米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 化学;冶金 -> 住友金属工業株式会社

発明の名称 高張力熱延鋼板とその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−211334(P2007−211334A)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
出願番号 特願2006−35604(P2006−35604)
出願日 平成18年2月13日(2006.2.13)
代理人 【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
発明者 佐藤 直広 / 菊地 祐久 / 岡田 光
要約 課題
引張強さ590MPa以上、延性、曲げ加工性、疲労特性、表面性状にすぐれた高張力熱延鋼板を提供する。

解決手段
質量%で、C:0.01%超0.25%以下、Si:0.2%超1.0%未満、Mn:0.5〜2.5%、P:0.005%以上0.03%未満、Cu:0.005%以上0.045%未満、S:0.02%以下、Al:0.005〜1.0%およびN:0.01%以下、O:0.0010%以上0.0100%未満、Cu、PおよびOの含有量が下記式(1)を満足し、残部Fe不純物の鋼組成を有し、鋼組織が、50〜95面積%のフェライトと残部第2相からなり、フェライトの平均結晶粒径3〜20μm、第2相の平均粒径1.0〜8μmかつ平均粒子間隔2〜10μm、第2相が鋼組織全体を基準とした面積率で5〜50%のマルテンサイトとからなり、鋼板表面における最大長さ5mm以上の島状スケール疵が面積率で10%以下である。
特許請求の範囲
【請求項1】
鋼組成が、質量%で、C:0.01%超0.25%以下、Si:0.2%超1.0%未満、Mn:0.5〜2.5%、P:0.005%以上0.030%未満、Cu:0.005%以上0.045%未満、S:0.02%以下、Al:0.005〜1.0%、N:0.01%以下およびO:0.0010%以上0.0100%未満を含有し、Cu、PおよびOの含有量が下記式(1)を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、鋼組織が、50〜95面積%のフェライトと残部第2相とからなり、前記フェライトの平均結晶粒径が3〜20μm、前記第2相の平均粒径が1.0〜8μmかつ平均粒子間隔が2〜10μm、前記第2相が鋼組織全体を基準とした面積率で5〜50%のマルテンサイトと0〜5%未満のマルテンサイト以外の第2相とからなり、表面性状が、鋼板表面における最大長さ5mm以上の島状スケール疵が面積率で10%以下であり、機械特性が、引張強度:590MPa以上、曲げ性:密着〜2.0t、曲げ疲労限度耐久比:0.48以上であることを特徴とする高張力熱延鋼板。
0.4≦Cu/(P+O)≦3.0 (1)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
【請求項2】
前記鋼組成におけるAl含有量が、質量%で、0.1%超1.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高張力熱延鋼板。
【請求項3】
前記鋼組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下およびW:0.5%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高張力熱延鋼板。
【請求項4】
前記鋼組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高張力熱延鋼板。
【請求項5】
前記鋼組成が、Feの一部に代えて、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高張力熱延鋼板。
【請求項6】
酸洗後の鋼板の平均表面粗さRaが1.2μm以下、鋼板表面から鋼板表面からの深さが0.03mmの位置までの鋼板表層部におけるフェライトの平均結晶粒径をα、鋼板表面からの深さが0.03mm超の位置から板厚中心までの鋼板中心部におけるフェライトの平均結晶粒径をαとした時、α≧α×1.1であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高張力熱延鋼板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の鋼組成を有するスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとなし、得られた粗バーを下記式(2)で定められる限界温度T以上としてデスケーリングを行なった後に、Ar点〜(Ar点+150℃)で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、前記仕上熱間圧延の完了後3秒以内に冷却を開始して平均冷却速度20〜200℃/秒で760〜600℃の温度域の所定温度まで冷却する1次冷却と、前記1次冷却後2〜20秒間の中間空冷と、前記中間空冷後10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する2次冷却とを前記熱延鋼板に施して、次いで250℃以下で巻き取ることを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
限界温度T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)−245.12×(5×P+Al)/Si+1170(℃) (2)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の鋼組成の溶鋼を、スラブ表面から下記式(3)で定められるスラブ内部位置Stまでの液相線温度〜固相線温度の冷却速度を10℃/秒以上として連続鋳造法によりスラブとなし、前記スラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとなし、得られた粗バーを下記式(2)で定められる限界温度T以上としてデスケーリングを行なった後に、Ar点〜(Ar点+150℃)で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、前記仕上熱間圧延の完了後3秒以内に冷却を開始して平均冷却速度20〜150℃/秒で760〜600℃の温度域の所定温度まで冷却する1次冷却と、前記1次冷却後2〜20秒間の中間空冷と、前記中間空冷後10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する2次冷却とを前記熱延鋼帯に施して、250℃以下で巻き取り、その後酸洗することを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
