縁性被膜層とすることが望ましい。具体的には、まずノズルプレートの表面上に下地膜として、例えば、シリコーン材料のプラズマ重合膜を形成する。そして、下地膜を200〜400℃程度に加熱すると共に上記の金属アルコキシド溶液に浸漬させることで、下地膜上に均一な膜厚の金属アルコキシドが重合した分子膜を形成することができる。このように形成された分子膜は、金属アルコキシドに由来する金属原子と結合するフッ素を含む長鎖高分子基が表面側に位置し、金属原子が三次元的に結合して、フッ素を含む長鎖高分子が複雑に絡み合った状態となる。これにより、分子膜が高密度な状態となり、インク等の液体が浸透し難くなる。したがって、上記の共析めっきに比べて、薄く、耐摩擦性に優れ、撥液性の高い絶縁性被膜層を形成することができる(図7参照)。また、ノズルプレート17の表面から、他の部分、例えばノズルプレート17(内部)やヘッドカバー19等を介して、アースラインに導通することがないので、除電されることはない。したがって、この絶縁性被膜層を帯電させて静電気を溜めることができる。
【0036】
次に、絶縁性被膜層が形成された後に、溶剤等によりマスキング材として用いた紫外線硬化樹脂等を除去すると、第1の撥液被膜領域36と、第2の撥液被膜領域37とに区分された撥液被膜層35がノズルプレート17の表面に形成される(図6、7参照)。
【0037】
このように、撥液被膜層35が、ノズル開口16´を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域36と、この第1の撥液被膜領域36から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域37とからなり、この第2の撥液被膜領域37が、絶縁性被膜層からなるようにすると、第2の撥液被膜領域37を帯電させて静電気を溜めることができる。これにより、簡単な構造で、図8に示すように、メインインク滴50の後に吐出されて画像の形成に供されないサテライトインク滴51、すなわち、プリンタ1内を浮遊するインクミスト51´を、静電気によって吸着させて第2の撥液被膜領域37上に回収することができる。また、第1の撥液被膜領域36を導電性被膜層で構成すると、ヘッドカバー19等を介して記録紙等の記録媒体2から発生した静電気等をノズルプレート17から速やかに除電することができるので、静電気がノズルプレート17を通じて伝達することによる駆動回路等の静電破壊や、この静電気がノイズとして駆動信号に重畳することによる誤作動等の不具合を防止することができる。
【0038】
次に、本実施形態における、第2の撥液被膜領域37に静電気を溜める方法を簡単に説明する。この第2の撥液被膜領域37の帯電方法としては、例えば、上述したワイピング時のワイパーブレード15´とノズルプレート17の表面との摺動の摩擦によって帯電させることができる。この場合、導電性被膜層からなる第1の撥液被膜領域36は、ヘッドカバー19等を介して接地電位に調整しているため、帯電することなく、静電気による不具合は発生しないようになっている。したがって、絶縁性膜層からなる第2の撥液被膜領域37のみに帯電させることができる。このようにすると、第2の撥液被膜領域37上に回収して貯留されたインク(インクミスト51´)をワイピングによって除去できるだけでなく、インクミスト51´の回収によって第2の撥液被膜領域37の電荷が中和されて吸着力が減衰した時も、再び帯電させて静電気による吸着力を回復することができる。したがって、新たに帯電機構やインク除去機構を追加することなく簡単な構造で、ノズルプレート17の表面上にインクミスト51´を常時回収し除去することができる。
【0039】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、導電性被膜層をノズルプレート17の表面全体に形成した後に、マスキングにより、第2の撥液被膜領域37となる絶縁性被膜層を導電性被膜層の表面上に部分的に積層する例を示したが、撥液被膜層35の形成する方法はこれに限られない。本実施形態では、予めマスキングによって第1の撥液被膜領域36となる領域と、第2の撥液被膜領域37となる領域とを区分して、ノズルプレート17の表面上にこれらの領域を別個に形成することを特徴とする。
【0040】
