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発明の名称 高張力溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16319(P2007−16319A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2006−220273(P2006−220273)
出願日 平成18年8月11日(2006.8.11)
代理人 【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
発明者 菊地 祐久 / 中川 浩行 / 林 宏太郎
要約 課題
高強度で加工性を確保しつつ、曲げ加工性及び耐切欠き疲労特性、耐食性に優れた、高張力溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。

解決手段
鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板が、質量%で、C:0.02%を超え0.20%以下、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.003〜0.10%、S:0.020%以下、Al:0.001〜1.0%、N:0.0004〜0.015%、Ti:0.03〜0.2%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を平均粒子間距離30〜300nmで含有し、かつ粒径3μm以上の晶出系TiNを平均粒子間距離50〜500μmで含有することを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
特許請求の範囲
【請求項1】
鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板の化学組成が、質量%で、C:0.02%を超え0.20%以下、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.003〜0.10%、S:0.020%以下、Al:0.001〜1.0%、N:0.0004〜0.015%、Ti:0.03〜0.2%を含有し、残部がFeおよび不純物であるとともに、前記鋼板の金属組織がフェライトを面積率で30〜95%含有し、残部の第2相がマルテンサイト、ベイナイト、パーライト、セメンタイトおよび残留オーステナイトのうちの1種または2種以上からなり、かつマルテンサイトを含有するときのマルテンサイトの面積率は0〜50%であり、そして、前記鋼板が粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を平均粒子間距離30〜300nmで含有し、かつ粒径3μm以上の晶出系TiNを平均粒子間距離50〜500μmで含有することを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
鋼板が、Feの一部に代えて、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下およびW:0.5%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
鋼板が、Feの一部に代えて、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
鋼板が、Feの一部に代えて、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
鋼板が、Feの一部に代えて、Zr:0.01%以下を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
鋼板の表面から深さ50μmまでの鋼板表層部におけるフェライトの平均粒径が2〜10μmであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
引張り強度が590MPa以上、180度曲げにおける限界曲げ半径が板厚の2倍以下であり、かつ切欠き曲げ疲労特性の耐久比が0.38以上であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項8】
次の〔A1〕から〔A4〕までの工程を備えることを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
〔A1〕請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する溶鋼を、液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度0.3〜1.0℃/秒で凝固させて鋼塊とする鋳造工程。
〔A2〕鋳造工程で得られた鋼塊あるいはさらに鋼塊を分塊圧延して得られた鋼片を温度1100℃以上とした後、Ar点以上で熱間仕上げ圧延を実施し、700℃以下の温度で巻き取りを行う熱間圧延工程。
〔A3〕熱間圧延工程を経て得られる熱間圧延鋼板に酸洗を施す酸洗工程。
〔A4〕酸洗工程を経て得られる熱間圧延鋼板にAc点〜1000℃の温度範囲で5秒以上保持する均熱処理を施した後、平均冷却速度1〜40℃/秒で600℃まで冷却するか、あるいはさらに平均冷却速度70℃/秒以下で440〜600℃の温度まで冷却し、その後溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき処理工程。
【請求項9】
次の〔B1〕から〔B5〕までの工程を備えることを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
〔B1〕請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する溶鋼を、液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度0.3〜1.0℃/秒で凝固させて鋼塊とする鋳造工程。
〔B2〕鋳造工程で得られた鋼塊あるいはさらに鋼塊を分塊圧延して得られた鋼片を温度1100℃以上とした後、Ar点以上で熱間仕上げ圧延を実施し、700℃以下の温度で巻き取りを行う熱間圧延工程。
〔B3〕熱間圧延工程を経て得られる熱間圧延鋼板に酸洗を施す酸洗工程。
〔B4〕酸洗工程を経て得られる熱間圧延鋼板に冷間圧延を施す冷間圧延工程。
〔B5〕冷間圧延工程を経て得られる冷間圧延鋼板にAc点〜1000℃の温度範囲で5秒以上保持する均熱処理を施した後、平均冷却速度1〜40℃/秒で600℃まで冷却するか、あるいはさらに平均冷却速度70℃/秒以下で440〜600℃の温度まで冷却し、その後溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき処理工程。
【請求項10】
熱間圧延工程において、鋼塊または鋼片に粗圧延を施してシートバーとした後に950℃以上に加熱することを特徴とする、請求項8または9に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項11】
溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施す前に、鋼板を440〜600℃の温度で5〜100秒間保持することを特徴とする、請求項8から10までのいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後に合金化処理を施すことを特徴とする、請求項8から11のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は主として自動車の足回り部品やメンバー等の補強部材のように、優れた曲げ加工性、疲労特性および耐食性が要求される用途に好適な高張力溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護のため、自動車の燃費向上が求められており、自動車用鋼板においては、車体の軽量化および安全性確保のため、590MPa以上の引張強度(TS)を有する高強度鋼板へのニーズが高まっている。
【0003】
しかしながら、ただ単に高強度であればよいわけではなく、例えば、成形性の観点からは高延性および良曲げ性が求められており、製品寿命の観点からは優れた疲労特性が求められている。特に疲労特性に関しては、一般に部材はボルト止めや、部品取り付けのために穴加工がされることが多く、その穴部の耐切欠き疲労特性が要求される。また、防錆性の観点からは、溶融亜鉛めっきを施した鋼板が求められている。
【0004】
鋼の強化手法としては固溶強化、析出強化および変態強化が知られており、これらを組み合わせることにより、所定の引張強度を達成することができる。これらの組合せにより、同一引張強度であっても延性、曲げ加工性および疲労特性等が異なってくる。したがって、自動車用途に代表される高張力鋼板に要求される性能を高度に発現するためには、強化手法を適正に組み合わせることが重要となる。
【0005】
一般に、固溶強化技術は、SiやPなどの添加によるフェライト相の強化を用いる手段であり、390MPa級鋼板や440MPa級鋼板などの一般強化材にも広く使われている。
【0006】
また、上述の強化手法のうち、変態強化を用いると、比較的容易に高強度化を達成することができる。例えば、特許文献1にはMn、Cr、Moを添加し、さらに冷却速度を制御することによって、フェライト・ベイナイト・マルテンサイト混合組織とすることで、TS≧780MPaを達成することが開示されている。また、特許文献2には、焼戻しマルテンサイト組織とすることにより、曲げ加工性と高強度化を達成することが開示されている。
【0007】
析出強化にはTiやNbを主に添加するが、その中で安価かつ添加量に対する強度上昇量が多いTiを多く添加することが一般的になっている。さらに、Tiの添加はフェライト粒を微細化する効果があり、Ti炭窒化物による析出強化に加え、フェライト粒の微細化による高強度化を図れるメリットもある。Tiによる析出強化を用いた高張力溶融亜鉛めっき鋼板は、特許文献3、特許文献4および特許文献5に開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平4-173946号公報
【特許文献2】特開平6-108152号公報
【特許文献3】特開平6-322479号公報
【特許文献4】特開2002-161336号公報
【特許文献5】特開2003-231941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、Si、Pなどの固溶強化のみで590MPa以上の高強度化を達成するには、多量のSi、P添加が必要であり、めっきの濡れ性および合金化処理性が阻害される欠点がある。
【0010】
また、上記の変態強化技術によると、フェライトと硬質相の混合組織とすることにより、比較的容易に高強度化が図れるが、マルテンサイトを多く含む混合組織を用いると、組織間の硬度差が大きくなり、その組織界面から曲げ加工初期に亀裂が発生するために曲げ性に劣る欠点がある。
【0011】
さらに、Tiを添加することによるフェライトの微細化や析出強化の技術を利用すると、フェライトの微細化や強化に寄与する、数十nmの微細な析出物であるTi系炭化析出物、窒化析出物、炭窒化析出物の他に粗大な晶出系TiNが生成する。特に、鋼塊凝固中に生成する晶出系TiNは高温で生成するために、その大きさは0.1〜20μmと粗大となり、フェライトの微細化や強度上昇には全く寄与しない。
【0012】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車のメンバーや足廻り部品に代表される構造部材の素材として好適な、良好な曲げ加工性及び高い切欠き疲労強度を有し、耐食性に優れた高張力溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供することである。
【0013】
特に、粗大な晶出系TiNの粒子寸法及び量ならびに析出強化に寄与する微細なTi系炭窒化析出物の粒子寸法及び分布を適正化することで、Tiの析出強化及びTiによるフェライトの微細化を利用し、高強度で加工性を確保しつつ、曲げ加工性及び耐切欠き疲労特性に優れた引張強度590MPa以上の高張力溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は高張力溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に係るものであって、次の(1)から(7)までのいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板に係るものと、(8)から(12)までのいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係るものである。以下、それぞれ、本発明(1)〜本発明(12)という。なお、高張力溶融亜鉛めっき鋼板に係る本発明(1)〜(7)と、高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係る本発明(8)〜(12)を総称して、本発明ということがある。
【0015】
(1)鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板の化学組成が、質量%で、C:0.02%を超え0.20%以下、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.003〜0.10%、S:0.020%以下、Al:0.001〜1.0%、N:0.0004〜0.015%、Ti:0.03〜0.2%を含有し、残部がFeおよび不純物であるとともに、前記鋼板の金属組織がフェライトを面積率で30〜95%含有し、残部の第2相がマルテンサイト、ベイナイト、パーライト、セメンタイトおよび残留オーステナイトのうちの1種または2種以上からなり、かつマルテンサイトを含有するときのマルテンサイトの面積率は0〜50%であり、そして、前記鋼板が粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を平均粒子間距離30〜300nmで含有し、かつ粒径3μm以上の晶出系TiNを平均粒子間距離50〜500μmで含有することを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【0016】
