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発明の名称 低温靱性に優れた9%Ni鋼の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−63602(P2007−63602A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−249764(P2005−249764)
出願日 平成17年8月30日(2005.8.30)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 横田 智之 / 大井 健次 / 星野 俊幸
要約 課題
QQ’Tプロセスを利用した場合と同等の、優れた低温靭性を有する9%Ni鋼板を、2段の熱処理で達成する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:7.0〜10.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板を、圧延後直接焼入れ、あるいはAc3 変態点〜850℃の温度範囲に再加熱して、焼入れ処理を施した後、3℃/s以上の昇温速度で、Ac3 変態点-80℃〜Ac3 変態点-20℃の温度範囲に急速短時間加熱し、引き続き500℃〜600℃の温度範囲で加熱保持して焼戻すことを特徴とする低温靭性に優れた9%Ni鋼の製造方法。
【請求項2】
さらに、質量%で、Mo:0.04〜0.5%を含有することを特徴とする請求項1記載の低温靭性に優れた9%Ni鋼の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はLNG貯蔵用タンク等に利用される低温用鋼:9%Ni鋼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー需要の増大および地球環境への配慮から、クリーンなエネルギー源としての天然ガスの需要が急増している。従って、近年、LNG貯蔵用タンクの建設が国内外で積極的に推進されており、タンク建設時に使用される9%Ni鋼の需要も増加している。同時に、タンク敷地の有効利用から、建設されるタンクが大型化される傾向にあり、降伏強度の高い鋼板の製造が望まれている。
【0003】
このようなタンクでは、脆性破壊に対する安全性の確保から靭性を改善すべく、多くの研究開発がなされてきた。低温靭性に優れた9%Ni鋼の製造方法として、JIS G 3127:低温圧力容器用ニッケル鋼鋼板(降伏点または耐力が590MPa以上)に焼入れ焼戻し法(以下QTプロセスという)が指定されているが、所定の強度を確保しつつ、より安定して、優れた低温靭性を得ることができる製造法として、二段焼入れ焼戻し(以下QQ’Tプロセスという)を行うことが、一般的に知られており、必要に応じてこれが、利用できることが示されている。
【0004】
非特許文献1のp801によると、QQ’Tによる低温靭性改善の考え方は次のとおりである。1段目の焼入れ(Q)では通常の焼入れと同様オーステナイト域から急冷することでマルテンサイトを得る。2段目の焼入れ(Q’)はAc3 変態点以下の(γ+α)二相域から焼入れる。Q’により粒組織が微細化されるとともに、合金元素の分配が起こるために、焼戻しマルテンサイトと合金元素の濃縮したマルテンサイトと、少量の残留オーステナイトが形成される。この混合組織をAc1変態点近傍で焼戻す(T)と、さらに合金元素の濃縮した安定オーステナイトが析出するとともに、焼戻しマルテンサイト中のC、Nのような靭性に有害な不純物は、オーステナイトに移行する。すなわち、最終組織は、微細でかつ靭性の極めて高い、焼戻しマルテンサイトと、極低温でも安定性の高いオーステナイト相との混合組織となるため、QQ’Tプロセスでは低温靭性が著しく向上する。
【0005】
QQ’Tプロセスの利点を活かし、これを基本とした従来技術が数多く開示されている。例えば特許文献1には、二相域加熱時に形成されるオーステナイト量を、規定の範囲とすることで、機械的性質が向上することが、開示されている。特許文献2には、QQ’Tプロセスにおいて、不純物元素であるPとSを、いずれも0.001%以下に抑えることで、優れた機械的性質が得られることが、開示されている。また、特許文献3には、Q加熱時とQ’加熱時の加熱速度を、50℃/分以上で行うことで、機械的性質が向上することが開示されている。
【特許文献1】特開平09−256039号公報
【特許文献2】特開平06−179909号公報
【特許文献3】特開平08−27517号公報
【非特許文献1】日本金属学会編 「改訂4版金属便覧」 丸善
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
QQ’Tプロセスを利用すると、所定の強度を確保しつつ、より安定して優れた低温靭性を、得ることができるが、熱処理プロセスが多段であるために、コストがかかり、受注後の納期も長くなるという問題がある。本発明は、QQ’Tプロセスを利用した場合と同等の、優れた低温靭性を有する9%Ni鋼板を、2段の熱処理で達成し、生産性に優れ、かつ低温靭性に優れた9%Ni鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
