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発明の名称 印刷装置および印刷方法並びに記録媒体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−8171(P2007−8171A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2006−281711(P2006−281711)
出願日 平成18年10月16日(2006.10.16)
代理人 【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
発明者 角谷 繁明
要約 課題
濃度および径の異なるドットを形成可能な印刷装置において、インクデューティ制限を考慮したドットの使い分けがなされていなかった。

解決手段
プリンタにおいて、少なくとも一色については、濃淡2種類のインクを備え、かつ大小それぞれのドット径でドットを形成可能なヘッドを備える。入力された画像データに基づいて、インクデューティ制限が守られるように、各色について吐出すべき単位面積あたりのインク量を、互いに相関を持ったテーブルにより設定する。次に、各色ごとに、実際に吐出されるインク量が設定されるインク量に近づくように、ドット径の異なる各ドットの発生のしかたを決定する。こうすることにより、インクデューティ制限を守りつつ、濃度およびドット径の異なるドットの使い分けを適切に行うことが可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
画像を構成する各画素ごとに、画像データを入力する入力手段と、
少なくとも一の色相について濃度の異なる2種類以上のインクを備え、かつそれぞれのインクについてインク量の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
前記濃度の異なるインクについて、前記画像データに基づいて各画素ごとにドットの形成に供するインク量の期待値を設定するインク量期待値設定手段と、
前記濃度の異なるインクについて、前記設定されたインク量の期待値に基づいて、前記2種類以上のドットのうちいずれのドットを形成すべきかをドットの非形成も含めて選択して多値化を行う多値化手段と、
該選択されたドットを形成するドット形成手段とを備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記画像データは、色空間における少なくとも一の色成分についての階調値を含むデータであり、
前記インク量期待値設定手段は、
前記インク量の期待値を、前記色空間における複数の色成分の階調値の組み合わせに対応したテーブルとして記憶する期待値記憶手段と、
入力された画像データに基づいて前記期待値記憶手段に記憶されたテーブルを参照することにより、各画素ごとのインク量の期待値を設定する手段とを備える印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置であって、
前記期待値記憶手段に記憶されるテーブルは、前記インク量の期待値を設定すべき各インクの期待値として、色相が同一であるか否かに関わらずその他の色のインク量の期待値に関連しつつ定められた値を、前記色空間における複数の色成分の階調値の組み合わせに対応して記憶するテーブルである印刷装置。
【請求項4】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記多値化手段は、ディザ法である印刷装置。
【請求項5】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記多値化手段は、誤差拡散法である印刷装置。
【請求項6】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記多値化手段は、
前記インク量期待値決定手段により決定されたインク量の期待値に基づいて、前記ヘッドが形成可能なドットの種類ごとのインク量の期待値たる種類別期待値を設定する種類別期待値設定手段と、
前記ドットの種類ごとに、該設定された種類別期待値に基づいてドットの形成の有無を判断する手段とを有する多値化手段である印刷装置。
【請求項7】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記ヘッドにより同一の色相について形成される2種類以上のドットには、少なくとも一の記録密度でドットを形成した場合に単位面積当たりの平均濃度が略同一になるドットが2種類以上含まれる印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7いずれか記載の印刷装置であって、
前記インク量期待値設定手段は、色相が同一であるか否かに関わらず単位面積当たりのドットの形成に供されるインク量の合計が、印刷媒体に応じて定まる所定量を超えない範囲で前記インク量の期待値を設定する手段である印刷装置。
【請求項9】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記ヘッドは、インク通路に設けられた電歪素子への電圧の印加によりインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた印刷装置。
【請求項10】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記ヘッドは、インク通路に設けられた発熱体への通電により発生する気泡により該インク通路のインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた印刷装置。
【請求項11】
少なくとも一の色相について濃度の異なる2種類以上のインクを備え、かつそれぞれのインクについてインク量の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドを用いて、印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷する印刷方法であって、
画像を構成する各画素ごとに、画像データを入力し、
前記濃度の異なるインクについて、前記画像データに基づいて各画素ごとにドットの形成に供するインク量の期待値を設定し、
少なくとも前記濃度の異なるインクについて、前記設定されたインク量の期待値に基づいて、前記2種類以上のドットのうちいずれのドットを形成すべきかをドットの非形成も含めて選択して多値化を行い、
該選択されたドットを形成する印刷方法。
【請求項12】
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するためのプログラムをコンピュータにより読みとり可能に記録した記録媒体であって、
少なくとも一の色相について用意された濃度の異なるインクについて、画像データに基づいて各画素ごとにドットの形成に供するインク量の期待値を設定する機能と、
前記濃度の異なるインクについて、前記設定されたインク量の期待値に基づいて、前記2種類以上のドットのうちいずれのドットを形成すべきかをドットの非形成も含めて選択して多値化を行う機能と、
該選択されたドットを形成する機能とをコンピュータにより実現するためのプログラムを記録した記録媒体。
【請求項13】
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するために使用されるデータをコンピュータにより読みとり可能に記録した記録媒体であって、
少なくとも一の色相について用意された濃度の異なるインクについて、色相が同一であるか否かに関わらず単位面積当たりのドットの形成に供されるインク量の合計が、印刷媒体に応じて定まる所定量を超えない範囲で定められた、各画素ごとのドットの形成に供されるインク量の期待値に関するデータを、色空間における複数の色成分についての階調値の組み合わせに対応して記録した記憶媒体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一の色相について濃度の異なるインクを備え、かつそれぞれのインクについてインク量の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドを備え、該ヘッドから吐出するインクにより多階調の画像を印刷可能な印刷装置および印刷方法並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの出力装置として、数色のインクをヘッドから吐出するタイプのカラープリンタが広く普及し、コンピュータ等が処理した画像を多色多階調で印刷するのに広く用いられている。かかる印刷装置については、画像濃度の低い領域、いわゆるハイライト部における印刷品位の更なる向上を目的とし、濃淡インクを用いた印刷装置および印刷方法が提案されている(例えば、特願平8−209232)。これは、同一色について濃度の高いインクと低いインクを用意し、両インクの吐出を制御することにより、階調表現に優れた印刷を実現しようとするものである。
【0003】
また、多階調を表現するための他の手段として、インク濃度とインク量の異なる2種類のドットを形成することにより、単位面積当たりの濃度を多段階に変化させて印刷可能な印刷装置も提案されている(例えば、特開昭59−201864)。これは、1画素を4ドットで構成し、濃度の高いドットと低いドットの画素中における出現頻度を変化させることにより、多段階の濃度での画像の印刷を可能とするものである。
【0004】
