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発明の名称 プロピレン系樹脂組成物、その製造方法および射出成形体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−92050(P2007−92050A)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
出願番号 特願2006−235407(P2006−235407)
出願日 平成18年8月31日(2006.8.31)
代理人 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
発明者 渡辺 毅 / 眞田 隆
要約 課題
比重が小さく、剛性、耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物、その製造方法および、該樹脂組成物からなる射出成形体を提供する。

解決手段
下記(1)および(2)を満足するプロピレン−エチレンブロック共重合体と、繊維状無機充填材と、非繊維状無機充填材と、エラストマーとを含有するプロピレン系樹脂組成物および該樹脂組成物からなる射出成形体。
特許請求の範囲
【請求項1】
下記のプロピレンブロック重合体(A)35〜91重量%と、繊維状無機充填材(B)3〜15重量%と、非繊維状無機充填材(C)3〜20重量%と、オレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマー(D)3〜30重量%とを含有するプロピレン系樹脂組成物(ただし、該樹脂組成物の全量を100重量%とする)。
プロピレンブロック重合体(A)は、
プロピレン単独重合体または、プロピレンと含有量が1モル%以下のエチレンまたは炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレン部分60〜85重量%と、プロピレンとエチレンの重量比(プロピレン重量/エチレン重量)が75/25〜35/65であるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分15〜40重量%とを含有し、下記要件(1)および要件(2)を満足するプロピレン−エチレンブロック共重合体である(ただし、プロピレン−エチレンブロック共重合体の全量を100重量%とする)。
要件(1)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分が、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−A)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−B)からなり、共重合体成分(EP−A)の極限粘度[η]EP-Aが1.5dl/g以上8dl/g以下、エチレン含有量[(C2’)EP-A]が20重量%以上50重量%未満(ただし、成分(EP−A)の全量を100重量%とする)であり、共重合体成分(EP−B)の極限粘度[η]EP-Bが0.5dl/g以上8dl/g以下、エチレン含有量[(C2’)EP-B]が50重量%以上80重量%以下である(ただし、成分(EP−B)の全量を100重量%とする)
要件(2)プロピレンブロック重合体(A)の230℃でのメルトフローレート(MFR)が5〜120g/10分である。
【請求項2】
繊維状無機充填材(B)が、平均繊維径が0.2〜1.5μmであり、平均繊維長が7〜20μmであり、アスペクト比が10〜30である繊維状マグネシウムオキシサルフェートである請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物であって、該樹脂組成物中において繊維状無機充填材(B)の平均繊維長が3μm以上であるプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレンブロック重合体(A)に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−A)の極限粘度[η]EP-Aが4dl/g以上、8dl/g以下、エチレン含有量[(C2’)EP-A]が25〜45重量%であり(ただし、成分(EP−A)の全量を100重量%とする)、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−B)の極限粘度[η]EP-Bが0.5dl/g以上3dl/g以下、エチレン含有量[(C2’)EP-B]が50〜65重量%である(ただし、成分(EP−B)の全量を100重量%とする)請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項5】
プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)とを、プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)の重量比((E)/(B))を3/7〜7/3にして、溶融混練して樹脂組成物(MB)を得る第1工程と、第1工程で得られた樹脂組成物(MB)に、さらにプロピレンブロック重合体(A)と非繊維状無機充填材(C)とオレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマ−(D)とを加えて溶融混練して樹脂組成物を得る第2工程とからなる請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
第1工程で得られた樹脂組成物(MB)の含有量を5〜30重量%とし、第2工程で加えられるプロピレンブロック重合体(A)の含有量を20〜89重量%とし、非繊維状無機充填材(C)の含有量を3〜20重量%とし、オレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマー(D)の含有量を3〜30重量%とする請求項5に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法(ただし、プロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)。
【請求項7】
第1工程で得られる樹脂組成物(MB)をペレットとして製造し、第2工程で該ペレットを用いる請求項5または6に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物、その製造方法および射出成形体に関するものである。さらに詳細には、比重が小さく、剛性、耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物、その製造方法および、該樹脂組成物からなる射出成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、機械的特性等に優れる材料であることから、広範な用途、例えば、自動車の内外装部品や電気製品の部品に用いられている。
