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発明の名称 ジルコニアシートおよびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−55862(P2007−55862A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−245039(P2005−245039)
出願日 平成17年8月25日(2005.8.25)
代理人 【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
発明者 秦 和男
要約 課題

本発明は、燃料電池の電解質として使用するジルコニアシートを大量生産する場合であっても、電解質としての特性を貶めないジルコニアシートの製造方法、および大量生産されたものであるにも関わらず電解質としての特性に優れたジルコニアシートを提供することを目的とする。また、本発明では、ジルコニアシートの電解質としての特性を容易に測定するための方法を提供することも目的としている。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
ジルコニアシートを製造する方法であって、
ジルコニアグリーンシートの脱脂工程を、酸素濃度が13%以上の雰囲気下で行なうことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記酸素濃度を15%以上とする請求項1に記載のジルコニアシートの製造方法。
【請求項3】
ジルコニアシートであって、
当該ジルコニアシートの下に同様の条件で製造したジルコニアシートを積層して厚さを2mm以上としたシート積層体について、JIS 8148(2001年)に準拠して測定した白色度の値が80%以上であることを特徴とするジルコニアシート。
【請求項4】
立方晶系ジルコニアからなり、上記白色度値が82%以上である請求項3に記載のジルコニアシート。
【請求項5】
正方晶系ジルコニアからなり、上記白色度値が84%以上である請求項3に記載のジルコニアシート。
【請求項6】
ジルコニアシートの残留カーボンを測定する方法であり、
測定すべきジルコニアシートの下に同様の条件で製造したジルコニアシートを積層して厚さ2mm以上のシート積層体とし、JIS 8148(2001年)に準拠して測定した白色度を指標とすることを特徴とするジルコニアシートの残留カーボンの測定方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の電解質として使用するジルコニアシートおよびその製造方法、並びにジルコニアシートの残留カーボンを測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジルコニアを主体とするセラミックスシートは、優れた機械的強度、靭性、耐摩耗性、耐薬品性や耐食性等を有することから、各種構造材料、刃物、焼成用のセッターなどに利用されている。その上、高い酸素イオン伝導性を有することから、近年では燃料電池用の固体電解質としても活用されている。
【0003】
このジルコニアシートは、一般的には以下の方法により製造される。先ず、ジルコニア粒子とバインダーを含む混合体に溶媒を加えたスラリーをドクターブレード法や押出成形法により成形した後、溶媒を蒸発飛散させてジルコニアグリーンシートとする。次に、通常200〜500℃程度で加熱することによりバインダー等の有機化合物を分解除去する。その後、さらに1300〜1500℃で焼結することによって、緻密なジルコニアシートが得られる。
【0004】
ジルコニアシートを工業的に製造するに当たっては、生産性を上げるために、加熱工程において焼成炉の単位体積および焼成炉での単位滞留時間当たりのジルコニアグリーンシートを多くすることが考えられる。即ち、複数のジルコニアグリーンシートを積層することにより焼成炉の有効容積中に占める数を増やし、また、昇温速度を高める等した上で加熱する。しかし、斯かる製造条件においては、焼成炉が大型になるほどグリーンシート各部で熱が不均一となる結果、最終的に得られるシートに反りやうねりが生じる場合がある。
【0005】
そこで本発明者らは、グリーンシートを積層して焼結する際における反り等を抑制するため、グリーンシートを多孔質シートの間に挟み込む技術を開発している(特許文献1)。また、複数の棚板を重ねた上でセラミックグリーンシートを焼成するに当たり、棚板群、スペースの占める体積および各棚板間隔との間を特定することによって、セラミックシートの寸法ばらつきを抑制する技術も開発した(特許文献2)。さらには、焼成時における反りの発生を極力小さくする方法として、グリーンシートに含まれる有機物成分等を指標とする焼成時の平均昇温速度を制御する技術を特許文献3に開示している。
【0006】
