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発明の名称 ハロゲン化ポリアミド酸組成物およびその応用
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−197660(P2007−197660A)
公開日 平成19年8月9日(2007.8.9)
出願番号 特願2006−216137(P2006−216137)
出願日 平成18年8月8日(2006.8.8)
代理人 【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
発明者 牧野 朋未 / 田尻 浩三 / 後藤 伸一
要約 課題
光導波路を構成する材料としてハロゲン化ポリイミドを使用した場合に、ハロゲン化ポリイミドの屈折率を大きく変化させることができる新規な手段およびその応用を提供すること。

解決手段
ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒、および/または、反応性基を有するカップリング剤とを含有するハロゲン化ポリアミド酸組成物。このハロゲン化ポリアミド酸組成物を、例えば、加熱処理することにより、ハロゲン化ポリイミドフィルムが得られる。このハロゲン化ポリイミドフィルムは、例えば、波長1550nmでの屈折率が1.520以下である。また、光導波路は、このハロゲン化ポリイミドフィルムをコア層およびクラッド層の少なくとも一方に用いており、この光導波路のコア層とクラッド層との比屈折率差は、例えば、0.6%以上である。光導波路装置は、このような光導波路を備える。
特許請求の範囲
【請求項1】
ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒、および/または、反応性基を有するカップリング剤とを含有することを特徴とするハロゲン化ポリアミド酸組成物。
【請求項2】
前記ハロゲン化ポリアミド酸が全ハロゲン化酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる部分ハロゲン化ポリアミド酸である請求項1記載のハロゲン化ポリアミド酸組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン化ポリアミド酸が全ハロゲン化酸二無水物と全ハロゲン化ジアミンとを反応させて得られる全ハロゲン化ポリアミド酸である請求項1記載のハロゲン化ポリアミド酸組成物。
【請求項4】
前記カップリング剤がシランカップリング剤である請求項1〜3のいずれか1項記載のハロゲン化ポリアミド組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のハロゲン化ポリアミド酸組成物から得られることを特徴とするハロゲン化ポリイミドフィルム。
【請求項6】
波長1550nmでの屈折率が1.520以下であることを特徴とするハロゲン化ポリイミドフィルム。
【請求項7】
請求項5または6記載のハロゲン化ポリイミドフィルムをコア層およびクラッド層の少なくとも一方に用いており、該光導波路の該コア層と該クラッド層との比屈折率差が0.6%以上であることを特徴とする光導波路。
【請求項8】
請求項7記載の光導波路を備えることを特徴とする光導波路装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化ポリアミド酸組成物、それから得られたハロゲン化ポリイミドフィルム、光導波路および光導波路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの実用化に伴い、その基本構成としての光導波路に関する技術が注目を集めている。光導波路とは、代表的には、屈折率が高いコア層を屈折率が低いクラッド層が取り囲んだ埋め込み型構造をなすか、あるいは、屈折率が低い下部クラッド層の上に屈折率が高いコア層を形成し、上部クラッド層を空気層としたリッジ型構造をなし、光導波路に入射した光は該コア層と該クラッド層との界面や該コア層と該空気層との界面で反射しながら該コア層中を伝搬する。
【0003】
光導波路の構成材料としては、例えば、石英ガラスや半導体などの無機材料が知られている。他方、種々のポリマーで光導波路を製造する研究開発が行われている。有機材料であるポリマーは、無機材料とは対照的に、成膜工程において、塗布および加熱処理を常圧下で行うことができるので、装置および製造工程を簡素化できるという利点がある。
【0004】
ポリマー導波路の材料としては、光透明性が高いことから、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が一般的であるが、それ以外にも、ガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れ、半田付けにも耐えうることから、ポリイミドが特に期待されている。ただし、通常のポリイミドの場合、光通信に使用される近赤外領域(波長1000〜1700nm)では、ベンゼン環のC−H結合が近赤外光を吸収するので、光透明性を確保するには、水素原子の重水素化やフッ素化が必要である。例えば、特許文献1〜5には、ポリマー導波路の材料として有用な数多くのフッ素化ポリイミドが開示されている。
【0005】
ところで、光導波路においては、上記したように、コア層とクラッド層とに比屈折率差を設ける必要がある。そこで、例えば、特許文献1〜3では、両層の材料として、分子鎖骨格が異なるフッ素化ポリイミドを選択したり、コア層のみをフッ素化ポリイミドから形成し、クラッド層にはポリマー以外の材料(例えば、シリコン酸化膜や空気層)を使用したりしている。これに対し、例えば、特許文献4および5では、コア層とクラッド層とを基本的に同じ分子鎖骨格のフッ素化ポリイミドから形成し、両層のフッ素含有量を変化させることにより、比屈折率差を設けている。
【0006】
さらに、例えば、特許文献6には、2種類のフッ素化ポリイミドを共重合し、フッ素含有量を調整することにより、また、特許文献7には、フッ素化ポリイミドに電子線を照射し、その照射量を調整することにより、比屈折率差を制御する方法が開示されている。
【0007】
しかし、これらの方法は、フッ素化ポリイミドの分子鎖骨格を変化させたり、フッ素含有量を調整したり、共重合を行ったり、また、電子線を照射したりしているので、特定の分子構造を有するフッ素化ポリイミドにしか適用できないとか、大掛かりな装置や複雑な製造工程を必要とするなどの問題点を有する。
【0008】
そこで、特許文献8には、通常のフッ素化ポリイミドを用いて比屈折率差を簡便に制御する方法として、前駆体の部分フッ素化ポリアミド酸にシリカ超微粒子を添加して加熱処理することにより、屈折率が低下した部分フッ素化ポリイミドを得る方法が開示されている。シリカガラスの屈折率は約1.45であるから、部分フッ素化ポリイミド中にシリカ超微粒子を分散させることにより、光透過性を低下させることなく、屈折率を低下させようというものである。
【0009】
しかし、特許文献8の方法では、シリカ超微粒子の分散溶液を部分フッ素化ポリアミド酸溶液に添加した後、分散性を向上させるために24時間攪拌することを必要としているので、生産性が極めて悪いという問題点がある。
【0010】
ところで、特許文献9には、アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物と、ポリアミド酸とを、水の存在下で反応させ、続いてポリイミド化を行うポリイミド組成物の製造方法において、酸触媒および/またはアミノ基含有アルコキシシラン類の存在下に反応させることを特徴とする、シリカ粒子が超微分散したポリイミド組成物の製造方法が開示されている。この方法は、アルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物と水との反応によってシラノールが生成し、次の加熱工程で、このシラノールから生成したシリカ粒子を超微分散させることにより、透明で弾性率に優れたポリイミド組成物(例えば、ポリイミドフィルムやシート)を提供しようというものである。
【0011】
しかし、特許文献9には、ポリアミド酸に代えてハロゲン化ポリアミド酸を用いることが開示も示唆もされていないし、また、シリカ粒子を超微分散させることにより、得られたハロゲン化ポリイミドフィルムの外観や透明性を確保しながら、屈折率を大きく変化させることについては、一切触れられていない。さらに、特許文献9に開示されたポリイミド組成物は、電子材料や、フィルム、シートなどの成形材料、塗料材料などの用途に有用であるとされているが、光学材料に有用であるとはされていない。
【特許文献1】特開平3−72528号公報
【特許文献2】特許第2816771号公報
【特許文献3】特開平4−328504号公報
【特許文献4】特開2004−85937号公報
【特許文献5】特開2005−37841号公報
【特許文献6】特開平4−8734号公報
【特許文献7】特開平6−51146号公報
【特許文献8】特許第3486325号公報
【特許文献9】特開平8−73739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般に、光導波路において、コア層とクラッド層との比屈折率差を大きくできれば、光導波路の曲げ損失が低下するので、その曲げ半径を小さくすることができ、その結果、光回路を小型化できる可能性がある。それゆえ、コア層とクラッド層とを構成するポリイミドの比屈折率差をできる限り大きくすることが望まれている。
【0013】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、光導波路を構成する材料としてハロゲン化ポリイミドを使用した場合に、ハロゲン化ポリイミドの屈折率を大きく変化させることができる新規な手段およびその応用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、種々検討した結果、ハロゲン化ポリイミドの前駆体であるハロゲン化ポリアミド酸に、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒、および/または、反応性基を有するカップリング剤とを配合して、加熱処理、減圧乾燥などの処理を行えば、得られるハロゲン化ポリイミドの屈折率を大きく変化させることができることを見出して、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒、および/または、反応性基を有するカップリング剤とを含有することを特徴とするハロゲン化ポリアミド酸組成物を提供する。
【0016】
本発明のハロゲン化ポリアミド酸組成物において、前記ハロゲン化ポリアミド酸は、好ましくは、全ハロゲン化酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる部分ハロゲン化ポリアミド酸であるか、あるいは、全ハロゲン化酸二無水物と全ハロゲン化ジアミンとを反応させて得られる全ハロゲン化ポリアミド酸である。また、前記カップリング剤は、好ましくは、シランカップリング剤である。
【0017】
また、本発明は、前記ハロゲン化ポリアミド酸組成物から得られることを特徴とするハロゲン化ポリイミドフィルム、ならびに、波長1550nmでの屈折率が1.520以下であることを特徴とするハロゲン化ポリイミドフィルムを提供する。
【0018】
さらに、本発明は、前記ハロゲン化ポリイミドフィルムをコア層およびクラッド層の少なくとも一方に用いており、該光導波路の該コア層と該クラッド層との比屈折率差が0.6%以上であることを特徴とする光導波路、ならびに、該光導波路を備えることを特徴とする光導波路装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハロゲン化ポリアミド酸組成物は、加熱処理、減圧乾燥などの処理を行うだけで、屈折率が大きく変化したハロゲン化ポリイミドを与えるので、かかる組成物を使用すれば、ハロゲン化ポリイミドの屈折率を簡便に制御することができる。このハロゲン化ポリイミドは、屈折率を制御できるという特性を生かして、例えば、光学フィルムや光導波路のコア層およびクラッド層などの光学材料として、光学に関連する分野で幅広く利用することができる。また、かかる組成物は、金属酸化物前駆体から金属酸化物を生成されるための反応の触媒を添加すれば、加熱処理、減圧乾燥などの処理によって得られるハロゲン化ポリイミドフィルムの表面光沢が向上し、および/または、反応性基を含有するカップリング剤を配合すれば、加熱処理、減圧乾燥などの処理によって得られるハロゲン化ポリイミドフィルムの透明性および表面平滑性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
≪ハロゲン化ポリアミド酸組成物≫
本発明のハロゲン化ポリアミド酸組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある。)は、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒(以下、単に「触媒」ということがある。)、および/または、反応性基を有するカップリング剤(以下、単に「カップリング剤」ということがある。)とを含有することを特徴とする。ここで、「金属酸化物前駆体」とは、ハロゲン化ポリアミド酸に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行ってハロゲン化ポリイミドを生成させる加熱処理、減圧乾燥などの処理工程で、自らも反応を起こして金属酸化物を生成する物質を意味する。「触媒」とは、上記したように、金属酸化物前駆体から金属酸化物を生成させるための反応を促進させる働きをする物質を意味する。「カップリング剤」とは、ハロゲン化ポリアミド酸と反応する官能基を有すると共に、金属酸化物前駆体から生成する金属酸化物中間体と反応する物質であり、加熱処理、減圧乾燥などの処理を行った後に生成するハロゲン化ポリイミドと金属酸化物とを結合する働きをする物質を意味する。
【0021】
本発明の組成物は、加熱処理、減圧乾燥などの処理、好ましくは加熱処理を行うと、ハロゲン化ポリアミド酸からハロゲン化ポリイミドが生成すると共に、金属酸化物前駆体から金属酸化物が生成する。それゆえ、得られたハロゲン化ポリイミドの屈折率は、金属酸化物の存在により、その種類に応じて、金属酸化物を含有しない同一のハロゲン化ポリイミドの屈折率に比べて、小さくなるか、あるいは大きくなることになる。なお、ハロゲン化ポリイミド中に存在する金属酸化物は、前記組成物中で金属酸化物前駆体から生成させているので、ナノオーダーで超微分散しており、得られたハロゲン化ポリイミドの光透過性を低下させることはない。
【0022】
本発明の組成物のうち、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒とを含有するハロゲン化ポリアミド酸組成物は、少なくとも0.6%以上の比屈折率差を有するハロゲン化ポリイミドフィルムが得られる。また、比屈折率差が1.6%程度までは、触媒の作用により、得られたハロゲン化ポリイミドフィルムの外観や表面平滑性が向上する。ここで、比屈折率差とは、金属酸化物前駆体などを含有しないハロゲン化ポリアミド酸組成物から得られたハロゲン化ポリイミドフィルムとの比屈折率差である。
【0023】
ところが、さらに大きい比屈折率差を実現するために、金属酸化物前駆体の配合量を増加させていくと、加熱処理、減圧乾燥などの処理後に、ハロゲン化ポリイミドと金属酸化物とが相分離を起こして、ハロゲン化ポリイミドフィルムの外観や、透明性および表面平滑性が低下することが判明した。この場合、触媒を添加しても、ハロゲン化ポリイミドフィルムの外観や、透明性および表面平滑性を向上させる効果はなかった。
【0024】
また、本発明の組成物のうち、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、反応性基を有するカップリング剤とを含有するハロゲン化ポリアミド酸組成物は、少なくとも0.6%以上の比屈折率差を有するハロゲン化ポリイミドフィルムが得られる。しかも、1.6%を超えて3.0%程度までの比屈折率差を実現するために、金属酸化物前駆体の配合量を増加させても、加熱処理、減圧乾燥などの処理後に、ハロゲン化ポリイミドと金属酸化物とが相分離を起こすことなく、反応性基を有するカップリング剤の作用により、得られたハロゲン化ポリイミドフィルムの外観や透明性および表面平滑性が向上する。
【0025】
以下に、本発明の組成物に配合されるハロゲン化ポリアミド酸、金属酸化物前駆体、触媒、カップリング剤などについて、詳しく説明する。
【0026】
<ハロゲン化ポリアミド酸>
本発明の組成物は、加熱処理、減圧乾燥などの処理によってハロゲン化ポリイミドを生成する前駆体として、ハロゲン化ポリアミド酸を含有する。
【0027】
ハロゲン化ポリアミド酸の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは3〜60質量%、より好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは10〜50質量%である。ハロゲン化ポリアミド酸の配合量が3質量%未満であると、加熱処理、減圧乾燥などの処理を行っても、充分なハロゲン化ポリイミドが生成しないことがある。逆に、ハロゲン化ポリアミド酸の配合量が60質量%を超えると、得られるハロゲン化ポリイミドの屈折率を充分に制御できないことや、組成物の粘度が高くなり、ハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製できないことがある。
【0028】
本発明の組成物に配合されるハロゲン化ポリアミド酸は、具体的には、下記式(1):
【0029】
【化1】


