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発明の名称 耐メタルダスティング性に優れた金属材料
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−186727(P2007−186727A)
公開日 平成19年7月26日(2007.7.26)
出願番号 特願2006−3479(P2006−3479)
出願日 平成18年1月11日(2006.1.11)
代理人 【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
発明者 西山 佳孝 / 大塚 伸夫
要約 課題
石油精製や石油化学プラントなどにおける分解炉や改質炉などの素材として好適な耐メタルダスティング性に優れた材料を提供する。

解決手段
質量%で、C:0.01〜0.4%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.01〜2.5%、Cr:15〜35%、Ni:20〜65%、Cu:0.05〜20%、S:0.1%以下、N:0.25%以下及びO(酸素):0.02%以下並びにP:0.05%を超え0.3%以下、Sb:0.001〜1%及びBi:0.001〜0.5%のうちの1種又は2種以上を含有し、残部Feからなる。Co:10%以下、Mo:3%以下、W:6%以下、Ti::1%以下、Nb:2%以下、B:0.1%以下、Zr:1.2%以下、Hf:0.5%以下、Mg:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Al:0.8%以下、Y:0.15%以下、La:0.15%以下、Ce:0.15%以下のうちの1種以上を含有してもよい。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.01〜0.4%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.01〜2.5%、Cr:15〜35%、Ni:20〜65%、Cu:0.05〜20%、S:0.1%以下、N:0.25%以下及びO(酸素):0.02%以下並びにP:0.05%を超え0.3%以下、Sb:0.001〜1%及びBi:0.001〜0.5%のうちの1種又は2種以上を含有し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする耐メタルダスティング性に優れた金属材料。
【請求項2】
次に示す第1グループから第6グループまでのうちの少なくとも1つのグループの中から選択される成分のうちの少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐メタルダスティング性に優れた金属材料。
第1グループ:質量%で、Co:10%以下、
第2グループ:質量%で、Mo:3%以下及びW:6%以下、
第3グループ:質量%で、Ti:1%以下及びNb:2%以下、
第4グループ:質量%で、B:0.1%以下、Zr:1.2%以下及びHf:0.5%以下、
第5グループ:質量%で、Mg:0.1%以下、Ca:0.1%以下及びAl:0.8%以下、
第6グループ:質量%で、Y:0.15%以下、La:0.15%以下及びCe:0.15%以下。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温強度が高く、耐食性に優れ、特に炭化水素ガスやCOガスなどを含有する浸炭性ガス雰囲気で使用される金属材料、特に、石油精製や石油化学プラントなどにおける分解炉や改質炉、加熱炉もしくは熱交換器などの素材として好適な耐メタルダスティング性に優れた金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
水素、メタノール、GTL(Gas to Liquids)やDME(ジメチルエーテル)といったクリーンエネルギーの燃料は、今後の大幅な需要増が予想される。したがって、このような合成ガスを製造するための改質装置は大型化し、より一層熱効率が高く量産に適した装置が要求される。また、従来の石油精製や石油化学プラントなどにおける改質装置、あるいは石油などを原料とするアンモニア製造装置、水素製造装置などにおいても、よりエネルギー効率を高めるために、排熱回収のための熱交換が多用されるようになってきている。
【0003】