しかし、大量生産したジルコニアシートを燃料電池の電解質として使用するにおいては、別の問題が生じ得ることを本発明者らは見出した。
【0007】
即ち、ジルコニアグリーンシートを工業的に大量に焼成する場合、バインダー等の有機成分の分解や消失により生じる分解ガス等の大量発生や、そのために酸素が大量に消費されることによって、焼成炉内の酸素濃度が大きく低下するため、有機成分が完全には分解除去されずに残留する場合がある。この有機成分は、焼結工程においてジルコニア粒子間にカーボンとして残留する。そして、この残留カーボンは電気伝導性を有することから、結果として電解質へ電気伝導性を付与することにより輸率を低下させる。さらには、ジルコニアと固相反応を起こしてジルコニア炭化物を生成し、電解質の酸素イオン導電性を低下させてしまうという問題が生じる。
【0008】
近年、サブミクロンレベルのセラミック微粉末を原料とした緻密質のセラミックスシートが好適に用いられているが、この様な高表面積微粉末を原料とした場合、グリーンシート成形のためには多くのバインダー等が必要となるので、特に有機成分が分解除去され難くなる。従って、残留カーボンによる特性の低下を解決する手段が切望されているところである。
【特許文献1】特開平8−151275号公報(特許請求の範囲、図3)
【特許文献2】特開2001−206777号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−247373号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した様に、ジルコニアグリーンシートを大量に焼成してジルコニアシートを工業的に製造するに当たって、反りや寸法のばらつきを抑制する技術は知られていた。しかし、大量生産したジルコニアシートは、電気伝導性を持つことにより酸素イオンと逆方向の短絡電流がジルコニアシートに生じ、シート両面に生じる起電力を低下させることになり、酸素イオン導電性が低下するなど、燃料電池電解質としての特性が悪化する場合があった。また、斯かる電解質に必要な特性の評価として、逐一電気伝導性や残留カーボンなどを測定していては効率が悪い。
【0010】
そこで、本発明が解決すべき課題は、燃料電池の電解質として使用するジルコニアシートを大量生産する場合であっても、電解質としての特性を貶めないジルコニアシートの製造方法、および大量生産されたものであるにも関わらず電解質としての特性に優れたジルコニアシートを提供することにある。また、本発明では、ジルコニアシートの電解質としての特性を容易に測定するための方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、ジルコニアシートの量産条件につき鋭意研究を重ねた。その結果、ジルコニアシートを大量生産する場合に電解質としての特性が低下する原因は、加熱による有機成分の分解除去工程において、一時に酸素が大量消費されると共に分解ガスが大量に発生して酸素不足になることにより有機成分が十分に分解されないことにあることが分かった。従って、ジルコニアシートを大量生産するに当たっては、焼成工程において酸素を十分に供給してグリーンシートの周辺で酸素不足を起こさない様にすることが重要であることを見出した。
【0012】
また、ジルコニアシートの燃料電池電解質としての特性は、その白色度を測定することにより極めて簡便且つ容易に判断できることを見出して本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明に係るジルコニアシートの製造方法は、ジルコニアシートの前駆体であるジルコニアグリーンシートの脱脂工程を、酸素濃度が13%以上である雰囲気下で行なうことを特徴とする。
【0014】
上記方法において、酸素濃度は15%以上とすることが好ましい。より確実に有機成分の分解を促進して、残留カーボンを抑制するためである。
【0015】
本発明のジルコニアシートは、当該ジルコニアシートの下に同様の条件で製造したジルコニアシートを積層して厚さを2mm以上とした電解質シート積層体について、JIS 8148(2001年)に準拠して測定した白色度の値が80%以上であることを特徴とする。白色度が当該範囲にあるジルコニアシートは、残留カーボンが顕著に抑制されており、燃料電池電解質として有用である。
【0016】
上記ジルコニアシートとしては、立方晶系ジルコニアからなり白色度値が82%以上であるもの、また、正方晶系ジルコニアからなり白色度値が84%以上であるものが好適である。これらジルコニアシートは、燃料電池電解質として特に優れるからである。
【0017】