【0030】
[式中、Xは4価の有機基、Yは2価の有機基であり、Xおよび/またはYは少なくとも1個のフッ素原子を有する基である。]
で示される繰り返し単位を有するハロゲン化ポリアミド酸である。
【0031】
上記式(1)において、Xで表される4価の有機基としては、例えば、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコールなどに由来する4価のハロゲン含有脂肪族有機基;ベンゼン、ビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼンなどに由来する4価のハロゲン含有芳香族有機基;などが挙げられる。これらの4価の有機基は、いずれも、C−H結合を有しておらず、C−H結合の水素原子が全てハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれか)に置換されているものでなければならない。耐熱性、耐薬品性、撥水性および低誘電性を考慮すると、フッ素化ポリイミド多層膜中にC−H結合が存在しないことが好ましいので、本発明では、フッ素化ポリイミド前駆体としてC−H結合を含まないものを用いるのである。ハロゲン原子の種類は、4価の有機基中において、同一でも異なっていてもよい。これらの4価の有機基のうち、4価のハロゲン含有芳香族有機基が好ましく、4価の全フッ素化芳香族有機基がより好ましく、下記式:
【0032】
【化2】


で示される4価の基が挙げられる。
【0033】
上記3種類の式において、RおよびRは、ハロゲン原子、すなわち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、水素原子は含まれない。RおよびRは、同一であってもまたは異なるものであってもよいが、全部が水素原子である場合はないものとする。好ましくは、いずれか1個がフッ素原子であり、より好ましくは全部がフッ素原子である。
また、上記3種類の式において、Zは、下記式:
【0034】
【化3】


