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発明の名称 昆虫由来のc−Junアミノ末端リン酸化酵素活性に関わる有害生物の生理状態に変化を与える薬剤
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−61(P2007−61A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−183032(P2005−183032)
出願日 平成17年6月23日(2005.6.23)
代理人 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
発明者 下川床 康孝 / マルク ヴァン デ クリーン / イレン ヌーレン / サンドラ ツールコニ / アンリース ルーブルック / ウェンディー マデレン
要約 課題
標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、昆虫や有害生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等を提供すること。

解決手段
有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のc−Junアミノ末端リン酸化酵素(以下、本酵素と記す)の活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤、並びに、被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、(1)例えば、開示されるアミノ酸配列からなる蛋白質等を含む群Aから選択される本酵素と被験物質との接触系内における前記本酵素の活性を測定する第一工程、及び(2)第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき前記物質の有害生物防除能力を評価する第二工程、を有することを特徴とする方法等。
特許請求の範囲
【請求項1】
有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤。
【請求項2】
昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素が、ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
有害生物の生理状態に変化を与える薬剤が、有害生物防除剤であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項4】
昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)と配列番号14で示されるペプチドとの反応を阻害する能力であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項5】
有効成分として、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含有することを特徴とする有害生物防除剤。
【請求項6】
前記化学物質が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素と配列番号14で示されるペプチドとの反応を阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする請求項5記載の有害生物防除剤。
【請求項7】
前記化学物質が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素と配列番号14で示されるペプチドとの無細胞反応系において、前記化学物質の存在濃度が10μM以上の場合に、当該化学物質が存在しない場合よりもc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性が低くなるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする請求項6記載の有害生物防除剤。
【請求項8】
前記化学物質が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素と配列番号14で示されるペプチドとの反応の無細胞反応系において、100μM以下のIC50となるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする請求項6記載の有害生物防除剤。
【請求項9】
被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、
(1)下記の群Aから選択されるc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)と被験物質との接触系内における前記c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を測定する第一工程、及び
(2)第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき前記物質の有害生物防除能力を評価する第二工程、
を有することを特徴とする方法。
<群A>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と83%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(d)配列番号2で示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質
(e)配列番号2で示される塩基配列と65%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(f)配列番号2で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(g)昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列からなる蛋白質
(h)ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列からなる蛋白質
【請求項10】
請求項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する物質を選抜することを特徴とする有害生物防除能力を有する物質の探索方法。
【請求項11】
請求項10記載の探索方法により選抜された物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする有害生物防除剤。
【請求項12】
請求項5、6、7、8又は11記載の有害生物防除剤の有効量を、保護すべき作物、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することを特徴とする有害生物防除方法。
【請求項13】
請求項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する物質を特定し、特定された有害生物防除能力を有する物質と有害生物とを接触させることを特徴とする有害生物防除方法。
【請求項14】
下記の群Bのいずれかのアミノ酸配列を有することを特徴とする昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)。
<群B>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列を有するアミノ酸配列
(e)配列番号2で示される塩基配列と75%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(f)配列番号2で示される塩基配列に対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(g)ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素が有するアミノ酸配列
【請求項15】
有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の使用。
【請求項16】
有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、請求項14記載の昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の使用。
【請求項17】
請求項14記載のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項18】
配列番号2で示される塩基配列からなることを特徴とする請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドが有する塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドの部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項21】
配列番号3又は4で示される塩基配列からなることを特徴とする請求項20記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
c-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、請求項20又は21記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程、増幅された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、を有することを特徴とする方法。
【請求項23】
c-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、請求項19、20又は21記載のポリヌクレオチドをプローブとして用いたハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、を有することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドを、バキュロウイルス由来のプロモーターに機能可能な形で連結してなることを特徴とする環状ポリヌクレオチド。
【請求項25】
バキュロウイルス由来のプロモーターが、ポリヘドリン遺伝子のプロモーターであることを特徴とする請求項24記載の環状ポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項24又は25記載の環状ポリヌクレオチドであって、宿主細胞内で自己複製の為の複製開始点を有することを特徴とする環状ポリヌクレオチド。
【請求項27】
ポリヌクレオチドが、バキュロウイルスシャトルベクターの塩基配列を有し、昆虫細胞内でウイルスとして増殖可能であるポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項24、25又は26記載の環状ポリヌクレオチド。
【請求項28】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドをベクターに連結することを特徴とする環状ポリヌクレオチドの製造方法。
【請求項29】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドが導入されてなることを特徴とする形質転換体。
【請求項30】
形質転換体が形質転換昆虫細胞であることを特徴とする請求項29記載の形質転換体。
【請求項31】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体の製造方法。
【請求項32】
請求項17又は18記載のポリヌクレオチドをゲノムに含むことを特徴とする組換えバキュロウィルス。
【請求項33】
請求項29又は30記載の形質転換体を培養し、産生された昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)を回収する工程を有することを特徴とするc-Junアミノ末端リン酸化酵素の製造方法。
【請求項34】
研究ツールとしての、請求項14記載の昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素或いは請求項17乃至21のいずれかの請求項記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項35】
研究ツールが有害生物防除剤をスクリーニングするための実験ツールであることを特徴とする請求項34記載の「使用」。
【請求項36】
被験物質について、当該被験物質が有する昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段、前記データ情報を所望の条件に基づき照会・検索する手段、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段を具備することを特徴とするシステム。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性に関わる有害生物の生理状態に変化を与える薬剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫由来のc-Jun アミノ末端リン酸化酵素については、例えば、ショウジョウバエでは、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素の遺伝子であるbskが知られており、当該酵素及びその遺伝子は胚の時期から異なる生理的なプロセス(例えば、bskは培養細胞の免疫反応を仲介し、また形態形成を仲介する)に関与すること(例えば、非特許文献1参照)、発生のシグナル伝達に関わる蛋白質であるwingless (wg)とc-Jun アミノ末端リン酸化酵素シグナルの伝達経路とは共同して機能し、背部閉塞と腹部とのパターニング(ventral patterning)を促進すること(例えば、非特許文献2参照)、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素シグナルの伝達経路は正常な羽の発達には必要ないが、当該シグナルのレベルが普通でないときにのみ、羽が正常な位置に発達するための情報として必要であり、このことは、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素シグナルの伝達経路が正常な発達時には見えてこないが、シグナルの伝達経路が異常となったときに適正な発達を維持するためのシステムを提供するために活性化されること(例えば、非特許文献3参照)等が示唆されている。また、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素の遺伝子であるbskのnull mutantは、胚の時期に劣性致死の形質を示し、これはc-Jun アミノ末端リン酸化酵素の昆虫における中心的な機能と一致し、当該遺伝子における変異は胚の背部のクチクラや上皮に影響を与えること、ショウジョウバエの発達過程では、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素シグナルの伝達経路が、細胞の形の変化やアクチン細胞骨格の再編成に関与する形態形成組織の閉塞運動を制御していること(例えば、非特許文献4参照)、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素のloss-of-function変異は胚の時期で致死となること(例えば、非特許文献1参照)等が示唆されている。
ところで、農薬は、従来、化合物を昆虫、菌類、植物等の対象生物に直接作用させ、その生物学的活性を検定するランダムスクリーニングによって見出されてきた。この場合、農薬の安全性や環境への負荷を予測するために、有用な生物活性を有する化合物が特定された後に、その化合物がどのような作用機構で効力を有するか、その化合物が作用する標的が何であるかを分子レベルで詳細に研究する必要があった。
【0003】
【非特許文献1】Sluss et al., Genes Dev. 10(21):2745-58, 1996
【非特許文献2】McEwen et al., Development; 127(16):3607-17, 2000
【非特許文献3】Adachi-Yamada et al., Nature, 400(6740):166-9, 1999
【非特許文献4】Noselli et al., Curr Opin Genet Dev., 9(4):466-72, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような農薬開発の問題点を解決するために、標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、昆虫や有害生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等の開発を試みた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、このような状況下鋭意検討を行った結果、有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤が有害生物を防除することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤;
2.昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素が、ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素であることを特徴とする前項1記載の薬剤;
3.有害生物の生理状態に変化を与える薬剤が、有害生物防除剤であることを特徴とする前項1記載の薬剤;
4.昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)と配列番号14で示されるペプチドとの反応を阻害する能力であることを特徴とする前項1記載の薬剤;
5.有効成分として、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含有することを特徴とする有害生物防除剤;
6.前記化学物質が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素と配列番号14で示されるペプチドとの反応を阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする前項5記載の有害生物防除剤;
7.前記化学物質が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素と配列番号14で示されるペプチドとの無細胞反応系において、前記化学物質の存在濃度が10μM以上の場合に、当該化学物質が存在しない場合よりもc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性が低くなるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする前項6記載の有害生物防除剤;
8.前記化学物質が、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素と配列番号14で示されるペプチドとの反応の無細胞反応系において、100μM以下のIC50となるように阻害する能力を有する化学物質であることを特徴とする前項6記載の有害生物防除剤;
