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リン酸エステル化合物 - 住友化学株式会社
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発明の名称 リン酸エステル化合物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−70234(P2007−70234A)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
出願番号 特願2005−255745(P2005−255745)
出願日 平成17年9月2日(2005.9.2)
代理人 【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
発明者 幅上 茂樹 / 東村 秀之
要約 課題
キラリティーをもつ新しい配位子として機能しうる、新規なリン酸エステル化合物を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
一般式(I)または(II)で表されるリン酸エステル化合物。
【化1】


(式中、Rは置換基を有してもよい炭素原子数2以上の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換基を有してもよい炭素原子数2以上の2価の炭化水素基を表し、2つのRは同一でも異なっていてもよいが、Rにヒドロキシル基が付加した化合物HO−R−OHはキラリティーを持つ。)
【化2】



(式中、RおよびRは水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、nは2以上の整数を表し、複数個のRおよびRは同一でも異なっていてもよいが、−C((R)R4)n−にヒドロキシル基が付加した化合物HO−(C(R)R)n−OHは、キラリティーを持つ。Rは水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なリン酸エステル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
キラリティーを有する配位子化合物は、各種金属原子と錯体化することにより、種々の化学反応の光学選択性触媒や不斉認識能を利用したセンサーなどに用いられることが知られている。
不斉炭素原子を有する光学活性なジアミン配位子化合物の銅錯体により2,3−ジヒドロキシナフタレンの不斉酸化重合がおこること(非特許文献1)、不斉炭素原子有する光学活性な環状トリアミン配位子化合物の銅錯体が不斉認識能を有すること(特許文献1)が知られている。
【非特許文献1】Macromolecules, 36, 2604 (2003)
【特許文献1】特許第3086803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、キラリティーを持つ、新しい配位子として機能しうる、新規なリン酸エステル化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明は、下記一般式(I)または(II)で表されるリン酸エステル化合物を提供するものである。
【0005】
【化1】


(式中、Rは置換基を有してもよい炭素原子数2以上の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換基を有してもよい炭素原子数2以上の2価の炭化水素基を表し、2つのRは同一でも異なっていてもよいが、Rにヒドロキシル基が付加した化合物HO−R−OHはキラリティーを持つ。)
【0006】
【化2】


