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非調質部品の熱間鍛造方法 - 住友金属工業株式会社
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発明の名称 非調質部品の熱間鍛造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−211314(P2007−211314A)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
出願番号 特願2006−34261(P2006−34261)
出願日 平成18年2月10日(2006.2.10)
代理人 【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
発明者 東田 真志 / 長谷川 達也 / 根石 豊
要約 課題
高強度、高靱性及び良好な被削性を確保できる自動車用非調質部品を製造するのに好適な非調質部品の熱間鍛造方法を提供する。

解決手段
C:0.15〜0.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.6〜1.5%、P≦0.03%、S:0.03〜0.2%、N:0.008〜0.025%、Ti:0.003〜0.1%、V:0.1〜0.5%、Cr:0.2〜0.8%、Al:0.002〜0.1%を含有し、残部はFeと不純物からなり、[%C]/[%V]≧0.5を満たす鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却する非調質部品の熱間鍛造方法。但し、Tは「Log[%C][%V]=(-9500/t)+6.72」の式及び「T=t−273」の式で計算される1000℃以下の温度(℃)を、また、[%C]及び[%V]は、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量を指す。
特許請求の範囲
【請求項1】
非調質部品の熱間鍛造方法であって、質量%で、C:0.15〜0.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.6〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.03〜0.2%、N:0.008〜0.025%、Ti:0.003〜0.1%、V:0.1〜0.5%、Cr:0.2〜0.8%及びAl:0.002〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、[%C]/[%V]≧0.5を満たす鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却することを特徴とする非調質部品の熱間鍛造方法。
但し、Tは下記の(1)式及び(2)式で計算される1000℃以下の温度(℃)を指す。
Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72・・・(1)
T=t−273・・・(2)
また、[%C]及び[%V]は、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量を指す。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼のFeの一部に代えて、Mo:0.7%以下、Nb:0.1%以下及びZr:0.01%以下の1種又は2種以上を含有する鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却することを特徴とする非調質部品の熱間鍛造方法。
但し、Tは下記の(1)式及び(2)式で計算される1000℃以下の温度(℃)を指す。
Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72・・・(1)
T=t−273・・・(2)
また、[%C]及び[%V]は、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量を指す。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鋼のFeの一部に代えて、Pb:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Bi:0.3%以下及びTe:0.1%以下の1種又は2種以上を含有する鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却することを特徴とする非調質部品の熱間鍛造方法。