【0035】
で示される2価の基である。上記「Z」を示す式において、Y’およびY”は、ハロゲン原子、すなわち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、好ましくは、いずれか1個がフッ素原子であり、より好ましくは、全部がフッ素原子である。上記「Z」を示す式において、Y’およびY”の両方が存在する場合には、Y’およびY”は、同一であってもまたは異なるものであってもよく、それぞれ、各ベンゼン環中で同一であってもまたは異なるものであってもよいが、全部が水素原子である場合はないものとする。これらの2価の基のうち、Zは、下記式:
【0036】
【化4】


で示される2価の基が好ましい。
【0037】
上記式(1)において、Yは2価の有機基であり、Xがフッ素原子を有しない場合には、Yは必ずフッ素原子を有する。好ましいYの例としては、例えば、i)炭素−ハロゲン結合のみからなる直鎖または分岐、環を含んでいてもよい2価のハロゲン含有脂肪族基;ハロゲン含有芳香族基;2個以上の該脂肪族基や芳香族基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などの炭素原子以外の異種原子で結合した2価のハロゲン含有有機基;などが挙げられる。ハロゲン原子は、全部が同一である必要はなく、「Y」中に異なるハロゲン原子を含んでいてもよい。上記i)の2価のハロゲン含有脂肪族基としては、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコールなどに由来する2価のハロゲン含有脂肪族有機基;ベンゼン、ビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼンなどに由来する2価のハロゲン含有芳香族有機基;などが挙げられる。この「Y」においても、いずれもがC−H結合を有しておらず、C−H結合の水素原子が全てハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれか)に置換されていることが好ましい。
【0038】
上記式(1)において、Yで表される2価の有機基としては、下記i)またはii)に示す2価の有機基が好ましく、耐熱性、耐薬品性、撥水性および低誘電性を考慮すると、下記ii)に示す2価の有機基が最も好ましい。
【0039】
【化5】


【0040】
【化6】


【0041】
本発明においてはこれまで説明したように、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するハロゲン化ポリアミド酸がフッ素原子を含むことを必須とする。上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミド酸は、この繰り返し単位の存在によって、これから形成される本発明のハロゲン化ポリイミドにおいて所望の屈折率(すなわち、既存のフッ素化ポリイミドに対する屈折率差Δn)を達成することができる。本発明では、かかるポリアミド酸として、近赤外域光、特に光通信波長域(1000〜1700nm)における光透過損失を考慮して、炭素−水素結合(C−H結合)は存在しないもの、すなわち、上記式(1)を構成する炭素原子に結合する水素原子の全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれか)に置換されていることが好ましい。少なくともフッ素原子を1つ以上含むポリアミド酸を用いる。すなわち、これによって、耐熱性、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性および光学特性に優れるハロゲン化ポリイミドフィルムの原料となり得る。
【0042】
なお、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するハロゲン化ポリアミド酸の製造方法については、以下に詳述する。この記載から、該ポリアミド酸の末端は、ジアミン化合物およびテトラカルボン酸誘導体の添加量(モル比)によって異なるものの、アミン末端または酸誘導体末端のいずれかであると考えられる。なお、該ポリアミド酸は、同一の繰り返し単位からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
【0043】
このポリアミド酸は、従来公知の技術またはその組合せによって製造することができ、その方法は、特に限定されるものではない。一般的には、有機溶媒中で、下記式(2)で示されるジアミン化合物(以下、単に「ジアミン化合物」ということがある。)を、下記式(3)で示されるテトラカルボン酸、その酸無水物もしくは酸塩化物、またはそのエステル化物(以下、単に「テトラカルボン酸類」ということがある。)などと反応させる方法が好適に使用される。なお、下記式(2)における「Y」および下記式(3)における「X」は、上記式(1)における定義と同様である。
【0044】
【化7】


【0045】
【化8】


【0046】
ジアミン化合物は、テトラカルボン酸などと反応して上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミド酸が製造できるような構造を有するものであれば、特に限定されるものではない。ジアミン化合物としては、好ましいポリアミド酸の構造から、例えば、i)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン;ii)5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ジアミノベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、4,5,6−トリクロロ−1,3−ジアミノ−2―フルオロベンゼン、5−ブロモ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラブロモ−1,3−ジアミノベンゼン;などが挙げられる。これらのジアミン化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのジアミン化合物のうち、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼンが特に好適である。
【0047】
他方、テトラカルボン酸類は、特に限定されるものではなく、特開平11−147955号公報に記載の方法など、従来公知の技術またはその組合せによって製造することができる。テトラカルボン酸類としては、例えば、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェニル)スルフィド、ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェニル)スルフィド、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、3,6−ジフルオロピロメリット酸、3,6−ジクロロピロメリット酸、3−クロロ−6−フルオロピロメリット酸などのハロゲン化テトラカルボン酸;対応する酸二無水物;対応する酸塩化物;メチルエステル、エチルエステルなどの対応するエステル化物;などが挙げられる。これらのテトラカルボン酸類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのテトラカルボン酸類のうち、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、ならびにこれらの対応する酸二無水物および酸塩化物が好適であり、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、およびこれらの酸二無水物が特に好適である。
【0048】
有機溶媒中で、ジアミン化合物をテトラカルボン酸類と反応させる方法により、所望のポリアミド酸が製造することができる。なお、生成するポリアミド酸が、フッ素原子を含むように、これらの原料を選択することが好ましい。
【0049】
ジアミン化合物の添加量は、テトラカルボン酸類と効率よく反応できる量であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ジアミン化合物の添加量は、化学量論的には、テトラカルボン酸類と等モルであるが、テトラカルボン酸類などの全モル数を1モルとした場合に、好ましくは0.8〜1.2モル、より好ましくは0.9〜1.1モルである。この際、ジアミン化合物の添加量が0.8モル未満であると、テトラカルボン酸類が多量に残存してしまい、精製工程が複雑になることがあり、また、重合度が大きくならないことがある。逆に、ジアミン化合物の添加量が1.2モルを超えると、ジアミン化合物が多量に残存してしまい、精製工程が複雑になることがあり、また、重合度が大きくならないことがある。
【0050】
反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒は、ジアミン化合物およびテトラカルボン酸類との反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。使用可能な有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの極性有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、有機溶媒の量は、ジアミン化合物およびテトラカルボン酸類との反応が効率よく進行できる量であれば、特に限定されるものではないが、有機溶媒中のジアミン化合物の濃度が1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%となるような量であることが好ましい。
【0051】
ジアミン化合物およびテトラカルボン酸類との反応条件は、これらの反応が充分進行できる条件であれば、特に限定されるものではない。例えば、反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃である。また、反応時間は、通常、1〜144時間、好ましくは2〜120時間である。また、反応は、加圧下、常圧下または減圧下のいずれの圧力下で行ってもよいが、好ましくは常圧下で行われる。また、ジアミン化合物およびテトラカルボン酸類との反応は、反応効率および重合度などを考慮すると、乾燥した不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。この際の反応雰囲気における相対湿度は、好ましくは10%RH以下、より好ましくは1%RH以下である。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが使用できる。
【0052】
<金属酸化物前駆体>
本発明の組成物には、該組成物中のハロゲン化ポリアミド酸からハロゲン化ポリイミドを生成させる加熱処理、減圧乾燥などの処理工程で、自らも反応を起こして金属酸化物を生成する金属酸化物前駆体を配合する必要がある。
本発明の組成物に配合される金属酸化物前駆体は、具体的には、下記式(4):
【0053】
【化9】


【0054】
[式中、Mはケイ素または4価の金属元素、RおよびRは、互いに独立して、炭素数1〜5のアルキル基、アリル基または炭素数6〜10のアリール基を表し;nは1〜4の整数を表し、好ましくは3または4である]
で示される金属アルコキシ化合物、および/または、下記式(5):
【0055】
【化10】


