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発明の名称 再加熱時のオーステナイト粒成長が抑制された低合金鋼の鋼材および鋼材用鋳片の連続鋳造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−100203(P2007−100203A)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
出願番号 特願2005−295020(P2005−295020)
出願日 平成17年10月7日(2005.10.7)
代理人 【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄
発明者 水上 英夫 / 山中 章裕
要約 課題
再加熱時のオーステナイト粒成長が抑制された低合金鋼材、及びその鋼材を得るための必要元素を高歩留りで均一に鋳片内に添加できる連続鋳造方法を提供する。

解決手段
(1)連続鋳造された鋳片を素材として熱間圧延により得られる低合金鋼の鋼材であって、C、Si、Mn、P、S、Ti、NおよびAlを含み、さらに、Mo、Cu、Nb、V、Ni、CrおよびBのうちの1種以上を含有し、さらに、AgおよびMgをそれぞれ0.00005〜0.001%含有するか、またはさらにBi:0.00005〜0.001%を含有する、再加熱時のオーステナイト粒成長が抑制された低合金鋼の鋼材。上記鋼材は、さらに、Ca、NdおよびSnのうちの1種以上を含有してもよい。(2)タンディッシュ内または鋳型内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスを通して、Ag、Mg、Biなどの金属元素の蒸気および/または粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に供給する低合金鋼の連続鋳造方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
連続鋳造された鋳片を素材として熱間圧延により得られる低合金鋼の鋼材であって、該低合金鋼は、質量%で、C:0.07〜0.18%、Si:0.005〜0.5%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.003〜0.05%、N:0.001〜0.01%およびAl:0.001〜0.1%を含み、さらに、Mo:2.0%以下、Cu:1.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Ni:5.0%以下、Cr:2.5%以下およびB:0.005%以下のうちの1種以上を含有し、さらに、AgおよびMgをそれぞれ0.00005〜0.001%含有するか、またはAgおよびMgをそれぞれ0.00005〜0.001%ならびにBi:0.00005〜0.001%を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする再加熱時のオーステナイト結晶粒の成長が抑制された低合金鋼の鋼材。
【請求項2】
さらに、質量%で、Ca:0.001%以下、Nd:0.001%以下およびSn:0.01%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の低合金鋼の鋼材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の低合金鋼の鋼材を製造するための熱間圧延用素材としての鋳片を鋳造する連続鋳造方法であって、タンディッシュ内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスを通して、前記AgおよびMg、またはAg、MgおよびBiの金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに該溶鋼中に供給するか、または、さらにCa、NdおよびSnのうちの1種以上の金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに該溶鋼中に供給することを特徴とする低合金鋼の連続鋳造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の低合金鋼の鋼材を製造するための熱間圧延用素材としての鋳片を鋳造する連続鋳造方法であって、タンディッシュ内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスを通して、前記AgおよびMg、またはAg、MgおよびBiを含有するワイヤーまたはロッドをキャリアガスとともに該溶鋼中に供給するか、または、さらにCa、NdおよびSnのうちの1種以上を含有するワイヤーまたはロッドをキャリアガスとともに該溶鋼中に供給することを特徴とする低合金鋼の連続鋳造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造過程において金属元素を添加した鋳片を素材として製造された再加熱時のオーステナイト粒径の成長を抑制した低合金鋼の鋼材、および低合金鋼鋼材用鋳片を鋳造するための連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚板材は、主として建築、土木、建設機械、造船、パイプ、タンク、海洋構造物などの構造用鋼材として使用されている。これらの構造物は、鋼材同士をボルト締め、あるいは溶接により固定して組み合わされている。このうち、溶接による固定では、厚板母材自体に熱を付与することから、母材の強度や靭性などの機械的特性を劣化させるおそれがあり、これらに関して従来から多くの研究が行われてきた。特に、最近では、大入熱溶接が行われるようになったことから、溶接熱影響部(以下、「HAZ」とも記す)の靱性低下への対応策が大きな課題となっている。
