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発明の名称 高強度冷延鋼板およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−77495(P2007−77495A)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
出願番号 特願2006−216496(P2006−216496)
出願日 平成18年8月9日(2006.8.9)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 吉田 裕美 / 奥田 金晴 / 占部 俊明 / 細谷 佳弘
要約 課題
深絞り性と形状性に優れた440MPa以上の引張強度の高強度冷延鋼板を提供する。

解決手段
質量%で、C:0.015〜0.050、Si:1.0以下、Mn:1.0〜3.0、P:0.005〜0.1、S:0.01以下、Al:0.005〜0.5、N:0.01以下、Nb:0.01〜0.3、及び残部Feと不可避的不純物からなり、NbとC量が下記の式(1)を満たし、面積率で50%以上のフェライト相と1〜15%のマルテンサイト相を含む組織を有し、かつ下記の式(2)と(3)で定義されるδが0.3以下である高強度冷延鋼板;[C]-(12×[Nb]/93)≧0.01・・(1)、δ=(σc/ρ)/TS・・(2)、σc={E/(1-ν2)}×t×(1/D0-1/D1)・・(3)、[M]は元素Mの量、Eはヤング率(MPa)、νはポアソン比、tは板厚(mm)、D0は絞り比ρでカップ成形後のカップ外径(mm)、D1はカップ側面からリング試料を切出し、圧延方向に切れ目を入れて試料を開口させたときの圧延方向に対し直角方向のリンク外径(mm)。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C: 0.015〜0.050%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0〜3.0%、P: 0.005〜0.1%、S: 0.01%以下、Al: 0.005〜0.5%、N: 0.01%以下、Nb: 0.01〜0.3%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
前記NbおよびCの含有量が下記の式(1)を満たし、
面積率で50%以上のフェライト相と面積率で1〜15%のマルテンサイト相を含むミクロ組織を有し、かつ
下記の式(2)と(3)で定義されるδが0.3以下である、
高強度冷延鋼板;
[C]-(12×[Nb]/93)≧0.01 ・・・(1)
δ=(σc/ρ)/TS ・・・(2)
σc={E/(1-ν2)}×t×(1/D0-1/D1) ・・・(3)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)、Eは鋼のヤング率(MPa)、νは鋼のポアソン比、tは前記鋼板の板厚(mm)、TSは前記鋼板の引張強度(MPa)を表し、D0は、絞り比ρで前記鋼板をカップ成形した後のカップの外径(mm)、D1は前記カップの側面部からリング試料を切り出し、前記鋼板の圧延方向に切れ目を入れて前記リング試料を開口させたときの圧延方向に対し直角方向のリングの外径(mm)を表す。
【請求項2】
マルテンサイト相の平均面積が6μm2以下であり、かつ全マルテンサイト相のうち扁平率が2以下のマルテンサイト相が70%以上存在する、請求項1に記載の高強度冷延鋼板;
ここで、扁平率とは、マルテンサイト相を楕円とみなしたときの(長軸の長さ)/(短軸の長さ)を表す。
【請求項3】
さらに、質量%で、Mo、Cr、CuおよびNiのうちから選ばれた少なくとも1種の元素を合計で0.5%以下含有する請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板。
【請求項4】
さらに、質量%で、Ti: 0.1%以下含有し、かつ下記の式(4)、および式(5)または式(6)を満たす請求項1から3のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板;
([Ti]/48)/([S]/32+[N]/14)≦2.0 ・・・(4)
Ti>0で、[C]-12×([Nb]/93+[ Ti]/48)≧0.01 ・・・(5)
Ti≦0で、[C]-12×[Nb]/93≧0.01 ・・・(6)
ここで、Ti=[Ti]-48×([N]/14+[S]/32)で、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。
【請求項5】
表面にめっき層を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板。
【請求項6】
質量%で、C: 0.015〜0.050%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0〜3.0%、P: 0.005〜0.1%、S: 0.01%以下、Al: 0.005〜0.5%、N: 0.01%以下、Nb: 0.01〜0.3%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、NbおよびCの含有量が下記の式(1)を満たす鋼スラブを、熱間圧延して熱延鋼板を製造する工程と、
前記熱延鋼板を、400〜720℃の巻取温度で巻取る工程と、
前記巻取り後の熱延鋼板を、冷間圧延して冷延鋼板を製造する工程と、
前記冷延鋼板を、300〜650℃の温度域を平均加熱速度18〜70℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍する工程と、
