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発明の名称 熱間プレス用テーラードブランク材ならびに熱間プレス部材およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−154257(P2007−154257A)
公開日 平成19年6月21日(2007.6.21)
出願番号 特願2005−350787(P2005−350787)
出願日 平成17年12月5日(2005.12.5)
代理人 【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
発明者 西畑 敏伸 / 泰山 正則
要約 課題
テーラードブランク材に熱間プレスを施した場合にレーザ溶接部またはマッシュシーム溶接部にも十分な焼きが入り、これにより、溶接部の焼き入れ性が溶接される鋼板の焼き入れ性よりも低下することが事実上解消される熱間プレス用テーラードブランク材と、この熱間プレス用テーラードブランク材に熱間プレスを施すことにより、溶接部にも十分に焼きが入った熱間プレス部材を提供する。

解決手段
酸素含有量が0.005%以下であるレーザ溶接部またはマッシュシーム溶接部を備え、この溶接部により接合される複数枚の鋼板が、C:0.08%以上0.45%以下、Si:0.5%以下、Mn+Cr:0.5%以上3.0%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:1%以下、N:0.01%以下、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有する熱間プレス用テーラードブランク材である。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、酸素含有量が0.005%以下である溶接部を備え、該溶接部により接合された複数枚の鋼板が、いずれも、C:0.08〜0.45%、Si:0.5%以下、Mn+Cr:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:1%以下、N:0.01%以下、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする熱間プレス用テーラードブランク材。
【請求項2】
前記溶接部は、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部、スポット溶接部のうち、いずれかの溶接部である請求項1に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
【請求項3】
前記複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、B:0.01質量%以下を含有する請求項1または請求項2に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
【請求項4】
前記複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、Ni:2質量%以下および/またはCu:1質量%以下を含有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
【請求項5】
前記複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、質量%で、Nb:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびV:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材を、前記複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についてのAc点以上の温度とした後に熱間プレスを施し、該複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についての上部臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施すことを特徴とする熱間プレス部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された熱間プレス用テーラードブランク材が熱間プレスされた熱間プレス部材であって、前記溶接部の組織が2.0μm以上の旧オーステナイト平均粒径のマルテンサイトであることを特徴とする熱間プレス部材。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間プレス用テーラードブランク材ならびに熱間プレス部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、環境保全(軽量化)と安全をキーワードとして車両開発が行われている。特に車体に関しては、乗員の安全を確保しつつ燃費の向上を図るためにより一層の軽量化が推進されており、車体の素材、構造さらには組立て施工方法等の多方面から様々な検討が行われている。
【0003】
例えば、車体のプレス成形用素材であるテーラードブランク材に関しては、一般に、板厚や鋼種が異なる複数種の鋼板を、レーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接またはスポット溶接により接合して所望の大きさとしたものが多用される。これは、強度が必要な部分にのみ高張力鋼板や板厚が大きい鋼板を配置し、耐食性が必要な部分にのみ防錆鋼板を配置し、その他の部分には軟鋼や板厚が小さい鋼板を配置する等によって、所望の特性を得ながら大幅なコスト低減を図れるからである。また、レーザ溶接またはマッシュシーム溶接を用いるのは、接合強度、溶接する鋼板の寸法や作業効率さらには作業コスト等の観点からである。近年では、このテーラードブランク材を、車体のみならず例えば足廻り部品等の厚物部品に用いることも検討されている。