本発明に係るジルコニアシートの残留カーボンの測定方法は、測定すべきジルコニアシートの下に同様の条件で製造したジルコニアシートを積層して厚さ2mm以上の電解質シート積層体とし、JIS 8148(2001年)に準拠して測定した白色度を指標とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、ジルコニアシートの残留カーボンを白色度により間接的に測定する。当該方法は、電気伝導性やイオン導電性などを直接測定するよりも、はるかに容易で簡便である。また、本発明に係るジルコニアシートの製造方法によれば、残留カーボンが抑制されており、電気絶縁体であり且つ高イオン導電性という燃料電池電解質として優れた特性を有するジルコニアシートを大量生産することができる。従って、本発明は、燃料電子の電解質膜として好適なジルコニアシートの大量生産技術に関するものとして、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るジルコニアシートの製造方法は、ジルコニアグリーンシートの脱脂工程を、酸素濃度が13%以上の雰囲気下で行なうことを特徴とする。
【0020】
本発明の製造方法では、先ず、ジルコニアグリーンシートを製造する。その製法には特に制限はなく、常法を適用すればよい。例えば、ジルコニア原料粒子に有機質バインダーおよび溶媒、必要により分散剤や可塑剤などを含むスラリーを、ドクターブレード法によって平滑なシート、例えばポリエステルシート上に適当な厚みで塗布し、乾燥して溶媒を蒸発除去する方法がある。その他、溶融したバインダーとジルコニア原料粒子との混練物から押出成形法により製造してもよい。
【0021】
原料とするジルコニア粒子は常法により製造してもよいし、或いは市販のものを使用してもよい。但し、その平均粒径がより細かいものを用いることが好ましい。平均粒径が細かいジルコニア粒子を原料とすれば、焼結性が良好で緻密なジルコニアシートが得られるが、従来方法ではカーボンが残留し易い傾向があったことから、比較的大きなジルコニア粒子を使用せざるを得なかった。しかし、本発明では斯かる問題の解決が図られていることから、本発明によれば、平均粒径の小さなジルコニア粒子の利点を利用することが可能になる。
【0022】
また、ジルコニア粒子としては、粒子径が揃っているものが好適である。具体的には、平均粒径が0.01〜0.5μmであり、90体積%以上の粒子が粒径1.5μm以下のジルコニア粒子が好ましい。より好ましくは、平均粒径が0.05〜0.3μmであり、90体積%以上の粒子が粒径1μm以下のもの、さらに好ましくは、平均粒径が0.08〜0.2μm、90体積%以上の粒子が粒径0.3μm以上0.8μm以下のものが好ましい。なお、平均粒径の測定方法は常法を用いればよいが、例えば、堀場製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置LA−920を用い、0.2質量%メタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒として測定すればよい。
【0023】
燃料電池の固体電解質膜用として使用されるジルコニアシートには、より高度の熱的、機械的、電気的、化学的特性が要求される。こうした要求特性を満足させる電解質材料としては、ジルコニアにMgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物;Y23、La23、CeO2、Pr23、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dy23、Ho23、Er23、Yb23等の希土類金属酸化物;Sc23、Bi23、In23等その他の金属酸化物などを加えたジルコニア系セラミックを例示することができ、これらから1種または2種以上を選択して単独または混合物として用いることができる。また、さらにSiO2、Al23およびTiO2よりなる群から選択された少なくとも1種が0.01〜5質量%配合されたものも好ましいものとして推奨される。
【0024】
中でもとりわけ電解質として好ましいのは、3〜10モル%のY23、または4〜12モル%のSc23または4〜15モル%のYb23で安定化されたジルコニアであり、さらに0.01〜2質量%程度のSiO2、Al23、TiO2、CeO2等が添加されたジルコニアである。
【0025】
グリーンシートの製造に用いられるバインダーの種類にも格別の制限はなく、従来から知られた有機質のバインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系およびメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。
【0026】
これらの中でも、200〜500℃での加熱工程における脱バインダー性に優れるものである必要があり、また、グリーンシートの成形性や打抜き加工性、強度、脱脂・焼結時の収縮率のバラツキ抑制等の点から、数平均分子量が20,000〜250,000、より好ましくは50,000〜200,000の(メタ)アクリレート系共重合体ポリマーが好ましいものとして推奨される。
【0027】