但し、Tは下記の(1)式及び(2)式で計算される1000℃以下の温度(℃)を指す。
Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72・・・(1)
T=t−273・・・(2)
また、[%C]及び[%V]は、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量を指す。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、非調質部品の熱間鍛造方法に関する。詳しくは、被削性に優れるとともに高強度及び高靱性で、ハブやコンロッド等の自動車用非調質部品を製造するのに好適な、非調質部品の熱間鍛造方法に関する。更に詳しくは、フェライトとパーライトの混合組織からなる所謂「フェライト+パーライト」型の非調質鋼を用いて、低い製造コストで、上記の自動車用非調質部品に高強度及び高靱性を具備させることができる非調質部品の熱間鍛造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ハブやコンロッド等の自動車部品は、素材鋼を熱間鍛造によって複雑な形状に成形した後、切削等の機械加工によって最終形状に仕上げられている。これらの自動車部品には、一般に、
(イ)高強度及び高靱性、
(ロ)良好な被削性、
(ハ)低い製造コスト、
が要求される。
【0003】
なお、上記(イ)の高強度及び高靱性は、部品に調質処理、すなわち、焼入れ−焼戻しを施すことによって達成することができる。また、鋼はその鍛造温度を下げると、すなわち所謂「亜熱間鍛造」や「温間鍛造」と称される「制御鍛造」によっても(イ)の高強度及び高靱性を達成することができる。
【0004】
しかしながら、調質処理を行って高強度及び高靱性を確保する場合は、熱処理コストが嵩むため、上記(ハ)の低い製造コストという要求を満たすことができない。
【0005】
また、「制御鍛造」によって高強度及び高靱性を確保する場合は、鍛造温度が低いため金型寿命の低下を招いて金型コストの上昇をきたすので、やはり、低い製造コストという要求を満たすことができない。一方、金型寿命の低下を抑制して金型コストが上昇しないようにするためには、「制御鍛造」される鋼に含有されるC、Si、MnやV等の量を少なくして変形抵抗を低下させることが有効である。しかしながら、この場合には、高い靱性を確保できるものの強度が低下してしまう。
【0006】
したがって、自動車部品を製造するに際し、(イ)の高強度及び高靱性の確保と(ハ)の低い製造コストという要求を両立させることは非常に困難である。
【0007】
このため、(ハ)の低い製造コストという要求を満たすために、金型寿命の低下が生じない比較的高い温度域で鍛造したままの状態で、(イ)の高強度及び高靱性、並びに(ロ)の良好な被削性の双方を確保できる技術に対する要求が大きく、特許文献1〜4に、所謂「フェライト+パーライト」型或いは「フェライト+パーライト+ベイナイト」型の非調質鋼やその製造方法が提案されている。
【0008】
特許文献1に、フェライト部の脱炭による疲労強度低下を防止するため、C量の低下による脱炭防止を行い、更に、V及びSiを含有させてフェライトを強化することで、面積率70%以上のフェライトを有し、かつ脱炭が懸念される1050℃以上の加熱においても脱炭防止を可能とした「疲労強度と靱性に優れた鍛造用非調質鋼およびその製造方法」が開示されている。
【0009】
特許文献2に、パーライトの微細化、Si及びNによる固溶強化、並びにVによる析出強化でフェライトを強化した、「高疲労強度を有する熱間鍛造非調質鋼および鍛造品の製造方法」が開示されている。
【0010】
特許文献3に、Tiの酸・窒化物及びMnS等の介在物の量及びサイズを制御することで、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制するとともに粒内フェライトの生成核を形成させ、組織の微細化を達成した「高強度高靱性非調質鋼部品の製造方法」が開示されている。
【0011】
特許文献4に、Ac1点からAc3点の温度域での鍛造、すなわち、温間鍛造によって微細なフェライト+パーライト組織を得る「高強度高靱性を有する非調質鋼部品の製造方法」が開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開平8−120398号公報
【特許文献2】特開平9−143610号公報
【特許文献3】特開平8−92687号公報