限界温度T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)−245.12×(5×P+Al)/Si+1170(℃) (2)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
St(mm)=[B(mm)]/A(mm)]×0.03mm (3)
ここで、B(mm):スラブ厚、A(mm):鋼板の板厚である。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、高張力熱延鋼板およびその製造方法に関する。特に、本発明は、延性、曲げ加工性ならびに疲労特性に優れるとともに表面性状にも優れた590MPa以上の引張強度を有する高張力熱延鋼板およびその製造方法に関する。本発明にかかる鋼板は自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、なかでも自動車の足廻り部品やバンパー等の補強材に代表される構造部材の素材、またはホイール用の素材として好適である。
【背景技術】
【0002】
高張力鋼板は、自動車を初めとする輸送用機械や各種産業機械の構造部材の素材として広く使用されており、経済性の観点からプレス加工等の成形加工によって所定の形状に加工されることが多い。このため、高張力鋼板には優れた加工性が要求される。
【0003】
一方、近年、特に地球環境の保護という観点から、自動車の各種部材を高強度・薄肉化して車体重量を軽減し、燃費を向上させたり炭酸ガス等の排出を規制することが検討されている。自動車の各種部材の中でも大型部材であるフレームや足廻り部品、バンパー等の補強材等を軽量化することによって、車体重量の軽減が極めて有効に行える。このフレームや足廻り部品またはホイールリムなどに求められる鋼板特性には、強度、延性、曲げ加工性、疲労特性がある。
【0004】
従来技術の高い静的強度と高延性とを兼備する材料として、例えば特許文献1あるいは特許文献2に記載されているようなDual−Phase鋼が知られている。このDual−Phase鋼は、フェライト相とマルテンサイト相の二相混合組織であり、フェライト単相鋼、ベイナイト単相鋼、フェライト+ベイナイト組織鋼に比べて、降伏比(降伏強さと引張強さの比)が低く、延性が高く、優れた強度延性バランスを示すことを特徴としている。
【0005】
さらに、特許文献3や特許文献4に記載されているようにDual−Phase鋼は、疲労特性が優れていることが開示されている。
しかしながら、Dual−Phase鋼は、フェライト単相鋼、ベイナイト単相鋼、フェライト+ベイナイト組織鋼に比べて、一般に高強度で延性に優れているが、曲げ加工性が劣化する欠点がある。これは、曲げ加工は、局所的な加工であり、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイト組織の硬度差により、その界面から加工初期にクラックが入るためである。そのため、曲げ加工性に優れた熱延鋼板は、特許文献5に開示されるようにベイナイト単相鋼のような単相組織が主流であり、従来技術の中に、曲げ加工性に優れたDual−Phase鋼の開示がなされていないのが現状である。
【0006】
一方、Dual−Phase鋼は加工性向上に好ましいフェライトを安定して生成させるために、多量のSiを含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が0.2%以上の高Si含有鋼では、スラブの加熱中にスラブ地金と生じたスケールとの界面に生成したファイアライト(FeSiO)がスケールの地金への密着性を向上させるためにデスケーリング不良が発生し易く、島状スケールと呼ばれるスケール疵が発生し易い。また酸洗後の鋼板表面を荒らしたりスケール疵が残ったりするため、足廻り部品やホイール用など外に現われる部材に適用することは好ましくない。
【0007】
デスケーリング不良に起因したスケール疵の発生を防止するための従来技術として以下が挙げられる。
【0008】
例えば、特許文献6には仕上圧延前の粗バーに対して高圧水デスケーリングを強化して行うことによりスケール疵の発生を防止する発明が、特許文献7にはスラブの加熱温度又は粗バーの表面温度をファイアライトの生成が急増する共晶点である1173℃以下に抑制してファイアライトの生成を抑制しながら高圧水によりデスケーリングを行うことによりスケール疵の発生を防止する発明が、特許文献8には粗圧延開始前に高圧水デスケーリングを行い、[1173−420×(P%/Si%)]℃以上で粗圧延を終了することによりスケール疵の発生を防止する発明が、それぞれ開示されているが、これらの発明によっても、Si含有量が0.2%以上の高Si含有鋼からなる熱延鋼板を製造する際に、スケール疵の発生を確実に防止して、優れた表面性状を有する熱延鋼板を製造することは難しい。
【0009】
さらに、Si含有量が0.2%以上の熱延酸洗板では、デスケーリング不良に起因したスケール疵の発生ならびに鋼板面内の局所的なスケール除去の不足により、鋼板の表面粗度が大きくなってしまう。そのため、曲げ加工特性や疲労特性の劣化が懸念される。Dual−Phase鋼の鋼板表面粗度と疲労特性については特許文献9に開示されている。しかし、金属組織における第2相の分散に関して記載されておらず、優れた疲労特性をもつ鋼板とは言いがたい。また、曲げ加工性については、一切記載されていない。
【特許文献1】特開昭55−62121号公報
【特許文献2】特開昭57−137426号公報
【特許文献3】特開平6−33140号公報
【特許文献4】特開2002−105592号公報
【特許文献5】特開2003−119549号公報
【特許文献6】特開平7−144213号公報
【特許文献7】特開平9−249914号公報
【特許文献8】特開平8−206723号公報
