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発明の名称 ステンレス熱延鋼帯の酸洗方法及びステンレス熱延鋼帯
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−56358(P2007−56358A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−347070(P2005−347070)
出願日 平成17年11月30日(2005.11.30)
代理人 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
発明者 松原 行宏 / 蛭田 敏樹 / 石井 建志 / 中世古 誠 / 冨田 省吾 / 小野 一哉 / 菊山 正剛 / 古沢 英哉 / 高野 圭 / 古川 義章 / 内牧 信三 / 三河 雄一
要約 課題
大幅なコストアップや大規模な設備投資をせずとも、生産性の低下なく、ステンレス熱延鋼帯の表面粗さを細かくする、ステンレス熱延鋼帯の酸洗方法及びステンレス熱延鋼帯を提供する。

解決手段
ステンレス熱延鋼帯に、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理を行なった後、酸にて酸洗する。酸洗は、硫酸酸洗+硝弗酸酸洗、塩酸酸洗のいずれでもよい。ショットブラスト処理条件は、投射速度45m/sec以上、投射密度30kg/m2以上とするのがよい。これにより、表面粗さRaが1.0〜2.0μm、PPIが180〜300のステンレス熱延鋼帯を得る。
特許請求の範囲
【請求項1】
ステンレス熱延鋼帯に、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理を行った後、酸にて酸洗することを特徴とするステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
【請求項2】
ステンレス熱延鋼帯に、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理を行った後、硫酸にて酸洗し、しかる後、硝酸と弗酸の混酸にて酸洗することを特徴とするステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
【請求項3】
ステンレス熱延鋼帯に、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理を行った後、塩酸にて酸洗することを特徴とするステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
【請求項4】
投射速度45m/sec以上、投射密度30kg/m2以上の条件でショットブラスト処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
【請求項5】
投射速度60m/sec以上、投射密度30kg/m2以上の条件でショットブラスト処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法で酸洗されたことを特徴とする表面粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下、PPIが180以上300以下のステンレス熱延鋼帯。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス熱延鋼帯の酸洗方法及びステンレス熱延鋼帯に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス熱延鋼帯の表層に付着している酸化物のスケールは緻密であり、その脱スケールは困難である。このため、ステンレス熱延鋼帯の酸洗に際しては、酸洗に先立って、多くの場合、ショットブラスト処理が行なわれるので、ステンレス熱延鋼帯の酸洗ラインでは、ショットブラスト処理を行う装置が設置され、その下流側に硫酸槽、混酸槽(硝酸+弗酸)などの酸槽が設置されている場合が少なくない。
【0003】
ステンレス鋼帯の場合、表面の白色度、光沢度、あるいは、耐食性が要求される場合が多く、これらの特性を得るため、硫酸と混酸(硝酸+弗酸)を用いた酸洗が一般的である。これらの特性に対する要求が低い場合、硫酸のみ、あるいは、硫酸と硝酸による酸洗でも良い。
それとは別に、近年、ステンレス熱延鋼帯の酸洗に際し、硫酸や混酸ではなく、普通鋼と同じ塩酸を用いて酸洗することで、普通鋼と同じ酸洗ラインを共用できないか、という試みも行われている。塩酸の場合、表面の白色度、光沢度、あるいは、耐食性は著しく劣るが、これらの特性が要求されない、機能品を対象にすれば、塩酸による酸洗でも十分であるからである。
【0004】
ステンレス熱延鋼帯の機能品を塩酸にて酸洗する場合、酸洗ラインは別のラインでショットブラスト処理を行う場合が多い。普通鋼の酸洗ラインでは、ショットブラスト設備を有していないことが多いためである。
ショットブラスト処理の目的は、ステンレス熱延鋼帯の表層に付着している酸化物のスケールに、酸洗するのに先立って、予めクラックを入れることであり、これにより、硫酸槽、混酸槽などでの酸洗の際に、スケール中のクラックに酸を浸透させ、地鉄とスケールの界面からスケールを剥離、除去する作用を促進する、というのが、ショットブラスト処理を併用した、ステンレス熱延鋼帯の酸洗による脱スケールのメカニズムである。
【0005】