(2)鋼板が、Feの一部に代えて、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下およびW:0.5%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【0017】
(3)鋼板が、Feの一部に代えて、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【0018】
(4)鋼板が、Feの一部に代えて、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【0019】
(5)鋼板が、Feの一部に代えて、Zr:0.01%以下を含有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【0020】
(6)鋼板の表面から深さ50μmまでの鋼板表層部におけるフェライトの平均粒径が2〜10μmであることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【0021】
(7)引張り強度が590MPa以上、180度曲げにおける限界曲げ半径が板厚の2倍以下であり、かつ切欠き曲げ疲労特性の耐久比が0.38以上であることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板。
【0022】
(8)次の〔A1〕から〔A4〕までの工程を備えることを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
〔A1〕請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する溶鋼を、液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度0.3〜1.0℃/秒で凝固させて鋼塊とする鋳造工程。
〔A2〕鋳造工程で得られた鋼塊あるいはさらに鋼塊を分塊圧延して得られた鋼片を温度1100℃以上とした後、Ar点以上で熱間仕上げ圧延を実施し、700℃以下の温度で巻き取りを行う熱間圧延工程。
〔A3〕熱間圧延工程を経て得られる熱間圧延鋼板に酸洗を施す酸洗工程。
〔A4〕酸洗工程を経て得られる熱間圧延鋼板にAc点〜1000℃の温度範囲で5秒以上保持する均熱処理を施した後、平均冷却速度1〜40℃/秒で600℃まで冷却するか、あるいはさらに平均冷却速度70℃/秒以下で440〜600℃の温度まで冷却し、その後溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき処理工程。
【0023】
(9)次の〔B1〕から〔B5〕までの工程を備えることを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
〔B1〕請求項1から5までのいずれかに記載された化学組成を有する溶鋼を、液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度0.3〜1.0℃/秒で凝固させて鋼塊とする鋳造工程。
〔B2〕鋳造工程で得られた鋼塊あるいはさらに鋼塊を分塊圧延して得られた鋼片を温度1100℃以上とした後、Ar点以上で熱間仕上げ圧延を実施し、700℃以下の温度で巻き取りを行う熱間圧延工程。
〔B3〕熱間圧延工程を経て得られる熱間圧延鋼板に酸洗を施す酸洗工程。
〔B4〕酸洗工程を経て得られる熱間圧延鋼板に冷間圧延を施す冷間圧延工程。
〔B5〕冷間圧延工程を経て得られる冷間圧延鋼板にAc点〜1000℃の温度範囲で5秒以上保持する均熱処理を施した後、平均冷却速度1〜40℃/秒で600℃まで冷却するか、あるいはさらに平均冷却速度70℃/秒以下で440〜600℃の温度まで冷却し、その後溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき処理工程。
【0024】
(10)熱間圧延工程において、鋼塊または鋼片に粗圧延を施してシートバーとした後に950℃以上に加熱することを特徴とする、上記(8)または(9)に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0025】
(11)溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施す前に、440〜600℃の温度で5〜100秒間保持することを特徴とする、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0026】
(12)溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後に合金化処理を施すことを特徴とする、上記(8)〜(11)のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0027】
なお、本発明において、「Ti系炭窒化析出物」とは、Tiを含有する炭化析出物、窒化析出物および炭窒化析出物の総称である。また、「溶融亜鉛めっき鋼板」には溶融亜鉛めっきした後に合金化処理を施す「合金化溶融亜鉛めっき鋼板」も含まれる。さらに、「ベイナイト」には、ベイニティックフェライトも含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、高強度で加工性を確保しつつ、曲げ加工性及び耐切欠き疲労特性、耐食性に優れた、高張力溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することができる。
【0029】
この高張力溶融亜鉛めっき鋼板は、自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車のメンバーや足廻り部品に代表される構造部材の素材として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
まず、本発明の高張力溶融亜鉛めっき鋼板のめっきの基材である鋼板の規定理由について説明する。以下、組成についての%は質量%を表す。
【0031】
A.本発明に係る鋼板の化学組成について
C:0.02%を超え0.20%以下
Cは、Ti系炭窒化析出物による析出強化、フェライトの微細化、更には、フェライト以外の第2相による強度確保のために必要な元素である。しかし、その含有量が0.02%以下では所望の590MPa以上の引張強度が確保できない。一方、0.20%を超えると溶接性が低下する。したがって、Cの含有量を0.02%を超え0.20%以下とした。なお、780MPa以上の高強度を得るには、Cを0.04%以上含有させることが望ましく、そして、980MPa以上の高強度を得るには、Cを0.06%以上含有させることが望ましい。
【0032】
Si:0.01〜2.0%
Siは、固溶強化によって鋼板の強度を高める元素である。その効果を得るには、0.01%以上の含有が必要である。一方、Si含有量が多くなると、鋼表面に生成する酸化スケールが過多になって製造上の困難を伴い、特に、その含有量が2.0%を超えると鋼表面に生成する酸化スケールが極めて過多になる。したがって、Siの含有量を0.01〜2.0%とした。望ましくは、0.01〜1.0%である。
