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発明の名称 冷延鋼板およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−84868(P2007−84868A)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
出願番号 特願2005−273567(P2005−273567)
出願日 平成17年9月21日(2005.9.21)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 安藤 聡 / 梅林 里江 / 梶山 浩志 / 藤田 栄 / 加藤 千昭
要約 課題
塩素イオン存在下で乾湿が繰り返されるといった過酷な環境下でも、防錆油を塗布せずに優れた初期防錆性を有する冷延鋼板およびその製造方法を提供する。

解決手段
Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有し、少なくとも一方の表面にPを含有する皮膜を有することを特徴とする冷延鋼板。
特許請求の範囲
【請求項1】
Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有し、少なくとも一方の表面にPを含有する皮膜を有することを特徴とする冷延鋼板。
【請求項2】
前記Pを含有する皮膜の厚さが5〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板。
【請求項3】
前記Pを含有する皮膜と鋼との界面に反応層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷延鋼板。
【請求項4】
Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有する鋼を冷間圧延して冷延鋼板とした後、前記冷延鋼板を水素を含み残部が窒素からなる露点:-60〜-30℃の雰囲気で連続焼鈍を行い、次いで、前記連続焼鈍後の冷延鋼板の少なくとも一方の表面に、Pを含有する溶液を接触させることを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
【請求項5】
Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有する鋼を冷間圧延して冷延鋼板とした後、前記冷延鋼板を水素を含み残部が窒素からなる露点:-60〜-30℃の雰囲気で連続焼鈍を行い、次いで、前記連続焼鈍後の冷延鋼板の少なくとも一方の表面を酸性水溶液に接触させ、水洗した後、Pを含有する溶液に接触させることを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、家電、建材などに好適な冷延鋼板、特に、無塗油状態でも、製造直後から需要家での塗装などの処理に至るまでの期間における防錆性、すなわち初期防錆性に優れた冷延鋼板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷延鋼板は、製造直後から需要家での使用に至るまでに錆(以後、初期錆と呼ぶ)の発生を防ぐため、通常、鋼板片面あたり1〜2g/m2程度の防錆油が塗布される。防錆油は、防錆に加えプレス成形などにおける潤滑を目的とする場合もあるが、需要家における塗装などの処理に先立って脱脂処理により除去されるのが一般的である。環境保全やコスト削減に対し、この脱脂処理の省略は有効であるので、防錆油を使用しなくとも、初期錆が発生することのない鋼板を提供できれば望ましい。
【0003】
初期錆の発生が抑制された、すなわち初期防錆性に優れた冷延鋼板に関する技術として、例えば、特許文献1には、CやSなどの成分の量が規定された鋼を、0.5〜10vol.%の水素を含み、残部が窒素からなる還元ガス雰囲気で連続焼鈍を行う方法が開示されている。CやSなどの成分を表層に緩やかに偏析させることで、きわめて薄い緻密な炭化物や硫化物の層を生成させて初期防錆性を高めると推察されている。また、特許文献2には、連続焼鈍工程の下流側で、例えば酸洗により鋼板表面の酸化皮膜を除去した後、水洗により自動還元時間が40秒以上となる酸化皮膜を再生成させる方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3や特許文献4には、北米や北欧で冬季に撒かれる融雪塩に起因する塩素イオン存在下で乾湿が繰り返される極めて厳しい環境下でも優れた耐孔あき性を有する自動車用の鋼板やその製造方法が開示されている。