【0004】
テーラードブランク材は、通常、冷間プレスによって所望の部品形状に成形される。しかし、冷間プレスには、冷間プレス後の強度管理が困難であること、壁そりやスプリングバック等を生じること、さらには、冷間プレスによって材質や板厚の変化が集中する溶接部位又はその近傍に歪みが集中して冷間プレス後の製品の一部に割れやしわが発生するといった成形不良を生じることという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1には、焼入れ可能な温度域で熱間プレスを行ってテーラードブランク材を成形することにより、上述した冷間プレスにより成形することに起因した問題を解決する発明が、開示されている。
【特許文献1】特開2004−58082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、熱間プレスは、プレス成形とともに焼入れ処理を施すことを目的とするため、プレス部材全体に焼きが入ることが要求される場合が多い。しかしながら、1枚の鋼板からなるブランク材に熱間プレスを施す場合とは異なり、複数枚の鋼板がレーザ溶接またはマッシュシーム溶接により接合されたテーラードブランク材に熱間プレスを施す場合には、テーラードブランク材を構成する複数枚の鋼板のいずれにも焼きが入る条件で熱間プレスを施したとしても、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接部については十分に焼きが入らずに所望の強度が得られない場合があることが、本発明者らの検討により初めて明らかとなった。
【0007】
本発明は、複数枚の鋼板がレーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接部またはスポット溶接部により接合されたテーラードブランク材に熱間プレスを施した場合に、各溶接部にも十分な焼きが入るテーラードブランク材を提供するとともに、各溶接部にも十分な焼きが入った熱間プレス部材とその製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述したように、テーラードブランク材を構成する複数枚の鋼板は、代表的には、レーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接部またはスポット溶接により接合される。これらの溶接法では、いずれも、大気中で行われることや冷却速度が速いことに起因して、例えばサブマージドアーク溶接等の他の溶接方法に比較して、溶接部に多量の酸素が過飽和に固溶する。
【0009】
このような認識のもと、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、テーラードブランク材に熱間プレスを施した際における溶接部の焼入れ性が、溶接される鋼板の焼入れ性よりも低下する原因は、溶接部に多量に混入する酸素が微細な酸化物を形成し、熱間プレスに先立つ加熱工程においてオーステナイト粒の粒成長を著しく阻害することにあることを知見した。
【0010】
そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、これまではレーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接部またはスポット溶接のために酸素含有量が高いままで熱間プレスに供されていた、テーラードブランク材の溶接部の酸素含有量を、これまでにない程度に低く抑制することによって、溶接部の焼入れ性が溶接される鋼板の焼入れ性よりも低下することを解消できることを知見して、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、酸素含有量が0.005%以下(本明細書では特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味する)である溶接部を備え、この溶接部により溶接された複数枚の鋼板が、いずれも、C:0.08%以上0.45%以下、Si:0.5%以下、Mn+Cr:0.5%以上3.0%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:1%以下、N:0.01%以下、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする熱間プレス用テーラードブランク材である。
【0012】
この本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材では、溶接部がレーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接部である。
これらの本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材では、複数枚の鋼板のうち少なくとも一の鋼板が、さらに、(i)B:0.01%以下を含有すること、(ii)Ni:2%以下および/またはCu:1%以下を含有すること、(iii)Nb:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびV:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することの少なくとも一を満足することが望ましい。
【0013】
別の観点からは、本発明は、上述した本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材を、複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についてのAc点以上の温度とした後に熱間プレスを施し、これら複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についての上部臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施すことを特徴とする熱間プレス部材の製造方法である。