【0033】
Mn:0.1〜3.0%
Mnは、鋼の焼入性を高め強度を上昇させるのに有効な元素であるが、その含有量が0.1%未満では十分な強度が得られない。一方、3.0%を超えると焼入性が過大となり、マルテンサイトが多く生成する。そのため、曲げ加工性の著しい低下をきたす。したがって、Mnの含有量を0.1〜3.0%とした。望ましい下限は0.5%であり、望ましい上限は2.5%である。
【0034】
P:0.003〜0.10%
Pは固溶強化として働く元素であり、高強度化のために有効である。しかし、その含有量が0.003%未満では上記の効果が得難い。一方、Pは偏析し易い元素であるため多量に添加した場合には、加工性の低下を招き、特に、その含有量が0.10%を超えると偏析が著しくなって加工性の低下が極めて大きくなる。したがって、Pの含有量を0.003〜0.10%とした。望ましい下限は0.005%であり、望ましい上限は0.05%である。
【0035】
S:0.020%以下
Sは、曲げ加工性を低下させる硫化物を生成するため、可能な限り低減する必要のある不純物である。本発明においては、他の成分元素添加による曲げ加工性の向上度合と製鋼コストを考慮して、その含有量の上限を0.020%とした。望ましくは、0.010%以下である。
【0036】
Al:0.001〜1.0%
Alは、鋼の脱酸に有用な元素である。その効果を得るには、少なくとも0.001%の含有量が必要である。一方、その含有量が1.0%を超えると、粗大なアルミナ系介在物が増加して、曲げ加工性及び耐疲労特性が著しく低下する。したがって、Alの含有量を0.001〜1.0%とした。望ましい下限は0.01%であり、望ましい上限は0.1%である。
【0037】
Ti:0.03〜0.2%
Tiは、本発明において最も重要な元素である。0.03%未満では、析出強化に効果のある平均粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の生成量が少なくて、強度上昇の効果がない。また、0.2%を超えて含有させてもこれらの効果は飽和するだけである。したがって、Tiの含有量を0.03〜0.2%とした。なお、780MPa以上の高強度を得るにはTiを0.05%以上含有させるのが望ましく、そして、980MPa以上の高強度を得るにはTiを0.07%以上含有させることが望ましい。
【0038】
N:0.0004〜0.015%
Nは、Tiを添加した鋼においてTiとともに粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物および粒径3μm以上の晶出系TiNを形成する。しかし、Nの含有量が0.0004%未満の場合、粒径3μm以上の晶出系TiNがほとんど生成しないので、部材の穴加工部における打ち抜き破面の形状が悪化して、耐切欠き疲労特性が低下する。一方、その含有量が0.015%を超えると、粗大な粒径3μm以上の晶出系TiNが多く生成して曲げ加工性が低下し、曲げ加工特性ならびに耐切欠き疲労特性が著しく低下する。したがって、Nの含有量を0.0004〜0.015%とした。望ましい下限は0.002%であり、望ましい上限は0.008%である。
【0039】
また、鋼塊又は鋳片の加熱時から熱間圧延後の巻き取りにかけて、または、溶融亜鉛めっき前の均熱からその後の冷却過程にかけて、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物が生成する。Nの含有量が0.0004%未満の場合、Nの含有量が少ないため、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物がほとんど生成しないので、析出強化の効果が減少してしまう。また、Nの含有量が0.015%を超えると、Ti系炭窒化析出物が粗大となるため、析出強化の効果が減少してしまう。Tiの含有量を0.05%以上かつNの含有量を0.002〜0.008%にするとともにCの含有量を0.04%以上にすることが、析出強化に効果的な粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を得る上で、特に好ましい。
【0040】
以上のCからNまでの元素は、本発明に係る高張力溶融亜鉛めっき鋼板の基材となる鋼板を特徴付ける化学成分である。
【0041】
そして、この鋼板の化学組成の残部がFeと不純物であるとともに、この鋼板の結晶組織がフェライトを面積率で30〜95%含有し、残部の第2相がマルテンサイト、ベイナイト、パーライト、セメンタイトおよび残留オーステナイトのうちの1種または2種以上からなり、かつマルテンサイトを含有するときのマルテンサイトの面積率は0〜50%であり、そして、前記鋼板が粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を平均粒子間距離30〜300nmで含有し、かつ粒径3μm以上の晶出系TiNを平均粒子間距離50〜500μmで含有するものが、本発明(1)に係る鋼板である。
【0042】
本発明に係る鋼板は、任意添加元素として、Nb、V、W、Cr、Mo、Cu、Ni、B、REM、Mg、CaおよびZrのうちの1種または2種以上を含有させることができる。
【0043】
まず、析出強化による強度上昇を目的として、本発明(1)に係る高張力溶融亜鉛めっき鋼板の基材である鋼板のFeの一部に代えて、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下およびW:0.5%以下のうちの1種または2種以上を含有させることができる。これが本発明(2)に係る鋼板である。
【0044】
次に、固溶強化による強度上昇を目的として、本発明(1)または(2)に係る高張力溶融亜鉛めっき鋼板の基材である鋼板のFeの一部に代えて、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下のうちの1種または2種以上を含有させることができる。これが本発明(3)に係る鋼板である。
【0045】
また、酸化物、硫化物などの形態制御による曲げ加工性向上を目的として、本発明(1)〜(3)のいずれかに係る高張力溶融亜鉛めっき鋼板の基材である鋼板のFeの一部に代えて、REM:0.0005〜0.1%、Mg:0.0005〜0.01%およびCa:0.0005〜0.01%のうちの1種または2種以上を含有させることができる。これが、本発明(4)に係る鋼板である。
【0046】
さらに、MnSの生成による曲げ加工性の低下を防止することを目的として、本発明(1)〜(4)のいずれかに係る高張力溶融亜鉛めっき鋼板の基材である鋼板のFeの一部に代えて、Zr:0.0002〜0.01%を含有させることができる。これが、本発明(5)に係る鋼板である。
【0047】
以下、これらの任意添加元素について、詳述する。
【0048】
Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、W:0.5%以下