【0005】
さらに、鋼板表面にバリヤー皮膜を形成させて耐食性を向上させる方法も提案されており、例えば特許文献5には、ケイ酸リチウム主体の水溶液を鋼板表面に塗布し、乾燥して防錆被膜を形成する方法や、また特許文献6には、リン酸イオンまたはリン酸化合物を表面処理鋼板に塗布し、乾燥して化成処理皮膜を形成する方法なども開示されている。
【特許文献1】特開2001-348621号公報
【特許文献2】特開2004-269919号公報
【特許文献3】特開平11-293346号公報
【特許文献4】特開2000-34544号公報
【特許文献5】特公平4-69235号公報
【特許文献6】特開2000-144444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の方法では、無塗油状態で、10〜14日間屋内放置しても発錆がないとされているが、暴露環境がさらに厳しい場合、すなわち塩分が比較的多く付着される環境下では、付着塩分による湿潤状態の維持、塩素イオンによる酸化物破壊などの影響により、表層に形成された炭化物、硫化物や酸化物では十分な初期防錆性が得られない。
【0007】
また、特許文献3や特許文献4に記載の鋼板やその製造方法では、いずれも鋼中の成分を規定して鋼の表層に形成される錆を緻密化して孔食を抑制するものであり、初期錆の抑制効果は小さい。
【0008】
さらに、特許文献5に記載の防錆被膜では、初期錆発生を遅延させることはできるが、十分な効果を得るには膜厚を厚くする必要があり、膜厚を厚くすると膜の密着性が低下して、膜が剥離し易くなり、むしろ初期防錆性が低下する。これは、おそらく局部的な欠落部を起点に腐食が進行するためと思われる。特許文献6に記載のリン酸イオンまたはリン酸化合物を直接鋼板表面に塗布、乾燥させても、特許文献5に記載の防錆被膜の場合と同様、十分な効果を得るには膜厚を厚くする必要があり、膜厚を厚くすると膜の密着性が低下して、膜の耐水性や耐剥離性に問題が生じる。
【0009】
本発明は、塩素イオン存在下で乾湿が繰り返されるといった過酷な環境下でも、防錆油を塗布せずに優れた初期防錆性を有する冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、塩素イオンが存在するような過酷な環境下で初期錆の発生を抑制し得る方法について検討した結果、以下のことを見出した。
(1)鋼板表面に、鋼成分を偏析させて化合物層を形成させたり、酸化物を形成させるだけでは十分でなく、Pを含むバリヤー皮膜を形成させることが有効である。
(2)上述のように、バリヤー皮膜の膜厚を厚くすると剥離など問題が生じるので、薄い膜で初期防錆性を改善するには、鋼中のMnとS量を制御することが有効である。
【0011】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有し、少なくとも一方の表面に、好ましくは両面にPを含有する皮膜を有することを特徴とする冷延鋼板を提供する。
【0012】
このとき、Pを含有する皮膜の厚さは5〜1000nmであることが好ましい。
【0013】
また、皮膜と鋼との界面に反応層を設けることが好ましい。
【0014】
本発明の冷延鋼板は、Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有する鋼を冷間圧延して冷延鋼板とした後、前記冷延鋼板を水素を含み残部が窒素からなる露点:-60〜-30℃の雰囲気で連続焼鈍を行い、次いで、前記連続焼鈍後の冷延鋼板の少なくとも一方の表面に、Pを含有する溶液を接触させることを特徴とする冷延鋼板の製造方法により製造できる。
【0015】
