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発明の名称 疲労特性に優れた軸受用鋼部品およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−63626(P2007−63626A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−251874(P2005−251874)
出願日 平成17年8月31日(2005.8.31)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 平井 康正 / 丸田 慶一 / 冨田 邦和 / 豊岡 高明
要約 課題
表層部の旧オーステナイト粒径を微細化して疲労特性を向上させ、ベアリング内外輪,ベアリングボールなどに好適な、焼入れ処理が施される軸受用部品およびその製造方法を提供する。

解決手段
表層において、焼入れ後の旧オーステナイト粒の平均粒径を3.5μm以下とし、成分組成は好ましくはC:0.6〜1.5mass%、Si:0.1〜1.0mass%、Mn:0.1〜1.5mass%、Mo:0.15〜0.8mass%、W:0.15〜1.0mass%以下の一種以上、Al:0.1mass%以下、Cr:0.05〜2.0mass%、必要に応じてS,Cu、Ni、Ti、Nb、B、Sb、Nの一種または二種以上を添加する。前組織における球状化炭化物のアスペクト比を平均で3以下の鋼に、Ac3点-10℃〜Ac3点の温度間での平均加熱速度を0.5℃/s以上とし、Ac3点以上Ac3点+130℃以下の温度で、Ac3点以上の保持時間が500秒以下である加熱を施して焼入れ処理を行う。
特許請求の範囲
【請求項1】
C:0.6〜1.5mass%、
Si:0.1〜1.0mass%、
Mn:0.1〜1.5mass%
Al:0.1mass%以下、
Cr:0.05〜2.0mass% 、
N:0.01mass%以下、
Mo:0.15〜0.8mass%、W:0.15〜0.8mass%の1種以上
残部Feおよび不可避的不純物からなり、
表層部の旧オーステナイト粒の平均粒径が3.5μm以下であることを特徴とする疲労特性に優れた軸受用鋼部品。
【請求項2】
更に、
S:0.03mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Ni:1.0mass%以下、
Ti:0.01mass%以下、
Nb:0.5mass%以下、
B:0.01mass%以下、
Sb:0.0050mass%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の疲労特性に優れた軸受用鋼部品。
【請求項3】
前記表層の硬さがHv700以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の疲労特性に優れた軸受用鋼部品。
【請求項4】
請求項1または2に記載の成分組成で、組織中の炭化物形態をアスペクト比が平均で3以下の球状化炭化物とする鋼を、Ac3点-10℃〜Ac3点での平均加熱速度を0.5℃/s以上、Ac3点以上Ac3点+130℃以下で、Ac3点以上の保持時間が500秒以下で加熱後、焼入れを行うことを特徴とする疲労特性に優れた軸受用鋼部品の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は,焼入れ処理が施されている軸受用鋼部品およびその製造方法に関し、特に、焼入れ表層部の旧オーステナイト粒径を微細化して疲労特性を向上させ、ベアリング内外輪,ベアリングボールなどに好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、機械などに利用されているベアリングなどの軸受用鋼部品は、優れた転動疲労特性が要求される。軸受用鋼部品は、疲労特性が要求される部位に,通常焼入れ・焼戻しが施されて使用される。
【0003】
転動疲労寿命を向上させる方法としては、例えば、特許文献1には、S53Cレベルの亜共析鋼(フェライト、パーライト組織)に2回以上のオーステナイト単相域への高周波熱処理を行い、旧オーステナイト粒径を微細化し、疲労寿命を向上させる方法が記載されており、その到達旧オーステナイト粒径は最小粒径のものでも6.2μmで、転動疲労寿命は従来材に比較して1.2〜1.5倍程度である。