ショットブラスト処理を行わない場合、地鉄とスケールの界面に酸が浸透し難いため、酸洗槽での酸洗速度は、ショットブラスト処理を施す場合に比べ、著しく低くせざるを得ない。ゆえに、ステンレス熱延鋼帯の酸洗に際しては、ショットブラスト処理を行うことで、ステンレス熱延鋼帯の脱スケール性を改善し、生産性の向上を図るのが一般的である。
【0006】
一方、耐食性の向上のためには、脱Cr層の除去が必要である。脱Cr層とは、スケールの直下、板厚表層部に形成される、Cr欠乏層のことであり、この層が、酸洗後も鋼帯表層に残存すると、優れた耐食性を得ることはできない。すなわち、ステンレス熱延鋼帯の酸洗では、脱Cr層を完全に溶解、除去することが重要である。硫酸による酸洗は、地鉄を溶解し、脱Cr層を溶解、除去する効果が大きいと言われている。さらに、表面の白色度、光沢度、あるいは、耐食性の向上のためには、硫酸による酸洗の際に鋼帯表面に形成されるスマットの除去、及び、強固な不動態皮膜の形成が必要であるが、これらに対しては、混酸による酸洗が有効とされている。
【0007】
このように、ステンレス熱延鋼帯の酸洗工程においては、表面の白色度、光沢度、あるいは、耐食性が要求される場合が多く、スケールを除去するのみでは十分ではない。
ところで、普通鋼の熱延鋼帯(JIS G 3131)を脱スケールする場合も、ショットブラスト処理を行う場合があるが、これは、スケールを機械的に破壊して除去する作用による。
普通鋼の場合、ステンレス鋼に比べ、スケールが緻密でなく、脱スケールは比較的容易である。このため、ショットブラスト処理により、スケールを機械的に破壊して除去することができ、ほぼ全量を除去することも可能である。
【0008】
例えば、特許文献1には、粒径0.10〜0.25mmのショット粒を用いてショットブラスト処理を行うことにより、90%を越えるスケール研掃率を得られることが記載されている。
ステンレス熱延鋼帯のショットブラスト処理では、普通鋼のように全量のスケールを機械的に破壊、除去することは困難であるため、緻密な酸化スケールにクラックを入れることに主眼を置く。
【0009】
このため、直径0.3mm以上0.5mm以下、と大きい、鉄製の球状のショット粒を用いる、いわゆるスチールショットを行うのが一般的である。ショット粒は、径が大きい方が、衝突エネルギーも大きく、大きなクラックを入れることができるからである。
しかしながら、ショットブラスト処理を行った場合、ショット粒がステンレス熱延鋼帯に衝突した際、同鋼帯表層に微小な凹み(以下、ショット痕)が多数形成されるため、その影響が酸洗後にも残存し、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の表面粗さが粗くなる原因となっている。さらには、ショット痕は、その後、冷間圧延が行われるような場合、オイルピットとなり、冷延鋼帯の光沢度低下の原因となる。
【0010】
これを抑制する方法として、特許文献2には、研削ブラシロールを用いて地金まで研削する方法が記載されている。これにより、ショットブラスト処理を省略でき、ショットブラスト処理による微小な凹凸形成も排除できる。
また、特許文献3には、熱間仕上圧延終了後、巻取りまでの間に、高圧水による脱スケールを施し、スケール厚を薄くする方法が記載されている。後述するように、ショットブラスト処理では、ショット粒の投射速度を低速にすることにより、脱スケール性は低下し、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の表面粗さは細かくなるが、上記特許文献3に記載の方法では、スケール厚が薄いため、ショット粒を従来より低速で投射した場合でも、脱スケール性を低下させることなく表面粗さを細かくすることができる。
【0011】
また、ステンレス熱延鋼帯の酸洗工程では、表面粗さを細かくするだけではなく、さらに、酸洗速度、ひいては生産性を向上することも強く求められている。
【特許文献1】特開昭58−186566号公報
【特許文献2】特開平7−51728号公報
【特許文献3】特開平8−108210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、研削ブラシロールが早期に磨耗するため、頻繁に交換する必要があり、ショットブラスト処理に比べてコストアップになる。また、特許文献3に記載の方法では、熱間圧延ラインのランナウトテーブル上に高圧デスケーリング設備の建設が必要な上に、低速とはいえ、ショットブラスト処理は不要になるわけではなく、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の表面粗さは、細かくてもRa=2.3μmどまりであった。
【0013】
また、ショットブラスト処理を行った際にステンレス熱延鋼帯表層に形成されるショット痕の大きさを低減し、表面粗さを細かくするためには、ショット粒の投射速度、投射密度(単位面積当たりのショット粒投射重量)を低減することが有効であることが知られている。
しかしながら、こうした対策を採った場合、スケールにクラックが入り難くなり、酸洗の際の脱スケール促進が十分でなくなる。
【0014】
一方、酸洗ラインの生産性の向上を図るには、ショット粒の投射速度、投射密度をアップするのが有効であることは知られているが、これらの方法では、表面粗さが粗くなり、表面品質が悪化する。このように、従来の知見では、生産性向上と表面品質向上は相反するから、ステンレス熱延鋼帯の酸洗に際し、生産性と表面品質の向上という重要な課題を両立することは、畢竟困難であり、その解決方法の提案が望まれていた。
【0015】