前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を、800〜400℃の温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する工程と、
を有する高強度冷延鋼板の製造方法;
[C]-(12×[Nb]/93)≧0.01 ・・・(1)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。
【請求項7】
質量%で、C: 0.015〜0.050%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0〜3.0%、P: 0.005〜0.1%、S: 0.01%以下、Al: 0.005〜0.5%、N: 0.01%以下、Nb: 0.01〜0.3%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、NbおよびCの含有量が下記の式(1)を満たす鋼スラブを、熱間圧延して熱延鋼板を製造する工程と、
前記熱延鋼板を、400〜720℃の巻取温度で巻取る工程と、
前記巻取り後の熱延鋼板を、冷間圧延して冷延鋼板を製造する工程と、
前記冷延鋼板を、300〜650℃の温度域を平均加熱速度3℃/s以上18℃/s未満で昇温後、650〜800℃の温度域を平均加熱速度1〜7℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍する工程と、
前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を、800〜400℃の温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する工程と、
を有する高強度冷延鋼板の製造方法;
[C]-(12×[Nb]/93)≧0.01 ・・・(1)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。
【請求項8】
さらに、質量%で、Mo、Cr、CuおよびNiのうちから選ばれた少なくとも1種の元素を合計で0.5%以下含有する鋼スラブを用いる請求項6または7に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
【請求項9】
さらに、質量%で、Ti: 0.1%以下含有し、かつ下記の式(4)、および式(5)または式(6)を満たす鋼スラブを用いる請求項6から8のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法;
([Ti]/48)/([S]/32+[N]/14)≦2.0 ・・・(4)
Ti>0で、[C]-12×([Nb]/93+[ Ti]/48)≧0.01 ・・・(5)
Ti≦0で、[C]-12×[Nb]/93≧0.01 ・・・(6)
ここで、Ti=[Ti]-48×([N]/14+[S]/32)で、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。
【請求項10】
前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を冷却する工程の後に、さらに前記冷延鋼板の表面にめっき層を形成する工程を有する請求項6から9のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を冷却する工程に代え、前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を、800℃からめっき浴浸漬直前までの温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却し、合金化後、合金化温度から400℃までの温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する工程を有する請求項6から10のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車や電気機器などのプレス部品に有用な高強度冷延鋼板、特に、深絞り性およびプレス成形後の形状凍結性(以後、単に形状性と呼ぶ)に優れた440MPa以上の引張強度TSを有する高強度冷延鋼板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、CO2排出規制に応じた車体軽量化と衝突時の安全性向上のための車体強化の双方が積極的に進められている。自動車車体の軽量化と強化を同時に満たすには、剛性が問題にならない範囲で部品素材を高強度化し、その板厚を薄くすることが効果的であると言われており、最近では高強度鋼板が自動車部品に積極的に使用されている。特に、軽量化効果は、より高強度の鋼板を使用するほど大きくなるため、骨格・構造部品や内・外板パネル部品に440MPa以上のTSを有する鋼板が使用される動向にある。
【0003】
鋼板を素材とする自動車部品の多くはプレス成形によって製造されるため、鋼板には優れたプレス成形性が必要とされる。高強度鋼板を適用した場合は、特に優れた形状性(寸法精度)が要求される。そのため、従来より、高強度冷延鋼板の成形性と形状性を向上させるための技術が検討されてきた。一般に、形状性は、鋼板の降伏比YS/TS(YSは降伏強度)を低くすることで改善され、それには主としてフェライト相とマルテンサイト相を含む複合組織(Dual-Phase、DP)鋼板が有効とされている。しかしながら、DP鋼板は、概して、延性については概ね良好であり、優れた強度―延性バランス(TS×El)を有するが、伸びフランジ性(局部的な延性)や深絞り性に劣っている。
【0004】