(式中、RおよびRは水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、nは2以上の整数を表し、複数個のRおよびRは同一でも異なっていてもよいが、−C((R)R4)n−にヒドロキシル基が付加した化合物HO−(C(R)R)n−OHは、キラリティーを持つ。Rは水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のリン酸エステル化合物は、例えば、不斉酸化重合触媒として用いられる金属錯体の配位子として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のリン酸エステル化合物は、上記一般式(I)または(II)で表されるリン酸エステル化合物である。
【0009】
上記一般式(I)において、Rは置換基を有してもよい炭素原子数2以上の2価の炭化水素基を表す。
【0010】
上記一般式(I)のRにおける炭素原子数2以上の2価の炭化水素基としては、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−ブチレン基、1,2−ペンチレン基、1,2−へキシレン基、1,2−ノニレン基、1,2−ドデシレン基、2,3−ブチレン基、2,4−ペンチレン基等の炭素数2〜50のアルキレン基;1,2−シクロプロピレン基、1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,2−シクロノニレン基、1,2−シクロドデシレン等の炭素数3〜50のシクロアルキレン基;1,1−エテニレン基、1,2−エテニレン基、1,2−エテニレンメチレン基、1−メチルー1,2−エテニレン基、1,2−エテニレンー1,1−エチレン基、1,2−エテニレンー1,2−エチレン基、1,2−エテニレンー1,2−プロピレン基、1,2−エテニレンー1,3−プロピレン基、1,2−エテニレンー1,4−ブチレン基、1,2−エテニレンー1,2−ブチレン基、1,2−エテニレンー1,2−ヘプチレン基、1,2−エテニレンー1,2−デシレン基等の炭素数2〜50のアルケニレン基;エチニレン基、エチニレンメチレン基、エチニレンー1,1−エチレン基、エチニレンー1,2−エチレン基、エチニレンー1,2−プロピレン基、エチニレンー1,3−プロピレン基、エチニレンー1,4−ブチレン基、エチニレンー1,2−ブチレン基、エチニレンー1,2−ヘプチレン基、エチニレンー1,2−デシレン基等の炭素数2〜50のアルキニレン基;1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、3−フェニル−1,2−フェニレン基、2,2’−ジフェニレン基、2,2’−ジナフト−1,1’−イル基等の炭素数6〜50のアリーレン基;1,2−フェニレンメチレン基、1,3−フェニレンメチレン基、1,4−フェニレンメチレン基、1,2−フェニレンー1,1−エチレン基、1,2−フェニレンー1,2−エチレン基、1,2−フェニレンー1,2−プロピレン基、1,2−フェニレンー1,3−プロピレン基、1,2−フェニレンー1,4−ブチレン基、1,2−フェニレンー1,2−ブチレン基、1,2−フェニレンー1,2−ヘキシレン基、メチレン―1,2−フェニレンメチレン基、メチレン―1,3−フェニレンメチレン基、メチレン―1,4−フェニレンメチレン基等の炭素数7〜50のアリーレン基とアルキレン基からなる二官能炭化水素基があげられる。
【0011】
の2価の炭化水素基において置換してもよい基とは、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ホスフィノ基、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基、置換されてもよい炭化水素ホスフィノ基である。これらの中で置換されてもよい基は、ここに挙げる置換してもよい基で、さらに置換されてもよい。この2価の炭化水素基としては、炭素数1〜30の2価の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜25の2価の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。
【0012】
上記のハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。
【0013】
上記の置換されてもよい炭化水素基における炭化水素基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素数1〜50程度のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素数3〜50程度の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜50程度のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素数6〜50程度のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−フェニル−3−プロピル基、1−フェニル−4−ブチル基、1−フェニル−5−ペンチル基、1−フェニル−6−ヘキシル基等の炭素数7〜50程度のアラルキル基が挙げられる。該炭化水素基としては、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基である。
【0014】
上記の炭化水素オキシ基、炭化水素メルカプト基とはそれぞれ、水酸基、メルカプト基に前記の炭化水素基が置換された基である。
【0015】
上記の炭化水素アミノ基、炭化水素ホスフィノ基とはそれぞれ、アミノ基、ホスフィノ基に前記の炭化水素基が一つまたは二つ置換された基である。
【0016】
上記一般式(I)のRの炭化水素基のおいて置換してもよい基としては、好ましくはハロゲン原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基、置換されてもよい炭化水素メルカプト基、置換されてもよい炭化水素アミノ基、置換されてもよい炭化水素ホスフィノ基であり、より好ましくはハロゲン原子、置換されてもよい炭化水素基、置換されてもよい炭化水素オキシ基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、置換されてもよい炭化水素基である。
【0017】
上記一般式(I)のRとして、好ましくは炭素原子数2〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基およびアリーレン基とアリーレンアルキレン基からなる2価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数2〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基およびアリーレン基とアルキレン基からなる2価の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素原子数2〜8のアルキレン基、シクロアルキレン基およびアリーレン基とアルキレン基からなる二官能炭化水素基であり、その具体例は上記のとおりであり、特に好ましくは1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、2,3−ブチレン基、2,4−ペンチレン基である。