【特許文献9】特開2003−55740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、590MPa以上の高い引張強さを持ちつつ優れた延性を保ち、さらに優れた曲げ加工性と疲労特性ならびに優れた表面性状を有する高張力熱延鋼板とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく、高強度で優れた延性をもつSi含有量が0.2%超であるDual−Phase鋼の金属組織ならびに鋼板の表面性状を最適化することにより、高強度で高延性を保ちつつ、曲げ加工性と疲労特性ならびに表面性状に優れた熱延鋼板が得られることを知見した。そして、さらに研究を続けたところ、更なる曲げ加工性の改善と曲げ疲労特性の改善にはCu/(P+O)の比を規定することが有効であることを知り、ここに本発明を完成したものである。
【0012】
本発明は、高張力熱延鋼板及びその製造方法に係るものであって、次の(1)から(6)までのいずれかに記載の高張力熱延鋼板に係るものと、(7)から(8)までのいずれかに記載の高張力熱延鋼板の製造方法に係るものである。以下、それぞれ、本発明(1)から本発明(8)という。なお、高加工性熱延鋼板に係る本発明(1)から本発明(6)と、高加工性熱延鋼板の製造方法に係る本発明(7)から本発明(8)を総称して、本発明ということがある。
【0013】
これらをまとめて示すと以下の通りである。
(1)鋼組成が、質量%で、C:0.01%超0.25%以下、Si:0.2%超1.0%未満、Mn:0.5〜2.5%、P:0.005%以上0.030%未満、Cu:0.005%以上0.045%未満、S:0.02%以下、Al:0.005〜1.0%、N:0.01%以下およびO:0.0010%以上0.0100%未満を含有し、Cu、PおよびOの含有量が下記式(1)を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、鋼組織が、50〜95面積%のフェライトと残部第2相とからなり、前記フェライトの平均結晶粒径が3〜20μm、前記第2相の平均粒径が1.0〜8μmかつ平均粒子間隔が2〜10μm、前記第2相が鋼組織全体を基準とした面積率で5〜50%のマルテンサイトと0〜5%未満のマルテンサイト以外の第2相とからなり、表面性状が、鋼板表面における最大長さ5mm以上の島状スケール疵が面積率で10%以下であり、機械特性が、引張強度:590MPa以上、曲げ性:密着〜2.0t、曲げ疲労限度耐久比:0.48以上であることを特徴とする高張力熱延鋼板。
【0014】
0.4≦Cu/(P+O)≦3.0 (1)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
(2)前記鋼組成におけるAl含有量が、質量%で、0.1%超1.0%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の高張力熱延鋼板。
【0015】
(3)前記鋼組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下およびW:0.5%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高張力熱延鋼板。
【0016】
(4)前記鋼組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高張力熱延鋼板。
【0017】
(5)前記鋼組成が、Feの一部に代えて、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高張力熱延鋼板。
【0018】
(6)酸洗後の鋼板の平均表面粗さRaが1.2μm以下、鋼板表面から鋼板表面からの深さが0.03mmの位置までの鋼板表層部におけるフェライトの平均結晶粒径をα、鋼板表面からの深さが0.03mm超の位置から板厚中心までの鋼板中心部におけるフェライトの平均結晶粒径をαとした時、α≧α×1.1であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の高張力熱延鋼板。
【0019】
(7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼組成を有するスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとなし、得られた粗バーを下記式(2)で定められる限界温度T以上としてデスケーリングを行なった後に、Ar点〜Ar+150℃で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、前記仕上熱間圧延の完了後3秒以内に冷却を開始して平均冷却速度20〜200℃/秒で760〜600℃の温度域の所定温度まで冷却する1次冷却と、前記1次冷却後2〜20秒間の中間空冷と、前記中間空冷後10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する2次冷却とを前記熱延鋼板に施して、次いで250℃以下で巻き取ることを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
【0020】
限界温度T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)−245.12×(5×P+Al)/Si+1170(℃) (2)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
【0021】
(8)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼組成の溶鋼を、スラブ表面から下記式(3)で定められるスラブ内部位置Stまでの液相線温度〜固相線温度の冷却速度を10℃/秒以上として連続鋳造法によりスラブとなし、得られたスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとなし、前記粗バーを下記式(2)で定められる限界温度T以上としてデスケーリングを行なった後に、Ar点〜Ar+150℃で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、前記仕上熱間圧延の完了後3秒以内に冷却を開始して平均冷却速度20〜150℃/秒で760〜600℃の温度域の所定温度まで冷却する1次冷却と、前記1次冷却後2〜20秒間の中間空冷と、前記中間空冷後10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する2次冷却とを前記熱延鋼帯に施して、250℃以下で巻き取り、その後酸洗することを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