Nb、V及びWは、Tiと同様に析出強化によって強度を高める元素であり、強度を一層高める作用を有する。Nb、V及びWは、それぞれを単独で含有させてもよいし、2種以上を複合して含有させてもよい。しかし、Nbは0.1%を超えて含有させると、延性の低下をきたし、そして、V、Wは0.5%を超えて含有させると延性の低下をきたす。さらに、原料コストの上昇も著しくなる。したがって、Nbを添加する場合にはその含有量は0.1%以下とするのがよく、また、V、Wを添加する場合には、それぞれ、0.5%以下とするのがよい。
なお、この効果を確実に得るには、Nb、V、Wはいずれも0.01%以上の含有量とすることが好ましい。
【0049】
Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、B:0.01%以下
Cr、Mo、Cu、NiおよびBは、いずれも固溶強化によって強度を一層高める作用を有する。これらの元素は、それぞれを単独で含有させてもよいし、2種以上を複合して含有させてもよい。しかし、Cr、Mo、Cu、Niについては、1.0%を超えて含有させると延性の低下をきたし、そして、Bについては0.01%を超えて含有させると延性の低下をきたす。さらに、原料コストの上昇も著しくなる。したがって、Cr、Mo、Cu、Niを添加する場合にはその含有量はいずれも1.0%以下とするのがよく、そして、Bを添加する場合にはその含有量を0.01%以下とするのがよい。
【0050】
なお、固溶強化の効果を確実に得るには、Cr、Mo、Cu、Niはいずれも0.05%以上の含有量とするのが好ましく、そして、Bについては0.0003%以上の含有量とするのが好ましい。
【0051】
REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下、Ca:0.01%以下
REM(希土類元素)、MgおよびCaは、いずれも、酸化物や硫化物を微細に球状化し、曲げ加工性を向上させる効果をもつ。REM、MgおよびCaは、それぞれを単独で含有させてもよいし、2種以上を複合して含有させてもよい。
【0052】
しかし、含有量が、REMについては0.1%を超えて含有させると、鋼中に酸化物や硫化物が多く存在してしまい、曲げ加工性は劣化する。また、Mg、Caについては0.01%を超えて含有させると鋼中に酸化物や硫化物が多く存在してしまい、曲げ加工性は劣化する。
【0053】
したがって、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下、Ca:0.01%以下とするのが好ましい。
それぞれの下限は特に限定しないが、酸化物や硫化物の微細球状化の効果を確実に得るには、REM、Mg、Caはいずれも0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。
【0054】
ここで、REMとは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素を指し、ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。なお、本発明では、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
【0055】
Zr:0.01%以下
Zrを添加すると、MnSの生成による曲げ加工性の低下を防止することができる。しかし、その効果は0.01%の含有量で飽和するので、含有量の上限を0.01%とすることが好ましい。
下限は特に限定しないが、MnSの生成による曲げ加工性の低下を防止する効果を確実に得るには、Zrは0.0002%以上の含有量とすることが好ましい。
【0056】
B.本発明に係る鋼板中の析出物について
引張強度が590MPa以上の領域で、良好な曲げ加工性と耐切欠き疲労特性を得るためには、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を平均粒子間距離30〜300nmで含有し、かつ粒径3μm以上の晶出系TiNを平均粒子間距離50〜500μmで含有させる必要がある。その理由は、次の(i)及び(ii)に示すとおりである。
【0057】
(i)Ti系炭窒化析出物の粒径と平均粒子間距離について
Ti系炭窒化析出物は、析出強化に寄与する析出物であるが、そのためには、その粒径を2〜30nmとする必要がある。Ti系炭窒化析出物は、粒径が2nmを下回っても、そして、30nmを上回っても、転位を容易に通過させてしまうので、析出強化に寄与しない析出物となるからである。また、Ti系炭窒化析出物の平均粒子間距離が300nmを超えると、析出物の間隔が広すぎるため、転位が容易に通過してしまい、析出強化に寄与しない。
そして、Ti系炭窒化析出物の平均粒子間距離が30nm未満であると、フェライト粒内にTi系炭窒化析出物が多くなりすぎるため曲げ加工性に劣る。
【0058】
したがって、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を平均粒子間距離30〜300nmで含有させる必要がある。なお、Ti系炭窒化析出物の好ましい粒径は5〜25nmであり、Ti系炭窒化析出物の好ましい平均粒子間距離は50〜250nmである。
【0059】
さらに、本発明に係る鋼板は、表面に溶融亜鉛めっき層を備えるものであるが、鋼板表面に存在するTi系炭窒化析出物は、溶融亜鉛めっき層を母材の鋼板に密着させるアンカー効果を発揮する。このアンカー効果を十分に発揮するためには、Ti系炭窒化析出物の粒径は5〜25nmが好ましく、また、Ti系炭窒化析出物の平均粒子間距離は50〜250nmが好ましい。
【0060】
(ii)晶出系TiNの粒径と平均粒子間距離について
粒径3μm以上の晶出系TiNは、曲げ加工性及び耐切欠き疲労特性に著しく影響するが、平均粒子間距離が50μmを下回ると、曲げ加工性が著しく劣る。この理由としては、粒径3μm以上の晶出系TiNは金属組織に比べ、硬度が非常に高いため、曲げ加工した場合、金属組織とその晶出系TiNの界面から亀裂が発生して進展するが、晶出系TiNの平均粒子間隔が50μm以上であると、間隔が広いため、曲げ加工した場合、亀裂が発生しにくいし、発生しても進展しにくい。このため、粒径3μm以上の晶出系TiNの平均粒子間隔が50μm以上であると、曲げ加工性に優れることになる。
【0061】
しかしながら、粒径3μm以上の晶出系TiNの粒子間距離が500μmを超えると、打ち抜き時亀裂が蛇行し、部材穴加工部の破面の形状が悪化することになる結果、応力集中が生じやすくなり、耐切欠き疲労特性が著しく劣化する。これに対して、粒径3μm以上の晶出系TiNが平均粒子間隔が500μm以下であると、部材の穴加工のための打ち抜き時、晶出系TiNに沿って亀裂が入るので、亀裂が蛇行しにくいためである。そのため、打ち抜いた端面の破面性状が良好となる。
【0062】
したがって、強度590MPa以上で良好な延性および曲げ加工性を確保しつつ、更に耐切欠き疲労特性を得るには、粒径3μm以上の晶出系TiNを平均粒子間距離50〜500μmで含有させる必要がある。
【0063】
なお、対象とする晶出系TiNの好ましい粒径は3〜7μmであり、対象とする晶出系TiNの好ましい平均粒子間距離は80〜320μmである。
【0064】