例えば、特開平9−157492号公報には、耐衝撃性、剛性及び成形性の改良を目的とする熱可塑性樹脂組成物であって、ホモプロピレン部分と、低エチレン濃度のプロピレン−エチレン共重合体部分と、高エチレン濃度のプロピレン−エチレン共重合体部分とからなるプロピレン−エチレンブロック共重合体と、MFR0.1〜30g/10分のエチレン−ブテン共重合体ゴムと、MFR0.1〜20g/10分のエチレン−プロピレン共重合体ゴムと、タルクからなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0003】
また、特開2003−327642号公報には、剛性、硬度および成形性、靭性と低温衝撃性のバランスの改良を目的とするプロピレン−エチレンブロック共重合体であって、結晶性ポリプロピレン部分と、エチレン含有量が20重量%以上50重量%未満のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分と、エチレン含有量が50重量%以上80重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とからなるプロピレン−エチレンブロック共重合体が記載されており、前記プロピレン−エチレンブロック共重合体にエラストマーや無機充填剤を加えて良いことも記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−157492号公報
【特許文献2】特開2003−327642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の公報等に記載されているポリプロピレン系樹脂組成物においても、比重、剛性、耐衝撃性については、さらなる改良が望まれていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、比重が小さく、剛性、耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物、その製造方法および、該樹脂組成物からなる射出成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
下記のプロピレンブロック重合体(A)35〜91重量%と、繊維状無機充填材(B)3〜15重量%と、非繊維状無機充填材(C)3〜20重量%と、オレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマー(D)3〜30重量%とを含有するプロピレン系樹脂組成物(ただし、該樹脂組成物の全量を100重量%とする)、および、該樹脂組成物からなる射出成形体に係るものである。
プロピレンブロック重合体(A)は、
プロピレン単独重合体または、プロピレンと含有量が1モル%以下のエチレンまたは炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレン部分60〜85重量%と、プロピレンとエチレンの重量比(プロピレン重量/エチレン重量)が75/25〜35/65であるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分15〜40重量%とを含有し、下記要件(1)および要件(2)を満足するプロピレン−エチレンブロック共重合体である(ただし、プロピレン−エチレンブロック共重合体の全量を100重量%とする)。
要件(1)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分が、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−A)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−B)からなり、共重合体成分(EP−A)の極限粘度[η]EP-Aが1.5dl/g以上8dl/g以下、エチレン含有量[(C2’)EP-A]が20重量%以上50重量%未満(ただし、成分(EP−A)の全量を100重量%とする)であり、共重合体成分(EP−B)の極限粘度[η]EP-Bが0.5dl/g以上8dl/g以下、エチレン含有量[(C2’)EP-B]が50重量%以上80重量%以下である(ただし、成分(EP−B)の全量を100重量%とする)。
要件(2)プロピレンブロック重合体(A)の230℃でのメルトフローレート(MFR)が5〜120g/10分である。
【0007】
また、本発明は、
プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)とを、プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)の重量比((E)/(B))を3/7〜7/3にして、溶融混練して樹脂組成物(MB)を得る第1工程と、第1工程で得られた樹脂組成物(MB)に、さらにプロピレンブロック重合体(A)と非繊維状無機充填材(C)とオレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマ−(D)とを加えて溶融混練して樹脂組成物を得る第2工程とからなる上記のプロピレン系樹脂組成物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比重が低く、剛性、耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物、その製造方法および、該樹脂組成物からなる射出成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)は、プロピレン単独重合体または、プロピレンと含有量が1モル%以下であるエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレン部分60〜85重量%と、プロピレンとエチレンの重量比(プロピレン重量/エチレン重量)が75/25〜35/65であるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分15〜40重量%とを含有するものである(ただし、プロピレン−エチレンブロック共重合体の全量を100重量%とする)。
【0010】
結晶性ポリプロピレン部分が60重量%未満の場合(すなわち、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分が40重量%を超えた場合)、剛性や硬度が低下したり、メルトフローレート(MFR)が低下して十分な成形性が得られない場合があり、結晶性ポリプロピレン部分が85重量%を超えた場合(すなわち、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分が15重量%未満の場合)、靭性や耐衝撃性が低下する場合がある。
【0011】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)に含有される結晶性ポリプロピレン部分は、プロピレン単独重合体または、プロピレンと含有量が1モル%以下であるエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレンである(ただし、結晶性ポリプロピレン部分の全量を100モル%とする)。エチレンまたは炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が1モル%を超えると、剛性、耐熱性または硬度が低下する場合がある。