このような高温ガスの熱を有効活用するためには、従来対象とされてきたよりも低い、400〜700℃の温度域における熱交換が重要となってきており、この温度域において反応管や熱交換器等に使用する高Cr−高Ni−Fe合金系金属材料の浸炭現象に伴う腐食が問題となっている。
【0004】
通常、上述のような反応装置にて製造される合成ガス、すなわちH2、CO、CO2、H2Oおよびメタンなどの炭化水素を含むガスは、反応管などの金属材料と1000℃前後ないしはそれ以上の温度で接している。この温度域において金属材料の表面では、FeやNiなどよりも酸化傾向の大きいCrやSiなどの元素が選択的に酸化され、酸化Crや酸化Siなどの緻密な皮膜が形成されることによって、腐食が抑止される。ところが、熱交換部分など相対的に温度の低い部分においては、金属材料の内部から表面への元素の拡散が不十分となるために腐食抑止効果のある酸化皮膜の形成が遅れることに加え、このような炭化水素を含む組成のガスは浸炭性へと変化するために金属材料表面からCが浸入して浸炭が生じてくる。
【0005】
エチレン分解炉管等においては、浸炭が進みCrやFeなどの炭化物からなる浸炭層が形成されるとその部分の体積が膨張する。その結果、微細な割れが生じやすくなり、最悪の場合には使用中の鋼管が破断する。また、金属表面が露出すると、表面で金属を触媒とした炭素析出(コーキング)が発生し、管内流路面積の減少や伝熱特性の低下を伴う。
【0006】
一方、改質炉管や熱交換器等におけるガスの浸炭性がより厳しい環境下では、炭化物が過飽和となり、その後グラファイトが直接析出するために、母材金属が剥離脱落し、母材が減肉する、すなわちメタルダスティングといわれる腐食消耗が進行する。さらに、剥離した金属粉末が触媒となり、コーキングを発生させる。
【0007】
このような亀裂、損耗や管内閉塞が拡大すると、装置故障等が発生して、その結果、操業中断に至る恐れがあり、装置部材としての材料選定に十分な配慮が必要である。
【0008】
このような浸炭やメタルダスティングによる腐食を防止するために、従来から、種々の対策が検討されてきた。
【0009】
たとえば、特許文献1には、H2、CO、CO2、H2Oを含む400〜700℃の雰囲気ガス中での耐メタルダスティング性に関して、Crを11〜60%(質量%、以下同じ。)含むFe基合金またはNi基合金が提案されている。具体的には、Crを24%以上かつNiを35%以上含むFe基合金、Crを20%以上かつNiを60%以上含むNi基合金、及びこれらの合金にさらにNbを添加した合金材料の発明が優れていることが示されている。しかし、Fe基合金又はNi基合金のCrやNiの含有量を増しただけでは、十分な浸炭抑制効果が得られず、より一層の耐メタルダスティング性を有する金属材料が求められている。
【0010】
また、特許文献2に開示されている方法は、鉄、ニッケルおよびクロムを含む高温合金のメタルダスティングによる腐食に対し、元素周期表の第VIII族、第IB族、第IV族及び第V族のうちの一種以上の金属およびそれらの混合物を、通常の物理的あるいは化学的手段で表面に付着させ、不活性雰囲気中でアニーリングして、0.01〜10μmの厚さの薄層を形成させることで合金表面を保護しようとするものである。この場合、Sn、Pb、Bi等がとくに有効であるとしている。しかしこの方法は、初期には効果があっても長期にわたる使用により薄層が剥離して効果がなくなるおそれがある。
【0011】
特許文献3には、H2、CO、CO2、H2Oを含む400〜700℃の雰囲気ガス中での金属材料の耐メタルダスティング性に関して、鉄中の溶質元素の観点からCとの相互作用について調査がされた結果、酸化皮膜の保護性を高めることに加えて、Ti、Nb、V、Moなど金属材料中で安定な炭化物を作る元素の添加又はSi、Al、Ni、Cu、Coなどの相互作用助係数Ωが正の値を示す合金元素がメタルダスティング抑制に有効であることが開示されている。ただし、Si、Al等を高めることは熱間加工性や溶接性の低下につながる場合があり、製造安定性やプラント施工面を考えると改善の余地がある。
【0012】
次に、金属表面への浸炭性ガスの接触を遮断するために、金属材料に予め酸化処理を施す方法や表面処理を行う方法が開示されている。
【0013】
例えば、特許文献4及び特許文献5には、低Si系25Cr−20Ni(HK40)耐熱鋼や低Si系25Cr−35Ni耐熱鋼を1000℃の近傍の温度で100時間以上の条件で大気中予酸化を行う方法が開示されており、そして、特許文献6には20〜35%Crを含有するオーステナイト系耐熱鋼に大気中予備酸化を行う方法が開示されている。さらに、特許文献7には高Ni−Cr合金を真空中で加熱しスケールの皮膜を生成させて耐浸炭性を向上させる方法が提案されている。さらに、特許文献8には、表面処理によリSiやCrの濃化層を形成させることによって耐浸炭性を向上させる方法が提案されている。
