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発明の名称 芳香族カルボン酸の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−55994(P2007−55994A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−334398(P2005−334398)
出願日 平成17年11月18日(2005.11.18)
代理人 【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
発明者 桂 正 / 荒井 信宏 / 水野 正
要約 課題
過マンガン酸カリウムを用いた酸化反応によって生成する二酸化マンガンのろ過性の不良および収率の低下といった問題を改善した、工業的に有用な芳香族カルボン酸化合物の製造方法を提供すること。

解決手段
少なくとも1つのメチル基を芳香環上に有する芳香族化合物を過マンガン酸カリウムで酸化して芳香族カルボン酸を製造する方法であって、当該芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの混合を、tert−ブタノールとtert−ブタノールの3.5重量倍以上の水を含む混合溶媒下で開始することを特徴とする、芳香族カルボン酸の製造方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
少なくとも1つのメチル基を芳香環上に有する芳香族化合物を過マンガン酸カリウムで酸化して芳香族カルボン酸を製造する方法であって、当該芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの混合を、tert−ブタノールとtert−ブタノールの3.5重量倍以上の水を含む混合溶媒下で開始することを特徴とする、芳香族カルボン酸の製造方法。
【請求項2】
混合の開始が、芳香族化合物に過マンガン酸カリウムを添加することにより行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
混合の開始が、過マンガン酸カリウムに芳香族化合物を添加することにより行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの混合を開始した後、tert−ブタノールを添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
反応に使用する過マンガン酸カリウムの全量の少なくとも0.5重量%が添加されるまでは、反応系中のtert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上に維持される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
反応に使用する芳香族化合物の全量の少なくとも0.5重量%が添加されるまでは、反応系中のtert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上に維持される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
芳香族化合物が下記一般式(I):
【化1】



(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。)で示される化合物であり、かつ芳香族カルボン酸が下記一般式(II):
【化2】



(式中、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。)で示される化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、かつR、R、R、R及びR10が、それぞれ独立して水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基である、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
芳香族化合物が(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノールであり、かつ芳香族カルボン酸が4−(4−フルオロベンゾイル)−1,3−ベンゼンジカルボン酸である、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族カルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族カルボン酸は、メチル置換芳香族化合物(芳香環にメチル基が置換した芳香族化合物)を過マンガン酸カリウムで酸化することによって製造することができ、該製造方法は古くから簡便で有用な方法として知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
この反応は通常水溶液中で行われるが、上記芳香族化合物または生成物の溶解性が低い場合は、アルコール類などの反応に影響のない有機溶媒を添加することにより溶解性を調整して行うことができる。