一方、インクを吐出してドットを形成するプリンタにおいては、単位面積当たりのインク量、即ちインクデューティが印刷用紙に応じた所定の値を超えないように制御される。かかる値を超えてインクが吐出されると、用紙が破れやすくなる他、にじみ等が生じ、印刷された画像の画質を損ねることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、インク濃度とインク量の異なる二種類のドットを形成可能な印刷装置においては、インクデューティ対しては何の配慮もされていなかった。そもそも、かかる印刷装置においては、入力された画素の階調に応じて予め定められたパターンで両者を形成するに過ぎず、インクデューティの制限にどのように対応するかという点は検討されていなかった。また、インクデューティのみならず、濃度の異なるインクをいかにバランスよく使うかという課題への対応等、総じてドットの形成に供するインク量を制御するという点について何ら検討がなされていなかった。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであり、印刷装置において、例えばインクデューティの制限が存在する場合などドットの形成に供するインク量の制御が必要となる場合に、インク濃度およびインク量の異なる二種類以上のドットを有効に活用するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では以下の手段を採用した。
本発明の印刷装置は、
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
画像を構成する各画素ごとに、画像データを入力する入力手段と、
少なくとも一の色相について濃度の異なる2種類以上のインクを備え、かつそれぞれのインクについてインク量の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
前記濃度の異なるインクについて、前記画像データに基づいて各画素ごとにドットの形成に供するインク量の期待値を設定するインク量期待値設定手段と、
前記濃度の異なるインクについて、前記設定されたインク量の期待値に基づいて、前記2種類以上のドットのうちいずれのドットを形成すべきかをドットの非形成も含めて選択して多値化を行う多値化手段と、
該選択されたドットを形成するドット形成手段とを備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の印刷方法は、
少なくとも一の色相について濃度の異なる2種類以上のインクを備え、かつそれぞれのインクについてインク量の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドを用いて、印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷する印刷方法であって、
画像を構成する各画素ごとに、画像データを入力し、
前記濃度の異なるインクについて、前記画像データに基づいて各画素ごとにドットの形成に供するインク量の期待値を設定し、
少なくとも前記濃度の異なるインクについて、前記設定されたインク量の期待値に基づいて、前記2種類以上のドットのうちいずれのドットを形成すべきかをドットの非形成も含めて選択して多値化を行い、
該選択されたドットを形成することを要旨とする。
【0009】
かかる印刷装置および印刷方法では、少なくとも一の色相について備えられた濃度の異なる2種類以上のインクについて、まず各画素ごとにドットの形成に供するインク量の期待値を設定した上で、形成すべきドットの種類を選択する。かかる手段を採ることにより、ドットの形成に供されるインク量を適切に制御することができる。
【0010】
ここで、インク量の期待値とは、画像データの階調値を表現するために各画素に吐出等される理想的なインク量を意味する。上記発明の印刷装置のヘッドがドットの形成に供することができるインク量は現実には予め定められた数種類に限られているが、インク量の期待値はこのような数種類には限定されず所定の範囲内の連続的な値を取りうる。一般に期待値とは確率を示す用語として用いられるが、本明細書ではこのような意味はなく、各画素に吐出されることが期待される値という意味での用語として用いる。
【0011】
なお、インク量の期待値としては、画像データの階調値を表現するために必要となる厳密なインク量を用いる必要はなく、実際にインクを吐出等するドット形成手段の特性その他の要因を考慮して定めることができる。階調値を表現するために必要となる厳密なインク量に対してインク量の期待値を多く設定してもよいし、少なく設定しても構わない。当然、ある階調値についてはインク量の期待値を多く設定し、別の階調値では少なく設定するものとしても構わない。
【0012】
上記印刷装置において、
前記画像データは、色空間における少なくとも一の色成分についての階調値を含むデータであり、
前記インク量期待値設定手段は、
前記インク量の期待値を、前記色空間における複数の色成分の階調値の組み合わせに対応したテーブルとして記憶する期待値記憶手段と、
入力された画像データに基づいて前記期待値記憶手段に記憶されたテーブルを参照することにより、各画素ごとのインク量の期待値を設定する手段とを備えるものとすることができる。
【0013】
各画素ごとに吐出するインク量の期待値は、色空間における複数の色成分の階調値の組み合わせに応じて定めることができる。上記手段によれば、こうして定められたテーブルに基づいて各画素ごとにインク量の期待値を設定することができる。
【0014】
また、上記印刷装置において、
前記期待値記憶手段に記憶されるテーブルは、前記インク量の期待値を設定すべき各インクの期待値として、色相が同一であるか否かに関わらずその他の色のインク量の期待値に関連しつつ定められた値を、前記色空間における複数の色成分の階調値の組み合わせに対応して記憶するテーブルとすることが望ましい。
【0015】
期待値記憶手段に記憶されるテーブルにおいて、各色のインク量の期待値を、その他の色のインク量の期待値に関連しつつ定めることにより、全体のインク量の制御を行いつつ、画質の向上等を図ることができる。例えば、単位面積辺りに吐出されるインク量に上限値がある場合を考える。上記印刷装置がシアンについて濃淡2種類のインクを用いてある所定の濃度を印刷する場合において、その他の色相のインク量の期待値が小さいときは、前記上限値に対して余裕があるから、シアンについてドットが比較的目立ちにくい淡インクを多量に用いるように設定することができる。一方、その他の色相のインク量が大きいときは、前記所定量に対して余裕がないから、シアンについて濃度の高い濃インクを比較的少量用いるように設定することができる。
【0016】
上記印刷装置において多値化手段としては、種々の方法を採ることができ、
ディザ法としてもよいし、誤差拡散法としてもよい。
【0017】
印刷装置により形成し得るドットの種類が限られている場合は、先に設定されたインク量の期待値と、実際にドットの形成に供されたインク量とが必ずしも一致するとは限らないため、各画素ごとにインク量には誤差が生じることになる。上記各手段を備える印刷装置によれば、画素ごとには誤差が生じていても画像全体としては、かかる誤差が小さくなるような多値化を行うことができる。さらに、上記ディザ法によれば多値化を高速で実行することができ、誤差拡散法によれば誤差を適切に抑制して良好な画質を得ることができる。
【0018】
また、前記多値化手段は、
前記インク量期待値決定手段により決定されたインク量の期待値に基づいて、前記ヘッドが形成可能なドットの種類ごとのインク量の期待値たる種類別期待値を設定する種類別期待値設定手段と、
前記ドットの種類ごとに、該設定された種類別期待値に基づいてドットの形成の有無を判断する手段とを有する多値化手段としてもよい。
【0019】
かかる手段では、各ドットの種類ごとにインク量の期待値を設定した上で、画像全体では誤差がなくなるように、ドットの種類ごとに発生を制御していくため、各種類のドットが、それぞれ画像内で比較的均質に分布する。一般に、インク量の多いドット程目立ちやすいため、かかるドットが局所的に固まって形成された場合には画質を大きく損ねることになる。上記手段によればインク量の多いドットも均質に分布するため、ドットが目立たない良好な画質を得ることができる。
【0020】
前記印刷装置においては、
前記ヘッドにより同一の色相について形成される2種類以上のドットには、少なくとも一の記録密度でドットを形成した場合に単位面積当たりの平均濃度が略同一になるドットが2種類以上含まれることが望ましい。
【0021】
単位面積当たりの平均濃度が略同一になるドットが2種類以上存在する場合、それらのドットを用いて画像を記録する濃度においては、いずれのドットを用いることもできるという自由度が生じる。この結果、インク量の制御を行いつつ、画質の向上その他種々の条件に従う両者の使い分けを適切に行うことができる。なお、一般に単位面積当たりの平均濃度とドットの記録密度との関係はドットの種類に応じて異なる。本発明において上述した効果を得るためには、2種類以上のドットをそれぞれ同じ密度で形成して比較した場合に平均濃度が略同一となるような密度が少なくとも一つ存在すればよい。
【0022】
以上で説明したそれぞれの印刷装置において、
前記インク量期待値設定手段は、色相が同一であるか否かに関わらず単位面積当たりのドットの形成に供されるインク量の合計が、印刷媒体に応じて定まる所定量を超えない範囲で前記インク量の期待値を設定する手段であるものとすることができる。
【0023】