【0014】
その他、金属材料自体の改善ではなく、合成ガスの改質装置や製造装置の管内の雰囲気ガス中にH2Sを添加して、メタルダスティングを抑制する方法も考えられている。
【0015】
【特許文献1】特開平9―78204号公報
【特許文献2】特開平11−172473号公報
【特許文献3】特開2003−73763号公報
【特許文献4】特開昭53−66832号公報
【特許文献5】特開昭53−66835号公報
【特許文献6】特開昭57−43989号公報
【特許文献7】特開平11−29776号公報
【特許文献8】特表2000−509105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、金属材料の耐メタルダスティング性を高める技術が、従来から種々提案されているが、いずれも特殊な熱処理や表面処理を必要とするものであって、コストと手間を必要とする。また、予酸化スケールや表面処理層が剥離した後のスケールの修復(スケール再生)機能がないため、一度損傷が発生するとその後のメタルダスティングを抑制することはできない。
【0017】
また、金属材料自体の改善ではなく、前述のように、合成ガスの改質装置や製造装置の管内の雰囲気ガス中にH2Sを添加してメタルダスティングを抑制する方法もあるが、H2Sは炭化水素の改質に用いられる触媒の活性を著しく低下させる恐れがあるので、雰囲気ガスの成分調整によるメタルダスティング抑制技術は、限定的に適用されているだけである。
【0018】
このように、種々の検討はなされてはいるが、メタルダスティングを十分に抑制できる技術は、現状では得られていない。
【0019】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、エチレンプラント用分解炉管や改質炉管等において、浸炭性ガスと金属の表面反応を抑制することで、優れた耐メタルダスティング性を有する金属材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、メタルダスティングの発生を抑制するための方法を種々検討した結果、次の(a)〜(f)に示す知見を得た。
【0021】
(a) メタルダスティングの発生には、表面に形成される酸化皮膜の保護性とその内部に形成される浸炭層の発達が影響する。すなわち、酸化皮膜に割れが生じたり、酸化皮膜が剥離したりすると、その表面から金属材料中にCが浸入して浸炭層が形成され、そのときの体積変化や炭化物の形成分解などによってメタルダスティングが生じる。
【0022】
(b) 酸化皮膜の保護性を高めるには、耐酸化性を高めるための一般的手法と同様に、Crの含有量を高めるとともに、SiやAlといった酸素との親和力の強い元素を含有させる方法があるが、金属材料中へのCの浸入を一定期間抑制するだけである。そして、長時間にわたって酸化皮膜が全く割れず、剥離もしないことを実現するのは不可能であるから、酸化皮膜の保護性を高めるだけでは、Cの金属材料中への浸入を完全に遮断することはできない。そのため、酸化皮膜の保護性を高めることに加えて、Ti、Nb、V、Moなど金属材料中で安定な炭化物を作る元素を添加することによって、Cの金属材料中への浸入を抑制して、Cの侵入速度を低減し、もって、酸化皮膜の内部に形成される浸炭層の成長を抑制することができる。
【0023】
(c) あるいは、酸化皮膜の保護性を高めることに加えて、Si、Al、Niなど炭素との親和力がほとんどないと思われる元素を添加することによって、酸化皮膜の内部に形成される浸炭層の成長を抑制することができる。炭素との親和力がほとんどないと思われる元素としては、Fe中の溶質元素であるCの活量を高める効果がある元素、換言すれば、相互作用助係数Ωが正の値を示す合金元素が考えられる。たとえば、Co、Cu、Ag、As、P、S及びNを挙げることができる。このうち、Co及びCuは金属材料の熱間加工性や靱性などの性質を劣化させることもなく、コスト面でも可能な含有量の範囲であることから、合金成分として金属材料中に含有させて耐メタルダスティング性を改善させるのに有効である。ただし、Agはコストの点から、そして、Asは毒性の点から使用することが困難であり、そして、P、S及びNは金属材料の熱間加工性や靱性などの性質を劣化させるので合金成分として含有させることは困難である。
