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リン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法 - 住友金属工業株式会社
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発明の名称 リン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−217785(P2007−217785A)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
出願番号 特願2006−43105(P2006−43105)
出願日 平成18年2月20日(2006.2.20)
代理人 【識別番号】100108800
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 哲郎
発明者 石垣 一 / 川西 勝次 / 黒田 亨 / 高橋 克
要約 課題
そこで本発明は、処理剤の組成バランスを一定に保ち、かつ、製造コストを削減するとともに環境への影響を少なくできるリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供する。

解決手段
リン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板を連続的に製造する方法において、溶融亜鉛めっきの表面に表面調整剤を供給する表面調整剤供給工程と、表面調整剤供給工程の後工程で、該表面調整剤を乾燥させる前乾燥工程と、前乾燥工程の後工程で、溶融亜鉛めっきの表面にリン酸亜鉛水溶液を含む処理剤をロールコート法で供給する処理剤供給工程とを含むものとする。
特許請求の範囲
【請求項1】
リン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板を連続的に製造する方法であって、
溶融亜鉛めっきの表面に表面調整剤を供給する表面調整剤供給工程と、
前記表面調整剤供給工程の後工程で、前記表面調整剤を乾燥させる前乾燥工程と、
前記前乾燥工程の後工程で、前記溶融亜鉛めっきの表面にリン酸亜鉛水溶液を含む処理剤をロールコート法で供給する処理剤供給工程と、を含むリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】
前記表面調整剤供給工程の表面調整剤がリン酸亜鉛粒子を含有する水性液であることを特徴とする請求項1に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
前記表面調整剤供給工程の表面調整剤に含まれるリン酸亜鉛粒子の平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記表面調整剤供給工程の表面調整剤に含まれるリン酸亜鉛粒子の平均粒子径が10μm以下であり、かつ、前記表面調整剤のpHが5以上であることを特徴とする請求項2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記表面調整剤供給工程の表面調整剤はリン酸亜鉛粒子を0mol/Lより多く、0.5mol/L以下含有し、かつ、Li、Na、K、Be、Mg及びCaからなる群から選ばれる1種以上を合計で0.3mol/L以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記処理剤供給工程の処理剤がリン酸根を0.001〜0.7mol/L含有し、かつ前記リン酸根に対してモル比で0.7以下の亜鉛イオンを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記処理剤供給工程の処理剤のリン酸亜鉛水溶液が亜鉛イオン及びリン酸根を含有し、pH4以下であり、かつ前記亜鉛イオン及びリン酸根以外にリン酸根に対してモル比で0.2以下の硝酸根、0.2以下の亜硝酸根、0.1以下の弗酸根及び0.05以下の硫酸根の強電解質アニオンからなる群から選ばれる1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記表面調整剤供給工程及び前記処理剤供給工程により溶融亜鉛系めっき表面に付着したPがP換算で30〜500mg/mに調整されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車分野等でプレス成形性向上の為に使用される、潤滑性に優れた溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法に関し、詳しくは、連続溶融亜鉛系めっき鋼板製造ラインにおいて操業性に代表される生産性向上を図ることが可能なリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に用いられる鋼板の防錆対策として、溶融亜鉛系めっき鋼板の適用が拡大している。自動車に溶融亜鉛系めっき鋼板を用いる場合、該溶融亜鉛系めっき鋼板のほとんどは、プレス成形により所定の形状に成形されて使用される。しかしながら、溶融亜鉛系めっき鋼板は従来用いられてきた冷延鋼板に比べて、プレス成形性に問題があった。これは、溶融亜鉛めっき鋼板の場合には軟質なη相が残存し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合には軟質なζ相が残存するために、鋼板表面の潤滑性が冷延鋼板と比較して劣るからであると考えられている。
【0003】
