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発明の名称 黒色顔料及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−217544(P2007−217544A)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
出願番号 特願2006−39042(P2006−39042)
出願日 平成18年2月16日(2006.2.16)
代理人 【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
発明者 中島 幹夫
要約 課題
クロム(Cr)成分を含有しないので安全性が高いと共に色調に優れ、経済的な黒色顔料及びその製造方法を提供する。

解決手段
原料酸化物の主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下である黒色顔料。
特許請求の範囲
【請求項1】
原料酸化物の主成分としてMn、Co、Ni及びFeの各酸化物を含有するとともに、前記主成分の含有量は顔料全体の90重量%以上であることを特徴とする黒色顔料。
【請求項2】
前記主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、
前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下である請求項1に記載の黒色顔料。
【請求項3】
前記原料酸化物は副成分としてCa、W、Mo、Si、Al、Zn、P、Na、K、Ti、Mg、Sn、Bi、Sr、B、Li、Ba、La、Cu又はZrの各酸化物を1種もしくは2種以上含有し、前記副成分の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、CaO、WO3、MoO3、SiO2、Al23、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、SnO2、Bi23、SrO、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、ZrO2として、前記各副成分の酸化物換算重量の総和が10重量%以下である請求項1又は2に記載の黒色顔料。
【請求項4】
原料酸化物の主成分としてMn、Co、Ni及びFeの各酸化物を含有するとともに、前記主成分の含有量は前記顔料全体の90重量%以上であって、
前記原料酸化物を混合粉砕し、800〜1200℃で焼成し、さらに平均粒径5μm以下に粉砕することを特徴とする黒色顔料の製造方法。
【請求項5】
前記主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、
前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下である請求項4に記載の黒色顔料の製造方法。
【請求項6】
前記原料酸化物は副成分としてCa、W、Mo、Si、Al、Zn、P、Na、K、Ti、Mg、Sn、Bi、Sr、B、Li、Ba、La、Cu又はZrの各酸化物を1種もしくは2種以上含有し、前記副成分の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、CaO、WO3、MoO3、SiO2、Al23、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、SnO2、Bi23、SrO、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、ZrO2として、前記各副成分の酸化物換算重量の総和が10重量%以下である請求項4又は5に記載の黒色顔料の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロム(Cr)成分を含有しない黒色顔料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機系の黒色顔料は窯業、塗料、樹脂の着色、ガラスペーストの顔料成分等、幅広い分野で使用されている。例えば、黒色顔料が使用されたガラスペーストとして、自動車用ウインドガラスの周縁部の塗膜を構成するセラミックペースト(特許文献1参照)や、プラズマディスプレイの絶縁物障壁用の絶縁ペースト等が挙げられる(特許文献2参照)。
【0003】