また、Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有する鋼を冷間圧延して冷延鋼板とした後、前記冷延鋼板を水素を含み残部が窒素からなる露点:-60〜-30℃の雰囲気で連続焼鈍を行い、次いで、前記連続焼鈍後の冷延鋼板の少なくとも一方の表面を酸性水溶液に接触させ、水洗した後、Pを含有する溶液に接触させることを特徴とする冷延鋼板の製造方法で製造すれば、より優れた初期防錆性が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、塩素イオン存在下で乾湿が繰り返されるといった過酷な環境下でも、防錆油を塗布せずに優れた初期防錆性を有する冷延鋼板を製造できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
鋼板上に塩分が存在する場合、塩類による結露水や表層の水膜の電気伝導度の増加、同水膜中における錯形成による鉄イオン拡散の促進、塩素イオン吸着による酸化皮膜の破壊、化学的凝縮作用による湿潤状態の持続(結露)などの複合効果により、鋼が腐食し易くなる。特に、沿岸地域のように、飛来海塩の影響により塩分が付着し易く、昼夜の気温の変化により乾湿が繰り返される環境下では、極めて短時間で腐食が生じる。
【0018】
このような付着塩分の影響を排除するには、鋼板の極表層に塩素イオンの攻撃を阻止し、塩素イオンが存在しても安定な、特許文献5や6に記載されているバリヤー皮膜の形成が効果的である。特に、皮膜が電子移動に対する整流作用を有している場合や絶縁性の皮膜である場合は、腐食反応を抑制でき、初期錆の発生を極めて効果的に抑制できると考えられる。しかし、皮膜に、一部でも欠陥が存在すると、欠陥部が選択的に腐食されるため、皮膜は均一かつ緻密である必要があり、それには膜厚が薄い方が有利である。
【0019】
そこで、本発明者らは、薄い膜でも初期錆の発生を効果的に抑制できる方法に検討したところ、上述のように、鋼中のMnとS量を制御した上で、Pを含む皮膜を形成させることが有効であることを見出した。以下に、その詳細を説明する。
【0020】
I)Mn、S量
鋼板の表層には、MnSのような硫化物が不均一に濃化し易く、そのため初期錆の発生を促進させるので、S量は0.020mass%以下とする必要がある。初期錆の発生を抑制するには、S量は少ないほど好ましいが、極端に低下させると脱硫のために著しいコスト増を招くので、0.001mass%以上とすることが好ましい。また、Mn量が0.05mass%未満だと、Sが硫化物として析出せず、表層に不均一に濃化して初期防錆性を低下させる。したがって、Mn量は0.05mass%以上とする必要があるが、2.0mass%を超えると鋼板表層にMn系の酸化物が生成し易くなり、表層の均質性を維持できなくなるため、2.0mass%以下とすることが好ましい。
【0021】
なお、MnとS以外の成分元素は特に規定されないが、鋼板表層に濃化する酸化物や炭化物の影響が無視できなくなることから、C:0.15mass%以下、Si:1.5mass%以下とすることが好ましい。また、本発明の効果を十分に発揮させるには、P:0.05mass%以下とすることが好ましい。こうしたMnとS以外の成分元素は、材料に必要な機械特性との兼ね合いで規定される。以下、本発明で適用される鋼成分の好ましい下限値および上限値を列挙すると、mass%として、C:0.001〜0.15%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.01〜0.05%、Al:0.01〜0.06%、N:30ppm以下となる。
【0022】
II)Pを含む皮膜
Pを含む皮膜は、Pを含む溶液を鋼板表面に接触させることにより形成させる。例えば、リン酸アルミニウム水溶液を塗布し、水洗することなく乾燥させて得られるような非晶質の皮膜である。リン酸イオンに対するカチオン種は、特に限定されるものでなく、Al以外にも、Ti、Zr、V、Mo、Co、Fe、Ni、Mg、La、Ceなどでもよく、これらの元素が2種以上複合化されてもよい。添加されるカチオンは、炭酸塩、酸素酸イオン、酸化物ゾル、キレート剤などの状態でリン酸水溶液と混合させることができる。また、リン酸イオンには、ピロリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸、ウルトラリン酸などの縮合リン酸イオンも含まれる。さらに、水溶性の有機ホスホン酸が含まれてもよく、これらを主体としてもよい。
【0023】
これらの溶液を塗布、スプレー、浸漬などにより鋼板表面に接触させた後、乾燥させるが、乾燥前に、必要に応じて、ロール絞り、気体絞りなどの工程により液膜厚を制御することもできる。溶液が反応により不溶化する場合には、乾燥前に、可溶性成分を水洗により洗浄してもよい。