かかる問題を解決するため、溶融亜鉛系めっき皮膜の上層に、さらに鉄-亜鉛合金電気めっき皮膜を設けて、潤滑性を向上させる技術が特許文献1に開示されている。また、製造コスト削減の観点から特許文献1に記載されているようなめっき皮膜を廃止して上層をリン酸亜鉛皮膜とすることにより潤滑性に優れた溶融亜鉛系めっき鋼板とする技術が特許文献2に開示されている。これはリン酸亜鉛皮膜を備えることにより例えば自動車車体製造時において高速プレス成形性に優れた亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を構成するものである。
【0004】
ところがこれらのリン酸亜鉛皮膜を有する鋼板の製造においては前処理を行わないと所望の性能が得られないため、各種前処理工程を要する。例えば上記特許文献2や特許文献3では、連続溶融亜鉛系めっき鋼板製造ラインで鋼板の製造を行う際に、前処理剤がリン酸亜鉛水溶液中に持ち込まれるのを防止する為、水洗の工程を有している。
【0005】
また、特許文献4及び5にはリン酸亜鉛水溶液と接触させる前に、基材を洗浄後、表面調整のためにチタンコロイド水性液等の表面調整剤に浸漬することが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−319661号公報
【特許文献2】特開平7-138764号公報
【特許文献3】特開2001-98383号公報
【特許文献4】特開2005-54202号公報
【特許文献5】特開2005-54203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1〜4に記載の製造方法では、水洗いをする場合には水が、水洗いをしない場合には表面調整剤等の液剤がリン酸亜鉛水溶液を供給する工程に持ち込まれ、処理剤であるリン酸亜鉛水溶液の組成バランスを変動させる。また、水洗いをしない場合には鋼板が表面調整剤等で活性化されていることにより、後工程における処理液等と反応が促進され、鋼板からの亜鉛めっき皮膜の、特に亜鉛成分の溶出が大きく、処理液の組成バランスの変動を大きくしていた。通常処理剤を保管するタンクなどの容量は限られており、変動した処理剤の組成バランスを一定に保つためには処理剤の一部をドレインとして排出しながら、補給液を添加するといった手法がとられることが多い。そのため、リン酸亜鉛水溶液の補給コスト及び排出設備が必要となるとともに、Pの廃液が増加するので、排水設備等も備えることを要した。
【0008】
また、近年における環境に対する配慮を鑑みると、Pの廃液をできる限り抑えることが社会的にも要請されている。さらに従来、水系処理では通常、表面を乾かさないことが常識であった。これは、乾燥させると表面が酸化して反応性が悪くなり、性能が劣化すると考えられていたことによる。
【0009】
そこで本発明は、処理剤の組成バランスを一定に保ち、かつ、製造コストを削減するとともに環境への影響を少なくできるリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、上記課題を解決するために以下のような知見を得て本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法を開発した。
(a)リン酸亜鉛水溶液を供給する工程の前に表面調整剤を乾燥させることにより、リン酸亜鉛水溶液中へ表面調整剤の持ち込みを抑制することができる。これは、表面調整剤を乾燥させることによって、亜鉛めっき表面の活性化を抑制することが可能であることによる。ここで、表面調整剤とは、リン酸亜鉛の結晶核形成剤を含む水性液のことであり、例えば、ピロリン酸Na水溶液にTiコロイドが分散した水性液や、リン酸亜鉛の粒子が分散した水性液等である。
(b)前記表面調整剤の中でもリン酸亜鉛粒子が分散した水性液を使用して、該水性液を乾燥させることにより、処理剤であるリン酸亜鉛水溶液の組成バランスの変動を抑制することができる。これはリン酸亜鉛粒子を含有する水性液を乾燥させることによって、リン酸亜鉛粒子が粒径を維持したまま凝集することなく溶融亜鉛系めっき表面に吸着し、粒子形態を維持することができ、かつ保護皮膜の様な作用により処理剤工程までの鋼板表面の酸化反応を抑制しつつ、次の乾燥工程でめっき表面を反応させることが可能となることによる。一方、ピロリン酸Na水溶液にTiコロイドが分散した水性液の場合は、結晶核形成剤が乾燥凝集する虞がある。
【0011】
以下、本発明について説明する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、リン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板を連続的に製造する方法であって、溶融亜鉛めっきの表面に表面調整剤を供給する表面調整剤供給工程と、表面調整剤供給工程の後工程で、表面調整剤を乾燥させる前乾燥工程と、前乾燥工程の後工程で、溶融亜鉛めっきの表面にリン酸亜鉛水溶液を含む処理剤をロールコート法で供給する処理剤供給工程とを含むリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
【0013】