このような従来の黒色顔料は、その成分としてクロム(Cr)を含有しているものがほとんどである。クロム化合物のCr23は、顔料の耐熱性の向上、色調の調整のために含有させるなど、黒色顔料の製造には欠かせない原料酸化物の1つとして多用されてきた。
【0004】
しかしながら、顔料の原料酸化物として含有されるこのCrは、加熱などの条件により、発ガン性のある非常に毒性の強い6価クロム(Cr6+)に変化する。そのため、顔料の製造工程においては、必要に応じて、焼成等の加熱により生成される前記6価クロムを除去するために水洗処理等が施されており、製品である黒色顔料そのものが問題となることはほとんどない。しかし、顔料の用途によっては、その使用条件により、加熱されたり紫外線に曝されたりすることがあり、経時的変化により黒色顔料に含まれるCrが6価クロム(Cr6+)に変化することがある。そのため、黒色顔料が塗布された製品を廃棄するような場合等、その安全性が問題視されている。
【0005】
そこで、クロム成分を含有しない黒色顔料も報告されている(特許文献3参照)。しかしながら、前記特許文献3においては、その主成分としてストロンチウム化合物と鉄酸化物を用いており、ストロンチウムは水に対する溶解性が高いため、実質的には、製造方法が非水系液体かアルコールと限られている。従って、製造コストが嵩むと共に、使用範囲及び用途もごく限定されるおそれがある。
【0006】
ところで、EU諸国では電気・電子機器における生産から処分に至る全ての段階で、環境や人体に及ぼす危険性を最小化することを目的として、ローズ法が制定されている。このローズ法では、危険物質の使用が原則的に禁止されており、指定されている6物質は、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、6価クロム(Cr6+)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)である。
【0007】
ローズ法に準拠した製品開発を行う場合、使用が禁止される前記6物質が製品に含有しないように、製品を構成する部品、材料等についてまで、使用する原料成分の管理を徹底しなくてはならない。このような環境問題に配慮した有害化学物質の規制については、EU諸国だけではなく、世界各国で広がりを見せている。そのため、取引相互の関連において製品に含有される有害化学物質の管理の必要性が高まっており、各産業分野からクロム(Cr)成分そのものを含有しない顔料であって、安全性が高く、かつ色調及び経済性に優れた黒色顔料が切望されていた。
【特許文献1】特開平6−340447号公報
【特許文献2】特開平6−144871号公報
【特許文献3】特開2000−264639公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、クロム(Cr)成分を含有しないので安全性が高く、経済的で色調に優れた黒色顔料及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、原料酸化物の主成分としてMn、Co、Ni及びFeの各酸化物を含有するとともに、前記主成分の含有量は顔料全体の90重量%以上であることを特徴とする黒色顔料に係る。
【0010】
請求項2の発明は、前記主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下である請求項1に記載の黒色顔料に係る。
【0011】
請求項3の発明は、前記原料酸化物は副成分としてCa、W、Mo、Si、Al、Zn、P、Na、K、Ti、Mg、Sn、Bi、Sr、B、Li、Ba、La、Cu又はZrの各酸化物を1種もしくは2種以上含有し、前記副成分の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、CaO、WO3、MoO3、SiO2、Al23、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、SnO2、Bi23、SrO、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、ZrO2として、前記各副成分の酸化物換算重量の総和が10重量%以下である請求項1又は2に記載の黒色顔料に係る。
【0012】
請求項4の発明は、原料酸化物の主成分としてMn、Co、Ni及びFeの各酸化物を含有するとともに、前記主成分の含有量は前記顔料全体の90重量%以上であって、前記原料酸化物を混合粉砕し、800〜1200℃で焼成し、さらに平均粒径5μm以下に粉砕することを特徴とする黒色顔料の製造方法に係る。
【0013】