深絞り性および形状性ともに優れた高強度冷延鋼板の製造方法として、例えば特許文献1には、C: 0.20%以下、Si: 1.0%以下、Mn: 0.8〜2.5%、Al: 0.01〜0.20%、N: 0.0015〜0.0150%、P: 0.10%以下を含有した鋼を熱間圧延し、冷間圧延した後、箱焼鈍と連続焼鈍の2回の熱処理を行って製造されたDP鋼板の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、C: 0.003〜0.03%、Si: 0.2〜1%、Mn: 0.3〜1.5%、Ti: 0.02〜0.2%を含有し、原子濃度比(有効Ti)/(C+N)を0.4〜0.8にコントロールした鋼を熱間圧延し、冷間圧延した後、連続焼鈍により所定温度に加熱後急冷して深絞り性および形状性ともに優れたDP鋼板の製造方法が開示されている。ここで、有効Tiとは、全Ti濃度から酸化物と硫化物として消費されるTi濃度を除いた濃度と定義されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、C: 0.010〜0.050%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0〜3.0%、P: 0.005〜0.1%、S: 0.01%以下、Al: 0.005〜0.5%、N: 0.01%以下およびNb: 0.01〜0.3%を含有し、かつ鋼中のNbおよびCの含有量が(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7を満たし、フェライト相とマルテンサイト相の量のコントロールされた深絞り性に優れたDP鋼板が開示されている。
【特許文献1】特開昭55-100934号公報
【特許文献2】特公平1-35900号公報
【特許文献3】国際公開第2005/031022号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、比較的高温で長時間の箱焼鈍工程が必要なため生産性や経済性が劣るだけではなく、鋼板同士の密着やテンパーカラーの発生などの問題がある。また、特許文献2に記載の方法では、約100℃/sの平均冷却速度で鋼板を冷却するために噴流水中に鋼板を浸漬させたり、焼鈍工程で鋼板に浸炭処理を行ったりするための特別な設備が必要となる他、鋼板を噴流水中に浸漬させるため表面処理性の問題が顕在化する。さらに、特許文献3に記載のDP鋼板では、必ずしも優れた形状性が得られない。
【0007】
本発明は、特別な工程や設備を必要とすることなく製造ができ、深絞り性および形状性ともに優れた440MPa以上のTSを有する高強度冷延鋼板、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、通常の工程で製造できる深絞り性および形状性ともに優れた440MPa以上のTSを有する高強度冷延鋼板について検討を進めたところ、以下の知見が得られた。
【0009】
i)上述のごとく、従来より、プレス成形後の形状性の改善には降伏比の低減が有効であると言われているが、DP鋼板では必ずしも降伏比の低減が効果的ではなく、下記の式(2)および式(3)で定義されるδを0.3以下にすることが有効である。
δ=(σc/ρ)/TS ・・・(2)
σc={E/(1-ν2)}×t×(1/D0-1/D1) ・・・(3)
ここで、Eは鋼のヤング率(MPa)、νは鋼のポアソン比、tは鋼板の板厚(mm)、TSは鋼板の引張強度(MPa)を表し、D0は、絞り比ρで鋼板をカップ成形した後のカップの外径(mm)、D1はカップの側面部からリング試料を切り出し、鋼板の圧延方向に切れ目を入れてリング試料を開口させたときの圧延方向に対し直角方向のリングの外径(mm)を表す。ここで、σcは従来知られている残留応力の目安を示す数値であり、残留応力は加工量、材料強度の影響を受けることから、発明者らはこのσcを加工量、材料強度で規格化し、加工素材である鋼板の残留応力への寄与の目安としてδを用いた。
【0010】
ii)δを0.3以下にするには、C量を従来のDP鋼板に比べて少ない0.015〜0.050質量%とし、C当量より少ないNbの添加された鋼を用い、300〜650℃の温度域までの加熱速度を適切にコントロールして、フェライト相中に少量のマルテンサイト相を微細に分散させたDP鋼板とすることが効果的である。
【0011】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、C: 0.015〜0.050%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0〜3.0%、P: 0.005〜0.1%、S: 0.01%以下、Al: 0.005〜0.5%、N: 0.01%以下、Nb: 0.01〜0.3%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、NbおよびCの含有量が下記の式(1)を満たし、面積率で50%以上のフェライト相と面積率で1〜15%のマルテンサイト相を含むミクロ組織を有し、かつ上記の式(2)と(3)で定義されるδが0.3以下である高強度冷延鋼板を提供する。
[C]-(12×[Nb]/93)≧0.01 ・・・(1)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。
【0012】
また、本発明の高強度冷延鋼板では、マルテンサイト相の平均面積を6μm2以下とし、かつ全マルテンサイト相のうち扁平率が2以下のマルテンサイト相を70%以上存在させることが好ましい。ここで、扁平率とは、マルテンサイト相を楕円とみなしたときの(長軸の長さ)/(短軸の長さ)を表す。
【0013】
本発明の高強度冷延鋼板には、質量%で、Mo、Cr、CuおよびNiのうちから選ばれた少なくとも1種の元素を合計で0.5%以下含有させることができる。
【0014】
本発明の高強度冷延鋼板には、さらに、質量%で、Tiを0.1%以下含有させることができるが、その場合は、下記の式(4)、および式(5)または式(6)を満たすようにする必要がある。
