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発明の名称 ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−31509(P2007−31509A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−214295(P2005−214295)
出願日 平成17年7月25日(2005.7.25)
代理人
発明者 武居 雅美子 / 梶丸 弘
要約 課題
有機溶剤の含有率が低い場合においても衝撃安定性に優れ、基材への密着性に優れる樹脂被膜を形成することができる低酸価のポリエステル樹脂を含有し、かつ、高収率で製造可能なポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法を提供する。

解決手段
酸価2〜10mgKOH/gかつZ平均分子量230,000以上であるポリエステル樹脂が水性媒体に分散されてなり、有機溶剤の含有量が3質量%以下であるポリエステル樹脂水性分散体。
特許請求の範囲
【請求項1】
酸価2〜10mgKOH/gかつZ平均分子量230,000以上であるポリエステル樹脂が水性媒体に分散されてなり、有機溶剤の含有量が3質量%以下であるポリエステル樹脂水性分散体。
【請求項2】
ポリエステル樹脂が、多塩基酸成分として芳香族ジカルボン酸を50モル%以上含有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
【請求項3】
ポリエステル樹脂が、多価アルコール成分としてエチレングリコールとネオペンチルグリコールを合計50モル%以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
【請求項4】
ポリエステル樹脂が、3官能以上の多官能成分を全ジカルボン酸成分に対して0.2〜3.0モル%の割合で共重合した後、これを多塩基酸を用いて解重合反応および/または付加反応をおこなうことにより製造されたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体。
【請求項5】
酸価2〜10mgKOH/gかつZ平均分子量230,000以上であるポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を塩基性化合物とともに水に分散して転相乳化後、常圧下で有機溶剤を除去することを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
【請求項6】
ポリエステル樹脂が、3官能以上の多官能成分を全ジカルボン酸成分に対して0.2〜3.0モル%の割合で共重合した後、これを多塩基酸を用いて解重合反応および/または付加反応をおこなうことにより製造されたものであることを特徴とする請求項5記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種基材に塗布され、優れた樹脂被膜を形成することができるポリエステル樹脂水性分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、被膜形成用樹脂として、被膜の加工性、有機溶剤に対する耐性(耐溶剤性)、耐候性、各種基材への密着性などに優れていることから、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤などの分野におけるバインダ成分として大量に使用されている。
【0003】
特に近年、環境保護、省資源、消防法などによる危険物規制、職場環境改善の立場から有機溶剤の使用が制限される傾向にあり、前記の用途に使用できるポリエステル樹脂系バインダとして、ポリエステル樹脂を水性媒体に微分散させたポリエステル樹脂水性分散体の開発が盛んにおこなわれている。
【0004】
たとえば、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することにより水性媒体中に分散させたポリエステル樹脂水性分散体が提案されており、かかる水性分散体を用いると加工性、耐水性、耐溶剤性などの性能に優れた被膜を形成できることが開示されている(特許文献1〜4)。
【0005】
特許文献1、2のポリエステル樹脂水性分散体は、耐溶剤性に優れたポリエステル樹脂被膜を形成し、コーティング剤として使用できるものであるが、環境保護や職場環境改善の立場から水性分散体中の有機溶剤量のさらなる低減が望まれ、特許文献3が提案されている。また、特許文献1〜3に使用するポリエステル樹脂は8mgKOH/g以上の酸価に対応するカルボキシル末端基を有しており、結果としてポリエステル樹脂の分子量が制限され、加工性や密着性が不十分な場合があるため、特許文献4が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−26709号公報
【特許文献2】特開2000−313793号公報
【特許文献3】特開2002−173582号公報
【特許文献4】国際公開第2004/037924号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの文献に記載されたポリエステル樹脂水性分散体は、酸価が小さいポリエステル樹脂を使用しているため、塩基性化合物による中和により生成されるカルボキシアニオンの生成量が少ない。カルボキシアニオンは水性媒体に分散しているポリエステル樹脂に安定性を付与するものであるので、カルボキシアニオンの生成量が少ないと、ポリエステル樹脂水分散体に含まれる有機溶剤の含有率が低い場合には、外部からの衝撃によって水性媒体中のポリエステル樹脂が容易に凝集するという問題点があった。
【0008】
また、ポリエステル樹脂水性分散体に含まれる有機溶剤を常圧下で除去する工程において、ポリエステル樹脂の凝集物が多く発生し、収率が低下するという問題点もあった。
【0009】