ここで、「溶融亜鉛系めっき鋼板」とは、「溶融亜鉛めっき鋼板」の他に「合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む概念である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表面調整剤供給工程の表面調整剤がリン酸亜鉛粒子を含有する水性液であることにより前記課題を解決する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の表面調整剤供給工程の表面調整剤に含まれるリン酸亜鉛粒子の平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の表面調整剤供給工程の表面調整剤に含まれるリン酸亜鉛粒子の平均粒子径が10μm以下であり、かつ、表面調整剤のpHが5以上であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の表面調整剤供給工程の表面調整剤はリン酸亜鉛粒子を0mol/Lより多く、0.5mol/L以下含有し、かつ、Li、Na、K、Be、Mg及びCaからなる群から選ばれる1種以上を合計で0.3mol/L以下含有することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の処理剤供給工程の処理剤がリン酸根を0.001〜0.7mol/L含有し、かつリン酸根に対してモル比で0.7以下の亜鉛イオンを含有することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の処理剤供給工程の処理剤のリン酸亜鉛水溶液が亜鉛イオン及びリン酸根を含有し、pH4以下であり、かつ亜鉛イオン及びリン酸根以外にリン酸根に対してモル比で0.2以下の硝酸根、0.2以下の亜硝酸根、0.1以下の弗酸根及び0.05以下の硫酸根の強電解質アニオンからなる郡から選ばれる1種類以上を含有することを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の表面調整剤供給工程及び処理剤供給工程により溶融亜鉛系めっき表面に付着したPがP換算で30〜500mg/mに調整されることを特徴とする。
【0021】
ここで「P換算」におけるP付着量は、化学溶解による測定又は蛍光X線による測定から算出することができる。化学溶解による方法は、所定面積の亜鉛めっき鋼板のめっき層を、所定量の強酸(例えば塩酸)で溶解し、該溶解液をICP(誘導結合プラズマ発光分析)にて溶解液中のP濃度を測定し換算するものである。一方、蛍光X線による方法は、種々のP付着量の試料を作製し、蛍光X線法にてPKαに起因する蛍光X線強度を測定し、上記化学溶解による方法でP付着量を求め、検量線を作成することで、以後の試料について同様の方法で蛍光X線強度を得るものである。これによれば非破壊にてP付着量を求めることができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、表面調整剤が液剤のまま処理剤供給工程にもちこまれず、処理剤中に表面調整剤が混入しないので、処理剤の組成バランスが長期に亘り維持される。これにより、製造コストの低減、処理剤補給量の低減、廃液排出量の低減及び生産性の向上といった効果を得ることができる。さらに、環境を考慮したリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造をすることができる。従って、処理剤の減少は板に付着した分のみであるため、該減少した処理剤を補給するのみでよい製造工程を確立することができ、閉じられた系でリン酸亜鉛皮膜を連続溶融亜鉛めっきラインで形成できる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明の効果に加え、表面調整剤に含まれる結晶核形成剤が乾燥凝集しないため、被覆されるリン酸亜鉛皮膜をさらに安定して形成させることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、表面調整剤の操業性及び安定性を向上させることが可能となる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、表面調整剤の操業性及び安定性をさらに向上させることが可能となる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、表面調整剤の安定性を向上させることと前乾燥工程における基板表面の反応をより均一化させることが可能となる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて処理剤の操業性及び安定性を向上させることができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて処理剤の安定性をさらに向上させること及び皮膜の均質性を向上させることができる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発明に加えて2つの供給源からPが供給されるのでその調整を容易に行うことができ、適切な量を精度良く調整することができる。
【0030】
本発明のこのような作用および効果は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の最良の形態、及びその好ましい範囲等について説明する。
【0032】
はじめに本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法により処理される基材である溶融亜鉛系めっき鋼板について説明する。基材は鋼板である母材と、該母材表面に被覆された溶融亜鉛系めっきである層とを有する溶融亜鉛系めっき鋼板である。
【0033】
ここで、母材となる鋼板の種類は特に限定されるものではなく、あらゆる種類の冷間圧延鋼板や熱間圧延鋼板を適用することができる。従って、母材の化学組成も特に限定されるものではなく、Ti、Nb等を必要に応じて含有させた極低炭素鋼あるいは低炭素鋼、又は、さらにSi、Mn、P、Cr、Ni、Cu、V等を適宜含有させた高強度鋼あるいは高張力鋼等を適用することができる。
【0034】