【0012】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)に含有される結晶性ポリプロピレン部分として、好ましくは、剛性、耐熱性または硬度を高めるという観点から、プロピレン単独重合体であり、より好ましくは、13C−NMRにより計算されるアイソタクチックペンタッド分率が0.95以上であるプロピレン単独重合体である。アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に発表されている方法、すなわち、13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行う)。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法によって英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19-14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0013】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)に含有される結晶性ポリプロピレン部分の極限粘度[η]Pは、溶融時の流動性と成形体の靭性とのバランスの観点から、好ましくは1.5dl/g以下であり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値、Mw/Mn)として、好ましくは3以上7未満であり、より好ましくは3〜5である。
【0014】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレンとエチレンの重量比(プロピレン重量/エチレン重量)は75/25〜35/65であり、好ましくは70/30〜40/60である。プロピレンとエチレンの組成比が上記の範囲からはずれると十分な耐衝撃性が得られない場合がある。
【0015】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)に含有されるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分は、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−A)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−B)から構成される。
【0016】
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−A)のエチレン含量[(C2’)EP-A]は20重量%以上50重量%未満であり、好ましくは25重量%以上45重量%以下である(ただし、共重合体成分(EP−A)の全量を100重量%とする)。エチレン含量[(C2’)EP-A]が上記の範囲にない場合、機械的物性バランス、例えば、剛性や靭性、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0017】
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP-A)の極限粘度[η]EP-Aは1.5dl/g以上8dl/g以下であり、好ましくは4dl/g以上8dl/g以下であり、さらに好ましくは、4dl/g以上7dl/g以下である。極限粘度[η]EP-Aが1.5dl/g未満の場合、剛性や硬度が低下したり、靭性や耐衝撃性も低下する場合がある。極限粘度[η]EP-Aが8dl/gを越える場合、成形品にブツが多発したり、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の含有量が多いプロピレン系重合体において、プロピレン系重合体全体のメルトフローレート(MFR)が低下し、流動性が低下する場合がある。
【0018】
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−B)のエチレン含量[(C2’)EP-B]は50〜80重量%であり、好ましくは50〜65重量%である(ただし、共重合体成分(EP−B)の全量を100重量%とする)。エチレン含量[(C2’)EP-B]が上記範囲にない場合、機械的物性バランス、例えば、剛性や低温での耐衝撃性が低下する場合がある。
【0019】
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(EP−B)の極限粘度[η]EP-Bは0.5dl/g以上8dl/g以下であり、好ましくは0.5dl/g以上3dl/g以下であり、さらに好ましくは、1dl/g以上3dl/g以下である。極限粘度[η]EP-Bが0.5dl/g未満の場合、剛性や硬度が低下したり、靭性や耐衝撃性も低下する場合がある。極限粘度[η]EP-Bが8dl/gを越える場合、靭性や耐衝撃性が低下する場合がある。また、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の含有量が多いプロピレン系重合体においては、プロピレン系重合体全体のメルトフローレート(MFR)が低下し、流動性が低下する場合がある。
【0020】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は5〜120g/10分であり、好ましくは10〜100g/10分である。5g/10分未満の場合、成形性が悪化したり、外観(フローマーク)が不充分なことがあり、120g/10分を超えた場合、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0021】
プロピレンブロック重合体(A)の製造方法としては、例えば、プロピレン単独重合体または、プロピレンと含有量が1モル%以下のエチレンまたは炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレン部分(第1セグメントと称する)を第1工程で製造し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(EP−A、第2セグメントと称する)を第2工程で製造し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(EP−B、第3セグメントと称する)を第3工程で製造する方法が挙げられる。
【0022】
そして、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒が挙げられ、チーグラー触媒としては、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体成分から形成される触媒系などが挙げられる。この触媒の製造方法は例えば、特開平1−319508、特開平7−216017、特開平10−212319号、特開2004−182876号公報等に詳しく記載されている。