【特許文献4】特開平5−255739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の特許文献1で提案された技術は、Tiを含有していないので、加熱時にオーステナイトの粗粒化が起こり、鍛造後の冷却時に得られるフェライト+パーライト組織も粗大化してしまうため、必ずしも十分な靱性を確保することができない。更に、Siの含有量が0.35%以下と低いので、必ずしも十分な強度を得ることもできない。
【0014】
特許文献2で提案された技術は、Siの含有量が0.01〜0.1%と低いため、必ずしも十分な強度を得ることができない。また、鍛造前の鋼材の加熱温度に上限が設けられていないことや、Tiの含有が必須でないことから、必ずしも良好な靱性を確保できない。
【0015】
特許文献3で提案された技術は、介在物平均粒径及び含有量を制御する必要、具体的には、0.1〜5μmの介在物を1×102〜1×106個/mm2に制御する必要があるので、溶鋼を鋳造するに際して、1500〜900℃における冷却速度を1℃/分以上に制御する必要があり、製造性の観点で問題がある。また、その「実施例」で具体的に開示された鋼のSi含有量は高々0.5%程度であることから、強度が低い。
【0016】
特許文献4で提案された技術は、鍛造温度が低く、金型寿命の大きな低下を招いてしまうため、高い靱性が得られるものの製造コストが嵩んでしまう。
【0017】
そこで、本発明の目的は、金型寿命の低下が生じない比較的高い温度域で鍛造したままの状態で、高強度及び高靱性、更には、良好な被削性も確保でき、ハブやコンロッド等の自動車用非調質部品を製造するのに好適な「非調質部品の熱間鍛造方法」を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、非調質のままで高強度、高靱性及び良好な被削性を確保するために種々の検討を行った。その結果、先ず、下記(a)〜(d)の知見を得た。
【0019】
(a)「フェライト+パーライト」型非調質鋼の靱性は、「フェライト+パーライト+ベイナイト」型等の他の非調質鋼の靱性より優れている。
【0020】
(b)一般に、Vは、窒化物や炭化物として析出する。V窒化物は、高温加熱時のオーステナイト粒成長を抑制するとともにフェライト+パーライト変態の際にフェライト生成核となって組織を微細化することで靱性を向上させる効果を有し、一方、V炭化物は鍛造後のフェライト+パーライト変態中にフェライト中に析出した場合、大きな強化作用を有する一方で、靱性の低下を招いてしまう。
【0021】
(c)しかしながら、V炭化物は析出するマトリックス(基地)の組織によって、靱性への効果が異なる。V炭化物は、オーステナイト中に析出した場合には、フェライト中に析出した場合よりも、靱性の低下が小さい。したがって、V炭化物のオーステナイト中での析出を促進し、V炭化物とV窒化物の析出を適正化すれば、V炭化物による強化作用とV窒化物による靱性向上作用を両立させることができる。
【0022】
(d)但し、V窒化物を大量に析出させてしまうと、炭化物の析出に必要なV量が少なくなるため、高温加熱時のオーステナイト粒成長を抑制する析出物を形成する元素として、Vに加えTiを用いるのがよい。
【0023】
そこで、本発明者らは「フェライト+パーライト」型非調質鋼について更に検討を行った。その結果、下記(e)の知見を得た。
【0024】
(e)V炭化物の析出及び固溶反応は、「V+C→VC」と「VC→V+C」の可逆反応で、その平衡常数[%C][%V]と温度t(K)との間には、Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72の実験式が成立することが知られているので、C及びVの含有量を適切な範囲とし、前記固溶温度直上で鍛造を行えば、その歪エネルギーによりV炭化物の析出が促進され、鍛造後の冷却過程のオーステナイト域でV炭化物が析出するのでV炭化物による靱性低下を抑制できる。
【0025】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す非調質部品の熱間鍛造方法にある。
【0026】
(1)非調質部品の熱間鍛造方法であって、質量%で、C:0.15〜0.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.6〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.03〜0.2%、N:0.008〜0.025%、Ti:0.003〜0.1%、V:0.1〜0.5%、Cr:0.2〜0.8%及びAl:0.002〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、[%C]/[%V]≧0.5を満たす鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却することを特徴とする非調質部品の熱間鍛造方法。但し、Tは下記の(1)式及び(2)式で計算される1000℃以下の温度(℃)を指す。
Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72・・・(1)、
T=t−273・・・(2)。
また、[%C]及び[%V]は、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量を指す。
【0027】
(2)上記(1)に記載の鋼のFeの一部に代えて、Mo:0.7%以下、Nb:0.1%以下及びZr:0.01%以下の1種又は2種以上を含有する鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却することを特徴とする非調質部品の熱間鍛造方法。但し、Tは下記の(1)式及び(2)式で計算される1000℃以下の温度(℃)を指す。
Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72・・・(1)、
T=t−273・・・(2)。
また、[%C]及び[%V]は、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量を指す。
【0028】
(3)上記(1)又は(2)に記載の鋼のFeの一部に代えて、Pb:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Bi:0.3%以下及びTe:0.1%以下の1種又は2種以上を含有する鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却することを特徴とする非調質部品の熱間鍛造方法。但し、Tは下記の(1)式及び(2)式で計算される1000℃以下の温度(℃)を指す。
Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72・・・(1)、
T=t−273・・・(2)。
また、[%C]及び[%V]は、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量を指す。
【0029】
以下、上記 (1)〜(3)の非調質部品の熱間鍛造方法に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(3)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、亜熱間鍛造ほど鍛造温度を低くせずとも、鋼組織の微細化を達成することができ、なおかつV炭化物による靱性低下を低減できるため、低い製造コストで、被削性に優れるとともに高強度及び高靱性を具備し、ハブやコンロッド等の自動車用非調質部品として好適な非調質部品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
【0032】
(A)鋼の化学組成:
C:0.15〜0.5%
Cは、鋼の強度と靱性に大きく影響を与える重要元素であり、その含有量が0.15%を下回ると、金型寿命の増加及び高靱性を得ることができるものの、高強度を得ることができない。一方、Cの含有量が0.5%を超えると、高強度を得ることはできるものの、金型寿命及び靱性の低下を招く。したがって、Cの含有量を0.15〜0.5%とした。なお、Cの含有量は、0.2〜0.4%とすることが好ましい。
【0033】
Si:0.6〜1.0%
Siは、フェライトを強化する作用及び脱酸作用を有する。しかしながら、含有量が少ないと効果が得られず、特にSiの含有量が0.6%未満の場合には、金型寿命を長くすることができるものの、所定の強度を得ることができない。一方、Siの含有量が1.0%を超えると、強度が大きくなって金型寿命の大幅な低下をきたす。したがって、Siの含有量を0.6〜1.0%とした。なお、Siの含有量は、0.6〜0.9%とすることが好ましい。
【0034】
Mn:0.6〜1.5%
Mnは、フェライトを強化する作用及びパーライトを微細にして靱性を向上させる作用を有する。また、Mnには硫化物を形成して被削性を高める作用もある。しかしながら、その含有量が0.6%を下回ると、十分な効果が得られない。一方、Mnの含有量が1.5%を超えると、強度が大きくなって金型寿命の低下を招くばかりか、被削性も却って低下する。更に、コストも高くなる。したがって、Mnの含有量を0.6〜1.5%とした。なお、Mnの含有量は、0.6〜1.4%とすることが好ましい。