基板となる溶融亜鉛系めっき鋼板としては、加熱による合金化処理を行わない溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)及び加熱による合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)の2種類を挙げることができる。ここで、GI鋼板は、溶融亜鉛めっき中にFeが2質量%以下で含まれているものが好ましい。これは2質量%を超えると表面に一部Fe−Zn合金層が出現し、外観上好ましくない場合があることによる。GA鋼板は、合金化溶融亜鉛めっき中にFeが7〜15質量%の範囲で含まれていることが好ましい。これは、Fe含有量が7質量%に満たない場合にはめっき層の表面近傍にη相が残存し外観上好ましくない場合があるからである。より好ましくは8質量%以上である。一方、Fe含有量が15質量%を超えるとプレス成形時にパウダリングが発生しやすくなる傾向があるからである。より好ましくは13質量%以下である。
【0035】
さらに、上記溶融亜鉛系めっき層には、0.05〜0.5質量%のAlを含有させても良い。これにより、めっき層と母材の密着性を向上させることができる。また、該溶融亜鉛系めっき層には他にもCu、Ni、Cr、Si、Mn、Pb、Sb、Sn及びミッシュメタル等が微量含有又は添加されていても良い。
【0036】
また、溶融亜鉛系めっき層を構成する合金相の種類も特に限定されるものではなく、GI鋼板ではη相、ζ相、δ相、GA鋼板ではζ相、δ1相、Γ1相、Γ相が混在していてもよい。そして、溶融亜鉛系めっきの付着量も特に限定されるものではない。加工性、溶接性及び生産性の観点から、150g/m以下であるのが好ましい。
【0037】
以上基材となる溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法は特に限定されるものではない。これには例えばめっき浴に浸漬してそのまま冷却しGI鋼板を得る方法を挙げることができる。GA鋼板についてはめっき浴に浸漬後に合金化処理をする方法を挙げることができる。また、その他適宜、調質圧延(スキンパス)、平坦化処理(レベラー)等の工程を付加してもよい。該スキンパス、レベラーにより鋼板の表面形態は種々変化するが、これらによって本発明は何ら影響を受けない。
【0038】
上記基材に対し本発明を適用する。以下に本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法について説明する。
【0039】
図1に1つの実施形態にかかる本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の流れを示した。本製造方法は、表面調整剤を基材に供給する表面調整剤供給工程(S1)と、供給された表面調整剤を乾燥させる前乾燥工程(S2)と、処理剤を供給する処理剤供給工程(S3)と、該処理剤供給工程(S3)後に乾燥させる後乾燥工程(S4)とを含んでいる。以下に各工程について説明する。
【0040】
表面調整剤供給工程(S1)は、表面調整剤を基材に供給する工程である。ここで表面調整剤とはリン酸亜鉛の結晶核形成剤を含む水性液のことであり、例えば、ピロリン酸Na水溶液にTiコロイドが分散した水性液や、リン酸亜鉛の粒子が分散した水性液等である。当該表面調整剤供給工程(S1)の表面調整剤の供給方法は、特に限定されるものではない。これには例えば表面調整剤中に浸漬する方法、基材にスプレーする方法(スプレー後リンガーロールで絞る方法も含む。)及びロールコータで塗布する方法等を挙げることができる。表面調整剤の付着量は、30mg/m未満が好ましい。これは、30mg/m以上では下地処理斑が発生して外観が損なわれる場合があることによる。好ましくは15mg/m以下であり、さらに好ましくは10mg/m以下である。また、それ以上付着させても下地処理としての効果は飽和し、逆に後工程の処理剤にも影響を及ぼす可能性があることからも上記上限が好ましい。
【0041】
表面調整剤供給工程(S1)で基材に供給する表面調整剤のうち「リン酸亜鉛粒子が分散した水性液」とは、粒子状のリン酸亜鉛が分散した水性の混濁液を意味する。該リン酸亜鉛粒子は結晶質であることが好ましい。また該水性液は、pHが5以上であることが好ましい。また該水性液は、粒径が10μm以下であることが好ましい。また該水性液は、該リン酸亜鉛粒子を0より大きく0.5mol/L以下で含有することが好ましい。さらには水性液中にLi、Na、Kのアルカリ金属及びBe、Mg、Caのアルカリ土類金属から選ばれた少なくとも1種又は2種以上を合計で0.3mol/L以下含有することが好ましい。
【0042】
pHを5以上が好ましいとしたことについては、pHが5未満になると表面調整剤供給工程(S1)でエッチングによる溶融亜鉛系めっきの溶出が起こる場合があり、組成バランスが変動し、リン酸亜鉛粒子の分散状態が乱れて水性液の安定性が低下する虞があるからである。pHの上限については特に限定されるものではないが、pHは11未満が好ましい。これは、pHが11以上になると水性液の分散を維持するために、多くのアルカリを添加しなければならず、コストが高くなるためである。さらにpH11以上になるとリン酸亜鉛粒子自体の水相への溶解反応が生じ、粒子形態および分散状態が損なわれ、処理剤工程時の均一な皮膜形成に支障を来す虞があるからである。
【0043】
リン酸亜鉛の粒子径を10μm以下が好ましいとしたことについては、10μmを超えて大きくなると分散体が不安定となり、水性液の寿命が低下する虞があることによる。好ましくは、5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。粒子径の下限は特に限定されるものではないが、水性液の粘性の観点から0.1μm以上が好ましい。