([Ti]/48)/([S]/32+[N]/14)≦2.0 ・・・(4)
Ti>0で、[C]-12×([Nb]/93+[ Ti]/48)≧0.01 ・・・(5)
Ti≦0で、[C]-12×[Nb]/93≧0.01 ・・・(6)
ここで、Ti=[Ti]-48×([N]/14+[S]/32)で、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。
【0015】
なお、本発明の高強度冷延鋼板の表面にめっき層を形成しても、優れた深絞り性および形状性が損なわれることはない。
【0016】
本発明の高強度冷延鋼板は、質量%で、C: 0.015〜0.050%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0〜3.0%、P: 0.005〜0.1%、S: 0.01%以下、Al: 0.005〜0.5%、N: 0.01%以下、Nb: 0.01〜0.3%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、NbおよびCの含有量が上記の式(1)を満たす鋼スラブを、熱間圧延して熱延鋼板を製造する工程と、熱延鋼板を、400〜720℃の巻取温度で巻取る工程と、巻取り後の熱延鋼板を、冷間圧延して冷延鋼板を製造する工程と、冷延鋼板を、300〜650℃の温度域を平均加熱速度18〜70℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍する工程と、再結晶焼鈍後の冷延鋼板を、800〜400℃の温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する工程とを有する高強度冷延鋼板の製造方法により製造できる。
【0017】
また、本発明の高強度冷延鋼板は、質量%で、C: 0.015〜0.050%、Si: 1.0%以下、Mn: 1.0〜3.0%、P: 0.005〜0.1%、S: 0.01%以下、Al: 0.005〜0.5%、N: 0.01%以下、Nb: 0.01〜0.3%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなり、NbおよびCの含有量が上記の式(1)を満たす鋼スラブを熱間圧延し、熱延鋼板を製造する工程と、熱延鋼板を400〜720℃の巻取温度で巻取る工程と、巻取り後の熱延鋼板を冷間圧延し、冷延鋼板を製造する工程と、冷延鋼板を、300〜650℃の温度域を平均加熱速度3℃/s以上18℃/s未満で昇温後、650〜800℃の温度域を平均加熱速度1〜7℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍する工程と、再結晶焼鈍後の冷延鋼板を、800〜400℃の温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する工程とを有する高強度冷延鋼板の製造方法によっても製造できる。
【0018】
上記鋼スラブには、さらに、質量%で、Mo、Cr、CuおよびNiのうちから選ばれた少なくとも1種の元素を合計で0.5%以下含有させることができる。また、さらに、質量%で、Tiを0.1%以下含有させることもできるが、その場合は、上記の式(4)、および式(5)または式(6)を満たすようにする必要がある。
【0019】
前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を冷却する工程の後に、さらに冷延鋼板の表面にめっき層を形成する工程を設けることができる。
【0020】
また、前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を冷却する工程に代え、前記再結晶焼鈍後の冷延鋼板を、800℃からめっき浴浸漬直前までの温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却し、合金化後、合金化温度から400℃までの温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する工程としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、特別な工程や設備を必要とすることなく、深絞り性および形状性ともに優れた440MPa以上のTSを有する高強度冷延鋼板を製造できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上述のように、本発明のポイントは、C量を従来のDP鋼板に比べて少ない0.015〜0.050質量%とし、C当量より少ないNbの添加された鋼を用い、300〜650℃の温度域までの加熱速度を適切にコントロールして、フェライト相中に少量のマルテンサイト相を微細に分散させてδを0.3以下にすることにより440MPa以上のTSを確保しながら深絞り性と形状性を向上させることにある。以下に、その詳細を説明する。なお、元素の含有量の単位は「質量%」であるが、以下単に「%」と記す。
【0023】
1)成分
C: Cは、高強度化に有効であるとともに、後述のNbとともに本発明における重要な元素である。フェライト相中に少量の微細なマルテンサイト相を含む複合組織形成の観点から、その量を0.015%以上、好ましくは0.020%以上にする必要がある。しかし、その量が0.050%を超えるとフェライト粒の成長を抑制し、深絞り性などの成形性を劣化させる傾向がある。したがって、C量は0.015〜0.050%、好ましくは0.020〜0.050%に限定する。
【0024】