【0035】
P:0.03%以下
Pは、靱性を低下させ、特に、その含有量が0.03%を超えると、靱性の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を、0.03%以下とした。なお、Pの含有量は、少なければ少ないほどよい。
【0036】
S:0.03〜0.2%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.03%未満では十分な効果が得られない。一方、Sの含有量が0.2%を超えると、靱性が低下するばかりか鍛造割れの原因になる。したがって、Sの含有量を、0.03〜0.2%とした。なお、Sの含有量は、0.04〜0.13%とすることが好ましい。
【0037】
N:0.008〜0.025%
Nは、Tiと結合してTiNを形成し、熱間鍛造時の加熱において、組織の粗大化を抑止するので、靱性向上に寄与する。また、Vと結合してVNを形成し、熱間鍛造時の加熱において、組織の粗大化を抑止するだけでなく、フェライトの生成核にもなるため、組織が微細化し、靱性向上に寄与する。しかしながら、その含有量が0.008%未満では前記の効果が得られない。一方、Nの含有量が0.025%を超えると、硬質のTiN及びVNが粗大かつ多量に生成するので、却って靱性の低下をきたすし、被削性も低下する。したがって、Nの含有量を、0.008〜0.025%とした。
【0038】
Ti:0.003〜0.1%
Tiは、Nと結合してTiNを形成し、熱間鍛造時の加熱において、組織の粗大化を抑止するので、靱性向上に寄与する。しかしながら、その含有量が0.003%未満では前記作用に十分な効果が得られない。一方、Tiの含有量が0.1%を超えると、硬質のTiNが粗大かつ多量に生成するので、却って靱性の低下をきたすし、被削性も低下する。したがって、Tiの含有量を、0.003〜0.1%とした。なお、Tiの含有量は、0.003%以上0.08%未満とすることが好ましい。
【0039】
V:0.1〜0.5%
Vは、本発明において極めて重要な元素である。すなわち、Vには、V炭化物を形成してフェライトを強化する作用及びV窒化物を形成して加熱時のオーステナイト粒の粗大化を防止する作用がある。しかしながら、その含有量が0.1%未満では、フェライトの強化が少なくなるため靱性は高くなるものの、高強度を得ることができない。一方、Vの含有量が0.5%を超えると、V炭化物が過剰に存在しフェライト強化が多くなりすぎて靱性の大きな低下を招く。また、被削性の低下及び金型寿命の悪化をきたす。したがって、Vの含有量を、0.1〜0.5%とした。なお、Vの含有量は、0.15〜0.33%とすることが好ましい。
【0040】
Cr:0.2〜0.8%
Crは、フェライトを強化する作用及びパーライトを微細にして靱性を向上させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.2%を下回ると、前記の効果が得られない。一方、Crの含有量が0.8%を超えると、強度が大きくなりすぎて靱性の低下をきたすし、金型寿命も悪化する。したがって、Crの含有量を、0.2〜0.8%とした。なお、Crの含有量は、0.3〜0.8%とすることが好ましい。
【0041】
Al:0.002〜0.1%
Alは、鋼を脱酸するために必要な元素である。また、Alは、窒化物を形成してオーステナイトの粒成長を抑制し、靱性向上にも寄与する。しかしながら、Alの含有量が0.002%未満では前記作用に十分効果が得られない。一方、0.1%を超えてAlを含有させても前記の効果が飽和するばかりか、硬質な析出物が過剰に存在することとなって鍛造性の低下を招く。したがって、Alの含有量を、0.002〜0.1%とした。
【0042】
[%C]/[%V]:0.5以上
C及びVの含有量を前記した範囲に調整し、しかも、[%C]/[%V]の値を0.5以上にすることによって高い靱性を得ることができる。すなわち、[%C]/[%V]の値が0.5未満ではV炭化物が過剰に存在し析出強化量が多くなりすぎるので、靱性の大きな低下を招く。したがって、[%C]/[%V]の値を0.5以上とした。なお、V炭化物の析出により強度上昇作用を効果的に得るには、[%C]/[%V]は5以下とするのが望ましい。
【0043】
上記の理由から、本発明(1)の目的物である非調質部品の素材鋼の化学組成を、上述した範囲のCからAlまでの元素を含有し、残部はFe及び不純物からなり、[%C]/[%V]≧0.5を満たすことと規定した。
【0044】
なお、本発明の目的物である非調質部品の素材鋼には、必要に応じて、Feの一部に代えて、