9.被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、
(1)下記の群Aから選択されるc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)と被験物質との接触系内における前記c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を測定する第一工程、及び
(2)第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき前記物質の有害生物防除能力を評価する第二工程、
を有することを特徴とする方法
<群A>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と83%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(d)配列番号2で示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質
(e)配列番号2で示される塩基配列と65%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(f)配列番号2で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(g)昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列からなる蛋白質
(h)ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列からなる蛋白質;
10.前項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する物質を選抜することを特徴とする有害生物防除能力を有する物質の探索方法;
11.前項10記載の探索方法により選抜された物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする有害生物防除剤;
12.前項5、6、7、8又は11記載の有害生物防除剤の有効量を、保護すべき作物、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することを特徴とする有害生物防除方法;
13.前項9記載の検定方法により評価された有害生物防除能力を有する物質を特定し、特定された有害生物防除能力を有する物質と有害生物とを接触させることを特徴とする有害生物防除方法;
14.下記の群Bのいずれかのアミノ酸配列を有することを特徴とする昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)
<群B>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列を有するアミノ酸配列
(e)配列番号2で示される塩基配列と75%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(f)配列番号2で示される塩基配列に対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(g)ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素が有するアミノ酸配列;
15.有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の使用;
16.有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬としての、前項14記載の昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の使用;
17.前項14記載のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
18.配列番号2で示される塩基配列からなることを特徴とする前項17記載のポリヌクレオチド;
19.前項17又は18記載のポリヌクレオチドが有する塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
20.前項17又は18記載のポリヌクレオチドの部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド;
21.配列番号3又は4で示される塩基配列からなることを特徴とする前項20記載のポリヌクレオチド;
22.c-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、前項20又は21記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程、増幅された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、を有することを特徴とする方法;
23.c-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの取得方法であって、前項19、20又は21記載のポリヌクレオチドをプローブとして用いたハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、を有することを特徴とする方法;
24.前項17又は18記載のポリヌクレオチドを、バキュロウイルス由来のプロモーターに機能可能な形で連結してなることを特徴とする環状ポリヌクレオチド;
25.バキュロウイルス由来のプロモーターが、ポリヘドリン遺伝子のプロモーターであることを特徴とする前項24記載の環状ポリヌクレオチド;
26.前項24又は25記載の環状ポリヌクレオチドであって、宿主細胞内で自己複製の為の複製開始点を有することを特徴とする環状ポリヌクレオチド;
27.ポリヌクレオチドが、バキュロウイルスシャトルベクターの塩基配列を有し、昆虫細胞内でウイルスとして増殖可能であるポリヌクレオチドであることを特徴とする前項24、25又は26記載の環状ポリヌクレオチド;
28.前項17又は18記載のポリヌクレオチドをベクターに連結することを特徴とする環状ポリヌクレオチドの製造方法;
29.前項17又は18記載のポリヌクレオチドが導入されてなることを特徴とする形質転換体;
30.形質転換体が形質転換昆虫細胞であることを特徴とする前項29記載の形質転換体;
31.前項17又は18記載のポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体の製造方法;
32.前項17又は18記載のポリヌクレオチドをゲノムに含むことを特徴とする組換えバキュロウィルス;
33.前項29又は30記載の形質転換体を培養し、産生された昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)を回収する工程を有することを特徴とするc-Junアミノ末端リン酸化酵素の製造方法;
34.研究ツールとしての、前項14記載の昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素或いは前項17乃至21のいずれかの前項記載のポリヌクレオチドの使用;
35.研究ツールが有害生物防除剤をスクリーニングするための実験ツールであることを特徴とする前項34記載の「使用」;
36.被験物質について、当該被験物質が有する昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase)の活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段、前記データ情報を所望の条件に基づき照会・検索する手段、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段を具備することを特徴とするシステム;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、昆虫や有害生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等が提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、詳細に本発明を説明する。
【0008】
本発明において「有害生物」とは、人畜に直接害を与え、又は、作物等を害することによって人間生活に害や不快感を与える小動物を示し、例えば、昆虫やダニ等の節足動物及び線虫等の線形動物があげられ、具体的には例えば、以下に示すものがあげられる。
半翅目害虫:ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等のウンカ類、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)等のヨコバイ類、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)等のアブラムシ類、カメムシ類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)等のコナジラミ類、カイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等;
鱗翅目害虫:ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilalis)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)等のメイガ類、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、トリコプルシア属(Trichoplusia spp.)、ヘリオティス属(Heliothis spp.)、ヘリコベルパ属(Helicoverpa spp.)、エアリアス属(Earias spp.)等のヤガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)等のシロチョウ類、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyes orana fasciata)、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、コドリングモス(Cydia pomonella)等のハマキガ類、モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類、モモハモグリガ(Lyonetia clerkella)等のチビガ類、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)等のホソガ類、ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella)等のコハモグリガ類、コナガ(Plutela xylostella)等のスガ類、ピンクボールワーム(Pectinophora gossypiella)等のキバガ類、ヒトリガ類、ヒロズコガ類等;
双翅目害虫:アカイエカ(Culex pipiens pallens)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)等のイエカ類、(Aedes aegypti)、(Aedes albopictus)等のエーデス属、(Anopheles sinensis)等のアノフェレス属、ユスリカ類、イエバエ(Musca domestica)、オオイエバエ(Muscina stabulans)等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、ヒメイエバエ類、タネバエ(Delia platura)、タマネギバエ(Delia antiqua)等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類、ハモグリバエ類等;
鞘翅目害虫:ウエスタンコーンルートワーム(Diabrotica virgifera virgifera)、サザンコーンルートワーム(Diabrotica undecimpunctata howardi)等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)等のコガネムシ類、メイズウィービル(Sitophilus zeamais)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、アズキゾウムシ(Callosobruchuys chienensis)等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)等のゴミムシダマシ類、イネドロオイムシ(Oulema oryzae)、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)等のハムシ類、シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata)等のエピラクナ類、ヒラタキクイムシ類、ナガシンクイムシ類、カミキリムシ類、アオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes)等;
アザミウマ目害虫:ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)等のスリップス属、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)等のフランクリニエラ属、チャノキイロアザミウマ(Sciltothrips dorsalis)等のシルトスリップス属等のアザミウマ類、クダアザミウマ類等;
膜翅目害虫:ハバチ類、アリ類、スズメバチ類等;
網翅目害虫:ゴキブリ類、チャバネゴキブリ類等;
直翅目害虫:バッタ類、ケラ類等;
隠翅目害虫:ヒトノミ等;
シラミ目害虫:ヒトジラミ等;
シロアリ目害虫:シロアリ類等;
ダニ目害虫:ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、オリゴニカス属等のハダニ類、ミカンサビダニ(Aculops pelekassi)、リンゴサビダニ(Aculus schlechtendali)等のフシダニ類、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)等のホコリダニ類、ヒメハダニ類、ケナガハダニ類、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)、ヤマトチマダニ(Haemaphysalis flava)、タイワンカクマダニ(Dermacentor taiwanicus)、ヤマトマダニ(Ixodes ovatus)、シュルツマダニ(Ixodes persulcatus) 、オウシマダニ(Boophilus microplus)等のマダニ類、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)等のコナダニ類、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides ptrenyssnus)等のヒョウヒダニ類、ホソツメダニ(Cheyletus eruditus)、クワガタツメダニ(Cheyletus malaccensis)、ミナミツメダニ(Cheyletus moorei)等のツメダニ類、ワクモ類等;
線虫類:ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus fallax)、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)等。
【0009】
本発明において「有害生物の生理状態に変化を与える」とは、有害生物において、生きていくために維持されている様々な体内での現象、例えば、呼吸・消化・排泄・体液循環・代謝・神経伝達等の働き、又はその仕組み等の状態を、通常の状態から逸脱した状態に変化させることを示す。例えば、呼吸を停止させることによって有害生物の体内代謝に必要な酸素等が供給されなくなるように変化させること、又は、有害生物の神経伝達の働きを停止させることによって有害生物の種々の運動等を停止させるよう変化させること、等である。
本発明において「「有害生物の生理状態に変化を与える薬剤」とは、有害生物に投与することによって有害生物の生理状態に変化を与えることができる薬剤である。
【0010】
本発明において「昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素」とは、様々な生物に存在するc-Junアミノ末端リン酸化酵素の中で、昆虫に存在するc-Junアミノ末端リン酸化酵素を示す。ここで、昆虫とは、動物界、節足動物門、昆虫綱の属する動物であり、例えば、原尾目、粘菅目、双尾目、総尾目、蜉蝣目、蜻蛉目、積翅目、欠翅目、直翅目、ナナフシ目、革翅目、蟷螂目、網翅目、シロアリ目、紡脚目、噛虫目、食毛目、シラミ目、アザミウマ目、半翅目、脈翅目、長翅目、毛翅目、鱗翅目、鞘翅目、双翅目、膜翅目、隠翅目、撚翅目等に属する節足動物が挙げられる。
c-Jun アミノ末端リン酸化酵素(c-Jun NH-terminal kinase、EC 2.7.1.37)は、蛋白質キナーゼであり、ATPのリン酸基をc-Junに転移する活性を有する、MAPキナーゼファミリーの一つである。
【0011】
c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定は、種々の方法により実施可能である。それら方法は、自然の基質又は合成のペプチド基質を用いる。例えば、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素の活性は、基質としてビオチニル化されたc-Jun 融合蛋白質を用いて放射活性を基にした方法を用いて測定可能である。c-Jun融合蛋白質を用いた他の活性測定の例として、Kinase-Glo Luminescent Kinase Assayがある。またその他には、合成ペプチドを用いた蛍光偏光法がある。ATF-2(activating transcription factor 2)は、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素の基質の一つの例である(Fowler Ann et al (2002), Analytical Biochemistry 308 (2002) 223-231.)。
ペプチド鎖の9〜12残基にSer/Thr蛋白質リン酸化酵素の活性中心部位が接触すると考えられているが、7残基の短いペプチド鎖にも結合することが示されている。ペプチド基質の特異性は一般的にリン酸化部位の+3〜−3の残基に限定されるが、この領域以外残基でも基質特異性に寄与することがあり得る。キナーゼのペプチド基質は、既知の生体内での基質の配列及び文献情報から選抜できる。当該方法を用いて複数の異なるペプチド基質をデザインする。例えば、ワタアブラムシ由来のc-Jun アミノ末端リン酸化酵素の当該基質に対する活性を放射活性に基づいた方法によって測定する。それらの測定結果から、例えば、最もリン酸基の転移活性が高い基質を選抜すればよい。そのような基質として、例えば、配列番号14に示すペプチドが挙げられる。
選抜されたペプチド基質は、前記のように放射活性に基づいた方法に用いることができるが、また例えば、IMAP技術を用いた蛍光偏光法に用いて、c-Jun アミノ末端リン酸化酵素の活性を測定可能である。IMAP技術は、ナノ粒子上に固定化されたmetal coordination complex によるリン酸基への特異的結合に基づくものである。このIMAP binding reagent はc-Jun アミノ末端リン酸化酵素の反応で生成される蛍光標識されたリン酸化されたペプチド上のリン酸基と結合する。その結合はペプチドの分子の運動の割合に変化を引き起こし、その結果、ペプチド末端に付加された蛍光ラベルに観察される蛍光偏光値を増加させる。