【0024】
なお、上記の(a)〜(c)の知見については、既に特許文献3において開示したところである。
【0025】
(d) 本発明者らは、この度、この酸化皮膜の内部に形成される浸炭層の成長現象についてさらに詳細に検討した結果、炭素との親和力がほとんどないと思われる元素、換言すれば、相互作用助係数Ωが正の値を示す合金元素を添加することによって、酸化皮膜の内部に形成される浸炭層の成長を抑制することができるのは、金属表面での浸炭性ガスの吸着/解離反応を抑制することができるので、Cが鋼中に浸入することを著しく低減させ得ることができるためであることを見出した。そして、金属表面での浸炭性ガスの吸着/解離反応を抑制することができる合金元素としては、Cu、AgおよびPt等の貴金属元素のほかに、周期律表の第VA族又はVIA族の元素が優れていることを新たに見出し、そして、そのうち、特に、P、S、Sb又はBiを合金成分として含有させると、耐メタルダスティング性に優れた金属材料となりうることが実験により明らかになった。なお、P、S、Sb及びBiは、それぞれ、単独で含有させてもよいし、複合して含有させてもよい。
【0026】
ここで、P、S、Sb及びBiは金属組織の粒界に偏析する元素であることから、金属表面での偏析もあると予想されるので、浸炭性ガスと金属の表面反応を効率的に抑制することが予測される。したがって、P、S、Sb、Biを殊更、過剰に添加する必要性はないと考えられる。
【0027】
(e) なお、P及びSに関しては、既に特許文献3において、炭素との親和力がほとんどなく、添加することによって酸化皮膜の内部に形成される浸炭層の成長を抑制することができる元素として挙げたが、S及びPは粒界偏析元素であるために、金属材料の熱間加工性などの性質を劣化させるので、合金成分として含有させることは困難であるとしたものである。P及びSは、従来から、鋼の熱間加工性を劣化させ、酸化スケールの剥離を助長し、そして、溶接へ悪影響を及ぼすなどの有害元素として位置づけられてきたために、精錬工程においてこれら不純物をできるだけ低減させたり、さらに、PやSを固定することができる元素を添加してPやSの微量含有分を金属材料の粒内で固定したりすることがなされてきたからである。しかしながら、その後の検討と実験の結果、Pは0.05%を超えて含有させれば耐メタルダスティング性に優れた金属材料が得られ、また、熱間加工性や溶接性の点からはPを0.3%まで含有させても許容できることが判った。また、Sに関しては、熱間加工性や溶接性の点から含有量の上限を0.1%とする必要があるので、Sの含有だけで耐メタルダスティング性を付与することは不充分となる場合が生じるおそれがあるため、P、Sb又はBiを含有させるのが好ましいと思われる。
【0028】
(f) 以上のとおり、金属材料の耐メタルダスティング性を高めるためには、金属表面での浸炭性ガスの吸着/解離反応を抑制することが効果的であり、そのためには、特に、P、Sb及びBiの1種又は2種以上を合金成分として含有させてなる金属材料が好適である。
【0029】
また、P、Sb及びBiの1種又は2種以上を合金成分として含有させて金属材料の耐メタルダスティング性を高める方法に加えて、金属表面に保護性の酸化スケールや表面処理による薄層を形成して酸化皮膜の保護性を高めたり、あるいは、SiやAlといった酸素との親和力の強い元素を含有させる方法など、従来手法を併用することによって、さらに耐メタルダスティング性を高めるとともに耐浸炭性および耐コーキング性を高めることも可能である。
【0030】
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、その要旨とするところは、次の(1)及び(2)に示す通りである。以下、それぞれ、本発明(1)及び本発明(2)という。総称して、本発明ということがある。
【0031】
(1) 質量%で、C:0.01〜0.4%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.01〜2.5%、Cr:15〜35%、Ni:20〜65%、Cu:0.05〜20%、S:0.1%以下、N:0.25%以下及びO(酸素):0.02%以下並びにP:0.05%を超え0.3%以下、Sb:0.001〜1%及びBi:0.001〜0.5%のうちの1種又は2種以上を含有し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする耐メタルダスティング性に優れた金属材料。
