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発明の名称 回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−162062(P2007−162062A)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
出願番号 特願2005−359080(P2005−359080)
出願日 平成17年12月13日(2005.12.13)
代理人 【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
発明者 高丸 広毅 / 田中 一郎 / 中山 大成 / 藤村 浩志
要約 課題
本発明は、占積率が高く、優れた機械特性および磁気特性を兼備する無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを主目的とする。

解決手段
無方向性電磁鋼板の製造方法において、C:0.06%以下、Si:3.5%以下、Mn:0.05%以上3.0%以下、Al:2.5%以下、P:0.30%以下、S:0.04%以下、N:0.02%以下、Nb:0%以上0.02%以下、Ti:0.01%超0.55%以下を含有し、Nb、Ti、ZrおよびVを0<Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)<5×10-3の範囲で含有する鋼を、1100℃以上1300℃以下としたのちに累積圧下率が78%以上の粗熱間圧延を施して粗バーとなし、粗熱間圧延後、仕上熱間圧延前の粗バーの温度を920℃以上とする熱間圧延を施し、冷間圧延を施し、500℃以上780℃以下で均熱する。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.06%以下、Si:3.5%以下、Mn:0.05%以上3.0%以下、Al:2.5%以下、P:0.30%以下、S:0.04%以下、N:0.02%以下、Nb:0%以上0.02%以下、Ti:0.01%超0.55%以下を含有し、Nb、Ti、ZrおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなる鋼塊または鋼片を、1100℃以上1300℃以下としたのちに、累積圧下率が78%以上の粗熱間圧延を施して粗バーを得る粗熱間圧延工程、ならびに、前記粗バーに仕上熱間圧延を施す仕上熱間圧延工程を有し、前記仕上熱間圧延工程前の粗バーの温度を920℃以上とする熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程により得られた熱間圧延鋼板に一回または中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程により得られた冷間圧延鋼板を500℃以上780℃以下で均熱する均熱処理工程と
を有することを特徴とする回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法。
0<Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)<5×10-3 (1)
(ここで、式(1)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
【請求項2】
前記鋼塊または鋼片が、前記Feの一部に代えて、Cu、Ni、Cr、Mo、CoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記の質量%で含有することを特徴とする請求項1に記載の回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法。
Cu:0.005%以上8.0%以下 Ni:0.005%以上2.0%以下
Cr:0.005%以上15.0%以下 Mo:0.005%以上4.0%以下
Co:0.005%以上4.0%以下 W:0.008%以上4.0%以下
【請求項3】
前記鋼塊または鋼片が、前記Feの一部に代えて、Sn、Sb、Se、Bi、Ge、TeおよびBからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記の質量%で含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法。
Sn:0.5%以下 Sb:0.5%以下 Se:0.3%以下 Bi:0.2%以下
Ge:0.5%以下 Te:0.3%以下 B:0.01%以下
【請求項4】
前記鋼塊または鋼片が、前記Feの一部に代えて、Ca、MgおよびREMからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記の質量%で含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法。
Ca:0.03%以下 Mg:0.02%以下 REM:0.1%以下
【請求項5】
前記鋼塊または鋼片の断面組織における平均等軸晶率が25%以上であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車の駆動モータ、ロボット、工作機械などのサーボモータといった高効率モータの回転子に用いられる無方向性電磁鋼板の製造方法に関する。特に、高速回転する永久磁石埋め込み式モータの回転子として好適な優れた機械特性および磁気特性を備え、かつ、占積率に優れる無方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境問題の高まりから、多くの分野において省エネルギー、環境対策技術が進展している。自動車分野も例外ではなく、排ガス低減、燃費向上技術が急速に進歩している。電気自動車およびハイブリッド自動車はこれらの技術の集大成といっても過言ではなく、自動車駆動モータ(以下、単に「駆動モータ」ともいう。)の性能が自動車性能を大きく左右する。
【0003】
駆動モータの多くは永久磁石を用いており、巻き線を施した固定子(ステータ)部分と永久磁石を配置した回転子(ロータ)部分とから構成される。最近では永久磁石を回転子内部に埋め込んだ形状(永久磁石埋め込み型モータ;IPMモータ)が主流となっている。また、パワーエレクトロニクス技術の進展により回転数は任意に制御可能であり、高速化傾向にある。したがって、鉄心素材は商用周波数(50〜60Hz)以上の高周波数域で励磁される割合が高まっており、商用周波数での磁気特性のみでなく、400Hz〜数kHzでの磁気特性改善が要求されるようになってきた。また、回転子は高速回転時の遠心力のみならず回転数変動にともなう応力変動を常時うけることから、回転子の鉄心素材には機械特性も要求されている。特に、IPMモータの場合には複雑な回転子形状を有することから、回転子用の鉄心材料には応力集中を考慮して遠心力ならびに応力変動に耐えうるだけの機械特性が必要となる。また、ロボット、工作機械用のサーボモータ分野でも、駆動モータと同様に回転数の高速化が今後進行していくと予測される。
【0004】
従来、駆動モータの固定子は主に打ち抜き加工した無方向性電磁鋼板の積層により製造されていたが、回転子はロストワックス鋳造法あるいは焼結法などにより製造されることもあった。これは固定子には優れた磁気特性が、回転子には堅牢な機械特性が要求されることによる。しかしながら、モータ性能は回転子−固定子間のエアギャップに大きく影響されるため、上述の回転子では精密加工の必要性が生じ鉄心製造コストが大幅に増加するという問題があった。コスト削減の観点からは、打ち抜き加工した電磁鋼板を使用すればよいが、回転子に必要な磁気特性と機械特性とを兼備した無方向性電磁鋼板は見出されていないのが現状であった。