ジルコニア粒子とバインダーの使用比率は、前者100質量部に対して後者5〜30質量部が好ましく、より好ましくは後者10〜20質量部の範囲である。バインダーの使用量が不足する場合は、グリーンシートの成形性が低下し、また、強度や柔軟性が不十分となる。逆に多過ぎる場合はスラリーの粘度調節が困難になるばかりでなく、脱脂・焼結時のバインダー成分の分解放出が多く且つ激しくなって収縮率のバラツキも大きくなり、寸法バラツキの小さなシートが得られ難くなり、また、バインダーが残留カーボンとして残留し易くなる。
【0028】
スラリーからドクターブレード法などによりグリーンシートを製造する場合、使用される溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらから適宜選択して使用する。これらの溶媒も単独で使用し得る他、2種以上を適宜混合して使用することができる。これら溶媒の使用量は、グリーンシート成形時におけるスラリーの粘度を加味して適当に調節するのがよく、好ましくはスラリー粘度が1〜50Pa・s、より好ましくは2〜20Pa・sの範囲となる様に調整するのがよい。
【0029】
上記スラリーの調製に当たっては、セラミック原料粉末の解膠や分散を促進するため、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質;クエン酸、酒石酸等の有機酸;イソブチレンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアンモニウム塩あるいはアミン塩;ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアンモニウム塩等からなる分散剤;グリーンシートに柔軟性を付与するためのフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類;プロピレングリコール等のグリコール類やグリコールエーテル類からなる可塑剤など;さらには界面活性剤や消泡剤などを必要に応じて添加することができる。
【0030】
上記成分を混合して得たスラリーは、粘度を調整した後にドクターブレード法によりグリーンシートへ成形する。もちろん、溶融したバインダーにジルコニア原料粒子を加えた混練物を押出成形してもよい。得られたグリーンシートは、任意の方法で適当な大きさに打抜き若しくは切断加工してもよい。このグリーンシートの形状としては、円形、楕円形、角形、R(アール)を持った角形など何れでもよく、これらのシート内に同様の円形、楕円形、角形、Rを持った角形などの穴を1つもしくは2つ以上有するものであってもよい。更にシートの面積は、100cm2以上、好ましくは150cm2以上である。なおこの面積とは、シート内に穴がある場合は、該穴の面積を含んだ外周縁の面積を意味する。また、グリーンシート厚さは特に制限されないが、最終的に得られるジルコニアシートの厚さとしては0.02〜1mmが好適であることから、0.03〜1.2mm程度にすればよい。
【0031】
次に、ジルコニアグリーンシートの1枚または複数枚を多孔質板に挟み、電気ヒーター式脱脂炉、バッチ式ガス燃焼炉やトンネル式の連続電気焼成炉内へ装入し、適当な温度プログラムで加熱して脱脂する。この際、本発明では大量生産を志向しており、脱脂炉の場合は500〜5万枚、総面積にして5〜500m2を一度に脱脂する。より好ましくは1000〜3万枚を一度に脱脂する。用いる脱脂炉の内容積としては0.5〜2.5m3とすることができ、さらに好ましくは0.8〜2m3である。また、バッチ式焼成炉の場合には、1000〜20万枚、総面積にして10〜2000m2を一度に脱脂する。より好ましくは、一度に3000〜10万枚を脱脂する。用いる焼成炉の内容積としては、例えば1〜10m3とすることができ、さらに好ましくは1〜5m3である。
【0032】
従来技術においては、AlNなどの非酸化物グリーンシートは別にして、脱脂工程における酸素濃度は十分に考慮されていなかった。しかし本発明者らは、脱脂工程において温度が徐々に上昇してバインダーなど有機成分の分解除去が進行すると、酸素が大量に消費されて一時的な酸素不足に陥り、カーボンが残留する原因になることを見出した。この傾向は、ジルコニアグリーンシート間の間隔が狭くなる大量生産の場合に特に強くなり、ジルコニアシートの燃料電池電解質としての特性が悪くなる。そこで、本発明では、ジルコニアシートの大量生産における脱脂工程を通じて、各ジルコニアグリーンシートの表面各部における酸素濃度を常に13%以上(好ましくは15%以上)に保つ。脱脂工程において十分な酸素を供給することによって、ジルコニアグリーンシート中の有機成分を分解除去するためである。
【0033】
ジルコニアグリーンシートの脱脂工程の条件は、常法のものとすることができる。一般的には、温度を200〜500℃とし、15〜30時間程度かけて所定の温度まで徐々に加熱し、また、所定温度で1〜5時間程度維持する。