しかしながら、有機溶媒を使用した場合、反応によって生成する二酸化マンガンのろ過性が悪くなるためろ過に長時間を要し、操作性が悪くなるという問題があった。
さらには、ろ過により得られる二酸化マンガンのウェットケーキが理論量の1.5倍重量以上になり、一度にろ過できる量が制限される上に、ウェットケーキに目的物が多量に残存するため、収率を低下させてしまう等の問題があった。
【0004】
特許文献1には、tert−ブタノールと水の混合溶媒に溶解した上記芳香族化合物と過マンガン酸カリウム水溶液とを、別々に、かつ連続的または断続的に添加することにより二酸化マンガンのろ過性等を改善した方法が記載されている。しかし、この方法では上記芳香族化合物と過マンガン酸カリウム水溶液とを併注または間歇で滴下するという煩雑な操作を要し、必ずしも工業的に好ましい方法とは言えなかった。
このため、上記従来の問題を改善した、工業的に有用な芳香族カルボン酸の製造方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2003−34663号公報
【非特許文献1】H.T.クラーク(H.T.Clarke),E.R.テイラー(E.R.Taylor)著, 「オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)」,第II巻,1943年,p.135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記酸化反応にて生成する二酸化マンガンのろ過性の不良および収率の低下といった従来の問題を改善した、工業的に有用な芳香族カルボン酸化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、上記酸化反応にて生成する二酸化マンガンのろ過性が、反応初期に生成する二酸化マンガンの結晶の性状に大きく影響を受けるという知見を得た。そしてこの知見に基づき、反応初期に生成する二酸化マンガンの結晶の性状がろ過に好適な性状となるような溶媒について種々検討した結果、酸化反応における芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの最初の接触、即ちこれらの混合の開始を、tert−ブタノールと水の混合溶媒であってtert−ブタノール含量を特定量以下に低く抑えた混合溶媒下にて行って反応を開始させることにより、ろ過に好適な性状の二酸化マンガンの結晶が生成し、従って、二酸化マンガンのろ過性が大幅に改善され、またこれにより二酸化マンガンのウェットケーキに残存する目的物も低減されて収率の低下を防ぐことができることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
[1]少なくとも1つのメチル基を芳香環上に有する芳香族化合物(以下、単に「芳香族化合物」と略称する。)を過マンガン酸カリウムで酸化して芳香族カルボン酸を製造する方法であって、当該芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの混合を、tert−ブタノールとtert−ブタノールの3.5重量倍以上の水を含む混合溶媒下で開始することを特徴とする、芳香族カルボン酸の製造方法。
[2]混合の開始が、芳香族化合物に過マンガン酸カリウムを添加することにより行われる、上記[1]記載の製造方法。
[3]混合の開始が、過マンガン酸カリウムに芳香族化合物を添加することにより行われる、上記[1]記載の製造方法。
[4]芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの混合を開始した後、tert−ブタノールを添加する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]反応に使用する過マンガン酸カリウムの全量の少なくとも0.5重量%が添加されるまでは、反応系中のtert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上に維持される、上記[2]記載の製造方法。
[6]反応に使用する芳香族化合物の全量の少なくとも0.5重量%が添加されるまでは、反応系中のtert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上に維持される、上記[3]記載の製造方法。
[7]芳香族化合物が下記一般式(I):
【0008】
【化1】


【0009】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。)で示される化合物であり、かつ芳香族カルボン酸が下記一般式(II):
【0010】
【化2】


【0011】
(式中、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。)で示される化合物である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、かつR、R、R、R及びR10が、それぞれ独立して水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基である、上記[7]記載の製造方法。