Si: Siは、固溶強化の効果とともに、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相の複合組織を形成させやすくする効果を有する。しかし、その量が1.0%を超えると熱間圧延時に赤スケールと称される表面欠陥が発生し、鋼板の表面外観を悪くする。したがって、Si量は1.0%以下に限定する。なお、溶融亜鉛めっきを施す場合には、めっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招くので、Si量を0.7%以下にすることが望ましい。また、上記効果を得るためには、Si量を0.01%以上にすることが好ましく、0.05%以上にすることがより好ましい。
【0025】
Mn: Mnは、高強度化に有効であるととともに、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を遅くする作用があり、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促す。そのため、要求される強度レベルおよび焼鈍後の冷却速度に応じてその量を調整する必要がある。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素である。このような観点から、その量を1.0%以上、好ましくは1.2%以上にする必要がある。一方、その量が3.0%を超えると成形性および溶接性を劣化させる。したがって、Mn量は1.0〜3.0%、好ましくは1.2〜3.0%に限定する。
【0026】
P: Pは、固溶強化の効果を有する元素である。しかし、その量を0.005%未満にするとその効果が現れないだけでなく、脱りんコストの上昇を招く。それゆえ、その量を0.005%以上、好ましくは0.01%以上にする。一方、その量が0.1%を超えると、Pが粒界に偏析して耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、Pはめっき層と鋼板の界面におけるFeの拡散を抑制して合金化処理性を劣化させるので、高温での合金化処理が必要となり、パウダリングやチッピング等のめっき剥離が生じやすくなる。したがって、P量は0.005〜0.1%、好ましくは0.01〜0.1%に限定する。
【0027】
S: Sは、熱間割れの原因になるほか、鋼中で介在物として存在して穴広げ性などの特性を劣化させる。したがって、S量は0.01%以下に限定するが、少ないほど好ましい。
【0028】
Al: Alは、鋼の脱酸元素として有用であるほか、鋼中の固溶NをAlNとして析出させ耐常温時効性を向上させる作用がある。さらに、Alはフェライト生成元素であり、(α+γ)2相温度域を調整する上でも有用である。こうした作用を発揮させるためには、その量を0.005%以上にする必要がある。一方、その量が0.5%を超えるとコスト増や表面欠陥の誘発を招く。したがって、Al量は0.005〜0.5%、好ましくは0.005〜0.1%に限定する。
【0029】
N: 上述のように、Nが固溶Nとして存在すると耐常温時効性を劣化させる。その量が多くなると固溶Nを析出させるために多量のAlやTi添加が必要となる。したがって、N量は0.01%以下に限定するが、少ないほど好ましい。
【0030】
Nb: Nbは、本発明において重要な元素の1つであり、熱間圧延後のミクロ組織を微細化したり、鋼中の固溶CをNbCとして析出させて深絞り性の向上に寄与する。このような観点から、その量を0.01%以上にする必要がある。一方、焼鈍後の冷却過程でマルテンサイト相を形成させるためには、Nbによって析出されない固溶Cを確保する必要があるが、それにはNb量を0.3%以下とし、さらにNb量をC量に応じて上記の式(1)を満たすようにコントロールする必要がある。したがって、Nb量は0.01〜0.3%に限定するとともに、上記の式(1): [C]-(12×[Nb]/93)≧0.01を満させる。
【0031】
残部は、Feおよび不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物としては、0.01%以下のSb、0.1%以下のSn、0.01%以下のZn、0.1%以下のCoなどが挙げられる。
【0032】
本発明の目的を達成するには上記の成分で十分であるが、マルテンサイト相の形成を促進したり、高強度化を図るために、さらにMo、Cr、CuおよびNiのうちから選ばれた少なくとも1種の元素を合計で0.5%以下含有させることが効果的である。その量を0.5%以下にした理由は、0.5%を超えるとその効果が飽和し、コスト増を招くためである。また、その効果を得るには、その量を各々0.05%以上とすることが好ましい。
【0033】
また、固溶N、C、SをTiN、TiC、TiS、Ti4C2S2などとして析出させて耐時効性やプレス成形性の向上を図るために、さらにTiを0.1%以下含有させ、かつ上記の式(4)、および式(5)または式(6)を満たすようにすることが効果的である。Ti量を0.1%以下、式(4)の左辺を2.0以下、および式(5)と式(6)の左辺を0.01以上にした理由は、マルテンサイト相の形成に必要な固溶Cを確保するためである。すなわち、TiはNやSと優先的に結合し、次いでCと結合するが、Ti含有量が0.1%を超えるか、あるいは([Ti]/48)/([S]/32+[N]/14)が2.0を超えると、過剰なTiにより鋼中に固溶Cを残すことが困難となる。また、Cを析出させる上で有効なTi量であるTiが、Ti>0で、[C]-12×([Nb]/93+[ Ti]/48)<0.01の場合、あるいはTi≦0で、[C]-12×[Nb]/93<0.01の場合、上記のようにマルテンサイト相形成のための固溶Cの確保が困難となる。
【0034】
なお、さらに、鋼の焼入性を向上させるBを0.003%以下の範囲で、また硫化物系介在物の形態制御に効果的なCaやREMのうち少なくとも1種の元素を0.01%以下の範囲で含有させても、本発明の効果が損なわれることはない。
【0035】
2)ミクロ組織