【0018】
上記一般式(I)において、Rは置換基を有してもよい炭素原子数2以上の2価の炭化水素基を表し、2つのRは同一でも異なっていてもよいが、上述のようにHO−R−OHとしたときキラリティーを持たなければならない。ここでいう「キラリティー」とは、化学辞典(東京化学同人)に記載されるように、「実像と鏡像が重ならない構造の性質」である。 上記一般式(I)のRにおける置換基を有してもよい2価の炭化水素基として、Rにおける置換基を有してもよい2価の炭化水素基の中で、HO−R−OHとしたときにキラリティーを持つものである。そのような2価の炭化水素基の具体例としては、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,2−ペンチレン基、1,2−へキシレン基、1,2−ノニレン基、1,2−ドデシレン基、(R,R)および(S,S)−2,3−ブチレン基、(R,R)および(S,S)−2,4−ペンチレン基等の炭素数が好ましくは3〜20、より好ましくは3〜16、特に好ましくは3〜12のアルキレン基;trans−1,2−シクロプロピレン基、trans−1,2−シクロブチレン基、trans−1,3−シクロブチレン基、trans−1,2−シクロペンチレン基、trans−1,2−シクロへキシレン基、trans−1,2−シクロノニレン基、trans−1,2−シクロドデシレン等のシクロアルキレン基;1,2−エテニレン−1,1−エチレン基、1,2−エテニレンー1,2−プロピレン基、1,2−エテニレンー1,2−ブチレン基、1,2−エテニレンー1,2−ヘプチレン基、1,2−エテニレンー1,2−デシレン基等の炭素数が好ましくは3〜20、より好ましくは3〜16、特に好ましくは3〜12のアルケニレン基;エチニレン−1,1−エチレン基、エチニレンー1,2−プロピレン基、エチニレンー1,2−ブチレン基、エチニレンー1,2−ヘプチレン基、エチニレンー1,2−デシレン基等の炭素数が好ましくは3〜20、より好ましくは3〜16、特に好ましくは3〜12のアルキニレン基;2,2’−ジフェニ−1,1’−イル基、3,3’−ジメチル−2,2’−ジフェニ−1,1’−イル基、2,2’−ジナフト−1,1’−イル基等の炭素数が好ましくは12〜30、より好ましくは12〜25、特に好ましくは12〜20のアリーレン基;1,2−フェニレン−1,1−エチレン基、1,2−フェニレンー1,2−プロピレン基、1,2−フェニレンー1,2−ブチレン基、1,2−フェニレンー1,2−ヘキシレン基等の炭素数が好ましくは8〜20、より好ましくは8〜16、特に好ましくは8〜12のアリーレン基とアルキレン基からなる2価の炭化水素基があげられる。
【0019】
上記一般式(I)のRの2価の炭化水素基において置換してもよい基とは、上記におけるそれらとRの置換基としてあげたと同じ基であり、具体例、好ましい例も同じである。
【0020】
上記一般式(I)のRとして、好ましくはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基およびアリーレン基とアリーレンアルキレン基からなる2価の炭化水素基であり、より好ましくはアルキレン基、シクロアルキレン基およびアリーレン基からなる2価の炭化水素基であり、さらに好ましくはシクロアルキレン基およびアリーレン基からなる二官能炭化水素基であり、その具体例は上記のとおりであり、特に好ましくはtrans−1,2−シクロへキシレン基および2,2’−ジナフト−1,1’−イル基である。
【0021】
上記一般式(II)において、RおよびRは水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、nは2以上の整数を表し、複数個のRおよびRは同一でも異なっていてもよいが、HO−(CR)n−OHがキラリティーを持たなければならない。
【0022】
上記一般式(II)のRおよびRにおける炭化水素基とは、上記のRについてあげた2価の炭火水素基に対応する1価の炭化水素基と同じ範囲の基であり、具体例、好ましい例も同じである。RおよびRの炭化水素基に置換してもよい基とは、上記のRにおいて置換基としてあげたと同じ基であり、具体例、好ましい例も同じである。
【0023】
上記一般式(II)のRおよびRとして、好ましくは水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、より好ましくは水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基でその具体例は上記のとおりであり、さらに好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。
【0024】
上記一般式(II)のnは2以上の整数であり、好ましくは2〜6の整数であり、より好ましくは2〜5の整数であり、さらに好ましくは2〜4の整数であり、特に好ましくは2または3である。
【0025】
上記一般式(II)における−(CR)n−で表される2価の部位の具体例として、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,2−ペンチレン基、1,2−へキシレン基、1−フェニルー1,2−エチレン基、1−ベンジルー1,2−エチレン基、(R,R)および(S,S)−2,3−ブチレン基、(R,R)および(S,S)−1,2−ジフェニルー1,2−エチレン基、(R,R)および(S,S)−2,4−ペンチレン基等があげられる。好ましくは1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1−フェニルー1,2−エチレン基、(R,R)および(S,S)−2,3−ブチレン基、(R,R)および(S,S)−1,2−ジフェニルー1,2−エチレン基、(R,R)および(S,S)−2,4−ペンチレン基であり、より好ましくは(R,R)および(S,S)−2,3−ブチレン基、(R,R)および(S,S)−1,2−ジフェニルー1,2−エチレン基、(R,R)および(S,S)−2,4−ペンチレン基であり、さらに好ましくは、(R,R)および(S,S)−2,3−ブチレン基、(R,R)および(S,S)−2,4−ペンチレン基である。
【0026】
上記一般式(II)におけるRは水素原子または置換されてもよい炭化水素基を表し、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。
【0027】
上記一般式(II)のRにおける炭化水素基とは、上記のRおよびRにおいて説明した炭化水素基と同じ定義であり、具体例、好ましい例も同じである。Rの炭化水素基に置換してもよい基とは、上記におけるそれらと同じ定義であり、具体例、好ましい例も同じである。
【0028】
上記一般式(II)におけるRとして、好ましくは炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1〜9の炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基である。
一般式(I)で表される化合物は例えば次の反応式に従って合成できる。
【0029】
【化3】


