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発明の名称 液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−1270(P2007−1270A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−187280(P2005−187280)
出願日 平成17年6月27日(2005.6.27)
代理人 【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
発明者 島田 勝人
要約 課題
駆動時の耐久性を向上すると共に圧電素子の配列密度を高密度にすることができる液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供する。

解決手段
液滴を噴射するノズル開口21に連通する圧力発生室12が形成された流路形成基板10上に振動板を介して設けられた下電極60、圧電体層70及び上電極80からなる圧電素子300を具備し、前記下電極60が複数の圧電素子300に亘って連続して設けられていると共に、少なくとも前記圧電素子300の間の領域の前記下電極60の端部近傍に他の領域よりも薄い薄肉部61を設ける。
特許請求の範囲
【請求項1】
液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板上に振動板を介して設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、
前記下電極が複数の圧電素子に亘って連続して設けられていると共に、少なくとも前記圧電素子の間の領域の前記下電極の端部近傍が、他の領域よりも薄い薄肉部となっていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記下電極の前記他の領域である前記圧電素子の領域及び前記圧電素子の間の中央部が同一厚さで形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記下電極の前記圧電素子の長手方向の幅が、複数の圧電素子に亘って同一幅で形成されていると共に、前記薄肉部の前記圧電素子に隣接する部分には、前記薄肉部と前記圧電素子の領域とを当該圧電素子の並設方向で不連続とする切り欠き部が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項3において、前記圧電素子の長手方向の端部の前記下電極が、前記切り欠き部の間で前記圧電体層と同一幅で設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
流路形成基板上に振動板を介して下電極を成膜及びパターニングして、複数の圧電素子に亘って共通となる下電極を形成する工程と、前記下電極上に亘って圧電体層及び上電極を形成する工程と、前記流路形成基板の表面に直交する方向から所定角度傾斜した方向からイオンビームを照射することにより、前記上電極及び前記圧電体層を各圧力発生室毎にドライエッチングして前記下電極、前記圧電体層及び前記上電極からなる圧電素子を形成すると共に、前記圧電素子の間の領域の前記下電極の端部近傍を連続してドライエッチングすることにより、当該下電極の他の領域よりも薄い薄肉部を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記薄肉部を形成する工程では、前記薄肉部の前記圧電素子に隣接する部分には、前記薄肉部と前記圧電素子の領域とを当該圧電素子の並設方向で不連続とする切り欠き部を設けることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置に関し、特に、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板の表面に圧電素子を形成して、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させる液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。
【0004】
これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。
【0005】
一方、後者の記録ヘッドの不都合を解消すべく、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
【0006】
そして、このような圧電素子は、下電極を複数の圧電素子に亘って連続して設けて共通電極とし、上電極を各圧電素子の個別電極として、この下電極と上電極との間に選択的に電圧を印加することによって所望の圧電素子を駆動させるようになっている。このような各圧電素子からは、長手方向で圧電体層及び上電極を圧力発生室に相対向する領域の外側まで延設した構造となっている。
【0007】
しかしながら、圧電体層及び上電極の引き出し側の端部で電界が集中してしまうため、上電極と下電極との間に放電が起こり、圧電体層が絶縁破壊されてしまうという問題がある。
【0008】
このため、下電極に他の領域よりも狭い幅狭部を形成し、この幅狭部によって圧電体層の絶縁破壊を防止した構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このように下電極に幅狭部を設けた構成では、下電極をパターニングする際に幅狭部をパターニングにより形成しなくてはならず、パターン形成が煩雑であると共に、幅狭部と圧電体層及び上電極との位置合わせが必要であり、圧電素子の配列密度が高密度になると位置合わせが困難であるという問題がある。
【0010】
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、勿論、インク以外の液体を噴射する他の液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0011】