【0022】
限界温度T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)−245.12×(5×P+Al)/Si+1170(℃) (2)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
【0023】
St(mm)=[B(mm)]/A(mm)]×0.03mm (3)
ここで、B(mm):スラブ厚、A(mm):鋼板の板厚である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の鋼板は、高強度で加工性を確保しつつ、曲げ加工性及び耐疲労特性、表面性状に優れている。そのため、自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車のメンバーや足廻り部品に代表される構造部材の素材として最適である。また安価に製造できるので産業上格段の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る鋼板の鋼組成について説明する。本明細書において鋼組成を示す「%」は「質量%」である。
C:0.01%超0.25%以下
Cは、鋼板の強度を高める元素であり、延性に優れた高強度鋼を製造するためには特に重要な元素である。すなわち、Cの含有量が、0.01%以下では、十分なマルテンサイトの量が確保できず、590MPa以上の強度を有する高強度鋼板が製造できなくなる。一方、0.25%を超えると溶接性が低下する。したがって、Cの含有量を0.01%を超え0.25%以下とした。なお、容易に590MPa以上の高強度を得るには、Cを0.03%以上含有させることが望ましく、そして、780MPa以上の高強度を得るには、Cを0.04%以上含有させることが望ましい。
【0026】
Si:0.2%超1.0%未満
Siは固溶強化によってフェライト相を強化できるだけでなく、フェライトの生成を促進し、未変態オーステナイト中にCを濃縮させ、容易に第2相をマルテンサイトにさせることができる。そのため、Siの含有は、高強度で高延性であるDual−Phase鋼をつくるには重要であり、その効果を得るには、Siの含有量を0.2%超とする必要がある。特に、高強度で高延性型のDual−Phase鋼とするにはSiの含有量を0.4%以上とすることが望ましい。
【0027】
一方、Si含有量が1.0%超であるSi含有鋼は、熱間圧延前の鋳片又は鋼片の加熱段階で液体のスケールが生成し、地鉄内部へくさび状に生成する。加熱後デスケーリングする際に鋳片又は鋼片が冷却して、このくさび状スケールが固化して剥離性の悪い、いわゆる「Siスケール」が発生する。このSiスケールは完全にはデスケーリングすることが困難であり、Siスケールが残存した状態で熱間圧延が行われるので、酸洗前の熱延板表面には島状スケールが顕著に発生し、圧延後の鋼板または酸洗後の表面には島状スケール模様が残り美観が損なわれ且つ表面粗度も損なわれて曲げ加工性や表面品質が劣化する。
【0028】
Mn0.5〜2.5%
Mnは、鋼の焼入性を高め強度を上昇させるのに有効な元素であるが、その含有量が0.5%未満では、マルテンサイトを生成させることができず、十分な強度と延性を得ることができない。
【0029】
一方、2.5%を超えて、Mnを含有させてもその効果は飽和する。
容易にマルテンサイトを生成させるための焼き入れ性を確保するには、Mnを1.0%以上含有させることが望ましい。
【0030】
P:0.005%以上0.030%未満
Pは固溶強化として働く元素であり、高強度化のために有効である。また、酸洗性を高め熱間圧延後の熱延鋼板の脱スケール性を高める効果も有する。しかし、その含有量が0.005%未満では上記の効果が得難い。一方、Pは偏析し易い元素であるため多量に添加した場合には、溶接性の低下を招き、特に、その含有量が0.030%以上になると偏析が著しくなって溶接性の低下が極めて大きくなる。また、酸洗時に粒界が優先的にエッチングされることにより、曲げ加工性や耐疲労特性を劣化させる。
【0031】
したがって、Pの含有量を0.005%以上0.030%未満とした。好ましい下限は、熱延鋼板の脱スケール性を高める観点から0.010%以上であり、好ましい上限は、酸洗時の粒界の優先的エッチングを抑制する観点から0.02%以下である。
【0032】
さらに、本願発明にあっては後述するようにCu/(P+O)の比を規定することで、酸洗性を高めることにより良好な表面性状を確保するとともに曲げ加工性および耐疲労特性の劣化を抑制する効果を有し、そのためにも、Pは上記範囲に限定される。
【0033】
Cu:0.005%以上0.045%未満
Cuは、Pとは反対に酸洗性を低下させる性質を有し、酸洗時に粒界が優先的にエッチングされるのを抑制したり、酸化物系介在物の脱落を抑制したりする作用を有する。しかし、その含有量が0.05%未満では上記効果が得難い。一方、その含有量が0.045%以上になると、酸洗性の低下により生産性が低下したり、コストの増加を招いたりする。
【0034】
したがって、Cu含有量を0.005%以上0.045%未満とする。好ましくは0.010%以上0.030%以下である。
特に、本発明ではCu/(P+O)の比を0.4〜3.0の範囲に規定するが、これはPおよびOによる酸洗性向上とCuによる酸洗性抑制の機構を利用して曲げ加工性および曲げ疲労特性を改善するためである。
【0035】
S:0.02%以下
Sは、曲げ加工性を低下させる硫化物を生成するため、可能な限り低減する必要のある不純物である。本発明においては、他の成分元素添加による曲げ加工性の向上度合と製鋼コストを考慮して、その含有量の上限を0.02%とした。望ましくは、0.01%以下である。
【0036】
Al:0.005〜1.0%
Alは、鋼の脱酸に有用な元素である。その効果を得るには、少なくとも0.005%の含有量が必要である。一方、その含有量が1.0%を超えると、粗大なアルミナ系介在物が増加して、延性と曲げ加工性が著しく低下する。したがって、Alの含有量を0.005〜1.0%とした。また、Alを0.1%超含有させることにより、フェライトの生成が促進され、加工性ならびに曲げ加工性が向上する。さらに、FeO/FeSiOの共晶温度が低下するため、脱スケール性が向上し、島状スケール疵が減少する。