【0003】
大入熱溶接時の鋼材HAZの靱性に注目した技術については、従来から多くの提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、TiNが固溶するように1250〜1400℃の温度範囲に加熱した後、圧延または鍛造加工するか、あるいは次いで1150℃以下の温度で再加熱することにより、固溶TiNを微細なTiNとして分散再析出させ、HAZのオーステナイト粒を微細化して靱性を向上させる大入熱溶接用鋼材の製造方法が開示されている。しかしながら、Ti窒化物は、HAZの中で最高到達温度が1400℃を超える溶接金属との境界近傍ではほとんどが固溶するので、靱性向上効果が低下するという問題があり、大入熱溶接において要求される靱性を確保することが困難である。
【0005】
このような溶接部近傍の靱性を改善する技術として、例えば、特許文献2に開示されているように、TiO、Ti23のいずれか一種または二種の複合した結晶相を含む酸化物系介在物を含有させる方法が、鋼の大入熱溶接時のHAZの靱性向上に有効である。しかし、Ti酸化物は粗大化や凝集合体を生じやすいため、Ti酸化物系の粗大介在物が生成し、このような粗大な介在物が形成されると、逆にHAZの靱性が低下するという問題が生じる。
【0006】
この問題の解決技術として、例えば、特許文献3には、Ti−Mg系の酸化物を分散させる技術が開示されている。すなわち、0.5〜5μmの大きさでTiとMgの含有量の和が15重量%以上である酸化物が30個/mm2以上存在し、同時に0.05〜0.5μmの大きさの酸化物が5000個/mm2以上存在する溶接熱影響部靱性の優れた鋼板である。特許文献3によれば、TI−Mg系の酸化物を分散させることができ、大入熱溶接時のHAZの靱性向上を達成できたとされている。しかしながら、最近の超大入熱溶接においては、HAZの温度が一層高温となることから、鋼材組織を微細に維持することが困難であり、この技術を以てしても靱性の改善は充分とはいえない。
【0007】
上述した技術は、加熱された鋼材の組織の粗大化を抑制する方法として、溶鋼中に金属元素を添加する方法である。鋼材の特性を安定して確保するには、溶鋼中に添加された金属元素が凝固後の鋳片内において均一に分散している必要がある。一般に、鋼材は、連続鋳造法を経て製造される場合が多く、金属元素の種類によっては、その連続鋳造スラブ内に均一に分散させることが困難なことが多い。
【0008】
溶鋼中に金属元素を添加する方法としては、塊状の金属元素を溶鋼表面に投入する方法、または金属元素単味で作製したワイヤー、それらの金属元素をアルミニウムや鋼などにより被覆したワイヤー、もしくはそれらの金属元素を含有する合金で作製したワイヤーにより添加する方法などが採用されている。しかしながら、これらの方法を用いてAg、Bi、Mg、Ca、Nd、Snなどのように蒸気圧が高く、または融点の低い金属元素を精度良く安定して添加することは困難である。これらの蒸気圧の高い金属元素が溶鋼中に添加されると、溶鋼の湯面近傍において、金属元素が気化して大気中に放散されるため、溶鋼中への添加量を制御することが難しく、添加歩留りも低下して、均一に添加することが困難だからである。
【0009】
また、これらの金属元素は、気化する際の体積膨張が大きいことから、溶鋼の湯面近傍で気化した場合には、溶鋼の飛散が激しく、操業上の安全の確保が困難である。さらに、添加金属元素の融点が低い場合には、添加前に溶鋼の輻射熱により軟化あるいは溶融するので、所定量を添加することが困難となる。溶鋼よりも密度の小さい金属元素を添加する場合には、添加された金属が溶鋼の表層部のみに偏在して、溶鋼の内部にまで侵入しないし、密度の大きな金属元素を添加する場合には、添加位置から溶鋼内部に沈降するのみで溶鋼全体に均一に混合させることは困難である。また、これらの金属は、連続鋳造時に使用する耐火物に付着して浸漬ノズルを閉塞させるおそれが高く、これらの元素を含む溶鋼を用いて連続鋳造の安定操業を行うことは難しい。
【0010】
特許文献4には、取鍋を出てタンディッシュ内溶鋼浴面へ移動中の溶鋼流にBiを添加する溶鋼へのBi添加方法が開示されている。BiはMgと同様に沸点が低く、溶鋼流と接触すると爆発的に反応し、蒸気となって雰囲気中に飛散するため、添加歩留まりが低く、溶鋼中に均一に添加することが難しく、したがって、連続鋳造鋳片内に均一に分散させることが困難である。
【0011】
特許文献5には、取鍋内の溶鋼にランスを用いてインジェクションによりPb、Bi、Pb・Bi含有物質を添加する方法において、取鍋底部のポーラスプラグからガスを噴出させてPbおよびBi含有物質の取鍋底部への沈降を防止する技術が開示されている。同文献で開示された方法においても、融点あるいは沸点の低いPbやBiを添加する場合には、これらの金属が溶鋼と接触すると爆発的な反応が生じ、溶鋼中への金属の添加が不均一になるとともに添加歩留りも低く、金属を連続鋳造鋳片内に均一に分散させることは困難である。また、溶鋼中に添加したPbやBiの反応生成物の形成を任意に調整することも難しい。