請求項5の発明は、前記主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下である請求項4に記載の黒色顔料の製造方法に係る。
【0014】
請求項6の発明は、前記原料酸化物は副成分としてCa、W、Mo、Si、Al、Zn、P、Na、K、Ti、Mg、Sn、Bi、Sr、B、Li、Ba、La、Cu又はZrの各酸化物を1種もしくは2種以上含有し、前記副成分の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、CaO、WO3、MoO3、SiO2、Al23、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、SnO2、Bi23、SrO、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、ZrO2として、前記各副成分の酸化物換算重量の総和が10重量%以下である請求項4又は5に記載の黒色顔料の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係る黒色顔料によると、原料酸化物の主成分としてMn、Co、Ni及びFeの各酸化物を含有するとともに、前記主成分の含有量は顔料全体の90重量%以上であるため、クロム(Cr)成分を含有せず、安全性が高い。また、色調の制限が少ない。
【0016】
請求項2の発明に係る黒色顔料によると、請求項1に記載の発明において、前記主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下であるため、色調が良好な黒色顔料を得ることができる。
【0017】
請求項3の発明に係る黒色顔料によると、請求項1又は2に記載の発明において、前記原料酸化物は副成分としてCa、W、Mo、Si、Al、Zn、P、Na、K、Ti、Mg、Sn、Bi、Sr、B、Li、Ba、La、Cu又はZrの各酸化物を1種もしくは2種以上含有し、前記副成分の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、CaO、WO3、MoO3、SiO2、Al23、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、SnO2、Bi23、SrO、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、ZrO2として、前記各副成分の酸化物換算重量の総和が10重量%以下であるため、極めて高純度の原料酸化物を用いる必要がない。
【0018】
請求項4の発明に係る黒色顔料の製造方法によると、原料酸化物の主成分としてMn、Co、Ni及びFeの各酸化物を含有するとともに、前記主成分の含有量は前記顔料全体の90重量%以上であって、前記原料酸化物を混合粉砕し、800〜1200℃で焼成し、さらに平均粒径5μm以下に粉砕するため、比較的濃度の高い黒色顔料を得ることができる。
【0019】
請求項5の発明に係る黒色顔料の製造方法によると、請求項4に記載の発明において、前記主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下であるため、色調が良好な黒色顔料を得ることができる。
【0020】
請求項6の発明に係る黒色顔料の製造方法によると、請求項4又は5に記載の発明において、前記原料酸化物は副成分としてCa、W、Mo、Si、Al、Zn、P、Na、K、Ti、Mg、Sn、Bi、Sr、B、Li、Ba、La、Cu又はZrの各酸化物を1種もしくは2種以上含有し、前記副成分の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、CaO、WO3、MoO3、SiO2、Al23、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、SnO2、Bi23、SrO、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、ZrO2として、前記各副成分の酸化物換算重量の総和が10重量%以下であるため、経済的な黒色顔料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
黒色顔料は、請求項1の発明として規定するように、原料酸化物の主成分として、Mn、Co、Ni及びFeの各酸化物を含有するとともに、前記主成分の含有量は含量全体の90重量%以上であることを特徴とする。そのため、クロム成分を含有しておらず、極めて安全性の高い顔料である。ここで、Mn、Co、Ni及びFeを主成分とする原料酸化物は特に限定されず、上記の各金属酸化物に加えて、炭酸塩、水酸化物等の金属化合物も含められる。