優れた深絞り性と440MPa以上のTSを達成するには、上記の成分に加えて、面積率で50%以上、好ましくは70〜97%のフェライト相と面積率で1〜15%、好ましくは3〜15%のマルテンサイト相を含むミクロ組織にする必要がある。フェライト相が面積率50%未満であると、良好な深絞り性を確保することが困難となる。また、マルテンサイト相が1%未満では組織強化能が低く、15%を超えると深絞り性が劣化する。ここで、フェライト相とマルテンサイト相の面積率は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡により観察し、観察視野中のそれぞれの相の面積率を画像処理によって求めたものである。
【0036】
なお、フェライト相とマルテンサイト相の面積率の和は、必ずしも100%である必要はなく、100%未満の場合は、ベイナイト、残留オーステナイト、パーライトなどのフェライト相とマルテンサイト相以外の相が存在するが、これらのフェライト相とマルテンサイト相以外の相は少ない程好ましい。また、ここでいうフェライト相には、ポリゴナルフェライト相のほか、ベイニティックフェライト相も含まれる。
【0037】
3)δ
上述のように、本発明者らが検討したところによれば、プレス成形後に優れた形状性を得るには必ずしも従来から言われている降伏比の低減だけが効果的ではなく、より実際のプレス成形に近いカップ成形を行い、カップ側面から切り出したリング試料の拘束力除去後(切り目を入れた後)の外径変化より求まる上記の式(2)と式(3)で定義されたδを小さくすることが効果的であり、δを0.3以下とすれば実プレスで寸法精度に問題が生じることが格段に少なくなることが明らかになった。
【0038】
なお、マルテンサイト相の面積率や降伏比がほぼ同じでも、δが0.3を超えると実プレスの寸法精度が悪くなる場合があることから、形状性にはマルテンサイト相の形態や分布が大きく影響していると推察される。δを0.3以下でより小さくするには、マルテンサイト相の平均面積を6μm2以下にし、かつ全マルテンサイト相のうち扁平率が2以下のマルテンサイト相を70%以上存在させることが好ましい。
【0039】
本発明の高強度冷延鋼板の表面には、電気めっき法あるいは溶融めっき法などにより、純亜鉛、亜鉛系合金、純Al、Al系合金などのめっき層を設けることができる。
【0040】
4)製造方法
本発明の高強度冷延鋼板は、上記した成分を有する鋼スラブを、熱間圧延して熱延鋼板を製造する工程と、熱延鋼板を、400〜720℃の巻取温度で巻取る工程と、巻取り後の熱延鋼板を、冷間圧延して冷延鋼板を製造する工程と、冷延鋼板を、300〜650℃の温度域を平均加熱速度18〜70℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍する、あるいは300〜650℃の温度域を平均加熱速度3℃/s以上18℃/s未満で昇温後、650〜800℃の温度域を平均加熱速度1〜7℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍する工程と、再結晶焼鈍後の冷延鋼板を、800〜400℃の温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する工程とを有する高強度冷延鋼板の製造方法により製造できる。
【0041】
本発明の製造方法で使用する鋼スラブは、成分のマクロ偏析を防止すべく連続鋳造法(薄スラブ鋳造法も含む)で製造することが望ましいが、造塊法で製造してもよい。また、スラブを熱間圧延するには、鋼スラブをいったん室温まで冷却し、その後再加熱して圧延する従来法に加え、連続鋳造後直ちに熱間圧延する方法、あるいは室温まで冷却せず温片のままで加熱炉に装入し圧延する方法などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
【0042】
スラブ加熱温度は、熱間圧延時に圧延荷重が増大し、トラブル発生の危険性が増大しなように1000℃以上に、また酸化重量の増加に伴うスケールロスの増大を防止するために1300℃以下とすることが好適である。
【0043】
加熱後のスラブは、粗圧延によりシートバーとされる。粗圧延の条件は、特に規定されず、常法に従って行えばよい。また、スラブの加熱温度を低く目にした場合は、圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シートバーヒーターを活用してシートバーを加熱することが好ましい。
【0044】
シートバーは、仕上圧延により熱延板とされる。このとき、圧延時の負荷が高くならないように仕上温度FTは、800℃以上にすることが好ましい。また、圧延荷重を低減したり、鋼板の形状や特性の均一化を図るために、仕上圧延の一部または全部のパス間で潤滑圧延を行うことができる。潤滑圧延時の摩擦係数は0.10〜0.25の範囲にすることが好ましい。さらに、熱間圧延の操業安定性の観点から、シートバー同士を接合して連続的に圧延する連続圧延プロセスを適用することが好ましい。
【0045】
熱間圧延後の巻取温度CTは、NbCを析出させるために400〜720℃、好ましくは550〜680℃にする。なお、CTが720℃を超えると熱延板の結晶粒が粗大化し、その結果、冷延焼鈍後の組織も粗大化しやすくなり、強度低下や表面性状の劣化を招くことがある。また、CTが400℃未満ではNbCの析出が起こりにくく、深絞り性を確保することが困難になる。
【0046】
熱延鋼板は、酸洗によりスケールを除去した後、冷間圧延により冷延鋼板とされる。圧延時の圧下率は、深絞り性の向上の観点から少なくとも40%以上とすることが好ましく、50%以上とすることがより好ましい。
【0047】