@かかる印刷装置によれば、単位面積当たりに供されるインク量の合計が、印刷媒体に応じて定まる所定量を超えないように制御することができる。一般に印刷媒体が吸収可能なインク量には上限があり、かかる上限を超えるインク量で印刷が行われると、印刷媒体が破れやすくなる他、にじみが生じるなどして画質を損ねることにもなる。上記印刷装置では、かかる上限を超えないようにインク量を制御することができるため、こうした種々の問題を回避することができる。
【0024】
なお、印刷媒体に応じて定まる所定量とは、印刷媒体のにじみ特性、インクの乾燥時間、印刷された画像の画質、インクの吸収による印刷媒体の変形等の種々の要素を総合的に判断した上で好ましい値として設定されるインク量である。当然、こうした所定量は印刷媒体によって一義的に定まるものではなく、印刷速度や印刷に用いられるインクの色等によっても異なる値となる。こうした上限を考慮することにより、インク量の期待値は、インク量について何らの制限もない場合に良好な画質を得るという観点から設定されるべき理想的な値とは異なった値に設定される。かかる観点から所定量を考慮してインク量の期待値を設定した一態様として、例えば、印刷媒体がいわゆる普通紙である場合と高画質の印刷を目的として製造されたインクの浸透量の少ない専用紙とで、同じ階調値の画像に対応するインク量の期待値を変化させる場合が挙げられる。
【0025】
また、上記所定量は単位面積当たりに供されるインク量の合計であり、局所的にはかかる所定量を超えることがあって構わない。例えば、ある特定の画素についてはかかる所定量を超えるものであっても、その周辺で吐出されるインク量が少なく、全体として前記所定量を超えないようにインク量の期待値が定められるものであればよい。
【0026】
上記印刷装置において、濃度の異なるインクまたはインク量の異なるインクを形成可能なヘッドとしては、インク通路に設けられた電歪素子への電圧の印加によりインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構が考えられる。また、インク通路に設けられた発熱体への通電により発生する気泡により該インク通路のインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構によって、濃度の異なるインクによりドットを形成することや、インク量の異なるドットを形成することも可能である。これらの構成に拠れば、インク粒子を微細にし、かつそのインク量を適切に制御することが容易であり、更に多数の吐出ノズルをヘッド上に用意することも容易である。多数のノズルを設ける場合には、インク粒子の吐出用ノズルは、各色および各濃度のインク毎に、印刷される用紙の搬送方向に沿って複数個配列することができる。複数個のノズルを用意することにより、印刷速度の向上に資することができる。
【0027】
以上で説明した本発明の印刷装置は、その一部の機能をコンピュータにより実現させることによっても構成することができるため、本発明は、かかるプログラムを記録した記録媒体としての態様を採ることもできる。
【0028】
本発明の第1の記録媒体は、
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するためのプログラムをコンピュータにより読みとり可能に記録した記録媒体であって、
少なくとも一の色相について用意された濃度の異なるインクについて、画像データに基づいて各画素ごとにドットの形成に供するインク量の期待値を設定する機能と、
前記濃度の異なるインクについて、前記設定されたインク量の期待値に基づいて、前記2種類以上のドットのうちいずれのドットを形成すべきかをドットの非形成も含めて選択して多値化を行う機能と、
該選択されたドットを形成する機能とをコンピュータにより実現するためのプログラムを記録した記録媒体である。
【0029】
本発明の第2の記録媒体は、
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するために使用されるデータをコンピュータにより読みとり可能に記録した記録媒体であって、
少なくとも一の色相について用意された濃度の異なるインクについて、色相が同一であるか否かに関わらず単位面積当たりのドットの形成に供されるインク量の合計が、印刷媒体に応じて定まる所定量を超えない範囲で定められた、各画素ごとのドットの形成に供されるインク量の期待値に関するデータを、色空間における複数の色成分についての階調値の組み合わせに対応して記録した記憶媒体である。
【0030】
第1の記録媒体に記録されたプログラムが、前記コンピュータに実行されることにより、先に説明した本発明の印刷装置を実現することができる。また、かかるプログラムが別途用意されたものである場合には、該コンピュータが第2の記録媒体に記録されたデータを用いることにより本発明の印刷装置を実現することができる。
【0031】
なお、記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。また、コンピュータに上記の発明の各工程または各手段の機能を実現させるコンピュータプログラムを通信経路を介して供給するプログラム供給装置としての態様も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
(1)装置の構成
図2に本発明のプリンタ22の概略構造を示し、図1に本発明のプリンタ22を用いたシステム例としてのカラー画像処理システムの構成を示す。プリンタ22の機能を明確にするため、まず、図1によりカラー画像処理システムの概要を説明する。このカラー画像処理システムは、スキャナ12と、パーソナルコンピュータ90と、カラープリンタ22とを有している。パーソナルコンピュータ90は、カラーディスプレイ21とキーボード、マウス等からなる入力部92を備えている。スキャナ12は、カラー原稿からカラー画像データを読み取り、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分からなる原カラー画像データORGをコンピュータ90に供給する。
【0033】
コンピュータ90の内部には、図示しないCPU,RAM,ROM等が備えられており、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からはこれらのドライバを介して、最終カラー画像データFNLが出力されることになる。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム95は、スキャナ12から画像を読み込み、これに対して所定の処理を行いつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ21に画像を表示している。このアプリケーションプログラム95が、印刷命令を発行すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像情報をアプリケーションプログラム95から受け取り、これをプリンタ22が印字可能な信号FNL(ここではシアン、ライトシアン、マゼンダ、ライトマゼンダ、イエロー、ブラックの6色についての2値化された信号)に変換している。図1に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、アプリケーションプログラム95が扱っているカラー画像データをドット単位(以下、画素という)の画像データに変換するラスタライザ97と、ドット単位の画像データに対してプリンタ22が使用するインク色および発色の特性等を考慮してに各色ごとのインク吐出量の期待を設定するインク量期待値設定モジュール98と、インク量期待値設定モジュール98が参照する期待値テーブルCTと、設定されたインク量の期待値に基づいて各画素ごとのドットの形成の有無によってある面積での濃度を表現するいわゆるハーフトーンの画像情報を生成するハーフトーンモジュール99とが備えられている。プリンタ22は、印字可能な上記信号FNLを受け取り、記録用紙に画像情報を記録する。
【0034】
次に、図2によりプリンタ22の概略構成を説明する。図示するように、このプリンタ22は、紙送りモータ23によって用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ31に搭載された印字ヘッド28を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御する機構と、これらの紙送りモータ23,キャリッジモータ24,印字ヘッド28および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とから構成されている。
【0035】
このプリンタ22のキャリッジ31には、黒インク(Bk)用のカートリッジ71とシアン(C1),ライトシアン(C2)、マゼンタ(M1),ライトマゼンダ(M2)、イエロ(Y)の6色のインクを収納したカラーインク用カートリッジ72が搭載可能である。シアンおよびマゼンダの2色については、濃淡2種類のインクを備えていることになる。これらのインクの濃度等については後述する。キャリッジ31の下部の印字ヘッド28には計6個のインク吐出用ヘッド61ないし66が形成されており、キャリッジ31の底部には、この各色用ヘッドにインクタンクからのインクを導く導入管67(図3参照)が立設されている。キャリッジ31に黒(Bk)インク用のカートリッジ71およびカラーインク用カートリッジ72を上方から装着すると、各カートリッジに設けられた接続孔に導入管67が挿入され、各インクカートリッジから吐出用ヘッド61ないし66へのインクの供給が可能となる。
【0036】