【0022】
具体的には、MnO2、Mn34、MnCO3、天然の二酸化マンガン粉砕品(MnO2+Fe23を含む)、Co34、CoO、CoCO3、NiO2、NiCO3、Ni(OH)2、FeO、Fe23、Fe34、FeOOH等が適宜選択され、あるいは組み合わされて使用される。
【0023】
前記原料酸化物の主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は顔料全体の90重量%以上であることが好ましい。さらに、色調バランスの良好な黒色顔料を得るために、請求項2の発明として規定するように、前記主成分であるMn、Co、Ni及びFeの各酸化物の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、前記MnをMnO2として30〜60重量%、前記CoをCo34として20〜50重量%、前記NiをNiOとして1〜15重量%、前記FeをFe23として1〜15重量%であるとともに、前記各酸化物換算重量の総和が100重量%以下であることが望ましい。
【0024】
前記原料酸化物の主成分であるMn、Co、Ni及びFeは、Cr成分を含有しない黒色顔料を製造する上で、極めて重要な成分である。この4種の成分のうち、いずれか1種でも欠けた状態で黒色顔料を製造した場合、濃度の低い顔料となる傾向がある。なお、2成分系の黒色顔料として、Fe23・MnO2系、Fe23・Co34系等の黒色顔料も知られているが、2成分系であるために色調に制約がある。また、このような2成分系の顔料を任意に混合することで、ある程度は色調を調整することはできるものの、高い耐熱性を得ることは困難である。
【0025】
それに対して、本発明に係る黒色顔料は4成分系であるため、色調の制約がほとんどなく、各原料酸化物の含有量及び後述の焼成温度を調整することで、用途に適した色調の黒色顔料を得ることができる。
【0026】
前記原料酸化物を用いて、各原料酸化物を所定範囲の含有量とすることで、黒色顔料の用途に応じて、後述の実施例のように、好適な色調に調整することができる。例えば、黒色顔料における原料酸化物であるMnO2の含有量を多くすれば、濃度が濃い黒色顔料となる。同様に、Co34の含有量を多くすれば青味が強い黒色顔料となり、NiO2の含有量を多くすれば緑味の強い黒色顔料となる。また、Fe23の含有量を多くすれば濃度が濃く、他の主成分との関係により赤味のある黒色顔料となる。
【0027】
具体的には、本発明における黒色顔料の濃度及び色調は、一の原料酸化物の含有量を増加させると、他の原料酸化物の含有量が相対的に減少するため、他の原料酸化物との成分バランスにより変化する。また、焼成温度によっても変化するが、詳細については実施例で述べる。
【0028】
前記原料酸化物は、請求項3の発明として規定するように、副成分としてCa、W、Mo、Si、Al、Zn、P、Na、K、Ti、Mg、Sn、Bi、Sr、B、Li、Ba、La、Cu又はZrの各酸化物を1種もしくは2種以上含有していてもよい。なお、前記副成分は、酸化物、炭酸塩、水酸化物等の化合物として、含有されていても構わない。例えば、CaO、CaCO3、WO3、MoO3、SiO2、Al23、Al(OH)3、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、MgCO3、SnO2、H2SnO3、Bi23、SrO、SrCO3、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、Cu2O、CuCO3、ZrO2等がある。
【0029】
前記副成分の含有量は、前記顔料全体に対し酸化物換算重量で、CaO、WO3、MoO3、SiO2、Al23、ZnO、P25、Na2O、K2O、TiO2、MgO、SnO2、Bi23、SrO、B23、Li2O、BaO、La23、CuO、ZrO2として、前記各副成分の酸化物換算重量の総和が10重量%以下とされることが望ましい。前記副成分は、用途に応じた所望の色調の黒色顔料となるように、原料酸化物の主成分の配合に伴い、その含有量は適宜調整される。
【0030】
このような副成分は、通常市販されている原料酸化物には、はじめから不純物として含有されていたり、顔料の製造工程において混合粉砕時に媒体等から不純物として混入されるものも含まれる。従って、極めて高純度の原料を用いたり、不純物の混入を避けるための特別な製造管理や方法を用いる必要がなく、原料や製造コストが比較的安価ですむ。なお、副成分によっては、前記原料酸化物が反応することにより生成される複合酸化物の結晶成長を促進させる効果をもつ場合もある。