【0030】
(式中、RおよびRは一般式(I)のそれらと同じ定義である。)
反応条件に特に制限はないが、好ましい条件を次に示す。まず化合物(Ia)と1〜4倍モル量のPOCl3を、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の有機溶媒中で−20〜100℃で0.1〜100時間反応させ、化合物(Ib)を得る。次に、化合物(1b)と0.1〜0.5倍モル当量の化合物(1c)を、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の有機溶媒中で−20〜100℃で0.1〜100時間反応させて、一般式(I)で表される化合物が得られる。
一般式(II)で表される化合物は例えば次の反応式に従って合成できる。
【0031】
【化4】


【0032】
(式中、R〜R、nは一般式(II)のそれらと同じ定義である。)
反応条件に特に制限はないが、好ましい条件を次に示す。まず化合物(IIa)と0.11〜1倍モル量の化合物(IIb)を、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の有機溶媒中で−20〜100℃で0.1〜100時間反応させて、一般式(II)で表される化合物が得られる。
【0033】
本発明のリン酸エステル化合物は、金属錯体の配位子として用いることができる。配位子として本発明のリン酸エステル化合物を有する金属錯体における金属原子としては、金属元素の原子であれば特に制限はないが、周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第1〜12族の金属原子が好ましく、第3〜12族の金属原子がより好ましく、さらに好ましくは第一遷移金属系列の金属原子である。又、場合によってはランタン系列、アクチニウム系列に属する金属であってもよい。例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Lr等が挙げられ、好ましくはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znであり、特に好ましくはCu原子である。該金属錯体における金属原子の価数は、自然界に通常存在するものを適宜選択して使用することができ、例えば銅の場合は1または2価の銅を用いることができる。
【0034】
本発明のリン酸エステルを配位子として用いた金属錯体には、電気的中性を保たせるようなカウンターイオンが必要な場合がある。カウンターアニオンとしては、通常ブレンステッド酸の共役塩基が使用される。例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。この内、好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオンまたはメトキサイドイオンであり、さらに好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオンまたは硝酸イオンである。なお、カウンターカチオンとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属等のカチオンを適宜用いることができる。
【0035】
該金属錯体は、種々の化学反応に対して触媒機能を有しうる。例えば、芳香族化合物の酸化重合の触媒として有用である。
また本発明のリン酸エステル化合物のなかで、光学活性のものを配位子として有する上記金属錯体は、不斉認識能を有し得、また、該金属錯体を例えば、芳香族化合物の酸化重合の触媒として用いると、不斉誘導効果を奏し得る。
また、該金属錯体は、複核金属錯体と成り得る。従って、酸化重合反応の活性、不斉誘導効果等を向上させ得る。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0037】
実施例1
次のスキームに従い、(IV)で表されるリン酸エステル化合物の合成を行った。
【0038】
【化5】


