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オーステナイト系ステンレス鋼 - 住友金属工業株式会社
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発明の名称 オーステナイト系ステンレス鋼
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−197821(P2007−197821A)
公開日 平成19年8月9日(2007.8.9)
出願番号 特願2006−342245(P2006−342245)
出願日 平成18年12月20日(2006.12.20)
代理人 【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
発明者 相良 雅之 / 廣畑 憲明 / 暮石 哲 / 穴田 博之 / 竹田 貴代子 / 五十嵐 正晃
要約 課題
原子力発電や火力発電のプラントの給水加熱器等の構造部材として適するオーステナイト系ステンレス鋼であって、耐応力腐食割れ性に著しく優れたステンレス鋼を提供する。

解決手段
質量%で、C:0.03%未満、Si:1.0%未満、Mn:1.2〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:15〜25%、Ni:6〜15%、Mo:0.2〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%およびN:0.03〜0.3%を含有し、残部が鉄および不純物からなることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。この鋼は上記の成分に加えてさらに、Ti:0.005〜0.1%およびV:0.01〜0.2%の一方または両方を含有してもよい。さらに、Mo含有量が下記の(1)式を満足することが望ましい。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.03%未満、Si:1.0%未満、Mn:1.2〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:15〜25%、Ni:6〜15%、Mo:0.2〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%およびN:0.03〜0.3%を含有し、残部が鉄および不純物からなることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項2】
請求項1に記載の成分に加えてさらに、Ti:0.005〜0.1質量%およびV:0.01〜0.2質量%の一方または両方を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
【請求項3】
質量%で、C:0.03%未満、Si:1.0%未満、Mn:1.2〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:15〜25%、Ni:6〜15%、Mo:0.2〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%およびN:0.03〜0.3%を含有し、残部が鉄および不純物からなり、かつMo含有量が下記の(1)式を満足することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
Mo≧(46/3)×C ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を意味する。
【請求項4】
請求項3に記載の成分に加えてさらに、Ti:0.005〜0.1質量%およびV:0.01〜0.2質量%の一方または両方を含有することを特徴とする請求項3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋭敏化による粒界への炭化物析出に起因する応力腐食割れに対して優れた耐性を有するオーステナイト系ステンレス鋼に関する。この鋼は、原子力発電プラントや火力発電プラントの給水加熱器等の構造部材、例えば板、管、継手等として用いるのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電プラントや火力発電プラントの給水加熱器等で用いられる構造部材としては、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304鋼が用いられている。しかし、その構造部材の経年劣化現象の一つとして、応力腐食割れがある。この現象は、溶接や熱処理で鋭敏化温度範囲に加熱される熱履歴を受けると、その粒界に炭化物(Cr23C6)が析出し、その粒界近傍にCr欠乏層が生じることで応力腐食割れ感受性が高くなるために発生する現象である。この炭化物析出を抑制するため、一般にC含有量を低減する方法がとられている。しかし、C含有量を低減すると材料の機械的性質、特に強度が低下するという問題がある。
【0003】
表面の機械的加工による耐応力腐食割れ性の改善方法として、特許文献1には、ショットピーニングにより金属材料表面に圧縮の残留応力を付与する方法が開示されている。また、特許文献2には、金属材料表面に複合酸化物層を形成することで、応力腐食割れの起点となる粒界からの亀裂表面をこの複合酸化物で覆うことによって亀裂進展を抑制した原子力発電プラントの発明が開示されている。
【0004】