【0032】
(2) 次に示す第1グループから第6グループまでのうちの少なくとも1つのグループの中から選択される成分のうちの少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、上記(1)の耐メタルダスティング性に優れた金属材料。
第1グループ:質量%で、Co:10%以下、
第2グループ:質量%で、Mo:3%以下及びW:6%以下、
第3グループ:質量%で、Ti:1%以下及びNb:2%以下、
第4グループ:質量%で、B:0.1%以下、Zr:1.2%以下及びHf:0.5%以下、
第5グループ:質量%で、Mg:0.1%以下、Ca:0.1%以下及びAl:0.8%以下、
第6グループ:質量%で、Y:0.15%以下、La:0.15%以下及びCe:0.15%以下。
【発明の効果】
【0033】
本発明の金属材料は浸炭性ガスと金属の表面反応を抑制する効果を有しており、耐メタルダスティング性に優れているので、石油精製や石油化学プラントなどにおける分解炉、改質炉、加熱炉、熱交換器などの素材に利用することができ、装置の耐久性や操業効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明において、金属材料の組成範囲を限定する理由は次のとおりである。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
【0035】
C:0.01〜0.4%
Cは、高温強度を確保するために、0.01%の含有が必要である。ただし、0.4%を超えると合金の靱性が極端に悪くなるため、上限を0.4%とする。好ましくは、0.03〜0.35%であり、さらに好ましい範囲は0.03〜0.3%である。
【0036】
Si:0.01〜2.5%
Siは、酸素との親和力が強いため、Cr23等の保護性酸化スケ−ル層を均一に形成することを促進する。また、Cr23の下層にSi系酸化スケールを形成し、浸炭性ガスを遮断する。この作用は、0.01%以上含有することで発揮される。ただし、2.5%を超えると靭性が低下するので、上限を2.5%とする。好ましい範囲は、0.1〜2.5%であり、さらに好ましい範囲は0.3〜2%である。
【0037】
Mn:0.01〜2.5%
Mnは脱酸および加工性改善のために必要であり、このような効果を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。また、Mnはオーステナイト生成元素であることからNiの一部をMnで置換することも可能である。しかしながら、Mnの過剰の含有は保護性酸化スケール層の浸炭性ガス遮断性能を阻害することから、上限を2.5%とする。なお、Mnの含有量の好ましい範囲は、0.1〜2%である。
【0038】
Cr:15〜35%
CrはCr23等の酸化スケ−ルを安定に形成し、浸炭性ガスを遮断する効果がある。このような効果を得るためには、15%以上の含有が必要である。しかしながら、過剰な含有は加工性を劣化させるとともに組織安定性を劣化させるので、含有量の上限を35%とする。好ましい範囲は18〜33%である。さらに好ましい範囲は23〜33%である。
【0039】
Ni:20〜65%
Niは、Cr含有量に応じて安定したオーステナイト組織を得るために必要な元素である。また、Cが鋼中に浸入した場合、浸入速度を低減する機能を有する。さらに、金属組織の高温強度を確保する働きがある。しかしながら、必要以上の含有は、コスト高と製造難を招くため、20〜65%の含有量を適正とする。好ましくは25〜65%であり、さらに好ましくは28〜50%である。
【0040】
Cu:0.05〜20%
Cuは本発明において重要な元素のひとつである。Cuは浸炭性ガスと金属の表面反応を抑制し、耐メタルダスティング性等を大きく向上させる。また、オーステナイト生成元素であるためNiの一部をCuで置換することも可能である。耐メタルダスティング性の向上効果を発揮するためには、0.05%以上含有させる必要がある。ただし、20%を超えて含有させると著しく溶接性を低下させるので、含有量の上限を20%とする。好ましい含有量は0.2〜15%である。さらに好ましい含有量は0.5〜10%である。
【0041】
S:0.1%以下
Sは、浸炭性ガスと金属の反応を抑制する効果がある。しかしながら、過剰に含有させると、熱間加工性や溶接性を著しく阻害するため、その含有量の上限を0.1%とする必要がある。また、Sは触媒被毒作用を有するため、プラントで触媒を使用する場合には極力少ない方が望ましく、その場合にはSの含有量の上限を0.015%とするのが好ましい。