このような状況下、本発明の課題は、有機溶剤の含有率が低い場合においても衝撃安定性に優れ、基材への密着性が良好な樹脂被膜を形成することができる低酸価のポリエステル樹脂を含有し、かつ、高収率で製造可能なポリエステル樹脂水性分散体、および、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の分子量分布を有するポリエステル樹脂を用いることによって、有機溶剤の含有率が低い場合においても衝撃安定性に優れたポリエステル樹脂水性分散体を高収率で得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、第一に、酸価2〜10mgKOH/gかつZ平均分子量230,000以上であるポリエステル樹脂が水性媒体に分散されてなり、有機溶剤の含有量が3質量%以下であるポリエステル樹脂水性分散体であり、第二には、酸価2〜10mgKOH/gかつZ平均分子量230,000以上であるポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を塩基性化合物とともに水に分散して転相乳化後、常圧下で有機溶剤を除去することを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、高分子量のポリエステル樹脂が安定に分散されており、加工性、各種基材への密着性、耐水性などの被膜性能に優れた樹脂被膜を形成することができる。したがって、塗料、コーティング剤、接着剤として単独であるいは他成分を混合してバインダ成分として好適に使用でき、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、また、これらの蒸着フィルムなど、各種フィルムのアンカーコート剤や接着性付与剤(易接着)、アルミ板、鋼板およびメッキ鋼板など、各種金属板のアンカーコート剤や接着性付与剤(易接着)、プレコートメタル塗料、紙塗工剤、繊維処理剤、紙、金属板、樹脂シートなどの基材を貼り合わせるための接着剤、インキのバインダなどの用途に用いることができる。
【0013】
さらに、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は衝撃安定性に優れているため、攪拌装置を用いて他成分と混合する場合、グラビアコータやロールコータなどを用いて各種基材に高速でコーティングする場合、輸送する場合などに、ポリエステル樹脂水性分散体が衝撃を受けても、ポリエステル樹脂の凝集を抑えることができる。
【0014】
また、ポリエステル樹脂水性分散体に含まれる有機溶剤の含有率を低減しているので、環境保護や職場環境改善の立場からだけでなく、前記用途において、より広範囲な基材に好適に使用できる。
【0015】
加えて、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、所要時間、作業性の面から実用的な常圧下での有機溶剤除去をおこなった場合においても高収率で製造可能であることから、工業化する上で好適である。このように、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、酸価が2〜10mgKOH/gであり、Z平均分子量が230,000以上であるポリエステル樹脂が水性媒体中に分散されてなる液状物である。
【0018】
まず、ポリエステル樹脂について説明する。
【0019】
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価は、2〜10mgKOH/gである必要があり、4〜9mgKOH/gであることが好ましく、5〜8mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が10mgKOH/gを超えると、ポリエステル樹脂の分子量が低くなって、樹脂被膜の加工性や密着性が低下し、さらには耐水性が不十分となる。また、酸価が2mgKOH/g未満である場合には、均一な水性分散体を得ることが困難になる。
【0020】
なお、水酸基は樹脂被膜の耐水性を損なわない範囲で含まれていてもよく、通常その水酸基価は30mgKOH/g以下であり、20mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0021】
ポリエステル樹脂のZ平均分子量は230,000以上である必要があり、好ましくは250,000以上、より好ましくは270,000以上である。Z平均分子量が230,000未満である場合には、後述する製造工程において、水性分散体の体積平均粒径を小さくして貯蔵安定性を向上させるがために、塩基性化合物を多量に使用する必要があり、塩基性化合物の使用量が多くなれば、常圧蒸留によって有機溶剤を除去している間にポリエステル樹脂が凝集しやすくなり、収率が低下するため好ましくない。また、有機溶剤を除去した後のポリエステル樹脂水性分散体の衝撃安定性が劣る傾向にあるため好ましくない。
【0022】
Z平均分子量の上限については特に限定されないが、未分散のポリエステル樹脂を減らすという観点から、ポリエステル樹脂のZ平均分子量は800,000以下であることが好ましい。ここで、Z平均分子量とはポリエステル樹脂の分子量分布において下記式(1)で定義される平均分子量Mzである。
Mz=Σn/Σn (1)
〔ただし、式(1)中、Mは樹脂中の成分iの分子量、nは成分iのモル分率を示す。〕
【0023】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、水性分散体の貯蔵安定性が優れる傾向にあることから、−50〜120℃が好ましく、0〜90℃がより好ましい。
【0024】
次に、ポリエステル樹脂の構成成分について説明する。
【0025】
ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上の多塩基酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸およびその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物などが挙げられる。3官能以上の多塩基酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0026】
多塩基酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましく、ポリエステル樹脂の多塩基酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合としては、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸の割合を増すことにより、水性分散体から形成される樹脂被膜の硬度、耐水性、耐溶剤性、加工性などが向上する。芳香族ジカルボン酸としては、工業的に多量に生産されており、安価であることから、テレフタル酸やイソフタル酸が好ましい。
【0027】
また、多塩基酸として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など、カルボキシル基や水酸基以外の親水性基を有する多塩基酸も使用することができるが、水性分散体より形成される樹脂被膜の耐水性が悪くなる傾向にあるので、使用にあたっては注意が必要である。
【0028】