【0014】
さらに別の観点からは、本発明は、上述した本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材が熱間プレスされた熱間プレス部材であって、溶接部の組織が2.0μm以上の旧オーステナイト平均粒径のマルテンサイトであることを特徴とする熱間プレス部材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、複数枚の鋼板が例えばレーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接またはスポット溶接により接合されたテーラードブランク材に熱間プレスを施した場合に溶接部にも十分な焼きが入り、これにより、溶接部の焼入れ性が溶接された鋼板の焼き入れ性よりも低下することを事実上解消できる熱間プレス用テーラードブランク材を提供できる。
【0016】
また、この本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材に熱間プレスを施すことにより、この溶接部にも十分に焼きが入った熱間プレス部材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材ならびに熱間プレス部材およびその製造方法を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。はじめに、(1)熱間プレス用テーラードブランク材を構成する複数枚の鋼板の組成と、(2)溶接部の酸素含有量及び熱間プレス後の組織を限定する理由を説明してから、(3)熱間プレス用テーラードブランク材に対する熱間プレス条件を説明する。
【0018】
(1)複数枚の鋼板それぞれの組成
C:0.08%以上0.45%以下
Cは、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を決定する非常に重要な元素である。この効果を得るために、少なくとも0.08%以上含有させる。一方、C含有量が0.45%を超えると、強度が高くなり過ぎるために熱間プレス部材として要求される靱性が劣化する。そこで、本発明では、C含有量を0.08%以上0.45%以下と限定する。より望ましいC含有量の下限は0.15%であり、上限は0.33%である。
【0019】
Mn+Cr:0.5%以上3.0%以下
MnおよびCrは、いずれも、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するために非常に有効な元素である。MnおよびCrの合計含有量(以下、「(Mn+Cr)含有量」ともいう。)が0.5%未満ではこの効果が十分ではなく、一方、(Mn+Cr)含有量が3.0%を超えるとこの効果は飽和して、逆に安定した強度確保が困難となる。そこで、本発明では(Mn+Cr)含有量は0.5%以上3.0%以下と限定する。より望ましい(Mn+Cr)含有量の下限は0.8%であり、上限は2.0%である。
【0020】
Si:0.5%以下、Al:1%以下、N:0.01%以下
Si、Al、Nは、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に有効な元素である。しかし、上述した上限値を超えて含有させてもその効果はかわらず、コストの増加を招くこととなる。そこで、本発明では、Si:0.5%以下、Al:1%以下、N:0.01%以下と限定する。
【0021】
P:0.05%以下、S:0.05%以下
P、Sは、上述した上限値を超えると熱間プレス部材の靱性を大きく劣化させる。そこで、本発明では、P:0.05%以下、S:0.05%以下と限定する。
【0022】
さらに、本発明では、熱間プレス用テーラードブランク材を構成する複数枚の鋼板の少なくとも一が、以下に説明する元素を任意添加元素として含有してもよいので、これらの任意添加元素についても説明する。
【0023】
B:0.01%以下
Bは、焼入れ性を大幅に高め、かつ焼入れ後の強度を安定して確保することをさらに高めるのに有効な任意添加元素である。また、粒界に偏析して粒界強度を高め、熱間プレス部材の靱性を改善させる点でも有効な元素である。しかし、B含有量が0.01%を超えるとその効果は飽和し、かつコストの増加を招く。そこで、Bを添加する場合には、その含有量は0.01%以下とすることが望ましい。より望ましいB含有量の下限は0.001%であり、上限は0.0030%である。
【0024】
Ni:2%以下および/またはCu:1%以下
Ni、Cuは、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に有効な任意添加元素であるので、1種または2種を含有させることができる。しかし、Ni、Cuを上述した上限値を超えて含有させてもその効果は小さく、かつコストの増加を招く。そこで、Ni、Cuを添加する場合には、その含有量はNi:2%以下、Cu:1%以下と限定することが望ましい。より望ましい含有量は、Ni:0.01%以上1%以下、Cu:0.01%以上0.5%以下である。
【0025】
Nb:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびV:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上
これらの元素は、焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の強度の安定確保に有効な任意添加元素であるので、1種または2種以上を含有させることができる。しかし、それぞれの元素の含有量が1.0%を超えるとその効果は飽和し、コストの増加を招くだけとなる。そこで、Nb、Ti、Mo、Vを添加する場合には、その含有量はNb:1.0%以下、Ti:1.0%以下、Mo:1.0%以下、V:1.0%以下とすることが望ましい。