インクが吐出される機構を簡単に説明する。図3はインク吐出用ヘッド28の内部の概略構成を示す説明図である。インク用カートリッジ71,72がキャリッジ31に装着されると、図3に示すように毛細管現象を利用してインク用カートリッジ内のインクが導入管67を介して吸い出され、キャリッジ31下部に設けられた印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし66に導かれる。なお、初めてインクカートリッジが装着されたときには、専用のポンプによりインクを各色のヘッド61ないし66に吸引する動作が行われるが、本実施例では吸引のためのポンプ、吸引時に印字ヘッド28を覆うキャップ等の構成については図示および説明を省略する。
【0037】
各色のヘッド61ないし66には、後で説明する通り、各色毎に32個のノズルNzが設けられており(図6参照)、各ノズル毎に電歪素子の一つであって応答性に優れたピエゾ素子PEが配置されている。ピエゾ素子PEとノズルNzとの構造を詳細に示したのが、図4である。図示するように、ピエゾ素子PEは、ノズルNzまでインクを導くインク通路68に接する位置に設置されている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う素子である。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、図4下段に示すように、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路68の一側壁を変形させる。この結果、インク通路68の体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルNzの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着された用紙Pに染み込むことにより、印刷が行われる。
【0038】
以上説明したハードウェア構成を有するプリンタ22は、紙送りモータ23によりプラテン26その他のローラを回転して用紙Pを搬送しつつ(以下、副走査という)、キャリッジ31をキャリッジモータ24により往復動させ(以下、主走査という)、同時に印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし66のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行い、ドットを形成して用紙P上に多色の画像を形成する。
【0039】
用紙Pを搬送する機構は、紙送りモータ23の回転をプラテン26のみならず、用紙搬送ローラに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ31を往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ31を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ31の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
【0040】
図5および図6は、インク吐出用ヘッド61〜66におけるインクジェットノズルNzの配列を示す説明図である。本実施例のプリンタ22は、各色についてインク量の異なる3種類のドットを形成することができる。ドットが円形に形成されるとすれば、大中小3種類のドット径からなるドットが形成されることになる。以下、この意味で「インク量の異なるドット」と「ドット径の異なるドット」とは同義として用いる。
【0041】
ドット径の異なるドットを形成するためには、例えば図5に示すように、各色ごとに径の異なるノズルを備える方法も考えられるが、本実施例では図6に示す通り、全て同じ径からなるノズルを用い、後述する制御によりドット径の異なるドットを形成している。これらのノズルの配置は、各色ごとにインクを吐出する6組のノズルアレイから成っており、32個のノズルNzが一定のノズルピッチkで千鳥状に配列されている。各ノズルアレイの副走査方向の位置は互いに一致している。なお、各ノズルアレイに含まれる32個のノズルNzは、千鳥状に配列されている必要はなく、一直線上に配置されていてもよい。但し、図6に示すように千鳥状に配列すれば、製造上、ノズルピッチkを小さく設定し易いという利点がある。
【0042】
ここで、一定のノズル径を有するヘッドを用いてドット径の異なる3種類のドットを形成する原理について説明する。図7は、インクが吐出される際のノズルNzの駆動波形と吐出されるインクIpとの関係を示した説明図である。図7において破線で示した駆動波形が通常のドットを吐出する際の波形である。区間d2において一旦、マイナスの電圧をピエゾ素子PEに印加すると、先に図4を用いて説明したのとは逆にインク通路68の断面積を増大する方向にピエゾ素子PEが変形するため、図7の状態Aに示した通り、メニスカスと呼ばれるインク界面Meは、ノズルNzの内側にへこんだ状態となる。一方、図7の実線で示す駆動波形を用い、区間d2に示すようにマイナス電圧を急激に印加すると、状態aで示す通りメニスカスは状態Aに比べて大きく内側にへこんだ状態となる。次に、ピエゾ素子PEへの印加電圧を正にすると(区間d3)、先に図4を用いて説明した原理に基づいてインクが吐出される。このとき、メニスカスがあまり内側にへこんでいない状態(状態A)からは状態Bおよび状態Cに示すごとく大きなインク滴が吐出され、メニスカスが大きく内側にへこんだ状態(状態a)からは状態bおよび状態cに示すごとく小さなインク滴が吐出される。
【0043】
以上に示した通り、駆動電圧を負にする際(区間d1,d2)の変化率に応じて、ドット径を変化させることができる。本実施例では、駆動波形とドット径との間のこのような関係に基づいて、ドット径の小さい小ドットを形成するための駆動波形と、2番目のドット径からなるの中ドットを形成するための駆動波形の2種類を用意している。図8に本実施例において用いている駆動波形を示す。駆動波形W1が小ドットを形成するための波形であり、駆動波形W2が中ドットを形成するための波形である。両者を使い分けることにより、一定のノズル径からなるノズルNzからドット径が小中2種類のドットを形成することができる。
【0044】
また、図8の駆動波形W1,W2の双方を使ってドットを形成することにより、大ドットを形成することができる。この様子を図8の下段に示した。図8下段の図は、ノズルから吐出された小ドットおよび中ドットのインク滴IPs、IPmが吐出されてから用紙Pに至るまでの様子を示している。図8の駆動波形を用いて小中2種類のドットを形成する場合、中ドットの方がピエゾ素子PEの変化量が大きいため、インク滴IPが勢いよく吐出される。このようなインクの飛翔速度差があるため、キャリッジ31が主走査方向に移動しながら、最初に小ドットを吐出し、次に中ドットを吐出した場合、キャリッジ31の走査速度、両ドットの吐出タイミングをキャリッジ31と用紙Pの間の距離に応じて調整すれば、両インク滴を同じタイミングで用紙Pに到達させることができる。本実施例では、このようにして図8の2種類の駆動波形から最もドット径が最も大きい大ドットを形成しているのである。
【0045】
プリンタ22の制御回路40の内部構成を説明するとともに、上述の駆動波形を用いて、図6に示した複数のノズルNzからなるヘッド28を駆動する方法について説明する。図9は制御回路40の内部構成を示す説明図である。図9に示す通り、この制御回路40の内部には、CPU41,PROM42,RAM43の他、コンピュータ90とのデータのやりとりを行うPCインタフェース44と、紙送りモータ23、キャリッジモータ24および操作パネル32などとの信号をやりとりする周辺入出力部(PIO)45と、計時を行うタイマ46と、ヘッド61〜66にドットのオン・オフの信号を出力する転送用バッファ47などが設けられており、これらの素子および回路はバス48で相互に接続されている。また、制御回路40には、所定周波数で駆動波形(図8参照)を出力する発信器51、および発信器51からの出力をヘッド61〜66に所定のタイミングで分配する分配器55も設けられている。制御回路40は、コンピュータ90で処理されたドットデータを受け取り、これを一時的にRAM43に蓄え、所定のタイミングで転送用バッファ47に出力する。従って、多階調の画像を形成するための画像処理は、プリンタ22側では行っていない。制御回路40は、単にドット単位でのオン・オフ、即ちドットを形成するか否かの制御のみを行っているのである。
【0046】
制御回路40がヘッド61〜66に対して信号を出力する形態について説明する。図10は、ヘッド61〜66の1つのノズル列を例にとって、その接続について示す説明図である。図示するように、ヘッド61〜66の一つのノズル列は、転送用バッファ47をソース側とし、分配出力器55をシンク側とする回路に介装されている。ノズル列を構成する各ピエゾ素子PEは、その電極の一方が転送用バッファ47の各出力端子に、他方が一括して分配出力器55の出力端子に、それぞれ接続されている。分配出力器55からは発信器51の駆動波形が出力されているから、CPU41から各ノズル毎にオン・オフを定め、転送用バッファ47の各端子に信号を出力すると、駆動波形に応じて、転送用バッファ47側からオン信号を受け取っていたピエゾ素子PEだけが駆動される。この結果、転送用バッファ47からオン信号を受け取っていたピエゾ素子PEのノズルから一斉にインク粒子Ipが吐出される。
【0047】