【0012】
【特許文献1】特公昭55−26164号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献2】特開昭61−79745号公報(特許請求の範囲および4頁左上欄2行〜左下欄17行)
【特許文献3】特開平11−124652号公報(特許請求の範囲および段落[0006])
【特許文献4】特開2001−1116号公報(特許請求の範囲および段落[0013]および[0014])
【特許文献5】特開平9−13119号公報(特許請求の範囲および段落[0004]および[0005])
【特許文献6】特開2004−249315号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献7】特開2005−169404号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献8】特願2004−27514号公報(特許請求の範囲など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その第一の課題は、超大入熱溶接におけるHAZをはじめとして、再加熱時のオーステナイト粒の成長が抑制された組織を有する低合金鋼材を提供することにある。また、第二の課題は、上記の低合金鋼材を得るために必要な金属元素を溶鋼中に効率よく添加し、連続鋳造スラブ内に均一に分散させることのできる連続鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、低合金鋼材の再加熱時におけるオーステナイト結晶粒の成長を抑制するための添加金属元素、および、それらの金属元素を連続鋳造スラブ内に効率良く、しかも均一に添加するための連続鋳造方法を検討し、下記の(a)〜(c)の知見を得て、本発明を完成させた。
【0015】
(a)鋼材の再加熱時におけるオーステナイト結晶粒の成長を抑制するためには鋼中に、AgおよびMg、またはこれらに加えてBiを添加することが効果的である。さらに、Ca、NdおよびSnのうちの1種以上を添加することにより上記の効果を高めることができる。また、これらの金属元素を連鋳スラブ内に均一にしかも効率良く添加するためには、タンディッシュ内溶鋼または鋳型内溶鋼に金属元素の蒸気を添加することが有効である。
【0016】
(b)上記(a)の粒成長の抑制効果は、下記の作用による。すなわち、Ag、BiおよびMgは、溶鋼中の酸素と反応してそれぞれ微細なAg酸化物、Bi酸化物およびMg酸化物を晶出し、これらの「晶出物によるピン止め効果」により結晶粒の粗大化が抑制される。また、固溶Biは界面活性効果を有するので、その効果により不均質核生成が促進され、結晶粒の粗大化が抑制される。
【0017】
さらに、Ca、NdおよびSnは、それぞれ固溶状態において、後述する「結晶粒界における引き摺り効果」を有し、この作用により、結晶粒の粗大化が抑制される。また、Ndは酸化物を晶出するので、その晶出物によるピン止め効果により結晶粒の粗大化を抑制する。そして、固溶Snは界面活性効果を有するので、その効果により不均質核生成が促進され、粒成長が抑制される。
【0018】
(c)上記(a)および(b)にて述べたような蒸気圧が高い金属元素または融点が低い金属元素を溶鋼中に添加する場合、それらの添加金属は、溶鋼と接触するかまたは溶鋼からの輻射熱を受けて溶融あるいは気化する。溶鋼中に添加する以前に、あるいは添加した瞬間に金属元素が溶融または気化すると、これらの金属元素を溶鋼中に均一に、かつ歩留り良く添加することは困難である。このような問題を解決し、連続鋳造鋳片内に金属元素を均一に添加するには、連続鋳造鋳型に近いタンディッシュ内、または連続鋳造鋳型内の溶鋼に、金属元素の蒸気を添加する方法が最適である。
【0019】
本発明は、上記の知見に基いて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示す鋼材、ならびに(3)および(4)に示す鋼の連続鋳造方法にある。
【0020】
(1)連続鋳造された鋳片を素材として熱間圧延により得られる低合金鋼の鋼材であって、該低合金鋼は、質量%で、C:0.07〜0.18%、Si:0.005〜0.5%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.003〜0.05%、N:0.001〜0.01%およびAl:0.001〜0.1%を含み、さらに、Mo:2.0%以下、Cu:1.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Ni:5.0%以下、Cr:2.5%以下およびB:0.005%以下のうちの1種以上を含有し、さらに、AgおよびMgをそれぞれ0.00005〜0.001%含有するか、またはAgおよびMgをそれぞれ0.00005〜0.001%ならびにBi:0.00005〜0.001%を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする再加熱時のオーステナイト結晶粒の成長が抑制された低合金鋼の鋼材。
【0021】
(2)さらに、質量%で、Ca:0.001%以下、Nd:0.001%以下およびSn:0.01%以下のうちの1種以上を含有する前記(1)に記載の低合金鋼の鋼材。
