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発明の名称 クロムフリープレコート鋼板
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−119858(P2007−119858A)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
出願番号 特願2005−314060(P2005−314060)
出願日 平成17年10月28日(2005.10.28)
代理人 【識別番号】100108800
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 哲郎
発明者 高橋 克 / 松本 雅充 / 吉岡 明人 / 竹林 美樹 / 河村 保明 / 壱岐島 健司 / 平山 三千夫 / 芦田 正
要約 課題
うら面として使用される側にも耐食性を備え、および/又は加工性の優れたプレコート鋼板および該プレコート鋼板の製造方法を提供する。

解決手段
亜鉛系めっき鋼板11aの両面にクロムフリー下地処理13、16が設けられ、おもて面である一方の面には、下地処理13の上にポリエステル系樹脂および/又はエポキシ変性ポリエステル系樹脂をバインダーとしイオン交換型酸化物防錆顔料又はリン酸系防錆顔料の少なくとも一種を含有している下塗り塗膜層14が設けられ、さらに該下塗り塗膜層の上層に1層以上の上塗り塗膜層15が設けられているとともに、うら面である他方の面にも、ポリエステル系樹脂および/又はエポキシ変性ポリエステル系樹脂をバインダーとしイオン交換型酸化物防錆顔料又はリン酸系防錆顔料の少なくとも一種を含有している下塗り塗膜層17が設けられ、さらに該下塗り塗膜層の上層に1層以上の上塗り塗膜層18が設けられる。
特許請求の範囲
【請求項1】
両面にクロムフリー下地処理が施された亜鉛系めっき鋼板の、
おもて面である一方の面には、ポリエステル系樹脂および/又はエポキシ変性ポリエステル系樹脂をバインダーとし、イオン交換型酸化物防錆顔料又はリン酸系防錆顔料の少なくとも一種を含有している下塗り塗膜層が設けられ、さらに該下塗り塗膜層の上層に1層以上の上塗り塗膜層が設けられているとともに、
うら面である他方の面にも、ポリエステル系樹脂および/又はエポキシ変性ポリエステル系樹脂をバインダーとし、イオン交換型酸化物防錆顔料又はリン酸系防錆顔料の少なくとも一種を含有している下塗り塗膜層が設けられ、さらに該下塗り塗膜層の上層に1層以上の上塗り塗膜層が設けられていることを特徴とするプレコート鋼板。
【請求項2】
請求項1に記載のプレコート鋼板であって、前記おもて面の前記下塗り塗膜層のバインダーである樹脂の平均分子量が5000以上25000以下で、かつ該バインダー樹脂のガラス転移温度が10℃以上40℃以下であることを特徴とするプレコート鋼板。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載のプレコート鋼板であって、前記下塗り塗膜層に含有される前記防錆顔料の平均粒径が30μm以下であることを特徴とするプレコート鋼板。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプレコート鋼板であって、前記おもて面の前記下塗り塗膜層中の防錆顔料が、該下塗り塗膜層の付着量に対して、15質量%以上50質量%以下で含有されていることを特徴とするプレコート鋼板。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のプレコート鋼板であって、前記おもて面の前記下塗り塗膜層の付着量が3g/m以上30g/m以下であることを特徴とするプレコート鋼板。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のプレコート鋼板であって、前記うら面の前記下塗り塗膜層の付着量が3g/m以上でかつ前記上塗り塗膜層の付着量が3g/m以上であることを特徴とするプレコート鋼板。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のプレコート鋼板であって、前記クロムフリー下地処理がシランカップリング剤、シリカ、Ti塩、Zr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂とを主成分とする有機無機複合処理であることを特徴とするプレコート鋼板。
【請求項8】