【0056】
[式中、Rは、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アリル基または炭素数6〜10のアリール基を表し;nは0または1〜10の整数を表す]
で示されるアルコキシシラン縮合物である。
【0057】
上記式(4)において、Mで表されるケイ素または4価の金属元素としては、加熱処理により金属酸化物前駆体から生成される金属酸化物が、組成物中のハロゲン化ポリアミド酸から生成されるハロゲン化ポリイミドの屈折率を変化させる限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウムなどが挙げられる。これらのケイ素および金属元素のうち、ケイ素はハロゲン化ポリイミドの屈折率を低下させる場合に用いられ、他方、チタンやジルコニウムはハロゲン化ポリイミドの屈折率を上昇させる場合に用いられる。
【0058】
上記式(4)において、Mがケイ素であるアルコキシ化合物、すなわちアルコキシシラン、および/または、上記式(5)で示されるアルコキシシラン縮合物は、加熱処理により、シリカを生成する。また、上記式(4)において、Mがチタンであるアルコキシ化合物、すなわちアルコキシチタンは、加熱処理により、酸化チタンを生成する。さらに、上記式(4)において、Mがジルコニウムであるアルコキシ化合物、すなわちアルコキシジルコニウムは、加熱処理により、酸化ジルコニウムを生成する。
【0059】
なお、上記式(4)および式(5)において、R、RまたはRで表される炭素数1〜5のアルキル基、アリル基および炭素数6〜10のアリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。
【0060】
本発明の組成物に配合される金属酸化物前駆体の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリブトキシメチルシラン、テトラフェノキシシランなどのアルコキシシランおよびその縮合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタンなどのアルコキシチタン化合物;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブチルジルコニウムなどのアルコキシジルコニウム化合物が挙げられる。これらの金属酸化物前駆体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属酸化物前駆体のうち、テトラメトキシシランおよびその縮合物が特に好適である。
【0061】
金属酸化物前駆体の配合量は、組成物中のハロゲン化ポリアミド酸に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%である。金属酸化物前駆体の配合量が5質量%未満であると、得られるハロゲン化ポリイミドの屈折率を充分に制御することができないことがある。逆に、金属酸化物前駆体の配合量が60質量%を超えると、得られるハロゲン化ポリイミドの外観が劣ることがある。
【0062】
本発明の組成物に配合される金属酸化物前駆体として、金属キレート化合物を使用することもできる。金属キレート化合物としては、具体的には、例えば、チタンテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトナート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムブトキシアセチルアセトナート(エチルアセトナート)などが挙げられる。これらの金属キレート化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
<触媒>
本発明の組成物には、金属酸化物前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒を配合する場合がある。触媒は、下記のカップリング剤を配合せずに単独で用いても、下記のカップリング剤と併用してもよい。
【0064】
本発明の組成物に配合される触媒としては、金属酸化物前駆体から金属酸化物を生成させるための反応を促進させる働きをする限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、塩酸、酢酸、シュウ酸などの酸類や、アンモニア、有機アミンなどの塩基類のほか、トリメトキシボラン、亜リン酸トリメチルなどが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの触媒のうち、トリメトキシボランが特に好適である。
【0065】
触媒を組成物に配合する場合、触媒の配合量は、組成物中のハロゲン化ポリアミド酸に対して、好ましくは0.02〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。触媒の配合量が0.02質量%未満であると、金属酸化物前駆体から充分な金属酸化物を生成させることができないことがある。逆に、触媒の配合量が15質量%を超えると、触媒の作用が飽和すると共に、必要以上に触媒を使用することになり、製造コストが上昇することがある。
【0066】
<カップリング剤>
本発明の組成物には、反応性基を有するカップリング剤を配合する場合がある。カップリング剤は、上記の触媒を配合せずに単独で用いても、上記の触媒と併用してもよい。
【0067】
反応性基を有するカップリング剤を配合すると、例えば、本発明の組成物に金属酸化物前駆体としてアルコキシシランおよび/またはその縮合物を配合した場合、アルコキシシランおよび/またはその縮合物と水との反応によって、金属酸化物中間体のシラノールが生成し、このシラノールとハロゲン化アミド酸とがカップリング剤を介して反応するので、次の加熱処理、減圧乾燥などの処理工程で、このシラノールからシリカが生成しても、ハロゲン化ポリイミドとシリカとがカップリング剤を介して結合しているので、相分離を起こさないと考えられる。
【0068】
本発明の組成物に配合されるカップリング剤としては、ハロゲン化ポリアミド酸と反応する反応性基を有するカップリング剤である限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、下記式(6):
【0069】
【化11】


【0070】
[式中、Aは、アミノ基、N−アミノアルキルアミノ基、グリシドキシ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基またはハロゲン基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、RおよびRは、互いに独立して、炭素数1〜5のアルキル基、アリル基または炭素数6〜10のアリール基を表し;mは0〜3の整数を表す]
で示されるシランカップリング剤;下記式(7):
【0071】
【化12】


【0072】
[式中、Bは、互いに独立して、アミノ基またはアミノアルキルアミノ基を表し、Rは、炭素数1〜5のアルキル基、アリル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、Rは、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキレン基を表す]
で示されるチタネート系カップリング剤;などが挙げられる。
【0073】
上記式(6)において、Aで表されるアミノアルキルアミノ基としては、例えば、2−アミノエチルアミノ基、3−アミノプロピルアミノ基などが挙げられる。また、上記式(6)において、Rで表される炭素数1〜10のアルキレン基、ならびに、RまたはRで表される炭素数1〜5のアルキル基、アリル基および炭素数6〜10のアリール基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。
【0074】
上記式(7)において、Bで表されるアミノアルキルアミノ基としては、例えば、2−アミノエチルアミノ基、3−アミノプロピルアミノ基などが挙げられる。また、上記式(7)において、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基、アリル基および炭素数6〜10のアリール基、ならびに、R10で表される炭素数1〜10のアルキレン基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。
【0075】
本発明の組成物に配合されるカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(3−アミノプロピル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(3−アミノプロピル)アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキルアミノ基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシ基含有シランカップリング剤;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリロキシ基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのメタクリル基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン基含有シランカップリング剤;イソプロピルトリ(5−アミノペンチル)チタネート、イソプロピルトリ(6−アミノヘキシル)チタネート、イソプロピルトリ(7−アミノヘプチル)チタネート、イソプロピルトリ(8−アミノオクチル)チタネートなどのアミノ基含有チタネート系カップリング剤;イソプロピルトリ(2−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリ(2−アミノエチル−アミノプロピル)チタネート、イソプロピルトリ(3−アミノプロピル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリ(3−アミノプロピル−アミノプロピル)チタネートなどのアミノアルキルアミノ基含有チタネート系カップリング剤;などが挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で用いも2種以上を併用してもよい。これらのカップリング剤のうち、シランカップリング剤が好適であり、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤が特に好適である。
【0076】
カップリング剤を組成物に配合する場合、カップリング剤の配合量は、組成物中のハロゲン化ポリアミド酸に対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜18質量%、さらに好ましくは2〜15質量%である。カップリング剤の配合量が1質量%未満であると、加熱処理、減圧乾燥などの処理後に、ハロゲン化ポリイミドと金属酸化物とが相分離を起こして、ハロゲン化ポリイミドフィルムの外観や、透明性および表面平滑性が低下することがある。逆に、カップリング剤の配合量が20質量%を超えると、ハロゲン化ポリアミド酸組成物の調製時にゲル化が生じることがある。
【0077】
<水>
本発明の組成物には、さらに水を添加してもよい。本発明の組成物に水を添加すると、例えば、該組成物に金属酸化物前駆体としてアルコキシシランおよび/またはその縮合物を配合した場合、アルコキシシランおよび/またはその縮合物と水との反応によって、金属酸化物中間体のシラノールが生成し、次の加熱処理、減圧乾燥などの処理工程で、このシラノールからシリカが容易に生成する。このシラノールを生成する反応は、組成物に触媒を配合している場合には、この触媒によって促進されると考えられる。また、本発明の組成物に水を添加すると、例えば、組成物に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行って得られるハロゲン化ポリイミドフィルムの表面光沢が向上するという効果がある。
【0078】
水を組成物に配合する場合、水の添加量は、組成物中のハロゲン化ポリアミド酸に対して、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.2〜35質量%、さらに好ましくは0.5〜30質量%である。
【0079】
≪ハロゲン化ポリアミド酸組成物の製造≫
本発明の組成物は、必須成分であるハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させる反応の触媒、および/または、反応性基を含有するカップリング剤と、必要に応じて水とを適当な割合で混合し、充分に攪拌し、脱泡することにより、ワニスの形態として製造することができる。本発明の組成物の製造に使用する装置や条件としては、従来公知の装置や条件を採用すればよく、特に限定されるものではない。なお、本発明の組成物に水を添加する場合には、各成分を混合する任意の段階で添加すればよい。
【0080】
≪ハロゲン化ポリイミドフィルム≫
本発明の組成物をフィルム状に成形した後、加熱処理、減圧乾燥などの処理を行って、該組成物中のハロゲン化ポリアミド酸を閉環させることにより、本発明のハロゲン化ポリイミドフィルムが得られる。
【0081】
本発明の組成物をフィルム状に成形する方法は、従来公知の方法の中から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、スピンコーティング法、キャスティング法、ロールコーティング法、スプレーコーティング法、バーコーティング法、ディップコーティング法などが挙げられる。
【0082】
本発明の組成物をフィルム状に成形する際に使用する基板としては、無機材料、有機材料を問わず、従来公知の材料を使用することができるが、例えば、ポリイミドを加熱処理して焼成する場合には、加熱処理時の温度で熱変形を起こさないという観点から、シリコンなどの半導体基板;石英、パイレックス(登録商標)などのガラス基板;アルミニウム、銅などの金属基板;金属酸化物基板;ポリイミド、ポリエーテルケトンなどの樹脂基板;有機・無機ハイブリッド基板;などを使用することが好ましい。
【0083】
フィルム状に成形された本発明の組成物に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行う方法や条件は、該組成物中のハロゲン化ポリアミド酸が効率よく閉環して、所望のハロゲン化ポリイミドフィルムを製造できる方法や条件を採用すればよく、特に限定されるものではない。具体的には、加熱処理は、通常、空気中、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、好ましくは、70℃〜350℃程度の温度で、好ましくは、2〜5時間程度行われる。また、加熱処理は、連続的に行っても、あるいは段階的に行ってもよい。減圧乾燥は、通常、常温、冷却または加熱下、好ましくは1.33×10−1Pa(1×10−3Torr)〜1.01×10Pa(760Torr)未満程度の減圧下で、好ましくは2〜24時間程度行われる。また、減圧乾燥は、連続的に行っても、あるいは段階的に行ってもよい。
【0084】
本発明のハロゲン化ポリイミドフィルムの厚さは、その用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmである。ハロゲン化ポリイミドフィルムの厚さが5μm未満であると、フィルムの強度が低下することがある。逆に、ハロゲン化ポリイミドフィルムの厚さが200μmを超えると、フィルムの光透明性が低下することがある。
【0085】
本発明のハロゲン化ポリイミドフィルムを構成するハロゲン化ポリイミドは、具体的には、下記式(8):
【0086】
【化13】