【0005】
優れた機械特性を有する電磁鋼板としては、例えば特許文献1に、3.5〜7%のSiに加えて、Ti,W,Mo,Mn,Ni,CoおよびAlのうちの1種または2種以上を20%を超えない範囲で含有する鋼板が提案されている。この方法では鋼の強化機構として固溶強化を利用している。しかしながら、固溶強化の場合には冷間圧延母材も同時に高強度化されるため冷間圧延が困難であり、またこの方法においては温間圧延という特殊工程が必須であることから、生産性向上や歩留まり向上など改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献2には、2.0〜3.5%のSi、0.1〜6.0%のMnに加えてBおよび多量のNiを含有し、結晶粒径が30μm以下である鋼板が提案されている。この方法では鋼の強化機構として固溶強化と結晶粒径微細化による強化とを利用している。しかしながら、結晶粒微細化による強化は比較的効果が小さいため、特許文献2の実施例に示されるようにSiを3.0%程度含有させた上に高価なNiを多量に含有させることが必須であり、冷間圧延時に割れが多発するという問題や、合金コスト増加という課題が残っている。
【0007】
さらに、特許文献3および特許文献4には、2.0〜4.0%のSiに加えてNb,Zr,B,TiまたはVなどを含有する鋼板が提案されている。これらの方法ではSiによる固溶強化に加えてNb,Zr,TiまたはVの析出物による析出強化を利用している。しかしながら、このような析出物による強化は比較的効果が小さいため、特許文献3および特許文献4の実施例に示されるようにSiを3.0%程度含有させる必要があり、特に特許文献3の方法では高価なNiを多量に含有させることも必要となる。そのため冷間圧延時に割れが多発するという問題や、合金コスト増加という課題が残っている。
【0008】
また、特許文献5および特許文献6には、SiおよびAlを0.03〜0.5%と制限した上でTi,NbおよびV、あるいはPおよびNiを含有する鋼板がそれぞれ提案されている。これらの方法では、Siによる固溶強化よりも炭化物の析出強化およびPの固溶強化を利用している。しかしながら、これらの方法では、後述する駆動モータの回転子として必要な強度レベルを確保することができないという問題や、特許文献5および特許文献6の実施例に示されているように2.0%以上のNi含有が必須であり、合金コストが高いという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献7には、Si:1.6〜2.8%であって、結晶粒径、内部酸化層厚み、および降伏点を限定した永久磁石埋め込み型モータ用無方向性電磁鋼板が提案されている。しかしながら、この方法による鋼板の降伏点では、高速回転する駆動モータの回転子としては強度不足である。
【0010】
また、特許文献8には、磁気特性に優れた高強度電磁鋼板が提案されている。しかしながら、TiおよびNbの含有量を不可避的不純物レベルとする、あるいは低減することを基本としているため、高い強度を安定的に得ることはできない。
【0011】
さらに、JIS C 2552に規定の無方向性電磁鋼板としては、いわゆる高グレード無方向性電磁鋼板(35A210,35A230など)が最も合金含有量が高く高強度であるが、機械特性レベルは上述の高張力電磁鋼板を下回っており高速回転する駆動モータの回転子としては強度不足である。
【0012】
【特許文献1】特開昭60-238421号公報
【特許文献2】特開平1−162748号公報
【特許文献3】特開平2−8346号公報
【特許文献4】特開平6−330255号公報
【特許文献5】特開2001−234302号公報
【特許文献6】特開2002−146493号公報
【特許文献7】特開2001−172752号公報
【特許文献8】特開2005−113185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、無方向性電磁鋼板の高強度化手法として従来から提案されている固溶強化および析出強化では冷間圧延の母材も強化されてしまうことから冷間圧延時に割れが多発し、結晶粒微細化による高強度化ではその強化量が不十分であるため回転子用途として実用に耐える強度を実現することができない。また、本発明者らは変態強化についても検討を行ったが、変態強化ではマルテンサイト等の変態組織が鉄損を著しく増大させることが判明し、回転子用途として実用に耐える磁気特性を実現することができない。
【0014】
このような問題点に鑑み、本発明者らは特願2004−183554、特願2004−252395にて高速回転するモータの回転子として必要な優れた機械特性と磁気特性とを具備する無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提案している。これらの無方向性電磁鋼板はNb,Zr,TiおよびVを含有するものであるため、リジングの発生により表面性状が通常の無方向性電磁鋼板より劣る可能性があり、鉄心として使用する際には占積率の低下により有効な断面積あたりの磁束密度が低下し、モータ効率が低下する可能性がある。
ここで、占積率とは、無方向性電磁鋼板を積層して鉄心を作製した際の、鉄心厚さ全体に占める鋼板の割合である。
【0015】
このため、特願2004−252395においては、これらの元素の上限を規制することにより良好な表面性状を確保している。しかしながら、表面性状をさらに向上させることができれば、鉄心として使用する際、占積率の向上によりモータ効率を一層向上させることができるので好ましい。
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、モータ特性の向上に寄与する占積率が高く、かつ、高速回転するモータの回転子として必要な優れた機械特性と磁気特性とを兼備する無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、回転子に適した磁気特性と機械特性とを兼ね備えた無方向性電磁鋼板の有するべき鋼組織について種々検討を行い、従来ほとんど検討されていなかった加工硬化による高強度化に着目した。そして、回復状態で残存している転位は鉄損に及ぼす影響が比較的小さいとの新知見を得て、従来の無方向性電磁鋼板の技術認識である完全な再結晶フェライト組織とは全く逆の技術思想に立脚して、鋼板の組織を多量の転位が残存した加工組織および回復状態の組織(以下、「回復組織」と称する)とすることにより、回転子に要求される磁気特性および機械特性が得られることを見出した。さらに、回復組織を得るためには、Nb,Zr,TiおよびVの含有量を所定の範囲とすることが必要であることを見出し、これらの知見に基づいて、特願2004−183554、特願2004−252395にて高速回転するモータの回転子用として必要な優れた機械特性と磁気特性とを具備する無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提案している。
【0018】