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール、3官能以上の多価アルコールなどが挙げられる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどが挙げられ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。3官能以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0029】
また、多価アルコールとして、2,2−ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のエチレンオキシド付加体やビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のエチレンオキシド付加体なども使用することができる。
【0030】
多価アルコールとしては、工業的に多量に生産されており、安価であることから、エチレングリコールやネオペンチルグリコールを使用することが好ましく、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分に占めるエチレングリコールとネオペンチルグリコールの合計の割合としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。エチレングリコールは特に樹脂被膜の耐薬品性を向上させ、ネオペンチルグリコールは特に樹脂被膜の耐候性を向上させるという長所を有する。
【0031】
ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよく、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール、ε-カプロラクトン、乳酸、β-ヒドロキシ酪酸、p-ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体などが挙げられる。
【0032】
また、ポリエステル樹脂には3官能以上の多価オキシカルボン酸が共重合されていてもよく、たとえば、リンゴ酸、グリセリン酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
【0033】
次に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体について説明する。
【0034】
本発明の水性分散体は、前記したポリエステル樹脂が水性媒体中に分散されてなる液状物である。ここで、水性媒体とは水を含む液体からなる媒体であり、後述する塩基性化合物や有機溶剤が含まれていてもよい。
【0035】
本発明の水性分散体におけるポリエステル樹脂の含有率は5〜50質量%が好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の含有率が50質量%を超えると分散していたポリエステル樹脂が凝集しやすくなり、貯蔵安定性が損なわれる傾向にある。ポリエステル樹脂の含有率が5質量%未満では実用的でない。
【0036】
また、本発明のポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径、すなわち、水を含む水性媒体中に分散しているポリエステル樹脂の体積平均粒径は、通常400nm以下であり、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。体積平均粒径が400nmを超えると、分散していたポリエステル樹脂が凝集しやすくなり、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
【0037】
水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0038】
次に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
【0039】
本発明の水性分散体は、後述するように、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を塩基性化合物とともに水に分散して転相乳化をおこなった後、常圧下で有機溶剤を除去して得ることができる。
【0040】
まず、ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
【0041】
ポリエステル樹脂は前記した多塩基酸の1種類以上と多価アルコールの1種類以上とを公知の方法により重縮合させることにより製造することができ、たとえば、全モノマー成分、および/または、その低重合体を不活性雰囲気下で180〜260℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて重縮合触媒の存在下、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法などを挙げることができる。
【0042】
ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する方法として、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸や多価アルコールをさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合をおこなう方法などを挙げることができる。
【0043】
また、ポリエステル樹脂に所望の酸価を付与する方法として、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸無水物をさらに添加し、不活性雰囲気下、ポリエステル樹脂の水酸基と付加反応する方法を用いることもできる。
【0044】
本発明においては、3官能以上の多官能成分を全ジカルボン酸成分に対して0.2〜3.0モル%の割合で共重合した後に、多塩基酸を用いて解重合反応および/または付加反応してポリエステル樹脂を製造する方法が、ポリエステル樹脂の分子量と酸価を容易にコントロールできる点で好ましい。
【0045】
共重合に用いる3官能以上の多官能成分としては、前記した3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多塩基酸、3官能以上の多価オキシカルボン酸などが挙げられる。
【0046】
解重合反応および/または付加反応で用いる多塩基酸としては、3官能以上の多塩基酸が好ましい。3官能以上の多塩基酸を使用することにより、解重合反応によるポリエステル樹脂の分子量低下を抑えながら、所望の酸価を付与することができる。また、その理由が十分解明できているわけではないが、3官能以上の多塩基酸を使用することにより、貯蔵安定性の優れた水性分散体を得ることができる。