【0087】
[式中、XおよびYは上記式(1)における定義と同様である]
で示される繰り返し単位を有するポリイミドである。なお、本発明においては、加熱処理、減圧乾燥などの処理により金属酸化物前駆体から生成した金属酸化物を含有するハロゲン化ポリイミドを単に「ハロゲン化ポリイミド」といい、加熱処理、減圧乾燥などの処理により金属酸化物前駆体から生成した金属酸化物を含有するハロゲン化ポリイミドフィルムを単に「ハロゲン化ポリイミドフィルム」ということがある。
【0088】
上記式(8)において、Xで表される4価の有機基やYで表される2価の有機基の好ましい具体例は、ハロゲン化ポリアミド酸について説明した際に列挙した上記の具体例が挙げられる。
【0089】
本発明のハロゲン化ポリイミドフィルムは、その製造時に、金属酸化物前駆体として、アルコキシシランおよび/またはその縮合物を用いた場合には、屈折率が低い(約1.45)シリカを含有しており、シリカを含有しない同一のハロゲン化ポリイミドフィルムに比べて、屈折率が低下している。また、金属酸化物前駆体として、アルコキシチタンやアルコキシジルコニウムを用いた場合には、屈折率が高い(2を超える)酸化チタンや酸化ジルコニウムを含有しており、酸化チタンや酸化ジルコニウムを含有しない同一のハロゲン化ポリイミドフィルムに比べて、屈折率が上昇している。このように、本発明においては、金属酸化物前駆体の種類や配合量を調節することにより、得られたハロゲン化ポリイミドフィルムの屈折率を制御することができる。このような方法によれば、例えば、波長1550nmでの屈折率がTEモードおよびTMモードで共に1.520以下、好ましくは1.510以下であるハロゲン化ポリイミドフィルムが得られる。このハロゲン化ポリイミドフィルムにおける屈折率の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、TEモードおよびTMモードで共に1.480である。
【0090】
≪光導波路≫
本発明において、「光導波路」とは、クラッド層とコア層とを有し、光導波路に入射した光は該コア層と該クラッド層との界面や該コア層と空気層との界面で反射しながら該コア層中を伝搬する光回路を意味する。
【0091】
本発明の組成物を塗布した後、加熱処理、減圧乾燥などの処理を行って、該組成物中のハロゲン化ポリアミド酸を閉環させることにより、ハロゲン化ポリイミドフィルムからなるコア層および/またはクラッド層が得られる。本発明の光導波路は、このようにして得られたコア層とクラッド層との比屈折率差が0.6%以上であることを特徴とする。コア層とクラッド層との比屈折率差は、好ましくは1.6%以上、より好ましくは2.6%以上である。なお、コア層とクラッド層との比屈折率差の上限は、コア層を構成する材料などに依存するので、特に限定されるものではない。
【0092】
上記したように、本発明においては、金属酸化物前駆体の種類や配合量を調節することにより、得られたハロゲン化ポリイミドフィルムの屈折率を制御することができる。それゆえ、コア層とクラッド層との比屈折率差が0.6%以上になるように、コア層を構成するハロゲン化ポリイミドと、クラッド層を構成するハロゲン化ポリイミドとを適宜選択することにより、本発明の光導波路が得られる。
【0093】
コア層および/またはクラッド層を構成するハロゲン化ポリイミドは、具体的には、下記式(8):
【0094】
【化14】