請求項7に記載のプレコート鋼板を製造する方法であって、亜鉛系めっき鋼板の両面に、pH13以上のアルカリ性水溶液又はpH1.5〜4.0の酸性水溶液を接触させた後、水洗し乾燥させ、その後、シランカップリング剤、シリカ、Ti塩およびZr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂とを主成分とする有機無機複合処理を施し、次いで、下塗り塗膜層を形成し、さらに上塗り塗膜層を形成するプレコート鋼板の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のプレコート鋼板を製造する方法であって、亜鉛系めっき鋼板の両面に、Ni、Co、Feを含有する水溶液を接触させた後、水洗し乾燥させ、その後、シランカップリング剤、シリカ、Ti塩およびZr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂とを主成分とする有機無機複合処理を施し、次いで、下塗り塗膜層を形成し、さらに上塗り塗膜層を形成するプレコート鋼板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のプレコート鋼板の製造方法であって、Ni、Co、Feを含有する水溶液に接触させることにより、亜鉛めっき鋼板の表面にNi、Co、Feを2mg/m以上10mg/m以下で付着させることを特徴とするプレコート鋼板の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし7のいずれかに記載のプレコート鋼板を用いて筐体状に加工された加工品であって、該プレコート鋼板のおもて面を筐体外面側に、うら面を内面側に向けて加工されたことを特徴とする加工品。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はエアコン室外機や洗濯機あるいは給湯器、自動販売機、電源ボックスなどの屋外あるいは半屋外で使用されるプレコート鋼板に関するもので、優れた加工性、耐食性を有し、クロムを含まないプレコート鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
プレコート鋼板(以下、PCMと記述することがある。)は、その機能性により多くの用途を有し、様々な工業製品に適用されている。その適用例として例えばエアコン室外機の筐体を挙げることができる。
【0003】
このように利用されるPCMの従来における断面構造の模式図を図2に示す。図2では紙面上側がおもて面(意匠面)、紙面下側がうら面(非意匠面)である。例えばエアコンの室外機に適用された場合には、おもて面が室外機の外側に現れ、うら面が室外機の内側に配置される。従来のPCMでは、鋼板21の表裏面にめっき皮膜層22、22が設けられている。この鋼21にめっき皮膜層22、22が設けられた鋼板がいわゆるめっき鋼板である。さらに、めっき皮膜層22、22の外側にはクロム系下地処理23、23が形成されていた。そしておもて面側のクロム系下地処理23の外側には下塗り塗膜層24、さらにその外側には上塗り塗膜層25が設けられていた。一方裏面には、サービスコート層29が1層、クロム系下地処理23の外側に設けられているのみであった。ここで、クロム系下地処理23、23および下塗り塗装層(プライマ)24には6価クロムが使用され、場合によってはサービスコート層29にも6価クロムが含まれていた。
【0004】
かかる状況において、近年、環境規制への対応から、PCMもクロムフリー化が要望されている。PCMをクロムフリー化するにあたっては、塗装下地処理(従来はクロメート処理)および下塗り塗装層(プライマ、従来クロム系防錆顔料を含有)の両方をクロムフリー化することが必要である。
【0005】
そしてかかる要望に対し、クロムフリーPCMについては、例えば特許文献1〜8のような従来技術が開示されている。
【0006】
特許文献1および2には、タンニン酸等を含有するクロムフリー化成処理を施した後、リン酸塩系防錆顔料(又はさらにカルシウム交換性シリカ等)を含む下塗り塗膜層を設ける技術が開示されている。また、特許文献3および4には、防錆顔料としてCaイオン交換シリカとリン酸系防錆顔料とを含む下塗り塗膜層を設ける技術が開示されている。特許文献5には、リン酸系防錆顔料としてZn Mg変性リン酸塩を含有する下塗り塗膜層を設ける技術が開示されている。
【0007】
さらに特許文献6および7にはリン酸系防錆顔料と、好ましくは湿式シリカとを含む下塗り塗膜層を設ける技術が開示され、特許文献8にはバナジン酸塩系顔料とリン酸塩系顔料とシリカとを含む下塗り塗膜層を設ける技術が開示されている。
【0008】
よって、以上のようなクロムフリー化された下地処理や下塗り塗装層が図2に示した構成で従来のPCMに使用されていた。
【0009】
【特許文献1】特開2001−89868号公報
【特許文献2】特開2003−166079号公報
【特許文献3】特開2004−175096号公報
【特許文献4】特開2001−212506号公報
【特許文献5】特開平9−12931号公報
【特許文献6】特開平5−208166号公報
【特許文献7】特開平5−317806号公報
【特許文献8】特開平7−51620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、このようなクロムフリーPCMが、上述の例えばエアコン室外機に使用された場合、従来のクロム含有PCMではほとんど起こらなかった、室外機内面での錆が発生しやすいという問題があることがわかった。すなわち、屋外に設置されたエアコン室外機においては、通気口を通じて塩分等外部の腐食因子が室外機内に進入し、それが筐体内面(PCMとしては非意匠面、以下「うら面」と記述することがある。)に付着する。筐体内面では、雨等で塩分等が洗い流されることがなく、乾燥した塩分等が濃縮する。このような意味で筐体内面と筐体外面(PCMとしては意匠面、以下「おもて面」と記述することがある。)