本実施形態では、ノズルプレート17の表面に、第1の撥液被膜領域36となる領域を残して他の領域を紫外線硬化樹脂等のマスキング材を用いてマスキングする(図示せず)。この状態で、上記実施形態同様に、マスキングされていない領域に、導電性被膜層として、例えば、共析めっき層を形成する。この導電性被膜層が形成された後に、マスキング材を溶剤等で除去することにより、第1の撥液被膜領域36が形成される。
【0041】
次に、第1の撥液被膜領域36上に、マスキング材を施してマスキングをする(図示せず)。そして、ノズルプレート17の表面のマスキングがされていない領域、すなわち、第1の撥液被膜領域36から外れた領域に絶縁性被膜層を形成する。上記実施形態と同様に、共析めっきに比べて、薄く、耐摩擦性・撥液性の高い絶縁性被膜層をノズルプレート17の表面に形成する。次に、ノズルプレート17の表面上のマスキング材を溶剤等で除去すると、図6に示すように、ノズルプレート17の表面に第1の撥液被膜領域36と、第2の撥液被膜領域37とに区分された撥液被膜層35が形成される。なお、本実施形態の撥液被膜層35の形成方法では、導電性被膜として用いた層の厚い共析めっきと、絶縁性被膜として用いた下地膜と上記金属アルコキシドが重合した分子膜からなる被膜では、層の厚さが異なるため、図9に示すように、ノズル開口16´の周囲においてこれらの層の境目に段差が生じる。
【0042】
ところで、通常この種のプリンタでは、ワイパーブレード15´をその先端部が記録ヘッド3のノズルプレート17の表面の移動方向、すなわち、図6におけるX方向と交差する方向に位置付けて設け、記録ヘッド3の通過に伴ってワイパーブレード15´の先端部がノズルプレート17の表面をX方向に摺動してワイピングを行っているのが一般的である。しかし、ワイピングはノズルプレート17の表面に付着したインクを除去することができれば、X方向で行うことに限定されない。例えば、ワイパーブレード15´を記録ヘッド3のノズルプレート17の表面の移動方向と平行になるように設けて、ワイピング機構15自体をそのノズルプレート17の表面の移動方向と交差する方向、すなわち、Y方向に摺動させてワイピングを行うことも可能である。この場合、図6に示すように、本実施形態における第1の撥液被膜領域36と第2の撥液被膜領域37とがY方向に平行に区分されているので、第2の撥液被膜領域37の連続する方向(ノズル列16方向)にワイピングすることができる。これにより、窪んだ第2の撥液被膜領域37に保持されたインクを容易に除去できる。また、ワイパーブレード15´が第2の撥液被膜領域37を経て第1の撥液被膜領域36上を通過することがないので、ワイピング時に第2の撥液被膜領域37に保持されたインクが第1の撥液被膜領域36に渡る虞がない。これにより、第1の撥液被膜領域36、すなわち、吐出不具合発生領域Sにインクが付着する虞がなくなるので、吐出不具合をより一層防止することができる。さらに、第2の撥液被膜領域37に保持されたインクが第1の撥液被膜領域36に渡る虞がなくなることで、第1の撥液被膜領域36のノズル列16と直交した方向(図6におけるX方向)の幅を吐出不具合領域Sの直径(2×r)とほぼ同じになるように最少の幅で形成することができるので、第2の撥液被膜領域37の幅を最大限に拡大することができる。これにより、プリンタ1内を浮遊するインクミスト51´をより効率的に回収することができるので、インクミスト51´の付着による不具合をより防止することができる。
【0043】
次に、第2の実施形態について、説明する。図10は、第2の実施形態の第1の撥液被膜領域36と第2の撥液被膜領域37とで区分された撥液被膜層35におけるノズル開口16´の周囲の拡大図である。
【0044】
第1の撥液被膜領域36に関し、上記実施形態では、吐出不具合発生領域Sより外側に大きく、且つ、ノズル列16ごと内包する領域としている例を示したが、これには限られない。例えば、図10(a)に示すように、吐出不具合発生領域Sより外側に一回り大きい領域であって、ノズル開口16´を単体で内包する領域を第1の撥液被膜領域36とすることも可能である。また、同図(b)に示すように、吐出不具合発生領域Sより外側に大きい略正方形領域であって、ノズル開口16´を単体で内包する領域を第1の撥液被膜領域36とすることも可能である。要するに、第1の撥液被膜領域36は、吐出不具合発生領域Sより外側に大きな領域であればどのような形状でもよい。そして、この第1の撥液被膜領域36の作用効果は、上記実施形態と同様のものが期待できる。なお、上記絶縁性被膜層により、ノズルプレート17の表面とヘッドカバー19との導通ができない場合は、絶縁性被膜層のないノズルプレート17の側面でヘッドカバー19と当接(導通)させることもできるし、ヘッドカバー19が当接する部分のノズルプレート17の表面に第1の撥液被膜層領域と同様に導電性被膜層の領域を設けることで導通させることも可能であるし、若しくは、ヘッドカバー19自体に突起を設けて、ヘッドカバー19を取り付ける際に突起を絶縁性被膜層に貫通させて導通させることも可能である。したがって、このように第1の撥液被膜領域36と第2の撥液被膜領域とを区分しても、第1の撥液被膜領域36において、上記の実施形態同様の作用効果が期待できる。