【0095】
[式中、XおよびYは上記式(1)における定義と同様である]
で示される繰り返し単位を有するポリイミドであり、比屈折率差が0.6%以上になるようにハロゲン化ポリイミドの種類が選択される。
【0096】
上記式(8)において、Xで表される4価の有機基やYで表される2価の有機基の好ましい具体例は、ハロゲン化ポリアミド酸について説明した際に列挙した上記の具体例が挙げられる。
【0097】
本発明の光導波路は、その構造が特に限定されるものではなく、リッジ型や埋め込み型に加えて、ファイバー型、平面型、レンズ型など、従来一般的に製造されるすべての光導波路と同様の構造を採用することができる。
【0098】
以下に、本発明の一実施態様として、リッジ型光導波路の製造方法を、図1を参照しながら記載するが、本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0099】
まず、シリコンや石英ガラスなどの基板1上に、下部クラッド層2を構成するハロゲン化ポリイミドの前駆体であるハロゲン化ポリアミド酸組成物(例えば、本発明の組成物)を滴下し、スピンコーティング法で所定の厚さになるように製膜し、この被膜に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行って、ハロゲン化ポリイミド(A)からなる下部クラッド層2を形成する。次いで、この下部クラッド層2上に、さらにコア層3を構成するハロゲン化ポリイミドの前駆体であるハロゲン化ポリアミド酸組成物(例えば、本発明の組成物)を滴下し、スピンコーティング法で所定の厚さになるように製膜し、この被膜に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行って、ハロゲン化ポリイミド(B)からなるコア層3を形成する。さらに、このコア層3上にフォトレジストを塗布し、プリベーク、露光、現像、アフターベークを行い、パターニングされたレジスト層4を形成する。続いて、コア層3のうちレジスト層4で被覆されていない部分をドライエッチングにより除去した後、レジスト層4を剥離する。このようにして、下部クラッド層2がハロゲン化ポリイミド(A)、コア層3がハロゲン化ポリイミド(B)、そして上部クラッド層が空気層からなるリッジ型光導波路が得られる。なお、本発明の組成物は、下部クラッド層2およびコア層3の少なくとも一方を形成するのに使用される。
【0100】
また、以下に、本発明の他の実施態様として、埋め込み型光導波路の製造方法を、図2を参照しながら記載するが、本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。なお、図2において、符号1〜3は図1と同様の意味を有し、5は上部クラッド層を意味する。
【0101】
まず、上記の実施態様と同様の方法を用いて、基板1上にハロゲン化ポリアミド酸組成物に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行って得られるハロゲン化ポリイミド(A)からなる下部クラッド層2を設けた後、下部クラッド層2上にパターニングされたハロゲン化ポリイミド(B)からなるコア層3を設ける。次いで、このコア層3上と、コア層3で被覆されていない下部クラッド層2上とに、上部クラッド層を構成するハロゲン化ポリイミドの前駆体であるハロゲン化ポリアミド酸組成物(例えば、本発明の組成物)を滴下し、スピンコーティング法で所定の厚さになるように製膜し、この被膜に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行って、ハロゲン化ポリイミド(C)からなる上部クラッド層5を形成する。このようにして、下部クラッド層2がハロゲン化ポリイミド(A)、コア層3がハロゲン化ポリイミド(B)、そして上部クラッド層5がハロゲン化ポリイミド(C)からなる埋め込み型光導波路が得られる。なお、本発明の組成物は、下部クラッド層2、コア層3および上部クラッド層5の少なくとも1つを形成するのに使用される。ただし、下部クラッド層および上部クラッド層を構成するハロゲン化ポリイミドは、同一の組成物から形成されていることが好ましい。
【0102】
本発明の光導波路において、下部クラッド層、コア層および上部クラッド層の厚さは、光導波路の構造や用途、通信に使用する光の波長などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、リッジ型光導波路の場合、下部クラッド層およびコア層の厚さは、通常、1〜50μmであり、また、埋め込み型光導波路の場合、下部クラッド層、コア層および上部クラッド層の厚さは、通常、1〜50μmである。
【0103】
本発明の光導波路は、コア層とクラッド層との比屈折率差が0.6%以上であるので、光導波路の曲げ損失が低下し、そのことによりその曲げ半径を小さくすることができる。その結果、本発明の光導波路を用いれば、光回路を小型化することができる。
【0104】
≪光導波路装置≫
本発明の光導波路は、種々の光導波路装置に使用される。本発明の光導波路装置は、本発明の光導波路を備えることを特徴とする。ここで、「光導波路装置」とは、光導波路を備える装置を意味し、具体的には、例えば、光合分波器、スプリッター、光電気変換素子、波長フィルター、AWGなどが挙げられる。本発明の光導波路装置は、光導波路が本発明の光導波路であること以外は、従来公知の光導波路装置と同様である。それゆえ、光導波路以外の部分は、従来公知の光導波路装置と同様に構成すればよい。すなわち、本発明の光導波路装置は、従来公知の光導波路装置における光導波路を本発明の光導波路に置き換えることにより得られる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0106】
まず、実施例1〜3、実施例6〜8、比較例1および3で得られたポリイミドフィルムの屈折率の測定方法について説明する。
【0107】
<屈折率の測定>
ポリイミドフィルムの屈折率は、プリズムカプラーSPA−4000(SAIRON TECHNOLOGY,INC.製)を用いて、入射光の電場ベクトルがフィルム表面に平行であるTEモードと、入射光の電場ベクトルがフィルム表面に垂直であるTMモードとについて測定した。屈折率の測定に用いた光の波長は、近赤外領域における1550nmであった。なお、コア層とクラッド層との比屈折率差、すなわちクラッド層用ポリイミドフィルムに対するコア層用ポリイミドフィルムの比屈折率差は、式:[(コア層用ポリイミドフィルムの屈折率−クラッド層用ポリイミドフィルムの屈折率)/(クラッド層用ポリイミドフィルムの屈折率)]×100(%)により算出した。
【0108】
次いで、実施例1〜11および比較例1〜6で使用したハロゲン化ポリアミド酸溶液の合成例について説明する。
【0109】
≪合成例1≫
容量50mLの三ツ口フラスコに、1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン1.80g(10ミリモル)、下記式(9):
【0110】
【化15】


【0111】
で示される4、4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)5.82g(10ミリモル)およびN,N−ジメチルアセトアミド12.4gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中、室温で6日間攪拌することにより、ハロゲン化ポリアミド酸溶液(固形分濃度:38.0質量%)を得た。
【0112】
≪合成例2≫
容量50mLの三ツ口フラスコに、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン1.97g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)5.82g(10ミリモル)およびN,N−ジメチルアセトアミド15.8gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中、室温で6日間攪拌することにより、ハロゲン化ポリアミド酸溶液(固形分濃度:33.0質量%)を得た。
【0113】
≪合成例3≫
容量50mLの三ツ口フラスコに、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン1.97g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)5.82g(10ミリモル)およびN,N−ジメチルアセトアミド10.75gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中、室温で6日間攪拌することにより、ハロゲン化ポリアミド酸溶液(固形分濃度:42.0質量%)を得た。このハロゲン化ポリアミド酸溶液に、ビス(ペンタフルオロフェニル)スルフィドが全固形分の25質量%(よって、ハロゲン化ポリアミド酸は全固形分の75質量%)になるように添加して、自公転遠心式混合装置(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」;(株)シンキー製)を用いて攪拌し、脱泡し、コア用のハロゲン化ポリアミド酸組成物を得た。
【0114】
次いで、実施例1〜3に、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒とを含有するハロゲン化ポリアミド酸組成物を用いたハロゲン化ポリイミドフィルム(以下、単に「ポリイミドフィルム」ということがある。)の製造例について説明する。
【0115】
≪実施例1≫
合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液10gにテトラメトキシシラン1.52gおよびトリメトキシボラン0.01gを添加し、自公転遠心式混合装置を用いて攪拌し、脱泡し、ハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製した。
【0116】
得られた組成物をシリコン基板上に滴下し、スピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された340℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmのポリイミドフィルム(I)を得た。このポリイミドフィルム(I)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.519、TMモードで1.512であった。結果を表1に示す。
【0117】
合成例2で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液を使用すること以外は、上記と同様にしてスピンコーティング法で製膜し、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmのポリイミドフィルム(II)を得た。このポリイミドフィルム(II)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.530、TMモードで1.524であった。ポリイミドフィルム(I)とポリイミドフィルム(II)との比屈折率差は、TEモードで0.72%、TMモードで0.79%であった。結果を表1に示す。
【0118】
≪実施例2≫
合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液10gにテトラメトキシシラン縮合物(商品名「Mシリケート51」;多摩化学工業(株)製)1.52gおよびトリメトキシボラン0.01gを添加し、自公転遠心式混合装置を用いて攪拌し、脱泡し、ハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製した。
【0119】
得られた組成物をシリコン基板上に滴下し、スピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された340℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmのポリイミドフィルム(III)を得た。このポリイミドフィルム(III)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.506、TMモードで1.500であった。このポリイミドフィルム(III)と実施例1で得られたポリイミドフィルム(II)との比屈折率差は、TEモードで1.59%、TMモードで1.60%であった。結果を表1に示す。
【0120】
≪実施例3≫
合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液10gにテトラメトキシシラン1.52g、トリメトキシボラン0.01gおよび水0.72gを添加し、自公転遠心式混合装置を用いて攪拌し、脱泡し、ハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製した。
【0121】
得られた組成物をシリコン基板上に滴下し、スピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された340℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmのポリイミドフィルム(IV)を得た。このポリイミドフィルム(IV)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.508、TMモードで1.501であった。このポリイミドフィルム(IV)と実施例1で得られたポリイミドフィルム(II)との比屈折率差は、TEモードで1.44%、TMモードで1.53%であった。結果を表1に示す。
【0122】
≪比較例1≫
実施例1において、テトラメトキシシランおよびトリメトキシボランを添加しなかったこと以外は、実施例1の操作を繰り返すことによって、厚さ10μmのポリイミドフィルム(V)を調製した。このポリイミドフィルム(V)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.522、TMモードで1.515であった。このポリイミドフィルム(V)と実施例1で得られたポリイミドフィルム(II)との比屈折率差は、TEモードで0.53%、TMモードで0.59%であった。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】