とは腐食環境が異なるため、腐食(例えば錆)の発生状況も異なる。前述のように、従来のクロム含有PCMでは、うら面には、下地処理としてのクロメート処理後、サービスコートと呼ばれる1層の塗膜層が形成されるのが通常である(このサービスコートには、クロム系の防錆顔料が含まれることが多い。)従来のクロム含有PCMでは、このようなうら面の構造で、筐体内面の耐食性(以下、内面耐食性と記述することがある)が問題となることがほとんどなかった。そのため、PCMではおもて面(意匠面)の性能の方が重要であることもあり、クロムフリー化の検討に際しても、うら面の耐食性(内面耐食性)の検討はほとんどなされてこなかった。ところが、クロムフリーPCMの屋外暴露試験を行うと、おもて面の性能は実用レベルにあるものであっても、内面耐食性はクロム含有PCMと比較して劣ることが問題となった。
【0011】
さらには、PCMはコイルから切り出しブランクを作成した後、それが所望の形状に形成される。PCMでは、通常、加工品の外部に端面が露出しないようにPCMの端部が折り曲げ加工される。この折り曲げ加工は、未加工の平板部を折り曲げるにとどまらず、絞り加工を受けた部位をさらに折り曲げ加工される場合もある。ところがクロムフリー化された下地処理では、このような部位で、特におもて面の塗膜層の割れや剥離が生じるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明ではうら面として使用される側にも耐食性を備え、および/又は加工性の優れたプレコート鋼板および該プレコート鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は鋭意検討の結果以下のような着想を得て具体化することにより本発明を完成させた。
(1)従来サービスコートと呼ばれ1層の塗膜層が設けられているうら面も、おもて面と同様に、防錆顔料が含まれる塗膜層を下層として設け、さらに上層に1層以上を設ける複数層構造とする。
(2)おもて面の下塗り塗膜層は次のように構成する。
・バインダー樹脂として、硬度と加工性(延性)とのバランスに優れた樹脂を用いる。
・防錆顔料の平均粒径は、クロムフリー系の顔料の平均粒径を小さくすることで加工性が向上する。
・防錆顔料の含有量を所定範囲以下に抑える(このとき端面耐食性が劣る場合は、おもて面に比較してうら面の防錆顔料の含有量が多くてもよい。)。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0014】
請求項1の発明は、両面にクロムフリー下地処理(13、16)が施された亜鉛系めっき鋼板(11a)の、おもて面である一方の面には、ポリエステル系樹脂および/又はエポキシ変性ポリエステル系樹脂をバインダーとし、イオン交換型酸化物防錆顔料又はリン酸系防錆顔料の少なくとも一種を含有している下塗り塗膜層(14)が設けられ、さらに該下塗り塗膜層の上層に1層以上の上塗り塗膜層(15)が設けられているとともに、うら面である他方の面にも、ポリエステル系樹脂および/又はエポキシ変性ポリエステル系樹脂をバインダーとし、イオン交換型酸化物防錆顔料又はリン酸系防錆顔料の少なくとも一種を含有している下塗り塗膜層(17)が設けられ、さらに該下塗り塗膜層の上層に1層以上の上塗り塗膜層(18)が設けられていることを特徴とするプレコート鋼板(10)を提供することにより前記課題を解決する。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプレコート鋼板(10)であって、おもて面の前記下塗り塗膜層(14)のバインダーである樹脂の平均分子量が、5000以上25000以下で、かつ該バインダー樹脂のガラス転移温度が10℃以上40℃以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2のいずれかに記載のプレコート鋼板(10)であって、下塗り塗膜層(14、17)に含有される防錆顔料の平均粒径が30μm以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のプレコート鋼板(10)であって、おもて面の下塗り塗膜層(14)中の防錆顔料が、該下塗り塗膜層の付着量に対して、15質量%以上50質量%以下で含有されていることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のプレコート鋼板(10)であって、おもて面の下塗り塗膜層(14)の付着量が3g/m以上30g/m以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のプレコート鋼板(10)であって、うら面の下塗り塗膜層(17)の付着量が3g/m以上でかつ上塗り塗膜層(18)の付着量が3g/m以上であることを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のプレコート鋼板(10)であって、クロムフリー下地処理(13、16)がシランカップリング剤、シリカ、Ti塩、Zr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂とを主成分とする有機無機複合処理であることを特徴とする。