以上のような様々なc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定の中で、多検体のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を機械的に効率よく測定する方法としては、前記の配列番号14に示すペプチドを基質としたIMAP技術を用いた蛍光偏光法が望ましい。具体的には例えば、IMAP screening Express Kit with progressive Binding system(Molecular Device社製)を用いてかつアミノ基末端にビオチンが付加された配列番号13で示されるアミノ酸配列からなるペプチド及びカルボキシルキ末端が蛍光標識された配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるペプチドを基質として、当該キットに付属される取扱説明書に記載される方法に準じた方法等が挙げられる。
また、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を測定する方法は、上記の方法と同様な方法に準じて実施することができる。
【0012】
既知の昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列は、これまでに、ショウジョウバエ(D. melanogaster 、accession No. AAB51187)、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae 、accession No. EAA05905)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus 、accession No.AA031950)及びミツバチ(Apis mellifera 、accession No.XP_392806)等のものが公共のデータベースに開示されている。また、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子の塩基配列は、これまでに、ショウジョウバエ(D. melanogaster 、accession No. NM_164900)、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae 、accession No. XM_310236)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus 、accession No.AF515780)及びミツバチ(Apis mellifera 、accession No. XM_392806)等のものが公共のデータベースに開示されている。
また、後述の方法によって、これまで未知であったワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列を明らかにすることが可能であり、それらの方法によって得られたアミノ酸配列は配列番号1、遺伝子の塩基配列は配列番号2にそれぞれ開示されている。
一方、昆虫以外のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列は、線虫(Caenorhabditis elegans 、accession No. NP_741434)、ヒト(Homo sapiens 、accession No. NP_002744、NP_620448、NP_620446)等において、及び遺伝子の塩基配列は、線虫(Caenorhabditis elegans 、accession No. NM_171371)、ヒト(Homo sapiens 、accession No. NM_002753、NM_138982 、NM_138980)等において、それぞれ公共のデータベースに開示されている。
ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列と遺伝子の塩基配列に対する既知配列の同一性は表1に示される。
【0013】
【表1】



【0014】
昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力とは、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を増加又は減少させる能力をさし、即ち、c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性化能力又は活性阻害能力を意味する。そして、前記のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定反応系に被験物質を添加して、被験物質がc-Junアミノ末端リン酸化酵素の反応に与える影響を調べることができる。また、c-Junアミノ末端リン酸化酵素の阻害能力を有する物質として、SP600125(Bennett BL et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Nov 20;98(24):13681-6.)等が知られている。
当該反応における被験物質のIC50値とは、当該反応の活性を50%阻害する被験物質の濃度を意味する。被験物質のIC50値は、前記のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定反応系に異なる濃度の被験物質を添加して、各添加濃度(用量)でのc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性(反応)を算出し、用量-反応曲線(dose response curve)を作成して、c-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を50%阻害する被験物質の添加濃度を算出することによって決定できる。より具体的には、4パラメーターロジスティックモデル(4 Parameter Logistic Model)或いは、シグモイド用量-反応モデル(Sigmoidal Dose-Response Model)

f(x) = (A+((B-A)/(1+((C/x)^D)))




を用いて用量-反応曲線を作成し、IC50を算出することができる。また実務的には、市販の計算ソフトウェアであるXLfit (IDBS社製)を用いて算出することが可能である。
昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤とは、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を変化させる能力を有する物質を有効成分とする薬剤である。
【0015】
本発明において「有害生物の生理状態に変化を与える薬剤であり、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力を有することを特徴とする薬剤」とは、前記の測定方法で昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力を特定された薬剤であり、有害生物の生理状態に変化を与えることができる薬剤を意味する。当該薬剤として、望ましくは、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素がワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素である薬剤が挙げられる。また当該薬剤として、望ましくは、有害生物の生理状態に変化を与える薬剤が、有害生物防除剤である薬剤が挙げられる。また当該薬剤として、望ましくは、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力が、前記の配列番号14に示すペプチドを基質とした反応を阻害する能力である薬剤が挙げられる。
【0016】
本発明において「有害生物防除剤」とは、前記有害生物を防除する能力を有する薬剤を示す。
有害生物防除能力を測定する方法の一つとして、本発明で開示される方法の他に、例えば、前記の有害生物に対する殺虫活性を測定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、以下の方法に従い、測定することができる。
下記濃度(表2参照)に滅菌済み人工飼料を調製し、供試薬剤のDMSO溶液を該人工飼料の0.5%容量添加し、混合する以外は、Handbook of Insect Rearing Vol.1 (Elsevier Science Publisers 1985) 35頁〜36頁に記載される方法に準じてワタアブラムシを飼育し、6日後にワタアブラムシの生存数を調査し、次の式により防除価を求める。
【0017】
【表2】


【0018】
防除価(%)={1−(Cb×Tai)/(Cai×Tb)}×100
尚、式中の文字は以下の意味を表す。
Cb:無処理区の処理前の虫の生存数
Cai:無処理区の観察時の生存虫数
Tb:処理区の処理前の虫の生存数
Tai:処理区の観察時の虫の生存数
有意に高い防除価を示す供試薬剤については、有害生物防除活性があると言える。また、より好ましくは、当該防除価が30%以上の供試薬剤は実質的な殺虫活性があると判断でき、当該防除価が30%未満の供試化合物は実質的な殺虫活性が無いと判断できる。
【0019】
本発明における有害生物防除剤は、有効成分として昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含んでいてもよい。
本発明において、農学的に許容される塩とは、防除剤としての製造、及び該製造物の施用に関して、その製造及び施用が不可能とならない形態の塩を指し、どのような形態の塩でもあってもよい。かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム等の無期塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
本発明において「有効成分として、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力を有する化学物質又はその農学的に許容される塩を含有することを特徴とする有害生物防除剤」とは、前記の測定方法で昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力を特定された化学物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有することにより有害生物を防除することができる薬剤を意味する。当該化学物質として、望ましくは、c-Junアミノ末端リン酸化酵素と前記の配列番号14に示すペプチドとの反応を阻害する能力を有する化学物質を挙げることができる。また、より望ましくは、c-Junアミノ末端リン酸化酵素と前記の配列番号14に示すペプチドとの無細胞反応系において、化学物質の存在濃度が10μM以上の場合に、当該化学物質が存在しない場合よりもc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性が低くなるように阻害する能力を有する化学物質が挙げられる。またさらに望ましくは、c-Junアミノ末端リン酸化酵素と前記の配列番号14に示すペプチドとの無細胞反応系において100μM以下のIC50となるようにc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を阻害する化学物質を挙げることができる。
【0021】
本発明において「被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法であって、群Aから選択されるc-Junアミノ末端リン酸化酵素と被験物質との接触系内におけるc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を測定する第一工程と、第一工程により測定された活性と対照における活性とを比較することにより得られる差異に基づき被験物質の有害生物防除能力を評価する第二工程を有することを特徴とする方法」とは、被験物質が有する有害生物防除能力を検定する様々な方法の中で、前記の第一工程及び第二工程を有することを特徴とする方法を示す。
ここで、群Aとは、
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と83%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(d)配列番号2で示される塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質
(e)配列番号2で示される塩基配列と65%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(f)配列番号2で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有する蛋白質
(g)昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列からなる蛋白質
(h)ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列からなる蛋白質
を示す(以下、群Aと記す。)。
【0022】
前記の第一工程は、前記の様々なc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定反応系に被験物質を添加することによってc-Junアミノ末端リン酸化酵素と被験物質を接触させた状態でc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を測定する工程である。また第二工程は、被験物質を測定した時の活性と対照における活性を比較しその差異に基づいて有害生物防除能力を評価する工程である。ここで対照とは、例えば被験物質を溶媒に溶解した状態で反応系に添加した場合には、被験物質を溶解した溶媒のみを添加した試験区を意味する。
当該第一工程及び当該第二工程を有する、被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法に使用されるc-Junアミノ末端リン酸化酵素は、前記群Aに示す蛋白質である。上記の群Aの蛋白質のうち、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)に示される蛋白質のアミノ酸配列において、(a)に示されるアミノ酸配列との間に認められることのある相違は、一部のアミノ酸の欠失、置換、付加等である。これらには、例えば、上記の(a)で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシングによる欠失が含まれる。また、該蛋白質が由来する生物の種差や個体差等により天然に生じる遺伝子変異や、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、突然変異処理等によって人為的に導入される遺伝子変異等により生じるアミノ酸の欠失、置換、付加等が含まれる。
かかる欠失、置換、付加等を受けるアミノ酸の数は、c-Junアミノ末端リン酸化酵素のペプチダーゼ活性を見出すことのできる範囲内の数であれば良い。また、アミノ酸の置換としては、例えば、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似したアミノ酸への置換をあげることができる。このような置換としては、具体的には例えば、(1)グリシン、アラニン;(2)バリン、イソロイシン、ロイシン;(3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、(4)セリン、スレオニン;(5)リジン、アルギニン;(6)フェニルアラニン、チロシン等のグループ内での置換が挙げられる。
かかるアミノ酸の欠失、付加若しくは置換(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。また、アミノ酸の改変を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対してランダムに変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法も挙げられる。ここでランダムに変異を導入する手法としては、例えば、上記のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNAを鋳型とし、それぞれのDNAの全長を増幅できるようなプライマー対を用い、基質に用いるdATP、dTTP、dGTP、dCTPの各々の添加濃度を通常とは変化させた反応条件や、或いはポリメラーゼの反応を促進させるMg2+の濃度を通常よりも増加させた反応条件でPCRを行う方法等が挙げられる。このようなPCRの手法としては、例えば、Method in Molecular Biology, (31), 1994, 97-112 に記載される方法があげられる。また、WO0009682号公報に記載される方法をあげることもできる。
ここで「配列同一性」とは、2つの塩基配列又は2つのアミノ酸配列間の同一性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列又はアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいては、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA[Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448(1988)]、BLAST[Altschulら、Journal of Molecular Biology, 215, 403-410(1990)]、CLUSTAL W[Thompson,Higgins&Gibson, Nucleic Acid Research, 22, 4673-4680(1994a)]等のプログラムを用いて相同性解析を行いアラインメントを作成することによって算出することができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のホームページ(http://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。具体的には例えば、GENETYX-WIN Ver.5(ソフトウェア開発株式会社製)」を用い、Lipman-Pearson法[Lipman, D. J. and Pearson, W.R., Science, 227, 1435-1441,(1985)]により相同性解析を行ってアラインメントを作成することにより算出することができる。
(f)に記載される「ストリンジェントな条件」としては、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行われるハイブリダイゼーションにおいて、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSC(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSC(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