[9]芳香族化合物が(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノールであり、かつ芳香族カルボン酸が4−(4−フルオロベンゾイル)−1,3−ベンゼンジカルボン酸である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、反応初期に生成する二酸化マンガンの結晶がろ過に好適な性状となり、これが種結晶となって、その後に生成する二酸化マンガンの結晶も同様の性状に成長する。従って、二酸化マンガンのろ過性が大幅に改善され、またこれにより二酸化マンガンのウェットケーキに残存する目的物も低減されて収率の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用する芳香族化合物としては、芳香環上に少なくとも1つのメチル基を有する限り特に限定されず、芳香族炭化水素であっても、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を含む芳香族複素環であってもよく、また単環式であっても多環式であってもよい。好ましくは、下記一般式(I):
【0014】
【化3】


【0015】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。)で示される化合物が挙げられ、中でも、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基である化合物がより好ましい。
【0016】
本発明の製造方法により製造される芳香族カルボン酸は、上記芳香族化合物が酸化された化合物であり、芳香環に少なくとも1つのカルボキシル基を有している。ここでいう芳香環とは芳香族炭化水素であっても、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を含む芳香族複素環であってもよく、また単環式であっても多環式であってもよい。好ましくは、下記一般式(II):
【0017】
【化4】


【0018】
(式中、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。)で示される化合物が挙げられ、中でも、R、R、R、R及びR10が、それぞれ独立して水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基または置換基を有していてもよいアリールアルキル基である化合物がより好ましい。
【0019】
アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であり、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜3のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0020】
アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であり、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは1〜3のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
【0021】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子、塩素原子である。
【0022】
置換基を有していてもよいアリール基における「アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基である。ここでいう置換基としては、例えば、アルキル基(前記と同義)、ハロゲン原子(前記と同義)、トリフルオロメチル基、シアノ基などが挙げられ、好ましくはハロゲン原子である。アリール基は、これらの置換基で1または2以上置換されていてもよく、置換位置は特に限定はない。置換基を有していてもよいアリール基の好適な具体例としては、例えば、フェニル基、4−フルオロフェニル基、2−シアノフェニル基などが挙げられる。
【0023】
置換基を有していてもよいアシル基における「アシル基」としては、例えば、ベンゾイル基、アセチル基などが挙げられ、好ましくはベンゾイル基、アセチル基である。ここでいう置換基としては、例えば、ハロゲン原子(前記と同義)などが挙げられ、好ましくはフッ素原子である。アシル基は、これらの置換基で1または2以上置換されていてもよく、置換位置は特に限定はない。置換基を有していてもよいアシル基の好適な具体例としては、例えば、ベンゾイル基、アセチル基、4−フルオロベンゾイル基などが挙げられる。
【0024】