【0034】
脱脂工程においては、常に或いは一定時間ごとに酸素濃度を測定することが好ましい。この酸素濃度測定の方法は特に制限されないが、例えばジルコニア酸素濃度計を用いることができる。また、酸素濃度測定は、ジルコニアグリーンシート間の間隔が狭い位置で測定すべきである。その様な場所では特に酸素濃度が低下しやすく、また、ここで酸素濃度が十分であれば、他の場所での酸素濃度も十分であると考えられるからである。
【0035】
上記脱脂工程に付したジルコニアグリーンシートは、さらに焼結する。この焼結工程によりジルコニア粒子間が狭まり、緻密なジルコニアシートが得られる。本発明では、微細なジルコニア粒子を用いた場合であってもグリーンシートの脱脂工程で有機成分が十分に分解除去されているため、焼結工程でも粒子間にカーボンが閉じ込められることなく、残留カーボン量が顕著に抑制されている。
【0036】
焼結工程の具体的な条件には特に制限はなく、常法を用いればよい。例えば、1300〜1500℃の所定温度まで15〜30時間かけて徐々に昇温し、当該所定温度で1〜5時間維持した後、放冷すればよい。
【0037】
上記本発明方法で製造されたジルコニアシートは、燃料電池の電解質としての使用が志向されている。従って、その厚さは薄いほどよいが、強度も考慮して、好ましくは0.02〜1mm、さらに好ましくは0.05〜0.8mmとする。
【0038】
また、上記本発明方法で製造されたジルコニアシートは、残留カーボンが顕著に抑制されており、電気絶縁性で且つイオン導電性が高いことから、燃料電池の電解質として優れる。斯かる特性は絶縁抵抗やイオン導電度を測ることにより測定できるが、特に大量生産の現場においては、例えばロット毎に斯かる測定を行なうことは困難である。そこで本発明では、残留カーボンの指標として白色度を用いることによって、容易かつ簡便に残留カーボンや電解質特性の測定を行なうことができる。
【0039】
この白色度は、パルプや紙の白さの度合いを表す指標として、酸化マグネシウム標準白板の光の反射量を100とし真黒を0とする光の反射量の割合により示されるものである。その測定方法は、JIS 8148(2001年)「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠したものである。ここでISO白色度とは、ISO2469に規定された仕様をもち、有効波長457nm半値幅44nmとなる様なフィルタまたはそれに相当する機能を備え、試験片への照射光に含まれる紫外光量がCIEイルミナントCに相当する様に調整された反射率計で測定したときの固有反射率である。
【0040】
この白色度の測定において、試験片は、規定された装置により拡散照明される。そして、試験片片面に対して法線方向に反射した光を定められたガラスフィルタを通して光電池またはダイオードを用いて測定するか、または異なった有効波長を感知する複数のダイオードが並ぶダイオードアレイを用いて測定する。白色度は、光電池の出力から直接決定するか、またはダイオードの出力から適切な重み関数を用いて計算により決定する。
【0041】
白色度測定で使用する装置は、ISO2469に規定された幾何学的、分光学的および測定上の仕様を有し、ISO2469の規定に従って校正され、青色光反射率の測定機能を備えた反射率計である。
【0042】
JIS8148で規定されている測定すべき試験片については、紙および板紙の場合、「試験片の枚数は、2倍にしても反射率が変化しない枚数を必要とする」とされている。これは、一般的に重ね合わせる紙等の枚数が多くなる程その反射率は高くなることから、反射率が変わらない程度、即ち反射率の変化が±1%以内となるまで十分な枚数を重ね合わせた上で測定することとしたものである。
【0043】
斯かる事情は厚さ0.02〜1mmのジルコニアシートにも当てはまり、やはり枚数が少ないうちは透過率が高いため反射率は低く、重ね合わせる枚数が多くなるほど反射率は高くなる。しかし、本発明者らによる知見によれば、ジルコニアシートを積層して厚さを2mm以上、より好ましくは3mm以上にした場合には、反射率の変化は±1%以内となる。そこで、本発明では、白色度を測定すべきジルコニアシートの下に同様の条件で製造したジルコニアシートを積層して厚さを2mm以上としたシート積層体について、白色度を測定することにした。なお、上述した様にジルコニアシートを積層して2mm以上にすれば白色度の変化はほとんどなくなるが、不必要に重ね合わせても無駄になるため、2mmを超えるまで重ね合わせればよい。なお、燃料電池の電解質に用いる場合、ジルコニアシート1枚の厚さが3mmを超えることは、一般的にはない。
【0044】