駆動波形は、図8に示す通り、小ドット用の波形W1と中ドット用n波形W2とが交互に出力されているから、ある画素について小ドットを形成したい場合には、小ドット用の駆動波形W1に同期させてノズル列にオンの信号を送るとともに、中ドットの駆動波形W2に同期させてノズル列にオフの信号を送ればよい。中ドットを形成する場合には、この逆に駆動波形W1に同期させてノズル列にオフの信号を送るとともに、駆動波形W2に同期させてノズル列にオンの信号を送ればよい。また、大ドットを形成する場合には両駆動波形に同期させてオンの信号を送ればよい。こうすることにより、本実施例のプリンタ22は、各ノズルアレイで一主走査中に大中小それぞれのドット径でドットを形成することができる。
【0048】
もっとも、大中小それぞれのドットを形成するための3種類の駆動波形およびそれぞれの駆動波形を出力する3つの発信器を用意し、形成すべきドット径に応じてこの駆動波形を選択的に使用することにより、各径からなるドットを形成するようにしてもよい。また、ドット径は大中小の3種類に限る必要はなく、駆動波形の種類を増やしてさらに多くのドット径が出力できるようにしてもよいし、上記大中小の3種類のドット径のうち2種類のみを使用するものとしてもよい。
【0049】
図6に示す通り、ヘッド61〜66は、キャリッジ31の搬送方向に沿って配列されているから、それぞれのノズル列が用紙Pに対して同一の位置に至るタイミングはずれている。従って、CPU41は、このヘッド61〜66の各ノズルの位置のずれを勘案した上で、必要なタイミングで各ドットのオン・オフの信号を転送用バッファ47を介して出力し、各色のドットを形成している。また、図6に示した通り、各ヘッド61〜66もノズルが2列に形成されている点も同様に考慮してオン・オフの信号の出力が制御されている。
【0050】
本実施例では、濃度の低い淡インクで形成した大、中、小のドット(以下、それぞれ淡大ドット、淡中ドット、淡小ドットという)と、濃度の高い濃インクで形成した大、中、小のドット(以下、それぞれ濃大ドット、濃中ドット、濃小ドットという)との6段階で濃度が異なるドットを用いている。これに対し、例えば、濃小ドットと淡大ドットとの濃度が略同一になるように設定する者としても構わない。両者の濃度が略同一とは、ある記録密度で両者を記録したときの単位面積当たりの平均濃度が略同一になるということである。このように設定すれば、各画素ごとに表現可能な階調数は減るものの、濃小ドットと淡大ドットの選択の自由度を高めることができる。
【0051】
本実施例では、既に述べた通りピエゾ素子PEを用いてインクを吐出するヘッドを備えたプリンタ22を用いているが、他の方法によりインクを吐出するプリンタを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によりインクを吐出するタイプのプリンタに適用するものとしてもよい。かかるプリンタにおいては、ヒータへの通電時間や通電面積を変化させることによりドット径の異なるドットを形成できるため、本発明を適用することができる。
【0052】
(2)ドット発生処理ルーチン
次に、本発明に係る実施例におけるドット発生処理ルーチンについて説明する。図11に第1実施例によるドット発生処理ルーチンの流れを示す。このルーチンはプリンタドライバ96のハーフトーンモジュール99における処理の一部であり、本実施例においてはコンピュータ90のCPUにより実行されるルーチンである。
【0053】
ドット発生処理ルーチンが実行されると、CPUは画素階調データを入力する(ステップS100)。ここで入力されるデータはカラー画像をドット単位の画像データに変換した上で、RGBからなる画像データである。なお、本実施例では、画素階調データは8ビットで与えられ、各色相について階調値0〜255の範囲をとるものとした。
【0054】
次に、CPUはプリンタ22に備えられる6色のインクについて吐出するインク量の期待値を決定する処理を実行する(ステップS200)。インク量の期待値は、入力された画像データに応じた色が印刷されるように設定される。この際、6色全てのインク量の合計が、印刷用紙の単位面積当たりに吐出可能なインク量(以下、インクデューティとよぶ)を超えないように各色のインク量の期待値が決められる。濃淡2種類のインクを備えるシアンおよびマゼンダについては、画像データとして与えられた濃度を表現するために、濃淡それぞれのインクをどれだけ使うかを設定することになる。この処理については、種々の処理内容が考えられるため、後で場合を分けて説明する。
【0055】
ステップS200の処理により各色について吐出するインク量の期待値が決定されると、CPUは、かかるインク量の期待値に基づいて、形成すべきドットの径を設定する処理を行う(ステップS300)。この処理についても、種々の処理内容が考えられるため、後で場合を分けて説明する。
【0056】
以上の処理によれば、入力された画像データに応じて、インクデューティの制限を守りつつ、各色のインク量を決定した上で、そのインク量を超えない範囲でドット径を定めるため、結果として印刷される画像では、必ずインクデューティの制限が守られることになる。
【0057】
(3)各色吐出インク量期待値決定処理
各色についてインクデューティの制限を守りつつ、単位面積当たりに吐出するインク量の期待値を設定するための処理については、種々の態様が考えられる。以下ではこの処理の例として3つの態様からなる処理を順次説明する。
【0058】
まず、第1の態様としての各色吐出インク量期待値決定処理について図12のフローチャートを用いて説明する。このルーチンが開始されると、CPUは各色ごとに期待値テーブルITを参照することにより、吐出するインク量の期待値を決定する(ステップS210)。ここで、各色と呼んでいるのは、各インクの色を意味しており、色相を意味するものではない。つまり、本ルーチンでは、シアンインクとライトシアンインクとは別々に処理が実行され、それぞれインク量の期待値が設定される。
【0059】
ここで、期待値テーブルITについて説明する。図13、図14に本実施例における期待値テーブルの例を示す。図13は入力された画素階調データのレッドおよびグリーンの階調値に応じて、シアンインクの期待値を与えるテーブルである。図14は同じ形式でライトシアンインクの期待値を与えるテーブルである。図示の都合上、ブルーのデータはある値で一定の場合について示した。実際には、ブルーの変化に応じて図13のグラフが256点分存在することになる。なお、図13および図14ではグラフの形で表しているが、実際には、ブルー、レッドおよびグリーンの階調値の全ての組み合わせ(256×256×256点)に対応するデータがテーブルの形でコンピュータ90のROMに記憶されている。図13および図14に示すインクの期待値は、シアンインクおよびライトシアンインクのみならず、マゼンダインクその他のインクの期待値も考慮して、全体の期待値の合計が印刷用紙のインクデューティの制限を超えないように設定してある。その他のインクについても図13および図14と同様のテーブルが設定されている。
【0060】
ステップS210で、CPUは画像データに対応した値を上記各テーブルから読みとることにより、インクの吐出量の期待値を設定する。かかる処理を全色について行った後(ステップS215)、吐出インク量期待値決定処理ルーチンからドット発生処理ルーチンに戻る。
【0061】
かかる吐出インク量期待値決定処理によれば、各階調データの全ての組み合わせに応じて吐出インク量の期待値のデータをテーブルの形で記憶しているため、処理内容が非常に簡単であり、高速に処理することができる利点がある。また、インク吐出量の期待値のデータが非常に非線形が強いデータであっても容易に適用できる利点もある。
【0062】
なお、以上の説明では一画素ごとに処理が終了すれば各色吐出インク量期待値決定処理を一旦終了するものとして説明したが、各画素についての結果をメモリに蓄えつつ、各ラスタまたは画像全体について繰り返し処理を行うものとしてもよい。
【0063】
また、以上の説明では各色ごとに処理をしていくものとして説明したが、各色ごとに用意されたテーブルではなく、入力データに対応して各インクのインク量の期待値を一組にして記憶したテーブルを用いることにより、一度に全てのインク量が設定されるようにすることもできる。
【0064】
次に、第2の態様としての各色吐出インク量期待値決定処理について図15のフローチャートを用いて説明する。この態様は図13および図14に示した期待値テーブルITのデータ点数を減らし、適宜補間演算を行うことにより、インク吐出量の期待値を決定する方法である。つまり、第2の態様では、インクの吐出量の期待値を与える期待値テーブルIT(図13、図14)は、ブルー、レッド、グリーンの全ての組み合わせに対してデータを記憶するのではなく、特定の格子点に対してのみデータを記憶するテーブルとしている。
【0065】
吐出インク量期待値決定処理ルーチンが開始されると、CPUは画素階調データが存在する格子を選択する(ステップS220)。第2の態様では、期待値テーブルITは特定の格子点に対してのみ存在しているため、画素階調データによっては、対応するインク吐出量の期待値データが存在しない場合がある。CPUは後で補間演算を行うために、画素階調データがいずれの格子に属しているかを選択するのである。
【0066】
格子について、図16に基づいて具体的に説明する。図16は、レッドおよびグリーンデータによる格子点を示す説明図である。図示の都合上、ブルーがある一定の値の場合について示した。既に説明した通り、レッドデータおよびグリーンデータは値0〜255までの256階調値を採りうるデータであり、ブルーをある値に固定した図16の平面内では、両者の組み合わせにより表される画素データは、256×256通りあることになる。第1の態様では、これらの各点に対して吐出すべきインク量の期待値データを記憶していた。
【0067】