第1群:Mo:0.7%以下、Nb:0.1%以下及びZr:0.01%以下、
第2群:Pb:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Bi:0.3%以下及びTe:0.1%以下、
の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を含有させることができる。すなわち、前記第1群と第2群の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を、Feの一部に代えて、任意添加元素として含有させてもよい。
【0045】
以下、上記の任意添加元素に関して説明する。
【0046】
第1群:Mo:0.7%以下、Nb:0.1%以下及びZr:0.01%以下
Moは、析出強化によって強度を高める作用を有する。その含有量が0.01%以上で前記の効果が顕著となる。一方、Moの含有量が0.7%を超えると、強度が大きくなりすぎて靱性の低下をきたすし、被削性も低下する。したがって、Moを含有させる場合の含有量を0.7%以下とした。なお、Moの含有量は、0.01〜0.7%とすることが好ましく、0.05〜0.2%とすることがより好ましい。
【0047】
Nbは、析出強化によって強度を高める作用を有する。その含有量が0.001%以上で前記の効果が顕著となる。一方、Nbの含有量が0.1%を超えると、強度が大きくなりすぎて靱性の低下をきたし、更に、被削性も低下する。したがって、Nbを含有させる場合の含有量を0.1%以下とした。なお、Nbの含有量は、0.001〜0.1%とすることが好ましく、0.005〜0.05%とすることがより好ましい。
【0048】
Zrは、析出強化によって強度を高める作用を有する。その含有量が0.001%以上で前記の効果が顕著となる。一方、Zrの含有量が0.01%を超えると、強度が大きくなりすぎて靱性の低下をきたすし、被削性も低下する。したがって、Zrを含有させる場合の含有量を0.01%以下とした。なお、Zrの含有量は、0.001〜0.01%とすることが好ましく、0.001〜0.005%とすることがより好ましい。
【0049】
なお、上記のMo、Nb及びZrは、そのうちのいずれか1種のみ、又は2種以上の複合で含有することができる。
【0050】
第2群:Pb:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Bi:0.3%以下及びTe:0.1%以下
Pbは、被削性を高める作用がある。その含有量が0.01%以上で前記の効果が顕著となる。一方、Pbの含有量が0.4%を超えると、熱間加工性の劣化をもたらし、熱間鍛造時に割れの発生を招く。したがって、Pbを含有させる場合の含有量を0.4%以下とした。なお、Pbの含有量は、0.01〜0.4%とすることが好ましい。
【0051】
Caは、被削性を高める作用がある。その含有量が0.0002%以上で前記の効果が顕著となる。一方、Caの含有量が0.01%を超えると、熱間鍛造割れの原因となる。したがって、Caを含有させる場合の含有量を0.01%以下とした。なお、Caの含有量は、0.0002〜0.01%とすることが好ましい。
【0052】
Biは、被削性を高める作用がある。その含有量が0.01%以上で前記の効果が顕著となる。一方、Biの含有量が0.3%を超えると、熱間加工性の劣化をもたらし、熱間鍛造時に割れの発生を招く。したがって、Biを含有させる場合の含有量を0.3%以下とした。なお、Biの含有量は、0.01〜0.3%とすることが好ましい。
【0053】
Teは、被削性を高める作用がある。その含有量が0.002%以上で前記の効果が顕著となる。一方、Teの含有量が0.1%を超えると、熱間加工性の劣化をもたらし、熱間鍛造時に割れの発生を招く。したがって、Teを含有させる場合の含有量を0.1%以下とした。なお、Teの含有量は、0.002〜0.1%とすることが好ましい。
【0054】
なお、上記のPb、Ca、Bi及びTeは、そのうちのいずれか1種のみ、又は2種以上の複合で含有することができる。
【0055】
上記の理由から、本発明(2)の目的物である非調質部品の素材鋼の化学組成を、本発明(1)の目的物である非調質部品の素材鋼のFeの一部に代えて、Mo:0.7%以下、Nb:0.1%以下及びZr:0.01%以下の1種又は2種以上を含有することと規定した。
【0056】
また、本発明(3)の目的物である非調質部品の素材鋼の化学組成を、本発明(1)又は本発明(2)の目的物である非調質部品の素材鋼のFeの一部に代えて、Pb:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Bi:0.3%以下及びTe:0.1%以下の1種又は2種以上を含有することと規定した。