【特許文献1】特開2000−246892号公報(第5〜6頁、第6〜7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情に鑑み、駆動時の耐久性を向上すると共に圧電素子の配列密度を高密度にすることができる液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板上に振動板を介して設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を具備し、前記下電極が複数の圧電素子に亘って連続して設けられていると共に、少なくとも前記圧電素子の間の領域の前記下電極の端部近傍が、他の領域よりも薄い薄肉部となっていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第1の態様では、下電極に薄肉部を設けることにより、複数の圧電素子の端部近傍の電界強度を低くすることができ、圧電素子の中央部に比べて圧電素子の歪み量を低減して、駆動時の耐久性を向上することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記下電極の前記他の領域である前記圧電素子の領域及び前記圧電素子の間の中央部が同一厚さで形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第2の態様では、下電極のパターニングを容易に行うことができると共に、圧電体層の膜質を均一化することができ、圧電素子同士で圧電特性のむらがなく、その結果吐出むらのないヘッドを提供できる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記下電極の前記圧電素子の長手方向の幅が、複数の圧電素子に亘って同一幅で形成されていると共に、前記薄肉部の前記圧電素子に隣接する部分には、前記薄肉部と前記圧電素子の領域とを当該圧電素子の並設方向で不連続とする切り欠き部が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第3の態様では、下電極に切り欠き部を設けることによって、さらに複数の圧電素子の端部近傍の電界強度を低くすることができ、圧電素子の中央部に比べて圧電素子の歪み量を低減して、駆動時の耐久性を向上することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記圧電素子の長手方向の端部の前記下電極が、前記切り欠き部の間で前記圧電体層と同一幅で設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第4の態様では、圧電素子の下電極を圧電体層と同一幅で形成することによって、圧電素子の駆動特性を向上することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる第5の態様では、耐久性を向上した液体噴射装置を実現できる。
【0018】
本発明の第6の態様は、流路形成基板上に振動板を介して下電極を成膜及びパターニングして、複数の圧電素子に亘って共通となる下電極を形成する工程と、前記下電極上に亘って圧電体層及び上電極を形成する工程と、前記流路形成基板の表面に直交する方向から所定角度傾斜した方向からイオンビームを照射することにより、前記上電極及び前記圧電体層を各圧力発生室毎にドライエッチングして前記下電極、前記圧電体層及び前記上電極からなる圧電素子を形成すると共に、前記圧電素子の間の領域の前記下電極の端部近傍を連続してドライエッチングすることにより、当該下電極の他の領域よりも薄い薄肉部を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第6の態様では、下電極に薄肉部を容易に形成することができると共に、薄肉部と圧電体層及び上電極との位置合わせが不要となり、圧電素子の配列密度を高密度にすることができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記薄肉部を形成する工程では、前記薄肉部の前記圧電素子に隣接する部分には、前記薄肉部と前記圧電素子の領域とを当該圧電素子の並設方向で不連続とする切り欠き部を設けることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第7の態様では、下電極に切り欠き部を容易に形成することができると共に、切り欠き部と圧電体層及び上電極との位置合わせが不要となり、圧電素子の配列密度を高密度にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの要部平面図であり、図3は、図2(a)のA−A´断面図及びB−B´断面図である。
【0021】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その両面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0022】
この流路形成基板10には、その他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が並設され、その長手方向外側には、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成され、各圧力発生室12の長手方向一端部とそれぞれインク供給路14を介して連通されている。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0023】
また、流路形成基板10の開口面側には、圧力発生室12を形成する際のマスクとして用いられた保護膜51を介して、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が常温下で接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば、2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス又はステンレス鋼(SUS)などからなる。ノズルプレート20は、一方の面で流路形成基板10の一面を全面的に覆い、シリコン単結晶基板を衝撃や外力から保護する補強板の役目も果たす。
【0024】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウム等からなり厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、白金及びイリジウム等からなり厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなり厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、イリジウム等からなり厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが積層形成されて圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60を各圧力発生室12に相対向する領域に亘って連続して形成することにより、複数の圧電素子300の共通電極とし、圧電体層70及び上電極膜80を各圧力発生室12に対応して設けることにより上電極膜80を各圧電素子300の個別電極とした。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用する。
【0025】