これに対し、第2の態様では、図16に示す通り、レッドデータおよびグリーンデータについて、それぞれの階調値0〜255までを8等分した格子を想定し、各交点である格子点についてのみインク吐出量の期待値データを記憶している。従って、例えば階調値63などは画素データとしては採り得る値であるが、期待値テーブルITには、それに対応するデータが存在しない状態となっている。
【0068】
本実施例では、図16に示した通り、格子点は階調値32ごとに存在する。この格子点を階調値0から順に0,1,2,・・・8なる番号で示すものとする(以下、この番号を格子点番号とよぶ)。本実施例においては、レッドデータおよびグリーンデータのそれぞれの値を32で除して、小数点以下の切り上げをすることにより、画素階調データがいずれの格子に属しているかを判定することができる。例えば、階調値63については、上述の演算の結果が値2となるので、格子点番号2および格子点番号3の間の格子に存在していると判定される。なお、本実施例では格子点が等間隔に並んでいるものとしているが、格子点は必ずしも等間隔に並んでいる必要はなく、またレッドデータとグリーンデータの分割が一致している必要もない。レッドとグリーンについて格子を選択したのと同様の手法によりブルーについても画素階調データが存在する格子が選択される。こうした処理により、ブルー、レッド、グリーンの3次元的な色空間の中で画素階調データが存在する直方体が一つ選択されることになる。
【0069】
こうして画素階調データが属する格子が選択された後は、当該格子を構成する格子点を用いてインク量の期待値データの補間演算を行う(ステップS230)。上記格子を構成する格子点は8つ存在する。このような8つの格子点のデータをいわゆる線形補間する演算としては、種々の方法が周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0070】
補間演算により、吐出すべきインク量の期待値を求め、全色についてこの処理を実行した後(ステップS235)、吐出インク量期待値決定処理ルーチンからドット発生処理ルーチンに戻る。
【0071】
かかる態様によれば、補間演算が必要となるため、第1の態様に比べて処理速度の面で劣るものの、インク量テーブルITのデータ量が少なくて済むため、メモリ量の節約ができるという利点がある。
【0072】
インク量の期待値を設定する処理は、ブルー、レッド、グリーンの3つを要素とする一組の入力データに基づいて、シアン、ライトシアン等の各色に関する一組のデータを与える点で、いわゆる色補正処理と類似した処理である。従って、上述した2つの態様の他にも色補正処理で用いられている種々の技術を適用することが可能である。例えば、以上の各態様においては、インク量の期待値データを記憶する期待値テーブルITを用いる方法を採っているが、期待値データが画素階調データの関数として表される場合には、かかる関数に基づいてインク量の期待値を求めるものとしてもよい。
【0073】
(4)ドット径設定処理
上で説明したインク量期待値決定処理により求められたインク量の期待値に基づいて、形成すべきドットの径を設定するためのドット径設定処理も種々の態様が考えられる。以下、ドット径設定処理の例として3つの態様について順次説明する。なお、以下の各態様は、上で説明したいずれの態様の処理がインク量期待値決定処理として適用されたかということには依存せずに、それぞれ採用し得るものである。ドット径が連続的に変えられる場合には、設定されたインク量の期待値と実際に吐出されるインク量とが一致するようにドット径を設定することが可能であるが、本実施例では限られた種類のドット径しか形成し得ない。このため、各画素ごとに見れば、設定されたインク量の期待値と吐出されるインク量との間に誤差が生じることになる。本実施例では、以下に示す種々の処理により、かかる誤差を印刷される画像全体で小さく抑えるように、各画素ごとに形成すべきドット径の選択を行っているのである。
【0074】
第1のドット径設定処理を図17に示すフローチャートに基づいて説明する。ここではシアンインクについてインク量の期待値が値Cdに設定された場合を例にとって説明する。
【0075】
ドット径設定処理が開始されるとCPUはインク量期待値データCdを入力する(ステップS302)。このデータは、先に説明したインク量期待値決定処理において求められた単位面積当たりに吐出すべきインク量の期待値データである。
【0076】
次に、かかるインク量期待値データCdが所定値Vsよりも小さいか否かを判定する(ステップS304)。所定値Vsは、ドット径が最も小さいドット(以下、小ドットとよぶ)により吐出されると想定されるインク量を示す値である(以下、小ドットインク量とよぶ)。インク量期待値データCdが小ドットインク量Vsよりも小さい場合には、小ドットを形成するか否かの判定を行うため、インク量期待値データCdが閾値ths以上であるか否かを判定する(ステップS306)。閾値thsよりも小さい場合には、小ドットの形成は行わないものと判断し、ドット径の設定データCdrに値0を代入する(ステップS308)。閾値thsよりも大きい場合には、小ドットを形成すべきと判断して、ドット径の設定データCdrに小ドットインク量に相当する値Vsを代入する(ステップS310)。
【0077】
なお、ステップS304で用いる所定値Vsと、ドット径の設定データCdrに代入される値Vsは、ともに小ドットを形成するために吐出されるインク量に基づいて定まる値であれば、異なる値を用いるものとしてもよい。例えば、現実にドットを形成するために使用される値、つまりドット径の設定データCdrに代入される値を、ステップS304において判断基準としている値よりも小さくしてもよい。こうすることにより、実際に吐出されるインク量にノズル毎のバラツキがある場合でも、インクデューティの制限を守ることができる。
【0078】
ここで、閾値thsについて説明する。本実施例では、この閾値の設定に分散型ディザの閾値マトリックスを採用した。ディザ法における閾値の考え方については後で説明する。本実施例では、特に64×64程度の大域的マトリックス(ブルーノイズマトリックス)を利用し、組織的ディザ法を適用した。このディザマトリックスでは、64×64の大きさのマトリックスの内部のいずれの16×16の領域をとっても閾値(0〜255)の出現に大きな偏りがないように閾値を決めている。
【0079】
ステップS306においては、インク量期待値データCdは値0〜Vsまでしか取り得ないため、閾値thsは上述のディザマトリックスを値0〜Vsの範囲に正規化したものを用いている。つまり、上述のディザマトリックスの各値thを次式を用いて変換し、閾値thsがこの範囲に一致するようにしている。
ths=th×Vs/255
【0080】
ここで、ディザ法による考え方を図18を用いて説明する。ここでは、Vsを値64として説明する。図18に示す通り、ある4×4の画素からなる領域でインク量期待値データがVs以下となっていたとする。かかる領域における閾値thsはディザマトリックスを正規化したテーブルで与えられ、図18に示す通り値0〜64までの値の閾値が出現する。この閾値とインク量期待値データを各画素ごとに比較することにより、図18に示すように小ドットのオン・オフが判定される。先に説明した通り、ディザマトリックスは閾値が偏りなく出現するように設定されている。従って、かかる方法により小ドットのオン・オフを決定すれば、各画素ごとにはインク量の期待値と実際に吐出されたインク量との間に誤差が生じているものの、画像全体として見ればこの誤差は小さくなる。
【0081】
ステップS304において、インク量期待値Cdが小ドットインク量Vsよりも大きいと判断された場合は、次にインク量期待値Cdが2番目のドット径からなるドット(以下、中ドットとよぶ)により吐出されると想定されるインク量Vmよりも小さいか否かを判断する(ステップS312)。インク量Vmよりも小さい場合には、インク量期待値データCdが所定の閾値thmよりも大きいか否かを判定し(ステップS314)、閾値thmよりも小さい場合には、中ドットではなく小ドットの形成を行うものと判断し、ドット径の設定データCdrに小ドットインク量に相当する値Vsを代入する(ステップS316)。閾値thsよりも大きい場合には、中ドットを形成すべきと判断して、ドット径の設定データCdrに中ドットインク量に相当する値Vmを代入する(ステップS318)。閾値thmよりも小さい場合に、中ドットを形成しないものとはせず、小ドットを形成するものとしたのは、中ドットを形成しないものとすれば、インク量期待値Cdに対する誤差が大きくなり、好ましくないためである。
【0082】
閾値thmは、先に説明したディザマトリックスにより定められる。ステップS314では、インク量期待値データは値Vs〜Vmまでを取るため、ディザマトリックスの各値thに次式を用いることにより、閾値thmがこの範囲に一致するように正規化されている。
thm=th×(Vm−Vs)/255+Vs
【0083】
ステップS312において、インク量期待値Cdが中ドットインク量Vmよりも大きいと判断された場合は、最もドット径の大きいドット(以下、大ドットと呼ぶ)のオン・オフについて判定をする。インク量期待値データCdが所定の閾値thlよりも大きいか否かを判定し(ステップS320)、閾値thlよりも小さい場合には、大ドットではなく中ドットの形成を行うものと判断し、ドット径の設定データCdrに中ドットインク量に相当する値Vmを代入する(ステップS322)。閾値thlよりも大きい場合には、大ドットを形成すべきと判断して、ドット径の設定データCdrに大ドットインク量に相当する値Vlを代入する(ステップS324)。
【0084】