また、本発明者らは、Nb,Zr,TiおよびVを含有させた無方向性電磁鋼板にて懸念されていた、鋼板単独での特性が良好であってもモータ組み立て後に性能が発揮できない原因の一つである占積率を改善するため、熱間圧延条件の影響について鋭意研究を重ねた。その結果、NbおよびTiの含有量、粗熱間圧延での累積圧下率、鋼塊または鋼片の等軸晶率などを制御することにより、Nb,Zr,TiおよびVを含有させた無方向性電磁鋼板の表面性状をより安定的に改善できることが判明し、機械特性および磁気特性だけでなく占積率も良好な無方向性電磁鋼板が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.06%以下、Si:3.5%以下、Mn:0.05%以上3.0%以下、Al:2.5%以下、P:0.30%以下、S:0.04%以下、N:0.02%以下、Nb:0%以上0.02%以下、Ti:0.01%超0.55%以下を含有し、Nb、Ti、ZrおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなる鋼塊または鋼片(以下、スラブともいう。)を、1100℃以上1300℃以下としたのちに、累積圧下率が78%以上の粗熱間圧延を施して粗バーを得る粗熱間圧延工程、ならびに、上記粗バーに仕上熱間圧延を施す仕上熱間圧延工程を有し、上記仕上熱間圧延工程前の粗バーの温度を920℃以上とする熱間圧延工程と、上記熱間圧延工程により得られた熱間圧延鋼板に一回または中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、上記冷間圧延工程により得られた冷間圧延鋼板を500℃以上780℃以下で均熱する均熱処理工程とを有することを特徴とする回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
0<Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)<5×10-3 (1)
(ここで、式(1)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
【0020】
一般に、無方向性電磁鋼板を製造する際、熱間圧延および冷間圧延の後に、再結晶および結晶粒成長を目的として均熱処理が施される。本発明によれば、Nb,Zr,TiおよびVの含有量を適正に制御し、均熱処理での温度を所定の範囲とすることにより、均熱処理時に再結晶を抑制し、冷間圧延により導入された転位の均熱処理中における消滅を抑制して残存させ、加工組織および回復組織を主体とする鋼板を得ることが可能である。これにより、高強度の無方向性電磁鋼板を製造することができる。このような鋼板の高強度化は、冷間圧延に供する鋼板、すなわち冷間圧延の母材の高強度化を伴うことがないので、冷間圧延時の破断を抑制することができるという利点を有する。さらに本発明によれば、所定の鋼組成を備える鋼塊または鋼片を用いることにより、機械特性だけでなく磁気特性も良好な無方向性電磁鋼板を製造することができる。
また本発明においては、NbおよびTiの含有量を適正化し、熱間圧延工程を所定の条件で行うことにより、具体的には粗熱間圧延に供する際のスラブの温度、粗熱間圧延での累積圧下率、および、粗熱間圧延後で仕上熱間圧延前における粗バーの温度を所定の範囲とすることにより、鋼板がNb,Zr,TiおよびVを含有する場合であっても、良好な表面性状を安定して確保することができる。その結果、高い占積率を実現することができる。
したがって本発明によれば、従来のように高価な鋼成分を用いることも、特殊な工程を経ることもなく、例えば駆動モータの回転子として必要な磁気特性および機械特性を満足し、モータ性能の向上に寄与する占積率の高い回転子用無方向性電磁鋼板を安定して製造することができる。
【0021】
また本発明においては、上記鋼塊または鋼片が、上記Feの一部に代えて、Cu、Ni、Cr、Mo、CoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記の質量%で含有することが好ましい。
Cu:0.005%以上8.0%以下 Ni:0.005%以上2.0%以下
Cr:0.005%以上15.0%以下 Mo:0.005%以上4.0%以下
Co:0.005%以上4.0%以下 W:0.008%以上4.0%以下
上記元素の高強度化作用により、鋼板の強度をより高めることが可能となるからである。
【0022】
さらに本発明においては、上記鋼塊または鋼片が、上記Feの一部に代えて、Sn、Sb、Se、Bi、Ge、TeおよびBからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記の質量%で含有することが好ましい。
Sn:0.5%以下 Sb:0.5%以下 Se:0.3%以下 Bi:0.2%以下
Ge:0.5%以下 Te:0.3%以下 B:0.01%以下
上記元素の粒界偏析により、効果的に再結晶を抑制することができるからである。
【0023】
またさらに本発明においては、上記鋼塊または鋼片が、上記Feの一部に代えて、Ca、MgおよびREMからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記の質量%で含有することが好ましい。
Ca:0.03%以下 Mg:0.02%以下 REM:0.1%以下
上記元素の硫化物形態制御作用により、磁気特性をさらに改善することができるからである。
【0024】
また本発明においては、上記鋼塊または鋼片の断面組織における平均等軸晶率が25%以上であることが好ましい。これにより、リジングの発生を抑え、表面性状を安定的に改善することができ、占積率を高めることができるからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、占積率が高く、高速回転するモータの回転子として必要な優れた機械特性と磁気特性とを兼備した無方向性電磁鋼板を、多大なコスト増加を招くことなく安定に製造することが可能である。そのため、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動モータ分野などにおける回転数の高速化に十分対応でき、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明で言及する回転子に用いる電磁鋼板として必要な特性とは、第一に機械特性であり、降伏点および引張強さである。これは高速回転時の回転子の変形抑制のみならず、応力変動に起因する疲労破壊抑制を目的としている。近年の電気自動車、ハイブリッド自動車の駆動モータでは、回転子は250MPa程度の平均応力下で150MPa程度の応力振幅を受ける。したがって、変形抑制の観点から降伏点は400MPa以上、安全率を考慮すると500MPa以上を満たす必要がある。好ましくは550MPa以上である。また、上述の応力状態での疲労破壊を抑制する観点から引張強さは550MPa以上、安全率を考慮すると600MPa以上、好ましくは700MPa以上必要である。
【0027】
また、回転子に用いる電磁鋼板として必要な第二の特性は磁束密度である。IPMモータのようにリラクタンストルクを活用するモータでは回転子に用いられる材質の磁束密度もトルクに影響を及ぼし、磁束密度が低いと所望のトルクを得られない。
【0028】
さらに、回転子に用いる電磁鋼板として必要な第三の特性は鉄損である。鉄損は不可逆な磁壁移動に起因するヒステリシス損失と、磁化変化に起因して発生する渦電流によるジュール熱(渦電流損失)とから構成され、電磁鋼板の鉄損はこれらの総和であるトータルの鉄損で評価される。回転子で発生する損失はモータ効率そのものを支配するものではないが、回転子の損失すなわち発熱により永久磁石が減磁するため、間接的にモータ性能を劣化させる。したがって、回転子に使用される材質の鉄損値の上限は永久磁石の耐熱温度の観点から決定され、固定子に使用される材質よりも鉄損値が高くとも許容されると想起される。