【0024】
Pを含む皮膜は、P以外のO、Hや他の複合成分で構成されるため、P付着量は特に規定されないが、1〜500mg/m2であることが好ましい。
【0025】
また、Pを含む皮膜の化学的安定性を高めることで、初期錆に至るまでの期間をさらに長くすることができるが、それにはTi、Zr、V、Mo、Co、Fe、Ni、Zn、Al、Mg、P、La、Ceなどを複合化させることが効果的である。
【0026】
Pを含む皮膜の厚さは、5〜1000nmとすることが好ましい。5nm未満では、十分な耐食性が得られない。1000nmを超えると、皮膜が局所的に欠落しやすいため初期防錆性が低下する。また、皮膜が厚いと、需要家での使用時に、導電性や塗装性などに悪影響を及ぼす可能性があるので、皮膜は、この範囲で薄いほど好ましい。
【0027】
リン酸イオンを含む水溶液は、いずれも酸性であり、鋼板との界面にFeを含む反応層が形成され、初期防錆性が向上する。こうした反応層をより有効に形成させるには、リン酸イオンを含む水溶液に、硝酸イオン、塩素酸イオン、フッ素イオンなどから選ばれた少なくとも1種を添加すればよい。このとき、添加量は特に規定されないが、処理液の反応性を高め過ぎると形成されるPを含む皮膜が不均一となるため、水溶液のpHが1〜4になるように添加するのが好ましい。
【0028】
III)Pを含む皮膜形成前の冷延鋼板の製造条件
本発明の冷延鋼板は、Mn:0.05mass%以上およびS:0.020mass%以下を含有する冷延鋼板を連続焼鈍後、上述のように、Pを含有する溶液に接触させればよいが、Pを含む薄い皮膜でも優れた初期防錆性を発揮させるには、鋼板の表面状態を適切に制御することが好ましい。そこで、本発明者らは、連続焼鈍時の雰囲気の露点の影響について、以下のような検討を行った。
【0029】
mass%で、C:0.0011%、Si:0.004%、Mn:0.1%、P:0.007%、S:0.007%およびCu:0.01%、Ni:0.01%、Cr:0.02%、Al:0.025%、Nb:0.002%、Ti:0.03%を含有する鋼を熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延して0.8mmの冷延鋼板とし、水素と窒素からなる還元雰囲気中で、露点を-10〜-40℃に変え、830℃で20秒間保持して連続焼鈍した。得られた鋼板を、必要に応じて酸性水溶液に接触させ、水洗した後、リン酸とアルミニウムイオンからなるリン酸アルミニウム水溶液(Al:3.2mass%、P2O5:23.5mass%)を鋼板表面に塗布し、乾燥して、厚さ300nmのPを含む非晶質の皮膜を形成した。そして、以下の初期錆発生試験により、塩素イオン存在下で乾湿が繰り返される環境下での初期錆の発生状況を調査した。
【0030】
初期錆発生試験:
鋼板を70mm×70mmのサイズにせん断し、端面と片方の面をシールし、次の条件で腐食試験を行った。
人工海塩をイオン交換水に溶解させ、濃度0.035mass%の水溶液を作成し、この水溶液をシール後の鋼板に、噴射し、乾燥させて、塩分を100mg/m2付着させた。引き続き、この鋼板を環境試験機に入れ、乾燥(温度60℃、相対湿度35%)3時間→湿潤(温度40℃、相対湿度95%)3時間のサイクルで乾湿を3回繰り返して腐食試験を行った。なお、このとき乾湿間の移行時間は1時間とした。その後、鋼板の塩分をイオン交換水で洗浄し、乾燥して、再び人工海塩を100mg/m2付着させて同様な腐食試験を行った。
そして、発生した点錆の1cm2あたりの個数を求め、以下のように評価した。
◎:発錆なし
○:1個以上10個未満
△:10個以上30個未満
×:30個以上50個未満
××:50個以上
その結果、露点を-30℃以下に制御することにより、Pを含む皮膜の厚さが極めて薄くても発錆状況は◎か○で、優れた初期防錆性が得られることが明らかになった。露点の条件により初期錆の発生に違いが現れる理由は十分には明らかでないが、以下のように推察される。すなわち、露点が低い場合には還元効果が高く、表層に濃化される酸化物が存在し難いうえ、硫化物などが比較的均質に表層に存在するため、表面性状が極めて均質となる。その結果、皮膜形成用の処理液と鋼との濡れ性が均質化し、形成されるPを含む皮膜は欠陥部の極めて少ない、均一なものとなって、初期錆の発生が抑制される。一方、露点が高い場合には表面性状の均質性が十分でなくなり、pHが2程度のリン酸アルミニウム水溶液と鋼との反応性が場所によって異なり、不均一な皮膜が形成されて、初期錆が発生し易くなる。