【0022】
(3)前記(1)または(2)に記載の低合金鋼の鋼材を製造するための熱間圧延用素材としての鋳片を鋳造する連続鋳造方法であって、タンディッシュ内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスを通して、前記AgおよびMg、またはAg、MgおよびBiの金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに該溶鋼中に供給するか、または、さらにCa、NdおよびSnのうちの1種以上の金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに該溶鋼中に供給することを特徴とする低合金鋼の連続鋳造方法。
【0023】
(4)前記(1)または(2)に記載の低合金鋼の鋼材を製造するための熱間圧延用素材としての鋳片を鋳造する連続鋳造方法であって、タンディッシュ内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスを通して、前記AgおよびMg、またはAg、MgおよびBiを含有するワイヤーまたはロッドをキャリアガスとともに該溶鋼中に供給するか、または、さらにCa、NdおよびSnのうちの1種以上を含有するワイヤーまたはロッドをキャリアガスとともに該溶鋼中に供給することを特徴とする低合金鋼の連続鋳造方法。
【0024】
本発明において、「再加熱」とは、分塊圧延もしくは熱間圧延に先だって行われる加熱もしくは均熱、または溶接による加熱を意味する。
【0025】
「再加熱時のオーステナイト結晶粒の成長が抑制された」とは、後述する実施例において指数化したように、Ag、Mg、Bi、Ca、NdおよびSnのいずれをも含有しない場合の結晶粒の成長に対して、相対的に結晶粒の成長が小さいことを意味する。
【0026】
「金属蒸気および/または金属粒子」とは、金属蒸気および/または、蒸発が不十分なために液体または固体粒子として存在する金属粒子、もしくは金属蒸気が凝縮して形成される金属粒子を意味する。また、「金属」とは、純金属および金属の合金を含む。
【0027】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、鋼の成分組成表示における「%」は、「質量%」を意味する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の低合金鋼の鋼材は、超大入熱溶接におけるHAZをはじめとして、再加熱時のオーステナイト粒の成長が抑制されるので、強度や靱性といった機械的特性に優れた鋼材として好適である。また、本発明の連続鋳造方法は、上記の低合金鋼材を得るために必要な金属元素の適正量を溶鋼中に効率よく添加し、連続鋳造スラブ内に均一に分散させるための最適の連続鋳造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の鋼材は、前記のとおり、連続鋳造された鋳片を素材として熱間圧延により得られる低合金鋼の鋼材であって、該低合金鋼は、C、Si、Mn、P、S、Ti、NおよびAlを含み、さらに、Mo、Cu、Nb、V、Ni、CrおよびBのうちの1種以上を含有し、さらに、AgおよびMgをそれぞれ0.00005〜0.001%含有するか、またはAgおよびMgをそれぞれ0.00005〜0.001%ならびにBi:0.00005〜0.001%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる、再加熱時のオーステナイト粒の成長が抑制された低合金鋼の鋼材である。
【0030】
また、本発明の方法は、前記の低合金鋼の鋼材を製造するための熱間圧延用素材としての鋳片を鋳造する連続鋳造方法であって、タンディッシュ内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスを通して、前記AgおよびMg、またはAg、MgおよびBiの金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に供給するか、または、上記金属元素を含有するワイヤーまたはロッドをキャリアガスとともに溶鋼中に供給する低合金鋼の連続鋳造方法である。
【0031】
以下に、本発明の低合金鋼鋼材および低合金鋼の連続鋳造方法について、さらに詳細に説明する。
【0032】
(1)金属元素の添加による結晶粒粗大化の抑制および鋳造方法
鋼材の機械的特性を向上させるには結晶粒を微細化する必要があり、従来から制御冷却、制御圧延といった手法が採られ、鋼材の加熱温度、冷却開始温度、冷却速度や圧下率の管理が行われてきた。また、これらに加えて鋼材中に合金元素を含有させることにより、上述の効果を高める技術が開発されてきた。また、溶接時のHAZのように鋼材が再加熱される場合は、鋼材が高温に晒されるため、鋼材が最初に有した結晶粒が粗大化して靱性などの機械的特性が低下するという問題がある。
【0033】
鋼材の結晶粒の粗大化を抑制するには、晶出物あるいは析出物による「ピン止め効果」を利用する方法の他に、溶質元素の「結晶粒界における引き摺り効果」を利用することもできる。ここで、「結晶粒界における引き摺り効果」とは、溶媒元素(鉄元素)の移動方向とは逆方向に移動する結晶粒界に取り込まれた溶質元素の移動速度が溶媒元素の移動速度よりも遅いために、移動する結晶粒界が結晶粒界の層内に取り込まれた溶質元素を粒界の移動方向に引き摺ることとなり、これが結晶粒界の移動抵抗となって、結晶粒の粗大化を抑制する効果をいう。