なお、本発明に係る鋼板は、表面に溶融亜鉛めっき層を備えるものであるが、鋼板表面に晶出系TiNが存在すると、溶融亜鉛めっき層との濡れ性が悪くなる。したがって、本発明に係る鋼板の溶融亜鉛めっき層と母材の鋼板との間の密着力は、共に鋼板表面に存在して、片やアンカー効果を発揮するTi系炭窒化析出物と、逆に濡れ性を悪くする晶出系TiNのバランスによって左右されることになる。
【0065】
C.本発明に係る鋼板の金属組織について
強度590MPa以上で、優れた曲げ加工性と耐切欠き疲労特性を得るには、鋼板表面から鋼板中心部までの金属組織においてフェライトの面積率が30%〜95%であることが必要である。
【0066】
フェライトの面積率が30%未満であると、フェライト粒が少ないため、曲げ加工した場合に局部的な延性を保つことができないので、曲げ加工性に劣るからである。そして、フェライトの面積率が95%を超えると、フェライト粒が多いため、疲労亀裂がフェライト粒内を積極的に進展するので、耐切欠き疲労特性が低下するからである。
【0067】
また、フェライト以外の残部の第2相は、マルテンサイト、ベイナイト、パーライト、セメンタイトおよび残留オーステナイトの1種または2種以上とすることによって、優れた曲げ加工性が得られる。ただし、残部の第2相としてマルテンサイトを含有するときは、優れた曲げ加工性を得るために、マルテンサイトの面積率を0〜50%とする必要がある。マルテンサイトが面積率で50%を超えると、曲げ加工初期におけるボイド発生を抑制できないために、曲げ加工初期に発生した亀裂が進展し易いので、曲げ加工性が低下するからである。
【0068】
本発明では、上述したとおり、Ti系炭窒化析出物を析出させることによって、フェライト粒を強化している。したがって、フェライトと第2相との硬度差が小さいため、曲げ加工特性もさらに向上する。また、フェライトの析出強化によっても、フェライト粒内において亀裂が進展しにくくなるので、この点からも、より優れた耐切欠き疲労特性を得ることができる。
【0069】
板表面から板中心部までのフェライトの平均粒径は2〜20μmが好ましい。平均粒径が2μm以上であると降伏比が適正範囲にあるため、変形し易いため、より優れた曲げ加工性を得ることができる。そして、平均粒径が20μm以下であると、より優れた耐切欠き疲労特性を得ることができる。
【0070】
特に、鋼板表面から深さ50μmまでの鋼板表層部におけるフェライト平均粒径を2〜10μmとするのが好ましい。鋼板表層部のフェライトの平均粒径を10μm以下に微細分散化することにより、第2相が微細分散化し、曲げ加工時に、表面に亀裂が入りにくくなる。また、フェライト粒が微細になると、結晶粒界が多くなるため、疲労亀裂が進展しにくくなり、耐切欠き疲労特性が向上する。したがって、優れた曲げ加工性を有するとともに、耐切欠き疲労特性が著しく向上したものを得ることができる。耐切欠き疲労特性を向上させたい場合には、鋼板表層部のフェライトの平均結晶粒径を5μm以下にすることが、さらに望ましい。
【0071】
さらに、本発明に係る鋼板は、表面に溶融亜鉛めっき層を備えるものであるが、鋼板表面のフェライトは、その結晶粒が細かい程、溶融亜鉛めっき層との濡れ性がよいので、めっきの密着性を向上させることができる。さらに、めっき層と母材の鋼板との間で合金化処理を施して、めっきの密着性を向上させることができる。鋼板表面のフェライトは、その結晶粒が細かい程、合金化処理によるめっき密着性がさらに向上する。
【0072】
D.本発明に係る溶融亜鉛めっき層について
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の溶融亜鉛めっき層の好ましい態様は次のとおりである。
【0073】
めっき量としては、3〜800g/mを鋼板表面に施すのが好ましい。3g/m以上とすると、十分に優れた防食作用が発揮され、亜鉛めっきの目的を果たすことができる。また、800g/m以下にすると、溶接時にブローホールなどの欠陥が発生しにくくなるためである。耐食性の確保や、めっき量のコストの観点からは、10〜200g/mがさらに好ましい。
【0074】
また、上記めっきを施した後、合金化処理をすると、めっきの密着性を向上させることができるので、好ましい。めっき皮膜の合金化処理をする際には、合金化度はFe含有量を3〜20%程度とするのが望ましい。3%以上の合金化度により、合金化処理の効果が得られるが、合金化度が20%を超えるとパウダリングが劣化する場合がある。合金化処理によるめっき密着性の確保とパウダリング性の観点から、さらに好ましくは、合金化度は7〜15%である。
【0075】
さらに、亜鉛めっき層の表面には、有機系又は無機系の皮膜を施すことができる。この場合でも本発明の効果は損なわれない。
【0076】
E.本発明に係る鋼板の特性について
本発明の鋼板は、上記の成分からなり、かつ上記のTi系炭窒化析出物と晶出系TiNを含有してなる溶融亜鉛めっき鋼板であるので、引張り強度が590MPa以上、180度曲げにおける限界曲げ半径が板厚の2倍以下であり、かつ切欠き曲げ疲労特性の耐久比が0.38以上であるものが得られる。
【0077】
さらに、金属組織や溶融亜鉛めっき層を上記の好ましい態様にすると、強度780MPa以上の鋼板であっても、180度曲げにおける限界曲げ半径が板厚の2倍以下であり、かつ切欠き曲げ疲労特性の耐久比が0.38以上であるものが得られる。なお、強度780MPa以上の鋼板とすることによって、特に部材の薄肉化に効力が発揮される。
【0078】
F.本発明に係る鋼板の製造方法における各工程について
(1)鋳造工程
本発明(8)から(12)に係る鋼板の製造方法においては、連続鋳造中における溶鋼の液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を0.3〜1.0℃/秒として急冷却する必要がある。溶鋼の液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が0.3℃/秒未満の場合、冷却速度が遅いため、粗大な晶出系TiNが多く析出し、粒径3μm未満の晶出系TiNの平均粒子間距離は広がるが、粒径3μm以上の晶出系TiNの平均粒子間距離は50μmを下回る。一方、溶鋼の液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が1.0℃/秒を超える場合、冷却速度が速すぎるために、粒径3μm未満の晶出系TiNの平均粒子間距離は狭くなり、粒径3μm以上の晶出系TiNがほとんど析出しないので、晶出系TiNの平均粒子間距離は500μm超となる。
【0079】
(2)熱間圧延
熱間圧延前に鋼塊または鋼片を温度1100℃以上にて加熱する必要がある。加熱温度が1100℃未満の場合、凝固時に析出したTi系炭窒化析出物が再固溶しないので、Tiによる析出強化に寄与しない。なお、粒径3μm以上の晶出系TiNは、1400℃を超えると、再固溶する場合があるから、加熱温度の上限は1400℃とするのが好ましい。また、加熱温度が1350℃を超えると、鋼塊または鋼片が自重で変形してしまって、熱間圧延ができなく場合があるから、その上限は1350℃とするのがさらに好ましい。
【0080】