【0031】
雰囲気の露点の下限は、特に限定されないが、-60℃未満にするには多大な設備コストが必要となるので、-60℃とする。なお、露点温度が制御されていれば、水素イオン濃度は特に規定されないが、水素濃度は2〜7vol.%とするのが好ましい。
【0032】
焼鈍後の鋼板を、酸性水溶液に接触させた後にPを含む皮膜を形成させると、より優れた初期防錆性が得られる。例えば、50℃の硫酸水溶液(98mass%硫酸50g/l)中に数秒間浸漬させると、その後の水洗・乾燥過程で表層に極薄い酸化物層が形成される。酸化物層の形成により、Pを含む皮膜を形成させるための水溶液と鋼との反応性はやや低下するが、酸化物層が均質であるため、酸化物層とPを含む皮膜の相乗作用によって初期防錆性が向上すると考えられる。
【0033】
酸性水溶液としては、硫酸水溶液のほか、塩酸、硝酸と塩酸の混合水溶液、しゅう酸、塩素酸なども有効である。また、クエン酸などのFeイオンを捕捉する錯化剤などを添加することもできる。さらに、リン酸を含む酸性水溶液を用いれば、より均質なPを含む皮膜を形成させることができる。酸性水溶液には、Ti、Zr、V、Mo、Co、Fe、Ni、Zn、Al、Mg、P、La、Ceなどの金属イオンが存在してもよい。なお、十分な効果を得るには、酸性水溶液のpHを3以下とすることが好ましい。
【0034】
前述した鋼成分や焼鈍雰囲気の露点の制御、さらに上述した焼鈍後の酸性水溶液との接触により表面を均質化し初期防錆性をより一層向上させることができることから、その機構は、単にPを含む皮膜の均質性の向上だけではなく、冷延鋼板の表層には次のようなナノメータの厚さを有する二層が形成され、それらの相乗効果で電子整流作用や、イオン透過抑制などの効果が高度に発現されていることにもよると考えられる。
(i)Pを含む皮膜と鋼との界面に形成される反応層
(ii)Pを含む皮膜
なお、本発明の冷延鋼板は、基本的には、冷間圧延後、連続焼鈍、必要に応じて過時効処理、調質圧延、必要に応じて酸性水溶液との接触、水洗、乾燥、引き続きPを含む皮膜形成の順で、製造されるが、調質圧延前に酸性水溶液と接触させることもできる。また、酸性水溶液との接触時に直接Pを含む皮膜を形成させることも可能である。連続焼鈍後、コーティングラインなどでオフラインでPを含む皮膜を形成させることもできるが、インラインで形成した方が生産性上好ましい。
【実施例1】
【0035】
表1に示す成分を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼A〜Eからなる冷間圧延後の鋼板を、表4に示す焼鈍条件で連続焼鈍した。焼鈍後の冷延鋼板に、表2に示す処理条件で酸性水溶液との接触後、表3に示す条件でPを含む皮膜を形成して、試料No.1〜18を作製した。なお、一部の試料には、酸性水溶液による接触処理が行われてないものやPを含む皮膜が形成されてないものもある。そして、Pを含む皮膜の厚さ、P付着量、反応層の有無、および上記の初期錆発生試験により初期錆の発生状況を調査した。
【0036】
Pを含む皮膜の厚さ:
FIB加工により切り出した断面の任意の3箇所を、TEMにより観察し、厚みを測定し、平均を求めた。
【0037】
P付着量:
予め付着量を湿式分析(酸で溶解し、酸中のP量を検量線法にてICP分析[高周波プラズマ発光分析])して求めた検量板との比較により、蛍光X線分析で定量した。
【0038】
反応層の有無:
TEMによるFIB加工した試料の皮膜厚さの測定時に、元素分析により皮膜内部におけるFeの存在有無を確認し、界面から連続的にFeが存在する場合には、反応層が形成しているものとして判断した。
【0039】
結果を表4に示すが、本発明である試料No.1〜12、16、17は、Pを含む皮膜の厚さが薄くても発錆状況は◎か○で、優れた初期防錆性を有することがわかる。
【0040】
【表1】


【0041】
【表2】


【0042】
【表3】


【0043】
【表4】






 

 


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