【0034】
また、鋼の固相線温度よりも融点の低い化合物を微細に分散させることにより、結晶粒の成長を抑制することができる。さらに、ピン止め効果を利用する場合においても、その効果を高めるために、晶出あるいは析出頻度を増大することが有効である。
【0035】
鋼中にはMn、S、Tiなどの溶質元素も含有されており、これらの反応生成物であるMnS、TiNなどが鋼中に存在する。これらの析出物も粗大化すると機械的特性を著しく低下させる。そこで、これらの析出物を微細に分散させれば、結晶粒の粗大化抑制に効果を発揮し、むしろ機械的特性を向上させることができる。このためには、微細に分散したMg酸化物、Nd酸化物上に、MnS、TiNなど不均質核生成させれば良く、これを促進させるためには界面活性元素であるBiやSnを添加すれば良い。
【0036】
上述したAg、Bi、Mg、Nd、Snなどの蒸気圧が高い金属元素または融点が低い金属元素を溶鋼中に添加する場合には、それらの添加金属は、溶鋼と接触または溶鋼からの輻射熱を受けて溶融あるいは気化する。溶鋼中に添加する以前あるいは添加時に金属元素が溶融または気化すると、これらの金属元素を溶鋼中に均一に、しかも歩留り良く添加することは困難である。このような問題を解決して連続鋳造鋳片内に金属元素を均一に添加するには、鋳型に近いタンディッシュ内、または鋳型内の溶鋼に添加する方法が最適である。
【0037】
そこで、本発明者らは、結晶粒の粗大化抑制機構および抑制方法、ならびにそれを達成するための連続鋳造方法について、さらに研究を進めた。本発明者らは、先に、特許文献6、特許文献7および特許文献8において、金属元素の蒸気あるいは金属元素の化合物をタンディッシュ内または連続鋳造鋳型内の溶鋼中に添加する方法を提案し、これらの方法により金属元素を溶鋼中に均一に、しかも歩留り良く添加できることを確認している。これらの結果も踏まえて検討を重ねた結果、下記の(a)および(b)に示す結晶粒の粗大化抑制機構およびその方法についての知見、ならびに、(c)および(d)に示す連続鋳造方法および装置についての知見を得て、本発明を完成させた。
【0038】
(a)Ag、BiおよびMg含有の効果
溶鋼中に各種金属元素を種類別に添加して溶製した鋼材から試験片を作製し、各試験片を1400℃に加熱して60秒間保持する試験を行った。試験片の光学顕微鏡による観察により、金属元素のうちで、Ag、BiおよびMgを添加した試験片のオーステナイト粒径の成長が顕著に抑制されていることが判明した。さらに、これらの試験片の結晶粒の内
部および粒界をEDX(エネルギー分散型X線分析装置)により組成分析した結果、Ag、BiおよびMg元素が結晶粒界に濃化していることが分かった。また、微細なAg酸化物およびMg酸化物が分散していることも確認された。
【0039】
AgおよびBiは、鋼に対する溶解度が小さいことから、鋼の凝固過程において、凝固界面の液相側に濃化され、これが溶鋼中の酸素と反応して微細なAg酸化物およびBi酸化物を晶出する。これらの酸化物の融点は鋼の固相線温度よりも低いので、鋼が溶融状態にある間においてはこれらの結晶粒は形成されない。このため、鋼が凝固して鋼の結晶粒が形成されても、Ag酸化物あるいはBi酸化物が完全に凝固するまでは、鋼の結晶粒界は酸化物により途切れることになる。
【0040】
鋼の温度がさらに低下して、酸化物の凝固が完了して初めて結晶粒界が結合することとなり、結晶粒が成長する。酸化物の凝固が完了した時点では、鋼の温度も充分に低下しており、結晶粒の成長速度は小さくなる。その結果、結晶粒の成長が抑制され、いわゆる「ピン止め効果」を示すことを、本試験により新たに見出した。
【0041】
これにより、融点の高いMg酸化物と融点の低いAg酸化物およびBi酸化物の相乗効果により、従来以上に結晶粒の粗大化を抑制することが可能となった。
【0042】
次に、Ag、BiおよびMg含有量の適正範囲について説明する。
【0043】
Agの含有量、Bi含有量およびMg含有量は、いずれも0.00005〜0.001%の範囲とするのが適切である。Ag、BiおよびMgともに、その含有量が0.00005%未満では結晶粒の粗大化抑制効果が得られない。
【0044】
一方、Ag含有量が0.001%を超えて多くなると、鋼の製造コストが上昇して経済的に不利となるので、Ag含有量の上限を0.001%とした。Bi含有量が0.001%を超えて多くなると、結晶粒界におけるBiの濃化が著しくなって脆化し、逆に機械的特性が低下することから、その含有量の上限を0.001%とした。また、Mg含有量が0.001%を超えて多くても、結晶粒径指数の低減効果が飽和することから、鋼の製造コストが上昇するだけであるため、その含有量の上限を0.001%とした。
なお、鋼中にはTiやMn、Sなどの溶質元素が含有されている場合が多い。これらの反応生成物であるTiNやMnSが粗大に析出すると、HAZ靱性といった機械的特性を低下させる。
【0045】
また、界面活性元素であるBiやSnが含有されていると、Mg酸化物が晶出した後にこの酸化物上にTiNやMnSなどが析出し易くなる。Mg酸化物が微細に分散されると、Mg酸化物上に不均質核生成するTiNやMnSも結果的に微細に分散されることとなり、機械的特性の向上に寄与する。