【0042】
このように、Sの含有量の上限は0.1%とする必要があり、また、プラントで触媒を使用する場合にはSの含有量の上限を0.015%とするのが好ましいため、Sだけでは浸炭性ガスと金属の反応を抑制する効果が不十分となる場合がある。したがって、浸炭性ガスと金属の反応を抑制する効果を確実に得るためには、後述するように、P、Sb及びBiのうちの1種又は2種以上を含有させる必要がある。
【0043】
なお、P、Sb及びBiのうちの1種又は2種以上を含有させる場合には、Sを含有させる必要はないので、プラントで触媒を使用する場合など、Sによる悪影響を許容することができない場合には、Sの含有量を可能な限り低減することが望ましい。もちろん、Sによる悪影響を許容することができる場合には、0.1%以下であればSを含有させることは可能であり、この場合、Sを0.005%以上含有させれば、P、Sb及びBiのうちの1種又は2種以上の含有によって浸炭性ガスと金属の反応を抑制する効果に、Sによる抑制効果が上乗せされることになる。
【0044】
N:0.25%以下
Nは含有させなくてもよい。含有させれば、金属材料の高温強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.25%を超えると加工性を大きく阻害する。したがって、Nの含有量は0.25%を上限とする。好ましい上限は、0.2%である。なお、金属材料の高温強度を高める効果を得るためには、0.001%以上含有させることが好ましい。
【0045】
O(酸素):0.02%以下
O(酸素)は、金属材料を溶製する際に原料などから混入してくる不純物元素であり、鋼中に酸化物系介在物が多量に存在すると、加工性を低下させるだけでなく、金属材料表面の疵の原因になるので、可能な限り低減することが望ましい。本発明において許容できる含有量は0.02%までである。
【0046】
P:0.05%を超え0.3%以下
Pは、Sb及びBiと並んで、本発明においてもっとも重要な元素である。これらの元素は、いずれも浸炭性ガスと金属の反応を抑制する働きを有する。これら元素は、1種のみの含有でも効果を発揮するし、2種以上の含有でも効果を発揮する。
【0047】
この効果を発揮するためには、Pの含有量は0.05%を超えることを必要とする。ただし、過剰に含有させると、熱間加工性や溶接性を著しく阻害するため、Pの含有量の上限は0.3%とする必要がある。好ましいPの含有量は0.06〜0.25%、さらに好ましいPの含有量は0.085〜0.2%である。
【0048】
Sb:0.001〜1%
Sbは、P及びBiと並んで、本発明においてもっとも重要な元素である。これらの元素は、いずれも浸炭性ガスと金属の反応を抑制する働きを有する。これら元素は、1種のみの含有でも効果を発揮するし、2種以上の含有でも効果を発揮する。
【0049】
この効果を発揮するためには、Sbの含有量は0.001%以上であることを必要とする。ただし、過剰に含有させると、熱間加工性や溶接性を著しく阻害するため、Sbの含有量の上限は1%とする必要がある。好ましいSbの含有量は0.005〜0.8%、さらに好ましいSbの含有量は0.01〜0.7%である。
【0050】
Bi:0.001〜0.5%
Biは、P及びSbと並んで、本発明においてもっとも重要な元素である。これらの元素は、いずれも浸炭性ガスと金属の反応を抑制する働きを有する。これら元素は、1種のみの含有でも効果を発揮するし、2種以上の含有でも効果を発揮する。
【0051】
この効果を発揮するためには、Biの含有量は0.001%以上であることを必要とする。ただし、過剰に含有させると、熱間加工性や溶接性を著しく阻害するため、Biの含有量の上限は0.5%とする必要がある。好ましいBiの含有量は0.005〜0.3%、さらに好ましいSbの含有量は0.01〜0.2%である。
【0052】
以上は、P、Sb及びBiの1種又は2種以上を合金成分として含有させることによって耐メタルダスティング性を高めた金属材料に係る本発明(1)に関して説明してきた。
【0053】
次に、この本発明(1)の手法に加えて、強度や延性、靱性を改善してなる金属材料に係る本発明(2)を説明する。
【0054】
本発明(2)は、本発明(1)で規定される金属材料に、次に示す第1グループから第6グループまでのうちの少なくとも1つのグレープの中から選択される成分のうちの少なくとも1種をさらに含有させることを特徴とする、耐メタルダスティング性に優れた金属材料である。