【0023】
公知の重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合、気相重合等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも可能であり、また、これらの重合方法を任意に組合せもよい。より具体的な製造方法としては、前述の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及び電子供与体成分(c)からなる触媒系の存在下に少なくとも3槽からなる重合槽を直列に配置し、第1の槽で第1セグメントを重合し、得られた生成物を、第2の槽へ移し、その第2の槽で第2セグメントを重合し、得られた生成物を、第3の槽へ移し、その第3の槽で第3セグメントを重合し、プロピレン系重合体を連続的に製造する方法が挙げられる。工業的かつ経済的な観点から、好ましくは連続式の気相重合法である。
【0024】
上記の重合方法における固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法によって、適宜、決めることができる。
【0025】
重合温度は、通常、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いることができる。
【0026】
本発明で用いられるプロピレンブロック重合体(A)の製造において重合(本重合)の実施前に、公知の方法によって、予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(a)および有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0027】
本発明で用いられる繊維状無機充填材(B)は、例えば、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、チタン酸カリウム繊維、水酸化マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等が挙げられ、好ましくは、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、ケイ酸カルシウム繊維であり、より好ましくは繊維状マグネシウムオキシサルフェートである。
【0028】
本発明で用いられる繊維状無機充填材(B)の平均繊維長は、通常、7μm以上であり、好ましくは7〜20μmである。
また、繊維状無機充填材(B)のアスペクト比は、通常、10以上であり、好ましくは10〜30である。
そして、繊維状無機充填材(B)の平均繊維径として、好ましくは、0.2〜1.5μmである。
【0029】
繊維状無機充填材(B)として、さらに好ましくは、剛性の改良効果を高めるという観点や成形体の外観を改良するという観点から、平均繊維径は0.3〜1.0μmであり、平均繊維長は8〜15μmであり、アスペクト比は12〜25である。
【0030】
繊維状無機充填材(B)は無処理のまま使用しても良く、ポリプロピレン系樹脂との界面接着性を向上させ、ポリプロピレン系樹脂に対する分散性を向上させるために、通常、用いられるシランカップリング剤や高級脂肪酸金属塩で表面を処理して使用しても良い。高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0031】
本発明のプロピレン系樹脂組成物中において繊維状無機充填材(B)の平均繊維長は好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは、5μm以上である。平均繊維長が3μm未満の場合、剛性の改良効果が小さいことがある。
【0032】
本発明で用いられる非繊維状無機充填材(C)としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、けい砂、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ゼオライト、モリブデン、けいそう土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。良好な衝撃強度、良好な成形体の光沢や良好な外観を得るという観点から、好ましくは、タルクである。
【0033】
非繊維状無機充填材(C)の平均粒子径は、通常、10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。ここで非繊維状無機充填材(C)の平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0034】
また、非繊維状無機充填材(C)は無処理のまま使用しても良く、ポリプロピレン系樹脂との界面接着性を向上させ、ポリプロピレン系樹脂に対する分散性を向上させるために、通常、用いられるシランカップリング剤、チタンカップリング剤や界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
【0035】
本発明で用いられるエラストマー(D)はオレフィン系エラストマー(D−1)および/またはビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)である。
オレフィン系エラストマー(D−1)は、エチレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体であり、炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0036】
オレフィン系エラストマー(D−1)の密度は、プロピレンブロック重合体(A)に対する分散性を高めるという観点や、得られる樹脂組成物の室温または低温での衝撃強度を高めるという観点から、通常、0.85〜0.885g/cm3であり、好ましくは0.85〜0.88g/cm3であり、より好ましくは0.855〜0.875g/cm3である。
オレフィン系エラストマー(D−1)の190℃のMFRは、衝撃強度の観点から、通常、0.1〜30g/10分であり、好ましくは0.5〜20g/10分である。
【0037】
オレフィン系エラストマー(D−1)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法による製造方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物、有機アルミニウム化合物およびハロゲン化エステル化合物からなるチーグラー・ナッタ触媒系や、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子に少なくとも1種以上のシクロペンタジエニルアニオン骨格を有する基が配位したメタロセン化合物とアルモキサンあるいはホウ素化合物とを組み合わせた触媒系、いわゆるメタロセン触媒系が挙げられる。