【0057】
(B)熱間鍛造:
本発明においては、[%C]及び[%V]を、それぞれ、質量%での、鋼中のC及びVの含有量、Tを既に述べた下記の(1)式及び(2)式で計算される1000℃以下の温度(℃)として、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却する必要がある。
Log[%C][%V]=(−9500/t)+6.72・・・(1)、
T=t−273・・・(2)。
【0058】
先ず、加熱温度が1100℃を下回ると、V炭化物の固溶が不十分となって、鍛造後の冷却中に析出するV炭化物の量が少なくなるので、所定の強度を得ることができない。また、未固溶のV炭化物は、鍛造後得られる鍛造品の強化にはあまり寄与しないが、V炭化物自体が硬質なため、鍛造時に存在すると鍛造時の変形抵抗が上昇し、金型寿命の低下を招く。したがって、熱間鍛造の際には金型寿命の低下が生じる。一方、加熱温度が1250℃を上回ると、オーステナイト粒が著しく粗大化して、靱性の低下をきたす。
【0059】
また、部品形状への鍛造温度が(T+50)℃を下回ると、高靱性を得ることができるものの、変形抵抗が大きくなるので金型寿命の大きな低下を招いてしまう。一方、部品形状への鍛造温度が(T+100)℃を超えると、変形抵抗が小さくなるので金型寿命は向上するものの、鍛造時の歪エネルギーが開放されてしまい、V炭化物はフェライト域で析出するため靱性の低下を招いてしまう。
【0060】
更に、鍛造後、800〜500℃における冷却速度が0.2℃/秒を下回ると、組織及びV炭化物が粗大化するので、強度及び靱性の両者が低下する。一方、鍛造後、800〜500℃における冷却速度が5.0℃/秒を上回ると、硬質なマルテンサイトやベイナイトが生成して、靱性及び被削性の低下や焼割れ等の問題が発生する場合がある。
【0061】
なお、前記Tが1000℃を上回ると、V炭化物量が過剰となり、析出強化量が多くなりすぎるので、靱性及び金型寿命が大きく低下する。
【0062】
したがって、本発明においては、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼を、1100〜1250℃に加熱して(T+50)〜(T+100)℃の温度域で部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として冷却することと規定した。
【0063】
前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼を、上述した条件で熱間鍛造すれば、「フェライト+パーライト」型の非調質部品を得ることができる。
【0064】
なお、部品形状に鍛造した後、800〜500℃における冷却速度は0.3〜3.0℃/秒とすることが好ましい。但し、500℃を下回る温度域での冷却条件は特に規定する必要はないので、例えば、大気中で放冷してもよい。
【0065】
前記Tの下限は、Cの含有量が0.15%でVの含有量が0.5%の場合の839℃である。
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【実施例】
【0067】
表1に示す化学組成を有する鋼1〜21を真空炉溶製して150kg鋼塊を作製した。
【0068】
表1中の鋼1〜13及び鋼19は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼14〜18、鋼20及び鋼21は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。比較例の鋼のうちで、鋼21は汎用的なV添加の従来の「フェライト+パーライト」型非調質鋼の一例として用いた鋼である。
【0069】
なお、表1には、前記(1)式及び(2)式で計算されるTの値も併記した。
【0070】
【表1】


【0071】
このようにして得た鋼塊を、1100〜1200℃に加熱した後、直径60mmの丸棒に熱間鍛造し、更に、これをピーリング加工して直径45mmで長さ110mmの丸棒とした。なお、熱間鍛造後の冷却は大気中での放冷とした。
【0072】
次いで、上記の直径45mmで長さ110mmの丸棒を、1250℃で50分加熱し、表2に示す温度まで降温させてから熱間プレス鍛造して厚さ15mmの鍛造品に仕上げた。なお、上記の熱間プレス鍛造は10/秒の歪速度で行い、プレス鍛造後は800〜500℃における冷却速度を0.5℃/秒に制御し、500℃を下回る温度域は大気中での放冷とした。