【0004】
一方、過共析鋼については本文献には記載がないが、一般的に、過共析鋼の場合は通常焼入れ材でも旧オーステナイト粒は6〜10μmを呈しているが、更なる最適熱処理化による旧オーステナイト粒の微細化処理を行わなければ転動疲労寿命の向上は期待できないとされる。
【特許文献1】特開2002−256336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した現状に鑑み開発されたもので、従来よりも転動疲労寿命を向上させた疲労特性に優れた軸受部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を行ない,MoおよびWを単独もしくは複合で最適量添加した鋼で、且つ前組織中の炭化物が球状化された鋼を、Ac3以上〜Ac3点+130℃以下の温度で、Ac3点以上の保持時間が500秒以下となる加熱後、焼入れる場合、残留する球状化セメンタイトがオーステナイト粒をピンニングして粒成長を抑制する効果に加え,MoやWのオーステナイト粒成長抑制効果により,MoやWを添加しない鋼に比べ平均粒径が微細化し疲労強度が向上する結果を得た。
【0007】
更に、Mo,W添加による疲労向上効果により,最適量添加していない鋼に比べ、転動疲労寿命が格段に上昇するという知見を得た。
【0008】
本発明は、得られた知見に、更に検討を加えて完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0009】
1 C:0.6〜1.5mass%、
Si:0.1〜1.0mass%、
Mn:0.1〜1.5mass%
Al:0.1mass%以下、
Cr:0.05〜2.0mass% 、
N:0.01mass%以下、
Mo:0.15〜0.8mass%、W:0.15〜0.8mass%の1種以上
残部Feおよび不可避的不純物からなり、
表層部の旧オーステナイト粒の平均粒径が3.5μm以下であることを特徴とする疲労特性に優れた軸受用鋼部品。
2 更に、
S:0.03mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Ni:1.0mass%以下、
Ti:0.01mass%以下、
Nb:0.5mass%以下、
B:0.01mass%以下、
Sb:0.0050mass%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の疲労特性に優れた軸受用鋼部品。
【0010】
3 前記表層の硬さがHv700以上であることを特徴とする1又は2に記載の疲労特性に優れた軸受用鋼部品。
【0011】
4 1または2に記載の成分組成で、組織中の炭化物形態をアスペクト比が平均で3以下の球状化炭化物とする鋼を、Ac3点-10℃〜Ac3点での平均加熱速度を0.5℃/s以上、Ac3点以上Ac3点+130℃以下で、Ac3点以上の保持時間が500秒以下で加熱後、焼入れを行うことを特徴とする疲労特性に優れた軸受用鋼部品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸受用鋼部品の焼入れ表層部における平均旧オーステナイト粒径が3.5μm以下の微細な組織となり、転動疲労寿命特性に優れた軸受用鋼部品が容易に得られ、工業的に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
[成分組成]
C:0.6mass%〜1.5mass%
Cは,焼入れ部において部品の疲労寿命を得るために必要となる硬度確保のために必要な元素であり,0.6mass%未満では焼入れ部で十分な硬度および疲労強度が得られない。
【0014】
一方,1.5mass%を超えて添加すると,焼入れ前の加工性(剪断性,鍛造性)を劣化させる。よって、好適なC含有量範囲は0.65mass%〜1.50mass%である。
【0015】
Si:0.1〜1.0mass%
Siは,転動疲労寿命を向上するため0.1以上含有されていることが好ましい。しかし,1.0mass%を越えて添加すると,Cと同様,焼入れ前の加工性(剪断性,鍛造性)を劣化させる。よって、Siの好適含有量範囲は0.1〜1.0mass%以下である。