【0047】
解重合反応および/または付加反応で用いる多塩基酸としては、ポリエステル樹脂の構成成分で説明した多塩基酸が挙げられるが、その中でも、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸や3官能の多塩基酸であるトリメリット酸、無水トリメリット酸が好ましい。特に無水トリメリット酸を使用した場合には、解重合反応と付加反応が並行して起こると考えられることから、より好ましい。
【0048】
次に、水性分散体の製造方法について説明する。
【0049】
ポリエステル樹脂を水性媒体中に分散する方法を例示する。たとえば、塩基性化合物によってポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和してカルボキシルアニオンを生成し、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂の微粒子が凝集せず安定に分散しているポリエステル樹脂水性分散体などを挙げることができる。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を塩基性化合物とともに水に分散させて転相乳化後、常圧下で有機溶剤を除去する(脱溶剤する)製造方法が、有機溶剤の含有率が低いポリエステル樹脂水性分散体を得る上で好ましい。
【0051】
まず、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液について説明する。
【0052】
ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液中のポリエステル樹脂の濃度は、10〜70質量%の範囲とすることが好ましく、20〜50質量%の範囲がより好ましい。溶液中のポリエステル樹脂の濃度が70質量%を越える場合には、次の転相乳化において、水と混合した場合に粘度の上昇が大きくなり、このような状態から得られた水性分散体は体積平均粒径が大きくなる傾向にあり、貯蔵安定性を損なうため好ましくない。また、ポリエステル樹脂の濃度が10質量%未満の場合には、脱溶剤の際に多量の有機溶剤を除去することになり経済的に好ましくない。ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解するための装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱をおこなってもよい。
【0053】
なお、ポリエステル樹脂は、単独あるいは2種以上を混合して溶解してもよい。
【0054】
有機溶剤としては、公知のものを使用することができ、たとえば、ケトン系有機溶剤、芳香族系炭化水素系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、含ハロゲン系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤などが挙げられる。ケトン系有機溶剤としては、メチルエチルケトン(以下MEKと記す)、アセトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(以下MIBKと記す)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが例示できる。芳香族炭化水素系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼンなど、エーテル系有機溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、含ハロゲン系有機溶剤としては、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジククロロメタンなど、アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールなど、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルなど、グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどを例示することができる。また、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチルなどの有機溶剤が挙げられ、これら前記した有機溶剤を単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
本発明の水性分散体を得るためには、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解することができるような有機溶剤の選択をおこなうことが好ましく、20質量%以上溶解することができる有機溶剤がより好ましい。このような有機溶剤としては、アセトン、MEK、MIBK、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン単独や、アセトン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MEK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MIBK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、ジオキサン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、テトラヒドロフラン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、シクロヘキサノン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、アセトン/イソプロパノール混合溶液、MEK/イソプロパノール混合溶液、MIBK/イソプロパノール混合溶液、ジオキサン/イソプロパノール混合溶液、テトラヒドロフラン/イソプロパノール混合溶液、シクロヘキサノン/イソプロパノール混合溶液などが好適に使用できる。
【0056】
次に、転相乳化について説明する。
【0057】