本発明のジルコニアシートの白色度は、80%以上である。80%未満では許容量以上のカーボンが残量しており、燃料電池電解質としての特性に劣るからである。また、当該白色度の値が高いほど残留カーボン量は少ないことから、当該値は82%以上が好ましく、より好ましくは84%以上である。さらに、立方晶系ジルコニアからなるジルコニアシートの場合、白色度値は82%以上が好ましいが、正方晶系ジルコニアからなるジルコニアシートの場合、白色度値は84%以上が好ましい。
【0045】
ジルコニアシートに残留するカーボンを直接測定する場合、シートの一部を破壊せざるを得ず測定が煩雑である上に、精度も十分とはいえない。一方、本発明に係る残留カーボンの測定方法によれば、燃料電池電解質としての特性の指標となる残留カーボン量を容易かつ簡便に測定することができ、シートを破壊する必要もない。従って、本発明の測定方法は、量産化時における品質管理にも適した優れた方法である。
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0047】
実施例1
3モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(住友大阪セメント社製、商品名「OZC3Y」、比表面積:8m2/g、平均粒子径:0.6μm)100質量部と、アルミナ粉末(昭和電工社製、商品名「AL−160SG」)0.5質量部との混合物をビーズミルで粉砕し、平均粒径が0.1μm、90体積%径が0.44μmの混合粉末を調製した。得られた混合粉末に対し、メタクリル酸エステル共重合体(2−エチルヘキシルメタクリレート:95%、ジメチルアミノエチルメタクリレート:4%、ヒドロキシプロピルアクリレート:1%の共重合体、平均分子量:180,000、ガラス転移点:−9℃)からなるバインダーを固形分換算で14質量部、可塑剤としてジブチルフタレートを2質量部、溶剤としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比:3/2)を含む混合溶剤50質量部を、直径10mmのジルコニアボールが装入された内容積100Lのナイロン樹脂製ボールミルに入れ、約45rpmで40時間ミリングして原料スラリーを調製した。このスラリーの粘度は、室温(25℃)で0.8Pa・sであった。
【0048】
原料スラリーを、碇型の撹拌機を備えた内容積50Lのジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、撹拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度40℃で減圧(約4〜21kPa)下に濃縮・脱泡し、粘度を3Pa・sに調整し、塗工用スラリーとした。この塗工用スラリーを塗工装置のスラリーダムに移し、ドクターブレード法によってポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、塗工部に続く乾燥機(50℃、80℃、110℃の3ゾーン)を0.2m/分の速度で通過させて乾燥することにより、巾95cm、厚さ約180μmのグリーンシートを得た。このグリーンシートを外径約145mmの円形に打ち抜き、焼成用グリーンシートとした。
【0049】
この焼成用グリーンシートを、ジルコニア酸素濃度計(東レ社製、LC−800)に接続されたセンサー部が炉内に配置されている内容積1m3の熱風循環式脱脂炉(光洋リンドバーグ社製、イナートガスオーブン、炉内寸法:1000×1000×1000mm)により脱脂した。脱脂炉内において、アルミナ・シリカ製で320角、厚さ15mmの棚板上に、焼成用グリーンシート15枚、外径150mmφ、厚さ0.2mm、気孔率28%のアルミナ多孔質スペーサ16枚とを交互に積み重ねた積層体を4体載置した。積層体を載置した棚板を、横方向に3枚、奥行き方向に2枚配置した。さらに夫々の棚板上の四隅に高さ25mmのゲタを配置して棚板を15段積み重ねた。従って、脱脂炉には焼成用グリーンシートが5400枚装入されていることになる。これを、表1の温度プログラムと導入空気量に設定して脱脂した。表1には、各温度領域での炉内酸素濃度測定結果も併せて記載する。
【0050】
脱脂終了後、これら棚板を、ジルコニア酸素濃度計付のガス燃焼式焼成炉(美濃窯業社製、商品名「高温スペリオルキルン」、有効内容積:1m3(1100×1100×830mm)に移し、1450℃で3時間焼成しすることにより外径120mmφ、厚さ150μmの3モル%イットリア安定化ジルコニアシートを得た。なお、温度プロフィールは表1の通りであった。得られたジルコニアシートの表面を目視により観察したところ、反りやうねりがなく平坦であり且つ白色であった。
【0051】
実施例2