【0016】
Mn:0.1〜1.0mass%
Mnは,焼入性を向上するため,0.1mass%以上含有されていることが好ましい。しかし,過剰に添加すると焼入れ前の加工性(剪断性,鍛造性)を劣化させる。このため,その含有量の上限は1.0mass%以下とすることが好ましい。
【0017】
Cr:0.05〜2.0mass%
Crは焼入性向上および炭化物球状化を促進による焼入れ前の硬度低下・加工性向上の効果があるため0.05以上含有されていることが好ましい。しかし、2.0mass%を超えて添加しても効果が飽和してしまうため0.05〜2.0mass%の範囲で含有されていることが好ましい。
【0018】
Mo:0.15〜0.8mass%、W:0.15〜1.0mass%以下の一種以上
Mo、Wは本発明にとって非常に重要な成分であり、一種以上を添加する。Mo、Wはオーステナイト域でのドラッグ効果によりオーステナイト粒の成長を抑制し,かつマルテンサイト母相の強化により疲労寿命を向上する効果を有するため、一種以上を添加し、添加する場合は0.15〜0.8mass%とする。
【0019】
図1にB10寿命に及ぼすMo、W添加の影響を示す。図は同一熱処理を施した材料でMo、W添加の影響を調査した結果を示し、Mo、Wを0.15mass%以上添加すると,疲労寿命が大幅に向上する。一方、0.8mass%を超えて添加すると疲労寿命は大幅に劣化する。
【0020】
Mo,Wの一種以上を適量添加した軸受用鋼部品では、焼入れ表層部のオーステナイト粒径が添加されていない鋼に対して同一条件で焼入れ処理を行なっても微細化し,さらにMo,Wの添加によるマルテンサイトの強化による効果も加わり,従来鋼に対して4倍以上疲労寿命は向上する。
Al:0.1mass%以下
Alは、強力な脱酸作用を持ち,鋼の清浄化を向上させる効果を有する成分であるため含有されていることが好ましい。0.10mass%を超えて添加した場合には,鋼の清浄化がむしろ劣化し,疲労寿命が低下することから,その含有量を0.1mass%以下とすることが好ましい。更に好ましくは、0.005〜0.1mass%である。
【0021】
以上が基本成分組成で、残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P、S、N、Oが挙げられ、Pは0.05mass%まで、Oは0.0150mass%までを許容する。
【0022】
S、Nは不可避的不純物としても混入する場合、Sは0.01mass%まで、Nは0.008mass%まで許容するが、積極的に添加してもよい。所望する特性を向上させる場合、S、Cu、Ni、Ti、Nb、B、Sb、Nの一種または二種以上を添加する。
【0023】
S:0.03mass%以下
SはMnと結合して,MnSを形成して被削性を向上するため添加してもよい。0.03mass%を越えて添加するとMnSが割れの起点となり疲労寿命を著しく低下するため、添加する場合は、その含有量の上限は0.03mass%とすることが好ましい。
【0024】
Cu:1.0mass%以下
Cuは焼入れ性向上により焼入れ部の硬度向上効果があるため添加してもよい。この効果を得るため、添加する場合には1.0mass%以下とする。
【0025】
Ni:1.0mass%以下
Niは焼入性増大や焼入れ部の靭性を向上させるため、添加する場合は1.0mass%を上限に添加する。また,Cu添加時には熱間脆性抑制のためにNiをCu添加量の1/2添加することが好ましい。
【0026】
Ti:0.01mass%以下
Tiは窒化物形成によるオーステナイト粒成長抑制効果があるため添加してもよいが、0.01mass%を超えると,疲労特性が劣化するため、添加する場合は0.01mass%以下とすることが好ましい。
【0027】
Nb:0.5mass%以下
Nbは窒化物(もしくは炭窒化物)形成によるオーステナイト粒成長抑制効果があるため添加してもよいが、その含有量が0.5mass%を超えるとその効果は飽和するので、添加する場合は、0.5mass%以下とすることが好ましい。
【0028】
B:0.01mass%以下
Bは焼入性向上効果があるため0.01mass%を上限に添加してもよいが、その含有量が0.01mass%を超えるとその効果は飽和するため、添加する場合は、0.01mass%以下とすることが好ましい。