【0037】
N:0.01%以下
Nは、AlやTiと結合し、窒化物を形成する。窒化物は延性を劣化させる傾向を有するため、できるだけ低減するのが望ましい。0.01%以下であれば、無害化できる。そのため、上限を0.01%とした。N低減のためのコストと材質の改善度合との兼ね合いでN含有量の上限は0.0050%とするのが好ましい。また製造コストの観点から下限は0.0005%以上とすることが好ましい。
【0038】
O:0.0010%以上0.0100%未満
Oは、鋼板中にMnO等の酸化物系介在物を形成し、酸洗時にこれらの酸化物系介在物が脱落してボイドの形成が促進されるため、曲げ加工や繰り返し疲労時の割れや亀裂の起点となる。一方、酸化物系介在物が多いと酸化物系介在物と接触する鋼部分との表面積が増加し、結果的にPと同様の効果を生じ、酸洗性の向上をもたらす。このため、O含有量を0.0100%未満とする。O含有量の下限は、コストの観点から0.0010%以上とする。
【0039】
Cu/(P+O):0.4〜3.0
本発明の効果を得るために、Cu、P、Oを関連づけて規定する。
ここに、上記式の意義は次の通りである。
【0040】
すなわち、上述したようにPおよびOは、酸洗性を高める作用を有し熱延鋼板の脱スケール性を高めて良好な表面性状を確保するのに有効であるが、過剰に含有させると、酸洗時に粒界が優先的にエッチングされたり酸化物系介在物の脱落に起因してボイドの生成が促進されたりして曲げ加工性や耐疲労特性を劣化させる。
【0041】
一方、Cuは酸洗性を低下させる作用を有し、酸洗時に粒界が優先的にエッチングされたり酸化物系介在物が脱落したりするのを抑制する。このため、Cuと(P+O)とをバランスさせることにより、PおよびOによる表面性状向上作用を享受しつつ、曲げ加工性劣化作用や耐疲労特性劣化作用をCuにより減ずるのである。
Cu/(P+O)が3.0超では、材質は硬質化し曲げ加工性が劣化する。Cu/(P+O)が0.4未満では曲げ加工性や耐疲労特性が劣化する。
【0042】
Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下およびW:0.5%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上
本発明において、Ti、Nb、V、Wはいずれも析出強化によって強度を高める元素であり、強度を一層高める作用を有し、2種以上添加しても、それぞれの作用は失われない。その作用は、Ti:0.2%、Nb:0.1%、V:0.5%およびW:0.5%をそれぞれ超えて含有させても飽和し、コストがかさむばかりである。そのため、含有量の上限をTi:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下およびW:0.5%以下のうちの1種または2種以上とした。またその効果は、Ti:0.01%以上ならびにNb:0.005%以上、V:0.01%以上、W:0.01%以上の含有により有効に作用するので、それを下限とするのが好ましい。
【0043】
Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上
本発明において、Cr、Mo、NiおよびBはいずれも固溶強化によって強度を高める元素であり、強度を一層高める作用を有し、2種以上添加しても、それぞれの作用は失われない。その作用は、Cr:1.0%、Mo:1.0%、Cu:1.0%、Ni:1.0%およびB:0.01%をそれぞれ超えて含有させても飽和し、コストがかさむばかりである。
【0044】
そのため、含有量の上限をCr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下とした。またその効果は、Cr:0.05%以上ならびにMo:0.05%以上、Ni:0.05%以上およびB:0.0002%以上の含有により有効に作用するので、それを下限とするのが好ましい。
【0045】
REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上
本発明において、REM、MgおよびCaはいずれも硫化物、酸化物などの介在物を球状化し無害化させることができ、2種以上添加しても、それぞれの作用は失われない。その作用は、REM:0.1%、Mg:0.01%、Ca:0.01%をそれぞれ超えて含有させても飽和し、コストがかさむばかりである。そのため、含有量の上限をREM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下とした。またその効果は、REM:0.005%以上、Mg:0.0005%以上およびCa:0.0005%以上の含有により有効に作用するので、それを下限とするのが好ましい。
【0046】
ここで、REMとは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素を指し、ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。なお、本発明では、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
【0047】
本発明に係る鋼板の金属組織について説明すれば次の通りである。
引張強度が590MPa以上の領域で、良好な延性と曲げ加工性ならびに耐疲労特性を得るためには、金属組織において、平均結晶粒径3〜20μmのフェライトが面積率で50〜95%、第2相が平均粒径1〜8μmで平均粒子間隔2〜10μmで存在し、その第2相はマルテンサイトが面積率で5〜50%である。マルテンサイト以外の第2相は面積率で5%未満まで存在することが許容される。
【0048】
フェライト
フェライトの面積率が50%未満であると、フェライト粒が少ないため、曲げ加工性が劣化する。一方、フェライトの面積率が95%を超えると、フェライト粒が多いため、曲げ疲労限度耐久比が低下する。フェライトの平均結晶粒径は3〜20μmとする必要がある。
【0049】
フェライトの平均結晶粒径が3μm未満であると、降伏点が上昇し、加工性が劣化する。また、フェライトの平均結晶粒径が20μm超であると、曲げ疲労限度耐久比が低下してしまう。疲労き裂は、軟質であるフェライトの粒内を積極的に進展する。そのため、き裂の進展を抑制するフェライトの粒界が少なくなると早期にき裂が進展してしまう。