置換基を有していてもよいアリールアルキル基における「アリール」部は、上記「アリール基」と同義であり、「アルキル部」は直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルキル基である。ここでいう置換基としては、例えば、ハロゲン原子(前記と同義)、ヒドロキシ基などが挙げられ、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシ基である。アリールアルキル基は、これらの置換基で1または2以上置換されていてもよい。置換位置は特に限定はなく、置換基はアリール部、アルキル部のいずれに有していてもよく、両方同時に有していてもよい。置換基を有していてもよいアリールアルキル基の好適な具体例としては、例えば、ベンジル基、(4−フルオロフェニル)−(ヒドロキシ)−メチル基などが挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)で表される化合物の特に好適な具体例としては、(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノール、4’−メチルビフェニル−2−カルボニトリル等が挙げられ、特に、(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノールを本発明の製造方法の原料として使用すると、抗うつ剤シタロプラムの有用な中間体である4−(4−フルオロベンゾイル)−1,3−ベンゼンジカルボン酸を得ることができる。
【0026】
本発明の製造方法では、酸化反応をtert−ブタノールと水を含む混合溶媒下で行うが、芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの混合の開始を、tert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上である混合溶媒下で行う。これにより、反応初期に生成する二酸化マンガンの結晶がろ過に好適な性状となり、これが種結晶となって、その後に生成する二酸化マンガンの結晶も同様の性状に成長し、その結果、ろ過性が良好となると考えられる。
【0027】
さらに、安定的にろ過性が良好な二酸化マンガンを生成させるためには、混合開始時の混合溶媒中のtert−ブタノールに対する水の含量を3.55重量倍以上とすることが好ましく、3.58重量倍以上がより好ましい。
当該混合溶媒中のtert−ブタノールに対する水の含量の上限は特に限定されるものではないが、水の含量が多すぎる場合、芳香族化合物の溶解性によっては反応が進みにくくなる場合もあるので、15重量倍以下が好ましく、10重量倍以下がより好ましい。
【0028】
芳香族化合物と過マンガン酸カリウムの混合の開始は、どのような態様で行ってもよく、例えば、(1)tert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上である混合溶媒に芳香族化合物を仕込み、次いで過マンガン酸カリウムをそのまままたは溶液として添加する方法;(2)tert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上である混合溶媒に過マンガン酸カリウムを仕込み、次いで芳香族化合物をそのまままたは溶液として添加する方法;(3)tert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上である混合溶媒に、芳香族化合物と過マンガン酸カリウムを別々に、そのまままたは溶液として添加する方法;が挙げられる。
また、混合(開始から終了までの一連の混合)は、上記(1)〜(3)の態様に加えて、(4)tert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上である混合溶媒に、使用する芳香族化合物の一部を仕込み、使用する過マンガン酸カリウムの一部をそのまままたは溶液として添加し、さらにその後、芳香族化合物と過マンガン酸カリウムを別々に、そのまままたは溶液として添加する方法;(5)tert−ブタノールに対する水の含量が3.5重量倍以上である混合溶媒に、使用する過マンガン酸カリウムの一部を仕込み、使用する芳香族化合物の一部をそのまままたは溶液として添加し、さらにその後、芳香族化合物と過マンガン酸カリウムを別々に、そのまままたは溶液として添加する方法などが挙げられる。操作性、収率などを考慮すると(1)の方法で行うことが好ましい。
また、反応初期に生成する二酸化マンガンの種結晶から徐々に成長させるのが好ましいので、各試薬は滴下などにより徐々に添加するのが好ましい。添加方法は連続的であっても断続的であってもよい。
【0029】
芳香族化合物または目的の芳香族カルボン酸の溶解性が低く、混合開始時のようにtert−ブタノールの含量が低いままでは、反応を円滑に進行させることが困難である場合(例えば、原料が(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノールである場合)、混合開始後、好ましくはろ過に好適な二酸化マンガンの種結晶が生成した後に、上記化合物の溶解性を高めて反応を円滑に進行させるためにtert−ブタノールを添加してもよい。
【0030】
tert−ブタノールを添加する態様は特に限定されず、(a)芳香族化合物または過マンガン酸カリウムとの混合物(溶液を含む)として添加する方法;(b)芳香族化合物または過マンガン酸カリウムとは別に、tert−ブタノールを添加する方法;(c)(a)および(b)の方法の組み合わせなどが挙げられる。tert−ブタノールは、水との混合物として添加してもよい。
【0031】
混合を上記の(1)の方法で行う場合、tert−ブタノールの添加は、過マンガン酸カリウムの添加と共に、tert−ブタノールを滴下し、過マンガン酸カリウムの添加終了時点で、必要なtert−ブタノール含量になるように添加するのが好ましい。