【0046】
(b)Ca、NdおよびSn含有の効果
上記(a)の鋼材中にCa、NdおよびSnの1種以上が含有されると、結晶粒界の移動に対して引き摺り効果を発揮し、再加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制する作用を有することを見出した。これらの元素は、含有させてもさせなくてもよいが、これらの元素の効果を得たい場合は、CaおよびNdについては、それぞれ0.00005〜0.001%の範囲内で、また、Snについては0.00005〜0.01%の範囲内で、1種以上を含有させる。
【0047】
Ca、NdおよびSnともに、その含有量が0.00005%未満ではそれらの効果が得られない。一方、Ca含有量が0.001%を超えて多くなると、Ca硫化物が生成され、逆に、機械的特性が低下する。また、Nd含有量が0.001%を超えて多くなると、Nd酸化物が晶出してピン止め効果も現れ、結晶粒の成長抑制効果は大きくなるが、同時に浸漬ノズルの閉塞頻度が高まり、連続鋳造操業におけるトラブルを引き起こすこととなるので、好ましくない。
【0048】
さらに、晶出したNd酸化物上にMnSやTiNなどが不均質核生成するので、界面活性元素であるBiやSnが含有されていると、不均質核生成が起こり易くなる。Nd酸化物が微細に分散すると、その上に不均質核生成するMnSやTiNも微細に分散することになり、機械的特性が向上する。
【0049】
Sn含有量が0.01%を超えて多くなると、Snが結晶粒界に著しく濃化されるため、鋼の脆化が顕著となる。したがって、その含有量は0.01%以下とすることが好ましい。
【0050】
(c)浸漬ノズルの閉塞を回避できる連続鋳造方法
溶鋼中に希土類元素のNdを添加すると、浸漬ノズルが閉塞しやすく、長時間におよぶ操業は困難であった。従来、取鍋中に金属元素Ndの単体あるいはNd合金の塊を一括添加する方法が一般に採られているが、この方法では、浮上分離したり、溶鋼内で沈降したり、または、溶鋼の流動で撹拌されて衝突・凝集して粗大化し、例えば粗大な酸化物が溶鋼中に懸濁することになる。そして、この反応生成物が浸漬ノズルの内壁に付着して浸漬ノズルの閉塞を引き起こす。
【0051】
これに対して、タンディッシュ内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼に浸漬させた浸漬ランスを通して、Ndをキャリアガスとともに溶鋼中に供給するか、または、金属元素のNdを含有するワイヤーまたはロッドをキャリアガスとともに溶鋼中に供給して連続鋳造を行うことにより、凝集・肥大化する以前に連鋳鋳型内に供給され、凝固するため、浸漬ノズルの閉塞といった問題が生じなくなる。さらに、微細な生成物のままで連鋳スラブ内に分散させることができる。
【0052】
(d)上記の連続鋳造方法を実施するための装置
後述する実施例にて説明するとおり、タンディッシュと、タンディッシュ下部に設けられタンディッシュ内の溶鋼を鋳型に供給するための浸漬ノズルと、タンディッシュの下方に位置する鋳型と、前記タンディッシュ内の溶鋼にワイヤーもしくはロッドを供給するための浸漬ランスまたは前記鋳型内の溶鋼にワイヤーもしくはロッドを供給するための浸漬ランスと、前記浸漬ランスの孔内に前記ワイヤーまたはロッドを供給するためのワイヤまたはロッド供給装置と、前記浸漬ランス内にキャリアガスを供給するガス供給装置とを有する溶鋼の連続鋳造装置が好適である。
【0053】
(2)低合金鋼の成分組成範囲
本発明における低合金鋼の成分組成のうち、既に述べた添加金属元素を除く成分組成の限定理由について下記に説明する。
【0054】
C:0.07〜0.18%
Cは、母材および溶接部の強度および靱性を確保するために有効な元素である。その含有量が0.07%未満では、上記の効果が充分に得られず、一方、その含有量が0.18%を超えて高くなると、溶接部の靱性が低下する。そこで、Cの適正範囲を0.07〜0.18%とした。
【0055】
Si:0.005〜0.5%
Siは、溶鋼の脱酸剤として必要な元素である。その含有量が0.005%未満では、充分な脱酸効果が得られない。また、一方、その含有量が0.5%を超えて高くなると、鋼の加工性を低下させ、溶接部の靱性を劣化させる。上記の理由から、その適正範囲を0.005〜0.5%とした。
【0056】
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、溶鋼の脱酸剤として必要な元素であり、母材の強度と靱性の確保およびHAZの焼入れ性の確保のために含有させる。その含有量が0.1%未満では、鋼の清浄性を確保することができず、一方、その含有量が2.0%を超えて高くなると、焼入れ性が過剰となり、靱性が損なわれる。このてめ、Mn含有量の適正範囲を0.1〜2.0%とした。
【0057】
P:0.02%以下
Pは、鋼中の不純物元素であり、鋼の延性および靱性を劣化させる元素である。このため、その含有量を0.02%以下に制限した。
【0058】
S:0.01%以下
SもPと同様に鋼中の不純物元素であり、鋼の延性および靱性を劣化させる元素である。このため、その含有量を0.01%以下に制限した。
【0059】
Ti:0.003〜0.05%
Tiは、析出強化作用により母材強度の向上に寄与する有効な元素である。Ti含有量が0.003%未満では、上記の効果は充分でなく、一方、その含有量が0.05%を超えて高くなると、鋼中に粗大な析出物や介在物を形成して、鋼の延性や靱性を劣化させる。上記の理由から、Ti含有量の適正範囲を0.003〜0.05%とした。