冷延鋼板は、300〜650℃の温度域を平均加熱速度18〜70℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍される、あるいは300〜650℃の温度域を平均加熱速度3℃/s以上18℃/s未満で昇温後、650〜800℃の温度域を平均加熱速度1〜7℃/sで昇温し、800〜950℃で再結晶焼鈍される。300〜650℃の温度域における加熱速度および650〜800℃の温度域における加熱速度は、本発明のポイントの一つである。
【0048】
図1に、C: 0.025%、Si: 0.5%、Mn: 2.0%、P: 0.035%、S: 0.005%以下、Al: 0.03%、N: 0.002%、Nb: 0または0.08%の成分を有する鋼を用い、300〜650℃の温度域における平均加熱速度を0.01〜70℃/sに、650〜800℃の温度域における平均加熱速度を0.3℃/sと3℃/sに変えて連続焼鈍(焼鈍温度: 850℃)してDP鋼板(板厚: 1.2mm)を製造し、δを求めた結果を示す。なお、ここで、形状性の指標であるδは、ブランク径が68mmの鋼板を打ち抜き、径が33mmのポンチを用い、ダイ肩Rが2.5mm、しわ押さえ力が10kN、絞り速度が10mm/min、絞り比(ブランク径/ポンチ径)が2.06の条件で、ダイ側を潤滑油およびテフロン(登録商標)シートで潤滑してカップ成形し、カップ底部から高さ8mmの位置より幅10mmのリング試料を放電加工により切り出し、鋼板の圧延方向に切れ目を入れて開口させ、圧延方向に対し直角方向のリングの外径を測定し、ヤング率E: 210GPa(=210×103MPa)、ポアソン比ν: 0.3として上記の式(2)と式(3)から求めたものである。また、鋼板の組織は、板厚1/4部付近を2000倍で観察したSEM写真を用い、マルテンサイト相の面積率、扁平率、平均面積を測定した。なお、マルテンサイト相の平均面積は、以下の式より求めた。
マルテンサイト相の平均面積=[観察視野におけるマルテンサイト相の面積率(%)]×[観察視野の面積(μm2)]/[観察視野において観察されたマルテンサイト相の個数]
図1に示すように、300〜650℃の温度域の平均加熱速度を18〜70℃/s、好ましくは20〜70℃/sにすることによりδを0.3以下にでき、優れた形状性が得られる。C量とNb量を上述のように調整することで、従来DP鋼に比べ、マルテンサイト相の面積率が若干低めとなり、さらにその少量のマルテンサイト相が微細に得られることにより、形状性をよくしているものと考えられる。特に、300〜650℃の温度域における加熱速度を速めることにより、その傾向が顕著になっているようである。また、650〜800℃の平均加熱速度が1〜7℃/sで昇温すると、更に形状性が良好であるが、これは、マルテンサイト相のうち扁平率が2以下のものが70%以上となり、マルテンサイト相の平均面積も6μm2以下となってマルテンサイトの微細均一化が進行したためと推定される。特に、Nb添加による再結晶遅延がその後の2相域焼鈍におけるα-γ変態に何らかの影響を及ぼした結果と推測されるが、詳細は不明である。なお、平均加熱速度は、70℃/sを超えると設備への負荷が大きくなるので、70℃/s以下、好ましくは50℃/s以下とする。
【0049】
また、図1に示すように、300〜650℃の温度域の平均加熱速度が18℃/sに満たない場合でも、3℃/s以上であれば、引続く650〜800℃の温度域を平均加熱速度1〜7℃/sで昇温することにより良好な形状性が得られる。これは、300〜650℃の温度域の平均加熱速度が3℃/s以上18℃/s未満でも650〜800℃の温度域の平均加熱速度を1〜7℃/sで昇温することにより、均一で微細なマルテンサイト相が形成されるためと考えられる。
【0050】
300〜650℃の温度域の平均加熱速度が3℃/s未満では、δが0.3を超えて形状性が劣化しており、これは、徐加熱焼鈍することで冷却後の組織で、フェライト分率が低下し、加えてマルテンサイト相が粗大化する傾向があるためと考えられる。300〜650℃の温度域を3℃/s以上18℃/s未満の平均加熱速度で昇温する場合、650〜800℃の温度域の平均加熱速度を1℃/s未満とすると、これを助長することになり、また650〜800℃の温度域の平均加熱速度が7℃/sを超えると、再結晶粒の成長を妨げr値が1.2未満に低下することになり、好ましくない。このため、300〜650℃の温度域を3℃/s以上18℃/s未満の平均加熱速度で昇温する場合には、650〜800℃の温度域の平均加熱速度を1〜7℃/sとする。
【0051】
焼鈍温度は、再結晶温度以上で、冷却後にフェライト相とマルテンサイト相を含む組織が得られる(α+γ)2相域温度以上とするため、800℃以上にする。しかし、950℃を超えると、再結晶粒が著しく粗大化し、機械的特性および表面性状が著しく劣化する。また、特に限定するものではないが、再結晶粒を十分に発達させて深絞り性や穴広げ性を向上させるために、300〜650℃の温度域を平均加熱速度18〜70℃/sで昇温させた場合には、700℃〜焼鈍温度の温度域は徐加熱、好ましくは5℃/s以下の加熱速度で加熱することが望ましい。また、800〜950℃の焼鈍温度で1〜300秒間保持することが好ましい。これは、保持時間を1秒間以上にすることにより、再結晶が十分に進行するとともに、(α+γ)2相域において相分離と固溶Cのオーステナイト相への濃化が十分に促進されるためである。なお、保持時間は、10秒間以上とすることがより好ましい。一方、保持時間が300秒間を超えると結晶粒が粗大化し、強度や表面性状など諸特性が劣化する傾向にある。
【0052】
焼鈍後の冷却速度は、マルテンサイト相の形成の観点から800〜400℃の温度域を平均冷却速度5℃/s以上で冷却する必要がある。なお、このような冷却速度を確保するためには、焼鈍を連続焼鈍ラインで行うことが好ましい。冷却速度規定の開始温度を800℃とした理由は、マルテンサイト相を得るため(α+γ)2相域から冷却を開始する必要があるためである。したがって、800℃以上の焼鈍温度から5℃/s以上の冷却速度で冷却しても何ら問題はない。