(h)記載の蛋白質は、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の中で、ワタアブラムシに存在するc-Junアミノ末端リン酸化酵素を示し、(a)記載のアミノ酸配列からなる蛋白質も含まれる。
また、群Aの蛋白質には、(g)記載の昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列からなる蛋白質、が含まれるが、より望ましくは、最大の配列同一性が得られるよう配列番号1で示されるアミノ酸配列と整列させた場合に、配列番号1で示されるアミノ酸配列の(I)64位、(II)66位、(III)90位、(IV)107位、(V)112位、(VI)195位、(VII)288位、(VIII)289位、(IX)358位、(X)359位、(XI)368位に相当する位置のアミノ酸残基が、下記アミノ酸残基;(I)64位はスレオニン、(II)66位はグルタミン、(III)90位はフェニルアラニン、(IV)107位はアラニン、(V)112位はアルギニン、(VI)195位はスレオニン、(VII)288位はアスパラギン酸、(VIII)289位はアルギニン、(IX)358位はセリン、(X)359位はバリン、(XI)368位はグルタミンである蛋白質が用いられる。ここで、「最大の配列同一性が得られるように配列番号1で示されるアミノ酸配列と整列させる」とは、上記のFASTA、BLAST、CLUSTAL W等のプログラムを用いて配列番号1で示されるアミノ酸配列を含めて対象となる複数のアミノ酸配列の配列同一性解析を行い整列させることを意味する。このような方法で複数の配列を整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、各アミノ酸配列中における相同アミノ酸残基の位置を決めることが可能である。相同位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象の蛋白質の特異的機能に関して類似した効果を有することが推定できる。例えば、本発明で配列が開示されるc-Junアミノ末端リン酸化酵素を含め、既知の昆虫のc-Junアミノ末端リン酸化酵素は、アミノ酸配列最大の配列同一性が得られるよう配列番号1で示されるアミノ酸配列と整列させた場合に、配列番号1で示されるアミノ酸配列の(I)64位、(II)66位、(III)90位、(IV)107位、(V)112位、(VI)195位、(VII)288位、(VIII)289位、(IX)358位、(X)359位、(XI)368位に相当する位置のアミノ酸残基が、下記アミノ酸残基;(I)64位はスレオニン、(II)66位はグルタミン、(III)90位はフェニルアラニン、(IV)107位はアラニン、(V)112位はアルギニン、(VI)195位はスレオニン、(VII)288位はアスパラギン酸、(VIII)289位はアルギニン、(IX)358位はセリン、(X)359位はバリン、(XI)368位はグルタミン、である。
【0023】
有害生物防除能力を有する物質は、例えば前記の有害生物に対する殺虫活性又は防除効果を測定することによる有害生物防除能力の検定方法を用いることによって探索することができる。
また、前記のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を用いた有害生物防除能力の検定方法によっても有害生物防除能力を有する物質を探索することが可能である。具体的には、前記のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を用いた有害生物防除能力の検定方法を用いて、被験物質の有害生物防除能力がある一定値以上、或いは一定値以下であることが特定された場合、当該物質を選抜することによって有害生物防除能力を有する物質を探索できる。
またこの探索方法によって選抜された物質は、有害生物防除能力を有することから、その物質又はその農学的に許容される塩を有効成分として含有する有害生物防除剤となり得る。
【0024】
有害生物の防除は、通常、有害生物防除剤の有効量を保護すべき作物、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することにより行われる。
有害生物防除剤を農林用として用いる場合には、その施用量は通常1000m2有害生物防除剤の量で0.1〜1000gである。有害生物防除剤が乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤等に製剤化されたものである場合には、通常有効成分濃度が1〜10000ppmとなるように水で希釈して散布することにより施用し、有害生物防除剤が粒剤、粉剤等に製剤化されたものである場合には、通常そのまま施用する。
有害生物防除剤は有害生物から保護すべき作物等の植物に対して茎葉処理することにより使用することができ、作物の苗を植え付ける前の苗床や植付けの時に植穴や株元に処理することにより使用することもできる。さらに、耕作地の土壌に生息する有害生物を防除する目的で該土壌に処理することにより使用してもよい。また、シート状やひも状等に加工した樹脂製剤を作物に巻き付ける、作物の近傍に張り渡す及び/又は株元の土壌表面に敷く等の方法で使用することもできる。
有害生物防除剤を防疫用害虫防除剤として用いる場合には、乳剤、水和剤、フロアブル等は、通常、有効成分濃度が0.01〜10000ppmになるように水で希釈して施用し、油剤、エアゾール、燻煙剤、毒餌等についてはそのまま施用する。
有害生物防除剤の用途の一つとして、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ、ラット、マウス等の小動物の外部寄生虫防除があげられ、この場合は獣医学的に公知の方法で動物に投与する事ができる。具体的な投与方法としては、全身的抑制(systemic control)を目的とする場合には、例えば錠剤、飼料混入、坐薬、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内等)等により投与され、非全身的抑制(non-systemic control)を目的とする場合には、例えば油剤若しくは水性液剤を噴霧する、ポアオン若しくはスポットオン処理を行う、シャンプー製剤で動物を洗う又は樹脂製剤を首輪や耳札にして動物につける等の方法により用いられる。動物体に投与する場合の有害生物防除剤の量は、通常動物1kgに対して、化合物Aと化合物Bとの合計量で、0.1〜1000mgの範囲である。
これらの施用量、施用濃度は、いずれも製剤の種類、施用時期、施用場所、施用方法、有害生物の種類、被害程度の等の状況によって異なり、上記の範囲にかかわることなく増減させることができ、適宜選択する事ができる。
以上に示した有害生物防除の方法に、前記の有害生物防除剤を用いることができる。
また一方、前記の、群Aから選択されるc-Junアミノ末端リン酸化酵素を用いた第一工程及び第二工程を有する、被験物質が有する有害生物防除能力の検定方法、によって評価された有害生物防除能力を有する物質を特定し、特定された有害生物防除能力を有する物質と有害生物とを接触させることによって有害生物を防除することも可能である。ここで特定された有害生物防除能力を有する物質と有害生物とを接触させる方法としては、前記の製剤方法、施用方法等を用いることが出来る。
【0025】
群Bで示されるアミノ酸配列は、下記の(a)〜(g)いずれかのアミノ酸配列を有することを特徴とする昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列である。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列を有するアミノ酸配列
(e)配列番号2で示される塩基配列と75%以上の配列同一性を有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(f)配列番号2で示される塩基配列に対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつc-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を有するアミノ酸配列
(g)ワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素が有するアミノ酸配列
【0026】
上記の群Bのに示されるアミノ酸配列のうち、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)に示される蛋白質のアミノ酸配列において、(a)に示されるアミノ酸配列との間に認められることのある相違は、一部のアミノ酸の欠失、置換、付加等である。これらには、例えば、上記の(a)で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシングによる欠失が含まれる。また、該蛋白質が由来する生物の種差や個体差等により天然に生じる遺伝子変異や、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、突然変異処理等によって人為的に導入される遺伝子変異等により生じるアミノ酸の欠失、置換、付加等が含まれる。
かかる欠失、置換、付加等を受けるアミノ酸の数は、c-Junアミノ末端リン酸化酵素のペプチダーゼ活性を見出すことのできる範囲内の数であれば良い。また、アミノ酸の置換としては、例えば、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似したアミノ酸への置換をあげることができる。このような置換としては、具体的には例えば、(1)グリシン、アラニン;(2)バリン、イソロイシン、ロイシン;(3)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、(4)セリン、スレオニン;(5)リジン、アルギニン;(6)フェニルアラニン、チロシン等のグループ内での置換が挙げられる。
かかるアミノ酸の欠失、付加若しくは置換(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。また、アミノ酸の改変を人為的に行う手法としては、例えば、(a)で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対してランダムに変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法も挙げられる。ここでランダムに変異を導入する手法としては、例えば、上記のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNAを鋳型とし、それぞれのDNAの全長を増幅できるようなプライマー対を用い、基質に用いるdATP、dTTP、dGTP、dCTPの各々の添加濃度を通常とは変化させた反応条件や、或いはポリメラーゼの反応を促進させるMg2+の濃度を通常よりも増加させた反応条件でPCRを行う方法等が挙げられる。このようなPCRの手法としては、例えば、Method in Molecular Biology, (31), 1994, 97-112 に記載される方法があげられる。また、WO0009682号公報に記載される方法をあげることもできる。
ここで「配列同一性」は、2つの塩基配列又は2つのアミノ酸配列間の同一性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の全領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列又はアミノ酸配列の最適なアラインメントにおいては、付加又は欠失(例えばギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA[Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448(1988)]、BLAST[Altschulら、Journal of Molecular Biology, 215, 403-410(1990)]、CLUSTAL W[Thompson,Higgins&Gibson, Nucleic Acid Research, 22, 4673-4680(1994a)]等のプログラムを用いて相同性解析を行いアラインメントを作成することによって算出することができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のホームページ(http://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。具体的には例えば、GENETYX-WIN Ver.5(ソフトウェア開発株式会社製)」を用い、Lipman-Pearson法[Lipman, D. J. and Pearson, W.R., Science, 227, 1435-1441,(1985)]により相同性解析を行ってアラインメントを作成することにより算出することができる。
(f)に記載される「ストリンジェントな条件」としては、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行われるハイブリダイゼーションにおいて、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)を含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSC(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSC(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)までの条件から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
(h)記載の蛋白質は、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の中で、ワタアブラムシに存在するc-Junアミノ末端リン酸化酵素を示し、(a)記載のアミノ酸配列からなる蛋白質も含まれる。
群Bに示されるアミノ酸配列を有する蛋白質は、例えば、群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを用いて後述の方法に従い調製することができる。
【0027】
昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素は、有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬として使用することができる。具体的には、例えば昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素は、前記のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を用いた有害生物防除能力を検定する方法において用いるc-Junアミノ末端リン酸化酵素として使用することによって、有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬として使用することが可能である。また、より具体的な方法については、前記の、c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定方法、に従い実施できる。
また、有害生物防除能力を評価するための指標を提供する試薬として昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を使用する場合において、より好ましくは、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素は、前記の群Bに示されるアミノ酸配列を有するc-Junアミノ末端リン酸化酵素であることが望ましい。
【0028】
前記の群Bに示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド(以下、ポリヌクレオチド群Bと記すこともある。)は、生物の細胞内或いは試験管内の翻訳系において、前記の群Bに示されるアミノ酸配列を有する蛋白質を生成できる塩基配列を持つ。ポリヌクレオチド群Bとしては、自然界からクローニングされたDNAであってもよいし、自然界からクローニングされたDNAに、例えば部位特異的変異導入法やランダム変異導入法等によって塩基の欠失、置換又は付加が導入されたDNAであってもよく、また、人為的に合成されたDNAであってもよい。具体的には、配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0029】
<第1の取得方法>
例えば、ポリヌクレオチド群Bに含まれる配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの取得方法を以下に示す。工程としては、ワタアブラムシから全RNAを取得し、cDNAライブラリーを合成して、PCR増幅を行うことによって目的のポリヌクレオチドを取得できる。
【0030】
ポット植えのキュウリ葉上で飼育されたワタアブラムシ(Aphis gossypii)の成虫及び幼虫の混合した集団630mgを葉上から細筆又は小さなハケでかきとり、これを液体窒素中で乳鉢及び乳棒を用いて粉末状になるまで破砕し、凍結された破砕粉体からRNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを単離する。次に乳鉢中の凍結された破砕粉体に10mlのISOGENを加え10分間磨砕する。この時、乳鉢は氷上に置いた状態で操作する。磨砕後、液体状の試料をピペットにて15mlチューブに移し、2mlのクロロホルム(和光純薬工業社製)を加え、直ちに15秒間激しく混和し、室温で3分間静置する。4℃、15分間、12,000×gで遠心分離後、上層の水相を5mlずつ2本の新しいチューブに移し、ぞれぞれのチューブにISOGENを5ml加え、直ちに15秒間激しく混和し、室温で3分間静置する。4℃、15分間、12,000×gで再度遠心分離後、上層の水相10mlをそれぞれ新しい50mlチューブに移し、続いて、イソプロパノール(和光純薬工業社製)を10ml加え、氷上で30分間静置する。次に4℃、10分間、12,000×gで遠心分離し、RNAを沈殿させ、上清を除いて20mlの70%エタノールを加えて、4℃、5分間、10,000×gで遠心分離する。上清を除き、チューブの口を下にして3分間静置して沈殿した全RNAを軽く乾燥させてから、市販のRNase-free water(ナカライテスク社製)1mlに沈殿を溶解させる。こうして調製した全RNAは260 nmの吸光度を測定し、常法に従い濃度を算出する。
【0031】
前記の方法で得られたワタアブラムシの全RNA鋳型として、ランダムプライマー(Invitrogen社製)及びスーパスクリプトIII(Invitrogen社製)を用いて、付属される説明書に従いRT−PCRを実施し、cDNAライブラリーを合成する。
【0032】
前記の方法で得られたワタアブラムシのcDNAライブラリーを鋳型として、配列番号3及び配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドプライマーとPfu Turbo(Stratagene社製)を用いて、付属される取扱説明書に従いPCRを行う。PCR反応は、94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、50℃、30秒間、72℃、2分間を30サイクルとし、最後に72℃、7分間とした。