熱間圧延工程における仕上げ圧延は、常法に従って行う。このとき、鋼板の特性変動を抑制するために、粗圧延後、仕上圧延前の粗バーに対して、誘導加熱等により全長の温度を950℃以上に均一化を図るのが好ましい。特に、鋼板表面の組織を均一化すると、曲げ加工性においてバラツキが少なくなる利点がある。そして、仕上圧延温度はAr点以上とするのが望ましい。また、巻取り温度については、スケール疵の発生を防止するために、700℃以下とするのが望ましい。
【0081】
(3)酸洗工程
熱延後の、酸洗工程については常法でかまわない。平坦性を確保するために、酸洗の前もしくは後に、0〜5%程度の軽度の圧延を行って、形状を修正するのが好ましい。
【0082】
(4)冷間圧延工程
酸洗工程の後に、冷間圧延工程を施してもよい。このときの冷間圧延工程は常法でかまわない。冷間圧延を施す場合は、圧下率30〜85%とするのが好ましい。圧下率を高めにすると、焼鈍時のオーステナイトへの変態を促進するので、均熱処理の好適範囲を広げる効果がある。
【0083】
(5)溶融めっきの前処理工程
溶融亜鉛めっき工程の前に、まず、Ac点〜1000℃に5秒以上保持する均熱処理を施す。
【0084】
本発明に係る鋼板は、Tiを大量に含有しているため、加工歪が残存して加工フェライトの再結晶は抑制される。このことにより、加熱時においてオーステナイト域まで加工歪が残存し易くなり、均熱時における加工フェライトからオーステナイトへの相変態が著しく促進される。そのため、わずか5秒以上の均熱処理を施すことにより、加工フェライトがオーステナイトへ相変態し、加工歪みが取り除かれる。なお、本発明に係る鋼板はTiを含有しているため、均熱時のオーステナイトの粒成長を効果的に抑制することができるので、均熱時間の上限は500秒とするのが好ましい。ただし、生産性の観点からは、200秒以内とするのがより好ましい。
【0085】
均熱処理時の均熱温度は、Ac点〜1000℃とする。均熱温度がAc点未満の場合、2相域での均熱処理となるため、加工フェライトからオーステナイトの相変態が不十分となる。加えて、フェライトの粒成長が著しく、フェライトの面積率が95%超になり、耐切欠き疲労特性が低下してしまう。一方、均熱温度が1000℃超の場合、オーステナイトの粒成長が著しく、その後の冷却過程におけるフェライト粒の生成が低下してしまい、フェライトの面積率が、30%未満となり、曲げ加工性が劣化してしまう。
【0086】
均熱後の冷却については、600℃までは1〜40℃/秒とする必要がある。冷却速度を1〜40℃/秒とすると、Tiを含有していることと相まって、フェライト変態が著しく促進されるので、フェライトの面積率を30〜95%にすることができる。なお、冷却速度を1℃/秒以上とするのは、操業効率の観点からでもある。さらに、冷却速度を1〜40℃/秒とすることにより、析出強化に寄与する粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物を平均粒子間距離30〜300nmで含有させることができる。
【0087】
均熱後に600℃まで1〜40℃/秒で冷却したのちに、めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施す。めっき浴に浸漬する前に、さらに平均冷却速度70℃/秒以下で440〜600℃まで冷却してもよい。600℃以下へ冷却する場合は、その平均冷却速度が70℃/秒を超えると、マルテンサイト面積率が50%を超えてしまい、曲げ加工性が劣化するおそれがある。
【0088】
また、600℃以下へ冷却する場合は、その冷却終了温度を440℃以上とする必要がある。冷却終了温度が440℃未満であると、Ti系炭窒化析出物の析出が少なくなり、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の平均粒子間距離が300nmを超えてしまうため、フェライトによる析出強化に寄与せず、曲げ加工性が劣化してしまう。
【0089】
なお、冷却した後、めっき浸漬前400〜550℃の温度域で5〜100秒程度保持すると、第2相のうちベイナイト比率を上げることができるので、曲げ加工性をさらに向上させることができるので、好ましい。
【0090】
本発明に係る鋼の製造方法においては、鋼塊凝固時の鋼塊表面の冷却速度が速いために、粒径3μm未満の晶出系TiNが、鋼塊表面近傍に、そして、圧延後の鋼板表面近傍に多く微細分散している。そのため、上記の溶融めっきの前処理工程を施した場合、フェライトの核生成サイトであるオーステナイト粒界が多く存在しているので、鋼板表層部のフェライト平均粒径を2〜10μmとすることが可能となる。
めっき浴浸漬後については、合金化を実施しても良い。合金化温度は、鋼板表面が450〜600℃の温度で行うことが望ましい。本発明に係る鋼板の場合、鋼板表層に存在する粒径3μm以上の晶出系TiNの平均粒子間距離が50〜500μmであるので、晶出系TiNによってめっき皮膜中へのFeの拡散を阻害されることはなく、優れた合金化処理性を有している
【実施例1】
【0091】
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、試験連続鋳造機にて連続鋳造を実施し、巾1000mmで厚み50〜270mmのスラブとした。液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度の変更は、スラブ厚みの変更ならびに2次スプレー帯の水量にて調整した。
【0092】
【表1】


試験圧延装置を用いて、得られたスラブを表2に示す条件にて、加熱した後、熱間圧延を実施した。その後、酸洗を実施した。一部の鋼板については、40〜60%の圧下率で冷間圧延を行った。得られた熱延鋼板ならびに冷延鋼板に対して、表3で示した条件で、実験室にて均熱処理、冷却処理、そして溶融亜鉛めっき処理を施した。めっき付着量は、20〜150g/mの範囲で実施した。一部の鋼板においては、めっき後、炉温800〜1300℃で合金化処理もおこなった。
【0093】
【表2】


【0094】
【表3】


1)スラブ平均冷却速度ならびに析出物の評価
得られたスラブの断面をピクリン酸にてエッチングし、5mmピッチでデンドライト2次アーム間隔λ(μm)を測定し、次式に基づいて、その値からスラブの液相線温度〜固相線温度内の冷却速度A(℃/秒)を算出した。なお、平均冷却速度はスラブ表面から厚み方向のスラブ中心部までを5mmピッチで測定した冷却速度の算術計算での平均値とした。
λ=710×A-0.39
晶出系TiNの平均粒径ならびに平均粒子間距離は、得られた鋼板を走査型電子顕微鏡にて、2000倍の倍率で、200視野を撮影し、その画像処理にて算出した。析出強化に寄与する粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の平均粒子間距離の測定は、透過型電子顕微鏡を用いて、10万倍の倍率で50視野を撮影し、それを画像処理して算出した。
【0095】
2)金属組織の評価
鋼板の圧延方向に平行な断面について、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、JIS G 0552に準拠してフェライトの平均結晶粒径を測定した。フェライトの面積率は、画像処理にてもとめた。
【0096】
3)特性評価
得られた鋼板に対して、次に示す、引張試験、限界曲げ試験ならびに切欠き疲労試験を実施した。