一方、熱処理による耐応力腐食割れ性の改善として、特許文献3には、溶体化熱処理後に550〜800℃で特定時間以上加熱した後、さらに1000〜1100℃で特定時間加熱し、その後3℃/sec以上の冷却速度で冷却することで粒界および粒界近傍のCr濃度を平均値の1.3倍以上とし、それによってCr欠乏層の形成を抑制して、耐応力腐食割れ性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献4には、表層近傍の硬化層を予め引張強度の低い平均結晶粒度番号で2以下の粗粒とすることで、歪が加えられた場合の発生応力を低下させて耐応力腐食割れ性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
【0006】
材料面からの改良としては、特許文献5に、NbまたはTaの添加により炭化物の粒界析出を抑制し、耐粒界腐食性、耐粒界応力腐食割れ性や耐孔食性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−266230号公報
【特許文献2】特開2001−91688号公報
【特許文献3】特開平10−317104号公報
【特許文献4】特開2005−23343号公報
【特許文献5】特公昭59−40901号公報 上記のように応力腐食割れ防止の対策は種々提案されている。しかし、特許文献1に示されるような、機械的なショットピーニングや、特許文献2に開示される表面への複合酸化物被膜形成では、その処理作業の工数が多大になるという問題がある。また、熱処理条件を規定して粒界やその近傍のCr濃度を高めたり、表層部を粗粒化する方法では、熱処理工程が増え、生産性が低下するという問題がある。さらに、材料面の改善においても、原子力用の給水加熱器等で問題となる高温純水中での粒界応力腐食割れを考慮すると、より鋭敏化し難い材料の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、原子力発電プラントや火力発電プラントの給水加熱器等の構造部材として適するオーステナイト系ステンレス鋼であって、耐応力腐食割れ性に著しく優れたステンレス鋼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述のように、SUS304鋼のようなオーステナイト系ステンレス鋼では、熱履歴により鋭敏化された組織ができる。本発明者は、その発生機構を詳細に調査し検討した。その結果、熱履歴を受けることにより粒界にはCr23C6炭化物が選択的に析出し、それに伴い粒界近傍にCr欠乏層が生成することで、粒界が鋭敏化されることが明らかになった。そこで、粒界への選択的な炭化物析出を抑制し、粒界近傍のCr欠乏層の深さや幅を小さくすることができれば、粒界の鋭敏化が抑制され、耐粒界応力腐食割れ性も改善されると考え、さらに探求を進めたところ、下記の知見を得た。なお、以下において成分含有量についての%は「質量%」を意味する。
【0010】
(1) 粒界への炭化物の析出を少なくするには、従来以上にCの含有量を少なくする必要がある。具体的にはC含有量を0.03%未満に抑えることが必要である。
【0011】
(2) Mo含有量を0.2〜1.0%とすることで粒界近傍のCr欠乏層の形成を小さくできる。通常のSUS304鋼では、溶接や熱処理等で鋭敏化の熱履歴を受けると、粒界にCr23C6炭化物が析出し、その粒界近傍にはCr欠乏層が形成される。ところが、SUS304鋼にMoを含有させた鋼では、鋭敏化により粒界に析出する炭化物は(Cr,Mo)23C6となる。(Cr,Mo)23C6は、Cr23C6と比べて、炭化物中のCr量が少ないため、Cr欠乏層の幅を狭くすることができ、また、Cr欠乏層でのCr量の低下も小さくすることができる。さらに、Moは、粒界への拡散が遅いため、(Cr,Mo)23C6炭化物は微細に析出するので、粒界近傍のCr欠乏の程度も軽減される。
【0012】
(3) さらに、重要なことは、粒界にCr23C6よりも(Cr,Mo)23C6をできるだけ多く析出させて、粒界近傍のCr欠乏をできるだけ軽減する必要があることである。そのため、鋭敏化の過程でCrよりも炭化物として析出しやすいMoを、少なくとも鋼中のCの半分程度をMo23C6として固定できる量、すなわちCr含有量との関係で下記の(2)式で表される量のMoを含有させることで、鋭敏化による応力腐食割れを一層よく抑制することができる。なお(2)式中の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を意味する。
【0013】
{Mo/(96×23)}/{C/(12×6)}≧0.5 ・・・(2)
この(2)式を整理すると下記の(1)式になる。
【0014】
Mo≧(46/3)×C ・・・(1)
上記のように、Mo添加により、粒界近傍に形成されるCr欠乏層の幅の増大およびCr量の低下を抑制することができるため、Cr欠乏層の形成に起因する粒界応力腐食割れを防止することができる。そして、上記の(1)式を満たすようなMoを含有させることが、応力腐食割れを防止するのに一層望ましいのである。
【0015】
(4) さらに、Moとともに、0.05〜1.0%の微量のCuを含有させることによって高温純水中での耐応力腐食割れ性を改善する効果が得られる。これは、Cuには割れに伴う溶解速度を低下させ、Cr欠乏層の選択的腐食による粒界割れの進展を抑制する作用があるためと考えられる。
【0016】
(5) Ti:0.005〜0.1%およびV: 0.01〜0.2%の少なくとも一方を含有させることにより耐粒界応力腐食割れ性をさらに改善することができる。これは、TiやVには炭化物を形成し粒界への炭化物析出を抑制する作用があるからである。
【0017】
本発明は、上記の諸知見を基礎とするものであって、その要旨は、下記(1)から(4)までのオーステナイト系ステンレス鋼にある。
【0018】