【0029】
Sb:0.0050mass%以下
Sbは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、転動疲労特性の劣化を防止する作用を有するので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.0050mass%を超えると、靭性が劣化するので、添加する場合は、0.0050mass%以下とすることが好ましい。
【0030】
N:0.01mass%以下
Nは、不可避的不純物として存在するが、窒化物(もしくは炭窒化物)を形成し,γ粒微細化に効果がある。過剰添加は鋼の加工性を劣化させるため、添加する場合は0.01mass%以下であることが好ましい。
[微視組織]
本発明に係る軸受け用鋼部品は、焼入れ後の表層における平均旧オーステナイト粒径を3.5μm以下に規定する。平均旧オーステナイト粒径を3.5μm以下に規定すると、疲労特性が向上する。
【0031】
尚、疲労寿命を向上させるためには、焼入れ後において、表層部の硬さが硬いほど有利で、表層部の硬さはHv700以上であることが好ましい。
【0032】
[製造条件]
本発明の軸受用鋼部品は、鋼素材、好ましくは棒鋼あるいは線材を、鍛造工程を経てベアリング内外輪、ベアリングボール等の部品の形状に加工した後、焼入れを施して製造される。焼入れ後の表層部において微細な旧オーステナイト粒を得るため、焼入れの前組織、焼入れ条件を規定する。
【0033】
1 前組織
焼入れ前の炭化物は球状化炭化物とする。炭化物形態が球状化炭化物組織からなる鋼に,焼入れ処理を行なうと,加熱中のオーステナイト粒成長が球状化炭化物のピンニング効果により抑制される。この効果を有効に発現させるため、炭化物の球状化状態は,炭化物のアスペクト比が平均で3以下とする。
【0034】
炭化物のアスペクト比を平均で3以下とする方法は特に規定しないが、アスペクト比や炭化物粒径を均一にするため、Ac1変態点付近で球状化焼鈍を行うことが好適である。
【0035】
尚、製品製造として鍛造工程の間に軟化焼鈍を実施したり、温間鍛造のための加熱を行なっても、焼入れ前の炭化物形態が球状化炭化物であれば、焼入れ処理時のピンニング効果が消滅しない。
【0036】
また、炭化物以外の残部組織は、フェライト、ベイナイト、マルテンサイトのいずれであってもよい。
【0037】
2 焼入れ処理条件
平均旧オーステナイト粒径が3.5μm以下である焼入れ表層部を得るため、焼入れ処理は、Ac3点-10℃〜Ac3点間を0.5℃/s以上で加熱し、加熱温度:Ac3点以上、Ac3+130℃以下、保持時間500秒以下として行う。
【0038】
加熱温度は、焼入れ後、均一な焼入れ組織とするため、Ac3点以上とする。一方、Ac3点+130℃超では、球状化炭化物が存在していても、ピンニング効果が低減して、オーステナイトの粒成長が生じ、焼入れ後の組織の旧オーステナイト粒の平均粒径が3.5μm超となるため、Ac3点以上、Ac3点+130℃以下とする。
【0039】
Ac3点以上で、500秒を超えて保持すると、球状化炭化物によるピンニング効果によっても、粒成長に十分な時間となり、焼入れ後の組織の旧オーステナイト粒径が3.5μm超となってしまうため、Ac3点以上の保持時間は500秒以下とする。
【0040】
加熱速度は、Ac3点-10℃〜Ac3点間で0.5℃/s以上とする。該温度域での加熱速度が、0.5℃/s未満の場合、オーステナイトへの核生成駆動力の減少などの影響で、オーステナイト粒径が粗大化し、焼入れ後の組織の旧オーステナイト粒径が3.5μm超となるため、0.5℃/s以上とする。加熱速度はAc3点-10℃〜Ac3点間での平均値とする。
【0041】
尚、焼入れ処理は、複数回行うと、より微細な表層部が得られ好ましい。複数回の焼入れ処理を行う場合、少なくとも、最終の焼入れ処理時にのみ(N回焼入れ処理を施す場合には、N回目のみ)、上述した条件を適用する。
【0042】
最終の焼入れ処理に先立って行う焼入れ処理(N回焼入れ処理を施す場合には、1〜N-1回目までの焼入れ処理)は、焼入れ後において、球状炭化物が残存する組織が得られるように、加熱温度をAcm点(球状化炭化物がオーステナイトに溶け込みオーステナイト単相となる温度)以下とすれば、その他の条件は適宜選定すればよく,最終焼入れ工程の条件に限定されない。