【0021】
ここで「主成分」とは、構成成分中において最も多く含まれる成分をいい、本発明では、シランカップリング剤、シリカ、Ti塩、Zr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂との固形分の合計が下地処理の固形分全体に対して、好ましくは70質量%、より好ましくは90質量%である。
【0022】
請求項8の発明は、請求項7に記載のプレコート鋼板(10)を製造する方法であって、亜鉛系めっき鋼板(11a)の両面に、pH13以上のアルカリ性水溶液又はpH1.5〜4.0の酸性水溶液を接触させた後、水洗し乾燥させ、その後、シランカップリング剤、シリカ、Ti塩およびZr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂とを主成分とする有機無機複合処理を施し、次いで、下塗り塗膜層(14、17)を形成し、さらに上塗り塗膜層(15、18)を形成するプレコート鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のプレコート鋼板(10)を製造する方法であって、亜鉛めっき鋼板(11a)の両面に、Ni、Co、Feを含有する水溶液を接触させた後、水洗し乾燥させ、その後、シランカップリング剤、シリカ、Ti塩およびZr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂とを主成分とする有機無機複合処理を施し、次いで、下塗り塗膜層(14、17)を形成し、さらに上塗り塗膜層(15、18)を形成するプレコート鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のプレコート鋼板(10)の製造方法であって、Ni、Co、Feを含有する水溶液に接触させることにより、亜鉛めっき鋼板(11a)の表面にNi、Co、Feを2mg/m以上10mg/m以下で付着させることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載のプレコート鋼板(10)を用いて筐体状に加工された加工品であって、該プレコート鋼板のおもて面を筐体外面側に、うら面を内面側に向けて加工されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非意匠面の耐食性が良好で、加工性の優れたプレコート鋼板が得られるので、エアコン室外機や洗濯機等の、屋外で使用されるような家電製品等に有用である。
【0027】
本発明のこのような作用および利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良の形態、およびその限定理由を説明する。
【0029】
図1は、1つの実施形態にかかる本発明のプレコート鋼板10の断面を模式的に示した図である。図1では紙面上側がおもて面、紙面下側がうら面である。プレコート鋼板10は、鋼板11と該鋼板11の表裏両面に亜鉛めっき層12、12とを備えている。この鋼板11と亜鉛めっき層12、12により、いわゆる亜鉛めっき鋼板11aが形成されている。そして、おもて面側の亜鉛めっき層12からさらにおもて面側に向かってクロムフリー下地処理13と、下塗り塗膜層14と、上塗り塗膜層15とがこの順に積層されている。ここで、下塗り塗膜層14は、バインダーと防錆顔料とを含有している。
【0030】
一方、うら面側の亜鉛めっき層12には、うら面に向かってクロムフリー下地処理16と、下塗り塗膜層17と、上塗り塗膜層18とがこの順に積層されている。ここで、下塗り塗膜層17は、バインダーと防錆顔料を含有している。
【0031】
次に各層について説明する。
<亜鉛めっき鋼板>
下地鋼板となる亜鉛系めっき鋼板11aとしては、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛合金めっき鋼板、溶融Zn-A1合金めっき鋼板(例えば、溶融Zn-5質量%A1合金めっき鋼板、溶融Zn-55質量%A1合金めっき鋼板に代表される溶融Zn-A1合金めっき鋼板)等の各種亜鉛系めっき鋼板を用いることができる。めっき種や付着量は要求される耐食性に応じて決定すればよい。但し本発明の課題である加工性の観点では延性良好な亜鉛めっきが有効であり、Alなどの合金の少ない溶融亜鉛めっき(通常Alが0.3〜0.4質量%程度)鋼板又は電気亜鉛めっき鋼板などが好ましく使用される。
【0032】
なお絞り加工等の厳しい加工が要求される用途には、鋼板自体の加工性が良いことが望ましい。例えば極低炭素鋼を用いて、高EL値かつ高r値に調整された鋼板を用いることが望ましい。
【0033】
<下地処理>
下地処理16はクロムフリーの処理とする。このために例えば、従来より使用されているリン酸亜鉛処理等を使用することができるが、シランカップリング剤、シリカ、Ti塩、Zr塩より選ばれる1種又は複数の物質と樹脂とを主成分とする有機無機複合処理によるものが特に好ましい。このような有機無機複合クロムフリー処理としては、例えば日本ペイント(株)製EC-2000によるもの等を挙げることができる。有機無機複合処理の好ましい組成としては、シランカップリング剤20〜60質量%、シリカ10〜60質量%、Ti塩1〜30質量%、Zr塩1〜30質量%、樹脂1〜50質量%である。付着量としては、塗膜層の密着性や耐食性の観点からは10mg/m以上が好ましく、通常30mg/m程度である。多すぎるとかえって密着性を低下させるので、200mg/m以下が好ましい。