【0050】
第2相
第2相は、マルテンサイトが面積率で5〜50%である。マルテンサイト以外の第2相の存在は面積率で5%未満までは許容される。
【0051】
マルテンサイトが面積率で5%未満であると曲げ疲労限度耐久比が低下する。マルテンサイトは硬質であるため、軟質なフェライト粒を進展してくる疲労き裂進展を遅延させる効果がある。一方、マルテンサイトの面積率が50%超であると、延性と曲げ加工性が劣化する。マルテンサイトは硬質であるため、それ自体延性や曲げ加工時における局部延性が乏しい。
【0052】
マルテンサイト以外の第2相を含む場合は、その面積率は、5%未満である。マルテンサイト以外の第2相とは、ベイナイト組織、パーライト組織、セメンタイト、残留γである。マルテンサイト以外の第2相の面積率が5%以上であると、フェライトとマルテンサイトの硬度差によって向上する均一伸びが減少し、結果的に延性が劣化してしまう。また、残留γを含む場合には、均一伸びは向上するが、曲げ性が劣化するので同様に5%未満である。
【0053】
第2相の平均粒径が1μm未満であると、曲げ疲労限度耐久比が低下する。第2相は、疲労き裂進展を抑制する効果がある。平均粒径1μm以上の第2相が存在すると、フェライト粒内を進展してきた疲労き裂は、その第2相を迂回するようにき裂が進展する。第2相を迂回時、き裂を進展させてきた応力とき裂進展の方向が変わるので、き裂進展が遅延するようになるからである。
【0054】
一方、第2相の平均粒径が8μm超であると曲げ加工性が劣化する。曲げ加工の場合、フェライトと硬質な第2相の界面からき裂が入る。第2相の大きさが8μm超であると、フェライトと第2相の界面の応力集中が大きくなり、曲げ加工の早期にき裂が入る。
【0055】
第2相の平均粒子間隔は2〜10μmである。第2相の平均粒径が1〜8μmであっても、第2相の平均粒子間隔が2μm未満であると、曲げ加工性が劣化する。これは、平均間隔が2μm未満であると、フェライトと第2相の界面から発生したき裂が早期に連結するためである。また平均間隔粒子が10μm超であると、曲げ疲労限度耐久比が劣化してしまう。これは、第2相の間隔が広いと第2相による疲労き裂の進展抑制効果が減少してしまうからである。
【0056】
本発明にかかる鋼板の表面性状は次の通りである。
鋼板表面において最大長さ5mm以上の島状スケール疵が面積率で10%以下が必要である。島状スケール疵の面積率の基準は、鋼板面積1.5mあたりとする。通常使用される自動車の足廻り部品やバンパー等の補強材に代表される構造部材の素材、またはホイール用の素材としての鋼板の面積は1.5mのものが多いためである。
【0057】
鋼板表面において、最大長さ5mm以上の島状スケール疵が面積率で10%超の場合、外観が美麗でないばかりか、鋼板表面の粗さが大きくなる。そのため、曲げ加工性が劣化する。最大長さが5mm未満の島状スケール疵ならびに最大長さ5mm以上の島状スケール疵の面積率が10%未満ならばその悪影響が無い。
【0058】
本発明にかかる鋼板の特性について説明すると次の通りである。
本発明の鋼板は、上記の成分からなり、かつ上記の金属組織を呈した鋼板であるので、引張り強度が590MPa以上、180度曲げにおける限界曲げ半径が板厚の2倍以下であり、かつ曲げ疲労限度耐久比が0.48以上であるものが得られる。なお、強度780MPa以上の鋼板とすることによって、特に部材の薄肉化に効力が発揮される。
【0059】
酸洗板
酸洗板の場合には、酸洗後の鋼板の平均表面粗さRaが1.2μm以下、鋼板表面から鋼板表面からの深さが0.03mmの位置までの鋼板表層部におけるフェライトの平均結晶粒径をα、鋼板表面からの深さが0.03mm超の位置から板厚中心までにおける鋼板中心部におけるフェライトの平均結晶粒径をαとした時、フェライトの平均結晶粒径3〜20μmの範囲で、α≧α×1.1であることが必要である。
【0060】
酸洗板の場合には、表面スケール付着のままの鋼板と異なり、酸洗により表面粗さが大きくなる。その結果、曲げ加工性が劣化する。表面粗さRaが1.2μm超であると、曲げ加工時、鋼板表面での応力集中が過大となり、曲げ加工初期に割れが発生する。
【0061】
したがって、鋼板の表面粗さは、Raで1.2μm以下とする必要がある。加えて、酸洗板において優れた曲げ加工性を保つためには、鋼板表面から鋼板内部0.03mmにおけるフェライトの平均粒径を大きくさせる必要がある。曲げ加工時、鋼板表面部では、鋼板内部に比べて、曲げ応力が大きくなるためで、鋼板表層部のフェライトの結晶粒径を大きくすることにより、鋼板表面部での加工性を向上させ、結果、曲げ加工性を向上させることができる。
【0062】
鋼板表層から鋼板内部0.03mm位置までのフェライトの平均粒径をα、鋼板内部0.03mm超から板厚中心部までにおけるフェライトの平均粒径をαとした時、α<α×1.1の場合、鋼板表面におけるフェライト粒径が内部に比べ小さいため、曲げ加工性は向上しない。
【0063】
次に、本発明にかかる上述のような鋼板を製造するための製造方法について説明する。
本発明の鋼板を得るためには、スラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとなし、前記粗バーを下記式(1)で仕上げ圧延前に限界温度T以上で粗バーを加熱した後、デスケーリングを実施し、前記粗バーを下記式(1)で定められる限界温度T以上としてデスケーリングした後にAr点〜Ar+150℃で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、前記仕上熱間圧延の完了後3秒以内に冷却を開始して平均冷却速度20〜200℃/秒で760〜600℃の温度域の所定温度まで冷却する1次冷却と、前記1次冷却後2〜20秒間の中間空冷と、前記中間空冷後10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する2次冷却とを前記熱延鋼板に施して、250℃以下で巻き取ることが必要である。
【0064】
限界温度T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)−245.12×(5×P+Al)/Si+1170(℃) (1)
ここで、式中の各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を表す。