【0053】
また、冷却速度規定の終了温度を400℃としたのは、マルテンサイト相を得る上で800℃から400℃の温度域での冷却速度の影響が大きいためである。したがって、少なくとも400℃まで5℃/s以上で冷却すればよく、400℃まで冷却後は、そのまま冷却を続けてもよいし、400〜200℃の温度域での一定時間保持後冷却してもよい。保持する場合は、生成したマルテンサイト相の軟質化が起こらないように、また製造コスト増とならないように、保持時間を600秒間以下にすることが好ましい。
【0054】
冷却後の鋼板には、上述したように、電気めっき処理、あるいは溶融めっき処理などによりめっき層を形成することができる。なお、オンラインで合金化溶融亜鉛めっきを施す場合は、マルテンサイト相の形成の観点から、前記800〜950℃での焼鈍後、800℃からめっき浴浸漬直前までの温度域を平均5℃/s以上で冷却し、合金化後、合金化温度から400℃までを平均5℃/s以上で冷却することが好ましい。このとき、めっき浴浸漬直前の鋼板温度は概ね480〜520℃、めっき浴温度は概ね440〜480℃であり、合金化温度は概ね500〜600℃である。また、このようにして製造された冷延鋼板あるいはめっき鋼板には、形状矯正、表面粗度調整の目的で調質圧延またはレベラー加工を施してもよい。調質圧延あるいはレべラー加工の伸び率は合計で0.2〜15%の範囲内であることが好ましい。これは、0.2%未満では、形状矯正や表面粗度調整の目的が達成できないおそれがあり、15%を超えると顕著な延性低下をもたらす傾向があるためである。
【実施例1】
【0055】
表1に示す組成の鋼A〜Nを転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブを1250℃に加熱後、粗圧延してシートバーとし、次いで仕上温度860℃で仕上圧延して熱延板とし、巻取温度650℃で巻取った。これらの熱延板を酸洗後圧下率65%で冷間圧延して冷延板とし、引続き、連続焼鈍ラインにて表2に示す条件で連続焼鈍を行い、伸び率0.5%の調質圧延を施して鋼板No.1、2、4〜18の試料を作製した。なお、300〜650℃の温度域における加熱速度は、ラインスピードを変えて変化させた。また、鋼板No.3は、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)にて焼鈍後オンラインでめっき処理を施した試料であり、めっき浴浸漬直前の板温は500℃、めっき浴温度は460℃、合金化温度は550℃である。そして、得られた試料について、上述の方法でミクロ組織を評価し、次の方法で形状性と引張特性を評価した。
【0056】
形状性δ:ブランク径が68mmの鋼板を打ち抜き、径が33mmのポンチを用い、ダイ肩Rが2.5mm、しわ押さえ力が10kN、絞り速度が10mm/min、絞り比(ブランク径/ポンチ径)が2.06の条件で、ダイ側を潤滑油およびテフロン(登録商標)シートで潤滑してカップ成形し、カップ底部から高さ8mmの位置より幅10mmのリング試料を放電加工により切り出し、鋼板の圧延方向に切れ目を入れて開口させ、圧延方向に対し直角方向のリングの外径を測定し、上記の式(2)と式(3)から求めた。このとき、ヤング率Eは210GPa(=210×103MPa)、ポアソン比νは0.3として計算した。また、板厚tは1.2mmであった。
【0057】
引張特性値:試料から圧延方向に対して90°方向にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/min一定で引張試験を行い、YS、TS、YR、伸び(El)、r値を求めた。
【0058】
r値の測定は、試料から、圧延方向、圧延方向に対し45°方向、圧延方向に対し90°方向からJIS5号引張試験片を採取し、10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を測定し、JIS S 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を以下の式から算出し、深絞り性を評価した。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ここで、r0、r45、r90は、それぞれ圧延方向に対し0°、45°、90°方向から採取した試験片で測定した塑性歪比である。
【0059】
組織:圧延方向の板厚断面を鏡面研磨後、1.5%Nital腐食を施し、SEMで板厚1/4付近を2000倍で観察したSEM写真を用い、マルテンサイト相とフェライト相についてそれぞれの相の面積率を求めた。また、マルテンサイト相は扁平率2以下の割合と平均面積を定量評価した。なお、マルテンサイト相の平均面積は、3視野ついて以下の式より求め、平均した。
マルテンサイト相の平均面積=[観察視野におけるマルテンサイト相の面積率(%)]×[観察視野の面積(μm2)]/[観察視野において観察されたマルテンサイト相の個数]
結果を表3に示す。鋼板No.1〜3、5〜10、16〜18の本発明例では、いずれもTSが440MPa以上、平均r値が1.2以上、δが0.3以下であり、深絞り性および形状性ともに優れた高強度冷延鋼板が得られる。
【0060】
【表1】


【0061】
【表2】


【0062】
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の高強度冷延鋼板は、自動車部品に限らず、家電部品やパイプ用素材としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】焼鈍時の300〜650℃における平均加熱速度とδとの関係を示す図である。




 

 


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