【0034】
なお、上記有機無機複合処理を下地処理として適用する場合、該下地処理に先立って、亜鉛めっき層表面にいわゆる表面調整処理を施すことが好ましい。表面調整処理としては、pH1.5〜4.0の酸性水溶液、又はpH13以上のアルカリ性水溶液に接触させる方法や、より好ましくはNi、Co、Feを含む水溶液を亜鉛めっき層表面に接触させる方法が挙げられる。本発明のようにクロムフリーPCMでかつ高加工条件下で用いる場合は、Ni、Co、Feを金属換算で2mg/m以上10mg/m以下で形成させる処理が好ましい。
【0035】
<下塗り塗膜層>
前述の塗装下地処理を鋼板の表裏面に形成した後、両面に下塗り塗膜層14、17を設ける。下塗り塗膜層14、17は、おもて面/うら面で同じ塗料から形成した塗膜層であってもよいが、本発明の範囲内であれば同じでなくてもよい。例えば後述するように表裏面で防錆顔料の含有量を変更してもよい。
【0036】
下塗り塗膜層14、17に含有されるバインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂又はこれをエポキシ樹脂で変性させたエポキシ変性ポリエステル系樹脂を用いることができる。なかでも、平均分子量が5000以上25000以下、ガラス転移温度(以下、「Tg」と記述することがある。)が10℃以上40℃以下であるものが好ましい。平均分子量が小さすぎると、加工性が低下する傾向にあり、大きすぎると、そのような塗膜層を形成するための塗料の粘度が高くなり生産性が低下する。またTgが低すぎると、塗膜層が軟らかくなりすぎる場合があり、高すぎるとこれも塗料粘度が大きくなる傾向にあるほか、加工性が低下することがあるからである。
【0037】
下塗り塗膜層14、17を形成するための塗料には、メラミン、ベンゾグアナミン、イソシアネート、エポキシ、フェノール樹脂といった架橋剤を添加することができる。特に、加工性に優れたポリエステル系樹脂の塗膜層を形成する際には、メラミン樹脂が好ましい。また加工性を重視する場合はイソシアネート等も用いることができる。
【0038】
下塗り塗膜層14、17中に含有される防錆顔料は、クロムフリーのものとし、具体的にはイオン交換型酸化物、および/又はリン酸系防錆顔料を用いることができる。イオン交換型酸化物の例としては、Ca、Mg、Sr、Ba、Znでイオン交換されたシリカ、モンモリロナイト、バーミキュライト、サポナイト等を挙げることができる。リン酸系防錆顔料としては、リン酸Zn、リン酸Ca、リン酸Al、メタリン酸Al、メタリン酸Mg、トリポリリン酸2水素Al、第3リン酸Mg等を挙げることができる。これらの防錆顔料を下塗り塗膜層14、17中に含有させることで、腐食環境において顔料中の有効成分が溶出しかつ腐食に対する保護膜が形成されると考えられる。
【0039】
おもて面の下塗り塗膜層14中には、下塗り塗膜層14、17の総付着質量に対して15質量%以上50質量%以下の防錆顔料を含んでいるのが好ましい。防錆顔料の含有量が少なすぎると耐食性に、多すぎると加工性に不利に働く傾向がある。なお、下塗り塗膜層14、17の総付着質量とは、例えば塗膜層を剥離した場合の質量減少分であって、バインダー樹脂の質量のほか、塗膜層中に含有されている防錆顔料、体質顔料、着色顔料等の各種成分の質量の合計である。また、防錆顔料と体質顔料と着色顔料との総量は70質量%以下とすることが好ましい。
【0040】
おもて面の下塗り塗膜層14に含有させる防錆顔料には、平均粒径が30μm以下のものを用いるのが好ましい。より好ましくは、20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。粒径が大きすぎると曲げ加工性に劣る傾向にある。これは加工を受けたときにクラックの起点となりやすいためであると考えられる。本発明のPCMでは、小粒径の防錆顔料を用いることにより、絞り加工後の曲げ加工という厳しい加工にも耐えることができる。また、小粒径の防錆顔料を用いることで、上塗り塗装後に高光沢や高鮮映性が必要な場合有利であるという効果もある。
【0041】
ここで、粒径はあらゆる方法により測定することができる。その中でも、レーザー光を用いた散乱法が特に好ましい。
【0042】
なお、これらの性能に関しては体質顔料や着色顔料などの粒径も影響すると考えられるが、例えば体質顔料として用いられるチタニア、コロイダルシリカ、気相シリカなど、あるいは着色顔料として用いられるカーボンブラック等は、一般にもともと微粒であり、影響は小さい。
【0043】
おもて面の下塗り塗膜層14の付着量は総質量として3g/m以上30g/m以下が好ましい。さらに好ましくは5g/m以上である。また、好ましくは10g/m以下がさらに好ましい。下塗り塗膜層14の付着量が少なすぎると耐食性に不利になる一方、多すぎると加工性(とくに絞り加工後の加工性)に不利になるからである。
【0044】