【0044】
リン酸亜鉛粒子の含有量は0.5mol/L以下である。これはリン酸亜鉛粒子の濃度が0.5mol/Lより大きくなると分散体の含有量が高くなりすぎるため、水性液の寿命が低下する虞があることによる。水性液の安定性の観点から0.3mol/L以下であることが好ましい。なお、リン酸亜鉛粒子の含有量は、亜鉛濃度を測定することにより、Zn(PO)として原子量から換算することができる。
【0045】
水性液中にLi、Na、Kのアルカリ金属及びBe、Mg、Caのアルカリ土類金属から選ばれた少なくとも1種又は2種以上を添加するのは、これにより、後述する前乾燥工程における基板表面の反応がより均一となり、安定した溶融亜鉛系めっき鋼板を製造することができるからである。これらアルカリ金属及びアルカリ土類金属の濃度は、上記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計で0.3mol/L以下とする。これは、0.3mol/Lを超えて多く添加すると基板表面にこれら添加物が後工程に付着して持ち越され、後工程の処理剤等の安定性が低下する虞があるためである。このアルカリ金属及びアルカリ土類金属は、オルソリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、オルソ珪酸塩、メタ珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硼酸塩等により添加することができる。また、pH調整の為に、アンモニウム塩、又はアンモニウム水溶液等を使用しても良い。さらに、合計で0.05mol/L以下程度であれば、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、Cr等の金属又は金属塩粒子が含有されていても良い。加えて、水性液中にはpH緩衝剤等が混入すると好適である。例えばKHPOとNaOHからなる緩衝溶液を挙げることができる。これによりpH変化が少なくなり、安定製造できる場合もある。水性液は、上記組成を満足すれば塗装の下地処理等に使用される市販の表面調整剤を利用することもできる。
【0046】
かかる水性液を基材に供給する表面調整剤供給工程(S1)を有することにより後述する工程と合わせて本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法とすることができる。
【0047】
次に前乾燥工程(S2)について説明する。前乾燥工程(S2)は、基材表面に供給された表面調整剤を水洗いすることなく乾燥させる工程である。乾燥温度は特に限定されるものではないが、製造コストの観点から鋼板最高到達温度で200℃未満であることが好ましい。さらに好ましくは150℃未満である。乾燥時間についても特に限定されるものではないが、表面外観及び生産性の観点から30秒未満であることが好ましい。さらに好ましくは10秒未満である。乾燥させるための方法は特に限定されるものではなく、適宜選択可能である。これには例えばエアナイフ、ドライヤーやオーブン等を挙げることができる。
【0048】
当該前乾燥工程(S2)により表面調整剤が後述する処理剤供給工程(S3)に液剤として持ち込まれる虞がなく、該処理剤供給工程(S3)で循環使用される処理剤への表面調整剤の混入を抑えて処理剤の組成バランスの変動を小さくすることができる。これにより処理剤の組成バランスを維持するために従来必要であった処理剤の補給及び排出を抑えることが可能となった。
【0049】
これは、表面調整剤の供給後に乾燥を行うことにより、溶融亜鉛系めっき鋼板の活性化を一度制止することができるからである。また、該乾燥によりリン酸亜鉛粒子が粒径を維持したまま凝集することなく溶融亜鉛系めっき表面に吸着し、粒子形態を維持することができ、かつ保護皮膜の様な作用により処理剤工程までの鋼板表面の酸化反応を抑制しつつ、次の乾燥工程でめっき表面を反応させることができるようになったことも挙げられる。
【0050】
次に処理剤供給工程(S3)について説明する。処理剤供給工程(S3)は上述の前乾燥工程(S2)をおこなった基材上にリン酸亜鉛皮膜を形成するための処理剤を供給する工程である。基材への処理剤の供給方法は、例えばスプレーリンガー法やロールコート法等を挙げることができる。この中でも上述の前乾燥工程(S2)との組み合わせにより効果的に設備を簡易とすることができ、より安価に溶融亜鉛系めっき鋼板を製造できるとの観点からロールコート法による処理を好ましく適用することが可能である。処理剤の操業性の観点からはロールコート法による処理が最も好ましい。更に、前乾燥工程(S2)を経た鋼板を、処理材供給工程(S3)に進入させる際の進入材温は、80℃未満が好適である。これは、鋼板温度が高いと表面調整剤の保護皮膜的な作用より、鋼板の活性化が上回り、処理材中への亜鉛めっき皮膜の溶出が生じる虞があるためである。好ましくは60℃未満である。下限についても30℃以上が好適である。これは、30℃未満では、処理工程後の乾燥工程での加温による反応が十分に起こらず、成膜が不均一になったりする虞があるためである。前記進入材温度の調整は、鋼板の放冷区間を設ける事によっても達成可能であるが、水冷ロール等のロール冷却による温度制御も可能である。
【0051】
処理剤供給工程(S3)で供給される処理剤は、リン酸亜鉛水溶液である。該リン酸亜鉛水溶液は、リン酸根と亜鉛イオンを含有する水溶液である。ここで、リン酸根とはHPO、HPO2−、PO3−の総称とし、[PO3−]で表す。該リン酸亜鉛水溶液は、0.001〜0.7mol/Lのリン酸根[PO3−]を含有し、かつ該リン酸根に対してモル比で0.7以下の亜鉛イオンを含有する。さらに、リン酸亜鉛水溶液はpH4以下でありかつ亜鉛イオン及びリン酸根以外にリン酸根に対してモル比で硝酸根が0.2以下、亜硝酸根が0.2以下、弗酸根が0.1以下及び硫酸根が0.05以下の強電解質アニオンが少なくとも1種類以上含有されている水溶液である。そして、表面調整剤供給工程(S1)で供給された表面調整剤との合計でP付着量をP換算で30〜500mg/mとする。