第1グループ:質量%で、Co:10%以下、
第2グループ:質量%で、Mo:3%以下及びW:6%以下、
第3グループ:質量%で、Ti:1%以下及びNb:2%以下、
第4グループ:質量%で、B:0.1%以下、Zr:1.2%以下及びHf:0.5%以下、
第5グループ:質量%で、Mg:0.1%以下、Ca:0.1%以下及びAl:0.8%以下、
第6グループ:質量%で、Y:0.15%以下、La:0.15%以下及びCe:0.15%以下。
【0055】
以下、これらの任意添加元素に関して、順に説明する。
【0056】
第1グループ(質量%で、Co:10%以下)
Coは、オーステナイト相を安定にする作用を有するため、Ni成分の一部を置換することができるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、含有量が10%を超えると熱間加工性を低下させるので、Coを含有させる場合は、その含有量は10%以下とする。熱間加工性の観点から、好ましい範囲は0.01〜5%であり、より好ましい範囲は0.01〜3%である。
【0057】
第2グループ(質量%で、Mo:3%以下、W:6%以下)
Mo及びWは、いずれも固溶強化元素であるため、いずれか一方又は両方を必要に応じて含有させてもよい。ただし、Moを含有させる場合には、その含有量が3%を超えると加工性を低下させるとともに組織安定性を阻害するので、Moを含有させる場合は、その含有量は3%以下とする。Mo含有量は、好ましくは0.01〜2.5%である。また、Wを含有させる場合には、その含有量が6%を超えると加工性を低下させるとともに組織安定性を阻害するので、Wを含有させる場合は、その含有量は6%以下とする。W含有量は、好ましくは0.01〜2.5%である。
【0058】
第3グループ(質量%で、Ti:1%以下、Nb:2%以下)
Ti及びNbは、いずれも極微量の含有で高温強度及び延性と靱性を向上させる作用を有するとともに、P、S又はBiが共存する場合にはクリープ強度を向上させる作用を有するため、いずれか一方又は両方を必要に応じて含有させてもよい。ただし、Tiを含有させる場合には、その含有量が1%を超えると加工性と溶接性を低下させるので、Tiを含有させる場合は、その含有量は1%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.01〜1%である。また、Nbを含有させる場合には、その含有量が2%を超えると加工性と溶接性を低下させるので、Nbを含有させる場合は、その含有量は2%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.01〜2%である。
【0059】
第4グループ(質量%で、B:0.1%以下、Zr:1.2%以下、Hf:0.5以下%)
B、Zr及びHfは、いずれも粒界を強化し、熱間加工性および高温強度特性を向上させる作用を有するため、これらのうちの1種又は2種以上を必要に応じて含有させてもよい。ただし、Bを含有させる場合には、その含有量が0.1%を超えると溶接性を低下させるので、Bを含有させる場合は、その含有量は0.1%以下とする。Zr含有量は、好ましくは0.001〜1.0%である。また、Zrを含有させる場合には、その含有量が1.2%を超えると溶接性を低下させるので、Zrを含有させる場合は、その含有量は1.2%以下とする。B含有量は、好ましくは0.001〜0.1%である。また、Hfを含有させる場合には、その含有量が0.5%を超えると溶接性を低下させるので、Hfを含有させる場合は、その含有量は0.5%以下とする。Hf含有量は、好ましくは0.001〜0.5%である。
【0060】
第5グループ(質量%で、Mg:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Al:0.8%以下)
Mg、Ca及びAlは、いずれも熱間加工性を向上させる作用を有するため、これらのうちの1種又は2種以上を必要に応じて含有させてもよい。ただし、Mgを含有させる場合には、その含有量が0.1%を超えると溶接性を低下させるので、Mgを含有させる場合は、その含有量は0.1%以下とする。Mg含有量は、好ましくは0.0005〜0.1%である。また、Caを含有させる場合には、その含有量が0.1%を超えると溶接性を低下させるので、Caを含有させる場合は、その含有量は0.1%以下とする。Ca含有量は、好ましくは0.0005〜0.1%である。また、Alを含有させる場合には、その含有量が0.8%を超えると溶接性を低下させるので、Alを含有させる場合は、その含有量は0.8%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.001〜0.8%である。