【0029】
本発明者らはこれらの特性を満足する無方向性電磁鋼板について鋭意検討を行った。まず、上述の着想をもとに回転子に適した磁気特性と機械特性とを兼ね備えた無方向性電磁鋼板の有するべき鋼組織について種々検討を行った。その結果、固溶強化および析出強化では冷間圧延母材も高強度化されるため冷間圧延時の破断が避けられないこと、結晶粒微細化のみでは要求レベルの機械特性を達成できないこと、および、マルテンサイト等の変態組織では鉄損が著しく増大すること、が判明した。さらに、強化機構として加工硬化について検討した結果、回復状態で残存している転位は鉄損に及ぼす影響が比較的小さいことが判明した。これらの結果から、従来の無方向性電磁鋼板の技術認識である完全な再結晶フェライト組織とは全く逆に、多量の転位が残存した加工組織および回復組織とすることにより、回転子に要求される磁気特性と機械特性とが達成されるとの知見を得た。
【0030】
加工組織および回復組織は、所定の板厚への加工時に導入された転位を均熱処理時に消滅させることなく残存させることにより得られる。そのため、固溶強化あるいは析出強化主体の従来技術とは異なり、冷間圧延母材の高強度化を伴うことなく高強度化が可能であり、冷間圧延時の破断を抑制できる。このような加工組織および回復組織を得るためには、通常冷間圧延後に行われる均熱処理での再結晶を抑制することが必要である。また、均熱処理時に再結晶を抑制するには、Nb,Zr,TiおよびVを含有させることが必要であり、特にNbおよびTiの寄与が大きいためにNbおよびTiを中心に適正量含有させる必要がある。ただし、Nb,Zr,TiおよびVを過度に含有させると表面性状が劣化するため、Nb,Zr,TiおよびVの含有量の適正化が重要となる。さらに、Nb,Zr,TiおよびVを含有させた無方向性電磁鋼板にて懸念されていたリジングの発生による占積率の低下を改善するためには、熱間圧延条件等を適正化する必要がある。
以下、本発明を得るに至った知見を述べる。
【0031】
まず、本発明の特徴であるNb、Zr、TiおよびVに関する知見について述べる。
主要成分が質量%で、Si:2.0%、Mn:0.2%、Al:1.3%、N:0.002%、P:0.01%、C:0.002%であり、S含有量を0.002〜0.021%、Nb、Zr、TiおよびVの含有量を下記式(2)の範囲内で変化させた鋼に、熱間圧延を施して2.3mmとした後、800℃で10時間の熱延板焼鈍を行い、さらに0.35mmまで冷間圧延し、700℃で20秒間保持の均熱処理を施した。
−3.1×10-3<Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)<3.4×10-3 (2)
(ここで、式(2)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
【0032】
下記式(3)で表されるxの値がx>0の場合、均熱処理時の再結晶が抑制され、鋼板組織は加工組織あるいは回復組織となっており、所望の引張り強さが得られることが分かった。xの値が正であることは、鋼板中に固溶Nb、Zr、TiおよびVが存在していることを意味しており、再結晶の抑制には固溶Nb、Zr、TiおよびVが重要であると判明した。
x=Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14) (3)
(ここで、式(3)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
【0033】
また、均熱処理条件を720℃で20秒間保持として同様の検討を行い、x>0の場合にのみ鋼板組織として加工組織および回復組織が得られ、所望の引張り強さが得られるという同様の結果を得た。
【0034】
さらに、Nb、Zr、TiおよびVのうち1種の元素のみについて、上記式(2)の範囲内で含有量を変化させ、上記と同様の検討を行い、それらの知見を合わせて、再結晶抑制にはNb,Zr,TiおよびVの中でもTiおよびNbを積極的に含有させたうえで下記式(1)を満足させる必要があると判明した。
0<Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)<5×10-3 (1)
(ここで、式(1)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
【0035】
次に、Nb,Zr,TiおよびVを含有させた無方向性電磁鋼板にて懸念されていた表面性状を改善する手段についての知見を述べる。
転炉で脱炭脱硫した溶鋼230tonを取鍋内に出鋼し、取鍋をRH式真空脱ガス装置に移動した。RH式真空脱ガス装置で減圧脱炭を行い、下記表1に示す組成の溶鋼を連続鋳造機にてスラブとした。製造したスラブの平均等軸晶率は0〜30%であった。
【0036】
【表1】


【0037】
これらのスラブを加熱炉で1150℃まで加熱し、累積圧下率を77〜86%として粗熱間圧延し、粗熱間圧延出側温度980〜1000℃、仕上げ温度800〜850℃、巻き取り温度500℃で仕上熱間圧延して、厚さ2.0mmとした。その後750℃で10時間の熱延板焼鈍を行い、さらに0.35mmまで冷間圧延した。さらに、冷間圧延により得られた鋼板に760℃で20秒間保持する均熱処理を施し、鋼板表面に平均厚さ0.5μmの絶縁皮膜を施した。得られた鋼板からJIS C 2550に準じて試験片を採取し、占積率、磁気特性(鉄損W10/400)および機械特性(降伏点YP、引張強さTS)を調査した。結果を表2に示す。
なお、表2において、平均等軸晶率は、鋳込み方向垂直断面のマクロ組織より、スラブ幅3ヶ所(1/4、2/4、3/4)における等軸晶率を平均した値である。
また、粗熱間圧延での累積圧下率(粗圧延累積圧下率)は、粗熱間圧延機入側のスラブ厚さAと出側の鋼帯厚さBとから、次式により算出した値である。
(1−B/A)×100[%]
さらに、占積率評価は、98%以上をA、96%以上98%未満をB、96%未満をCとして、AおよびBは回転子の鉄心として使用可能レベルと判断した。
【0038】
また、図1および図2に、鋼Aまたは鋼Dを用いたそれぞれの鋼板について、粗熱間圧延での累積圧下率と占積率との関係を示す。
【0039】
【表2】


【0040】
鋼A〜Dは上記式(1)を満たす範囲でNb、Zr、TiおよびVを含んでおり、回転子に必要な強度を確保していた。表2および図1、2に示すように、Nb含有量が多い無方向性電磁鋼板(鋼A、B)は、スラブの平均等軸晶率が30%以上、粗熱間圧延での累積圧下率が83%以上の場合に高い占積率を有することが判明した。一方、Nb含有量が少ない無方向性電磁鋼板(鋼C、D)では、スラブの平均等軸晶率が25%以上、粗熱間圧延での累積圧下率が77%以上の場合に高い占積率が得られ、Nb含有量が多い鋼よりも平均等軸晶率および粗圧延累積圧下率の広い範囲で高い占積率が得られることが判明した。また、スラブの平均等軸晶率が高い製品ほど占積率が改善されること、および、熱間圧延条件が機械特性や磁気特性に及ぼす影響は占積率に及ぼす影響に比べて小さいこと、が判明した。
【0041】
ZrおよびVについても上記と同様の検討を行い、それらの知見を合わせて、Nb,Zr,TiおよびVを含有させた無方向性電磁鋼板の占積率を高めるには、熱間圧延条件やスラブの平均等軸晶率を適切に制御することが有効であるとの知見を得たのである。その機構については明らかではないが、本発明者らは次のように推定する。
【0042】