以上のようにして配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを取得することが可能である。
【0033】
<第2の取得方法>
また、ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを基にして、前記の部位特異的変異導入法であるアンバー変異を利用する方法、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等によって変異が導入されたポリヌクレオチドを作製することによっても得ることが可能である。
【0034】
<第3の取得方法>
また、ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド等をプローブとしたハイブリダイゼーション法によっても取得可能である。より具体的には、前記のSambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行われるハイブリダイゼーション法に従い実施可能である。
【0035】
<第4の取得方法>
また、ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、既知のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列配列を基にプライマーを作製しPCRによって取得することも可能である。具体的には、チャバネゴキブリ(Blatella germanica)等の他の昆虫種におけるc-Junアミノ末端リン酸化酵素相同遺伝子を得るために、Codehop program(http://blocks.fhcrc.org/blocks/codehop.html)を利用してディジェネレートプライマーを設計する。この時、前述のワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子配列及び既に公知であるイヌコウチュウ(NCBI accession number AAF00539)、アフリカツメガエル(BAB91438及びBAB85483)、ヒト(NP_620448及びNP_002744)、マウス(BAC31240)、ラット(S43969)、ニワトリ(BAA19188)、キイロショウジョウバエ(AAF52883及びAAC47325)、 ガンビエハマダラカ(EAA05905)、ヒトスジシマカ(AAO31950)の配列を参考にする。選択した昆虫種におけるc-Junアミノ末端リン酸化酵素相同遺伝子の部分配列は、該昆虫種由来のcDNA第1鎖を鋳型とした一連のPCRにより増幅する。ここで、鋳型とするcDNA第1鎖は前述のSuperscript IIIを用いた方法により調製する。PCRには、フォワード及びリバースプライマーとしてそれぞれのディジェネレートプライマーと、Amplitaq Gold (Applied Biosystems社製)を用いて、付属される説明書に従って行う。PCRの条件は、94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、45℃、1分間、72℃、予想される増幅産物の長さ1kbにつき1分間、を40サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。PCR産物はアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片をpCR-XL-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニング後、塩基配列を決定する。
【0036】
次に、得られた昆虫のc-Junアミノ末端リン酸化酵素相同遺伝子の部分配列に対する特異的プライマーを設計し、全長配列を獲得するために3' RACE PCR 又は5' RACE PCRを行う。3' 及び5' RACE PCRは昆虫の全RNAより調製したcDNA第1鎖を鋳型とし、SMART PCR cDNA Synthesis Kit (Clontech社製)を用いて、付属される説明書に従って行う。
3' RACE及び5' RACE反応には、SMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているuniversal primer mix (UPM)と、目的の遺伝子配列に特異的なフォワードプライマー又はリバースプライマーをそれぞれ組み合わせて用いる。PCRの条件は、94℃、10分間を1サイクル、94℃、15秒間、63℃、15秒間、72℃、1分間/期待される増幅産物の長さ1kbを40サイクル、72℃、7分間を1サイクルとした。得られたPCR産物はアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片をpCR-XL-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニング後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
1回目のPCRで明確な増幅産物が得られない場合には、1回目のPCR産物を鋳型としてnested PCRを行う。プライマーはSMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているNUP primerと、1回目のPCRに用いた特異的プライマーよりも内側に設計した特異的フォワード及びリバースプライマーをそれぞれ組み合わせて用いる。PCRの条件は、94℃、10分間を1サイクル、94℃、15秒間、63℃、15秒間、72℃、2分間を40サイクル、72℃、7分間を1サイクルとする。得られたPCR産物はアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片をpCR-XL-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニング後、該DNA断片の塩基配列を決定する。
以上の配列決定により、昆虫のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のN末端領域をコードする5'末端配列及びC末端領域をコードする3'末端配列を明らかにする。
このようにして、ポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドは、既知の昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列配列を基にプライマーを作製しPCRによって取得することができる。
【0037】
ポリヌクレオチド群Bの塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション法を用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得に使用することができる。
本発明における取得方法には、ハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、が含まれる。以降に各工程を具体的に説明する。
【0038】
ハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出する工程、及び検出された所望のポリヌクレオチドを特定する工程は、例えば「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols In Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons,Inc.ISBN0-471-50338-X等に記載の方法に準じて、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドをプローブとして用いることによって実施可能である。
具体的には例えば、配列番号2で示される塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するDNAを、Random Primed DNA Labelling Kit(ベーリンガー社製)、Random Primer DNA Labelling Kit Ver.2(宝酒造社製)、ECL Direct Nucleic Acid Labelling and Ditection System(Amersham biosciences社製)、Megaprime DNA-labelling system(Amersham biosciences社製)等を用いた公知の方法によってラジオアイソトープ標識又は蛍光標識することによって、これをプローブとして使用することができる。
ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、ストリンジェントな条件をあげることができ、具体的には例えば、6×SSC(0.9M NaCl、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1%(w/v) フィコール400、0.1%(w/v) ポリビニルピロリドン、0.1%BSA)、0.5%(w/v) SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、又は100μg/ml変性サケ精子DNAを含むDIG EASY Hyb溶液(ベーリンガーマンハイム社)中で、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M NaCl、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、68℃で30分間保温する条件をあげることができる。
より具体的には、例えば、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列に対し相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドを鋳型にしてMegaprime DNA-labelling system(アマシムファルマシアバイオテク社製)を用いてキット指定の反応液を用いることにより32Pでラベルしたプローブを作成することが出来る。このプローブを用いて定法に従ってコロニーハイブリダイゼーションを行い、6×SSC(0.9M NaCl、0.09Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液(0.1%(w/v) フィコール400、0.1%(w/v) ポリビニルピロリドン、0.1%BSA)、0.5%(w/v) SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNA存在下に、又は100μg/ml変性サケ精子DNAを含むDIG EASY Hyb溶液(ベーリンガーマンハイム社)中で、65℃で保温し、次いで1×SSC(0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、室温で15分間の保温を2回行い、さらに0.1×SSC(0.015M NaCl、0.0015Mクエン酸ナトリウム)及び0.5%SDS存在下に、68℃で30分間保温することでハイブリダイズするポリヌクレオチド(を含むコロニー)を検出することができる。こうして、ハイブリダイゼーションにより所望のポリヌクレオチドを検出し、また検出された所望のポリヌクレオチドを特定することができる。
【0039】
特定された所望のポリヌクレオチドを回収するためには、前記の方法で検出、特定されたポリヌクレオチドを含むコロニーから、例えば「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されるアルカリ法等の方法に準じて、プラスミドDNAを回収することによって実施することができる。なお、回収された所望のポリヌクレオチド(プラスミドDNA)の塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 560, 1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson, J.Mol.Biol., 94, 441, 1975、Sanger,F, & Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 5463, 1977等に記載される)により確認することができる。この際、例えば市販のTermo Seqenase II dye terminator cycle sequencing kit(Amersham biosciences社製)、Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)等を用いることができる。
【0040】
ポリヌクレオチド群Bの塩基配列の部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドは、PCRを用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得に使用することができる。より具体的には、配列番号3又は4で示される塩基配列からなるポリペプチドが挙げられる。本発明における取得方法には、PCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程、増幅された所望のポリヌクレオチドを特定する工程、及び、特定された所望のポリヌクレオチドを回収する工程、が含まれる。以降に各工程を具体的に説明する。
【0041】
PCRにより所望のポリヌクレオチドを増幅する工程では、具体的には、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列の部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列から、約20bpから約40bp程度の塩基配列、例えば配列番号2及び配列番号2に対して相補性を有する配列から選択した塩基配列に基づいて設計、合成したDNAをプライマーのセットとして用いることができ、例えば、配列番号3で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと配列番号4で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとのセットをプライマーのセットとして挙げることができる。PCR反応液は例えば前記のような方法で調製したcDNAライブラリーに市販のPCRキット指定の反応液を添加して調製する。反応条件は使用するプライマーセットによって変えることができるが、例えば、94℃で10秒間保温した後、94℃で15秒間、60℃で15秒間、72℃で3分間のサイクルを40サイクル程度繰り返し、さらに72℃で3分間保温する条件や、94℃で2分間保温し、その後約8℃で3分間保温した後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で4分間のサイクルを40サイクル程度繰り返す条件、或いは、94℃で5秒間次いで72℃で4分間の保温を1サイクルとしてこれを5から10サイクル行い、さらに、94℃で5秒間次いで70℃で4分間の保温を1サイクルとしてこれを20から40サイクル程度行う条件を使用することができる。かかるPCRには、例えば、PfuUltra High Fidelity polymerase (Stratagene社製)、Amplitaq Gold (Applied Biosystems社製)、Takara HeraculaseTM(宝酒造社製)、Advantage cDNA PCR Kit(クロンテック社製)に含まれるDNAポリメラーゼ、TaKaRa Ex Taq(宝酒造社製)、PLATINUMTM PCR SUPER Mix(ライフテックオリエンタル社製)等を用いることができる。
【0042】
PCRによって増幅された所望のポリヌクレオチドを特定するためには、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される方法等に準じたアガロースゲル電気泳動によって分子量を測定することにより実施することが可能である。また、増幅された所望のポリヌクレオチドを、市販のDNAシーケンシング反応キット、例えば、Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)等を用い、付属される取扱説明書に従ってシーケンシング反応を行い、DNAシーケンサー3100(Applied Biosystems社製)等を用いて解析することによって、増幅断片の塩基配列を読解することもできる。
【0043】
特定された所望のポリヌクレオチドを回収する方法としては、例えば前記のアガロースゲル電気泳動によって特定されたポリヌクレオチドを、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される方法等に準じてアガロースゲルから精製、回収することができる。また、こうして回収されたポリヌクレオチドやPCRによって増幅された所望のポリヌクレオチドは、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、や「Current Protocols In Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons,Inc.ISBN0-471-50338-X等に記載される通常の方法に準じてベクターにクローニングすることができる。用いるベクターとしては例えば、pUCA119(宝酒造社製)、pTVA118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)等を利用することができる。なお、クローニングされた前記DNAの塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M & W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 560, 1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F. & A.R.Coulson, J.Mol.Biol., 94, 441, 1975、Sanger,F, & Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 74, 5463, 1977等に記載される)により確認することができる。この際、例えば市販のTermo Seqenase II dye terminator cycle sequencing kit(Amersham biosciences社製)、Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)等を用いることができる。
尚、ポリヌクレオチド群Bの塩基配列の部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドは、PCR法のみならず、前記のハイブリダイゼーション法を用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得にも使用することが可能である。より具体的には、配列番号3又は4で示される塩基配列からなるポリペプチドが挙げられる。
【0044】
前記の群Bに示されるアミノ酸配列を有する蛋白質を製造する方法としては、ポリヌクレオチド群Bが導入された形質転換体を培養し、産生された当該蛋白質を回収する方法があげられる。また、ここで用いられる形質転換体を作製するためには、ポリヌクレオチド群Bをバキュロウィルス由来のプロモーターに機能可能な形で連結した断片を含む環状ポリヌクレオチドを作製する等の作業が必要である。以下、当該方法について詳細に説明する。