【0124】
表1から明らかなように、実施例1のポリイミドフィルム(I)は、ハロゲン化ポリアミド酸に金属酸化物前駆体のテトラメトキシシランおよび触媒のトリメトキシボランを添加して加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(II)との比屈折率差が、波長1550nmにおいて、TEモードで0.7%を超え、TMモードで約0.8に達していた。また、実施例2のポリイミドフィルム(III)は、ハロゲン化ポリアミド酸に金属酸化物前駆体のテトラメトキシシラン縮合物および触媒のトリメトキシボランを添加して加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(II)との比屈折率差が、波長1550nmにおいて、TEモードおよびTMモードで共に約1.6%に達していた。さらに、実施例3のポリイミドフィルム(IV)は、ハロゲン化ポリアミド酸に金属酸化物前駆体のテトラメトキシシラン、触媒のトリメトキシボランおよび水を添加して加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(II)との比屈折率差が、波長1550nmにおいてTEモードで1.4%を超え、TMモードで約1.6%に達していた。
【0125】
これに対し、比較例1のポリイミドフィルム(V)は、金属酸化物前駆体や触媒を添加せずに加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(II)との比屈折率差が、波長1550nmにおいて、TEモードおよびTMモードで共に0.6%未満であった。
【0126】
かくして、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該金属酸化物前駆体から金属酸化物を生成させるための反応の触媒とを含有する本発明のハロゲン化ポリアミド酸組成物は、屈折率が制御されたハロゲン化ポリイミドフィルムを与えることがわかる。
【0127】
次いで、実施例4〜5に、実施例1で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物と、合成例1または2で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液とを用いた光導波路の製造例について説明する。
【0128】
≪実施例4≫
実施例1で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物を、シリコン基板上に滴下し、加熱処理後の膜厚が15μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を340℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、ハロゲン化ポリイミド(A)からなる下部クラッド層を作製した。この下部クラッド層上に合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液を滴下し、加熱処理後の膜厚が8μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を340℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、下部クラッド層上に、ハロゲン化ポリイミド(B)からなるコア層を作製した。
【0129】
これらのハロゲン化ポリイミドフィルム上に、レジスト液(商品名「FH−SP3CL」;富士フィルムアーチ(株)製)を塗布し、90℃で2分間プリベークを行った後、UV光で露光を行い、現像、110℃で5分間アフターベークを行うことにより、幅8μm、長さ50mmの直線パターンのレジスト層を得た。
【0130】
次いで、反応性イオンエッチング装置(商品名「L−451DMKII」;アネルバ(株)製)を用いて、酸素イオンエッチングを行った後、残ったレジスト層を剥離することにより、下部クラッド層がハロゲン化ポリイミド(A)、コア層がハロゲン化ポリイミド(B)、上部クラッド層が空気層からなるリッジ型光導波路を得た。
【0131】
さらに、実施例1で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物を滴下し、膜厚15μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を340℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、ハロゲン化ポリイミド(A)からなる上部クラッド層を作製し、ダイシングソー(商品名「DAD321」;(株)ディスコ製)を用いて、導波路端面を切断し、長さ50mmの埋め込み型直線導波路を得た。この光導波路は、下部クラッド層がハロゲン化ポリイミド(A)、コア層がハロゲン化ポリイミド(B)、そして上部クラッド層がハロゲン化ポリイミド(A)からなる埋め込み型光導波路である。
【0132】
<ニアフィールドパターン試験>
波長1310nmの光をコア径10μmのシングルモードファイバーによりバットジョイントでマッチングオイルを介して、得られた光導波路の端部に入光させた後、ニアフィールドパターンを観察した。また、出射光をコア径10μmのシングルモードファイバーによりバットジョイントでマッチングオイルを介して、受光し、光導波路の損失を測定した。結果を表2に示す。
【0133】
≪実施例5≫
合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液に代えて、合成例2で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液を用いて、実施例1と同様にしてハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製し、下部クラッド層および上部クラッド層を形成したこと以外は、実施例4と同様にして埋め込み型光導波路を得た。得られた埋め込み型光導波路を用いて、ニアフィールドパターン試験を行った。結果を表2に示す。
【0134】
≪比較例2≫
実施例1で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物に代えて、テトラメトキシシランおよびトリメトキシボランを添加していないハロゲン化ポリアミド酸溶液を用いて、上部クラッド層および下部クラッド層を形成したこと以外は、実施例4と同様にして埋め込み型光導波路を得た。得られた埋め込み型光導波路を用いて、ニアフィールドパターン試験を行った。結果を表2に示す。
【0135】
【表2】


【0136】
表2から明らかなように、実施例4、5および比較例2の光導波路は波長1310nmの光に対する損失は同程度であるが、実施例4および5の光導波路はニアフィールドパターンがマルチモードであり、クラッド層とコア層との屈折率差が大きいことを示し、比較例2の光導波路はニアフィールドパターンがシングルモードであり、クラッド層とコア層との屈折率差が小さいことを示している。
【0137】
次いで、実施例6〜8に、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、反応性基を有するカップリング剤とを含有するハロゲン化ポリアミド酸組成物を用いたハロゲン化ポリイミドフィルム(以下、単に「ポリイミドフィルム」ということがある。)の製造例について説明する。
【0138】
≪実施例6≫
合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液10gに、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.2gをN,N−ジメチルアセトアミド5gに溶解した溶液を添加し、自公転遠心式混合装置(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」;(株)シンキー製)を用いて攪拌した。この溶液にテトラメトキシシラン1.52gおよび水0.36gを添加し、自公転遠心式混合装置(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」;(株)シンキー製)を用いて攪拌し、脱泡し、ハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製した。
【0139】
得られた組成物をシリコン基板上に滴下し、スピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmの透明なポリイミドフィルム(VI)を得た。このポリイミドフィルム(VI)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.511、TMモードで1.507であった。このポリイミドフィルム(VI)は、透明性および表面平滑性に優れ、良好な外観を有していた。結果を表3に示す。
【0140】
合成例2で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液を使用すること以外は、上記と同様にしてスピンコーティング法で製膜し、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmの透明なポリイミドフィルム(VII)を得た。このポリイミドフィルム(VII)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.533、TMモードで1.528であった。このポリイミドフィルム(VII)は、透明性および表面平滑性に優れ、良好な外観を有していた。ポリイミドフィルム(VI)とポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差は、TEモードで1.5%、TMモードで1.4%であった。結果を表3に示す。
【0141】
≪実施例7≫
合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液10gに、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.4gをN,N−ジメチルアセトアミド5gに溶解した溶液を添加し、自公転遠心式混合装置(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」;(株)シンキー製)を用いて攪拌した。この溶液にテトラメトキシシラン縮合物(商品名「Mシリケート51」;多摩化学工業(株)製)1.90gおよび水0.36gを添加し、自公転遠心式混合装置(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」;(株)シンキー製)を用いて攪拌し、脱泡し、ハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製した。
【0142】
得られた組成物をシリコン基板上に滴下し、スピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmの透明なポリイミドフィルム(VIII)を得た。このポリイミドフィルム(VIII)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.507、TMモードで1.501であった。このポリイミドフィルム(VIII)は、透明性および表面平滑性に優れ、良好な外観を有していた。このポリイミドフィルム(VIII)と実施例6で得られたポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差は、TEモードで1.7%、TMモードで1.8%であった。結果を表3に示す。
【0143】
≪実施例8≫
合成例1で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液10gに、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.4gをN,N−ジメチルアセトアミド5gに溶解した溶液を添加し、自公転遠心式混合装置(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」;(株)シンキー製)を用いて攪拌した。この溶液にトリフルオロプロピルトリメトキシシラン1.52gおよび水0.18gを添加し、自公転遠心式混合装置(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」;(株)シンキー製)を用いて攪拌し、脱泡し、ハロゲン化ポリアミド酸組成物を調製した。
【0144】
得られた組成物をシリコン基板上に滴下し、スピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、厚さ10μmの透明なポリイミドフィルム(IX)を得た。このポリイミドフィルム(IX)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.490、TMモードで1.484であった。このポリイミドフィルム(IX)は、透明性および表面平滑性に優れ、良好な外観を有していた。このポリイミドフィルム(IX)と実施例6で得られたポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差は、TEモードで2.9%、TMモードで3.0%であった。結果を表3に示す。
【0145】
≪比較例3≫
実施例6において、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシランおよび水を添加しなかったこと以外は、実施例6の操作を繰り返すことによって、厚さ10μmの透明なポリイミドフィルム(X)を調製した。このポリイミドフィルム(X)の屈折率を測定したところ、波長1550nmにおいて、TEモードで1.526、TMモードで1.521であった。このポリイミドフィルム(X)は、透明性および表面平滑性に優れ、良好な外観を有していた。このポリイミドフィルム(X)と実施例6で得られたポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差は、TEモードで0.5%、TMモードで0.5%であった。結果を表3に示す。
【0146】
≪比較例4≫
実施例7において、γ−アミノプロピルトリメトキシシランのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を添加しなかったこと以外は、実施例7の操作を繰り返すことによって、厚さ10μmのポリイミドフィルム(XI)を得たが、このポリイミドフィルム(XI)は不透明で外観が劣っていた。
【0147】
【表3】