ここで、下電極膜60は、圧電素子300の長手方向の幅が、複数の圧電素子300に亘って同一幅で形成され、この幅方向の端部は、圧力発生室12に相対向する領域内に設けられている。また、圧電体層70及び上電極膜80は、長手方向が下電極膜60の端部よりも外側に延設されており、圧電体層70及び上電極膜80の長手方向の一端側は、圧力発生室12の外側まで延設されて、この延設された一端部に詳しくは後述する引き出し配線であるリード電極90が設けられている。
【0026】
また、少なくとも圧電素子300の間の領域の下電極膜60の端部近傍は、図2及び図3に示すように、他の領域よりも膜厚が薄い薄肉部61となっている。本実施形態では、圧電素子300の間の領域と共に、圧電素子300の列の両外側の領域の下電極膜60の端部近傍が、他の領域よりも膜厚が薄い薄肉部61となっている。この薄肉部61は、他の領域である圧電素子300の間の中央部及び圧電素子300の領域の厚さよりも薄く形成されており、下電極膜60の他の領域である圧電素子300の間の中央部及び圧電素子300の領域は、同一厚さで形成されている。このような構成とすることにより、下電極のパターニングを容易に行うことができると共に、圧電体層の膜質を均一化することができ、圧電素子同士で圧電特性のむらがなく、その結果吐出むらのないヘッドを提供することができる。
【0027】
このように、圧電素子300の端部の横に位置する下電極膜60の端部近傍を薄肉部61とすることで、複数の圧電素子300の端部近傍の実効的な電界強度を低くすることができ、圧電素子300の中央部に比べて圧電素子300の歪み量を低減し、駆動時の耐久性を向上することができる。なお、薄肉部61は、下電極膜60の圧電素子300の長手方向の両端部に設けるようにしてもよく、また、一端側のみに設けるようにしてもよいが、少なくともリード電極90が設けられる側の端部に設けるようにするのが好ましい。これは、特に圧電体層70及び上電極膜80のリード電極90側の端部で電界が集中してしまい、下電極膜60と上電極膜80との間に放電が起こり、圧電体層70が絶縁破壊されてしまうからである。すなわち、下電極膜60の少なくともリード電極90側に薄肉部61を設けることによって、圧電体層80の絶縁破壊を防止することができる。
【0028】
また、本実施形態の下電極膜60の薄肉部61の圧電素子300に隣接する領域には、図2に示すように、圧電素子300の並設方向で薄肉部61と圧電素子300の領域の下電極膜60とを不連続とする切り欠き部62が設けられている。この切り欠き部62は、薄肉部61の両側に圧電素子300と薄肉部61との境界に沿って設けられており、下電極膜60の端部に開口するように設けられている。また、下電極膜60に切り欠き部62を設けることによって、圧電素子300の長手方向の端部の下電極膜60が圧電体層70と同一幅で形成されている。
【0029】
このような切り欠き部62によって、圧電素子300の領域の下電極膜60と、圧電素子300の間の下電極膜60とが、その端部で不連続となり、複数の圧電素子300の端部近傍の実効的な電界強度を低くすることができ、圧電素子300の中央部に比べて圧電素子300の歪み量を低減し、駆動時の耐久性をさらに向上することができる。
【0030】
また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
【0031】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤34を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
【0032】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。この圧電素子保持部32は、複数の圧電素子300を一体的に覆う大きさで形成されており、各圧電素子300は、この圧電素子保持部32内に配置されている。これにより、各圧電素子300は外部環境の影響を殆ど受けない状態に保護されている。なお、圧電素子保持部32は、必ずしも密封されている必要はない。
【0033】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0034】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300の上電極膜80から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0035】
また、保護基板30上には、圧電素子300を駆動するための駆動回路110が固定されている。この駆動回路110としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路110と貫通孔33内に露出したリード電極90の端部近傍とはボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線111を介して電気的に接続されている。
【0036】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0037】
また、このリザーバ100の長手方向略中央部外側のコンプライアンス基板40上には、リザーバ100にインクを供給するためのインク導入口44が形成されている。さらに、保護基板30には、インク導入口44とリザーバ100の側壁とを連通するインク導入路35が設けられている。
【0038】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口44からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0039】
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図6を参照して詳細に説明する。なお、図4〜図6は、インクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【0040】
まず、図4(a)に示すように、シリコン単結晶基板からなる流路形成基板10を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50及び保護膜51となる二酸化シリコン膜52を形成する。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。
【0042】
次いで、図4(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。下電極膜60は、複数の圧電素子300に亘って同一幅となるように、且つ下電極膜60の圧電素子300の長手方向の端部が、圧力発生室12に相対向する領域となるようにパターニングする。
【0043】
次に、図4(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板10の全面に形成する。