公知の重合方法としては、例えば、炭化水素化合物のような不活性有機溶媒中でエチレンとα−オレフィンを共重合させる方法や、溶媒を用いずにエチレン及びα−オレフィン中で共重合させる方法が挙げられる。
【0038】
ビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)としては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、前記ブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が水素添加されているブロック重合体等が挙げられ、好ましくはブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が80%以上水素添加されているブロック重合体であり、より好ましくは85%以上水素添加されているブロック重合体である。
【0039】
ビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)の分子量分布としては、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布(Q値)として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
【0040】
ビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)に含有されるビニル芳香族化合物の平均含有量として、好ましくは10〜20重量%であり、より好ましくは12〜19重量%である(ただし、ビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)の全量を100重量%とする)。
【0041】
ビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)のメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、230℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
【0042】
ビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)としては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体又はこれらのゴム成分を水添したブロック共重合体等が挙げられる。
【0043】
また、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)等のオレフィン系共重合体ゴムとスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させて得られるゴムも好適に使用することができる。また、少なくとも2種類のビニル芳香族化合物含有エラストマーを併用しても良い。
【0044】
ビニル芳香族化合物含有エラストマー(D−2)の製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体ゴムもしくは共役ジエンゴムに対し、ビニル芳香族化合物を重合、反応等により結合させる方法等が挙げられる。
【0045】
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)とを、プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)の重量比((E)/(B))を3/7〜7/3にして、溶融混練して樹脂組成物(MB)を得る第1工程と、第1工程で得られた樹脂組成物(MB)に、さらにプロピレンブロック重合体(A)と非繊維状無機充填材(C)とオレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマ−(D)とを加えて溶融混練して樹脂組成物を得る第2工程とからなる製造方法である。
【0046】
前記第1工程で用いられる、プロピレン重合体(E)としては、プロピレン単独重合体、または、エチレン−プロピレンブロック共重合体が挙げられ、本発明で用いられるプロピレンブロック共重合体(A)であっても良く、好ましくは、プロピレン単独重合体である。プロピレン重合体(E)の製造方法としては、プロピレンブロック重合体(A)と同様に、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
【0047】
前記第1工程で、溶融混練されるプロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)の重量比((E)/(B))は3/7〜7/3であり、好ましくは、4/6〜6/4である。
重量比((E)/(B))が3/7未満の場合(すなわち、(E)が過少で、(B)が過多である場合)、(B)が多すぎて、混練ができなくなることがある。重量比((E)/(B))が7/3を超えた場合(すなわち、(E)が過多で、(B)が過少である場合)、(B)の量が不足し、剛性の改良効果が小さいことがある。
【0048】
プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)を溶融混練する方法としては、各成分を混合し、混練する方法が挙げられる。
混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられ、好ましくは一軸押出機、二軸押出機である。
溶融混練するときの樹脂の温度は、通常、170〜250℃であり、溶融混練の時間は、通常30秒〜10分である。
【0049】
プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)を溶融混練する方法として、好ましくは、繊維状無機充填材(B)が折れない方法であり、例えば、プロピレン重合体(E)として、粉状のプロピレン重合体(E)を用いる方法である。さらに好ましい方法としては、プロピレン重合体(E)と繊維状無機充填材(B)の合計重量100重量部に対して、滑剤(F)を0.3〜3重量部添加し、L/Dが10〜25のスクリューを用いて溶融混練する方法である。
【0050】
前記第2工程は、第1工程で得られた樹脂組成物(MB)に、さらにプロピレンブロック重合体(A)と非繊維状無機充填材(C)とオレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマ−(D)とを加えて溶融混練して樹脂組成物を得る工程である。
【0051】
第2工程の溶融混練に用いられる装置としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。第2工程の溶融混練での樹脂の温度は、通常、170〜250℃であり、溶融混練の時間は、通常、1〜20分である。また、各成分の混合は同時に行なってもよく、分割して行なってもよい。また、必要に応じて、繊維状無機充填材(B)を第2工程で加えても良い。
【0052】
第1工程と第2工程は、1つの押出機を用いて連続で行っても良く、第1工程で得られる樹脂組成物を一度ペレットとして製造して、その後、第1工程で得られたペレットを第2工程で用いても良い。