【0043】
但し、焼入れ処理の回数は、生産性・コストを考慮すると2回行なうのが好適である。焼入れ装置は、高周波加熱装置を利用すると表層部が最も加熱されて好ましいが部品の形状に適したものを選定すればよく、特に規定しない。
【0044】
本発明においては、焼入れ処理の後に焼戻し処理を行ってもよい。但し、焼戻し処理を行う場合、焼戻し温度が高温となると、表層部が軟化して、疲労強度が低下し、焼入れ表層部の旧オーステナイト粒径を微細化した効果が損なわれるため、焼戻しを行う場合は、200℃以下とし、Hv700以上の表層を得ることができる。
上記の条件で、焼入れ処理、焼戻し処理が施された後は、必要に応じて仕上げの研磨処理を施し、軸受用鋼部品とする。
【実施例】
【0045】
表1に示す各種組成の実験用100kg鋼塊を,1250℃で15hソーキングを行なった後,850℃以上で熱間鍛造し,φ30mm棒鋼とした。得られた棒鋼を球状化焼鈍(SA)し,フェライトと平均アスペクト比1.3〜1.6の球状化炭化物とした。
【0046】
表1において、鋼No.1〜4、6〜8、10〜16は本発明範囲内の成分組成で、鋼No,5はMo,鋼No.9はWの添加量が本発明範囲外,鋼No.17はMo、Wのいずれもが添加されず本発明範囲外である。
【0047】
なお、表1において数値の左に<を記載したものは、積極的に添加を行っておらず、不可避的不純物としての混入レベルであることを意味する。
【0048】
これらの棒鋼の直径の1/4の部分よりφ12mm×22mm長さのラジアル型転動疲労試験片を粗加工し,種々の熱処理条件で焼入れ処理を行なった。焼戻しは170℃で行ない,仕上げ加工を行なった後,組織観察、硬さ試験および疲労試験に供した。
【0049】
表2(その1、2)に熱処理条件を示す。高周波焼入れ装置を用いた場合、加熱速度が700℃/s以上と早くなっている。
【0050】
評価は、表層部ビッカース硬度、表層部旧オーステナイト粒径を調査するとともに,ラジアル疲労試験によるB10寿命で転動疲労寿命を評価した。
【0051】
尚、表層部のビッカース硬度はラジアル試験片の長手方向断面(以下L断面)で表層から0.1mm内部のビッカース硬度を荷重2.94N(300gf)で5点測定し平均した。
【0052】
表層部の旧オーステナイト粒径は、旧オーステナイト粒腐食を行ない、L断面表層直下においてSEMを用いて5000倍で4視野写真撮影し、切断法を行なった。
【0053】
切断法では、各視野において縦および横方向に4分割する線分3本を引き、この線分(1視野当たり108μm)が旧オーステナイト粒界と交差した数(X)を測定し、「ある視野での平均旧オーステナイト粒径 (μm) = 108/(0.89×X)」として算出した後、4視野の平均を出した。
【0054】
ラジアル疲労試験は、ヘルツ応力5884MPa(600kgf/mm2)、回転数約46400cpmで20本試験を行ない、B10寿命を求めた。
【0055】
表2(その1,2)に熱処理条件に併せて、得られた試験結果を示す。表2において、疲労特性を比較する際の基準となる従来例は、鋼No.17の成分組成で、焼入れ条件を本発明範囲外とした。
【0056】
また、試験No.2−1〜16については、Mo,W無添加の鋼No.17を用いたNo.2−17のB10寿命に対する比を、試験No.3−1〜16についてはNo.3−17のB10寿命に対する比を、試験No.4−1〜16についてはNo.4−17のB10寿命に対する比をそれぞれ示した。
【0057】
比較例は、成分組成および/または焼入れ条件が本発明範囲外のものを比較例とした。尚、全ての実施例で炭化物のアスペクト比を平均で3以下とした。
【0058】
鋼の成分組成と焼入れ条件が本発明範囲内の場合(発明例)、オーステナイト粒径が3.5μm以下と微細で、従来例と比較して疲労寿命に優れている。
【0059】
【表1】


【0060】
【表2】


【0061】
【表3】


【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】B10寿命に及ぼすMo、W添加の影響を示す図。




 

 


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