また、前記のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を用いた有害生物防除能力の検定方法に用いるc-Junアミノ末端リン酸化酵素も、用いるc-Junアミノ末端リン酸化酵素をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを用いて、同様の方法で群Aに示される蛋白質を製造、取得することが可能である。
【0045】
バキュロウィルスは巨大二本鎖DNAウィルスの複数のグループに属するウィルスで、多くの異なる種の昆虫に感染する。バキュロウィルスのゲノムは感染した宿主細胞の核の中で増幅、転写され、また宿主細胞中で巨大環状バキュロウィルスDNA(80〜200kb)が棒状のヌクレオカプシドにパッケージされる。このようなバキュロウィルスは後述のシステムで外来遺伝子の発現、蛋白質の生産に利用される。外来遺伝子の発現に最もよく用いられるウィルスは、Autographa californica multiple nuclear polyhedrosis virus (AcMNPV)、及び Bombyx mori (カイコ) nuclear polyhedrosis virus (BmNPV)である。
【0046】
バキュロウィルス由来のプロモーターとは、バキュロウィルスゲノムに含まれる遺伝子のプロモーターを意味する。中でも外来遺伝子を発現するために使われるバキュロウィルスのプロモーターは、例えば、ポリヘドリン遺伝子のプロモーターやp10遺伝子のプロモーターがあげられる(Harris and Polayes (1997). Focus 19, 6-8)。
ポリヘドリン(多核体)遺伝子のプロモーターは、バキュロウィルスが昆虫細胞に感染したときに産生される核内封入体の主成分であるポリヘドリンをコードする遺伝子のプロモーターである。ポリヘドリンはウィルスの複製に必要な蛋白質ではなく、その遺伝子を目的の蛋白質の遺伝子と置き換えることによって細胞タンパクの50%に達する目的の蛋白質を発現させることができる。
【0047】
本発明において「機能可能な形で連結する」とは、目的の遺伝子が使用する転写系において転写され得るように、プロモーター配列を含むポリヌクレオチド断片の下流に目的の遺伝子を含むポリヌクレオチド断片を連結させることを意味する。具体的には、例えば、後述のポリヘドリン遺伝子のプロモーターを使用する場合には、ポリヘドリン遺伝子のプロモーターの下流に目的の遺伝子を含むポリヌクレオチド断片を連結すればよい。また、例えば、ポリヘドリン遺伝子プロモーター以外のプロモーターを用いる場合には、ポリヘドリン遺伝子プロモーター以外のプロモーター配列を含むポリヌクレオチド断片の下流に目的の遺伝子を含むポリヌクレオチドを連結することも可能である。より具体的には、例えばポリヘドリン遺伝子プロモーターを利用したプラスミドpFastbacHT(Invitrogen社製)ベクターを用いる場合には、ポリヘドリン遺伝子プロモーターの下流に位置するBamHI、EcoRI、SalI、SpeI、NotI、XbaI、PstI、XhoI、SphI、KpnI、HindIII等の制限酵素サイトに目的の遺伝子を連結することによって、機能可能な形で連結することができる。
【0048】
本発明において「環状ポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチド鎖の端が結合して環状になったポリヌクレオチドであり、具体例として、プラスミドDNA、バクミドDNA、等の他に多くの細菌の染色体DNA、があげられる。
プラスミドDNAは、比較的低分子の環状ポリヌクレオチドであり、例としては、大腸菌での遺伝子クローニングや遺伝子発現に用いられるpET(タカラバイオ社製)やpBluescriptII(Stratagene社製)等が挙げられる。また、バキュロウィルス発現カセットを含むpFastBac1、pFastBac HT A、pFastBac HT B、pFastBac HT C、pFastBac Dual、pBlueBacII (Invitrogen社製)、pAcSG2 (Pharmingen社製)等が挙げられる。
バクミドDNAは、バキュロウィルスゲノムを含むBAC(bacterial artificial chromosome)からなる高分子量のDNAであり、例えば大腸菌DH10BacTM に含まれるbMON14272 (136 kb) (Invitrogen社製)等が挙げられる。バクミドDNAは、巨大プラスミドとして大腸菌細胞の中で自己複製し、バキュロウィルスプロモーターの制御下の外来遺伝子発現カセットを含んでいる。
【0049】
前記の群Bに示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドをバキュロウィルス由来のプロモーターに機能可能な形で連結してなる環状ポリヌクレオチドは、具体的には、例えば、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を含む環状ポリヌクレオチドであり、例えば以下に示す方法に従い製造、取得することが可能である。
上記方法に従ってクローニングされたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むプラスミドDNAをEcoRIで切断し、得られる約1.3kbpのワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を、あらかじめEcoRIで切断したプラスミドベクターpFastBac HT B (Invitrogen社製)とライゲーションする。こうして得られるプラスミドは、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を含む環状ポリヌクレオチドの一例である。また、Bac-to-Bac Baculovirus Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に記載される方法に従い、このプラスミドを大腸菌DH10Bacへ導入し、細胞内での組換え反応によって、ポリヘドリン遺伝子プロモーターとワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含む断片をバクミドDNAに挿入することが可能である。例えば以上の方法によって、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を含む環状ポリヌクレオチドを製造、取得することができる。
また、同様に前記群Bに示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチドをベクターに連結して環状ポリヌクレオチドを製造することができる。
【0050】
本発明において「複製開始点」とは、宿主細胞内で自らを複製するために必要とされる特定のDNA配列である。複製開始点の例として、細菌のプラスミドでは、colE1やf1等が挙げられる。また、バクミドDNAにはhomologous repeated(hrs)領域、non-hr領域が存在する(Pijlman et al. (2003) Journal of General Virology 84, 2669-2678)。
【0051】
上記の環状ポリヌクレオチドの一例として、バキュロウィルスシャトルベクターがあげられる。ここでバキュロウィルスシャトルベクターとは、前記のバクミドDNAを意味する。バクミドDNAは、大腸菌細胞内で増幅し遺伝子操作が行われる。そして大腸菌細胞から単離され昆虫宿主細胞へ導入されるとウィルスとして増殖する。例えば、バクミドbMON14272(Invitrogen社製)の場合には、ドナープラスミドpFastBac(Invitrogen社製)に含まれるバキュロウィルス発現カセットが、大腸菌細胞内でミニT7エレメントのトランスポジションによってバクミドのミニattTn7アタッチメントサイトへ挿入されることによって遺伝子組換えバクミドが作製される。
【0052】
バキュロウィルスの増殖及び組換えバキュロウィルスを利用した外来蛋白質の発現に用いられる昆虫細胞は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)或いはイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来の細胞株である。例えば、Sf21細胞、Sf9細胞、Tn-368又はHigh Five細胞、Mimic Sf9昆虫細胞(Invitrogen社製)等が挙げられる。
【0053】
形質転換体とは、外来のポリヌクレオチドが細胞に導入されることによって遺伝的に改変された真核生物細胞或いは原核生物細胞である。形質転換体としては、例えば、プラスミドベクターpFastBac(Invitrogen社製)等のバキュロウィルス発現カセットを含むプラスミドが導入されて形質転換された大腸菌細胞等が挙げられる。また、宿主細胞へのDNAの導入技術としては、トランスフォーメーション、トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポーレーション等が挙げられる。
前記群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体とは、例えば、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片が導入された形質転換大腸菌、が挙げられる。具体的には、以下の方法に従って作製することが可能である。
前記の、ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片がEcoRIサイト及びXhoIサイト間に挿入されたプラスミドベクターpFastBac HT B (Invitrogen社製)は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される方法に従い大腸菌細胞に導入することによって形質転換体を作製することができる。また同じプラスミドベクターを、Bac-to-Bac Baculovirus Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に記載される方法に従い、大腸菌DH10Bacへ導入することによっても、形質転換体を作製することが可能である。また、前記の、ポリヘドリン遺伝子プロモーターとワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含む断片が挿入されたバクミドDNAを、Bac-to-Bac Baculovirus Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に記載される方法に従い、昆虫細胞にトランスフェクションすることによって、形質転換体を得ることも可能である。
【0054】
組換えバキュロウィルスは、遺伝子工学的技術によってバキュロウィルスのゲノム配列が改変されたバキュロウィルスである。
組換えバキュロウィルスの具体例としては、例えば、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を含む組換えバキュロウィルスが挙げられる。
例えば、組換えバキュロウィルスは、昆虫細胞内においてバキュロウィルスDNAとトランスファーベクターDNAとの相同組換えによって作製することが可能である(Kitts (1996) Cytotechnology 20, 111-123)。また、例えば、前記方法で作製された、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を含む組換えバクミドDNAを昆虫細胞へ導入することによって、組換えバキュロウィルスを作製することも可能である。
具体的には、前記のバキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を含む組換えバクミドDNAを、Bac-to-Bac Baculovirus Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に記載される方法に従い、昆虫細胞にトランスフェクションすることによって、組換えバキュロウィルスを作製することが可能である。より具体的には、前記組換えバクミドDNAは、Bac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従って、Sf9細胞(ATCC: CRL-1711)にトランスフェクションし、組み換えバキュロウイルスを得る。トランスフェクションには、セルフェクチン(Invitrogen社製)、Grace's Insect Cell Culture Medium supplemented with L-amino acids (Invitrogen社製、Gibco)、 10%ウシ胎児血清(Clontech社製)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies社製)を用いる。またトランスフェクションには、2 μgのバクミドDNAと7 μlのセルフェクチンを用いる。P1組み換えバキュロウイルスストックは、Bac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従って8日後に回収する。例えば、さらにこのバキュロウイルスストック0.5mlを、1×106 cells/mlのSf9細胞300mlに接種することで増幅することができる。増幅したバキュロウイルスストックは、Bac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従って4日後に回収する。Sf9細胞は三角フラスコにて27℃、135rpmの条件下で浮遊培養する。この培養に用いる培地の成分は、Grace's Insect Cell Culture Medium supplemented with L-amino acids (Invitrogen社製、Gibco)、10% ウシ胎児血清(Clontech社製) 、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies社製)、終濃度0.1%プルロニックF-68(Sigma-aldrich社製)である。
【0055】
前記の方法で作製された形質転換体を培養して、産生された昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を回収することによってc-Junアミノ末端リン酸化酵素を製造することができる。
例えば、c-Junアミノ末端リン酸化酵素は組換えバキュロウィルス/昆虫培養細胞Sf9発現系を用いることによって製造することができる。この発現系は最も強力で用途の広い真核生物細胞を用いた蛋白質発現系の一つであり、かび、植物、細菌、ウイルス等多くの生物材料由来の外来遺伝子発現系である。また、c-Junアミノ末端リン酸化酵素は、大腸菌発現系によっても製造可能である。この発現系は、異種蛋白質の大量発現系として原核生物の発現系で最もよく使用される系である。大腸菌は遺伝的にまた生理学的にも最もよく解析された生物であり、取り扱いも容易で、多くの技術が適用可能である。また、生育が早く、安価な培地で生育するため、異種蛋白質の合成能力が極めて高い系である。
また、形質転換体の培養によって産生された昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素は、超音波破砕やプレンチプレス、ダイノミル等の方法によって破砕され、細胞粗抽出液に含まれる形で回収し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー等の、酵素精製に通常用いられる手法を用いて精製物を得ることができる。また、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素がヒスタグ等のペプチド断片が結合した形で産生されるようにしておけば、細胞粗抽出液からヒスタグを特異的に認識し結合するアフィニティーカラムクロマトグラフィーによって迅速に精製物を得ることが可能である。このような方法によって、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を製造することが可能である。
例えば上記の、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片が導入された形質転換昆虫細胞、を培養し、さらには細胞をフレンチプレスで破砕し、カラムクロマトグラフィーによって精製することによって、昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素を製造することができる。
より具体的には、例えば、前記の方法で作製された、バキュロウィルスのポリヘドリンプロモーターに機能可能な形で連結されたワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子を含むDNA断片を含む組換えバクミドDNAを含む組換えバキュロウィルスのストック液(例えば、30ml)にSf9細胞(例えば、4×108)を懸濁し、これを三角フラスコ(例えば、125ml)に入れて旋回培養(例えば、27℃、135rpm回転、1時間)する。培養後、得られた細胞懸濁液を三角フラスコ(例えば、250ml)3本に均等に分け、各三角フラスコの培養液の体積が当該三角フラスコ容量の2/5程度(例えば、100ml)となるまで新鮮な培地を加える。さらに、例えば、10%プルロニック溶液(例えば、1ml)等を添加した後、培養を継続する。培養(例えば、48時間)後、当該培養液をバキュロウィルスが感染したSf9細胞を遠心分離(例えば、290×g、5分間)することにより回収する。回収されたSf9細胞をバッファーA(50mM Hepes-HaOH pH7.5, 0.5M NaCl, 10mM imidazole)に再懸濁した後、当該細胞再懸濁液を試料として、前記Sf9細胞をフレンチプレス(Thermo Spectronic社製)を用いてバッファーA中で破砕する。細胞破砕のための圧力は、例えば、1,300〜1,500psiである。フレンチプレス処理後の細胞破砕液を遠心分離(例えば、13,000×g、2℃、20分間)することにより、上清を回収し、次いで回収された上清に対して0.45μmフィルター処理を施す。次に、このようにして調製された上清を、バッファーA(50mM Hepes-HaOH pH7.5, 0.5M NaCl, 10mM imidazole)で平衡化された2本直列に連結されたHiTrap HisTrapアフィニティーカラム(カラム体積5ml、Amersham biosciences社製)に注入した後、バッファーA(例えば、100ml)で当該カラムを洗浄する。次いで、Aバッファー93%とBバッファー(50mM Hepes-HaOH pH7.5, 0.5M NaCl, 500mM imidazole)7%とが混合されたバッファー(例えば、150ml)でカラムを洗浄する。最後にAバッファー50%とBバッファー50%とが混合されたバッファー(例えば、60ml)をカラムに注入する。この溶出画分を分画(例えば、1mlずつ)して保存し、当該溶出画分の一部をSDS-PAGE及び/又はウエスタンブロット法で解析することにより、46Kdaのc-Junアミノ末端リン酸化酵素タンパク質が含まれる溶出画分を特定する。またさらに、c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を増大させるために、MKK4/SKK1, active (Upstate社製)及び MKK7 beta 1, active (Upstate社製)を用いて保温処理することもできる。この場合、MKK4/SKK1, active (Upstate社製)及びMKK7 beta 1, active (Upstate社製)に付属される説明書に記載されるキナーゼアッセイ法を一部改変し、c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性化を行うこともできる。尚、必要なバッファー及び試薬としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(i)Hepesバッファー、MgCl2、ATP