すなわち、ステンレス熱延鋼帯の酸洗方法においては、表面品質の向上を図るという第1の課題と、生産性の向上を図るという第2の課題の2つがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述のような従来技術の問題を解決するものであり、大幅なコストアップや大規模な設備投資をしなくても、生産性を低下させることなく、ステンレス熱延鋼帯の表面粗さを細かくする方法を提供できるものである。また、さらには、従来以上の表面品質を確保した上で、生産性の向上を図るものである。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0017】
[請求項1] ステンレス熱延鋼帯に、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理を行った後、酸にて酸洗することを特徴とするステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
[請求項2] ステンレス熱延鋼帯に、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理を行った後、硫酸にて酸洗し、しかる後、硝酸と弗酸の混酸にて酸洗することを特徴とするステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
【0018】
[請求項3] ステンレス熱延鋼帯に、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理を行った後、塩酸にて酸洗することを特徴とするステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
[請求項4] 投射速度45m/sec以上、投射密度30kg/m2以上の条件でショットブラスト処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
【0019】
[請求項5] 投射速度60m/sec以上、投射密度30kg/m2以上の条件でショットブラスト処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス熱延鋼帯の酸洗方法。
[請求項6] 請求項1〜5のいずれかに記載の方法で酸洗されたことを特徴とする表面粗さRaが1.0μm以上2.0μm以下、PPIが180以上300以下のステンレス熱延鋼帯。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、大幅なコストアップや大規模な設備投資をしなくても、生産性を低下させることなく、ステンレス熱延鋼帯の表面粗さを細かくすることができる。また、ステンレス熱延鋼帯の酸洗に際し、従来以上の表面品質を確保した上で、生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは、鋭意検討の結果、従来に比べ、微細なショット粒を多数投射することにより、ショットブラスト処理本来の目的である酸洗促進作用を低下させることなく、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の表面粗さを細かくできることを見出し、第1の課題を解決する発明を完成させた。
第1の課題を解決する発明を完成するに至った実験1について述べる。実験には、熱間圧延後、箱型の焼鈍炉にて焼鈍したSUS430熱延鋼帯より切り出した、4mm厚×50mm幅×50mm長さのサンプルを用いた。SUS430の化学成分は表1に示す通りである。
【0022】
【表1】


遠心式投射装置を用いて、表2に示す各条件でショットブラスト処理を行い、ショットブラスト処理前後でのサンプル重量を測定することにより、ショットブラスト処理による脱スケール量を求めた。投射密度とは、単位面積当たりに投射されたショット粒の重量であり、30kg/m2とした。投射速度は、45m/secとした。投射速度は、JIS B 6614(1989)に準拠し、ホイール径と回転速度より算出した。投射距離は、遠心式投射装置とサンプルの垂直距離にして350mmとした。ショット粒には、平均粒径がそれぞれ、0.5、0.3、0.2mmのスチールショットを用いた。平均粒径は、JIS Z 8801-1:2000に準拠した、公称目開きが710、500、425、355、300、250、212、180、150、100、75、53μmの各標準ふるいを用いて粒径選別を行い、重量平均により求めた。
【0023】
その後、20mass%、80℃の硫酸にて60secの酸洗を行い、酸洗前後でのサンプル重量を測定することにより、酸洗による脱スケール量を求めた。なお、酸洗の際には、酸により地鉄も溶解することから、酸洗による脱スケール量は、脱スケール量と地鉄溶解量の合計値である。以降、酸洗による脱スケール量は、脱スケール量と地鉄溶解量の合計値を意味する。
【0024】
また、得られたサンプルにつき、JIS B 0601-2001、JIS B 0651-2001に準拠し、触針式表面粗さ測定器をサンプル表面に当てて、長さ方向に移動させ、粗さ曲線用の基準長さlr(λc)を0.8mm、うねり曲線用の基準長さlw(λf)を8mm、断面曲線用の基準長さlpすなわち評価長さlnを40mmとしてRa(3)(算術平均粗さ)を測定した。
さらに、SAE911規格で規定されるPPIを測定した。PPIとは、1インチ当たりの凹凸のピーク数であり、PPIが大きいということは、表面のミクロ的な凹凸の中で短周期の凹凸が多いということを意味する。
【0025】
得られた結果を表2に併せて示す。
【0026】
【表2】