うら面側の下塗り塗膜層17は、前述したように、おもて面と同じ塗料から形成した塗膜層であってもよいし同じでなくてもよい。コスト、作業の観点からは、おもて面側とうら面側の下塗り塗膜層14、17を形成するための塗料は、全く同じか、少なくともバインダー樹脂系(架橋剤等を含む)は同じとし、防錆顔料その他の顔料の粒径や含有量が異なる程度であるのが好ましい。
【0045】
一方、うら面はおもて面の(曲げ)加工に大きな影響を及ぼさない。そこで、加工性を優先しておもて面の下塗り塗膜層14の付着量や防錆顔料含有量を抑制した場合で、鋼板端面の耐食性も必要な場合等は、うら面の下塗り塗膜層17の付着量や防錆顔料の含有量をおもて面よりも多くして補うこともできる。うら面において、下塗り塗膜層17の付着量は、うら面の耐食性の観点から5g/m以上であるのが好ましく、性能上必要ならば付着量を多くしてもよい。ただし、通常の製造工程で塗膜欠陥を少なくする観点から、30g/m以下が好ましい。下塗り塗膜層17中の防錆顔料は50質量%程度含有させてもよい。
【0046】
また、下塗り塗膜層14、17中には、バインダー樹脂と防錆顔料のほか、体質顔料や着色顔料等を含んでいてもよい。通常、下塗り塗膜層14、17中には微粒シリカ等の体質顔料や着色顔料が含有されることが多い。
【0047】
<上塗り塗膜層>
前述の下塗り塗膜層14、17を設けた後、該下塗り塗膜層14、17の外面に上塗り塗膜層15、18を設ける。上塗り塗膜層15、18は特に限定されるものではないが、耐食性、加工性を具備させるために、下塗り塗膜層14、17に用いられる樹脂と同様のポリエステル系樹脂あるいはエポキシ変性ポリエステル系樹脂が好ましい。架橋剤も同様であるが、メラミン樹脂が、コスト、耐候性および塗膜層硬度の観点から好ましい。また、加工性を重視する場合はイソシアネートを用いることもできる。さらにエポキシフェノール系樹脂を用いてもよい。
【0048】
上塗り塗膜層15、18には意匠性を向上させるための着色顔料やチタニアなどの体質顔料が含まれていても良い。また、防錆顔料を含んでも良い。
【0049】
うら面の上塗り塗膜層18は、うら面の耐食性が確保されるために必須であり、その付着量は好ましくは3g/m以上、より好ましくは5g/m以上である。また上限は性能面からは特に制限されない。コストアップと性能の飽和のバランスの観点からは30g/m程度が好ましい。用いられる塗料はプレッシャーマーク現象を抑制するため、おもて面の上塗り塗膜層15の塗料と同様の樹脂すなわち同様の塗料を用いることが好ましい。ただし、表裏面を区別するため、おもて面とは異なる外観(着色顔料の変更当による)としてもよい。意匠性および耐食性を確保する観点から上塗り塗膜層15、18の付着量は3g/m以上、より好ましくは5g/m以上とすることが好ましい。
【0050】
<塗膜層の形成方法等>
塗膜層の形成は通常の方法でよく、所定のバインダーとなる樹脂成分および防錆顔料を含有する塗料を用い、ロールコート法、スプレー法等で塗料を鋼板に塗布し、所定温度で焼き付ければよい。例えば、塗料は溶剤系でも水系でもよい。また、塗装鋼板の性能や塗装性の点から、塗料中には着色顔料や体質顔料、架橋のための触媒や界面活性剤等が含有されもよい。
【0051】
焼付温度は、例えば本発明で好ましく用いられるメラミン樹脂を架橋剤とするポリエステル系樹脂で、下塗り塗膜層14、17の場合には素材最高到達温度(PMT)が200℃〜250℃で焼付時間は30秒〜90秒、上塗り塗膜層15、18の場合にはPMT220℃〜300℃で焼付時間45秒〜120秒の範囲が好ましい。
【0052】
<加工品>
本発明のプレコート鋼板10は、おもて面を筐体外面側に、うら面を筐体内面側に向けて加工された製品に用いるのに好適であり、特に屋外で用いられる製品に特に好適に用いられる。例えば、このような用途として、エアコンの室外機や、洗濯機、給湯器、自動販売機、電源ボックス等を挙げることができる。
【実施例】
【0053】
次に本発明のプレコート鋼板の実施例を比較例とともに説明する。
【0054】
溶融亜鉛めっき鋼板(板厚が0.5mm、めっき付着量が片面あたり60g/m)の両面に、表面調整処理として、日本ペイント(株)製NPC200を3秒間スプレーした。このとき処理液温度は60℃とし、スプレーされた鋼板を直ちに水洗いした後、乾燥させた。なお、NPC200はCoを含有するアルカリ性の処理液であり、この表面調整処理後の亜鉛めっき表面のCo付着量は約3mg/mであった。
【0055】
そして表面調整処理に引き続き、溶融亜鉛めっき鋼板の両面に、日本ペイント(株)製EC2000を用いてクロムフリー下地処理を施した。処理方法は、バーコート法で処理液を塗布後、乾燥させるものである。下地処理の付着量は、両面とも約70mg/mとした。
【0056】
下地処理に引き続き、おもて面およびうら面にそれぞれ下塗り塗膜層を形成させた。下塗り塗膜層は焼付け後に表1の物性を示す市販のポリエステル系樹脂と市販のメチル化メラミンとブチル化メラミンを、ポリエステル:メチル化メラミン:ブチル化メラミンを80:16:4(固形分質量部)の比率となるように配合し、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸を樹脂固形分100質量部に対して0.5質量部添加した。
【0057】
【表1】