【0060】
N:0.001〜0.01%
Nが鋼中に含有されると延性や靱性が低下するので、Nは有害元素であるが、工業的にNを完全に除去することは不可能である。このため、実操業において低減可能な範囲を考慮し、その下限を0.001%とした。一方、その含有量が0.01%を超えて高くなると、鋼の延性や靱性を劣化させることから、含有量の上限を0.01%とした。
【0061】
Al:0.001〜0.1%
Alは、溶鋼の脱酸元素であり、その効果を得るためには0.001%以上を含有させることが必要である。しかし、その含有量が0.1%を超えて高くなると、鋼中の粗大な酸化物系介在物量が増大し、母材強度に悪影響を及ぼす。上記の理由から、その含有量の適正範囲を0.001〜0.1%とした。なお、本発明において、Alとは、酸可溶Al(sol.Al)を意味する。
【0062】
次に低合金鋼中の任意添加元素について説明する。
【0063】
Mo:2.0%以下、Cu:1.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Ni:5.0%以下、Cr:2.5%以下およびB:0.005%以下のうちの1種以上を含有
上記のMo、Cu、Nb、V、Ni、CrおよびBは、含有してもしなくてもよいが、
それらの元素の効果を得たい場合は、下記の含有量の範囲内において、それらの元素のうちから1種以上を含有させることができる。
【0064】
Mo:2.0%以下
Moは、含有させれば焼入れ性の向上および強度の向上に有効な作用を発揮する元素である。その明確な効果を得るには0.1%以上を含有させることが好ましい。しかし、その含有量が2.0%を超えて高くなると、鋼の靱性の低下および溶接性の劣化が顕在化する。そこで、Moを含有させる場合の含有量の範囲を2.0%以下とした。
【0065】
Cu:1.5%以下
Cuは、含有させれば焼入れ性の向上および析出強化に有効な作用を有する元素であり、その効果を得るには0.01%以上を含有させることが好ましい。一方、その含有量が1.5%を超えて高くなると、熱間加工性が低下する。上記の理由から、Cuを含有させる場合の含有量の範囲を1.5%以下とした。
【0066】
Nb:0.5%以下
Nbは、含有させれば低温靭性を向上させる作用を有する元素である。その効果を得るには、0.005%以上を含有させることが好ましい。しかし、その含有量が0.5%を超えて高くなると、鋼中に粗大な炭化物や窒化物を形成するため、鋼の靱性を低下させる。上記の理由から、Nbを含有させる場合の含有量の範囲を0.5%以下とした。
【0067】
V:0.5%以下
Vは、含有させれば母材の靱性を向上させる作用を発揮する元素である。その効果を得るためには0.01%以上を含有させることが好ましい。一方、その含有量が0.5%を超えて高くなると、鋼の溶接性および靱性が劣化する。上記の理由から、Vを含有させる場合の含有量の範囲を0.5%以下とした。
【0068】
Ni:5.0%以下
Niは、含有させれば母材の靱性を向上させる作用を有する元素である。その効果を得るには0.5%以上を含有させることが好ましい。一方、その含有量が5.0%を超えると、焼入れ性が過剰となり、靱性に悪影響を及ぼす。そこで、Niを含有させる場合の含有量の範囲を5.0%以下とした。
【0069】
Cr:2.5%以下
Crは、含有させれば焼入れ性の向上、および析出強化による母材強度の向上に有効な作用を発揮する元素である。その効果を得るには0.05%以上を含有させることが好ましい。一方、その含有量が2.5%を超えると、靱性および溶接性が劣化する傾向が認められる。そこで、Crを含有させる場合の含有量の範囲を2.5%以下とした。
【0070】
B:0.005%以下
Bは、含有させれば母材の強度を向上させる作用を発揮する元素である。その効果を得るには0.0005%以上を含有させることが好ましい。しかしながら、その含有量が0.005%を超えて高くなると、鋼中に粗大な硼化物が析出し、これにより鋼の靱性が劣化する。上記の理由から、Bを含有させる場合の含有量の範囲を0.005%以下とした。
【実施例】
【0071】
本発明の低合金鋼の再加熱時におけるオーステナイト結晶粒の成長抑制効果、および低合金鋼の連続鋳造方法の効果を確認するため、以下に示す試験を行って、その結果を評価した。
〔試験条件〕
溶鋼:後述する表1〜表4に示される成分組成を有する低合金鋼
溶鋼量:4トン/分で連続鋳造
添加金属:後述する表2および表4に示す金属元素
添加方法:金属ワイヤー(ワイヤー直径は3mmφ)
添加位置:タンディッシュ内
キャリアガス:アルゴンガス10L/分
図1は、浸漬ランスを通して金属ワイヤーをタンディッシュ内の溶融金属に供給しながら連続鋳造する方法を示す図である。
【0072】
取鍋3からタンディッシュ2に供給された溶鋼1は、浸漬ノズル6を経て連続鋳造鋳型8内に注入され、さらに下方に引き抜かれながら凝固シェル7を形成して鋳片となる。添加される金属は、タンディッシュ2内の溶鋼1中に浸漬された浸漬ランス4を通して、最終的に金属の蒸気となってタンディッシュ2内の溶鋼1中に供給された。
【0073】