占積率の改善は、すなわち表面性状の改善によるものである。Nb,Zr,TiおよびVを含有させた鋼は、均熱処理時にて再結晶が抑制されるが、熱間圧延時にも再結晶が抑制されてしまう場合があるため、鋳造組織の巨大柱状粒に起因する表面の凹凸欠陥であるリジングが冷間圧延後に発生し、この表面性状の劣化が占積率の低下につながると考えられる。これに対し本発明においては、粗熱間圧延での累積圧下率および粗熱間圧延出側の温度の双方を高めることにより、抑制されていた再結晶が促進され、鋳造組織の巨大柱状粒に起因する圧延方向の筋状のバンド組織が消失するものと考えられる。これにより冷間圧延後の表面欠陥が抑制され、占積率の改善につながったと推察される。
以下、本発明の回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法について詳細に説明する。
【0043】
本発明の回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.06%以下、Si:3.5%以下、Mn:0.05%以上3.0%以下、Al:2.5%以下、P:0.30%以下、S:0.04%以下、N:0.02%以下、Nb:0%以上0.02%以下、Ti:0.01%超0.55%以下を含有し、Nb、Ti、ZrおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなる鋼塊または鋼片を、1100℃以上1300℃以下としたのちに、累積圧下率が78%以上の粗熱間圧延を施して粗バーを得る粗熱間圧延工程、ならびに、上記粗バーに仕上熱間圧延を施す仕上熱間圧延工程を有し、上記仕上熱間圧延工程前の粗バーの温度を920℃以上とする熱間圧延工程と、上記熱間圧延工程により得られた熱間圧延鋼板に一回または中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程と、上記冷間圧延工程により得られた冷間圧延鋼板を500℃以上780℃以下で均熱する均熱処理工程とを有することを特徴とするものである。
0<Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)<5×10-3 (1)
(ここで、式(1)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
以下、本発明の回転子用無方向性電磁鋼板の製造方法における鋼塊または鋼片、および各工程について説明する。
【0044】
1.鋼塊または鋼片
本発明に用いられる鋼塊または鋼片は、質量%で、C:0.06%以下、Si:3.5%以下、Mn:0.05%以上3.0%以下、Al:2.5%以下、P:0.30%以下、S:0.04%以下、N:0.02%以下、Nb:0%以上0.02%以下、Ti:0.01%超0.55%以下を含有し、Nb、Ti、ZrおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の元素を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなるものである。
なお、各元素の含有量を示す「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味するものである。また、本発明において、「残部が実質的にFeおよび不純物からなる」とは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の元素を含有する場合を含むことを意味する。
以下、鋼組成について説明する。
【0045】
(1)C
CはNb,Zr,TiまたはVと結びついて析出物を形成するため、固溶Nb,Zr,TiおよびVの含有量の減少に繋がる。したがって、固溶Nb,Zr,TiおよびVにより、冷間圧延後の均熱処理において進行する転位の消滅および再結晶の進行を抑制するためには、C含有量は低減することが好ましい。しかしながら、過度のC含有量の低減は製鋼コストが増加する点や、C含有量が多くてもNb,Zr,TiおよびVの含有量をそれに応じて増加させれば固溶Nb,Zr,TiおよびVの含有量は確保される点を鑑み、C含有量の上限値は0.06%とする。好ましくは0.04%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。C含有量が0.01%以下であれば、Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)>0なる条件を満たすのに必要なNb,Zr,TiおよびVの含有量が少なくてすむので製造コストの観点から望ましい。
【0046】
(2)Si
Siは電気抵抗を高め、渦電流損失を低減する効果を有する元素である。しかしながら、多量のSiを含有させた場合には冷間圧延時の割れを誘発し、鋼板の歩留まり低下により製造コストが増加する。そのためSi含有量は3.5%以下とする。また、割れ抑制の観点からは3.0%以下が好ましい。さらに、Siを脱酸剤として使用する場合は0.01%以上含有させることが必要であるが、Alを脱酸剤として使用する場合もあるため、Si含有量の下限値は特に限定しない。固溶強化による鋼板の高強度化という観点からは下限値を1.0%とすることが好ましい。
【0047】
(3)Mn
MnはSiと同様に電気抵抗を高め、渦電流損失を低減する効果がある。しかしながら、Mnを多量に含有させると合金コストが増加するため、Mn含有量の上限は3.0%とする。一方、Mn含有量の下限はSを固定する観点から定められるものであり、0.05%とする。
【0048】
(4)Al
Alは電気抵抗を高めるためSiと同様に渦電流損失を低減する。しかしながら、多量にAlを含有させると合金コストが増加するとともに、飽和磁束密度低下により磁束の漏れが発生するためモータ効率が低下する。これらの観点からAl含有量の上限は2.5%とする。また、Alを脱酸剤として使用する場合は0.01%以上含有させることが必要であるが、Siを脱酸剤として使用する場合があるため、Al含有量の下限値は特に限定しない。固溶強化による鋼板の高強度化という観点からは、望ましい下限値は0.2%である。
【0049】
(5)P
Pは固溶強化により鋼板の強度を高める効果があるが、多量にPを含有する場合には冷間圧延時の割れを誘発する。そのためP含有量は0.30%以下とする。
【0050】
(6)S
Sは鋼中に不可避的に混入する不純物であるが、製鋼段階で低減するにはコストが増加するためS含有量としては0.04%を上限とする。
【0051】
(7)N
NはNb,Zr,TiまたはVと結びついて析出物を形成するため、固溶Nb,Zr,TiおよびVの含有量の減少に繋がる。したがって、固溶Nb,Zr,TiおよびVによって再結晶を抑制するためには、N含有量は低減することが好ましい。しかしながら、N含有量が多くてもNb,Zr,TiおよびVの含有量をそれに応じて増加させれば固溶Nb,Zr,TiおよびVの含有量は確保できる点を鑑み、N含有量の上限は0.02%とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。N含有量が0.005%以下であれば、Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)>0なる条件を満たすのに必要なNb,Zr,TiおよびVの含有量が少なくてすむので製造コストの観点から望ましい。
【0052】
(8)Nb,Zr,TiおよびV
均熱処理中の転位の消滅および再結晶を抑制し、加工組織および回復組織を得ることによって回転子に必要な機械特性と磁気特性とを得るためには、析出物を形成していない固溶した状態のNb,Zr,TiまたはVを含有させることが必要である。したがって、Nb,Zr,TiおよびVからなる群から選択される少なくとも1種の元素を、下記式(4)を満足する範囲で含有させることが必要である。
Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)>0 (4)
(ここで、式(4)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
【0053】
上記式(4)の左辺は、Nb,Zr,TiおよびVの含有量とCおよびNの含有量との差を表しており、この値が正であることは炭化物、窒化物または炭窒化物といった析出物を形成していない固溶した状態のNb,Zr,TiまたはVを含有していることに対応する。
上述のとおり、これらの元素のなかでも固溶Nb、Tiの寄与が特に大きいが、好ましい占積率を得るためにはTiを積極的に含有させることが効果的であるため、Nb含有量は0.02%以下、Ti含有量は0.01%超0.55%以下、かつ上記式(4)を満たすものとする。
【0054】
均熱処理時の均熱温度が高温の場合、固溶Nb,Zr,TiおよびVの含有量が多ければ多いほど転位の消滅および再結晶を抑制する効果は大きくなり、加工組織または回復組織を得るには有効である。しかしながら、過度に固溶Nb,Zr,TiおよびVを含有する場合には熱間圧延時にも転位の消滅および再結晶が抑制されるため、上述した凹凸欠陥(リジング)を鋼板表面に生じる場合がある。また、冷間圧延時に割れが生じる場合もある。固溶Nb,Zr,TiおよびVの含有量の上限値はこのような観点から定められ、Nb,Zr,TiおよびVは下記式(1)で示される範囲で含有させる必要がある。
0<Nb/93+Zr/91+Ti/48+V/51−(C/12+N/14)<5×10-3 (1)
(ここで、式(1)中、Nb、Zr、Ti、V、CおよびNはそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。)
【0055】
また、硫化物を考慮すると固溶状態のNb,Zr,TiおよびVの含有量はS含有量にも影響される。しかしながら、上述したS含有量の範囲内では再結晶抑制効果に及ぼすSによる影響は認められなかったため、本発明においてはSの項を省略した上記式(1)を採用した。Sの影響が認められなかった理由は明確でないが、凝固末期のSが濃化した領域からMnSとなって晶出するなどしてMnによりSが固定されたためと考えられる。
【0056】
(9)Cu,Ni,Cr,Mo,CoおよびW
本発明においては、再結晶粒径の細粒化ではなく再結晶そのものを抑制することにより磁気特性と機械特性の両立を図っているため、この再結晶抑制効果を損なわない範囲でCu,Ni,Cr,Mo,CoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有させることができる。これらの元素は鋼板を高強度化する作用を有するので、鋼板の強度をさらに高めるのに有効であり好ましい。
【0057】
Cuは鋼板の固有抵抗を増加し、鉄損を低減する効果がある。しかしながら過度にCuを含有させると表面疵や冷間圧延時の割れの発生につながるため、Cu含有量は0.005%以上8.0%以下とすることが好ましい。表面疵の観点から、好ましくは1.0%以下である。
【0058】
NiおよびMoは過度に含有させると冷間圧延時の割れの発生やコスト増加につながるため、Ni含有量は0.005%以上2.0%以下、Mo含有量は0.005%以上4.0%以下とすることが好ましい。
【0059】
Crは鋼板の固有抵抗を増加し、鉄損を低減する効果がある。また耐食性を改善する効果も有する。しかしながら過度にCrを含有させるとコストが増加するため、Cr含有量は0.005%以上15.0%以下とすることが好ましい。
【0060】
CoおよびWは、過度に含有させるとコストが増加するため、Co含有量は0.005%以上4.0%以下、W含有量は0.008%以上4.0%以下とすることが好ましい。
【0061】
(10)Sn,Sb,Se,Bi,Ge,TeおよびB
本発明は再結晶を抑制することにより磁気特性と機械特性の両立を図っているため、粒界偏析により再結晶を抑制する効果を有するSn,Sb,Se,Bi,Ge,TeおよびBからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有させることが好ましい。これらの元素を含有させる場合には、熱間圧延工程での割れの発生およびコスト増加を抑制する観点から、各元素の含有量をSn:0.5%以下、Sb:0.5%以下、Se:0.3%以下、Bi:0.2%以下、Ge:0.5%以下、Te:0.3%以下、B:0.01%以下とすることが好ましい。これらの元素による再結晶抑制効果を確実に得るには、各元素の含有量をSn:0.001%以上、Sb:0.0005%以上、Se:0.0005%以上、Bi:0.0005%以上、Ge:0.001%以上、Te:0.0005%以上、B:0.0002%以上とすることが好ましい。
【0062】
(11)Ca,MgおよびREM
本発明で規定するS含有量の範囲内では再結晶抑制効果に及ぼすSの影響は認められなかったため、本発明においては硫化物の形態制御による磁気特性改善を目的としてCa,MgおよびREMからなる群から選択される少なくとも1種を含有させることができる。
ここでREMとは、原子番号57〜71までの15元素、ならびにScおよびYの2元素の合計17元素をさす。
これらの元素を含有させる場合、各元素の含有量はCa:0.03%以下、Mg:0.02%以下、REM:0.1%以下が好ましい。上記効果を確実に得るためには、各元素の含有量をCa:0.0001%以上、Mg:0.0001%以上、REM:0.0001%以上とすることが好ましい。
【0063】
(12)その他の成分
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で上述した元素以外の元素を含有させることが可能である。本発明は、再結晶組織を前提とした従来技術とは異なり、多くの転位が残存した加工組織および回復組織とすることにより強度を高めるものであるから、再結晶組織を前提とした従来技術において制限されていた元素の含有をより高いレベルまで許容することができる。例えば、Ta,Hf,As,Au,Be,Zn,Pb,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,Ag,Cd,HgおよびPoを総和で0.10%以下含有することができる。
【0064】
2.熱間圧延工程
本発明における熱間圧延工程は、上述した鋼組成を有する鋼塊または鋼片を、1100℃以上1300℃以下としたのちに、累積圧下率が78%以上の粗熱間圧延を施して粗バーを得る粗熱間圧延工程と、上記粗バーに仕上熱間圧延を施す仕上熱間圧延工程とを有し、上記仕上熱間圧延工程前の粗バーの温度を920℃以上とする工程である。以下、熱間圧延工程における各工程について説明する。
【0065】
(1)粗熱間圧延工程
本発明における粗熱間圧延工程は、上述した鋼組成を有する鋼塊または鋼片を、1100℃以上1300℃以下としたのちに、累積圧下率が78%以上の粗熱間圧延を施す工程である。
【0066】
本工程においては、上述した鋼組成を有する鋼を、連続鋳造法あるいは鋼塊を分塊圧延する方法など一般的な方法によりスラブとし、所定の温度としたのちに粗熱間圧延を施す。粗熱間圧延に供するスラブ温度を所定の温度とすることができるのであれば、スラブを加熱炉に装入して所定の温度まで加熱する場合のほか、連続鋳造後や分塊圧延後の高温状態にあるスラブを加熱炉に装入しないで直接粗熱間圧延を行ってもよい。
【0067】