【0058】
そして、表2に示した防錆顔料と体質顔料を溶剤中に配合した下塗り塗料を用いて、これをバーコート法により鋼板に塗布した。熱風炉で50秒間、鋼板の最高到達温度が220℃となるような条件で焼き付けることにより形成させた。
【0059】
【表2】


【0060】
下塗り塗膜層を形成させた後、おもて面およびうら面のそれぞれに、次の配合の溶剤系塗料により上塗り塗膜層を形成させた。
(1)ポリエステル樹脂C 50質量部
(2)メチル化メラミン架橋剤 10質量部
(3)体質顔料(チタニア) 31.5質量部
(4)着色顔料(カーボンブラック) 0.5質量部
(5)ポリエチレンワックス 8質量部(固形分)
この塗料をバーコート法により鋼板に塗布し、熱風炉で60秒間、鋼板の最高到達温度が235℃になるような条件で焼き付けることにより形成させた。
【0061】
また、従来例としてクロムを含有するプレコート鋼板も試作した。これは、上述の溶融亜鉛めっき鋼板の両面に、クロメート処理した後、おもて面、うら面のそれぞれに、表2に示した防錆顔料に代えてクロム酸ストロンチウムを防錆顔料として添加した下塗り塗料を用いて下塗り塗膜層を形成し、さらにおもて面には上述の上塗り塗料を用いて上塗り塗膜層を形成させた。
【0062】
以上のように形成されたPCMを防錆顔料の粒径、配合量、下塗り塗膜層の付着量、うら面の上塗りの有無等を変えて内面耐食性およびおもて面の加工性等を次のような方法で評価した。
【0063】
<耐食性の評価>
(カット部、端部の耐食性)
耐食性の評価は、試験面にカッターナイフでクロスカットを入れた部分と、切断端部(試験面側にバリが出ないように切断)とについて、サイクル腐食試験により行った。サイクル腐食試験は、塩水噴霧(35℃)2時間の後、乾燥(60℃)を4時間、次に湿潤(50℃、湿度100%)2時間というサイクルを1サイクルとして30サイクル後の腐食状況で評価した。評価基準は以下のとおりである。
(クロスカット部)
◎…塗膜層の最大膨れ幅が1mm以下
○…塗膜層の最大膨れ幅が1mm超3mm以下
×…塗膜層の最大膨れ幅が3mm超
(端部)
◎…塗膜層の最大膨れ幅が2mm以下
○…塗膜層の最大膨れ幅が2mm超5mm以下
×…塗膜層の最大膨れ幅が5mm超
【0064】
(内面耐食性)
内面耐食性は、100mm角に切り出した試験片の試験面(うら面)に、0.1%NaCl水溶液をスプレーし、塩量として約100mg付着させ、そのまま常温で乾燥させたものを、湿潤環境(50℃、相対湿度85%)で120時間保持した後、うら面の白錆および赤錆の発生状況を調査した。評価基準は以下のとおりである。
◎…錆(赤錆)発生無し
○…微細な点状の錆(赤錆又は白錆の直径が約0.5mm以下)が発生し、点数は10点以下
×…大きめの錆(赤錆又は白錆の直径が0.5mmより大きい)が発生。
【0065】
<加工性>
(曲げによる加工性)
加工性の評価は、試験面(おもて面)が外面となるようにして、以下の2通りの曲げ加工により行った。
(1)0℃に冷却した試験片を2t曲げ加工する。
(2)室温(約25℃)で、試験片を0t曲げ加工する。
曲げ加工後、曲げ加工部の状況を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。
◎…クラック無し
○…点状のクラック10個以内(巾25mmあたり)
△…点状のクラック10個超え(巾25mmあたり)
【0066】
(絞り加工後の加工性)
試験面(おもて面)が外面になるように円筒絞り(絞り条件:ブランク径が100mmφ、パンチ径が50mmφ、ダイ径が52.4mmφ、しわ押え力(BHF)が1.5ton)した後、円筒絞り側面を切り出し、これを室温(約25℃)で、絞り方向とは直角に2t曲げ加工を施した。曲げ部の状況を、上述の加工性と同様の基準で評価した。
【0067】
次に以上の評価方法により得られた結果について説明する。
(実施例1)
表3は、下塗り塗膜層に表2に示した各種の防錆顔料を適用した場合における評価結果を示したものである。ここでは、表3に示したように試番(1−1)〜試番(1−15)の各実施において下塗り塗膜層に含有される顔料の種類のみを変えたものである。
【0068】
【表3】


【0069】
表3からわかるように、いずれの防錆顔料を下塗り塗膜層に含有させても、表裏両面いずれの側においても耐食性が良好であることがわかる。一方、試番(1−16)で示したように防錆顔料を適用していない場合には、例え上塗り塗膜層を設けたとしても表裏両面ともに耐食性がよくないことがわかる。これにより、クロムフリー防錆顔料を適用する際、いずれの種類の該防錆顔料を適用するかにかかわらず、例えばエアコン室外機等にPCMを使用する場合には、表裏両面に防錆顔料を使用すべきであることがわかる。また試番(1−17)の従来例に示したようにクロム含有防錆顔料では、上塗り塗膜層の有無によらず耐食性が良好である。これにより、クロムフリー化するに際して、クロム含有防錆顔料使用時とは異なる観点で耐食性を向上させる必要があることが明確となった。
【0070】
よって本発明はうら面として使用される側にも耐食性を備えた、耐食性に優れたクロムフリーPCMを提供することができる。
【0071】
(実施例2)