浸漬ランス4の一端は、金属ワイヤー供給機5に接続されている。金属ワイヤー供給機5にはワイヤーリール51が装填されており、ワイヤー繰出し速度制御装置53によりその繰出し速度を制御されたワイヤー繰出しロール52により、金属ワイヤー50が浸漬ランス4内に挿入された。金属ワイヤー供給機にはキャリアガス54が導入され、金属ワイヤー50とともに浸漬ランス4内に供給された。
【0074】
一方、比較例として、金属元素を添加しない条件で連続鋳造を行い、以下、金属元素を添加した場合と同様の試験および調査を行った。
【0075】
試験に用いた低合金鋼の成分組成を表1〜表4に示した。
【0076】
【表1】


【0077】
【表2】


【0078】
【表3】


【0079】
【表4】


【0080】
連続鋳造により得られた鋳片から採取した試験片を用い、下記の条件で加熱試験を行った。
【0081】
試験片サイズ:外径10mm×長さ100mm
加熱領域:試験片の長手方向の中央領域20mm
加熱温度:1400℃(常温から30秒で昇温)
加熱時間:60秒間とし、60秒経過後はArガスにより急冷
上記の加熱試験後のオーステナイトの結晶粒径を測定して、結晶粒の粗大化抑制効果を評価するとともに、析出物の粒径も併せて測定し比較した。
なお、結晶粒径の測定は、JIS G 0551に規定された方法に準拠してナイタル液あるいはピクリン酸を用いて組織を顕出し、画像解析を行って平均結晶粒径を算出した。また、析出物の粒径は、JIS G 0555に規定された方法に準じてその観察を行い、画像解析を行って平均粒径を算出した。
【0082】
試験により得られた結果を表2および表4に示した。同表において、結晶粒径指数および析出物径指数は、比較例である試験番号C1における結晶粒径および析出物粒径をそれぞれ1.0として、これらに対する相対値により指数化して表示した。
【0083】
〔試験結果〕
試験番号H1〜H29は、本発明で規定する条件を満足する本発明例についての試験であり、試験番号C1〜C10は、Ag、Bi、Mg、Ca、Nd、Snといった金属元素のいずれをも含有しないか、または、それらの含有量が本発明で規定する範囲を超えて高い比較例についての試験である。本発明例および比較例のいずれの試験においても、本発明の連続鋳造方法によれば、制御目標とする含有量の金属元素が鋳片内に均一に、かつ高歩留まりで添加されていた。
【0084】
金属元素としてAgおよびMgを含有させた本発明例の試験番号H1、ならびにAgおよびMgに加えてさらにBiを含有させた本発明例の試験番号H5では、比較例の試験番号C1における結晶粒径を基準(1.0)とした結晶粒径指数が0.25〜0.26低く抑えられており、再加熱時のオーステナイト結晶粒径の粗大化が抑制されている。これは、主として、Ag、BiまたはMg酸化物のピン止め効果によるものと判断される。また、析出物の粒径も、比較例の試験番号C1を基準(1.0)とした析出物粒径指数で0.55〜0.56と低くなっており、析出物の粗大化が抑えられている。
【0085】
さらに、上記金属に加えて、Ca、NdおよびSnのうちの1種以上の金属を含有させた試験番号H2〜H4およびH6〜H17では、再加熱時のオーステナイト粒径の粗大化抑制効果がさらに一層顕著に表れており、結晶粒径指数も一段と低下している。これは、Ca、NdまたはSnを含有したことにより、上記ピン止め効果に加えて、さらに結晶粒界の引き摺り効果も加わったことによると考えられる。
【0086】
これらに対して、Ag、Bi、Mg、Ca、Nd、Snといった金属元素のいずれをも含有しない比較例の試験番号C1〜C7では、結晶粒径指数が1.0近傍の値であって、結晶粒径が比較的大きく、再加熱時のオーステナイト粒径の粗大化が抑制されていない。もちろん、析出物も粗大化していることが明らかである。
【0087】
また、Ag、BiまたはMgの含有量が本発明で規定する含有量の範囲を超えて高い試験番号C8〜C10では、上記元素を含有させた効果は飽和しており、鋼材の製造コストが過度に上昇するだけの結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の低合金鋼の鋼材は、超大入熱溶接におけるHAZをはじめとして、再加熱時のオーステナイト結晶粒の成長が抑制されるので、強度や靱性といった機械的特性に優れた鋼材として好適である。また、本発明の連続鋳造方法は、上記の低合金鋼材を得るために必要な金属元素の適正量を溶鋼中に効率よく添加し、連続鋳造スラブ内に均一に分散させるための最適の連続鋳造方法である。したがって、本発明は、機械的特性に優れた構造用および加工用鋼材などとして、また、その鋼材用素材を製造するための連続鋳造方法として、広範に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】金属ワイヤーを浸漬ランスを通してタンディッシュ内の溶融金属に供給しながら連続鋳造する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1:溶鋼、 2:タンディッシュ、 3:取鍋、 4:浸漬ランス、
5:金属ワイヤー供給機、 50:金属ワイヤー、 51:ワイヤーリール、
52:ワイヤー繰出しロール、 53:ワイヤー繰出し速度制御装置、
54:キャリアガス、 55:圧力計、 56:流量制御弁、 6:浸漬ノズル、
7:凝固シェル、 8:連続鋳造鋳型




 

 


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