低温靭性を安定的に得るための重要なポイントは、安定性の高いオーステナイト相を、強度が低下しない程度に、多量に微細分散させることである。QQ’Tプロセスにおいては、Tにおいて低温靭性に寄与する安定なオーステナイトを、析出させるために、予めQ’の過程でCやNiの濃化したマルテンサイトを組織中に仕込んでおくことがポイントである。
【0008】
従来、二段熱処理で安定性の高いオーステナイト相を微細に分散させることは、困難であった。Qの後の熱処理で、安定なオーステナイトを得ようとすると、その処理温度を、二相域の低温域に設定する必要がある。この場合、オーステナイトの核生成頻度は小さく、十分な析出量を確保するためには、長時間加熱をする必要があるが、新たにオーステナイトが核生成するよりも、むしろ既に核生成したオーステナイトが、成長するため、最終的に得られるオーステナイトが粗大化して、低温靭性が劣化する。
【0009】
一方、処理温度を、二相域の高温域に設定すると、十分な量のオーステナイトが析出するが、CやNiなどの合金元素は、低温域への加熱時と比較すると、かなり希釈されており、オーステナイトは不安定化し、冷却後にマルテンサイトとなってしまう(QQ’TプロセスにおけるQ’と同じ)。加熱時間を短くすることで析出量を抑えることはできるが、この場合、Niが十分に、オーステナイトへ濃化することができず、やはりオーステナイトは不安定となる。
【0010】
本発明の着想は、図1の「本発明プロセス」に示すように、焼入れた状態の9%Ni鋼(圧延後直接焼入れ、あるいは再加熱焼入れ)を、二相温度高温域まで短時間急速加熱することで、まず微細なオーステナイトを、多量に析出させ、オーステナイトの粒成長が、生じにくい500℃から600℃まで、ただちに温度を低下させて、この温度域で、保持することで、微細析出オーステナイトに、CやNiを濃化させて、これを安定化させることにある。
【0011】
本発明はこのような着想に基づくものであり、
第一の発明は、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:7.0〜10.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板を、圧延後直接焼入れ、あるいは、Ac3 変態点〜850℃の温度範囲に再加熱して、焼入れ処理を施した後、3℃/s以上の昇温速度で、Ac3 変態点-80℃〜Ac3 変態点-20℃の温度範囲に急速短時間加熱し、引き続き500℃〜600℃の温度範囲で加熱保持して焼戻すことを特徴とする低温靭性に優れた9%Ni鋼の製造方法である。
【0012】
第二の発明は、さらに、質量%で、Mo:0.04〜0.5%を含有することを特徴とする第一の発明に記載の低温靭性に優れた9%Ni鋼の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、QQ’Tプロセスを利用した場合と同等の、優れた低温靭性を有する9%Ni鋼板を、2段の熱処理で達成し、生産性に優れかつ低温靭性に優れた、9%Ni鋼の製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の鋼板としては、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:7.0〜10.0%を含有するが、さらに、Mo:0.04〜0.5%を選択的に含むことができる。
【0015】
1.化学成分について
次に、本発明の9%Ni鋼の化学成分について説明する。以下の説明において%で示す単位は、全て質量%である。
【0016】
C:0.03〜0.10%
Cは強度を付与するのに重要な元素であり、0.03%以上の添加が必要であるが、0.10%を超えて添加されると、低温靭性の劣化を招くため、Cの添加は0.03〜0.10%の範囲とする。
【0017】
Si:0.05〜0.5%
Siは強度の付与あるいは、脱酸材として添加されるが、多量の添加は、焼戻し脆化感受性を増加させるために、0.05〜0.5%の範囲の添加とする。
【0018】
Mn:0.2〜1.0%
Mnは0.2%未満であると、熱間延性が劣化するため0.2%以上の添加とする。一方、Mnは強度の上昇に寄与する元素であるが、1.0%を越えて添加しても、強度上昇が小さくなるうえ、逆に低温靭性が低下し、焼戻し脆化感受性も高くなることから、その添加を0.2〜1.0%の範囲とする。
【0019】
Ni:7.0〜10.0%
Niは低温靭性を付与するとともに、残留オーステナイトの安定化に寄与する元素であり、7.0%以上の添加が必要であるが、10.0%を超える添加では、その効果が飽和し、有効性が得られないため、その添加は7.0〜10.0%の範囲とする。
【0020】
Mo:0.04〜0.5%
さらに、Moを0.04〜0.5%の範囲で選択的に添加することができる。
Moの添加は強度上昇を主目的に行うが、同時に焼戻し脆化感受性の低減を図ることもできる。本効果発現のためには、0.04%以上の添加が必要であるが、0.5%を超える添加では、逆に靱性が低下するために、その添加は0.04〜0.5%の範囲とする。
【0021】
2.製造条件について