【0045】
また、上記第1、2の実施形態では、紫外線硬化樹脂等を用いたマスキングによって、第1、2の撥液被膜領域を区分して撥液被膜層35を形成する方法を例示したが、これには限られない。例えば、第1の実施形態のように、まず、ノズルプレート17の表面全体に導電性被膜層を形成し、さらに、この層の表面全体に絶縁性被膜層を形成した後に、レーザー等による剥離、若しくは研磨加工を用いて、第1の撥液被膜領域36とする領域上の絶縁性被膜層を除去することで、上記実施形態同様の撥液被膜層35を形成することも可能である。また、これらレーザー等による剥離、若しくは研磨加工と上記実施形態で例示したマスキングを組み合わせて、上記実施形態同様の撥液被膜層35を形成することも可能である。要するに、ノズルプレート17の表面上の撥液被膜層35が、ノズル開口16´を内包する領域に形成された第1の撥液被膜領域36と、この第1の撥液被膜領域36から外れた領域に形成された第2の撥液被膜領域37と区分して構成し、この第2の撥液被膜領域37が、絶縁性被膜層からなるように形成できれば、どのような製法を採ってもよい。
【0046】
ところで、上記実施形態における記録ヘッド3から吐出されるインク滴に関し、電極棒を用いたインク滴の吐出実験結果より、このインク滴が吐出時に分離してできたメインインク滴50とサテライトインク滴51とでは、互いに反対の極性の電荷に帯電することがわかった。このメカニズムの詳細は不明であるが、メインインク滴50とサテライトインク滴51が分離する際に反対の極性の電荷を帯び、さらに、メインインク滴50が必ず一方の極性の電荷を帯び、サテライトインク滴51はもう一方の極性の電荷を帯びることになり、メインインク滴50とサテライトインク滴51が同時に同じ極性の電荷を帯びることはないと考えられる。また、いずれのメインインク滴50とサテライトインク滴51であっても、メインインク滴50がプラスならサテライトインク滴51はマイナスとなり、メインインク滴50とサテライトインク滴51が場合によってプラスとマイナスが反対になって帯電されることはない。そこで、このメインインク滴50の後に吐出されて画像の形成に供されないサテライトインク滴51(インクミスト51´)が、第2の撥液被膜領域37上に吸着され易いようにした。具体的には、第2の撥液被膜領域37は、サテライトインク滴50が帯電する電荷と反対の極性の電荷に帯電させている。以下、詳しく説明する。
【0047】
記録ヘッド3から吐出されるインク滴は、上述したようにメインインク滴50とこのメインインク滴50から分離して、結果的にメインインク滴50の後に吐出されるサテライトインク滴51とで構成されている。このサテライトインク滴51が記録媒体2に着弾しない場合、すなわち、画像形成に供されない場合は、空気中を浮遊してインクミスト51´となることが知られている。ここで、インク滴の吐出される軌道のすぐ近くに、例えば、正電極を配置してメインインク滴50とサテライトインク滴51の軌道の変化を調べる実験を行ったところ(図示せず)、メインインク滴50は正電極に引き寄せられるように軌道が変化し、サテライトインク滴51は正電極から遠ざかるように軌道が変化した。すなわち、メインインク滴50は、マイナスに帯電し、サテライトインク滴51はプラスに帯電することがわかった。
【0048】