【0052】
リン酸根の濃度範囲を0.001〜0.7mol/Lとしたのは、リン酸根を0.7mol/Lを超えて多くすると処理剤の安定性が低下する虞があることによる。一方、0.001mol/L未満では処理剤のpHが高くなり、反応が阻害されて所望の性能が得られない可能性があるからである。また、リン酸根に対してモル比で0.7以下の亜鉛イオンを含有するのは、該亜鉛イオンを含有させることにより均質な結晶質の皮膜を形成させることができるためである。
【0053】
リン酸亜鉛水溶液のpHを4以下としたのは、pHが4を超えて大きくとなると処理剤の安定性が悪くなりスラッジが発生し、表面品質を損ねること、さらに反応が円滑に進行せず所望の性能が得られない可能性があるからである。ここで「スラッジ」とは水溶液中でZn(PO)が固化したものである。また、リン酸根に対する亜鉛のモル比を0.7以下とするのも同様にスラッジが発生し、表面品質を損ねる虞があるためである。リン酸亜鉛水溶液のpHは、好ましくは表面品質の観点から3.5以下、及びリン酸根に対する亜鉛イオンのモル比は0.5以下である。
【0054】
亜鉛イオン及びリン酸根以外に、リン酸根に対してモル比で硝酸根(NO)が0.2以下、亜硝酸根(NO)が0.2以下、弗酸根(F)が0.1以下、及び硫酸根(SO2−)が0.05以下の強電解質アニオンを1種類以上添加するのは、安定して、皮膜の均質性の向上を目的として、処理剤と反応させる為である。具体的には該反応によりエッチング作用及び酸化作用を得ることができる。強電解質アニオンは上記上限より多く添加した場合には、処理剤の安定性が低下し、処理剤の寿命が短くなる虞がある。
【0055】
また、リン酸亜鉛水溶液には、pH調整のために、アンモニウム塩、又はアンモニウム水溶液等を添加してもよい。アンモニウムイオンの濃度はリン酸根に対してモル比で0.02以下であることが好ましい。また、上記リン酸亜鉛水溶液の構成を満足すれば、その他亜鉛以外の金属イオンが混入されていても良い。このときリン酸根に対する該金属イオンのモル比の合計が0.2以下であることが好ましい。
【0056】
リン酸亜鉛水溶液の付着量は、最終的に形成される皮膜付着量において、上述の表面調整剤供給工程(S1)と、処理剤供給工程(S3)とによる供給の合計でP換算し、30〜500mg/mであることが好ましい。これは、30mg/m未満であると皮膜の潤滑性の効果が鋼板の成形性に反映されず、500mg/mを超えるとその効果が飽和するためである。さらに好ましくは30〜400mg/mである。
【0057】
処理剤供給工程(S3)の前工程である前乾燥工程(S2)が設けられていることにより、処理剤供給工程(S3)に表面調整剤が液剤として持ち込まれることがなく、処理剤のバランスを長い期間に亘って適切に維持することができる。これにより、処理剤管理及び排水設備を簡易なものとすることができる。
【0058】
次に後乾燥工程(S4)について説明する。後乾燥工程(S4)は、基材表面に供給された処理剤を水洗いすることなく乾燥させる工程である。乾燥温度は特に限定されるものではないが、製造コストの観点から鋼板最高到達温度が250℃未満であることが好ましい。さらに好ましくは180℃未満である。乾燥時間についても特に限定されるものではないが、表面外観及び生産性の観点から塗布後100秒未満であることが好ましい。さらに好ましくは50秒未満である。乾燥させるための方法は特に限定されるものではなく、適宜選択可能である。これには例えばエアナイフ、ドライヤーやオーブン等を挙げることができる。後乾燥工程(S4)により均質なリン酸亜鉛の結晶皮膜が形成される。
【0059】
以上に説明したように本発明の溶融亜鉛系めっき製造工程により処理剤供給工程での処理剤の排出が不要になることで処理剤の操業性を向上させることが出来る。これにより簡易であり、かつ環境に与える影響を少なくし、安定して操業可能なリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
【0060】
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例1)
実施例1として板厚0.8mmで200mm×250mmの切板である極低炭素鋼板GI鋼板(めっき付着量90g/m、皮膜Al濃度:0.4質量%、Fe濃度:1.5質量%)及びGA鋼板(めっき付着量60g/m、皮膜Al濃度:0.30質量%、Fe濃度:9.5質量%)の2つの溶融亜鉛系めっき鋼板について、操業性評価及び潤滑性評価をおこなった。本実施例では、表面調整剤の成分及び処理剤の成分を変更した場合についての上記前乾燥工程の有無による評価を行っている。表1には表面調整剤の成分、表2には処理剤の成分をそれぞれ示した。
【0061】
【表1】


【0062】
【表2】


【0063】
また、各工程の条件は次の通りである。
表面調整剤供給工程
表面調整剤供給方法:スプレー又はロールコータ
付着量:P換算で3mg/m
前乾燥工程
乾燥設備:ドライヤー
乾燥温度:鋼板最高到達温度60℃
乾燥時間:10秒
処理剤供給工程
供給方法:ロールコータ(侵入材温度50℃)
合計付着量:P換算で80mg/m
後乾燥工程
乾燥設備:オーブン
乾燥温度:鋼板最高到達温度70℃
乾燥時間:30秒
【0064】