【0053】
第1工程で樹脂組成物を一度ペレットとして製造し、得られたペレットを第2工程で用いる場合、第2工程で、第1工程で得られたペレットである樹脂組成物(MB)と、プロピレンブロック重合体(A)と、非繊維状無機充填材(C)と、エラストマー(D)とを一括して溶融混練しても良く、分割して溶融混練しても良い。
【0054】
分割して溶融混練する方法としては、例えば、次の(1)〜(4)の方法が挙げられる。
(1)プロピレンブロック重合体(A)と、非繊維状無機充填材(C)と、エラストマー(D)とを溶融混練した後、第1工程で得られたペレットである樹脂組成物(MB)を添加し、溶融混練する方法。
(2)第1工程で得られたペレットである樹脂組成物(MB)と、プロピレンブロック重合体(A)と、非繊維状無機充填材(C)とを溶融混練した後、エラストマー(D)を添加し、溶融混練する方法。
(3)第1工程で得られたペレットである樹脂組成物(MB)と、プロピレンブロック重合体(A)と、エラストマー(D)とを溶融混練した後、非繊維状無機充填材(C)を添加し、溶融混練する方法。
(4)予め、プロピレンブロック重合体(A)にエラストマー(D)を高濃度に溶融混練してマスターバッチとし、第1工程で得られたペレットである樹脂組成物(MB)と非繊維状無機充填材(C)とを添加し、溶融混練する方法。
【0055】
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造方法として、好ましくは、剛性や衝撃強度の改良効果を高めるという観点から、第1工程で得られた樹脂組成物(MB)の含有量を5〜30重量%とし、第2工程で加えられるプロピレンブロック重合体(A)の含有量を20〜89重量%とし、非繊維状無機充填材(C)の含有量を3〜20重量%とし、オレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマー(D)の含有量を3〜30重量%とする製造方法である(ただし、プロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)。
【0056】
より好ましくは、第1工程で得られた樹脂組成物(MB)の含有量を10〜20重量%とし、第2工程で加えられるプロピレンブロック重合体(A)の含有量を53〜80重量%とし、非繊維状無機充填材(C)の含有量を5〜12重量%とし、オレフィン系エラストマーおよび/またはビニル芳香族化合物含有エラストマー(D)の含有量を5〜15重量%とする製造方法である
【0057】
また、樹脂組成物(MB)に含有される繊維状無機充填材(B)の含有量として、好ましくは5〜12重量%である。(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする。)
【0058】
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、滑剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等の添加剤を配合しても良い。
【0059】
滑剤としては、例えば、シラン化合物、ポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アミド等が挙げられ、好ましくは、脂肪酸アミドであり、さらに好ましくは、炭素数6〜22の脂肪酸アミドである。
【0060】
脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられ、好ましくは、エルカ酸アミドである。
【0061】
本発明の射出成形体は、本発明のプロピレン系樹脂組成物を、公知の射出成形法によって、成形して得られるものである。
本発明の射出成形体の用途としては、例えば、自動車用部品、電気製品・電子製品用部品、建材部品等が挙げられ、好ましくは自動車用部品である。
【実施例】
【0062】
物性値の測定法を以下に示す。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従い、測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃であり、荷重は2.16kgである。
【0063】
(2)エチレン含量(単位:重量%)
エチレン含量は、プレスシートを作製し、赤外吸収スペクトルを測定して得られるメチル基(−CH3)およびメチレン基(−CH2−)の特性吸収の吸光度を用いて検量線法により求めた。
【0064】
(3)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。ポリプロピレンについては、溶媒としてテトラリンを用い、温度135℃で評価した。
【0065】
(4)分子量分布(Q値)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下に示した条件で測定した。
GPC:Waters社製 150C型
カラム:昭和電工社製 Shodex 80 MA 2本
サンプル量:300μl(ポリマー濃度0.2wt%)
流量:1ml/min
温度:135℃
溶媒:o−ジクロルベンゼン
東洋曹達社製の標準ポリスチレンを用いて溶出体積と分子量の検量線を作成する。検量線を用いて検体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め分子量分布の尺度として、Q値、すなわち、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)を求めた。
【0066】
(5)アイソタクチックペンタッド分率
アイソタクチック・ペンタッド分率は、A.Zambelliらによって、Macromolecules,6,925(1973)に発表、記載されている方法に従って測定した。すなわち、13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すれば、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率を求めた。ただし、NMRの吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行う。
【0067】
具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法により英国NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 PolypropylenePP/MWD/2のアイソタクチックペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0068】
(6)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率X
結晶性ポリプロピレン部重合工程で生成した重合体の重量比率Xp、EP1部重合工程で生成した重合体の重量比率X1、およびEP2部重合工程で生成した重合体の重量比率X2は、下記式により算出した。
Xp=ΔH2/ΔHP