【0026】
より望ましいNb含有量は0.01%以上0.2%以下であり、さらに望ましくは0.02%以上0.15%以下である。また、より望ましいTi含有量は0.005%以上0.2%以下であり、さらに望ましくは0.01%以上0.15%以下である。また、より望ましいMo含有量は0.01%以上0.2%以下であり、さらに望ましくは0.02%以上0.15%以下である。また、より望ましいV含有量は0.01%以上0.2%以下であり、さらに望ましくは0.02%以上0.15%以下である。
【0027】
本実施の形態の熱間プレス用テーラードブランク材を構成する鋼板の上記以外の組成は、Feおよび不純物である。
例えばレーザ溶接部またはマッシュシーム溶接部により接合される、熱間プレス用テーラードブランク材を構成する複数枚の鋼板の組成は、上述した組成を満足するものであればよく、各鋼板の組成が同一であっても構わないし、または相違していても構わない。また、後加工等の観点から、熱間プレス用テーラードブランク材に意図的に焼きが入らない部位を形成する場合や、部材強度等の観点から焼入れを要しない部位のコスト低減を図る場合に、上述した複数枚の鋼板にさらに、焼入れ性を有しない鋼板や焼入れ性が劣る鋼板等の他の鋼板を接合することがあるが、このような場合には、当該他の鋼板が、上述した組成を満足する必要がないことはいうまでもない。
【0028】
(2)溶接部の酸素含有量、及び熱間プレス後の組織
酸素含有量:0.005%以下、熱間プレス後の組織:旧オーステナイト平均粒径が2.0μm以上のマルテンサイト
上述したように、テーラードブランクを製造する際に用いられる溶接方法は、主に、レーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接部またはスポット溶接であり、本実施の形態でもいずれかの溶接方法を用いた例について説明する。これらの溶接法を用いると、大気中で溶接が行われることや冷却速度が速いことに起因して、溶接部には、溶接される鋼板に含まれるよりも多量の酸素が過飽和に固溶する。すなわち、一般的に溶接では、溶接部への酸素の混入をできるだけ阻止するための各種対策が講じられることは周知であるが、テーラードブランクの製造時の溶接は、接合強度、その寸法や作業効率、さらには作業コスト等の観点から、事実上レーザ溶接、マッシュシーム溶接、プラズマ溶接部またはスポット溶接に限られており、これらの溶接法を用いると、大気中で溶接が行われることや冷却速度が速いことから不可避的に、溶接部に多量の酸素が過飽和に固溶する。しかし現状では、テーラードブランクの溶接部に関し、上述した溶接部への酸素の混入をできるだけ阻止するという観点からは、各種対策が取られていない。
【0029】
この状態から熱間プレス時の加熱に供されると、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接には微細な酸化物が多量に析出するため、オーステナイト粒の粒成長が強力に抑制され、オーステナイト粒が非常に微細化する。
【0030】
そして、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接の酸素含有量が0.005%を超えると、熱間プレス時の加熱によりオーステナイト平均粒径が2.0μmよりも小さくなり、その後の冷却において、フェライト拡散変態の駆動力が非常に大きくなるために焼入れ性が低下し、マルテンサイト変態が抑制されてしまう。
【0031】
このため、本発明では、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接の酸素含有量を0.005%以下と限定するとともに、熱間プレス後の組織を、旧オーステナイト平均粒径が2.0μm以上のマルテンサイトと限定する。より望ましいレーザ溶接部またはマッシュシーム溶接部の酸素含有量は0.004%以下であり、さらに望ましくは0.003%以下である。また、熱間プレス後の組織は、旧オーステナイト平均粒径が2.5μm以上のマルテンサイトであり、さらに望ましくは旧オーステナイト平均粒径が3.0μm以上のマルテンサイトである。
【0032】
なお、本発明におけるマルテンサイトには、フェライト、残留オーステナイト、ベイナイト及びセメンタイトがあわせて10体積%未満含まれていても何ら差し支えない。
レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接の酸素含有量を0.005%以下に抑制するには、例えば、溶接速度を通常の溶接速度よりも高く設定したり、アシストガスやシールドガス中の酸素濃度を低下させるといった、周知慣用の手段によればよいので、これ以上の説明は省略する。
【0033】
また、後加工等の観点から、熱間プレス用テーラードブランク材に意図的に焼きが入らない部位を形成する場合や、部材強度等の観点から焼入れを要しない部位のコスト低減を図る場合に、上述した複数枚の鋼板にさらに、焼入れ性を有しない鋼板や焼入れ性が劣る鋼板等の他の鋼板が溶接されることがあるが、このような場合には、当該他の鋼板が溶接されてなるレーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接部の酸素含有量が上述した範囲にある必要はなく、また熱間プレス後の組織が上述した組織である必要もないことはいうまでもない。
【0034】
(3)熱間プレス条件
本実施の形態では、上述した本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材を、複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についてのAc点以上の温度とした後に熱間プレスを施し、これら複数枚の鋼板のうちすべての鋼板についての上部臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施すことにより、所望のマルテンサイト組織とする。