図1に、各ショット粒を用いた場合の、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の表面粗さを示す。ショット粒の平均粒径が小さいほど、表面粗さを小さくできることがわかる。
図2に、ショットブラスト処理での脱スケール量、酸洗による脱スケール量に及ぼすショット粒の平均粒径の影響を示す。なお、SUS430鋼の場合、スケール、及び、脱Cr層除去の観点から、例えば、スケールの厚みを6μm、密度を5500kg/m3、脱Cr層の厚みを6μm、密度を7800kg/m3と仮定すると、この両者を除去するため、酸洗工程(ショットブラスト工程を含む)の際に必要な脱スケール量は80g/m2以上である。ショット粒の平均粒径が小さい方が、ショットブラスト処理による脱スケール量はやや少ない。ただし、全脱スケール量に対するショットブラスト処理による脱スケール量の割合は小さく、10〜12%である。
【0027】
これに対し、酸洗での脱スケール量はショット粒の平均粒径に依存せず、また、全脱スケール量に対する酸洗での脱スケール量の割合は大きい。
なお、比較のために、ショットブラスト処理を行わない場合の例も示すが、スケールにクラックが入っていないため、酸洗でほとんど脱スケールできていないことが分かる。
このように、従来に比べ、粒径の小さいショット粒を用いた場合、ショットブラスト処理による脱スケール量はやや少なくなるものの、酸洗での脱スケール量は、従来のショット粒を用いた場合と同程度かあるいはそれ以上になる。このため、酸洗ラインでの生産性を低下させることなく、表面粗さを細かくすることができる。
【0028】
ショットブラスト処理では、当然のことであるが、ショット粒径が小さい場合、衝突エネルギーは小さく、スケールに入るクラックは小さくなる。これは、上記実験において、ショットブラスト処理による脱スケール量がやや少ないことに相当する。
しかしながら、ステンレス熱延鋼帯の酸洗においては、酸洗での脱スケール量の割合が大きい。ショット粒の平均粒径を小さくすると、上述のように、ショットブラスト処理そのものによる脱スケール量はやや少なくなるものの、酸洗での脱スケールは従来以上に促進できる。このため、ショットブラスト処理による脱スケールと酸洗での脱スケールの合計で考えると、従来のショット粒の平均粒径の場合と同程度以上の酸洗能率を確保できることを、本発明では見出したのである。
【0029】
以上のような作用は、以下のような理由によるもの、と考えられる。
ステンレス熱延鋼帯の脱スケールでは、同鋼帯を酸洗槽中に満たした酸に浸漬した際に、スケール中のクラックに酸が浸透し、地金とスケールの界面を含む部分を溶解して分離することにより、スケールを剥離、除去する効果が大きい。このため、スケール中に多数のクラックを入れることが、酸の浸透に有効なのである。
【0030】
ショット粒の粒径が大きいほど、スケールに大きなクラックを入れることができるが、その数は少ないものと考えられる。これに対し、ショット粒の粒径が小さいほど、粒子1個当たりの衝突エネルギーは小さくなるものの、同一投射密度で考えた場合、多数の粒子を投射することができるため、従来に比べ、微小ではあるものの、スケールに多数のクラックを入れることができる。これにより、酸洗において、従来と同程度の脱スケール性を確保できたもの、と考えられる。
【0031】
さらに、本発明者らは、鋭意検討の結果、微細なショット粒を高速で多数投射することにより、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の表面粗さを従来以上に粗くすることなく、酸洗ラインの生産性を向上できることを見出し、第2の課題を解決する発明を完成させた。
第2の課題を解決する発明を完成させるに至った実験2について述べる。実験は、実験1同様の手順で実施した。表3にショットブラスト条件を示す。ショット粒には、平均粒径0.4mm、0.25mm、0.2mm、0.05mmの4種を用いた。実験1同様に、ショットブラスト処理、酸洗処理の際の脱スケール量の測定、表面性状の評価(Ra、PPIの測定)を実施した。
【0032】
表3に測定結果を併せて示す。
【0033】
【表3】


図3にショットブラスト処理による脱スケール量と酸洗後のサンプルの表面粗さとの関係を示す。ショットブラスト処理による脱スケール量が多いほど、酸洗速度、ひいては、生産性を確保でき、酸洗後のサンプルの表面粗さが小さいほど、良好な表面品質を確保できる。
【0034】
同一の脱スケール量で比較すると、ショット粒の平均粒径が小さい場合の方が、サンプルの表面粗さが小さい。
また、表3にも示すように、ショットブラスト処理による脱スケール量を大きくするためには、投射速度、投射密度を大きくすることが有効であるが、この場合、表面粗さも大きくなり、好ましくない。
【0035】
この点、ショット粒の平均粒径を比較した場合、ショット粒の平均粒径0.4mmの場合に比べ、同平均粒径0.25mm、0.2mm、0.05mmの場合の方が、ショットブラスト処理による脱スケール量を大きくすることができるとともに、表面粗さも粗くせずにすむ。すなわち、平均粒径の小さいショット粒を用いた場合、ショット粒の投射速度、あるいは、投射密度を大きくした場合も、ステンレス熱延鋼板の表面粗さを粗くせずにすみ、かつ、ショットブラスト処理による脱スケール量を大きくすることができるのである。ショットブラスト処理による脱スケール量を大きくすることにより、単純に酸洗による脱スケール量を低減できるため、酸洗速度の高速化、生産性の向上が可能となる。
【0036】
以上のように、発明者らは、ステンレス熱延鋼帯の酸洗による脱スケールに際し、従来に比べ平均粒径の小さいショット粒を用い、これを高速で投射することにより、生産性と表面品質の確保という重要な課題を同時に解決できることを見出した。