tert−ブタノールを添加する場合、添加終了時の反応系におけるtert−ブタノールと水との割合(重量比)は芳香族化合物および芳香族カルボン酸の水溶性にもよるが、2:1〜1:3が好ましく、特に1:1〜1:2がより好ましい。
【0032】
tert−ブタノールの添加時期は、混合開始後であれば特に限定されないが、ろ過に好適な二酸化マンガンの種結晶が生成した後であることが好ましく、この場合、二酸化マンガンの種結晶が生成した直後から添加してもよいし、生成直後から一定時間経過した後に添加してもよい。しかし、反応初期の混合溶媒中の水の含量がtert−ブタノールに対して3.5重量倍以下であると、ろ過に好適でない性状の結晶も生成してろ過性が低下する場合もあるので、ある程度の種結晶が生成するまでは、水の含量をtert−ブタノールに対して3.5重量倍以上に維持しておくことが好ましい。具体的には、例えば、混合の開始を上記の(1)の方法で行う場合は、反応に使用する過マンガン酸カリウムの全量の少なくとも0.5重量%が添加されるまでは、混合溶媒中の水の含量がtert−ブタノールに対して3.5重量倍以上に維持されるように、tert−ブタノールを添加するのが好ましい。また、混合の開始を上記の(2)の方法で行う場合は、反応に使用する芳香族化合物の全量の少なくとも0.5重量%が添加されるまでは、混合溶媒中の水の含量がtert−ブタノールに対して3.5重量倍以上に維持されるように、tert−ブタノールを添加するのが好ましい。さらに、混合の開始を上記の(3)の方法で行う場合は、反応に使用する芳香族化合物の全量の少なくとも0.5重量%および反応に使用する過マンガン酸カリウムの全量の少なくとも0.5重量%が添加されるまでは、混合溶媒中の水の含量がtert−ブタノールに対して3.5重量倍以上に維持されるように、tert−ブタノールを添加するのが好ましい。
なお、添加方法は連続的であっても断続的であってもよい。
【0033】
過マンガン酸カリウムの使用量は、芳香族化合物の種類によって異なるが、通常、過マンガン酸カリウムのモル数が、(反応に使用する芳香族化合物のモル数)×(当該化合物の有する過マンガン酸カリウムで酸化されうる官能基数)の0.25〜4倍、好ましくは1〜3倍となる量である。過マンガン酸カリウムの使用量が0.25倍未満となる量であると、芳香族化合物の芳香環上のメチル置換基のカルボキシル基への酸化が不十分となり、目的とする芳香族カルボン酸の収率が低下する。逆に4倍となる量を超えると、過剰酸化が起こり、芳香族カルボン酸が分解してしまって収率が低下する恐れがあるので好ましくない。なお、過マンガン酸カリウムで酸化されうる基としては、例えば、芳香環に置換したアルキル基(メチル基を含む)、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、ハロゲノメチル基、ホルミル基などが挙げられる。
【0034】
過マンガン酸カリウムを添加する場合、水溶液として添加してもよいし、そのまま断続的に添加してもよい。水溶液として添加する場合、その濃度としては、反応性及び経済性の観点から、15〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜25重量%である。また、過マンガン酸カリウムが析出するのを防ぐため、過マンガン酸カリウム水溶液は、添加時まで保温しておくことが好ましい。保温温度は40〜90℃が好ましく、さらに好ましくは70〜85℃である。
【0035】
溶媒の使用量は、撹拌が可能である限り特に制限はないが、通常は芳香族化合物に対して1〜60重量倍使用され、好ましくは10〜40重量倍である。
【0036】
反応温度は、通常50〜100℃、好ましくは70〜85℃の範囲である。反応が完結しているかどうかは、HPLCやヨウ化カリウムデンプン紙で確認することができ、反応が完結していない場合には、通常50〜100℃、好ましくは75〜85℃で、反応が完結するまでさらに撹拌する。撹拌は、芳香族化合物及びその使用量にもよるが、通常は添加終了後3〜20時間、好ましくは5〜10時間行う。
【0037】
本発明においては、ろ過時における容積効率を向上させるために、反応終了後に反応液を濃縮してもよい。なお、濃縮は、通常は溶媒の量が濃縮前の30〜90重量%の量、好ましくは50〜80重量%の量となるように行う。
【0038】
本発明においては、酸化反応終了後、反応混合物を通常50〜90℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜70℃でろ過するのが好ましい。50℃よりも低い温度では目的物の二酸化マンガンへの吸着が生じやすくなって収率が低下し、90℃よりも高い温度では用いる溶媒が蒸発しやすくなり好ましくない。
【0039】
反応液をろ過すると、ろ過開始後、まずろ液が連続的に落ち始めてから、次に断続的に落ちるようになり、最終的に落ちなくなるが、本発明においては、(ろ過の開始)〜(ろ液が連続的に落ちる状態から断続的に落ちる状態に変わる直前)の時間をろ過時間とする。
【0040】
ろ過速度とは、(ろ過量)÷(ろ過面積)÷(ろ過時間)で算出される値である。ろ過速度値を比較する際には、ろ過条件(ろ過温度、ろ過圧)を同じにしてろ過時間を測定することが重要である。さらに正確に比較するため、反応液のケーキ厚およびろ過面の面積を同じにしてろ過時間を測定するのが好ましい。