【0031】
次に、前述の原料酸化物を用いた黒色顔料の製造方法について説明する。請求項4ないし6の発明として規定するように、前記原料酸化物を混合粉砕し、800〜1200℃で焼成し、さらに平均粒径5μm以下に粉砕する。
【0032】
前記原料酸化物は、公知の手法により混合・粉砕することができ、ボールミル、振動ミル、アトライター等を用いることができる。特に、湿式及び乾式どちらの手法によっても混合粉砕が可能であるので、生産性が高く、コスト的にも有利である。例えば、ボールミルにおける湿式の混合粉砕方法について説明すると、前記原料酸化物、水、ボール及び粉砕助剤(分散剤、消泡剤等)などがボールミルに投入されて混合粉砕が行われる。粉砕助剤である消泡剤及び分散剤等は、前記原料酸化物が均一に混合粉砕されるように、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、前記原料酸化物に応じて、その配合量が調節される。
【0033】
ボールミルとしては、アルミナ、ジルコニア、ゴム、ウレタン、ナイロン、珪石等のライニング材を当該ボールミル内の表面に敷設した公知のものを使用することができる。中でも、アルミナ及びジルコニアは、他のライニング材と比較して硬度が高く、顔料中へのライニング材の混入を減少させることができ、また、粉砕時間の短縮が可能であるため好ましい。
【0034】
また、粉砕ボールとしては、アルミナボール、ジルコニアボール、磁器ボール、鋼鉄ボール等が使用され、好ましくはアルミナボール、ジルコニアボールであり、コスト削減等の観点から、アルミナボールが特に好ましい。また、ウレタンまたはナイロンのライニングに、ジルコニアボールが使用されることも好ましい。焼成時にウレタン、ナイロンは炭化、消失するため、不純物の混入のおそれが少ないためである。なお、前記粉砕ボールの粒径は、原料酸化物の粒径の大きさに合わせて適宜変更される。
【0035】
粉砕助剤の一つである分散剤としては、ポリカルボン酸系化合物、並びにポリアクリル酸系化合物であるポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウムに加え、ポリカルボン酸ナトリウム、スルホン酸系重合体(ナトリウム塩)等が挙げられる。粉砕助剤を好適に添加することにより、原料酸化物の分散性が良好になり、比較的短時間で小さく粉砕することができる。とりわけ、ポリアクリル酸アンモニウムは、焼成によりほぼ分解され、他の粉砕助剤と比してナトリウム分の残存もないため、好ましく用いられる。
【0036】
ボールミル、ポットミル等による粉砕においては、当該粉砕後の原料酸化物の平均粒径は、2μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.7μm以下に粉砕される。この平均粒径は焼成により生成される複合酸化物の焼結による粒子成長を考慮したものであり、また、平均粒径が小さい方が各原料酸化物同士の反応性が高まり、好ましい結晶構造を有する複合酸化物が得られやすいためである。
【0037】
得られた混合粉砕物はスラリータンクに投入され、スプレードライヤー、フィルタープレス(脱水乾燥機)、デカンター(遠心分離脱水乾燥機)等の公知の乾燥手段により乾燥される。水分含有量は1.0%以下、好ましくは0.5%以下とされる。乾燥に際してフィルタープレス、デカンター等を用いる場合には、あらためて乾燥を行い乾式粉砕を必要とするため、製法の便宜上、スプレードライヤーの使用が好ましい。なお、乾燥工程は混合粉砕後の水分量の状態いかん等により省略されることもある。
【0038】
前記各原料酸化物を混合粉砕後に、焼成(仮焼ともいう)が行われる。前記焼成においては、ムライト質、アルミナ質等からなる匣鉢を用いることが多く、必要に応じて、前記混合粉砕物には、焼結促進剤としてB23、Na2O、K2O、CaO、BaO、MgO、P25等も添加される。電気炉、トンネルキルン、シャットルキルン、ローラーハースキルン等の公知の焼成炉により焼成される。なお、ロータリーキルンを用いる際には、混合粉砕物は直接にキルン内に投入される。焼成することにより、各原料酸化物が反応して複合酸化物を生成し、目的の機能を満たす結晶構造を形成することができる。
【0039】