粗熱間圧延に供する際のスラブ温度は1100℃以上1300℃以下とする。スラブ温度が上記範囲未満の場合には、粗熱間圧延中の鋼板温度が低すぎて熱間圧延工程における再結晶が不十分となり、冷間圧延後の鋼板に上述した表面欠陥が生じる場合がある。また、スラブ温度が上記範囲を超えるとスラブが変形するため、熱間圧延により所定の形状へ造り込むことが困難になる場合がある。好ましいスラブ温度は1100〜1250℃である。
【0068】
また、粗熱間圧延に供するスラブの断面組織における平均等軸晶率は25%以上であることが好ましい。これにより、表面性状をさらに改善することができるからである。この平均等軸晶率は、連続鋳造時に電磁攪拌を施す等、一般的な方法を用いることにより制御することができる。
ここで、等軸晶率とはスラブ厚に占める等軸晶部分の厚みの割合であり、スラブ断面をエッチングして得られる凝固組織のマクロ組織より等軸晶か柱状晶かを判別し、各部分の厚みを測定して算出すればよい。平均等軸晶率としては、スラブの幅方向の1/4、2/4、3/4位置における等軸晶率を平均した値を採用すればよい。
【0069】
本発明においては、冷間圧延後の表面欠陥を抑制するために、上記スラブに累積圧下率が78%以上の粗熱間圧延を施して粗バーとする。粗熱間圧延での累積圧下率が上記範囲未満であると、本発明で規定する鋼組成を有する鋼板では、スラブ鋳造組織の巨大柱状粒に起因する圧延方向の筋状のバンド組織が冷間圧延後も残留してしまい、表面欠陥が発生する場合がある。好ましい累積圧下率は83%以上である。一方、粗熱間圧延での累積圧下率が高いほど表面欠陥が抑制されるので、累積圧下率の上限は特に限定しない。
ここで、粗熱間圧延での累積圧下率は、粗熱間圧延機入側のスラブの厚さAと出側の粗バーの厚さBを用いて、次式で表される数値である。
(1−B/A)×100[%]
なお、粗熱間圧延を施す前にスラブの幅方向に圧下もしくは圧延を施してスラブ厚さを増加させても本発明の効果は全く失われない。この場合における粗熱間圧延での累積圧下率は、スラブの幅方向への圧下もしくは圧延後のスラブの厚さを用いて算出した数値とする。
【0070】
粗熱間圧延における他の条件は特に限定されるものではなく、一般的な条件に従って行えばよい。
【0071】
また本発明においては、冷間圧延後の表面欠陥を抑制するために、粗熱間圧延工程後で仕上熱間圧延工程前における粗バーの温度を920℃以上とする。粗バーの温度が上記範囲未満であると、本発明で規定する鋼組成を有する鋼板では熱間圧延工程にて再結晶が促進されず、上記累積圧下率が上述した範囲未満である場合と同様に、表面欠陥が発生する場合がある。粗熱間圧延工程後で仕上熱間圧延工程前における粗バーの温度は、950℃以上であることが好ましい。一方、粗バーの温度の上限については特に限定するものではない。
【0072】
上記粗バーの温度を920℃以上とする手段としては、粗熱間圧延に供するスラブ温度を高温にすることによって粗熱間圧延出側における粗バーの温度を920℃以上にする方法のほか、粗熱間圧延により得られた粗バーを加熱することにより920℃以上とする方法も用いることができる。
【0073】
(2)仕上熱間圧延工程
本発明における仕上熱間圧延工程は、上記粗バーに仕上熱間圧延を施す工程である。
仕上熱間圧延の各種条件は特に限定されるものではなく、例えば仕上げ温度が700〜920℃、巻き取り温度が750℃以下など、一般的な条件に従って行えばよい。
【0074】
3.冷間圧延工程
本発明における冷間圧延工程は、上記熱間圧延工程により得られた熱間圧延鋼板に一回または中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施す工程である。
【0075】
本工程においては、鋼板を所定の板厚に仕上げる。この際、一回の冷間圧延で所定の板厚まで仕上げてもよいし、中間焼鈍を含む二回以上の冷間圧延によって仕上げてもよい。
【0076】
また、十分に転位が導入されれば本発明の効果を得ることができるため、冷間圧延時の鋼板温度、圧下率、圧延ロール径など、冷間圧延の各種条件は特に限定されるものではなく、被圧延材の鋼組成、目的とする鋼板の板厚などにより適宜選択するものとする。
【0077】
上記熱間圧延工程により得られた熱間圧延鋼板は、通常、粗熱間圧延や仕上熱間圧延の際に鋼板表面に生成したスケールを酸洗により除去してから冷間圧延に供される。熱間圧延鋼板に後述する熱延板焼鈍を施す場合には、熱延板焼鈍前あるいは熱延板焼鈍後のいずれかにおいて酸洗すればよい。
【0078】
4.均熱処理工程
本発明における均熱処理工程は、上記冷間圧延工程により得られた冷間圧延鋼板を500℃以上780℃以下で均熱する工程である。
【0079】
本発明は、均熱処理で進行する再結晶を抑制し、転位を残存させることを骨子としている。したがって、再結晶抑制効果が小さい場合には、均熱温度を通常の無方向性電磁鋼板の均熱温度よりも著しく低温化する必要がある。通常の無方向性電磁鋼板の連続焼鈍ラインでの均熱処理を前提とすれば、炉温が下がり、かつ安定化するまでは均熱処理に供することはできない。さらに、一旦炉温を下げた後は、通常の無方向性電磁鋼板の均熱温度まで炉温が上がり、かつ安定化するまでは、通常の無方向性電磁鋼板を均熱処理に供することもできない。これらのことから、再結晶抑制効果が小さい場合には、生産性を著しく低下させることが容易に想像できる。
【0080】
本発明では再結晶を抑制する効果を有する固溶Nb,Zr,TiおよびVを含有しているため、均熱処理での均熱温度が高くとも加工組織および回復組織を得ることができ、特殊な均熱温度の機会を設ける必要がないため生産性を向上させることができる。具体的には、均熱温度が780℃以下であれば、所望の機械特性を得ることができる。機械特性の観点から好ましくは750℃以下である。この均熱温度は通常の無方向性電磁鋼板で実施する範囲内であり、生産性を阻害することはない。
一方、均熱温度が低ければ低いほど再結晶進行が抑制されるが、均熱温度が低すぎると鋼板の平坦が矯正されずに回転子に積層した場合の占積率が低下する場合がある。また、均熱処理を施すことにより冷間圧延のままの状態よりも鉄損を改善する効果も得られることから、均熱温度が低すぎると鉄損の増加に繋がる。さらに、均熱温度が低すぎると、上述のとおり生産性が著しく低下する。そこで、平坦矯正および鉄損改善の観点から、均熱温度の下限値を500℃とする。好ましくは600℃以上である。
【0081】
均熱処理は、箱焼鈍および連続焼鈍のいずれの方法で実施してもよいが、生産性の観点からは連続焼鈍ラインにて実施することが望ましい。箱焼鈍では、コイル状態で焼鈍に供されることに起因してコイルの巻きぐせ(コイルセットともいう)により鋼板の平坦度が低下したり、形状が劣化したりすることがあるため、均熱処理工程後に鋼板の平坦度や形状を矯正する矯正工程を行うことが好ましい。
【0082】
なお、高温での均熱処理により再結晶が進行し、それに起因して機械特性が低下した場合には、工程増加はやむを得ないが均熱処理工程後に加工して強度を確保してもよい。
【0083】
5.熱延板焼鈍工程
本発明においては、上記熱間圧延工程により得られた熱間圧延鋼板に熱延板焼鈍を施す熱延板焼鈍工程を行ってもよい。この熱延板焼鈍工程は、熱間圧延工程と冷間圧延工程との間に行われる工程である。
熱延板焼鈍工程は必ずしも必須の工程ではないが、熱延板焼鈍工程を行うことにより、鋼板の延性が向上し冷間圧延工程での破断を抑制できる。また、上述したリジングの発生を軽減する効果も有する。
【0084】