(1)C:0.03%未満、Si:1.0%未満、Mn:1.2〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:15〜25%、Ni:6〜15%、Mo:0.2〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%およびN:0.03〜0.3%を含有し、残部が鉄および不純物からなることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
【0019】
(2)上記(1)に記載の成分に加えてさらに、Ti:0.005〜0.1%およびV:0.01〜0.2%の一方または両方を含有することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
【0020】
(3)質量%で、C:0.03%未満、Si:1.0%未満、Mn:1.2〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:15〜25%、Ni:6〜15%、Mo:0.2〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%およびN:0.03〜0.3%を含有し、残部が鉄および不純物からなり、かつMo含有量が下記の(1)式を満足することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
【0021】
Mo≧(46/3)×C ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、その元素の含有量(質量%)を意味する。
【0022】
(4)上記(3)に記載の成分に加えてさらに、Ti:0.005〜0.1%およびV:0.01〜0.2%の一方または両方を含有することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
【発明の効果】
【0023】
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼では、溶接や熱処理等の熱履歴を受けても鋭敏化が抑制され、粒界への選択的な炭化物析出が抑制される。したがって、粒界近傍のCr欠乏層の深さや幅を小さくすることができるため、耐粒界応力腐食割れ性も改善される。したがって、本発明鋼は鋭敏化による炭化物析出が問題となる原子力発電プラントや火力発電プラントの給水加熱器等の構造部材として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のステンレス鋼の各成分の作用効果と含有量の限定理由を説明する。
【0025】
C:0.03%未満
Cは、オーステナイト相を安定させる元素であるが、その含有量が多いと粒界に炭化物が析出する。本発明では、特に溶接や熱処理等の熱履歴による鋭敏化によって粒界に選択的にCr炭化物が析出して粒界近傍にCr欠乏層が形成され、耐応力腐食割れ性が低下するのを防止することを目的としている。したがって、C含有量は0.03%未満とする。C含有量は少ないほど好ましい。より望ましいのは0.020%以下、最も望ましいのは0.015%以下である。
【0026】
Si:1.0%未満
Siは、脱酸剤として必要により使用される。脱酸の効果を得る場合は、0.1%以上を含有させるのが望ましい。一方、Si含有量が1.0%以上になると靭性が劣化する。より好ましいのは0.8%以下である。なお、Siを脱酸剤として用いない場合は、Siの含有量の下限は不純物レベルとなる。
【0027】
Mn:1.2〜2.5%
Mnは、オーステナイト形成元素であり、かつ鋼中のSを固定して熱間加工性を向上させる。また、本発明においては鋭敏化による炭化物析出を抑制するためC含有量を極力低下させるが、それによる強度低下を補償するためには、1.2%以上の含有が必要である。一方、Mnの過剰な含有は延性や耐食性の劣化につながるため、上限は2.5%とする。より望ましい上限は2.0%である。
【0028】
P:0.04%以下
Pは、不可避的不純物として鋼中に含まれる元素であり、その含有量は0.04%以下で、少なければ少ないほどよい。Pの含有量が多いと結晶粒界に偏析して耐粒界応力腐食割れ性を劣化させる。
【0029】
S:0.02%以下
Sは、Pと同様に不可避的不純物として鋼中に含まれる元素であり、粒界に偏析して耐粒界応力腐食割れ性を損なうばかりでなく、熱間加工性を劣化させる。したがって、0.02%以下で、できるだけ少ない方がよい。より好ましいのは0.01%以下である。
【0030】
Cr:15〜25%
Crは、鋼の耐食性を向上させるのに不可欠な元素である。15%以上の含有量でその効果が得られる。一方、25%を超えるとフェライトが生成して熱間加工性が劣化する。Crのより好ましい含有量は17〜22%である。
【0031】
Ni:6〜15%
Niは、オーステナイト相を生成させる元素であり、耐食性をも向上させる。6%以上でその効果が得られる。一方、15%を超えるとその効果が飽和し、コスト上昇にもつながる。Niのより好ましい含有量は8〜12%である。
【0032】
Mo:0.2〜1.0%
Moは、本発明鋼では重要な元素の一つである。Moを含有する場合、鋭敏化により粒界に析出する炭化物は、(Cr,Mo)23C6となる。この(Cr,Mo)23C6はCr23C6と比べて、炭化物中のCr量が少ないため、Cr欠乏層の幅やCr量の低下も小さくすることができる。さらに、Moは粒界への拡散が遅いため、析出する(Cr,Mo)23C6炭化物は微細であり、そのため、粒界近傍のCrの欠乏の程度も軽減される。このように、Mo添加により、Cr欠乏層の幅の増大およびCr量の低下を抑制することができるため、Cr欠乏層の形成に起因する粒界応力腐食割れを防止する効果を得ることができる。このような効果が得られるMo含有量の下限は0.2%である。一方、Moを過度に含有させても効果が飽和し、コストアップになるだけでなく、熱間加工性の劣化も懸念されるため、上限は1.0%とする。より好ましいMo含有量は0.2〜0.8%、さらに好ましいのは0.3〜0.6%である。