【0097】
3)−1 引張試験
各鋼板の圧延直角方向からJIS 5 号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。降伏点YP、引張強さTS、伸びElを測定した。
【0098】
3)−2 限界曲げ試験
各鋼板の圧延直角方向から巾40mm、長さ200mmの試験片を採取した。試験形状ならびに試験方法はJIS Z2248に準じた。曲げ半径は、密着から板厚の1倍、2倍、3倍、4倍にて実施し、その割れが発生しない板厚に対する曲げ半径を限界曲げ半径とした。
【0099】
3)−3 切欠き平面曲げ疲労試験
各鋼板からJIS Z2275に記載されている形状にて長さ90mm、巾40mmの試験片を採取した。その後、試験片平行部の中央部に直径10mmの穴をクリアランス12%で打ち抜き、それを試験片とした。試験方法は、JIS Z2275に準じた。両振り平面曲げ疲労(応力比:−1)にて実施し、10乗回の繰り返し数にて破断しない応力振幅値を疲労限界とし、次式により、TSとの算術計算から耐久比をもとめた。
耐久比=10回で破断した応力振幅値/TS。
【0100】
3)−4 めっき付着量およびめっき密着性
各鋼板から、57.2mm角の試験片を3枚採取し、付着量を測定した。付着量の測定方法は、JIS H 0401に準じた。めっき密着性は、絞り比1.8にて円筒成形をした後、テープによるめっき剥離試験にて簡易的に実施した。試験結果を表4及び表5に示す。
【0101】
【表4】


【0102】
【表5】


本発明である供試材No.1〜18は、限界曲げ半径が「密着〜2.0t」であり、切欠き疲労耐久比が0.38以上であった。そのため曲げ加工性、耐疲労特性に優れ、加えて、めっき密着性にも優れていた。なお、ここで、tは板厚を表わし、2.0tとは、板厚の2倍を意味する。
【0103】
これに対して、供試材No.19は、スラブの平均冷却速度が0.2℃/秒と本発明で規定する範囲外であるため、粒径3μm以上の晶出系TiNの平均粒子間距離は45μmとなった。限界曲げ半径が4.0tであり、曲げ加工性に劣っていた。
【0104】
供試材No.20は、スラブの平均冷却速度が1.1℃/秒と本発明で規定する範囲外であるため、粒径3μm以上の晶出系TiNの平均粒子間距離は520μmとなった。切欠き疲労耐久比が0.32であり、耐切欠き疲労特性に劣っていた。
【0105】
供試材No.21は、加熱温度が1080℃と本発明で規定する範囲外であるため、加熱時において、Ti系炭窒化析出物の再固溶が少なく、Ti系炭窒化析出物は、微細析出しなかった。そして、Ti系炭窒化析出物は、溶融めっき前の前処理工程においても微細析出せず、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の平均粒子間距離は310μmとなった。切欠き疲労耐久比が0.32であり、耐切欠き疲労特性に劣っていた。
【0106】
供試材No.22は、めっき前の冷却終了温度が430℃と本発明で規定する範囲外であるため、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の平均粒子間距離は320nmとなり、フェライトの析出強化に寄与しなかった。限界曲げ半径が4.0tとなり、曲げ加工性に劣っていた。
【0107】
供試材No.23は、熱間圧延時の仕上げ温度が720℃とAr点を下回り、本発明で規定する範囲外であるため、圧延時にフェライト生成による体積変動が起こり、正常な圧延ができなかった。そのため、鋼板表面の品質が悪くて、鋼板の評価ができなかった。
【0108】
供試材No.24は、熱間圧延後の巻き取り温度が750℃と本発明で規定する範囲外であるため、巻き取り後にもスケール生成が起こり、スケール疵が多発した。そのため、鋼板表面の品質が悪くて、鋼板の評価ができなかった。
【0109】
供試材No.25は、めっき処理工程の前の均熱処理温度が790℃とAc点を下回り、2相域での均熱処理となったために、本発明で規定する範囲外である。そのため、フェライトの面積率が96%、鋼板表層から深さ50μm鋼板表層部におけるフェライト平均粒径は11.2μmとなった。このため、切欠き疲労耐久比が0.30となり、耐切欠き疲労特性に劣る。
【0110】
供試材No.26は、めっき処理工程の前の均熱処理温度が1020℃と本発明で規定する範囲外であるため、フェライトの生成がほとんどなく、フェライトの面積率は28%となった。そのため、限界曲げ半径は4.0tとなり、曲げ加工性に劣る。
【0111】
供試材No.27は、めっき処理工程の前の均熱処理が4秒と本発明で規定する範囲外であるため、均熱時におけるオーステナイトの生成が不十分であった。そのため、フェライトの面積率は96%、鋼板表層から深さ50μmまでの鋼板表層部におけるフェライト平均粒径は10.5μmとなった。そのため、切欠き疲労耐久比が0.26となり、耐切欠き疲労特性に劣る。
【0112】
供試材No.28は、600℃までの平均冷却速度が42℃/秒と本発明で規定する範囲外であるため、フェライトの生成ならびに粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の生成が不十分であった。そのため、フェライトの面積率は27%、鋼板表層から深さ50μmまでの鋼板表層部におけるフェライト平均粒径は1.7μmとなった。加えて、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の平均粒子間距離は305nmとなった。そのため、限界曲げ半径は4.0tとなり、曲げ加工性に劣る。また、切欠き疲労耐久比が0.28となり、耐切欠き疲労特性に劣る。
【0113】
供試材No.29は、600℃までの平均冷却速度が0.8℃/秒と本発明で規定する範囲外であるため、フェライトの生成ならびに粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の生成が過多であった。フェライトの面積率は97%、鋼板表層から深さ50μmまでの鋼板表層部におけるフェライト平均粒径は11.2μmとなった。加えて、粒径2〜30nmのTi系炭窒化析出物の平均粒子間距離は25nmとなった。そのため、限界曲げ半径は4.0tとなり、曲げ加工性に劣る。また、切欠き疲労耐久比が0.25となり、耐切欠き疲労特性に劣る。
【0114】
供試材No.30は、600℃以下における冷却停止温度までの平均冷却速度が75℃/秒と本発明で規定する範囲外であるため、第2相であるマルテンサイトの面積率が52%となった。そのため、限界曲げ半径は4.0tとなり、曲げ加工性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の鋼板は、高強度で加工性を確保しつつ、曲げ加工性及び耐切欠き疲労特性、耐食性に優れている。そのため、自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車のメンバーや足廻り部品に代表される構造部材の素材として最適である。また安価に製造できるので産業上格段の効果を奏する。





 

 


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