また、従来例として従来のアルカリ及び酸による洗浄をおこなった場合も示した。この場合に具体的には、洗浄後に水洗いをされた基材が処理剤供給工程に導入される。本実施例では、水洗い後に処理剤供給工程に導入される前の乾燥工程の有無についても示した。下に条件を示す。
前洗浄条件:7質量%NaOH及び2質量%HSO(表1のNo.13、14)
浸漬条件:7%NaOH水溶液(70℃)に5秒間浸漬
2%HSO水溶液(50℃)に5秒間浸漬
【0065】
(1)評価項目
以上の条件に基づき次に説明する評価をおこなった。
(1−1)操業性評価
操業性は10Lの処理剤に対して10m(前記切り板の合計面積が10m)の基材に処理剤を供給したときの該処理剤における表面調整剤からの持ち込み成分(表面調整剤のアルカリ金属)及び処理剤に含まれる主に亜鉛の濃度を測定し、処理剤供給前との濃度変化を評価した。操業性の評価基準は、次の通りである。以下の評価基準における濃度調整不要とは、水洗設備や補給剤、廃液処理設備が不要なことを意味している。
○:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の2質量%以下(濃度調整不要)
△:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の2質量%超え、4質量%以下(濃度調整はほぼ不要)
×:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の4質量%超え(濃度調整必要)
【0066】
(1−2)潤滑性評価法
得られたリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板に対してピンオンディスク型摩擦磨耗試験機を用いて、防錆油を塗布した状態で、以下の条件で摩擦係数測定を行い、摩擦係数により潤滑性を評価した。摩擦係数の評価基準を次に示す。
試験条件
荷重:30kN
スライダ材質:SKD鋼
スライダ形状:直径5mmの鋼球面
試験温度:60℃
回転半径:10mm
摺動速度:1rpm
試験回転数:20回
測定点数:1回転毎に12個の測定値から平均値を算出し,20回の平均値とする。
評価基準
◎:摩擦係数0.12未満(潤滑処理として極めて良好)
○:摩擦係数0.12以上0.15未満(潤滑処理として良好)
×:摩擦係数0.15以上(潤滑処理として不適)
【0067】
(1−3)表面調整剤及び処理剤の安定性
各表面調整剤及び処理剤の安定性は、40℃×7日試験により得た。これは各調整剤及び処理剤を40℃に保ち、7日間保持するというものである。表面調整剤及び処理剤の安定性の評価は、次の通りである。
表面調整剤 ○:分散状態を維持
×:沈殿が発生
処理剤 ○:スラッジの発生なし
×:スラッジの発生あり
【0068】
(2)評価結果
以上の条件に基づき評価をおこなった実施例1についての結果を以下に説明する。
(2−1)操業性及び潤滑性
表3に結果を一覧で示した。
【0069】
【表3】


【0070】
これを見ると表面調整剤が供給されるとともに前乾燥工程で乾燥された場合には、いずれも処理剤の操業性が高く、得られた溶融亜鉛系めっき鋼板の潤滑性も良好であり、本発明の効果が顕著に現れている。さらに、表面調整剤の供給方法に依存しないこともわかる。
【0071】
一方、従来例として代符R26〜R29に示した従来の洗浄を用いた場合についても前乾燥工程があることにより処理剤の操業性のみは良好である。これは、前乾燥工程が処理剤の操業性向上に大きな効果を有していることを意味する。ただし代符R26〜R29の条件では、溶融亜鉛系めっき鋼板に所望の潤滑性は得られていないので、表面調整剤の供給が必要であることもわかる。
【0072】
また、参考例として代符R24及び代符R25に示した条件では、処理剤の操業性には影響を与えていない一方で、表面調整剤の操業性は良くない。これは代符R24、25に用いられた表1にNo.11に示す表面処理剤はpHが4.5であり、他に比べ低いことが原因であると考える。よってpHを少なくとも4.5より大きくすることにより表面調整剤の操業性を向上させることができる。
【0073】
(2−2)表面調整剤及び処理剤の安定性
次に表1及び表2に示した各表面調整剤及び処理剤の安定性の結果について説明する。表4に表面調整剤の安定性評価結果、表5に処理剤の安定性評価結果をそれぞれ示す。
【0074】
【表4】


【0075】
【表5】


【0076】
表4に示した表面調整剤は、No.7、No.10、及びNo.12につき安定性が良くなかった。これはNo.7については表1からわかるようにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計が0.401mol/Lに達しているからであると考える。また、No.10及びNo.12についてはそれぞれ粒子径が大きい、リン酸亜鉛含有量が大きいことが理由であると考える。これらは必ずしも処理剤の操業性に影響を与えるとは限らないが、安定性は高いほうが好ましい。
【0077】
表5に示した処理剤のうちg〜mについての安定性は良くなかった。これは、g〜iに関してはリン酸根に対する亜鉛イオンの比が大きいことが原因であると考える。また、iについてはpHが4.1であり、高い値を示している。j〜mについては添加された強電解質アニオン比が大きいことが原因であると考えられる。これらは必ずしも処理剤の操業性に影響を与えるとは限らないが、安定性は高いほうが好ましい。
【0078】
(実施例2)
実施例2として、連続溶融亜鉛系めっき鋼板製造ラインにて、板厚0.8mmのGA鋼板(極低炭素鋼板、めっき付着量45g/m、皮膜Al濃度:0.25質量%、Fe濃度:9.0質量%)に、スキンパス(圧延率1.0%)を施し、表面調整剤供給工程では、表1に示したNo.1、4、6の表面調整剤を供給し、処理剤供給工程は、表2中のa、d、e及びiの処理剤を用いてリン酸亜鉛皮膜処理を行った。各工程の条件は下記に示す通りである。