転相乳化は、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に、水、塩基性化合物と混合しておこなう。本発明においては、塩基性化合物をポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に加えておき、これに水を徐々に投入して転相乳化をおこなうことが好ましい。水の添加速度が速い場合には、ポリエステル樹脂の塊が形成され、この塊は、もはや水性媒体に分散しなくなる場合があり、最終的に得られる水性分散体の収率が下がり、経済的ではない。
【0058】
なお、本発明において「転相乳化」とは、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に、この溶液に含まれる有機溶剤量(質量)を超える量(質量)の水を添加して、有機溶剤よりも水を多く含む液相にポリエステル樹脂を分散させることを意味する。
【0059】
転相乳化は、30℃以下でおこなうことが好ましく、20℃以下でおこなうことがより好ましい。30℃以下で転相乳化をおこなうことにより、得られるポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径は小さくなり、貯蔵安定性の優れた水性分散体を得ることができる。また、体積平均粒径が小さい場合、後述する脱溶剤において、ポリエステル樹脂の微粒子が凝集して沈殿することを抑制でき、その結果、収率が向上するため好ましい。
【0060】
転相乳化をおこなう装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(たとえばホモミキサー)として広く当業者に知られている装置が挙げられる。なお、ホモミキサーなど剪断の大きい乳化機を用いる際には、衝撃熱により液温が上昇することがあるため、冷却しながら用いることが好ましい。なお、転相乳化は常圧、減圧、加圧下いずれの条件でおこなってもよい。
【0061】
次に、有機溶剤の除去(脱溶剤)について説明する。
【0062】
有機溶剤の除去は、転相乳化した後に蒸留する方法によりおこなうことができる。蒸留は、常圧、減圧下いずれでおこなってもよいが、所要時間、作業性の面からは常圧下でおこなうことが好ましい。本発明の範囲内のポリエステル樹脂を使用することにより、常圧下で蒸留しても凝集物が発生しにくく、収率よく水性分散体を得ることができる。
【0063】
水性分散体中の有機溶剤量は、環境問題、職場環境の改善、樹脂被膜物性に悪影響を与える残存有機溶剤の低減、貯蔵安定性などの観点から3質量%以下とする必要があり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下が最も好ましい。
【0064】
蒸留をおこなう装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。
【0065】
前記製造方法により、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、外観上、水性媒体中に沈殿、相分離といった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない均一な状態で得られる。
【0066】
水性分散体の製造にあたっては、異物などを除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、たとえば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)をおこなえばよい。
【0067】
次に、本発明の水性分散体の使用方法について説明する。
【0068】
本発明の水性分散体は、被膜形成能に優れているので、公知の製膜方法、たとえばディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法などにより各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥および焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒータなどを使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の種類などにより適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、通常60〜250℃であり、70〜230℃が好ましく、80〜200℃が最適である。加熱時間としては、通常1秒〜30分間であり、5秒〜20分が好ましく、10秒〜10分が最適である。
【0069】
また、本発明の水性分散体を用いて形成される樹脂被膜の厚さは、その目的や用途によって適宜選択されるものであるが、通常0.01〜40μmであり、0.1〜30μmが好ましく、0.5〜20μmが最適である。
【0070】
また、本発明の水性分散体には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、界面活性剤、保護コロイド作用を有する化合物、水、有機溶剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラックなどの顔料、染料、他の水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性オレフィン樹脂、水性アクリル樹脂などの水性樹脂などを配合して使用することができる。
【0071】
硬化剤としては、ポリエステル樹脂が有する官能基、たとえばカルボキシル基やその無水物および水酸基と反応性を有する硬化剤であれば特に限定されるものではなく、たとえば尿素樹脂やメラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂などのアミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物およびその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有重合体、フェノール樹脂などが挙げられ、これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0072】
また、添加剤としては、ハジキ防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、滑剤などが挙げられる。