熱延板焼鈍は、箱焼鈍および連続焼鈍のいずれの方法で実施してもよい。また、熱延板焼鈍の各種条件は特に限定されるものではなく、熱間圧延鋼板の鋼組成などにより適宜選択するものとする。
【0085】
6.その他の工程
本発明においては、上記均熱処理工程後に、一般的な方法に従って、有機成分のみ、無機成分のみ、あるいは有機無機複合物からなる絶縁皮膜を鋼板表面に塗布するコーティング工程を行うことが好ましい。環境負荷軽減の観点から、クロムを含有しない絶縁皮膜を塗布しても構わない。また、コーティング工程は、加熱・加圧することにより接着能を発揮する絶縁コーティングを施す工程であってもよい。接着能を発揮するコーティング材料としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはメラミン樹脂などを用いることができる。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例および比較例を例示して、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
下記の表3に示す鋼組成を有する連続鋳造スラブを、下記の表4に示す条件にて加熱して、粗熱間圧延を施し、仕上げ温度850℃、巻き取り温度550℃で仕上熱間圧延を行って、厚さが2.0mmの熱間圧延鋼板を得た。これらの熱間圧延鋼板に対して750℃で10時間保持する箱焼鈍による熱延板焼鈍を施し、一回の冷間圧延にて板厚0.35mmまで仕上げた。その後、均熱温度700℃の連続焼鈍による均熱処理を施し、鋼板の表面に平均厚さ0.4μmの絶縁皮膜をコーティングした。
【0088】
得られた鋼板について、磁気特性、機械特性および占積率を評価した。
機械特性は、圧延方向を長手方向としたJIS5号試験片を用いた引張試験を行い、降伏点:YP、引張強さ:TSにて評価した。
磁気特性および占積率については、JIS C 2550に準じて試験片を採取し、評価した。磁気特性としては、最大磁束密度:1.0T、励磁周波数:400Hzでの鉄損W10/400と磁化力5000A/mでの磁束密度B50とを測定した。また、占積率の評価については、98%以上をA、96%以上98%未満をB、96%未満をCとして、AおよびBは回転子の鉄心として使用可能レベルであり、特にAは表面性状に優れ占積率の高い鉄心であると判断した。
なお、スラブの平均等軸晶率は、上述した方法により測定した。
評価結果を表4に示す。
【0089】
【表3】


【0090】
【表4】


【0091】
鋼E、FおよびIを用いたNo.1-5, 1-6, 1-9, 1-16, 1-17, 1-20, 1-27, 1-28, 1-31, 1-38, 1-39, 1-42の鋼板は、Nb,Zr,TiおよびVの含有量が本発明範囲外であるため、いずれの条件においても機械特性が劣っており、回転子に要求される強度を確保することはできなかった。
また、鋼組成が上述の式(1)を満たす鋼A、BおよびGを用いたNo.1-1, 1-2, 1-7, 1-12, 1-13, 1-18, 1-23, 1-24, 1-29, 1-34, 1-35, 1-40の鋼板は、機械特性は良好であるものの、NbまたはTiの含有量が本発明の範囲外であるため、高い占積率を得ることができなかった。
さらに、鋼Jを用いたNo.1-10, 1-21, 1-32, 1-43の鋼板は、Nb,Zr,TiおよびVの含有量が本発明の範囲外であるため高い占積率を得ることができなかった。
また、鋼Hを用いたNo.1-8, 1-19, 1-30, 1-41の鋼板は、機械特性は良好であるものの、鋼組成が上述の式(1)を満足しないため高い占積率を得ることができなかった。
【0092】
さらに、鋼C、DおよびKを用いたNo.1-3, 1-4, 1-11, 1-14, 1-15, 1-22, 1-25, 1-26, 1-33, 1-36, 1-37, 1-44の鋼板は、機械特性は良好であるが、スラブ加熱条件および熱間圧延条件が本発明範囲を外れる場合には占積率が低下した。その中で、本発明の鋼組成である鋼C、DおよびKを用い、製造条件が本発明範囲内である鋼板は、平均等軸晶率25%以上で高い占積率が得られた。
【0093】
[実施例2]
下記の表5に示す鋼組成を有する連続鋳造スラブを1150℃に加熱し、粗熱間圧延での累積圧下率を86%とし、粗熱間圧延出側温度が980℃となるように粗熱間圧延を施し、仕上げ温度820℃、巻き取り温度580℃で仕上熱間圧延を行って、厚さが2.0mmの熱間圧延鋼板を得た。これらの熱間圧延鋼板に対して750℃または800℃で10時間保持する箱焼鈍、あるいは1000℃で60秒間保持する連続焼鈍による熱延板焼鈍を施し、一回の冷間圧延にて板厚0.35mmまで仕上げた。その後、下記の表6に示す種々の均熱温度で連続焼鈍による均熱処理を施し、鋼板の表面に平均厚さ0.4μmの絶縁皮膜をコーティングした。
【0094】
得られた鋼板について、磁気特性、機械特性および占積率を評価した。なお、いずれの鋼板もスラブの平均等軸晶率は25〜30%の範囲であった。
機械特性は、圧延方向を長手方向としたJIS5号試験片を用いた引張試験を行い、降伏点:YP、引張強さ:TSにて評価した。
磁気特性および占積率については、JIS C 2550に準じて試験片を採取し、評価した。磁気特性としては、最大磁束密度:1.0T、励磁周波数:400Hzでの鉄損W10/400と磁化力5000A/mでの磁束密度B50とを測定した。占積率の評価は、98%以上をA、96%以上98%未満をB、96%未満をCとして、AおよびBは回転子の鉄心として使用可能レベル、特にAは表面性状に優れ占積率の高い鉄心であると判断した。
評価結果を表6に示す。
【0095】
【表5】


【0096】
【表6】


【0097】
No.2-11の鋼板はSi含有量が高いために冷間圧延時に破断した。また、No.2-12の鋼板はAl含有量が高いために磁束密度が低かった。No.2-13の鋼板はP含有量が高いために冷間圧延時に破断した。さらに、No.2-14の鋼板はCおよびMnの含有量が高く、鋼組織がマルテンサイト組織であるために鉄損が著しく増大し、磁束密度も低かった。No.2-15の鋼板はNb,Zr,TiおよびVの含有量が本発明範囲の上限を超えているために冷間圧延時に破断した。No.2-16はNb含有量が多いため、占積率が低かった。
これに対して本発明で規定する鋼組成を満足するNo.2-1〜2-10の鋼板では、磁気特性、機械特性および占積率のいずれも優れていた。また、No.2-2〜2-9に示されるように、Cu,Ni,Cr,Mo,Co,W,Sn,Sb,Se,Bi,Ge,Te,B,Ca,MgおよびREMを適正量含有する場合には本発明の効果が得られることがわかった。さらに、No.2-10より、Ta,Hf,As,Au,Be,Zn,Pb,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,Ag,Cd,HgおよびPoの含有量が適正である場合にも本発明の効果が得られることがわかった。
これら実施例1および実施例2より、鋼組成および熱間圧延時の諸条件をともに本発明範囲とした場合にのみ、磁気特性、機械特性および占積率に優れた無方向性電磁鋼板が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】表1の鋼Aを用いた鋼板について、粗熱間圧延での累積圧下率と占積率との関係を示す図である。
【図2】表1の鋼Dを用いた鋼板について、粗熱間圧延での累積圧下率と占積率との関係を示す図である。




 

 


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