閾値thlは、先に説明したディザマトリックスにより定められる。ステップS320では、インク量期待値データCdは値Vm〜Vlまでを取るため、ディザマトリックスの各値thに次式を用いることにより、閾値thlがこの範囲に一致するように正規化されている。
thm=th×(Vl−Vm)/255+Vm
【0085】
こうしてドットの形成の有無も含めて、形成すべきドットのドット径が設定された。CPUは全ての色について、この処理を実行し(ステップS326)、ドット径設定処理を終了する。
【0086】
かかる態様によれば、設定されたインク量の期待値に応じて、各ドット径からなるドットを適切に形成することができる。先に説明した通り、ディザマトリックスを用いることによりドットが局所的に偏って発生することを避けることができ、画像全体として見れば、設定されたインク量の期待値に対し吐出されたインク量の誤差を小さく抑えることができる。
【0087】
なお、上述の説明では、閾値ths,thsm,thlをディザマトリックスに基づいて定めるものとしているが、これらの閾値を各画素ごとに乱数を発生させて定めるものとしてもよい。
【0088】
次に、第2の態様のドット径設定処理について図19のフローチャートに基づき説明する。ドット径設定処理が開始されるとCPUはインク量期待値データCdを入力し(ステップS340)、既に処理が終了した近傍の画素からの拡散誤差を加えて補正データCdxを作成する(ステップS342)。第2の態様では実際に吐出されるインク量を設定されたインク量期待値Cdに近づけるための処理として、後述する通り誤差拡散処理を採用している。誤差拡散処理は処理済みの画素について生じたインク量の誤差を予めその画素の周りの画素に所定の重みを付けて予め配分しておくので、ステップS342では該当する誤差分を読み出し、これを今から印刷しようとする画素に反映させるのである。着目している画素PPに対して、周辺のどの画素にどの程度の重み付けで、この誤差を配分するかを、図20に例示した。着目している画素PPに対して、キャリッジ31の走査方向で数画素、および用紙Pの搬送方向後ろ側の隣接する数画素に対して、濃度誤差が所定の重み(1/4,1/8、1/16)を付けて配分される。誤差拡散処理については後で詳述する。
【0089】
CPUは補正データCdxと所定の閾値Th1ないしTh3との比較を行う(ステップS344〜352)。所定の閾値は、Th1<Th2<Th3なる関係にある。補正データCdxが閾値Th1より小さい場合は(ステップS344)、ドットを形成しないものと判断し、ドット径を設定するためのデータCdrに値0を代入する(ステップS346)。補正データCdxが閾値th1より大きく閾値th2よりも小さい場合には(ステップS348)、小ドットを形成すべきと判断し、ドット径データCdrに値Vsを代入する(ステップS350)。補正データCdxが閾値th2より大きく閾値th3よりも小さい場合には(ステップS352)、中ドットを形成すべきと判断し、ドット径データCdrに値Vmを代入する(ステップS354)。また、補正データCdxが閾値th3よりも大きい場合には(ステップS352)、大ドットを形成すべきと判断し、ドット径データCdrに値Vlを代入する(ステップS356)。
【0090】
以上によりドットを形成しない場合も含め、どのようなドットを形成すべきかが設定された。次に、CPUはかかる設定に基づいて誤差計算および誤差拡散処理を実行する(ステップS358)。ここでいう誤差とは、ステップS342において補正された後の補正データCdxと実際に吐出されるインク量Cdrとの誤差をいう。この誤差は、補正データCdxは例えば0〜255までの値を連続的にとり得るのに対し、実際に吐出されるインク量Cdrは一定の離散的な値しかとり得ないことにより生じる誤差である。例えば、大ドットのインク量Vlが255であるとした場合、補正データCdxが値199であるにも関わらず大ドットを形成したとすれば、そこには255−199=56なるインク量誤差が生じていることになる。これは、吐出されたインク量が設定されたインク量に比べて多すぎることを意味する。吐出されるインク量はCdrで与えられるから、誤差ERRはERR=Cdx−Cdrで求められる。
【0091】
誤差拡散とは、こうして求められた誤差を現在処理している画素PPの周辺の画素に所定の重み(図20参照)を付けて拡散する処理をいう。誤差は未処理の画素に拡散されるべきであるから、図20に示す通り、キャリッジの走査方向および用紙の搬送方向に並ぶ画素にのみ拡散されることになる。上述の例に基づき、誤差が56であったとすれば、現在処理している画素PPの隣の画素P1には、誤差56の1/4に相当する14が拡散されることになる。この誤差は、次に画素P1を処理する際に、ステップS342において反映される。例えば、画素P1のデータが値214であれば、そこから拡散された誤差14を引いて、補正データを値200とするのである。かかる処理を繰り返し実行することにより、各画素ごとにはインク量誤差を含んでいるものの、画像全体としては設定されたインク量期待値データに応じたインク量で画像が印刷されることになる。かかる処理により、ドットの形成の有無も含めたドット径の設定を全ての色について行って(ステップS360)、このルーチンを一旦終了する。
【0092】
かかる処理を用いれば、第1の態様に比べて、複雑な処理になるため処理速度の面で劣るものの、インク量の誤差を確実に解消することができ、より良好な画像を得ることができる。なお、図20に示した重み値は一例に過ぎないため、その他の重み値を用いるものとしてもよい。
【0093】
次に、第3の態様によるドット径設定処理について図21のフローチャートに基づいて説明する。第3の態様は、第2の態様と同様、誤差拡散法を用いて処理するものであるが、第2の態様では各径からなるドットを一体的に処理していたのに対し、第3の態様では各径からなるドットを個別的に処理する点で相違する。
【0094】
ドット径設定処理が開始されると、CPUはインク量期待値データCdを入力し(ステップS370)、該データCdに基づいてドット径別のインク量期待値を設定する(ステップS372)。ドット径別のインク量期待値は予め設定したテーブルに基づいて行う。かかるテーブルの例を図22に示す。図22は、インク量期待値Cdに応じて各ドット径からなるドットのインク量の期待値を各ドットの発生率に置き換えて表したものである。インク量の期待値は、各ドットを形成するために吐出されるインク量にドットの発生率を乗じて求められる。インク量期待値Cdが比較的小さい場合、例えば区間Cd1においては、小ドットのみで形成すべきであることを意味している。従って、区間Cd1では中ドットおよび大ドットに対するインク量の期待値は共に値0となる。他の区間(区間Cd2、Cd3,Cd4)でも同様に各ドット径に対応したインク量の期待値が設定される。こうして設定された小ドット、中ドット、大ドットのそれぞれに対するインク量の期待値を、Cds,Cdm,Cdlとする。
【0095】
次に、CPUは既に処理が終了した近傍の画素からの拡散誤差を加えて補正データCdsx,Cdmx,Cdlxを作成する(ステップS374)。Cdsx,Cdmx,Cdlxは、小ドット、中ドット、大ドットのインク量Cds,Cdm,Cdlについてそれぞれ個別に拡散誤差による補正を行った結果である。このように第3の態様においては、各ドット径ごとに全て独立して処理が実行される。
【0096】
次に、CPUは誤差の仮設定値として、小ドットに対する誤差Errsには補正データCdsx、中ドットに対する誤差Errmには補正データCdmx、大ドットに対する誤差Errlには補正データCdlxを代入する(ステップS376)。この値は、以下の処理において各ドット径からなるドットが形成されなかった場合の誤差に相当する値である。
【0097】
こうして誤差の仮設定をした後、まず大ドットの補正データCdlxが所定の閾値thrよりも大きいか否かを判定し(ステップS378)、閾値thrよりも大きい場合には、大ドットを形成すべきと判定してドット径データCdrに値Vlを代入すると共に、大ドットに対応する誤差Errlを補正データCdlxと値Vlとの差分に変更する(ステップS380)。
【0098】
大ドットの補正データCdlxが閾値thrよりも小さい場合、即ち大ドットが形成されない場合には、中ドットの補正データCdmxが所定の閾値thrよりも大きいか否かを判定し(ステップS382)、閾値thrよりも大きい場合には、中ドットを形成すべきと判定してドット径データCdrに値Vmを代入すると共に、中ドットに対応する誤差Errmを補正データCdmxと値Vmとの差分に変更する(ステップS384)。
【0099】
中ドットの補正データCdmxが閾値thrよりも小さい場合、即ち中ドットが形成されない場合には、小ドットの補正データCdsxが所定の閾値thrよりも大きいか否かを判定し(ステップS386)、閾値thrよりも大きい場合には、小ドットを形成すべきと判定してドット径データCdrに値Vsを代入すると共に、小ドットに対応する誤差Errsを補正データCdsxと値Vsとの差分に変更する(ステップS388)。小ドットの補正データCdsxが閾値thrよりも小さい場合は、いずれのドットも形成されない。
【0100】
以上の処理により、ドットの形成の有無も含めて、いずれのドットを形成すべきかが設定された。また、その結果に応じて誤差が設定された。形成されないドットについては、ステップS376で仮に設定した誤差データがそのまま残っていることになる。
【0101】
次にCPUはこの誤差を拡散する処理を行う(ステップS390)。誤差を拡散する際の重みは第2の態様で用いた重みと同じ値としている。第3の態様においては、誤差の拡散も各ドット径に対応する誤差Errs,Errm,Errlのそれぞれについて独立に拡散処理を実行するのである。以上の処理を全ての色について行って(ステップS392)、このルーチンを一旦終了する。