(ii)大腸菌で発現させた市販の組み換えMKK4/SKK1, active (Upstate社)
50mM Tris/HCl, Ph 7.5、150mM NaCl、0.1mM EGTA、0.03% Brij 35、270mM sucrose、1mM benzamidine、0.2mM PMSF、0.1% 2-mercaptoehtanol中に終濃度53.5μMでストックする。
(iii)大腸菌で発現させた市販の組み換えMKK7 beta 1, active (Upstate社)
50mM Tris/HCl, Ph 7.5、150mM NaCl、0.1mM EGTA、0.03% Brij 35、270mM sucrose、1mM benzamidine、0.2mM PMSF、0.1% 2-mercaptoehtanol中に終濃度14.6μMでストックする。
【0056】
精製したc-Junアミノ末端リン酸化酵素のリン酸化は最終体積が10mlとなるようにし、以下の手順で行う。
最初に、MilliQ水を1ml、500mM Hepes bufferを1ml、MKK4/SKK1, active (375nM)及びMKK7 beta1, active (375nM)の混合物を2ml、MgCl2 (75mM)及びATP (500μM) の混合物を2ml、を全て混合し、そこへc-Junアミノ末端リン酸化酵素(1mg/ml)を4ml加える。続いて、室温にて1時間インキュベートした。異なるバッチで活性化したc-Junアミノ末端リン酸化酵素を全て集め、終濃度が10%となるようにグリセロールを添加した後、1mlずつ小分けにして、-80℃に保存する。
また前記の方法とは別に、既報の論文(Ian N. Foltz, et al. (1998) The Journal of Biological Chemistry Vol 273, 9344-9351)に記載される、in vivo stimulationのような他の活性化方法の可能性も考えられる。
【0057】
前記の群Bに示されるアミノ酸配列からなる昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素は、研究ツールとして使用することができる。例えば、前記の有害生物防除能力の検定や、有害生物防除能力を有する化学物質の探索、等の研究を実施するための研究ツールとして使用することができる。また、例えば、c-Junアミノ末端リン酸化酵素に作用する薬剤の作用機構を解析する研究においても、c-Junアミノ末端リン酸化酵素は研究ツールとして利用可能である。
また、前記の群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドやそれらに対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチド、また前記の群Bに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの部分塩基配列又はその部分塩基配列に対して相補性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチド、配列番号3又は4で示される塩基配列からなるポリペプチドは、研究ツールとして使用することができる。例えば、これらの一部は、前記のようにc-Junアミノ末端リン酸化酵素の製造法に用いられるポリヌクレオチドとして機能する。また一部は、前記のようにして、PCRを用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得、或いは、ハイブリダイゼーションを用いるポリヌクレオチド群Bに示されるポリヌクレオチドの取得、等を実施するための重要な研究ツールとして使用できる。
特に、有害生物防除剤のスクリーニングを実施するにあたっては、スクリーニングのために実施する実験の実験ツールとして使用できる。具体的には、前記の有害生物防除能力の検定や、有害生物防除能力を有する化学物質の探索、等を実施するにあたって行う実験のための実験ツールとして使用することができる。
【0058】
さらに本発明は、被験物質について、当該被験物質が有する昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段(以下、手段aと記すこともある。)、前記データ情報を所望の条件に基づき照会・検索する手段(以下、手段bと記すこともある。)、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段(以下、手段cと記すこともある。)を具備することを特徴とするシステム(以下、本発明システムと記すこともある。)をも含むものである。
【0059】
まず、手段aについて説明する。手段aは、前記のとおり、前記被験物質が有する昆虫由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を変化させる能力に係るデータ情報を入力した後、入力された当該情報を蓄積・管理する手段である。かかる情報は、入力手段1により入力され、通常記憶手段2に記憶される。入力手段としては、例えばキーボード、マウス等の当該情報の入力可能なものが挙げられる。当該情報の入力及び蓄積・管理が完了すれば、次の手段bに進む。尚、当該情報の蓄積・管理には、コンピュータ等のハードウェアとOS及びデータベース管理等のソフトウェアとを用いて、データ構造を有する情報を入力し、適当な記憶装置、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体に蓄積することにより、大量のデータを効率良く蓄積し管理すればよい。
【0060】
手段bについて説明する。手段bは、前記のとおり、手段aにより蓄積・管理された前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段である。かかる情報は、入力手段1により照会・検索のための条件が入力され、通常記憶手段2に記憶された上記情報の中で当該条件に合致したものを選択すれば、次の手段cに進む。選択された結果は、通常、記憶手段2に記憶され、さらに表示・出力手段3により表示可能となっている。
【0061】
手段cについて説明する。手段cは、前記のとおり、照会・検索された結果を表示・出力する手段である。表示・出力手段3としては、例えばディスプレイ、プリンタ等が挙げられ、当該結果をコンピュータのディスプレイ装置に表示するか、印刷等により紙上に出力するか等すればよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げてさらに詳細にほんはつめいを説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施例1 (ワタアブラムシ及びチャバネゴキブリからの全RNAの抽出)
(1)ワタアブラムシからの全RNAの抽出
ポット植えのキュウリ葉上で飼育されたワタアブラムシ(Aphis gossypii)の成虫及び幼虫の混合した集団630mgを葉上から細筆又は小さなハケでかきとり、これを液体窒素中で乳鉢及び乳棒を用いて粉末状になるまで破砕した。凍結された破砕粉体からRNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを単離した。
乳鉢中の凍結された破砕粉体に10mlのISOGENを加えた後、前記破砕粉体を10分間磨砕した。この時、乳鉢は氷上に置いた状態で操作した。磨砕後、液体状の試料をピペットにて15mlチューブに移し、これに2mlのクロロホルム(和光純薬工業社製)を加えた。直ちに当該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで遠心分離した後、上層の水相を5mlずつ2本の新しいチューブに移した。ぞれぞれのチューブにISOGENを5ml加え、直ちに当該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで再度遠心分離した後、上層の水相10mlをそれぞれ新しい50mlチューブに移した。続いて、ぞれぞれのチューブにイソプロパノール(和光純薬工業社製)を10ml加えた後、当該混合物を氷上で30分間静置した。静置された混合物を4℃、10分間、12,000×gで遠心分離することにより、RNAを沈殿させた。上清を除去した後、残渣に20mlの70%エタノールを加えた。得られた混合物を4℃、5分間、10,000×gで分離した。上清を除去した後、チューブの口を下にして3分間静置することにより全RNAを沈殿させた。さらにこれを軽く乾燥させてから、当該沈殿を市販のRNase-free water(ナカライテスク社製)1mlに溶解させた。このようにして調製された全RNAの濃度(260 nmの吸光度から算出)は6.9mg/mlであった。
【0064】
(2)ゴキブリからの全RNAの抽出
人工飼育されたチャバネゴキブリ(Blattella germanica)を成虫、幼虫、卵鞘の3種類の試料として準備した。成虫としては雄10頭及び雌(卵鞘を取り除いた個体)10頭で1.1g、幼虫としては雄10頭及び雌10頭で1.0g、卵鞘としては26個で1.0gを用いた。3種類の試料を別々の乳鉢及び乳棒を用いて、液体窒素中で粉末状になるまで破砕した。凍結された破砕粉体からRNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを単離した。乳鉢中の凍結された破砕粉体に10mlのISOGENを加えた後、前記破砕粉体を10分間磨砕した。この時、乳鉢は氷上に置いた状態で操作した。磨砕後、液体状の試料をピペットにて15mlチューブに移し、これに2mlのクロロホルム(和光純薬工業社製)を加えた。直ちに当該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで遠心分離した後、上層の水相を5mlずつ2本の新しいチューブに移した。ぞれぞれのチューブにISOGENを5ml加え、直ちに当該混合物を15秒間激しく混和した後、これを室温で3分間静置した。次いで静置された混和物を4℃、15分間、12,000×gで再度遠心分離した後、上層の水相10mlをそれぞれ新しい50mlチューブに移した。続いて、ぞれぞれのチューブにイソプロパノール(和光純薬工業社製)を10ml加えた後、当該混合物を氷上で30分間静置した。静置された混合物を4℃、10分間、12,000×gで遠心分離することにより、RNAを沈殿させた。上清を除去した後、残渣に20mlの70%エタノールを加えた。得られた混合物を4℃、5分間、10,000×gで遠心分離した。上清を除去した後、チューブの口を下にして3分間静置することにより全RNAを沈殿させた。さらにこれを軽く乾燥させてから、当該沈殿を市販のRNase-free water(ナカライテスク社製)1mlに溶解させた。このようにして調製された全RNAの濃度(260 nmの吸光度から算出)は、成虫由来の全RNAの場合には1.1mg/ml、幼虫由来の全RNAの場合には2.5mg/ml、卵鞘由来の全RNAの場合には1.4mg/mlであった。
【0065】
実施例2 (ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子の単離)
ワタアブラムシ全RNAからのcDNA第1鎖は、RT-PCR用のRandom Primers (Invitrogen社製)及びSuperscript III (Invitrogen社製)を用いて、当該試薬に付属される説明書に従って合成された。
ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素cDNA全長は、当該遺伝子配列に特異的なプライマーである配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとPfu Turbo (Stratagene社製)とを用いてかつ前述のcDNAを鋳型として、当該試薬に付属される説明書に従ってPCR増幅された。尚、PCRの条件は、94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、50℃、30秒間、72℃、2分間を30サイクルとし、最後に72℃、7分間とした。次いで得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的の1260bpのDNA断片を取得した。このようにして取得されたDNA断片をpCR-blunt vector (Invitrogen社製)にクローニングした。得られたベクターをoGAO58-59 in pCRbluntと名付け、クローニングされたDNA断片の塩基配列を決定し、クローニングされたDNA断片には配列番号2に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドが含まれていることを確認した。当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質であった。
【0066】
実施例3 (ゴキブリのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子の単離)
チャバネゴキブリ(Blatella germanica)等の他の昆虫種におけるc-Junアミノ末端リン酸化酵素相同遺伝子を得るために、Codehop program(http://blocks.fhcrc.org/blocks/codehop.html)を利用してディジェネレートプライマーを設計する。この時、前述のワタアブラムシ由来のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のアミノ酸配列及び既に公知であるイヌコウチュウ(NCBI accession number AAF00539)、アフリカツメガエル(BAB91438、BAB85483)、ヒト(NP_620448、NP_002744)、マウス(BAC31240)、ラット(S43969)、ニワトリ(BAA19188)、キイロショウジョウバエ(AAF52883及びAAC47325)、 ガンビエハマダラカ(EAA05905)、ヒトスジシマカ(AAO31950)の塩基配列を参考にする。
選択された昆虫種におけるc-Junアミノ末端リン酸化酵素相同遺伝子の部分配列は、当該昆虫種由来のcDNA第1鎖を鋳型とした一連のPCRにより増幅する。ここで、鋳型とするcDNA第1鎖は、前述のSuperscript IIIを用いた方法により調製する。PCRには、フォワードプライマー及びリバースプライマーとしてそれぞれのディジェネレートプライマーと、Amplitaq Gold (Applied Biosystems社製)とを用いて、当該試薬に付属される説明書に従ってPCR増幅される。尚、PCRの条件は、94℃、10分間、続いて94℃、30秒間、45℃、1分間、72℃、予想される増幅産物の長さ1kbにつき1分間、を40サイクルとし、最後に72℃、7分間とする。次いで得られるPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得した。さらにこのようにして取得されたDNA断片をpCR-XL-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、塩基配列を決定する。
このようにして、配列番号15に示される塩基配列からなるチャバネゴキブリのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子の部分配列を取得した。また当該塩基配列から推定されるアミン酸配列は、配列番号16に示される。
次に、得られた昆虫のc-Junアミノ末端リン酸化酵素相同遺伝子の部分配列に対する特異的プライマーを設計し、当該遺伝子の全長配列を獲得するために、3' RACE PCR 又は5' RACE PCRを実施する。3' 及び5' RACE PCRは、昆虫の全RNAより調製されたcDNA第1鎖を鋳型としてかつSMART PCR cDNA Synthesis Kit (Clontech社製)を用いて、当該キットに付属される説明書に従って実施する。
3' RACE及び5' RACE反応には、SMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているuniversal primer mix (UPM)と、目的の遺伝子配列に特異的なフォワードプライマー又はリバースプライマーとをそれぞれ組み合わせて用いる。PCRの条件は、94℃、10分間を1サイクル、94℃、15秒間、63℃、15秒間、72℃、予想される増幅産物の長さ1kbにつき1分間、を40サイクル、72℃、7分間を1サイクルとした。次いで得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得した。さらにこのようにして取得されたDNA断片をpCR-XL-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、当該DNA断片の塩基配列を決定する。
1回目のPCRで明確な増幅産物が得られない場合には、1回目のPCR産物を鋳型としてnested PCRを行う。プライマーはSMART PCR cDNA Synthesis Kitに同梱されているNUP primerと、1回目のPCRに用いた特異的プライマーよりも内側に設計された特異的フォワードプライマー及びリバースプライマーをそれぞれ組み合わせて用いる。PCRの条件は、94℃、10分間を1サイクル、94℃、15秒間、63℃、15秒間、72℃、2分間を40サイクル、72℃、7分間を1サイクルとする。得られたPCR産物はアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得した。さらにこのようにして取得されたDNA断片をpCR-XL-TOPO vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、当該DNA断片の塩基配列を決定する。
以上の配列決定により、昆虫のc-Junアミノ末端リン酸化酵素のN末端領域をコードする5'末端配列及びC末端領域をコードする3'末端配列を明らかにする。
【0067】
実施例4 (組み換えバクミドの構築)
実施例2で取得されたプラスミドoGAO58-59 in pCRbluntをEcoRIで切断して得られた1272bpのDNA断片を単離・精製した後、遺伝子発現用ベクターpFastBac(登録商標)HTbのEcoRIクローニングサイトにライゲーションした。以下、得られたベクターをoGAO58-59 in pFastBacHTbと名付けた。
次いで実施例2で取得されたoGAO58-59 in pCRbluntを鋳型として、Pfu Turbo polymerase (Stratagene社)を用いたPCRを行うことにより、663bpのDNA断片を得た。PCRは当該試薬に添付される説明書に従って行い、プライマーは特異性の高いプライマーであり、配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。PCRの条件は、95℃、5分間を1サイクル、95℃、30秒間、50℃、30秒間、72℃、1分30秒間を25サイクル、72℃、7分間を1サイクルとした。次いで得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析・精製することにより、目的のDNA断片を取得した。さらにこのようにして取得されたDNA断片をpCR-blunt vector (Invitrogen社製)にクローニングした後、当該DNA断片の塩基配列を決定した。このようにして取得されたベクターをoGAO60-61 in pCRbluntと名付けた。