この焼成温度は、800〜1200℃で行われることが好ましく、さらに好ましくは900〜1200℃である。また、前記焼成温度における保持時間は、2〜6時間程度であり、好ましくは3時間である。焼成することによって、複合酸化物が生成され、その複合酸化物の結晶成長、緻密化の程度などによって、黒色顔料の色調や濃度が変化する。そのため、黒色顔料の用途によって、所望とする色調を得るためには、焼成温度及び焼成時間等の諸条件を含有される各原料酸化物に応じて、適宜選択する必要がある。
【0040】
焼成後は、平均粒径5μm以下に粉砕され、好ましくは平均粒径0.5〜2μm、さらに好ましくは平均粒径0.8〜1μmに粉砕される。焼成後に粉砕を行うことによって、得られる黒色顔料の平均粒径が小さくなると、その比表面積は大きくなり、濃度が濃くなると共に、色調がより均一となるため再現性の良好な顔料を製造することができる。なお、黒色顔料の平均粒径は、粉砕時間等により、適宜調整可能である。
【0041】
前記粉砕には、前述のように、焼成前の粉砕と同様に公知の手法により粉砕することができる。湿式法によるボールミル粉砕等を行うときは、必要により、スプレードライヤー等により乾燥しても構わない。乾燥により、顔料が凝集した場合には、ジェットミル、振動ミル、ハンマーミル等の衝撃粉砕装置を用いて粉砕することができる。
【0042】
本発明により得られた黒色顔料は、クロム(Cr)成分を含有しておらず、以下のように非常に経済的であると共に、安全性に極めて優れている。従来、顔料の製造工程において、生成される6価クロム(Cr6+)を除去するために、場合によっては水洗工程を設けることが必要であったが、この水洗工程を省くことができ、さらに、それに付随する乾燥、粉砕工程も省くことができる。そのため、製造時間を非常に短縮できると共に、大幅な製造コストの削減が図れる。加えて、原料酸化物についても極めて高純度で高価な原料を用いる必要がなく、通常市販されている比較的安価な原料を使用することができるため、コスト的に大変有利である。
【0043】
また、クロム(Cr)成分を含有しない黒色顔料であるので、用途や使用環境によって有害物質である6価クロムが生成されるおそれもない。その上、前記諸条件により黒色顔料を製造することで、色調を調整でき、濃度の高い黒色顔料を得ることができる。このような黒色顔料の用途としては、例えば樹脂顔料、塗料顔料、セラミック用着色顔料(自動車用窓ガラス紫外線吸収・反射顔料等を含む)、熱放射顔料、赤外線反射顔料などが挙げられる。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
原料酸化物として、NiO(住友金属鉱山株式会社製、粉砕酸化ニッケル)、Co34(OMG株式会社製、酸化コバルト71/72%)、Mn34(東ソー株式会社製、ブラウノックス)、FeOOH(戸田工業株式会社製、Y−48)、CuO(日進ケムコ株式会社製、N−520)を用いた。前記各原料酸化物は下記表1に示す含有量となるように配合した。すなわち、原料酸化物として使用するMn34の場合は、MnO2に換算して、またFeOOHの場合は、Fe23に換算して下記表1の含有量となるように調製を行った後に、ボールミル混合・粉砕を行った。混合粉砕における配合は、前記各原料酸化物の総重量100g、アルミナボール(直径5〜10mm)500g、水50g、また、減水剤(ポリアクリル酸アンモニウム、東亜合成株式会社製、A−6114)は前記各原料酸化物の総重量に対して0.5〜2重量%となるようにした。ボールミルにて混合粉砕を20時間行い、混合粉砕物を得た。
【0045】
前記混合粉砕物は、スプレードライヤーを用いて、熱風温度280℃にて乾燥後、電気炉にて900℃で3時間保持して焼成した。焼成後は、再びボールミルにて湿式粉砕を行った。なお、粉砕条件は、前述の混合粉砕における条件と同様とした。湿式粉砕後は、前記乾燥条件と同様、スプレードライヤーを用いて、熱風温度280℃にて乾燥し、実施例1の黒色顔料を得た。
【0046】
[実施例2〜15]
実施例1における各原料酸化物(NiO、Co34、MnO2、Fe23、CuO)の含有量を下記表1のように調製したことを除いて、実施例1と同様の処理を行い実施例2〜15の黒色顔料を得た。
【0047】
【表1】


【0048】
本実施例の黒色顔料について平均粒径(μm)を測定した。また、黒色顔料の焼成温度の条件を900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃と変えて得られたそれぞれの顔料について、色彩・色差測定、外観評価、総合評価を行った。なお、焼成温度の条件を除いては、実施例1と同様の処理を行った。