【0102】
かかる処理によれば、第2の態様と同様、画像全体で適切に誤差を解消でき、良好な画像を得ることができる。第3の態様では、以下の理由により、第2の態様よりも更に良好な画像を得ることができる。つまり、第2の態様においては、全ての径からなるドットを一体的に誤差拡散処理しているため、局所的にドット径の大きいドットが偏って発生する可能性がある。このような偏りが特に濃度の高いインクで生じた場合には、粒状感を目立たせることになり、画質を低下させることになる。これに対し、第3の態様では、ドット径ごとに誤差拡散処理を行っている結果、各ドット径からなるドットが画像全体に分散して生じるため、上述した偏りが生じるおそれが少なく、良好な画像を得ることができるのである。
【0103】
以上で説明したドット発生処理ルーチンの結果に基づいて、CPUはプリンタ22が各ドットを形成するための処理を実行する。この処理についてはプリンタ22の構成に応じて種々の処理が知られているため、ここではフローチャートに基づく説明は省略する。本実施例では、先に説明した通りキャリッジ31の一回の主走査中に個々のノズルから大中小それぞれのドットを任意に形成可能であるため、上述の処理により形成すべきドット径がどのように設定されても比較的容易に実現することができる。
【0104】
一方、上記のドット径設定処理は、例えば大中小それぞれのドットに対して用意された3種類の駆動波形を選択的に使用するようなプリンタ、即ち一組のノズルアレイにより一度に形成し得るドット径は一定であるプリンタにも適用することができる。かかるプリンタではよく知られているオーバーラップ方式のドット記録方法を応用した走査によりドット径の異なるドットを混在して形成することになる。かかる走査の一例を以下に説明する。
【0105】
図23にノズル数6のヘッドを用いて6×6の領域に大小のドットを混在させる場合の走査例について模式的に示す。図23では、左側にヘッドの走査回数に対応したインクの吐出の様子を示し、右側に形成されたドットの様子を示す。それぞれのドットに付した数字は、ヘッドの走査順序に対応している。図23に示す通り、1回目の主走査ではヘッドの下半分のノズルを用いて大ドットを、主走査方向に1ドットおきに形成する。次に、副走査方向に3ドット分、用紙を搬送した後、全てのノズルを用いて小ドットを主走査方向に1ドットおきに形成する。そして、さらに3ドット分副走査方向に用紙を搬送した後、上半分のノズルを用いて大ドットを形成する。かかる態様によれば、各ラスタを2回の走査で記録することにより、大小ドットを同じ比率で混在させて印刷することができる。
【0106】
以上で説明した印刷装置によれば、入力された画像データに応じて、インクデューティの制限を守りつつ、各色のインク量の期待値を決定した上で、吐出されるインク量が期待値を超えない範囲でドット径を定めるため、必ずインクデューティの制限が守られた条件下で、濃度およびドット径の異なる種々のドットの使い分けが可能となる。また、以下に示す理由により、最も良好な画質を得ることができる利点もある。
【0107】
ドット径の異なるドットは、多階調の表現を可能とする他、ドットの粒状感を目立たなくしたり、プリンタ22のヘッドの機械的製作誤差に基づくドットの形成ムラ、即ちバンディングを防止したりするように使い分けられる。例えば、濃度の高いインクについて局所的にドット径の大きいドットが集中して現れるような場合には、粒状感が非常に目立つことになるため、かかる状態を生じないようにドット径の小さいドットを適度に混在させて用いられる。ドット径の異なるドットについてのこのような形成パターンは各色ごとに好ましいパターンにすればよく、他の色またはドット径の影響を考慮する必要性は小さい。
【0108】
予めインクデューティの制限が満たされている状況下でドット径を設定しない場合には、インクデューティの制限により結果として好ましいパターンでドットを形成できない可能性もある。上述の手段を用いた印刷装置によれば、インクデューティの制限を守るように決められたインク吐出量の期待値に基づいて各色ごとに種々のドット径からなるドットを好ましいパターンで形成することができるため、良好な画像を形成することができるのである。
【0109】
さらに、上述の手段によれば、次のような利点もある。ある色相について単位面積当たりの濃度の異なるドットの種類を増やそうとした場合、インクの濃度を多段階にする方法と、ドット径を多種類にする方法とがある。一般にインク濃度の種類を増やすのは、インクカートリッジおよびヘッドを新たに設ける必要があるため困難であるが、ドット径を他種類にするのは、前述した駆動波形の種類を増やすことにより比較的容易に実現することができる。ドット径の種類を増やしてさらなる多階調化を図った場合、上述の手段によれば、他の色との相関により定まるインクの吐出量はそのまま利用でき、各色ごとのインクで独立に処理できるドット径の選択処理を若干変更することにより対処可能である。従って、上述の手段は、一旦設計された印刷装置の階調表現をさらに増やすことに対する発展性の面でも有利であるという利点を有している。
【0110】
さらに、上記印刷装置はコンピュータによる処理を含んでいることから、上記で説明した各機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体としての実施の態様を採ることもできる。このような記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。また、コンピュータに上記の発明の各工程または各手段の機能を実現させるコンピュータプログラムを通信経路を介して供給するプログラム供給装置としての態様も可能である。
【0111】
以上、本発明の種々の実施例について説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の形態による実施が可能である。例えば、以上で説明した種々の処理はコンピュータ90で実行するものとしているが、かかる処理を実行する機能をプリンタ22に持たせ、プリンタ22側で行うものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明のプリンタを用いた画像処理システムの概略構成図である。
【図2】本発明のプリンタの概略構成図である。
【図3】本発明のプリンタのドット記録ヘッドの概略構成を示す説明図である。
【図4】本発明のプリンタにおけるドット形成原理を示す説明図である。
【図5】プリンタにおけるノズル配置の一例を示す説明図である。
【図6】本発明のプリンタにおけるノズル配置を示す説明図である。
【図7】本発明によりドット径の異なるドットを形成する原理を示す説明図である。
【図8】本発明のプリンタ22におけるノズルの駆動波形および該駆動波形により形成されるドットの様子を示す説明図である。
【図9】プリンタ22の内部構成を示す説明図である。
【図10】ヘッドの駆動回路構成を示す説明図である。
【図11】ドット発生処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図12】各色吐出インク量決定処理ルーチンの第1の態様における流れを示すフローチャートである。
【図13】シアンのインク量テーブルを示す説明図である。
【図14】ライトシアンのインク量テーブルを示す説明図である。
【図15】各色吐出インク量決定処理ルーチンの第2の態様における流れを示すフローチャートである。
【図16】第2の態様におけるインク量テーブルの格子の様子を示す説明図である。
【図17】ドット径設定処理ルーチンの第1の態様における流れを示すフローチャートである。
【図18】ディザマトリックスを用いたドットのオン・オフ判定の方法を示す説明図である。
【図19】ドット径設定処理ルーチンの第2の態様における流れを示すフローチャートである。
【図20】誤差拡散処理における重み係数を示す説明図である。
【図21】ドット径設定処理ルーチンの第3の態様における流れを示すフローチャートである。
【図22】第3の態様におけるドット径別のインク量を与えるテーブルを示す説明図である。
【図23】大小ドットを混在して記録する態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0113】
12…スキャナ
21…カラーディスプレイ
22…カラープリンタ
23…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
26…プラテン
28…印字ヘッド
31…キャリッジ
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置検出センサ
40…制御回路
41…CPU
42…プログラマブルROM(PROM)
43…RAM
44…PCインタフェース
45…PIO
46…タイマ
47…転送用バッファ
51…発信器
55…分配出力器
61、62、63、64、65、66…インク吐出用ヘッド
67…導入管
68…インク通路
71…黒インク用のカートリッジ
72…カラーインク用カートリッジ
90…パーソナルコンピュータ
91…ビデオドライバ
92…入力部
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…ラスタライザ
98…インク量期待値設定モジュール
99…ハーフトーンモジュール




 

 


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