【0073】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など、すべての界面活性剤が含まれる。非イオン性界面活性剤としては、ノニルフェノール、オクチルフェノールなどのアルキルフェノールのアルキレンオキシド加物や高級アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられ、このような非イオン性界面活性剤としてはAldrich社製のIgepalシリーズ、三洋化成株式会社製のナロアクティーN-100、ナロアクティーN-120、ナロアクティーN-140など、ナロアクティーシリーズ、サンノニックSS−120、サンノニックSS−90、サンノニックSS−70など、サンノニックSSシリーズ、サンノニックFD−140、サンノニックFD−100、サンノニックFD−80など、サンノニックFDシリーズ、セドランFF−220、セドランFF−210、セドランFF−200、セドランFF−180など、セドランFFシリーズ、セドランSNP−112など、セドランSNPシリーズ、ニューポールPE−64、ニューポールPE−74、ニューポールPE−75など、ニューポールPEシリーズ、サンモリン11が挙げられる。
【0074】
また、保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリル酸および/またはメタクリル酸を一成分とするビニルモノマーの重合物、ポリイタコン酸、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、膨潤性雲母などを例示することができる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0076】
(1)ポリエステル樹脂の構成
H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。また、H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
【0077】
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=1/9(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
【0078】
(3)ポリエステル樹脂の水酸基価
ポリエステル樹脂3gを精秤し、無水酢酸0.6mlおよびピリジン50mlを加え、室温下で48時間攪拌して反応させ、続いて、蒸留水5mlを添加して、さらに6時間、室温下で攪拌を継続することにより、前記反応に使われなかった分の無水酢酸も全て酢酸に変えた。この液にジオキサン50mlを加えて、クレゾールレッド・チモールブルーを指示薬としてKOHで滴定をおこない、中和に消費されたKOHの量(W)と、最初に仕込んだ量の無水酢酸がポリエステル樹脂と反応せずに全て酢酸になった場合に中和に必要とされるKOHの量(計算値:W)とから、その差(W−W)をKOHのmg数で求め、これをポリエステル樹脂のg数で割った値を水酸基価とした。
【0079】
(4)ポリエステル樹脂の分子量
Z平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型および紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)によりZ平均分子量および数平均分子量を求めた。
【0080】
(5)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
【0081】
(6)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を約1g秤量(Xgとする)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物(固形分)の質量を秤量し(Ygとする)、次式により固形分濃度を求めた。
【0082】
固形分濃度(質量%)=Y/X ×100
【0083】
(7)水性分散体中の有機溶剤含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−UNIPORT HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
【0084】
(8)水性分散体の貯蔵安定性
50mlのガラス製サンプル瓶に、水性分散体を30ml入れ、25℃で60日間保存した後の外観変化を目視にて観察し、貯蔵安定性を評価した。
○:変化なく、合格。
×:底部一面に沈殿が堆積しており、不合格。
【0085】
(9)水性分散体の体積平均粒径
水性分散体を0.1%に水で希釈し、日機装社製MICROTRAC UPA(モデル9340−UPA)を用いて体積平均粒径を測定した。
【0086】
(10)樹脂被膜の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE)を用いて、基材の厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いて基材上に樹脂被膜を形成した後、この樹脂被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂被膜の厚さとした。
【0087】
(11)樹脂被膜の密着性
卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いて、基材上に水性分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、基材上に厚み約1μmの樹脂被膜を形成させ、ついで、この樹脂被膜上にJIS Z−1522に規定された粘着テープ(幅18mm)の端部を残して貼りつけ、その上から消しゴムでこすって十分に接着させた後に、粘着テープの端部をフィルムに対して直角としてから瞬間的に引き剥がした。この引き剥がした粘着テープ面を表面赤外分光装置(パーキンエルマー社製SYSTEM2000、Ge60°50×20×2mmプリズムを使用)で分析することにより、粘着テープ面に樹脂被膜が付着しているか否かを調べ、下記の基準によって樹脂被膜の基材に対する密着性を評価した。なお、基材としては、二軸延伸PETフィルム(ユニチカ株式会社製エンブレットPET−12、厚さ12μm)を使用した。
○:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められず、合格。
×:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められる部分があり、不合格。
【0088】
(12)樹脂被膜の耐水性
卓上型コーティング装置を用いて、上記の二軸延伸PETフィルム上に水性分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、厚み約1μmの樹脂被膜を形成させた後、この樹脂被膜が形成されたPETフィルムを、80℃の熱水に浸漬させ、10分後に静かに引き上げ、風乾させた後、樹脂被膜の外観を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:外観変化が全く認められず、実用上問題がない。