【0061】
第6グループ(質量%で、Y:0.15%以下、La:0.15%以下、Ce:0.15%以下)
Y、La及びCeは、いずれも耐酸化性を向上させる作用を有するため、これらのうちの1種又は2種以上を必要に応じて含有させてもよい。ただし、これらの元素を含有させる場合には、それぞれ、その含有量が0.15%を超えると加工性を低下させるので、含有させる場合は、その含有量は0.15%以下とする。好ましくは0.0005〜0.15%である。
【0062】
本発明に係る金属材料は、特に、炭化水素および一酸化炭素を単体または合計で1vol%以上、炭化水素、一酸化炭素および水素を単体または合計で25vol%以上含み、かつ1000℃以下の雰囲気中における耐メタルダスティング性に優れている。このため、この溶接継手を石油精製の熱交換型炭化水素改質装置や廃熱回収装置等における反応管や周辺機器等の部材に適用すれば、装置の溶接施工性、耐久性および安全性を大幅に向上させることができる。
【0063】
この発明に係る金属材料は、溶解、鋳造、熱間加工、冷間加工、溶接等の手段によって、厚板、薄板、継目無管、溶接管、鍛工品、線材等の所要の形状に成形することができる。また、粉末冶金や遠心鋳造等の手法によって所要の形状に成形してもできる。最終熱処理を施した後の金属材料表面に対しては、酸洗、ショットブラスト、ショットピーニング、機械切削、グラインダ研磨および電解研磨等の表面加工処理を施すこともできる。また、本発明に係る金属材料は、表面に1つ又は2つ以上の突起形状等を有する不規則形状に成形することもできる。さらに、本発明に係る金属材料は、各種炭素鋼、ステンレス鋼、Ni基合金、Co基合金、Cu合金等と組み合わせて、複層又は複合材料とすることができ、その成形後の形状も格別制約されることもない。この場合、本発明に係る金属材料と各種鋼もしくは合金との接合法に制約はなく、たとえば圧接や“かしめ”などの機械的接合や、溶接、拡散処理などの熱的接合等を施した形状とすることも可能である。
【0064】
次に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
表1及び表2に示す化学組成の金属材料を高周波加熱真空炉を用いて溶製し、ビレットを形成し、そのビレットの熱間鍛造および冷間圧延を行って、外径56mm、肉厚6mmの鋼管を作製した。鋼管は下記に示す条件で固溶化熱処理を行い、鋼管の一部を切断して試験片を製作した。固溶化熱処理は、1160〜1230℃/10minの条件で行った。また、一部の発明鋼については、alloy800H合金と圧接してクラッド鋼とし、同様に試験片を製作した。
【0066】
【表1】


【0067】
【表2】


【0068】
表1および表2に記載の金属材料から、幅15mm×長さ20mmの試験片を切り出した。この試験片を、体積%で、60%CO−26%H2−11.5%CO2−2.5%H2Oのガス雰囲気中で、620℃の等温で最大1000時間保持し、所定時間経過毎に試験片を取り出して試験片表面を観察し、孔食(pit)の発生が確認された時を、その試験片のPit発生時間とした。この結果を、表3及び表4にまとめて示す。
【0069】
【表3】


【0070】
【表4】


【0071】
化学組成が本発明で規定する条件から外れる試験番号21〜24の金属材料は、表3にみるとおり、孔食(pit)発生時間が500時間以下と短く、耐メタルダスティング性に劣っている。これに対して、本発明にかかる試験番号1〜20及び25〜44の金属材料は、表3及び表4にみるとおり、いずれも孔食(pit)発生時間が1000時間以上であり、耐メタルダスティング性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の金属材料は、浸炭性ガスと金属の表面反応を抑制する効果を有しており、耐メタルダスティング性に優れているので、石油精製や石油化学プラントなどにおける分解炉、改質炉、加熱炉、熱交換器などの素材に利用することができ、装置の耐久性や操業効率を大幅に向上させることができる。




 

 


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