以下に、ステンレス熱延鋼帯を酸洗する際の、脱スケール、及び、脱Cr層の溶解について、より定量的、かつ、詳細な調査を実施した。
【0037】
まず、脱スケールについて示す。実験には、熱間圧延後、箱型の焼鈍炉にて焼鈍したSUH409熱延鋼帯より切り出した、4mm厚、50mm幅、50mm長さのサンプルを用いた。SUH409の化学成分は表4に示す通りである。SUH409は、表面の白色度などは大して要求されない、いわゆる、機能品の場合が多いので、スケール残りの有無のみを評価した。また、普通鋼の酸洗ラインでの酸洗を想定(ショットブラスト単独ラインでのショットブラスト処理、塩酸による酸洗)した実験とした。
【0038】
【表4】


上述の実験同様に、表5に示す各条件にて、ショットブラスト処理を施し、ショットブラスト処理前後でのサンプル重量を測定することにより、ショットブラスト処理による脱スケール量を求めた。ショット粒には、平均粒径0.50mm、0.27mm、0.20mmの3種を用いた。その後、10mass%、80℃の塩酸にて30、60、90sec酸洗を行い、酸洗前後でのサンプル重量を測定し、差をとることにより、酸洗による脱スケール量を求めた。酸洗後、スケール残りの有無、及び、表面性状の評価(Ra、PPIの測定)を実施した。
【0039】
表5に測定結果を併せて示す。
【0040】
【表5】


表5中のショットブラスト条件において、投射密度がショットブラストラインの通帯速度に関連するものであり、通帯速度が2倍になると投射密度は1/2になる。また、酸洗ラインの通帯速度が2倍になると、酸洗時間は1/2になる。
【0041】
従来例である、ショット粒の平均粒径が0.50mmの場合、スケール残りの有無は、脱スケール量合計が38g/m2を境として決まり、脱スケール量合計が38g/m2以上の場合、スケール残りがなかったのに対し、38g/m2を下回る場合、スケール残りが観察された。
一方、本発明例である、ショット粒の平均粒径が0.20mmの場合、スケール残りの有無は、脱スケール量合計が21g/m2を境として決まり、ショット粒の平均粒径が小さい方が、少ない脱スケール量合計でもスケール残りが生じないようにできることがわかった。
【0042】
すなわち、ショット粒の平均粒径が小さい方が、ステンレス鋼帯をショットブラストライン、酸洗ラインなどに通帯させる際の通帯速度を高速化することが可能となり、生産性の向上につながる。
以下に、ショット粒の平均粒径が小さい場合に脱スケールが促進するメカニズムについて説明する。
【0043】
図4に実験方法を模式的に示す。前記実験同様のサンプル10を部分的にテープで保護し、マスキング11したサンプル10ついて、前記実験の従来例A4、及び、本発明例B2の場合と同様の条件でショットブラスト、酸洗を施した。従来例A4は、スケール残りが観察された条件であり、本発明例B2は、スケール残りが観察されなかった条件である。また、ショット粒の投射速度はいずれも70m/secの条件である。得られたサンプル10につき、保護テープをはがした後に、矢示の断面プロフィール測定方向12に沿って、ショットブラスト及び酸洗が施されていない部分から、ショットブラスト及び酸洗が施された部分まで断面プロフィールを測定した。
【0044】
得られた結果を図5に示す。ショット粒の平均粒径が大きい従来例A4の場合の方が、断面プロフィールが不均一である。ショット粒の平均粒径の大きい従来例A4の場合、脱スケールが完了した後も深さ8μmを超えて地鉄の溶解が進行している部分もあれば、深さ2μm程度の部分もある(ここにスケールが残存している)。
これは、ショット粒の平均粒径が大きいと、ショットブラスト後の鋼板表面が粗くなり、ショット粒が衝突した部分と衝突しなかった部分の差が大きくなることが原因であると考えられる。
【0045】
一方、ショット粒の平均粒径の小さい本発明例B2の場合、断面プロフィールは比較的均一であり、全域で深さ5μm程度である。
これは、ショット粒の平均粒径が小さいと、鋼板表面全体に均一にショット粒が衝突し、ショットブラスト後の鋼板表面が均一にならされるためと考えられる(このことは、鋼板表面のPPIの値が大きくなることに相当する)。例えば、ショット粒の平均粒径が半分になると、同一投射重量で比較すると、ショット粒の個数は8倍になるため、鋼板表面に衝突するショット粒の個数が著しく増大するのである。
【0046】
以上のように、従来よりも、ショット粒の平均粒径を小さくすることにより、鋼板表面全体に均一にショット粒を衝突させることができ、酸洗による脱スケールが均一に進行するようにできる。これにより、従来よりも、ショットブラストライン、酸洗ラインなどでのステンレス鋼帯の通帯速度、すなわち、生産性を大幅に向上できるのである。
次に、脱Cr層の溶解について示す。実験には、実験1同様の表1に示す化学組成のSUS430サンプルを用いた。SUS430は、表面の白色度、耐食性が要求される場合が多い。実験1同様の遠心投射機を用い、表6に示す各条件でショットブラスト処理を施した。ショット粒には、平均粒径0.45mm、0.28mm、0.18mmの3種を用いた。その後、(20mass%、80℃の硫酸にて40sec)+(15mass%硝酸+3mass%弗酸、80℃の混酸にて20sec)の酸洗、あるいは、(20mass%、80℃の硫酸にて60sec)+(15mass%硝酸+3mass%弗酸、80℃の混酸にて30sec)の酸洗を施した。ショットブラスト前後の重量測定、酸洗前後の重量測定により、それぞれの脱スケール量を求めた。
【0047】