【0041】
本発明において、反応液をろ過後、得られたろ液から目的物である芳香族カルボン酸を取り出す方法としては種々の方法を用いることができる。例えば、ろ液に酸を加えることにより芳香族カルボン酸を結晶として析出させ、濾取することができる。しかしながら、この方法で析出する結晶は細かく、ろ過に時間がかかるうえに、析出した結晶に不純物を含みやすい。このため、この方法で取り出した場合、さらなる精製を必要とする。そこで、本発明者らは、上記問題を解決するため研究を行った結果、酸の溶液に芳香族カルボン酸を含む溶液を滴下すると得られる結晶が大きくなり、ろ過時間を短縮でき、さらに結晶に不純物を含みにくくなることを見出した。具体的には、二酸化マンガンをろ過により除いた後のろ液を、酸性の溶液中に、通常20〜80℃、好ましくは60〜65℃で加えることにより結晶性に優れ、かつ不純物の少ない芳香族カルボン酸を得ることができる。ここでいう酸性の溶液とはpHが0〜7の範囲内にある限り、いかなる酸を含む溶液であってもよく、例えば、通常は塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、好ましくは塩酸、硫酸を含む溶液が挙げられる。なお、結晶化した芳香族カルボン酸は、通常10〜80℃、好ましくは25〜55℃でろ過することにより得られる。
【0042】
本発明で用いる芳香族化合物は、例えば、米国特許第3835167号に記載の方法によって製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0044】
実施例1
水(84g)、過マンガン酸カリウム(8.46g,53.5mmol,全使用量の10重量%)及び87%tert−ブタノール水溶液(28g)を仕込み(tert−ブタノール:水=1:3.6)、内温が80℃になるまで加温した。(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノール(1.87g,8.12mmol,全使用量の10重量%)、tert−ブタノール(1.81g)及び87%tert−ブタノール水溶液(14g)の混合溶液を30分で滴下した(滴下終了後のtert−ブタノール:水=1:2.3)。その後、(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノール(16.81g,73mmol)、tert−ブタノール(16.35g)及び87%tert−ブタノール水溶液(126.1g)の混合溶液と過マンガン酸カリウム(76.15g,0.482mol)及び水(254g)の混合溶液を6時間かけて同時に滴下した(滴下終了後のtert−ブタノール:水=1:2.46)。滴下終了後、混合物を80℃で8時間保温し、ヨウ化カリウムでんぷん紙で陰性を確認した後、内温が88℃を超えるまでtert−ブタノールを留出させた。反応混合物を内温65℃まで冷却し、85m/m径のろ紙を使用し、同温下、13.3kPaのろ過圧で吸引ろ過し、副生する二酸化マンガンをろ別した。ろ過時間は110秒であった。この時のろ過速度は、400L/m・hr(ケーキ圧100m/m換算)であった。さらに、60℃の温水(84g)で洗浄した。得られた二酸化マンガンのウェットケーキは97.2gであった。得られたろ液を35%塩酸水でpH=5.1とした。この時析出してくる4−(4−フルオロベンゾイル)−3−メチル−1−ベンゼンカルボン酸をろ別した。
その後、17.5%塩酸水(49.7g)を仕込んだ後、内温を60℃とし、接種後得られたろ液を5時間かけて滴下した。得られた結晶をろ別し、60℃の温水(84g)で洗浄した。4−(4−フルオロベンゾイル)−1,3−ベンゼンジカルボン酸のウェットケーキ(18.75g)を得た。乾燥により、ドライケーキ(17.31g)を得た。収率は74.0%であった。LC分析により含量を測定したところ、96.7%であった。
【0045】
実施例2
水(84g)、(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノール(18.68g,81.1mmol)及びtert−ブタノール(18.68g)を仕込み(tert−ブタノール:水=1:4.5)、内温が80℃になるまで加温した。過マンガン酸カリウム(21.46g,134mmol,全使用量の25重量%)及び水(70.5g)の混合溶液を1時間かけて滴下した(滴下終了後のtert−ブタノール:水=1:8.3)。過マンガン酸カリウム(63.46g,0.40mol)及び水(211.5g)の混合溶液及び87%tert−ブタノール水溶液(140.1g)を3時間かけて同時に滴下した(滴下終了後のtert−ブタノール:水=1:2.73)。滴下終了後、80℃で8時間保温し、ヨウ化カリウムでんぷん紙で陰性を確認した後、内温が88℃を超えるまでtert−ブタノールを留出させた。反応混合物を内温65℃まで冷却し、85m/m径のろ紙を使用し、同温下、13.3kPaのろ過圧で吸引ろ過し、副生する二酸化マンガンをろ別した。ろ過時間は120秒であった。この時のろ過速度は、400L/m・hr(ケーキ圧100m/m換算)であった。さらに、60℃の温水(84g)で洗浄した。得られた二酸化マンガンのウェットケーキは104.5gであった。