X1=(ΔHP/ΔH1−1)×ΔH2/ΔHP
X2=1−Xp−X1
ΔHP:結晶性ポリプロピレン部重合工程後の重合体の融解熱量(J/g)
ΔH1:EP−1部重合工程後の重合体の融解熱量(J/g)
ΔH2:EP−2部重合工程後の重合体の融解熱量(J/g)
【0069】
(7)プロピレン−エチレンブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量(単位:重量%)
プロピレン−エチレンブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量は、赤外線吸収スペクトル法により全ブロック共重合体におけるエチレン含量(重量%)で測定し、次式から算出した。
(C2')EP=(C2')T/X
(C2')T:全ブロック共重合体におけるエチレン含量(重量%)
(C2')EP:プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量(重量%)
【0070】
(7−1)第1段目の共重合体部分(EP−1)のエチレン含量[(C2’)EP-1](単位:重量%)
第1段目の共重合体部分(EP−1)を重合した後に重合槽から取り出したサンプルを用い上記(7)と同様にして、[(C2’)EP-1](重量%)を求めた。
【0071】
(7−2)第2段目の共重合体部分(EP−2)のエチレン含量[(C2’)EP-2](単位:重量%)
下記式より求めた。
[(C2’)EP-2]=((C2')T−[(C2’)EP-1]×X1)/X2
【0072】
(8)プロピレン−エチレンブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度([η]EP、単位:dl/g)
プロピレン−エチレンブロック共重合体におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EPは、プロピレン単独重合体部分と全ブロック共重合体の各々の極限粘度を測定することにより、次式から算出した。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η]T:ブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
なお、プロピレン−エチレンブロック共重合体の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]Pは、その製造時に、第一工程であるプロピレン単独重合体部分の製造後に重合槽内より取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体から[η]Pを求めた。
【0073】
(8−1)[η]EP-1
第1段目の共重合体部分(EP−1)を重合した後に重合槽から取り出したサンプルの極限粘度([η](1))を測定し、上記(8)と同様に第1段目の共重合体部分(EP−1)の極限粘度[η]EP-1を求める。
[η]EP-1=[η](1)/X(1)−(1/X(1)−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η](1):EP−1重合後のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
X(1):EP−1重合後のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対するEP−1の重量比率
【0074】
(8−2)[η]EP-2
第2段目の共重合体部分(EP−2)の極限粘度[η]EP-2は、最終的に得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EPと、第1段目の共重合体部分(EP−1)の極限粘度[η]EP-1とそれぞれの重量比率から求める。
[η]EP-2=([η]EP・X−[η]EP−1・X1)/X2
X1:最終的に得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対するEP−1の重量比率
X2:最終的に得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対するEP−2の重量比率
【0075】
(9)樹脂組成物中の繊維状無機充填材(B)の平均長の測定方法
樹脂組成物をキシレンにてソックスレー抽出し、抽出されずにのこった固形成分を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影する。得られたSEM写真の繊維状無機充填材の長さを無作為で50個以上抽出して測定し、平均繊維長を求めた。
【0076】
射出成形体の評価は、以下の方法に従って行う。
(1)曲げ弾性率(FM、単位:MPa)
JIS−K−7203に規定された方法に従い、測定した。射出成形によって成形される試験片を用いた。試験片の厚みは6.4mmであり、スパン長さ100mm、荷重速度30mm/minの条件で曲げ弾性率を評価した。測定温度は23℃で行った。
【0077】
(2)アイゾット衝撃強度(IZOD、単位:KJ/m2
JIS−K−7110に規定された方法に従い、測定した。射出成形によって成形される試験片を用いた。試験片の厚みは3.2mmであり、ノッチ付きの衝撃強度を評価する。測定温度は23℃で行った
【0078】
(3)比重(単位:−)
JIS−K−7112に規定された方法に従い、測定する。水中置換法による測定を23℃で行った。
【0079】
実施例1〜3および比較例1〜5
(A)プロピレンブロック重合体
〔固体触媒成分の製造〕
本発明のプロピレン系重合体に使用する固体触媒成分は、特開2004−182876号公報の実施例3(1)、(2)と同様にして製造した。
【0080】
〔プロピレンブロック重合体(A−1)の製造〕
1.予備重合
製攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水、脱気処理したヘキサンにトリエチルアルミニウム(以下、TEAと略す)を25mmol/L、電子供与体成分としてシクロヘキシルエチルジメトキシシラン(以下、CHEDMSと略す)をCHEDMS/TEA=0.1(mol/mol)、および特開2004−182876号公報に記載の固体触媒成分を触媒成分に含まれるTi含量で[TEA]/Ti=5となるように上記の順に仕込み、固体触媒成分あたりの重合体量比(以下PP/catと略す)が2.5(g/g)になるように5〜15℃を維持しながらプロピレンを連続的に供給して予備重合体スラリーを得た。得られた予備重合体スラリーを製攪拌機付きオートクレーブに移送した後、十分に精製された液状ブタンを加えて10℃以下の温度に保持して保存した。
【0081】
2.本重合 P−(EP−B)−(EP−A)
5槽からなる重合槽を直列に配置し、第1、2、3槽目でプロピレン単独重合体の連続式バルク重合を行い、生成パウダーの置換が完了したところで槽内にホールドしているパウダーを第4槽目に移送し、続いてその槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体(EP−B)を気相重合した。さらに、得られたパウダーを、プロピレン−エチレン比率を調整した5槽目に移送し、プロピレン−エチレン共重合体(EP−A)を気相重合し、P−(EP−B)−(EP−A)構造を有するブロック共重合体を得た。