さらに、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の耐食性を評価するため、塩水噴霧による加速腐食試験を行った。試験は、塩水噴霧(40℃,1Hr)+乾燥(60℃,2Hr)+湿潤(40℃,2Hr)を1サイクルとし、これを30サイクル繰り返し、試験後のサンプルの腐食状況により、耐食性を評価した。耐食性は、図6を参考に目視判定でA(ほとんど腐食していない)、B(やや腐食している)、C(著しく腐食している)の3段階で評価した。
【0048】
表6に得られた結果を併せて示す。
【0049】
【表6】


本発明例では、従来例に比べ、優れた耐食性を示すことが明らかである。また、注目すべきは、従来例では、硫酸での酸洗時間60sec、混酸での酸洗時間30secと酸洗時間が長く、ショットブラスト処理と酸洗の脱スケール量合計が多い場合も、耐食性評価はBであるのに対し、本発明の好適な例では、硫酸での酸洗時間40sec、混酸での酸洗時間20secと酸洗時間が短く、脱スケール量合計が少ない場合も、耐食性評価がAと優れた耐食性を示すことである。
【0050】
この理由については、前述した脱スケールの場合と同様に、脱Cr層の溶解の場合も、ショットブラスト処理後の表面粗さ、ショット粒が衝突した部分の均一性が影響していると考えられる。すなわち、ショット粒の平均粒径が大きい場合、酸による地鉄溶解が深さ方向に不均一に進行するため、脱スケール量が多い場合も、部分的に脱Cr層が残存し、耐食性を悪化させていると推定される。これに対し、ショット粒の平均粒径が小さい場合、酸による地鉄溶解が深さ方向に均一に進行するため、脱スケール量が少ない場合も、脱Cr層を完全に溶解でき、優れた耐食性を得ることができたと推定される。
【0051】
このように、平均粒径の小さいショット粒を用いることにより、ショットブラスト処理と酸洗での脱スケール量が少ない場合も、優れた耐食性を得ることができる。特に、酸洗での脱スケール量で比較すると、例えば、従来例a4(硫酸での酸洗時間60sec、混酸での酸洗時間30sec)では、耐食性評価がBであり、酸洗脱スケール量は94.3g/m2であるのに対し、本発明の好適な例b2、b3(硫酸での酸洗時間40sec、混酸での酸洗時間20sec)では、耐食性評価がAであり、酸洗脱スケール量はそれぞれ、68.9g/m2、71.5g/m2である。以上示したように、平均粒径の小さいショット粒を用いることにより、同程度の耐食性を得る際に、酸で溶解すべきスケール、及び、地鉄の重量を少なくすることができる。これにより、酸洗速度、ひいては、生産性を向上することができるとともに、廃酸処理の低減や、スラッジなどの発生を抑制することもでき、環境負荷軽減の観点からも有効である。
【0052】
すなわち、本発明者らは、ステンレス熱延鋼帯の酸洗、特に耐食性が要求され、脱Cr層の溶解が重要であるステンレス熱延鋼帯の酸洗において、平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満のショット粒を用いてショットブラスト処理することにより、酸によるスケール、及び、地鉄の溶解が深さ方向に均一に進行するため、従来に比べ短い酸洗時間の場合も、スケールの除去を完了できるとともに、従来以上の耐食性を得ることができることを知見し、本発明を完成させた。
【0053】
以下に、本発明の要件を規定した理由について述べる。
本発明において、ショット粒の平均粒径を0.30mm未満に限定したのは、ショット粒の平均粒径が0.30mm以上の場合、酸洗後のステンレス熱延鋼帯の表面粗さを細かくする作用が顕著に現れないからである。さらに、酸による溶解が深さ方向に均一に進行する作用が顕著に得られず、生産性の向上などに有効でないためである。
【0054】
また、ショット粒の平均粒径を0.05mm以上に限定したのは、ショット粒の平均粒径が0.05mm未満の場合、発生するスケールの微粉を分別するのが困難になるからである。この場合、ショット粒の再利用が困難になる。
ショットブラスト処理後、酸洗する際の酸の種類であるが、表面の白色度、光沢度、あるいは、耐食性が要求される場合、硫酸と混酸(硝酸+弗酸)を用いるのが好ましい。そうでない場合、硫酸のみ、あるいは、硫酸と硝酸でも良い。あるいは、普通鋼の酸洗ラインとの共用を考慮した場合、塩酸を用いても良い。以上のように、本発明は、ショットブラスト処理後の酸洗の際の酸の種類を特に限定するものではない。
【0055】
ショット粒の投射速度を45m/sec以上に限定したのは、投射速度が45m/sec未満の場合、ショット粒がスケールに衝突する際の衝突エネルギーが小さく、スケールにクラックが入り難いため、酸洗の際、酸の浸透を促進する効果が小さいためである。
また、本発明において、ショット粒の投射速度が60m/sec以上の場合を好適としたのは、ショットブラスト処理による脱スケール量を増大することができ、また,酸による深さ方向均一溶解の顕著な促進を図ることができるため、生産性の向上に有効であるためである。
【0056】
一方、ショットブラスト処理を行う装置の機械設備上の剛性などの観点から、100m/secを超える投射速度は、実現困難であるため、投射速度は100m/sec以下とするのが好ましい。しかし、仮に投射速度が100m/secを超えたとしても、別段、問題が生じるわけではない。
ショット粒の投射密度を30kg/m2以上に限定したのは、投射密度が30kg/m2未満の場合、脱スケール量を十分に確保できず、生産性を維持、さらには、生産性を向上することができないからである。なお、投射密度の上限は特に規定するものではないが、通帯速度やショット粒の投射重量から、200kg/m2を上限とするのが好ましい。