△:部分的に白化が見られ、実用上問題になる場合がある。
×:全体的に白化が見られ、実用上問題がある。
【0089】
(13)水性分散体の収率
ポリエステル樹脂水性分散体の製造工程において、有機溶剤を除去する(脱溶剤する)ために蒸留をおこなうが、その脱溶剤前後の固形分濃度(前:C質量% 後:C質量%とする)と水性分散体の質量(前:Wg 後:Wgとする)から次式により算出した。
【0090】
収率(質量%)=(W×C×100)/(W×C
【0091】
なお、収率は高いほど実用上好ましい。95質量%以上であれば実用上問題のない範囲であり、96質量%以上であれば沈降した樹脂の濾過作業や洗浄作業が軽減されて好ましく、97質量%以上であればコスト面からより好ましい。
【0092】
(14)水性分散体の衝撃安定性
水を加えて30質量%に固形分濃度を調整した水性分散体を500mlのポリエチレン製容器に約400g充填し、市販のペイントシェーカ(浅田鉄工社製、No PC1290)を用いて、25℃の雰囲気下で30分間衝撃を与えた。その後、水性分散体を250メッシュ(目開き0.071mm)のステンレスフィルタで濾過をおこない、濾液の固形分濃度を測定し、衝撃安定性の指標とした。なお、衝撃を与えた後の固形分濃度が高いほど、衝撃安定性に優れている。衝撃を与えた後の固形分濃度が28質量%以上が実用上問題のない範囲であり、特に29〜30質量%の範囲が、ユーザが沈殿などを気にせずに快適に使用できる範囲である。
【0093】
また、実施例および比較例で用いたポリエステル樹脂は、以下のようにして得た。
【0094】
[ポリエステル樹脂P−1の製造]
テレフタル酸2492g(60モル部)、イソフタル酸623g(15モル部)、セバシン酸1263g(25モル部)、エチレングリコール1210g(78モル部)、ネオペンチルグリコール1484g(57モル部)、トリメチロールプロパン7g(0.2モル部)からなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。ついで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加した後、系の温度を275℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、265℃になったところで無水トリメリット酸38g(0.8モル部)を添加し、265℃で2時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂P−1を得た。
【0095】
[ポリエステル樹脂P−2〜P−6の製造]
各原料の仕込み組成を表1に示したように変えた以外は前記P−1の製造と略同様にして各ポリエステル樹脂を得た。
【0096】
【表1】


【0097】
このようにして得られたポリエステル樹脂の特性を分析した結果を表2に示す。
【0098】
【表2】


【0099】
[実施例1]
ジャケット付きガラス容器(内容量2l)にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを600g投入し、ジャケットに60℃の温水を通して加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂を溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液1000gを得た。つぎに、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、回転速度600rpmで攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン8.7gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水を総重量が2000gとなるまで添加して転相乳化をおこなった。蒸留水を全量添加する間、系内温度を常に15℃以下に保った。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%の水性分散体を得た。
【0100】
ついで、得られた水性分散体のうち、1600gを2lのフラスコに入れ、常圧下で蒸留をおこなうことで有機溶剤を除去した。蒸留は留去量が約600gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。固形分濃度31.4質量%のポリエステル樹脂水性分散体を990g得た。収率97.1質量%であった。
【0101】
[実施例2〜4、比較例1、2、4]
ポリエステル樹脂の種類、トリエチルアミンの添加量を表3に示したように変更した以外は、実施例1と略同様の方法で、表3記載のポリエステル樹脂水性分散体を得た。
【0102】
[比較例3]
ポリエステル樹脂をP−6に変更すること、トリエチルアミンを5.8g添加すること以外は、実施例1と略同様の操作をおこなったが、蒸留水添加中にポリエステル樹脂が攪拌羽に絡まり、均一な水性分散体が得られなかった。
【0103】
表3には、実施例1〜4および比較例1〜4で得られたポリエステル樹脂水性分散体の特性値および性能を調べた結果を示す。
【0104】
【表3】


【0105】
以上の実施例1〜4は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体であるため、有機溶剤含有率が低いポリエステル樹脂水性分散体であっても衝撃安定性に優れ、さらに常圧下で脱溶剤をおこなっても高収率で得ることが可能であった。
【0106】
一方、ポリエステル樹脂P−5は本発明のZ平均分子量の範囲を下回っているため、比較例1では体積平均粒径が比較的大きく、常圧下で脱溶剤をおこなうと収率が低かった。また、脱溶剤後の衝撃安定性に劣るものであった。比較例2では体積平均粒径を小さくするために塩基性化合物の使用量を増やしたため、常圧下で有機溶剤を除去している間に樹脂が凝集して収率が低くなった。また、脱溶剤後の衝撃安定性に劣るものであった。
【0107】
また、比較例3は、使用したポリエステル樹脂P−6の酸価が本発明の範囲を下回っているため、均一な水性分散体が得られなかった。比較例4は、使用したポリエステル樹脂P−7の酸価が本発明の範囲を超えているため、常圧下で脱溶剤をおこなった際の収率や脱溶剤後の衝撃安定性には問題なかったが、被膜の耐水性に劣るものであった。




 

 


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