そこで、第2の撥液被膜領域37をサテライトインク滴51が帯電する電荷と反対の極性の電荷、すなわち、マイナスに帯電させることで、サテライトインク滴51を第2の撥液被膜領域37上に吸着させ易くしている。具体的には、上述したワイピングにより、ワイパーブレード15´のゴム材と第2の撥液被膜領域37の絶縁性被膜との摩擦電気により、第2の撥液被膜領域37をマイナスの電荷に帯電させている。これは、帯電系列により決まり、例えば、2つの物体の摩擦により電子が移動することにより、電子が奪われてプラスの電荷の割合が多くなった側の物体がプラスに帯電し、電子を奪ってマイナスの電荷の割合が多くなった側の物体がマイナスに帯電することを利用することで可能である。また、帯電系列により、組み合わせる2つの基材も適宜設定することができる。本実施形態の場合、ワイパーブレード15´のゴム材と下地膜と、フッ素を含む長鎖高分子基を有する金属アルコキシドが重合した分子膜を上記下地膜の表面に形成した撥液膜とで構成した絶縁性被膜層とを選定することで、ゴム材がプラスに帯電し、上記の絶縁性被膜層がマイナスに帯電することが実験的にわかった。このことから、ワイピングによりワイパーブレード15´をプラスに帯電させて、第2の撥液被領域37をサテライトインク滴51の帯電する電荷と反対の極性の電荷、すなわち、マイナスに帯電させることができる。
【0049】
このように、第2の撥液被膜領域37を、サテライトインク滴51が帯電する電荷と反対の極性の電荷に帯電させると、画像形成に供されないサテライトインク滴51、すなわち、インクミスト51´を優先的に第2の撥液被膜領域37上に吸着させることができる。そして、サテライトインク滴51と第2の撥液被膜領域37が互いに電気的に引き合うため、第2の撥液被膜領域37に大きな電荷を帯電させなくても、インクミスト51´を吸着力することができる。これより、第2の撥液被膜領域37が少ない電荷の帯電でも、効率よくインクミスト51´を回収できる。
【0050】
また、上記実施形態では、サテライトインク滴51がプラスに帯電した場合の例を示したが、本発明は、これに限定されない。例えば、具体的にはどのような状態、条件でサテライトインク滴51がマイナスに帯電するかは不明であるが、サテライトインク滴51がマイナスに帯電する場合も、同様に実施することが可能である。すなわち、電極を用いたインク滴吐出実験により、メインインク滴50、サテライトインク滴51の帯電する電荷の極性を調べて、第2の撥液被膜領域37の絶縁性被膜をサテライトインク滴51が帯電する電荷と反対の極性の電荷に帯電するように、ワイパーブレード15´の素材と絶縁性被膜層の成分等の組合せを設定すればよい。また、この組合せの設定は、通常の帯電系列の実験により適宜設定することが可能である。
【0051】
なお、本発明は、ノズル形成基板を備えているものであれば、例示したプリンタには限らず、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等、他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】プリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッドの構成を斜め上方から観た分解斜視図である。
【図3】記録ヘッドの構成を斜め下方から観た分解斜視図である。
【図4】ヘッドカバーの構成を説明する斜視図である。
【図5】ヘッドカバーがヘッドケースに取り付けられた状態の記録ヘッドを示す図である。
【図6】(a)はノズルプレート平面図、(b)は(a)における領域Pの拡大図である。
【図7】第1の実施形態における図6(b)のA−A線断面図である。
【図8】インク滴吐出時のメインインク滴とサテライトインク滴の動きを説明する模式図である。
【図9】第1の実施形態の変形例における図6(b)のA−A線断面図である。
【図10】(a)及び(b)は第2の実施形態におけるノズル開口周囲の拡大図である。
【符号の説明】
【0053】
1…プリンタ,2…記録媒体,3…記録ヘッド,4…キャリッジ,5…キャリッジ移動機構,6…プラテンローラ,7…インクカートリッジ,8…タイミングベルト,9…パルスモータ,10…ガイドロッド,11…インク供給針,12…供給針ユニット,13…アクチュエータユニット,14…流路ユニット,15…ワイピング機構,16…ノズル列,16´…ノズル開口,17…ノズルプレート,18…ヘッドケース,19…ヘッドカバー,20…配線基板,21…ベース部,22…ケース部,23…基板配設部,24…フレキシブルケーブル,25…コネクタ,26…ヘッドユニット,30…インク供給口,31…コンプライアンス部,32…供給口プレート,33…リザーバ,34…リザーバプレート,35…撥液被膜層,36…第1の撥液被膜領域,37…第2の撥液被膜領域,40…フレーム部,43…露出窓部,44…側壁部,45…止着部,46…止着ピン,47…止着孔,50…メインインク滴,51…サテライトインク滴,51´…インクミスト




 

 


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