【0057】
しかし、仮に投射密度が200kg/m2を超えたとしても、別段、問題が生じるわけではない。
ステンレス熱延鋼帯の表面粗さRaを1.0μm以上に限定したのは、本発明の方法で、1.0μm未満のRaを得ることは困難だからである。また、ステンレス熱延鋼帯の表面粗さRaを2.0μm以下に限定したのは、2.0μmを越えると、その後に冷間圧延した場合に、ステンレス冷延鋼帯の光沢度の向上に有効でないからである。
【0058】
また、PPIを180以上に限定したのは、PPIが180未満の場合、酸洗での脱スケール、脱Cr層溶解を十分に促進できないからである。
なぜなら、PPIが大きいほど、スケールへのショット粒の衝突が多いこと、すなわち、スケールに入ったクラックの数が多いことを意味し、ショット粒の平均粒径が0.05mm以上0.30mm未満の場合、ステンレス熱延鋼帯表層のスケールに、多くのクラックを入れ、酸洗での脱スケール、脱Cr層溶解を促進するためには、180以上のPPIが必要であり、PPIが180未満では、クラックの数が十分でなく、酸洗での脱スケール、脱Cr層溶解の促進が十分に促進できないからである。また、PPIを300以下に限定したのは、本発明の方法で、300を超えるPPIを得ることは困難だからである。
【0059】
なお、ショットブラスト処理後の鋼板表面のRa、PPIの数値と、さらに酸洗を施した後の鋼板表面のRa、PPIの数値はほぼ等しい。
【実施例1】
【0060】
表1に示す化学成分であり、熱間圧延後、箱型の焼鈍炉にて焼鈍した、板厚3mmのSUS430熱延鋼帯を用いた。図7に示すステンレス熱延鋼帯の酸洗ライン100にて、平均粒径0.5mm、及び、0.2mmのスチールショットにて、投射速度45m/sec、投射距離1200mm、投射密度30kg/m2の条件でショットブラスト処理を行った後、60℃、20mass%の硫酸を満たした硫酸槽、60℃の混酸(硝酸15mass%+弗酸3mass%)を満たした混酸槽にステンレス熱延鋼帯を通帯して浸漬することで酸洗を行い、酸洗した熱延鋼帯とした。各実験材の通板速度は表7に記載の通りとした。また、スケール残りのなかったステンレス熱延鋼帯については、引き続き、5パスの冷間圧延を行い、ステンレス冷延鋼帯とした。
【0061】
ちなみに、図7に示すステンレス熱延鋼帯の酸洗ライン100中、1は払出し機、2は溶接機、3は入側ルーパー、4はショットブラスト設備、5は酸洗槽、6は出側ルーパー、7は巻取り機を示し、酸洗槽5は、硫酸を満たした酸洗槽5aと、混酸を満たした酸洗槽5bから構成される。
なお、図7に示した酸洗ライン100は、一般的な酸洗ラインを示したものであり、本実施例では、それを用いて酸洗したが、本発明は、これに限らず、焼鈍ライン、圧延ラインと連続した酸洗ラインにて実施しても良い。また、ショットブラストラインと酸洗ラインがそれぞれ独立のラインであっても良い。
【0062】
また、本発明は、メカニカルスケールブレーカーや研削ブラシなどショットブラスト処理以外の機械的脱スケールを併用することも、これを妨げる趣旨のものではないため、これらを行う設備を併設しても良い。
得られた酸洗後のステンレス熱延鋼帯について、長手方向全長の表裏面について、スケール残りの有無を確認した。また、スケール残りのなかったステンレス熱延鋼帯については、同鋼帯表面の長手方向中央部、幅方向中央部より採取したサンプルについて、前述同様のRa、PPIの測定、及び、耐食性の評価を行った。さらに、ステンレス冷延鋼帯については、同鋼帯表面の長手方向中央部、幅方向中央部からサンプルを採取し、JIS Z 8741に準拠して同鋼帯の光沢度(GS45゜)を測定した。
【0063】
得られた結果を表7に併せて示す。
【0064】
【表7】


いずれの平均粒径のショット粒においても、酸洗速度が40m/minの場合、わずかにスケール残りが観察され、酸洗速度が30m/minの場合、スケール残りは全く認められなかった。すなわち、いずれの平均粒径のショット粒の場合も、酸洗ラインでの脱スケール能力は同等であると言える。脱スケール能力が同等なのは、ショット粒の投射速度が45m/secと低いことが影響していると考える。
【0065】
一方、ステンレス熱延鋼帯の表面粗さ、ステンレス冷延鋼帯の光沢度を比較すると、本発明例である粒径0.2mmのショット粒を用いた場合の方が、表面粗さ、光沢度、耐食性とも優れていることが分かる。
図8に従来例であるNo.22、及び、本発明例であるNo.24の熱延鋼帯表面の3次元的な粗さのようすを示す。これより、本発明例では、従来例に比べ、表面粗さが格段に細かく、また、PPIが大きいことが分かる。
【実施例2】
【0066】
表1に示す化学成分を有し、熱間圧延後、箱型の焼鈍炉にて焼鈍した、板厚3mm、板幅1200mmのSUS430熱延鋼帯を実験材として用いた。図7に示すステンレス熱延鋼帯の酸洗ラインにて、平均粒径0.4mm、及び、0.2mmのスチールショットを用い、表8に示す投射条件にて、投射距離1200mmでショットブラスト処理を行った後、60℃、20mass%の硫酸を満たした硫酸槽、60℃の混酸(硝酸15mass%+弗酸3mass%)を満たした混酸槽に上記SUS430のステンレス熱延鋼帯を通帯して浸漬することで酸洗を行い、酸洗した熱延鋼帯とした。各実験材の通帯速度は、表8に示すように、段階的に上昇させていき、スケール残りなく酸洗可能な通帯速度を調査した。
【0067】
得られたSUS430のステンレス熱延鋼帯の長手方向全長表裏面について、スケール残りの有無を確認した。また、スケール残りの無かったものについては、同鋼帯の長手方向中央部、幅方向中央部より採取したサンプルについて、前述のRa、PPIの測定、及び、耐食性の評価を行った。