10モル%スカンジア−1モル%セリア安定化ジルコニア系粉末(第一稀元素化学社製、商品名「10Sc1CeSZ」、比表面積:9m2/g、平均粒子径:0.35μm)100質量部と、アルミナ粉末(大明化学社製、商品名「ダイミクロン−TM−DAR」、90体積%径:0.92μm)1質量部との混合粉末を用いた以外は、上記実施例1と同様にして原料スラリーを調製した。この原料スラリーを、碇型の撹拌機を備えた内容積が50Lのジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、撹拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度約45℃で減圧(4〜21kPa)下に濃縮・脱泡し、粘度を6.8Pa・sに調整し、塗工用スラリーとした。
【0052】
得られた塗工用スラリーを使用し、上記実施例1と同様にして、巾95cm、厚さ約335μmのグリーンシートを得た。このグリーンシートを外径約145mmの円形に打ち抜き、焼成用グリーンシートとした。
【0053】
上記実施例1において、アルミナ多孔質スペーサ11枚、焼成用グリーンシート10枚を交互に積み重ねた以外は同様にして焼成した。従って、焼成炉に焼成用グリーンシートが3600枚挿入されていることになる。これを、表1の温度プログラムと導入空気量に設定して脱脂した。
【0054】
脱脂終了後、上記実施例1と同様にして外径120mmφ、厚さ300μmの10モル%スカンジア1モル%セリア安定化ジルコニアシートを得た。また、シート表面を目視により観察したところ、反りやうねりがなく平坦であり且つ白色であった。
【0055】
実施例3
上記実施例1と同様にして得られた焼成用グリーンシートを、実施例1の焼成工程で用いた酸素濃度センサー付きガス燃焼式焼成炉により脱脂・焼成した。焼成炉内において、実施例1と同様の棚板上に、焼成用グリーンシート20枚、実施例1と同様のアルミナ多孔質スペーサ21枚とを交互に積み重ねた積層体を4体載置した。積層体を載置した棚板を、横方向に3枚、奥行き方向に3枚可動式焼成架台上に配置し、さらに夫々の棚板上の四隅に高さ20mmのゲタを配置して棚板を22段積み重ねた。従って、焼成炉には焼成用グリーンシートが15840枚装入されていることになる。これを、表1の温度プログラムと導入空気量に設定して脱脂・焼成した。導入空気量は4200L/分である。表1には、各温度領域での炉内酸素濃度測定結果も併せて記載する。
【0056】
得られた3モル%イットリア安定化ジルコニアシートは、外径120mmφ、厚さ150μmであった。また、得られたジルコニアシートの表面を目視により観察したところ、反りやうねりがなく平坦であり且つ白色であった。
【0057】
【表1】


【0058】
比較例1
上記実施例1において、表2の温度プログラムと導入空気量に設定して脱脂した。脱脂後は、実施例と同様のガス燃焼式焼成炉を用いて、500℃以上の高温側の温度プログラムを実施例1と同様にして焼成した。得られた3モル%イットリア安定化ジルコニアシートは、外径120mmφ、厚さ150μmであった。また、シート表面を目視により観察したところ、炉内上部に配置した棚板上のシートに反りとうねりが認められた。また、シートの周縁部は、やや灰色がかった白色に着色していた。
【0059】
比較例2
上記実施例1において、表2の温度プログラム、導入空気量および導入窒素量に設定して脱脂した。脱脂後は、上記比較例1と同様にして焼成した。得られた3モル%イットリア安定化ジルコニアシートは、外径120mmφ、厚さ300μmであった。シート表面を目視により観察したところ、平坦ではあったが全面が灰色がかった白色に着色していた。
【0060】
【表2】


【0061】
以上の結果の通り、脱脂工程において焼成炉内の酸素濃度が13%未満になると、ジルコニアシート表面が着色することが明らかになった。それに対して、脱脂工程における当該酸素濃度を常に13%以上にすれば、斯かる着色を抑制でき白色のジルコニアシートが得られることが実証された。
【0062】
試験例1
上記実施例1と比較例1で製造したジルコニアシートを15枚重ねた状態で、ISO白色度対応高速分光光度計(村上色彩技術研究所製、CMS−355PX)で白色度を測定した。また、実施例2と比較例2で製造したジルコニアシートでは7枚を重ね、同様に白色度を測定した。さらに、これらジルコニアシートについて、絶縁抵抗計を用いて電気抵抗を測定した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】


【0064】
当該結果の通り、白色度が高いほど、即ち着色が少ないほどジルコニアシートシートの電気抵抗は高い。これは、着色の原因となる残留カーボンが、同時に電子伝導の原因ともなっていることに基づくと考えられる。従って、ジルコニアシートの白色度は残留カーボン量の指標となり、ひいては電子伝導性の指標となることが実証された。
【0065】
また、本発明方法の通り、脱脂工程における酸素濃度を13%以上にして製造されたジルコニアシートの白色度は高く電子導電性は低いことから、燃料電池の電解質として非常に優れるものである。




 

 


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