【0065】
スラブ加熱
粗熱間圧延に供する際にスラブ温度を1100℃以上とする。スラブ温度が、1100℃未満であると、スラブ中に存在する粗大な析出物や硫化物、窒化物が再固溶せず、圧延後の鋼板に残存し、著しく、延性、曲げ加工性、曲げ疲労耐久比を劣化させる。また、オーステナイトが粗大化しないため、フェライトの生成が過剰となり、所望のフェライト面積率が得られなくなる。スラブ温度の上限は1300℃が望ましい。1300℃超であると、スラブが自重で変形し、圧延トラブルに繋がる危険性がある。
【0066】
なお、本発明においては、粗熱間圧延に供するスラブ温度が上記温度域にあればよく、1100℃未満の温度となったスラブを加熱する場合のみならず、連続鋳造により得られたスラブを1100℃未満の温度に低下させることなく粗熱間圧延に供する場合も含まれる。
【0067】
粗バー温度
粗熱間圧延を行ない、得られた粗バーを粗バーの表面に生成するFeO/FeSiOの共晶温度以上、具体的には、T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)−245.12×(5×P+Al)/Si+1170(℃)として規定される限界温度T(℃)以上に加熱した後、デスケーリングを実施する。
【0068】
デスケーリング前の粗バーの温度がT(℃)未満であると、粗バーへの加熱が不十分であり、粗バー表面に生成するスケール量が少ない。そのため粗バーへのデスケーリング性が悪化し、島状スケール疵が発生する。デスケーリングの悪化理由としては、スケールは、その生成量が大きくなるほど、スケールの内部に圧縮応力が発生するとともに、粗バーとスケールとの界面に生成するボイドの生成量も増加する。
【0069】
発生した圧縮応力及び生成したボイドの相互作用により、粗圧延を終了した時からデスケーリングを開始する時までにおける、スケールが進行するほど、粗バーの表面に生成するスケールは剥離し易いものとなる。
【0070】
しかしながら、Si含有量が0.2%以上であるSi含有鋼は、高温かつ長時間のスラブ加熱によってSi酸化物(FeSiO)が母材及びスケールの界面に濃化することによってスケール(FeO)の生成を抑制している。ここで、一般的に、スケールの生成量を増加するには鋼板温度を高く設定すればよいが、Si含有鋼ではこの酸化抑制効果がかなり大きいために、鋼板温度を多少高めた程度ではスケールの生成量はあまり増加しない。
【0071】
そのため、FeO/FeSiOの共晶温度である約1177℃以上に維持されておれば、Si含有鋼のSi量が高くとも、あるいはSiが界面に濃化していようとも、FeSiOが溶融化するためにスケール生成に対する抑制効果はなくなり、スケールの生成が進行する。FeO/FeSiOの共晶温度は粗バーの組成、特にP、Alを含有するとこの共晶温度は低下し、T(℃)=168.15×((5×P+Al)/Si)−245.12×(5×P+Al)/Si+1170(℃)以上の温度であれば、FeO/FeSiOの共晶温度以上となり、その温度加熱後にデスケーリングを実施すれば、鋼板表面のスケール疵は減少する。
【0072】
一方、上限は、1230℃以下が望ましい。1230℃超であると粗圧延で細粒化されたオーステナイトが再度粗大化し、その後のフェライトやマルテンサイトを細粒化させることができず、所望の金属組織を得ることができない欠点がある。好ましい上限は、T+50℃以下で行うのが良い。
【0073】
なお、本発明においては、粗バーの温度が上記限界温度T以上であればよいので、粗熱間圧延機と仕上熱間圧延機の間に誘導加熱等による粗バー加熱装置を配して、前記粗バー加熱装置によりT以上とする場合のみならず、粗圧延完了温度をT以上としてもよい。一般的には、粗圧延完了温度をT以上とするには粗熱間圧延に供する鋳片の温度を高温とする必要が生じてコスト的に不利となることから、上述したように粗バー加熱装置を配して加熱することが好ましい。
【0074】
デスケーリング
デスケーリング装置は、公知のデスケーリング装置であればよく、本実施の形態では、粗バーの幅方向へ粗バーの表面へ高圧水を、高圧水吐出圧:10MPa以上100MPa以下及び粗バー単位幅当たり流量:0.01m/秒/m以上0.4m/秒/m以下の条件で噴射するための噴射用ノズルを複数個配置されたデスケーリング装置を用いた。また、スケール除去時の粗バーの移動速度は0.1m/秒以上2.5m/秒以下とした。なお、仕上圧延前にデスケーリングを行う際の粗バーの温度も特に限定を要さない。
【0075】
仕上熱間圧延
仕上熱間圧延は、Ar点〜(Ar点+150℃)の温度範囲で行う。 仕上げ圧延温度がAr点以下の場合、フェライト域圧延となり加工フェライトが生成し、加工性が劣化する。酷い場合には圧延時体積膨張が起こり、圧延トラブルが発生する。Ar+150℃超では、フェライトの生成が抑制され、フェライトの面積率が50%未満となる。
【0076】
また仕上げ圧延後、3秒以内に冷却を開始して平均冷却速度20〜150℃/秒で760〜600℃の温度域の所定温度まで冷却する1次冷却と、前記1次冷却後2〜20秒間の中間空冷と、前記中間空冷後10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する2次冷却とを前記熱延鋼帯に施して、250℃以下で巻き取ることにより、所望の金属組織を得ることができる。
【0077】
仕上熱間圧延後の冷却開始時間が3秒超の場合、または、冷却開始時間が3秒以内であっても1次冷却の冷却速度が、20℃/秒未満であると、フェライトが微細化せず、フェライトの平均結晶粒径が20μm超になり、加えて、第2相の平均結晶粒径が8μm超となる。
【0078】
一方、冷却速度が200℃/秒超の場合、フェライト粒が成長せず、フェライトの平均結晶粒径が3μm未満となり、加えて第2相の平均結晶粒径が、1μm未満となる。1次冷却停止温度が760℃超の場合、フェライトの生成が促進されフェライトの面積率が95%超となり、第2相の面積率が5%未満となる。
【0079】
逆に1次冷却停止温度が600℃未満であると、冷却が過大であるため、フェライト面積率が50%未満となる。更に中間空冷時間を2〜20秒とすることで、第2相の平均粒子間隔を2〜10μmにすることができる。中間空冷時間が2秒未満であるとフェライトからオーステナイトへのカーボンの拡散が不十分であり、フェライト粒の周辺に多くの第2相が生成し、第2相の平均粒子間隔が2μm未満となる。