【0148】
表3から明らかなように、実施例6のポリイミドフィルム(VI)は、ハロゲン化ポリアミド酸に、金属酸化物前駆体のテトラメトキシシランと、カップリング剤のγ−アミノプロピルトリメトキシシランと、水とを添加して加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差が、波長1550nmにおいて、TEモードで1.5%、TMモードで1.4%に達していた。また、実施例7のポリイミドフィルム(VIII)は、ハロゲン化ポリアミド酸に、金属酸化物前駆体のテトラメトキシシラン縮合物と、カップリング剤のγ−アミノプロピルトリメトキシシランと、水とを添加して加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差が、波長1550nmにおいて、TEモードで1.7%、TMモードで1.8%に達していた。さらに、実施例8のポリイミドフィルム(IX)は、ハロゲン化ポリアミド酸に、金属酸化物前駆体のトリフルオロプロピルトリメトキシシランと、カップリング剤のγ−アミノプロピルトリメトキシシランと、水とを添加して加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差が、波長1550nmにおいてTEモードで2.9%、TMモードで3.0%に達していた。
【0149】
これに対し、比較例3のポリイミドフィルム(X)は、金属酸化物前駆体やカップリング剤および水を添加せずに加熱処理することにより得たので、ポリイミドフィルム(VII)との比屈折率差が、波長1550nmにおいて、TEモードおよびTMモードで共に0.5%であった。また、比較例4のポリイミドフィルム(XI)は、金属酸化物前駆体のテトラメトキシシランと水とは添加したが、カップリング剤を添加しなかったので、不透明で外観が劣っていた。
【0150】
かくして、ハロゲン化ポリアミド酸と、金属酸化物前駆体と、該ハロゲン化ポリアミド酸と反応する官能基を有するカップリング剤と、水とを含有する本発明のハロゲン化ポリアミド酸組成物は、屈折率が大きく変化したハロゲン化ポリイミドフィルムを与えることがわかる。
【0151】
次いで、実施例9〜10に、実施例6または8で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物と、合成例2で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液とを用いた光導波路の製造例について説明する。
【0152】
≪実施例9≫
実施例6で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物をシリコン基板上に滴下し、加熱処理後の膜厚が15μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、ハロゲン化ポリイミド(C)からなる下部クラッド層を作製した。この下部クラッド層上に合成例2で得られたハロゲン化ポリアミド酸溶液を滴下し、加熱処理後の膜厚が8μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、下部クラッド層上に、ハロゲン化ポリイミド(D)からなるコア層を作製した。
【0153】
これらのハロゲン化ポリイミドフィルム上に、レジスト液(商品名「FH−SP3CL」;富士フィルムアーチ(株)製)を塗布し、90℃で2分間プリベークを行った後、UV光で露光を行い、現像、110℃で5分間アフターベークを行うことにより、幅8μm、長さ50mmの直線パターンのレジスト層を得た。
【0154】
次いで、反応性イオンエッチング装置(商品名「L−451DMKII」;アネルバ(株)製)を用いて、酸素イオンエッチングを行った後、残ったレジスト層を剥離することにより、下部クラッド層がハロゲン化ポリイミド(C)、コア層がハロゲン化ポリイミド(D)、上部クラッド層が空気層からなるリッジ型光導波路を得た。
【0155】
さらに、実施例6で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物を滴下し、膜厚15μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で1時間、連続的に加熱処理を行って、ハロゲン化ポリイミド(C)からなる上部クラッド層を作製し、ダイシングソー(商品名「DAD321」;(株)ディスコ製)を用いて、導波路端面を切断し、長さ50mmの埋め込み型直線導波路を得た。この光導波路は、下部クラッド層がハロゲン化ポリイミド(C)、コア層がハロゲン化ポリイミド(D)、そして上部クラッド層がハロゲン化ポリイミド(C)からなる埋め込み型光導波路である。
【0156】
<ニアフィールドパターン試験>
波長1310nmの光をコア径10μmのシングルモードファイバーによりバットジョイントでマッチングオイルを介して、得られた光導波路の端部に入光させた後、ニアフィールドパターンを観察した。また、出射光をコア径10μmのシングルモードファイバーによりバットジョイントでマッチングオイルを介して、受光し、光導波路の損失を測定した。結果を表4に示す。
【0157】
≪実施例10≫
実施例6で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物に代えて、実施例8で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物を用いて、下部クラッド層および上部クラッド層を形成したこと以外は、実施例9と同様にして埋め込み型光導波路を得た。得られた埋め込み型光導波路を用いて、ニアフィールドパターン試験を行った。結果を表4に示す。
【0158】
≪比較例5≫
実施例6で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物に代えて、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシランおよび水を添加していないハロゲン化ポリアミド酸溶液を用いて、下部クラッド層および上部クラッド層を形成したこと以外は、実施例9と同様にして埋め込み型光導波路を得た。得られた埋め込み型光導波路を用いて、ニアフィールドパターン試験を行った。結果を表4に示す。
【0159】
≪比較例6≫
実施例7で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物に代えて、γ−アミノプロピルトリメトキシシランのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を添加していないハロゲン化ポリアミド酸溶液を用いて、下部クラッド層および上部クラッド層を形成したこと以外は、実施例9と同様にして埋め込み型光導波路を得た。得られた埋め込み型光導波路を用いて、ニアフィールドパターン試験を行った。結果を表4に示す。
【0160】
【表4】


【0161】
表4から明らかなように、実施例9、10および比較例5の光導波路は波長1310nmの光に対する損失は同程度であるが、実施例9および10の光導波路はニアフィールドパターンがマルチモードであり、クラッド層とコア層との屈折率差が大きいことを示し、比較例5の光導波路はニアフィールドパターンがシングルモードであり、クラッド層とコア層との屈折率差が小さいことを示している。また、比較例6の光導波路はニアフィールドパターンがマルチモードであり、クラッド層とコア層との屈折率差が大きいが、波長1310nmの光に対する損失が大きく光導波路として不適であることを示している。
【0162】
次いで、実施例11に、実施例8で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物と、合成例3で得られたハロゲン化ポリアミド酸組成物とを用いた大口径埋め込み型直線導波路の製造例について説明する。
【0163】
≪実施例11≫
実施例8で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物をシリコン基板上に滴下し、加熱処理後の膜厚が15μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で4時間、連続的に加熱処理を行って、下部クラッド層を作製した。この下部クラッド層上に合成例3で得られたコア用のハロゲン化ポリアミド酸組成物を滴下し、加熱処理後の膜厚が50μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で4時間、連続的に加熱処理を行って、下部クラッド層上に、コア層を作製した。
【0164】
次いで、ダイシングソー(商品名「DAD321」;(株)ディスコ製)を用いて、大量の水を流しながら、コア層に溝と溝との間隔が50μmになるように深さ50μmの溝を2つ切った後、実施例8で調製したハロゲン化ポリアミド酸組成物を滴下し、加熱処理後の膜厚が15μmになるようにスピンコーティング法で製膜し、この被膜を窒素置換された250℃の焼成炉で4時間、連続的に加熱処理を行って、上部クラッド層を作製した。さらに、ダイシングソー(商品名「DAD321」;(株)ディスコ製)を用いて、大量の水を流しながら、導波路端面を切断し、50μm角のコア層を有する長さ50mmの大口径埋め込み型直線導波路を得た。なお、得られた大口径埋め込み型直線導波路は、コア層と下部クラッド層および上部クラッド層との比屈折率差が、波長1550nmにおいて、0.6%以上であり、また、光損失を測定したところ、波長850nmで0.3dB/cmであった。
【0165】
本実施例では、ダイシングソーを用いて、大量の水を流しながら、加工する際に、ハロゲン化ポリイミドフィルムが剥離することがなく、また、導波路端面は鏡面であった。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明のハロゲン化ポリアミド酸組成物は、単に加熱処理、減圧乾燥などの処理を行うだけで、屈折率が制御されたハロゲン化ポリイミドを与える。得られたハロゲン化ポリイミドは、例えば、光学フィルムや光導波路のコア層およびクラッド層として、光学に関連する分野で特に有用である。それゆえ、本発明のハロゲン化ポリアミド酸組成物は、光学に関連する分野で多大の貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の光導波路のうち、リッジ型光導波路の製造方法の一実施態様を説明する工程図である。
【図2】本発明の光導波路のうち、埋め込み型光導波路の製造方法の一実施態様を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0168】
1 基板
2 下部クラッド層
3 コア層
4 レジスト層
5 上部クラッド層




 

 


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