上記で取得されたoGAO60-61 in pCRbluntをBamHI/NdeIで切断して得られた605bpのDNA断片を単離し精製した後、oGAO58-59 in pFastBacHTbのBamHI/NdeIクローニングサイトにライゲーションした。得られたベクターをpGAO1.1.と名付けた。次いで塩基配列を決定した結果、コンストラクトに用いられたpFastBacHTbに変異が含まれていることが判明した。
pGAO1.1をBamHI及びEcoRIで切断して得られた切断物を、アガロースゲル電気泳動によって分析・精製することにより、目的とする1241bpのDNA断片を単離・精製した後、当該DNA断片を発現用ベクターpFastBac(登録商標)HTbのBamHI/EcoRI断片4850bpにクローニングした。先のpGAO1.1の代わりに得られた当該ベクターを pGAO1と名付けた。
【0068】
(2)組み換えバクミドDNAの生成
このようにして取得されたpGAO1を用いて大腸菌DH10Bacのコンピテントセルを形質転換した。ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素組み換えバクミドDNAは、形質転換された大腸菌DH10Bacから単離した。手順は全てBac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従った。
組み換えバクミド中に含まれる目的遺伝子の有無は、PCR解析により検証された。当該バクミドはM13フォワード(-40)プライマー及びM13リバースプライマーのサイトを含むので、M13フォワード(-40)プライマー及びM13リバースプライマーが用いられた。また、M13フォワード(-40)プライマー又はM13リバースプライマーとインサートに特異的なプライマーとの組み合わせも用いられた。各操作はBac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従って実施された。尚、各PCRの条件は以下であった。
【0069】
(a)配列番号7に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの場合:
(i)94℃、5分間
(ii)94℃、15秒間、60℃、15秒間、72℃、3分間を40サイクル
(iii)72℃、7分間
【0070】
(b)配列番号9に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの場合:
(i)94℃、5分間
(ii)94℃、15秒間、68℃(+1サイクルごとに0.5℃の減分)、15秒間、72℃、3分間を16サイクル
(iii)94℃、15秒間、60℃、15秒間、72℃、3分間を20サイクル
(iv)72℃、7分間
【0071】
(c)配列番号11に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号12に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの場合
(i)94℃、5分間
(ii)94℃、15秒間、60℃、15秒間、72℃、3分間を40サイクル
(iii)72℃、7分間
【0072】
(d)配列番号8に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号9に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの場合
(i)94℃、5分間
(ii)94℃、15秒間、65℃、15秒間、72℃、3分間を20サイクル
(iii)94℃、15秒間、65℃、15秒間、72℃、3分間(+1サイクルごとに5秒の増分)を25サイクル
(iv)72℃、7分間
【0073】
増幅されたDNA断片の長さを基準にpgao1.1及びpgao1.8の2種の組み換えバクミドを選抜した。両バクミドから増幅されたDNA断片は正しい長さであった。よってpFastBac(登録商標)の発現用コンストラクトがバクミドDNAに置換されたことが確認された。
【0074】
実施例5 (組換えバクミドストックの調製)
(1)組み換えバクミドのトランスフェクション
Bac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従って、Sf9細胞(ATCC: CRL-1711)に組み換えバクミドpgao1.1をトランスフェクションすることにより、組み換えバキュロウイルスを得た。当該トランスフェクションでは、セルフェクチン(Invitrogen社製)、Grace's Insect Cell Culture Medium supplemented with L-amino acids (Invitrogen社製、Gibco)、 10%ウシ胎児血清(Clontech社製)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies社製)を使用した。2μgのバクミドDNAと7μlのセルフェクチンとを用いた。P1組み換えバキュロウイルスストックは、Bac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従って、8日後に回収された。
【0075】
<組み換えバキュロウイルスの大量培養>
ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素バキュロウイルスストックを、1×106 cells/mlのSf9細胞300mlに対してP1ウイルスストック又はP2以降のウイルスストック(MOI=0.1)を0.5ml接種することにより増幅した。増幅されたバキュロウイルスストックは、Bac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従って、4日後に回収された。尚、Sf9細胞は三角フラスコ(Elscolab社製)にて27℃、135rpm回転の条件下で浮遊培養された。培地成分は、Grace's Insect Cell Culture Medium supplemented with L-amino acids (Invitrogen社製、Gibco)、10% ウシ胎児血清(Clontech社製) 、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies社製)、終濃度0.1%プルロニックF-68(Sigma-aldrich社製)が使用された。
因みに、バキュロウィルスストックのタイターは、Bac-to-Bac BaculovirusTM Expression System(Invitrogen社製)に付属される説明書に従ってプラークアッセイにより決定された。但し、プラークアッセイに使用される培地は、4%寒天の代わりに2%寒天が使用された。
【0076】
実施例6 (昆虫細胞でのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の発現)
ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素遺伝子が導入された組み換えバキュロウイルスストック30mlに4×108個のSf9細胞を懸濁し、これを125mlの三角フラスコ(Elscolab社製)に入れて27℃、135rpm回転で1時間旋回培養した。培養後、得られた細胞懸濁液を250mlの三角フラスコ(Elscolab社)3本に均等に分け、各三角フラスコ内の培養液の体積が100mlになるまで実施例5に記載された培地を加えた。このようにして調製された培養液内でSf9細胞を27℃、135rpm回転で48時間旋回培養した後、当該培養液を1200rpmで遠心分離することにより、バキュロウイルスが感染したSf9細胞を回収した。尚、回収されたSf9細胞は、液体窒素により瞬間凍結し、使用するまで-80℃にて保存された。
【0077】
実施例7 (c-Junアミノ末端リン酸化酵素の精製)
(1)粗抽出液の調製
凍結保存しておいたバキュロウイルスが感染したSf9細胞を、30 ml のバッファーA(50mM Hepes pH 7.5, 0.5M NaCl, 10mM imidazole)に再懸濁した後、当該細胞再懸濁液を試料として、前記Sf9細胞をフレンチプレス(Thermo Spectronic社製)を用いてバッファーA中で破砕した。細胞破砕のための圧力は1300-1500 psiであった。フレンチプレス処理後の細胞破砕液を13,000×g、2℃、20分間遠心分離することにより、上清を回収し、次いで回収された上清に対して0.45μmフィルター処理を施した後、これを氷上に置いた。
【0078】
(2)精製
ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素を、pFastBacHTb中に6xHisタグを付加した状態でクローニングした。次いで組み換えタンパク質を、HiTrap Chelating HP (Amersham biosciences社製)又はHisTrap HP (Amersham biosciences社製)カラムを用いて、当該カラムに付属される説明書に従って金属アフィニティクロマトグラフィーにより精製した。尚、精製の各ステップではAKTA-FPLC (Amersham biosciences社製)が使用された。
HiTrap/HisTrapアフィニティーカラム(Amersham biosciences社製)は、当該カラムに付属される説明書に従って調製された。開始バッファーであるバッファーAの組成は、50mM Hepes pH 7.5, 0.5M NaCl, 10mM imidazoleとした。溶出バッファーであるバッファーBの組成は50mM Hepes pH 7.5、0.5M NaCl、500mMイミダゾールとした。ワタアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の精製は以下の手順で行った。
【0079】
(i)サンプルの注入
(ii)カラムの体積(CV)の10倍量のバッファーAによる非結合タンパク質の洗浄
(iii)CVの15倍量の15% バッファーB (75 mMイミダゾール)によるカラムの平衡化
(iv)CVの13倍量の50 %バッファーB (250 mMイミダゾール)による精製タンパク質の溶出
(v)CVの10倍量の100 %バッファーB(500 mMイミダゾール)によるカラムの洗浄
【0080】
一般的なSDS-PAGE及びウエスタンブロット法により、得られた溶出画分を分析することにより、ワタアブラムシの組み換えc-Junアミノ末端リン酸化酵素タンパク質が存在することを確認した。c-Junアミノ末端リン酸化酵素タンパク質の分子量は46kDaであったので、電気泳動の際に最適な分解能を得るために8%ポリアクリルアミドゲルを用いた。ウエスタンブロット解析には、一次抗体としてanti - His(H15) sc-803 rabbit polyclonal IgG antibody (tebubio社製)を1/500に希釈して使用した。二次抗体としては、goat anti-rabbit-HRP (Pierce社製)を1/10000希釈して用いた。
SDS-PAGE及びウエスタンブロットにより分析した後、目的の溶出画分を集めて、これに終濃度が10%となるようにグリセロールが添加された。タンパク質濃度は、Pre-diluted Protein Assay Standards: Bovine Serum Albumin Fraction V Set(Bio-Rad社製)を用いて、ブラッドフォード法により測定した。手順は当該キットに添付される説明書に従った。次いで集められた溶出画分は小分けし、これを直ちに液体窒素にて瞬間凍結した後、-80℃で保存した。
(3)c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性化
c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を増大させるために、MKK4/SKK1, active (Upstate社製)及びMKK7 beta 1, active (Upstate社製)を用いて保温処理した。この場合、MKK4/SKK1, active (Upstate社製)及びMKK7 beta 1, active (Upstate社製)に付属される説明書に記載されるキナーゼアッセイ法を一部改変し、c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性化を行った。尚、必要なバッファー及び試薬は以下の通りであった。
(i)Hepesバッファー、MgCl2、ATP
(ii)大腸菌で発現させた市販の組み換えMKK4/SKK1, active (Upstate社)
50mM Tris/HCl, Ph 7.5、150mM NaCl、0.1mM EGTA、0.03% Brij 35、270mM sucrose、1mM benzamidine、0.2mM PMSF、0.1% 2-mercaptoehtanol中に終濃度53.5μMでストックする。
(iii)大腸菌で発現させた市販の組み換えMKK7 beta 1, active (Upstate社)
50mM Tris/HCl, Ph 7.5、150mM NaCl、0.1mM EGTA、0.03% Brij 35、270mM sucrose、1mM benzamidine、0.2mM PMSF、0.1% 2-mercaptoehtanol中に終濃度14.6μMでストックする。
精製されたc-Junアミノ末端リン酸化酵素のリン酸化は最終体積が10mlとなるようにし、以下の手順で行った。
最初に、1mlのMilliQ水、1mlの500mM Hepes buffer、2mlのMKK4/SKK1, active (375nM)及びMKK7 beta1, active (375nM)の混合物、2mlのMgCl2 (75mM)及びATP (500μM) の混合物を全て混合し、当該混合物に4mlのc-Junアミノ末端リン酸化酵素(1mg/ml)を加えた。次いで、室温で1時間保温処理した。異なるバッチで活性化されたc-Junアミノ末端リン酸化酵素を全て集めて、これに終濃度が10%となるようにグリセロールが添加された。次いで、これに1mlずつ小分けにして、-80℃で保存した。
【0081】
実施例8 (c-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を変化させる化合物の選抜)
c-Junアミノ末端リン酸化酵素活性を変化させる化合物の選抜は、実施例7で調製されたアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素を用いた試験管内反応系に、試験化合物を添加することによって変化するc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性を測定し、評価する系で実施した。
アブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定は、IMAP screening Express Kit with progressive Binding system(Molecular Device社製)を用いてかつアミノ基末端にビオチンが付加された配列番号13で示されるアミノ酸配列からなるペプチド及びカルボキシルキ末端が蛍光標識された配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるペプチドを基質として、当該システムに付属される取扱説明書に記載される方法に準じて実施した。
当該活性測定に、最終濃度が10μMとなるようにDMSOに溶解された試験化合物を含ませた時のアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定を実施した。また、試験化合物に代わりにDMSOを含ませた時のアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定を実施した。次いで試験化合物に代わりにDMSOを含ませた時のアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定値に対する、DMSOに溶解された試験化合物を含ませた時のアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性値が何%になるかを算出し、その算出値を100%から差し引いた値を阻害度(%)とした。各試験化合物における結果を、実施例9の結果と合わせて実施例9における表4に示した。
また上記の活性測定に、最終濃度が各々、100μM、30μM、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μM、0.03μMとなるような濃度でDMSOに溶解された試験化合物を含ませた時のアブラムシのc-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定を実施した。各試験化合物における各濃度での結果から濃度依存性試験解析ソフトXL fit(idbs社製)を用いてIC50(μM)を算出した。その結果を、実施例9の結果と合わせて実施例10における表5に示した。
【0082】
実施例9 (殺虫活性試験)
下記の組成(表3)からなる滅菌済み人工飼料を調製した。次いで、最終濃度が640μMとなるようにDMSOに溶解された試験化合物を当該人工飼料の0.5%容量添加・混合すること以外は、Handbook of Insect Rearing Vol.1 (Elsevier Science Publisers 1985) 35頁〜36頁に記載される方法と同様にしてワタアブラムシを飼育した。飼育6日後にワタアブラムシの生存数を調査し、次の式により防除価を求めた。
防除価(%)={1−(Cb×Tai)/(Cai×Tb)}×100
尚、式中の文字は以下の意味を表す。
Cb:無処理区の処理前の虫の生存数
Cai:無処理区の観察時の虫の生存数
Tb:処理区の処理前の虫の生存数
Tai:処理区の観察時の虫の生存数
その結果を、実施例8の結果と合わせて、実施例9における表4に示した。
【0083】
【表3】


【0084】
【表4】


【0085】
実施例10 (殺虫活性試験)
最終濃度が50ppmとなるようにDMSOに溶解された試験化合物を添加すること以外は実施例9と同様にして、殺虫活性試験を実施した。その結果を、実施例8の結果と合わせて、実施例10における表5に示した。
【0086】
【表5】


【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明により、標的を明確にした農薬の探索手法、即ち、昆虫や有害生物を制御しうる標的部位を化学的に調節することを目的として、特定の標的に対する活性で化合物をスクリーニングする方法等が提供可能となる。
【配列表フリ−テキスト】
【0088】
配列番号3
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定において用いられる基質として調製されたアミノ基末端にビオチンが付加されたペプチド
配列番号14
c-Junアミノ末端リン酸化酵素の活性測定において用いられる基質として調製されたカルボキシル基末端が蛍光標識されたペプチド




 

 


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