上記した成分組成の鋼板を圧延後直接焼入れ、あるいはAc3 変態点〜850℃の間に再加熱して、焼入れ処理を施した後、3℃/s以上の昇温速度で、Ac3 変態点-80℃〜Ac3 変態点-20℃の間に、急速短時間加熱し、引き続き、500℃から600℃で加熱保持して焼戻す。以下に温度を限定した理由を述べる。なお、図1の本発明プロセスに熱処理の模式図を示す。
【0022】
第一段目の加熱温度範囲:Ac3 変態点〜850℃
本処理は、後続の二段目の熱処理の前組織として、均一なマルテンサイト組織を得るために行われるもので、Ac3 変態点以上の温度で加熱される必要がある。一方、加熱温度が、850℃を超えると加熱時のオーステナイト結晶粒が粗大化するので、加熱温度範囲は、Ac3 変態点〜850℃とし、その後焼入れ処理する。この第一段目の熱処理は、圧延後に鋼板を直接焼入れすることで代替することもできる。
【0023】
第二段目の加熱温度範囲:Ac3 変態点-80℃〜Ac3 変態点-20℃、
昇温速度:3℃/s以上
二段目の熱処理が本発明において最も重要な熱処理であり、3℃/s以上の昇温速度で、Ac3 変態点-80℃〜Ac3 変態点-20℃の温度範囲に急速短時間加熱し、引き続き、500℃〜600℃の温度範囲に加熱保持して焼戻す。ここでの昇温速度とは第一段目の焼入後の温度から第二段目の熱処理温度に到達するまでの平均加熱速度をいう。この熱処理において、3℃/s未満の昇温速度で二相域へ加熱すると、オーステナイトの核生成頻度が小さくなるとともに、析出オーステナイトの粒成長が顕著となるため、最終的に粗大な残留オーステナイトとなり、低温靭性が劣化する。従って二相域への昇温速度は3℃/s以上とする。このような急速短時間加熱には、例えば誘導加熱設備を利用することができる。
【0024】
このとき二相域加熱温度がAc3 変態点-80℃より低いと、十分な量の析出オーステナイト量を得ることができないため、Ac3 変態点-80℃以上とする、一方、二相域加熱温度がAc3 変態点-20℃より高いと、その後、500℃〜600℃の温度範囲で保持しても、析出オーステナイトが十分に安定しないため、その加熱温度範囲をAc3 変態点-80℃〜Ac3 変態点-20℃とする。最高加熱温度での保持は析出オーステナイトの急速な成長をもたらすためできるだけ短くし、望ましくは、5秒以下とする。
【0025】
このように、二相域へ急速加熱して微細なオーステナイトを析出させた後、引き続き、500℃から600℃で加熱保持する。この過程でCやNiが析出オーステナイトへ濃化することで、析出オーステナイトの安定化が進む。この加熱保持は、例えば誘導加熱設備後方の熱処理炉を予めこの温度に設定しておき、誘導加熱設備から搬送された板を、そのまま熱処理炉に挿入することで実現できる。
この保持温度が500℃未満の場合、マトリクスの回復が遅延して、焼戻し効果によるマトリックスの靭性改善効果、が妨げられるため500℃以上とする。一方この保持温度が600℃を越えると、析出オーステナイトが増加して、強度が低下するため、保持温度は500℃から600℃の範囲とする。このときの保持時間は特に規定するものではないが、オーステナイトへの合金元素の分配の効果を得るために、5分以上とすることが望ましい。この処理の後の冷却は放冷としても水冷としてもよい。
【実施例1】
【0026】
表1に供試鋼の化学成分を示す。鋼種A、B、Cは本発明鋼、鋼種Dは、比較鋼でNi添加量が6.5%と低くなっている。これら供試鋼を表2に示す製造条件で圧延・熱処理した。熱処理鋼板の板厚中心部から圧延方向にJIS4号丸棒引張試験片およびVノッチシャルピー試験片を採取し、それぞれ室温引張試験、衝撃試験に供した。衝撃試験では試験温度-196℃で5回の測定を実施して吸収エネルギーを測定し、その平均値を使った。引張試験およびシャルピー衝撃試験の結果も製造条件と並べて表2に示した。No.4から10までが比較例であり、それ以外が発明例である。
【0027】
【表1】


【0028】
【表2】


【0029】
発明例の鋼番号1〜3および鋼番号11〜15では化学成分、製造条件ともに適正であり、優れた強度および低温靭性を有している。これに対し、鋼番号4ではNi添加量が6.5%と低い鋼種を使っているため、所定の熱処理を施しても低温靭性が劣化している。鋼番号5では焼入れ保持温度が910℃と高く、加熱オーステナイト粒径が粗大化し、熱処理後の低温靭性が劣化している。鋼番号6では2段目熱処理の加熱速度が遅いため、熱処理後に粗大な残留オーステナイトが存在することで、低温靭性が劣化している。鋼番号7および8では2段目熱処理の最高加熱温度が適正でないため、低温靭性が劣化している。また鋼番号9では保持温度が高いため、引張強度が著しく低下しており、鋼番号10では保持温度が逆に低いため、低温靭性の劣化を招く結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により優れた強度と低温靭性をする9%Ni鋼を安価に製造することが可能となり、LNGタンクの大型化、安全性の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明プロセスを従来技術であるQTプロセス及びQQ’Tプロセスと比較した模式図である。




 

 


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