【0082】
第1、2、3槽目において、リアクター内温度80℃、リアクター内圧力1.8MPaにおいて、気相部のプロピレンを90体積%、水素を10体積%に保持する条件下、1.で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分としてTEAおよびCHEDMSを供給しながら連続的に気相重合を行った。得られた重合体中の濃度として[TEA]=200ppm程度で行い、[CHEDMS]/[TEA]=0.1(mol/mol)、PP/cat=20000(g/g)になるように重合を行った。平均滞留時間は3.5hrであった。得られたポリマーの極限粘度[η]Pは0.91dl/gであった。
【0083】
次に第4槽目においてはリアクター内温度65℃、リアクター内圧力1.4MPaにおいて、気相部のプロピレンを77体積%、エチレンを20体積%、水素を3体積%に保持する条件下で気相重合を行い、次いで、第5槽目において、リアクター内温度65℃、リアクター内圧力1.4MPaにおいて、気相部のプロピレンを77体積%、エチレンを20体積%、水素を3体積%に保持する条件下で気相重合を行い、P−(EP−B)−(EP−A)ブロック共重合体を回収した。トータルのPP/cat=29200(g/g)であり、第4槽目の重合時間は3.4hr、第5槽目の重合時間は3時間であった。
得られたポリマーの分析結果を表1に示した。得られたポリマーの全体の極限粘度[η]Tは1.62dl/gであり、EP−B含量は28.7重量%、EP−A含量は6.9重量%であり、EP−B中のエチレン含量は58.7重量%、EP−A中のエチレン含量は32.5重量%であった。EP−Bの極限粘度[η]EP-Bは2.8dl/g、EP−Aの極限粘度[η]EP-Aは3.4dl/gであった。
【0084】
〔プロピレンブロック重合体(A−2)の製造〕
(A−1)と同様の方法で、第1、2、3槽目の水素濃度、第4、5槽目のプロピレン/エチレン/水素の体積比率、滞留時間を調節することで、ポリプロピレン系重合体(A−2)を製造した。
【0085】
〔プロピレンブロック重合体(A−3)の製造〕
(A−1)と同様の方法で、第1、2、3槽目の水素濃度、第4、5槽目のプロピレン/エチレン/水素の体積比率、滞留時間を調節することで、ポリプロピレン系重合体(A−3)を製造した。ただし、A−3では、4槽目と5槽目のプロピレン/エチレン/水素の体積比率を同じにして製造しており、EP−Aだけを有するプロピレン系重合体であった。
【0086】
〔プロピレンブロック重合体(A−4)〕
住友化学社製 AZ564を用いた。
【0087】
〔プロピレンブロック重合体(A−5)の製造〕
(A−1)と同様の方法で、第1、2、3槽目の水素濃度、第4、5槽目のプロピレン/エチレン/水素の体積比率、滞留時間を調節することで、ポリプロピレン系重合体(A−5)を製造した。
【0088】
実施例1〜3または比較例1〜5で用いたプロピレンブロック共重合体(A−1)〜(A−5)を表1に示した。
【0089】
(B)繊維状無機充填材
(B−1)宇部マテリアルズ社製のモスハイジA(繊維状マグネシウムオキシサルフェート)を用いた。平均繊維径0.5μm、平均繊維長10μm、平均アスペクト比20であった。
【0090】
(B−2)宇部マテリアルズ社製のモスハイジAとプロピレン単独重合体のマスターバッチを用いた。
〔マスターバッチの製造方法〕
分子量分布(Q値)が4.1であり、極限粘度([η]P)が0.80dl/gであり、アイソタクチックペンタッド分率が0.99であり、MFR(230℃)が300g/10分である粉末状のプロピレン単独重合体(E−1) 50重量部、宇部マテリアルズ社製モスハイジA50重量部、および日本精化社製 エルカ酸アミド NewS 1重量部を計重機からフィードし、2軸混練押出し機(神戸製鋼社製4FCM)を用いて混練した。スクリューはフルフライト形状であり、L/D=18.5であり、スクリュー回転数は36rpm、吐出量は180kg/hであった。2軸混練機にて溶融混練後、続いて、大阪精機社製120mm単軸押出し機により、ペレット化して(B−2)を得た
【0091】
(C)非繊維状無機充填材
非繊維状無機充填材としては、タルク(林化成社製 MWHST)を用いた。平均粒子径は、2.7μmであった。
【0092】
(D)エラストマー
デュポンダウエラストマー社製 エチレン−1−オクテン共重合体ゴム : ENGAGE8842(密度:0.858g/cm3、MFR(190℃):1g/10分)
【0093】
(E)プロピレン単独重合体
(E−1)分子量分布(Q値)が4.1であり、極限粘度([η]P)が0.80dl/gであり、アイソタクチックペンタッド分率が0.99であり、MFR(230℃)が300g/10分である粉末状のプロピレン単独重合体
【0094】
(E−2)住友化学社製 Z101Aを用いた。 分子量分布(Q値)が4.2であり、極限粘度([η]P)が1.34dl/gであり、アイソタクチックペンタッド分率が0.98であり、MFR(230℃)が22g/10分であるプロピレン単独重合体。
【0095】
(E−3)住友化学社製 U101E9を用いた。 分子量分布(Q値)が5.4であり、極限粘度([η]P)が0.92dl/gであり、アイソタクチックペンタッド分率が0.99であり、MFR(230℃)が120g/10分であるプロピレン単独重合体。
【0096】
〔ポリプロピレン系樹脂組成物の製造〕
上記の方法によって得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)および、エラストマー(D)、非繊維状無機充填材(C)、繊維状無機充填材(B)、および、プロピレン単独重合体(E)を表2記載の組成比で配合し、これらをヘンシェルミキサーおよびタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44SS−31.5BW−2V型)を用いて、押出量30kg/hr、スクリュー回転数320rpm、ベント吸引下で、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。得られたポリプロピレン系樹脂組成物を表2に示した。
【0097】
〔物性評価用成形体の製造〕
物性評価用試験片は、次の射出成形条件下で作製した。ポリプロピレン系樹脂組成物を熱風乾燥器で120℃で2時間乾燥後、東芝機械製IS150E−V型射出成形機を用いて、成形温度180℃、金型冷却温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を行った。得られた射出成形体の評価結果を表3に示した。
【0098】
【表1】


【0099】
【表2】


【0100】
【表3】






 

 


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