【0073】
なお、表2における鋼21の熱間プレス鍛造条件としての1100℃という鍛造温度は、一般に熱間鍛造温度として採用されているものである。
【0074】
表2には、前記(1)式及び(2)式で計算されるTの値も併記した。
【0075】
【表2】


【0076】
上記のようにして得た厚さ15mmの鍛造品から、各種試験片を切り出し、引張試験、シャルピー衝撃試験及び被削性試験を行った。
【0077】
引張試験は、上記厚さ15mmの鍛造品の厚さ方向1/2で幅方向1/4の位置から、JIS Z 2201(1998)に規定される14A号試験片(但し、平行部直径:7mm)を採取し、標点距離を35mmとして室温で実施し、引張強度(MPa)を求めた。
【0078】
シャルピー衝撃試験は、上記厚さ15mmの鍛造品の厚さ方向1/2で幅方向1/4の位置から、JIS Z 2202(1998)に規定される幅10mmのUノッチ試験片を採取し、室温で実施して衝撃値(J/cm2)を求めた。
【0079】
被削性試験は、厚さ15mmの鍛造品の厚さ方向に、材質がSKH51でドリル径が7mmのストレートシャンクドリルを用いて下記の条件で表面より深さ10mmの穴を30個あけ、ドリルのコーナー摩耗量を測定して、被削性を評価した。
【0080】
・回転数:600rpm、
・送り速度:0.15mm/rev.、
・潤滑:湿式(水溶性潤滑油剤を使用)。
【0081】
また、表1に示す鋼1〜21の成分の鋼塊を1100〜1200℃に加熱し、直径60mmに熱間鍛造した後、ピーリング加工にて直径30mmで長さが70mmの丸棒を作製した。この丸棒を1250℃で50分加熱し、表2に示す温度まで降温させてから10/秒の歪速度で厚さ10mmの鍛造品に熱間プレス鍛造した際の変形荷重(トン)を測定した。なお、前述のとおり、鋼21の熱間プレス鍛造条件における1100℃という鍛造温度は、一般に熱間鍛造温度として採用されているものである。
【0082】
表2に、上記の各試験結果(TS(引張強度)、衝撃値、ドリルのコーナー摩耗量及び変形荷重)を併せて示した。
【0083】
なお、前記単位でのTS、衝撃値及び変形荷重から計算した「(TS×衝撃値)/変形荷重」の値は、「機械的性質とコストとのバランス」を示す指標となり、この値が大きいほど「機械的性質とコストとのバランス」が優れている。このため、表2には、「(TS×衝撃値)/変形荷重」の値も併記した。
【0084】
なお、試験番号21における鋼21の上記各特性値を評価の基準とした。
【0085】
表2から、本発明(1)〜(3)で規定する条件を満たす場合、TS、衝撃値、ドリルのコーナー摩耗量及び「機械的性質とコストとのバランス」を示す指標である「(TS×衝撃値)/変形荷重」の値は、いずれも、評価基準値である試験番号21を上回っていることが明らかである(試験番号1〜13)。
【0086】
これに対して、被鍛造材である鋼の化学組成が本発明で規定する範囲内にあり、しかも、前記の(1)式及び(2)式で計算される温度Tが1000℃以下であっても、熱間プレスでの鍛造温度が本発明で規定する条件から外れる場合には、「機械的性質とコストとのバランス」を示す指標である「(TS×衝撃値)/変形荷重」の値は低く、更に、TSや靱性(衝撃値)が低いこともあることが明らかである(試験番号22〜29)。
【0087】
また、被鍛造材の化学組成が本発明で規定する範囲内にあっても、鋼19の場合は、前記の(1)式及び(2)式で計算される温度Tが1000℃を超える。このため、試験番号19、試験番号34及び試験番号35の場合の靱性(衝撃値)及び「(TS×衝撃値)/変形荷重」の値は低い。
【0088】
なお、被鍛造材である鋼の化学組成が本発明で規定する範囲から外れた場合には、熱間プレスでの鍛造温度に関係なく「機械的性質とコストとのバランス」を示す指標である「(TS×衝撃値)/変形荷重」の値は低く、しかも、TS、靱性(衝撃値)及びドリルのコーナー摩耗量の少なくとも1つの特性において劣っていることが明らかである(試験番号14〜18、試験番号20、試験番号21及び試験番号30〜33)。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、亜熱間鍛造よりは高温ながら熱間鍛造時の鍛造温度を通常より下げることにより、鋼組織の微細化及びV炭化物による靱性低下の低減が可能となるため、低い製造コストで、被削性に優れるとともに高強度及び高靱性を具備し、ハブやコンロッド等の自動車用非調質部品として好適な非調質部品を製造することができる。




 

 


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