得られた結果を表8に併せて示す。
【0068】
【表8】


ショット粒の平均粒径が0.4mmの場合、投射密度、あるいは、投射速度を大きくすることにより、スケール残り無く酸洗可能な通帯速度を高くすることができ、生産性を確保すること可能となる。しかしながら、この場合、同鋼帯の表面粗さは著しく低下するため、表面品質の確保が重要なステンレス冷延鋼帯用には、好ましくない。これに対し、本発明例の好適な例である、ショット粒の平均粒径0.2mm、ショット粒の投射速度が60m/sec以上の場合、従来例に比べ、表面粗さは細かく、耐食性も良好であると同時に、スケール残りなく高速で酸洗することができるため、生産性の向上が可能となる。
【0069】
具体的には、従来例31の場合、酸洗速度が最高30m/minまでスケール残りなく酸洗可能であり、この条件では、耐食性評価B、表面粗さRa=2.9μmであるのに対し、本発明の好適な例40の場合、酸洗速度が最高50m/minまでスケール残りなく酸洗可能であり、この条件では、耐食性評価B、表面粗さRa=1.8μmと、従来例以上の表面品質、耐食性であることが分かる。
【0070】
以上のように、本発明によれば、従来と同等以上の表面品質を確保した上で、生産性の向上も可能である。
【実施例3】
【0071】
表4に示す化学成分を有し、熱間圧延後、箱型の焼鈍炉にて焼鈍した、板厚4mm、板幅1400mmのSUH409熱延鋼帯を実験材として用いた。図9に示すショットブラストラインにて、熱延鋼帯を矢示の通帯方向に沿って種々の速度で通帯しながらショットブラスト処理を施した。この後、同熱延鋼帯を、種々の速度で、図10に示す酸洗ラインに、5、10、15mass%、80℃の塩酸の各条件下で通帯した。
【0072】
通帯後の熱延鋼帯について、表裏面のスケール残りの有無を調査した。また、スケール残りの無かった条件については、同鋼帯の長手方向中央部、幅方向中央部よりサンプルを採取し、前述同様にRa(3)、PPIを測定した。
ショットブラストラインには、OP(オペレータ)側上面、DR(ドライブ)側上面、OP側下面、DR側下面にそれぞれ2台の遠心式投射装置を備えており、それぞれ1000kg/minの投射量とした。投射速度は70m/sec、投射距離は1200mmとした。また、ショット粒には、平均粒径0.50mm、及び、0.20mmのスチール製ショット粒を用いた。
【0073】
なお、図9、図10に示したショットブラストライン、酸洗ラインは、一般的なライン構成を示したものであり、本発明を適用できる対象は、これらに限るものではなく、例えば、ショットブラストと酸洗を連続化したラインでもよく、あるいは、焼鈍ラインや圧延ラインとの連続ラインであってもよい。また、形状矯正のためのテンションレベラやメカニカルスケールブレーカーなどを併設してもよい。
【0074】
得られた結果を、ショットブラストライン通帯速度、酸洗ライン通帯速度とともに表9に示す。
【0075】
【表9】


従来例であるショット粒の平均粒径が0.50mmの場合、例Aに示すように、酸洗ライン通帯速度を80m/minまで高速化するためには、ショッブラストトラインの通帯速度を12m/min以下にする必要があり、例Bに示すように、酸洗ラインの通帯速度を40m/minまで高速化するためには、ショットブラストラインの通帯速度は20m/min以下にする必要があることがわかる。
【0076】
これに対し、本発明例であるショット粒の平均粒径が0.20mmの場合、例Dに示すように、酸洗ラインの通帯速度を80m/minまで高速化し、ショットブラストラインの通帯速度を60m/minまで高速化した場合でも、スケール残りを生じないことが分かる。また、表面品質のさほど厳しくない機能品のSUH409のため必須ではないが、本発明例に相当する各例の方が、従来例に比べ、表面粗さRa(3)が小さく、PPIの値も大きく、優れた表面品質も得られていることがわかる。
【0077】
なお、本発明の適用範囲は、ステンレス熱延鋼帯に限らず、普通鋼でもスケールが緻密であり、難酸洗鋼種である高張力鋼熱延鋼帯、あるいは、同様にスケールが緻密な電磁熱延鋼帯などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ショット粒の平均粒径とステンレス鋼帯の表面粗さの関係を示す図である。
【図2】ショット粒の平均粒径と、ショットブラスト処理、酸洗での脱スケール量の関係を示す図である。
【図3】ショットブラスト処理による脱スケール量と表面粗さの関係を示す図である。
【図4】本発明に至る実験の方法について説明するための図である。
【図5】ショットブラスト処理、酸洗後の断面プロフィールを従来例と本発明例で比較して示す図である。
【図6】加速腐食試験の結果から、耐食性を評価する際の参考である。
【図7】ステンレス熱延鋼帯の酸洗ラインの概要を示す図である。
【図8】従来例と本発明例の酸洗後のステンレス熱延鋼帯表面の3次元的な粗さのようすを比較して示す図である。
【図9】ショットブラストラインの概要を示す図である。
【図10】酸洗ラインの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 払出し機
2 溶接機
3 入側ルーパー
4 ショットブラスト設備
5 酸洗槽
6 出側ルーパー
7 巻取り機
10 サンプル
11 マスキング
12 断面プロフィール測定方向
100 ステンレス熱延鋼帯の酸洗ライン




 

 


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