表面調整剤供給工程
供給方法:スプレー又はロールコータ
乾燥設備:ドライヤー
付着量:P換算で3mg/m
前乾燥工程
乾燥温度:鋼板最高到達温度70℃
乾燥時間:5秒
処理剤供給工程
供給方法:ロールコータ(侵入材温度50℃)
後乾燥工程
乾燥設備:オーブン
乾燥温度:鋼板最高到達温度80℃
乾燥時間:30秒
【0079】
また、比較例として、前乾燥工程をなしとしたものもおこなった。
【0080】
(3)評価項目
以上の条件に基づき次に説明する評価をおこなった。
(3−1)操業性評価
各処理を100Lの処理剤に対して板厚0.8mmで幅1mの鋼板を100m通板したときの処理剤における表面調整剤からの持ち込み成分(表面調整剤のアルカリ金属)と処理剤に含まれる主に亜鉛の濃度を測定し、処理剤供給前との濃度変化を評価した。操業性の評価基準は、次の通りである。以下の評価基準における濃度調整不要とは、水洗設備や補給剤、廃液処理設備が不要なことを意味している。
○:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の2質量%以下(濃度調整不要)
△:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の2質量%超え、4質量%以下(濃度調整はほぼ不要)
×:処理剤中のアルカリ金属及び亜鉛の濃度増が初期濃度の4質量%超え(濃度調整必要)
【0081】
(3−2)潤滑性評価
得られたリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板に対してピンオンディスク型摩擦磨耗試験機を用いて、防錆油を塗布した状態で、以下の条件で摩擦係数測定を行い、摩擦係数により潤滑処理としての妥当性を評価した。摩擦係数の評価基準を下記に示す。
試験条件
荷重:30kN
スライダ材質SKD鋼
スライダ形状:直径5mmの鋼球面
試験温度:60℃
回転半径:10mm
摺動速度:1rpm
試験回転数:20回
測定点数:1回転毎に12個の測定値から平均値を算出し、20回の最大の平均値とする。
評価基準
◎:摩擦係数0.12未満(潤滑処理として極めて良好)
○:摩擦係数0.12以上0.15未満(潤滑処理として良好)
×:摩擦係数0.15以上(潤滑処理として不適)
【0082】
(3−3)スポット溶接性評価
得られたリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板に対してスポット溶接機を用いて、以下の条件でスポット溶接を行い、ナゲット径(mm)が4t1/2(t:鋼板厚み(mm))以下までの打点数を評価した。
評価条件
電極径:6mm
電極先端径:40Rドーム型
電極材質:1質量%Cr−Cu
加圧力:2kN
アップスロープ:3サイクル
通電時間:10サイクル(周波数:50Hz)
冷却流量:3L/min
溶接電流:10.5kA
評価基準:
○:2000打点以上(適切)
×:2000打点未満(不適)
【0083】
(3−4)耐食性評価
耐食性評価は、自動車用鋼板等の性能評価法として一般的に用いられる手法により行った。具体的には、化成処理後に電着塗装してその後シングルカットを施し、5質量%塩水噴霧試験500時間後の最大膨れ幅で評価した。化成処理及び電着処理条件を以下に示す。
【0084】
化成処理は、アルカリ脱脂、水洗い及び表面調整後に化成処理(リン酸亜鉛処理)の順による。各順における条件等を次に説明する。
アルカリ脱脂:ファインクリーナーE2001(日本パーカライジング社製)200g/L液(50℃)に、2分間浸漬
水洗い:30秒間
表面調整:パーコレンZ(日本パーカライジング製)1g/L液(常温)に10秒間浸漬
化成処理:PB−L3080(日本パーカライジング社製、液温43℃)を2分間スプレー
【0085】
上記化成処理に引き続きGT−10(カチオン電着塗装:20μ)電着塗装を行った。
評価基準は次の通りである。
評価基準:片側最大塗膜膨れ巾
○:3mm未満(適)
×:3mm以上(不適)
【0086】
(4)評価結果
以上の条件及び評価項目に対する結果について説明する。表6に結果を示す。
【0087】
【表6】


【0088】
表6からわかるように、備考に本発明例と示した前乾燥工程を有するものについては、いずれも処理剤の操業性は良好である。一方、前乾燥を有しないもの(備考に比較例と記載した)についてはいずれも処理剤の操業性が良くない。従って本発明の効果が顕著に現れているということができる。
【0089】
また、前乾燥工程有りにおける各種性能は、概ね良好であるということができる。代符Z11及び代符Z16については、潤滑性が良くない理由としてPの付着量が少ないことが挙げられる。これは、本発明に含まれる前乾燥工程の有無が影響したものではない。
【0090】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、リン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のリン酸亜鉛皮膜を有する溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法の流れを模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0092】
S1 表面調整剤供給工程
S2 前乾燥工程
S3 処理剤供給工程
S4 後乾燥工程




 

 


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