表4は、表1に示した下塗り塗膜層に含有される樹脂バインダーの種類を変えて評価をした結果である。試番(2−1)〜試番(2−6)において、樹脂バインダーの種類をA〜Fに変えたものである。
【0072】
【表4】


【0073】
表4により、内面耐食性については樹脂バインダーの種類による差異は見受けられなかった。一方、おもて面における加工性は、平均分子量が大きくガラス転移温度が高い樹脂バインダーの方が良好である傾向にあった。
【0074】
(実施例3)
表5は、下塗り塗膜層に含有される防錆顔料の粒径を変えて評価をした結果である。ここでは、試番(3−1)〜試番(3−5)において、下塗り塗膜層に含有される防錆顔料の粒径を変えて評価した。
【0075】
【表5】


【0076】
表5からわかるように、防錆顔料の粒径の違いは内面耐食性には影響を及ぼさない。一方、おもて面の加工性を見ると、粒径の大きい35μmで加工性がよくない場合があり、逆に粒径の小さい2μmで良好な加工性を示している。これにより粒径が小さい方が加工性が良いという傾向を有すると考えられる。
【0077】
(実施例4)
表6は、下塗り塗膜層に含有される防錆顔料の含有率を変化させたものを評価した結果である。ここでは、試番(4−1)〜試番(4−6)において、下塗り塗膜層に含有される防錆顔料の含有率を変化させたものである。
【0078】
【表6】


【0079】
表6からわかるように、おもて面の加工性については試番(4−6)に見られるように下塗り塗膜層中の防錆顔料の含有率が最も高い場合に若干の低下をする場合があり、最も含有率が低い試番(4−3)では、優れた加工性を示した。これにより、おもて面における防錆顔料の含有率は低い方が加工性がよい傾向にあると考えられる。
【0080】
(実施例5)
表7は、下塗り塗膜層および上塗り塗膜層の付着量に注目し、付着量を変化させて評価した結果である。試番(5−1)〜試番(5−5)では、下塗り塗膜層に含有される樹脂バインダーの種類を表2に示したNo.1を用いた場合に下塗り塗膜層の付着量を変化させたものである。試番(5−6)〜試番(5−10)は、下塗り塗膜層に含有される樹脂バインダーの種類を表2に示したNo.14を用いた場合に下塗り塗膜層の付着量を変化させたものである。また、試番(5−11)および試番(5−12)は、下塗り塗膜層の樹脂バインダーをそれぞれNo.1およびNo.14とした上で、うら面の下塗り塗膜層と上塗り塗膜層の合計付着量を9(g/m)としたものである。そして、表7の下2段には、比較例として試番(5−13)および試番(5−14)を示した。これら2つの比較例はともにうら面に上塗り塗膜層を設けず、かつ、該うら面の下塗り塗膜層の付着量を9(g/m)としたものである。
【0081】
【表7】


【0082】
表7において、試番(5−1)〜試番(5−5)の結果と、試番(5−13)の結果とを比較してみると、いずれの場合も下塗り塗膜層に防錆顔料が含まれているにもかかわらず、上塗り塗膜層の有無で内面耐食性の良、不良が分かれていることがわかる。一方で、実施例1で説明したように、上塗り塗膜層が設けられていても下塗り塗膜層に防錆顔料が含有されていないときはやはり内面耐食性がよくないことがわかっている。よって以上の結果より、本発明のPCMのようにうら面にも、防錆顔料を含んだ下塗り塗膜層を設け、さらにその上に上塗り塗膜層を設けることにより優れた内面耐食性を備えたPCMとすることが可能となる。このことは、試番(5−6)〜試番(5−10)の結果と、試番(5−14)の結果との比較にも現れている。また、試番(5−11)と試番(5−13)との比較、および試番(5−12)と試番(5−14)との比較からも、上塗り塗膜層と下塗り塗膜層との合計付着量が同じであっても、上塗り塗膜層のみでは、優れた内面耐食性は得られないことがわかる。
【0083】
また、おもて面についてみると、試番(5−1)〜試番(5−5)において、試番(5−5)で絞り加工後の加工性が悪くなっている。試番(5−5)は、おもて面の下塗り塗膜層の付着量を最も多くしたものである。この傾向は試番(5−6)〜試番(5−10)にも見られ、おもて面の下塗り塗膜層の付着量を必要以上に大きくしないことにより、加工性が良好となることがわかる。
【0084】
以上の実施例1〜5の評価結果をみても、本発明のPCMは優れたうら面耐食性、およびおもて面加工性を備えていることがわかる。
【0085】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うプレコート鋼板およびその製造方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】1つの実施形態にかかる本発明のプレコート鋼板の断面構造を模式的に示す図である。
【図2】従来のプレコート鋼板の断面構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0087】
10 プレコート鋼板
11 鋼板
11a 亜鉛めっき鋼板
12 亜鉛めっき層
13 下地処理
14 下塗り塗膜層
15 上塗り塗膜層
16 下地処理
17 下塗り塗膜層
18 上塗り塗膜層




 

 


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