【0033】
さらに、前述したように、粒界にCr23C6よりも(Cr,Mo)23C6をできるだけ多く析出させて、粒界近傍のCr欠乏をできるだけ軽減することが望ましい。そこで、鋭敏化の過程でCrよりも炭化物として析出しやすいMoを、少なくとも鋼中のCの半分程度をMo23C6として固定できる量含有させるのである。すなわち下記の(2)式で表される量のMoを含有させることによって、鋭敏化による応力腐食割れを抑制するのである。
【0034】
{Mo/(96×23)}/{C/(12×6)}≧0.5 ・・・(2)
但し、(2)式中の元素記号は、その元素の含有量(質量%)である。そして、前記のとおり、この(2)式を整理すると下記の(1)式になる。
【0035】
Mo≧(46/3)×C ・・・(1)
Cu:0.05〜1.0%
前述のように、MoとともにCuを0.05〜1.0%と微量含有させることで高温純水中での耐応力腐食割れ性を改善することができる。これは、Cuには割れに伴う溶解速度を低下させ、Cr欠乏層の選択的腐食による粒界割れの進展を抑制する作用があるためと考えられる。上記の効果を得るには0.05%以上の含有が必要である。一方、過剰に含有させるとCuが粒界に偏析し、熱間加工時の表面割れや溶接割れを助長するため、上限は1.0%とする。より好ましい上限は0.5%である。
【0036】
N:0.03〜0.3%
Nはオーステナイト形成元素であり、鋼の強度を確保するためにも必要な元素である。また、Nには鋼の耐食性を向上させる効果もある。これらの効果を得るには0.03%以上の含有が必要である。しかし、Nの過剰な含有は、溶接性の低下を招いたり、鋳造時に表面割れを誘発する懸念があるので、上限を0.3%とする。より望ましい上限は0.15%である。
【0037】
Ti:0.005〜0.1%およびV:0.01〜0.2%の少なくとも一方
TiおよびVは、炭化物を形成し粒界への炭化物析出を抑制する効果を有し、耐粒界応力腐食割れ性をより一層改善する作用を有するので、必要に応じて一方または両方を含有させる。効果を得る下限は、それぞれ0.005%および0.01%である。一方、これらを過剰に含有させると、効果が飽和するだけでなく、熱間加工性も劣化するため上限はそれぞれ0.1%および0.2%とする。より好ましい含有量は、Tiで0.02〜0.05%、Vで0.05〜0.15%である。
【実施例】
【0038】
表1に示す化学組成を有するステンレス鋼を溶製し、そのインゴットを1200℃に加熱した後、熱間鍛造および熱間圧延を施して厚さ5mmの板材とした。その板材を1020〜1060℃に加熱した後、水冷による焼入れ処理を施した。次いで、この板材に対してArガス雰囲気中において、650℃で10時間保持する鋭敏化熱処理を施した。
【0039】
上記の板材を試料として、次の手順で蓚酸エッチングによる粒界のCr欠乏層の確認を行った。
【0040】
まず、上記の板材の断面を観察面として樹脂に埋め込んで研磨して、JIS G0571の10%蓚酸エッチング試験方法によりエッチングした。その後、粒界のエッチング状況を顕微鏡にて観察した。Cr欠乏層の判定は、板厚中央部を200倍の顕微鏡で観察し、視野内の粒界総長さに対するエッチングされた長さが10%以上の場合を●、5%以上で10%未満の場合を▲、3%以上で5%未満の場合を△、1%以上で5%未満の場合を○、1%未満の場合を◎とした。結果を表1に併記する。
【0041】
【表1】


【0042】
表1から明らかなように、本発明鋼(No.1〜8)では鋭敏化熱処理後の粒界のエッチング長さが短くなっており、粒界近傍のCr欠乏層の生成が抑制されている。即ち、本発明鋼では耐粒界応力腐食割れ性が改善されている。一方、C、Cr、MoおよびCuのいずれかの含有量が本発明で定める範囲内にない鋼(No.9〜15)では、鋭敏化熱処理後の粒界が著しくエッチングされている。これは、粒界のCr欠乏層が大きいため、耐粒界応力腐食割れ性に劣ることを意味する。また、(1)式を満たさないNo.8は、No.1〜7よりも鋭敏化熱処理後の粒界がエッチングされている。しかし、そのエッチングの程度は、比較例のNo.9〜15よりも軽微である。
【0043】
図1は、表1のNo.5、6および15の鋼の蓚酸エッチング後の顕微鏡写真である。表1に示すように、No.5は評価◎、No.6は評価○、No.15は評価●である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上記のとおり、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、通常のオーステナイト系ステンレス鋼が鋭敏化されるような熱履歴を受けても、粒界への選択的な炭化物析出が抑制され、粒界近傍のCr欠乏層の深さや幅が小さい。したがって、耐粒界応力腐食割れ性が大きく改善されている。本発明の鋼は、鋭敏化による炭化物析出が問題となる原子力発電プラントや火力発電プラントの給水加熱器等の構造部材である板、管、継手等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】鋭敏化熱処理した試料の粒界エッチングの状態を示す顕微鏡写真の複写図である。




 

 


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