その後、17.5%塩酸水(69.3g)を仕込んだ後、内温を60℃とし、接種後得られたろ液を5時間かけて滴下した。得られた結晶をろ別し、60℃の温水(84g)で洗浄した。4−(4−フルオロベンゾイル)−1,3−ベンゼンジカルボン酸のウェットケーキ(19.23g)を得た。乾燥により、ドライケーキ(17.17g)を得た。収率は73.4%であった。LC分析により含量を測定したところ、94.4%であった。
【0046】
比較例1
(2,4−ジメチルフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタノール(18.68g,81.12mmol)、tert−ブタノール(164.4g)及び 水(105.9g)を仕込み(tert−ブタノール:水=1:0.64)、内温が80℃になるまで加温した。過マンガン酸カリウム(84.61g,0.535mol)及び水(282g)の混合溶液を3.5時間で滴下した(滴下終了後のtert−ブタノール:水=1:2.36)。混合物を80℃で1時間保温し、ヨウ化カリウムでんぷん紙で陰性を確認した後、内温が88℃を超えるまでtert−ブタノールを留出させた。反応混合物を内温65℃まで冷却し、70m/m径のろ紙を使用し、同温下、13.3kPaのろ過圧で吸引ろ過し、副生する二酸化マンガンをろ別した。ろ過時間は540秒であった。この時のろ過速度は、200L/m・hr(ケーキ圧100m/m換算)であった。さらに、60℃の温水(84g)で洗浄した。得られた二酸化マンガンのウェットケーキは142.8gであった。その後、17.5%塩酸水(69.3g)を仕込んだ後、内温を60℃とし、接種後得られたろ液を4.7時間かけて滴下した。 得られた結晶をろ別し、60℃の温水(84g)で洗浄した。4−(4−フルオロベンゾイル)−1,3−ベンゼンジカルボン酸のウェットケーキ(16.35g)を得た。乾燥により、ドライケーキ(14.71g)を得た。収率は62.9%であった。LC分析により含量を測定したところ、98.5%であった。
【0047】
実施例3
4’−メチルビフェニル−2−カルボニトリル(19.3g,0.10mol)、87%tert−ブタノール水溶液(19.3g)及び水(145g)を仕込み(tert−ブタノール:水=1:8.8)、内温が80℃になるまで昇温した。過マンガン酸カリウム(47.4g,0.30mol)を3.3時間で分割添加した。混合物を80℃で2時間保温し、ヨウ化カリウムでんぷん紙で陰性を確認した。反応混合物を内温65℃まで冷却し、70m/m径のろ紙を使用し、同温下、13.3kPaのろ過圧で吸引ろ過し、副生する二酸化マンガンをろ別した。ろ過時間は75秒であった。この時のろ過速度は、400L/m・hr(ケーキ圧100m/m換算)であった。さらに、60℃の温水(70g)で洗浄した。得られた二酸化マンガンのウェットケーキは50.7gであった。得られたろ液をトルエン(40ml)で洗浄し、トルエン層を分液した後の水層(pH=9.7)に35%塩酸(6.21g)を加えながら結晶を析出させた。その時のスラリー溶液のpHは7.2であった。得られた結晶をろ別し、水(50g)で洗浄した。2’−シアノ−4−ビフェニルカルボン酸のウェットケーキ(22.72g)を得た。乾燥によりドライケーキ(13.45g)を得た。収率は60.3%であった。LC分析により含量を定量したところ98.4%であった。
【0048】
比較例2
トルエン(12.2g,0.133mol)、87%tert−ブタノール水溶液(72.9g)及び水(41.0g)を仕込み(tert−ブタノール:水=1:0.8)、内温が80℃になるまで加温した。過マンガン酸カリウム(47.4g,0.30mmol) 及び水(158g)の混合溶液を2.5時間で滴下した(滴下終了後のtert−ブタノール:水=1:3.29)。混合物を80℃で1時間保温し、過マンガン酸カリウムでんぷん紙で陰性を確認した。その後、内温が88℃を超えるまでtert−ブタノールを留出させた。反応混合物を内温65℃まで冷却し、70m/m径のろ紙を使用し、同温下、13.3kPaのろ過圧で吸引ろ過し、副生する二酸化マンガンをろ別した。ろ過時間は160秒であった。この時のろ過速度は、200L/m・hr(ケーキ圧 100m/m換算)であった。さらに、60℃の温水(60g)で洗浄した。得られた二酸化マンガンのウェットケーキは74.4gであった。その後、17.5%塩酸水(41.7g)を仕込んだ後、内温を60℃とし、得られたろ液を2.0時間かけて滴下した。得られた結晶をろ別し、60℃の温水(60g)で洗浄した。安息香酸のウェットケーキ(14.18g)を得た。乾燥によりドライケーキ(11.45g)を得た。収率は70.8%であった。LC分析により含量を定量したところ、99.1%であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の製造方法によれば、二酸化マンガンのろ過性が大幅に改善され、またこれにより二酸化マンガンのウェットケーキに残存する目的物も低減されて収率の低下を防ぐことができる。




 

 


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