【0035】
熱間プレス部材のマルテンサイト化を図るためには、Ac点以上の温度とした後に上部臨界冷却速度以上で冷却する必要があるからである。本発明においては、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接の焼入れ性が溶接される鋼板の焼入れ性よりも低下することを抑制するため、溶接部により接合される複数枚の鋼板のすべてについてのAc点以上の温度とした後にこれらすべての鋼板について上部臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却すればよい。
【0036】
熱間プレスに先立つ昇温速度については、特に規定はしないが、通常は平均昇温速度で1℃/s以上100℃/s以下である。また、Ac点以上の温度とした後には、オーステナイト化を十分図るため、1分間以上の保持時間を設けることが好ましい。また、上部臨界冷却速度以上の冷却速度を得る手段としては、水冷、油冷、金型による冷却等といった、公知の手段を用いればよい。
【0037】
なお、後加工等の観点から意図的に焼きが入らない部位を形成する場合や、部材強度等の観点から焼き入れを要しない部位のコスト低減を図る場合には、上述した複数枚の鋼板に焼き入れ性を有しない鋼板や焼き入れ性に劣る鋼板等の他の鋼板が溶接されることもあるが、かかる場合には当該他の鋼板についてはAc点以上の温度とする必要はないし、当該他の鋼板についての上部臨界冷却速度以上で冷却する必要もない。
【0038】
このようにして、上述した本発明にかかる熱間プレス用テーラードブランク材が熱間プレスされた熱間プレス部材であって、レーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接部の組織が2.0μm以上の旧オーステナイト平均粒径のマルテンサイトである、本発明にかかる熱間プレス部材が製造される。
【0039】
本実施の形態により、複数枚の鋼板がレーザ溶接部、マッシュシーム溶接部、プラズマ溶接部またはスポット溶接部により接合されたテーラードブランク材に熱間プレスを施した場合に、溶接部にも十分な焼きが入り、これにより、溶接部の焼き入れ性が、溶接される鋼板の焼き入れ性よりも低下することを事実上解消できるとともに、この熱間プレス用テーラードブランク材に熱間プレスを施すことにより、溶接部にも十分に焼きが入った熱間プレス部材を製造することができる。
【実施例1】
【0040】
さらに、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼板(板厚:2.0mm)を素地鋼板とした。これらの鋼板は、実験室で溶製したスラブを、熱間圧延または熱間圧延後に酸洗を行い冷間圧延により製造した鋼板である。さらに、めっきシミュレータを用いて、鋼種No.3には溶融亜鉛めっき(片面あたりのめっき付着量は60g/m)、鋼種No.4にはAlめっき(片面あたりのめっき付着量は120g/m)を施した。さらに、鋼種No.3には合金化処理(めっき皮膜中のFe含有量は15質量%)を行った。めっきシミュレータにおける焼鈍温度は800℃であり、800℃からM点までの平均冷却速度は5℃/sとした。これ以外の鋼板は、熱間圧延及び酸洗したもの、または冷間圧延まま(フルハード)で試験に供した。
【0041】
これらの鋼板から、厚さ2.0mm、幅100mm及び長さ300mmの試験片を切り出し、図1に示すように突合せてYAGレーザ溶接を行った。溶接条件は、レーザ出力4kW、溶接速度2.5〜6m/min、アシストガスAr+3体積%O、焦点位置:鋼板表面とし、貫通条件で行った。
【0042】
その後、図1に示す、厚さ2.0mm、幅20mm及び長さ200mmに切断し、焼鈍シミュレータを用いて、図2に示すヒートパターンで熱間プレス熱履歴相当の熱処理を施した。得られた部材について、断面組織観察、切断法による旧オーステナイト平均粒径測定及びビッカース硬さ測定を行った。
【0043】
テーラードブランク熱間プレス材としての合否判定は、熱処理後の溶接部硬さが、熱処理後の母材部硬さの90%以上有するものを合格とした。また、異種鋼板でのテーラードブランク熱間プレス材の場合は、熱処理後に一方の母材よりも低強度となる母材硬さと比較して、熱処理後の溶接部硬さが母材硬さの90%以上有するものを合格とした。
【0044】
なお、各鋼板のAc点及び上部臨界冷却速度は、以下の方法で測定した。すなわち、熱延鋼板から、図3に示す直径3.0mm、長さ10mmの円柱試験片を切り出し、大気中で900℃まで10℃/sの昇温速度で加熱し、その温度で5分間保持した後、種々の冷却速度で室温まで冷却した。そのときの加熱または冷却中の試験片の熱膨張変化を測定することにより、Ac点、M点を測定した。また、得られた試験片のビッカース硬度測定(荷重49N、測定数:3)及び組織観察を行い、それらの結果から上部臨界冷却速度を見積もった。
【0045】
表2に示すように、比較例の溶接部は本発明例よりも酸素濃度が高く、旧オーステナイト粒径も小さい。さらに比較例の溶接部硬さは、母材部硬さよりもはるかに低い値になっていることがわかる。
【0046】
また比較の一例として、表2中のNo.3及びNo.9の熱処理後の旧オーステナイト粒観察結果を図4に示す。この写真からも、本発明の効果は明らかである。
【0047】
【表1】


【0048】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】溶接用試験材及び熱処理試験片を示す説明図である。
【図2】熱間プレスの模擬ヒートパターンを示す説明図である。
【図3】Ac点及び上部臨界冷却速度測定用試験片を示す説明図である。
【図4】試料No.3、9の断面組織観察結果を示す金属組織写真である。




 

 


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