【0080】
逆に、中間空冷時間が20秒超になると、カーボンの拡散が過剰になり、第2相は、フェライト粒の3重点のみに生成しやすくなる。その結果、第2相の平均粒子間隔が10μm超となる。
【0081】
中間空冷後、10℃/秒以上で冷却後、250℃以下で巻き取ることにより、第2相をマルテンサイト面積率で5〜50%かつマルテンサイト以外の第2相の面積率を5%未満にすることができる。中間空冷後10℃/秒未満の冷却速度の場合、または、巻き取り温度が250℃超であると、冷却が不十分であり、第2相において、マルテンサイトの面積率5%以上を確保することができない。
【0082】
酸洗板の製造方法
酸洗後の鋼板の平均表面粗さRaを1.2μm以下にするには、まず、スラブを連続鋳造する際、スラブ表面から下記式(2)で定められるスラブ内部位置Stまでの液相線温度〜固相線温度の冷却速度を10℃/秒以上としたスラブを用いる。
【0083】
St(mm)=[B(mm)/A(mm)]×0.03mm (2)
ここで、B(mm):スラブ厚、A(mm):鋼板の板厚である。
表面粗さは、鋼板表面に濃化するSiやMnの偏析のばらつきに大きく影響される。その理由としては、鋼板表面においてSiやMnの偏析にばらつきが生じていると、酸洗時の酸による鋼板の溶解が不均一であるためそれに準じて、表面粗さが粗くなる。また、Si偏析のばらつきが多いと、スケールの生成も不均一であるため、酸によるスケ−ル除去時に鋼板の粗さを増加させる要因となる。
【0084】
そのため、スラブ表面での偏析を軽減する必要がある。スラブ表面からスラブ内部位置St(mm)までの液相線温度〜固相線温度の冷却速度を10℃/秒以上にすることにより、スラブ表面近傍のSiやMnの偏析が軽減される。加えて本発明で実施する仕上げ圧延前の粗バーの加熱、その後のデスケーリングを併用することにより、酸洗後の鋼板表面粗さRaを1.2μm以下とすることができる。
【0085】
酸洗は、常法で構わない。また、酸洗前にスキンパスで平坦矯正をおこなってもその効果は失われない。
さらに、本発明のスラブを用いた場合、鋼板表面から鋼板表面からの深さが0.03mmの位置までのフェライト組織は、Mnの偏析が軽減されているため生成が促進される傾向がある。さらに仕上熱間圧延後、3秒以内に冷却速度20〜150℃/秒とすることで、鋼板表面から鋼板表面からの深さが0.03mmの位置までのフェライトの平均結晶粒径をα、鋼板表面からの深さが0.03mm超の位置から板厚中心までの鋼板中心部におけるフェライトの平均粒径をαとした時、α≧α×1.1とすることができる。
【実施例1】
【0086】
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、試験連続鋳造機にて連続鋳造を実施し、巾1000mmで厚み250mmのスラブとした。スラブ表面近傍における液相線温度から固相線温度までの平均冷却速度の変更は、鋳型の水量にて調整した。
【0087】
【表1】


【0088】
試験圧延装置を用いて、得られたスラブを表2に示す条件にて加熱した後、粗圧延を実施し、厚み35mmの粗バーとし、誘導加熱装置で粗バーを加熱した。その後、デスケーリングを行い、仕上げ圧延、鋼板冷却を実施した。その後、酸洗を実施した。
【0089】
【表2】


【0090】
評価方法
<スラブ平均冷却速度>
得られたスラブの断面をピクリン酸にてエッチングし、0.5mmピッチでデンドライト2次アーム間隔λ(μm)を測定し、次式に基づいて、その値からスラブの液相線〜固相線内の冷却速度A(℃/秒)を算出した。なお、平均冷却速度は、スラブ表面から厚方向のスラブSt位置まで0.5mmピッチで測定した冷却速度の算術計算での平均値とした。
【0091】
λ=710×A−0.39
<金属組織の評価>
鋼板の圧延方向に平行な断面について、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて、JIS G 0552に準拠してフェライトの平均結晶粒径を測定した。フェライトの面積率は、画像処理にてもとめた。
【0092】
第2相の同定ならびに平均結晶粒径、平均粒子間隔は、走査型電子顕微鏡を用いて調査した。平均粒子間隔は、個々の第2相について最近接距離を測定し、その算術計算の平均値とした。
【0093】
<鋼板の表面性状の評価>
鋼板表面における最大長さ5mm以上の島状スケールの面積率の算出は、得られた鋼板の外観写真を撮影し、画像処理にて面積率をもとめた。
【0094】
<引張試験>
各鋼板の圧延直角方向からJIS 5号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。降伏点YP、引張強さTS、伸びElを測定した。
【0095】
<限界曲げ試験>
各鋼板の圧延直角方向から巾40mm、長さ200mmの試験片を採取した。試験形状ならびに試験方法はJIS Z2248に準じた。曲げ半径は、密着から板厚の1倍、2倍、3倍、4倍にて実施し、その割れが発生しない板厚に対する曲げ半径を限界曲げ半径とした。
【0096】
<平面曲げ疲労試験>
各鋼板からJIS Z2275に記載されている形状にて長さ90mm、巾40mmの試験片を採取した。試験方法は、JIS Z2275に準じた。両振り平面曲げ疲労(応力比:−1)にて実施し、10乗回の繰り返し数にて破断しない応力振幅値を疲労限界とし、次式により、TSとの算術計算から耐久比をもとめた。
【0097】
耐久比=10乗回で破断した応力振幅値/TS
鋼板の特性結果を表3、表4に示した。
【0098】
【表3】


【0099】
【表4】


【0100】
表3、4からも分かるように、本発明である材質No.B1〜B8は、強度が590MPa以上で限界曲げ半径が「密着〜2.0t」であり、曲げ疲労限度耐久比が0.48以上であった。そのため加工性(伸び)、曲げ加工性、耐疲労特性に優れていた。加えて、島状スケール疵面積率が2%以内であり鋼板の表面性状にも優れていた。なお、ここで、tは板厚を表わし、2.0tとは、板厚の2倍を意味する。
【0101】
これに対して、材質No.B9〜B13は、P、Cu、O、Cu/(P+O)のいずれかが本発明外であるため、曲げ加工性が3.0tと劣化した。加えて曲げ疲労限度耐久比が0.47以下で、曲げ疲労限度耐久比が劣化したものもあった。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013