【0049】
[平均粒径]
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製:LA−910)を用いて測定を行った。
【0050】
[色彩・色差測定]
上述のように、前記各実施例の焼成温度を変えて得られた各々の黒色顔料を円形のアルミニウム製の枠に入れ、200(kg/cm2)で加圧して試料を作製した。前記試料表面にガラス板を載置し、ガラス板上から色彩・色差を測定した。L***表色系(JISZ8729)に準拠して、色彩色差計(コニカミノルタホールディング株式会社製:CR−300)を使用して測定を行った。
【0051】
[外観評価、総合評価]
前記色彩・色差測定において、作製した試料を用いて、外観及び総合評価を行った。外観評価は、目視により行い、良好であるものは“○”、極めて優れているものは“◎”とした。また、総合評価は、外観評価の結果及び色彩・色差測定において得られたL、a、bの値(濃度、色調)を考慮して、総合的に判断して良好であれば“○”、極めて優れているものは“◎”とした(後述の表2及び表3参照)。
【0052】
前記実施例について、前述の測定方法により平均粒径(μm)の測定を行った。本実施例の黒色顔料の平均粒径は0.8〜1.5μmの値を示し、本実施例に係る黒色顔料の製造方法により、平均粒径が比較的小さく、均一な顔料粉末が得られた。
【0053】
また、実施例1〜15の各焼成温度に伴う色彩・色差測定及び外観・総合評価について、下記表2及び表3に示す。なお、表2及び表3中において、Lは明度を、a、bは色相と彩度を示す色度を表している。具体的には、Lの値が小さくなると濃度が高くなり、aの値が小さくなると赤味が減り、bの値が小さくなると黄味が減る。
【0054】
【表2】


【0055】
【表3】


【0056】
表2及び表3から、各酸化物原料の含有量と黒色顔料の濃度や色調との関係は次のようになった。MnO2の含有量を減少させてCo34の含有量を増加させると赤味が減って、青味が増し、濃度が高くなる傾向がみられた。また、MnO2の含有量を減らし、NiO又はFe23の含有量を増やすと濃度が低くなった。MnO2の含有量を減らしてCuOを増加させたときは、濃度が低くなり赤味が増した。
【0057】
Co34の含有量を減らし、NiOの含有量を増加させると、濃度はほとんど変わらないが、赤味が増した。同様に、Co34の含有量を減らし、CuOの含有量を増加させると、濃度はほとんど変わらないが、黄味(茶味)が増した。Co34の含有量を減らして、Fe23の含有量を増やすと、濃度が高くなり赤味が増した。
【0058】
NiOの含有量を減少させて、Fe23の含有量を増加させると、濃度が高くなり、赤味が減少した。NiOの含有量を減少させてCuOの含有量を増加させると、焼成温度により濃度変化が異なり、焼成温度が900℃においては、濃度が減少し、赤味が増したが、焼成温度が1000℃及び1050℃においては、濃度が増加して赤味が増した。
【0059】
同様に、Fe23の含有量を減少させて、CuOの含有量を増加させると、焼成温度により濃度の変化が異なり、焼成温度が900℃においては、濃度が減少し、赤味が増したが、焼成温度が1000℃及び1050℃においては、濃度が増加して赤味が増した。
【0060】
次に、焼成温度と黒色顔料の濃度や色調との関係は以下のようになった。原料酸化物としてCuOを含有しない、表2中の実施例1〜8において、焼成温度が低い方が濃度が高くなる傾向が見られた。これに対して、原料酸化物としてCuOが含有されている表3中の実施例9〜15は、焼成温度を1000℃付近まで上げたときが、最も濃度が高くなった。
【0061】
また、黒色顔料の外観及び総合評価は表2及び表3に示す通り、良好なものが得られた。なかでも、原料酸化物としてCuOを含有していない実施例1〜8のなかでは、900℃で焼成を行った実施例1、実施例2、実施例5、実施例7及び実施例8の外観が極めて優れており、総合評価では実施例5が極めて優れていた(表2参照)。一方、原料酸化物としてCuOを含有している実施例9〜15中では、1000℃で焼成した実施例12、実施例13が外観、及び総合評価共に極めて優れていた(表3参照)。以上の結果から、本実施例の黒色顔料は、色調の制限が少なく、原料酸化物であるMnO2、Co34、NiO、Fe23の各酸化物の含有量が好適に調整されているため、外観・総合評価ともに優れた黒色顔料を得ることができた。




 

 


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