【0044】
圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。
【0045】
次に、図4(e)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にドライエッチングによりパターニングして圧電素子300を形成する。
【0046】
本実施形態では、流路形成基板10を回転させながら、回転軸とは傾斜した方向からイオンビームを上電極膜80及び圧電体層70に照射してドライエッチングした。このとき、連続して圧電素子300の間の領域の下電極膜60の端部近傍を連続してドライエッチングすることにより、圧電素子300の間の領域の下電極膜60の端部近傍に、他の領域よりも薄い薄肉部61を形成する。すなわち、流路形成基板10を回転させながら、流路形成基板10の表面に直交する方向に対して、例えば、30〜40°傾斜させた方向からイオンビームを照射すると、圧電体層70及び上電極膜60に覆われた圧電素子300の領域の下電極膜60及び圧電素子300の間の領域の中央部の下電極膜60は、ドライエッチングされず、圧電素子300の間の領域の下電極膜60の端部近傍の表面がドライエッチングされる。これにより、圧電素子300の間の領域の下電極膜60の端部に薄肉部61が形成される。
【0047】
このように、上電極膜80及び圧電体層70をドライエッチングした際に、連続して下電極膜60をドライエッチングすることで、薄肉部61を容易に形成することができると共に、薄肉部61と圧電体層70及び上電極膜80との位置合わせが不要となり、圧電素子300の配列密度を高密度にすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、下電極膜60の端部近傍を連続してドライエッチングすることにより、図2(b)に示すように、薄肉部61の圧電素子300に隣接する部分に、薄肉部61と圧電素子300の領域とを圧電素子300の並設方向で不連続とする切り欠き部62を形成するようにした。この切り欠き部62は、ドライエッチングにより薄肉部61を形成した際に、連続してドライエッチングすることで形成される。これにより、切り欠き部62は、圧電素子300の端部の側面に沿って形成され、圧電素子300の端部の下電極膜60の幅を圧電体層70の幅と同一幅で形成することができる。
【0049】
このように、圧電素子300を形成する際のドライエッチングによって切り欠き部62を容易に形成することができると共に、切り欠き部62と圧電体層70及び上電極膜80との位置合わせが不要となり、圧電素子300の配列密度を高密度にすることができる。
【0050】
次に、図5(a)に示すように、流路形成基板10の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成する。
【0051】
次に、図5(b)に示すように、リザーバ部31及び圧電素子保持部32が予め形成された保護基板30を流路形成基板10上に接着剤34を介して接合する。
【0052】
次に、図5(c)に示すように、流路形成基板10の圧電素子300が形成された面とは反対側の二酸化シリコン膜52を所定形状にパターニングすることで保護膜51を形成し、保護膜51をマスクとして流路形成基板10をKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、流路形成基板10に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。
【0053】
その後は、流路形成基板10の保護基板30とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板30にコンプライアンス基板40を接合することで、図1に示すようなインクジェット式記録ヘッドが形成される。
【0054】
なお、実際には、上述した一連の膜形成及び異方性エッチングによって一枚のウェハ上に多数のチップを同時に形成し、プロセス終了後、図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10毎に分割することでインクジェット式記録ヘッドが形成される。
【0055】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、下電極膜60の圧電素子300の長手方向の幅を圧力発生室12に相対向する領域内に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、下電極膜60の幅が圧力発生室12の外側まで延設されていてもよい。このような場合であっても、下電極膜60に薄肉部61を形成することによって、複数の圧電素子300の端部近傍の実効的な電界強度を低くすることができ、圧電素子300の中央部に比べて圧電素子300の歪み量を低減し、駆動時の耐久性を向上することができる。
【0056】
また、例えば、上述した実施形態では、保護基板30に圧電素子保持部32を設け、この圧電素子保持部32内に圧電素子300を形成するようにしたが、これに限定されず、保護基板30に圧電素子保持部32を設けなくてもよい。この場合には、圧電素子300の表面をアルミナなどの無機材料からなる保護膜によって覆い、水分(湿気)に起因する圧電体層70の破壊を防止するようにすればよい。勿論、保護膜により覆われた圧電素子300を圧電素子保持部32内に設けるようにしてもよい。
【0057】
また、このようなインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図6は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図6に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0058】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0059】
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部平面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【符号の説明】
【0061】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 下電極膜、 61 薄肉部、 62 切り欠き部、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 110 駆動回路、 111 接続配線、 300 圧電素子




 

 


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