【0039】
窒素置換したナスフラスコに(S)−1,1’−ビナフトール(3.0 mmol)のCHCl (3.3 mL)溶液に、室温、攪拌下でPOCl(4.5 mmol)を加え、次いでEtN (7.5 mmol) のCHCl (0.75 mL)溶液をゆっくりと滴下した。2.5時間攪拌後、水−クロロホルムで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。再結晶(クロロホルム−ヘキサン)により精製し、(III)を得た。(85%収率)
窒素置換したナスフラスコに(R,R)−2,4−ペンタンジオール(0.5 mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(2.3 mmol)およびCHCl (5 mL)を入れ、室温、攪拌下で化合物(III)(2.0 mmol)を加えた。23時間後、クロロホルム−飽和塩化アンモニウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル−クロロホルム)および再結晶(クロロホルム−エーテル)により精製し、化合物(IV)を得た。収率65%。
比旋光度[a]25 +290 (c = 0.21, CHCl). H NMR (200MHz): d 1.49 (d, 6H, J = 6.2 Hz, −CH), 1.90 (m, 2H, −CH−), 4.9−5.1 (m, 2H, −CH−O), 7.27−8.05 (m, 24H, aromatic). IR (KBr, cm-1): 3066, 2979, 1591, 1508,1466 1298, 1230, 966. MS (FAB): 765 ([M +1]).
【0040】
実施例2
次のスキームに従い、(V)で表されるリン酸エステル化合物の合成を行った。
【0041】
【化6】


【0042】
リン酸クロリド(4.0 mmol)を窒素置換した反応容器に入れ、氷浴中で攪拌しながら、(R,R)−2,4−ペンタンジオール(1.0 mmol)のピリジン溶液(5.0 mL)をゆっくりと滴下した。1.5時間後、水−クロロホルムで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ヘキサン:酢酸エチル:クロロホルム=5:1:1〜3:1:1)し化合物(V)を得た。収率93%。
比旋光度[a]25 -29 (c = 0.23, CHCl). H NMR (200MHz): d 1.39 (d, 6H, J = 6.2 Hz, −CH), 1.91−1.99 (m, 2H, −CH−), 4.77−4.91 (m, 2H, −CH−O), 7.09−7.35 (m, 20H, aromatic). IR (neat, cm-1): 3068, 2983, 1591, 1489, 1286, 1192, 762. MS (FAB): 569 ([M +1]).
【0043】
参考例1
上記構造式(IV)で表されるリン酸エステル化合物の銅錯体を用いた2,3−ジヒドロキシナフタレンの酸化重合を行った。シュレンクチューブに、CuCl 0.12mmol、塩化メチレン−メタノール(7:1) 2.4mL、上記構造式(IV)0.12mmolを加え、酸素雰囲気として、60分間攪拌した。2,3−ジヒドロキシナフタレン 1.2mmolを加え、室温で48時間攪拌した。反応混合物を真空下、濃縮し、窒素雰囲気とした後、0℃で、塩化メチレン5mL、ピリジン1mLおよび塩化アセチル0.9mLを加え、室温で12時間攪拌した。得られた反応混合物を少量の塩酸を含むメタノール100mLに落とし、沈殿物を遠心分離し、さらにトルエンで洗浄することにより回収した後、60℃で真空乾燥した。ポリ(2,3−ジアセトキシ−1,4−ナフタレン)が収量63%で得られ、THF可溶部の数平均分子量は4900(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定、THF中)、比旋光度[a] は -10(CHCl)あった。
【0044】
参考例2
参考例1と同様にして、上記構造式(V)で表されるリン酸エステル化合物の銅錯体を用いた2,3−ジヒドロキシナフタレンの酸化重合を行い、得られたポリマーを分析した。ポリ(2,3−ジアセトキシ−1,4−ナフタレン)が収量72%で得られ、数平均分子量は3700、比旋光度[a] は -2あった。




 

 


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