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発明の名称 極低炭素鋼の溶製方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−31807(P2007−31807A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−220250(P2005−220250)
出願日 平成17年7月29日(2005.7.29)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 小柳 貴幸 / 田中 芳幸 / 朝比奈 健
要約 課題
転炉での脱炭精錬によって得た溶鋼を、真空脱ガス設備の大気圧よりも低い減圧下において脱炭精錬して極低炭素鋼を溶製するに当たり、減圧下での脱炭精錬を迅速に行うことができると同時に、炭素濃度の極めて低い溶鋼を溶製することのできる極低炭素鋼の溶製方法を提供する。

解決手段
転炉における脱炭精錬によって得た溶鋼を、真空脱ガス設備の大気圧よりも低い減圧下において脱炭精錬して極低炭素鋼を溶製するに際し、前記真空脱ガス設備における脱炭精錬開始前の溶鋼の炭素濃度が0.02〜0.06質量%の範囲で、溶鋼の溶存酸素濃度が0.04質量%以上であり、且つ、該溶存酸素濃度と前記炭素濃度との比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34以上になるように予め溶鋼の成分を調整するとともに、真空脱ガス設備では減圧下の溶鋼に酸素ガスを供給せずに脱炭精錬する。
特許請求の範囲
【請求項1】
転炉における脱炭精錬によって得た溶鋼を、真空脱ガス設備の大気圧よりも低い減圧下において脱炭精錬して極低炭素鋼を溶製するに際し、前記真空脱ガス設備における脱炭精錬開始前の溶鋼の炭素濃度が0.02〜0.06質量%の範囲で、溶鋼の溶存酸素濃度が0.04質量%以上であり、且つ、該溶存酸素濃度と前記炭素濃度との比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34以上になるように予め溶鋼の成分を調整するとともに、真空脱ガス設備では減圧下の溶鋼に酸素ガスを供給せずに脱炭精錬することを特徴とする、極低炭素鋼の溶製方法。
【請求項2】
前記転炉における脱炭精錬の末期に、転炉内に供給する酸素ガスの供給流量を低下する、上吹き酸素ランスの高さ位置を上昇する、転炉内溶鋼の攪拌強度を低下する、のうちの何れか1つの対策または何れか2つ以上の対策を実施して、前記溶存酸素濃度を調整することを特徴とする、請求項1に記載の極低炭素鋼の溶製方法。
【請求項3】
前記転炉から取鍋への溶鋼の出鋼時に出鋼流に向けて酸素ガスを吹き付ける、出鋼後の取鍋内の溶鋼に酸素ガスを吹き込む、のうちの何れか1つの対策または双方の対策を実施して、前記溶存酸素濃度を調整することを特徴とする、請求項1に記載の極低炭素鋼の溶製方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉における脱炭精錬によって得た溶鋼に、真空脱ガス設備の大気圧よりも低い減圧下において再度脱炭精錬を施して、極低炭素鋼を溶製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車外装用薄鋼板、缶用薄鋼板、家庭電化製品用薄鋼板など、多くの用途に使用されている薄鋼板に対して、年々その加工性の向上がユーザーから要求されている。一方、製造過程においては、冷間圧延後の薄鋼板に施される焼鈍は、従来のバッチ焼鈍から連続焼鈍へと急速に転換されている。このような状況から、薄鋼板用の鋼は、炭素含有量が0.01〜0.1質量%の低炭素鋼から、炭素含有量が0.01質量%以下の加工性に優れた極低炭素鋼に急激に転換されつつある。
【0003】
高炉で溶製された溶銑から極低炭素鋼を溶製するには、先ず、転炉で溶銑に脱炭精錬を施して溶銑から溶鋼を溶製し、次いで、この溶鋼に真空脱ガス設備による減圧下での脱炭精錬を施して溶製している。これら溶鉄及び溶鋼の脱炭反応は、下記の(1)式によって表され、この脱炭反応の平衡定数Kは下記の(2)式及び(3)式によって表されることが知られている。尚、(2)式において、PCOはCOガスの分圧、aC は炭素の活量、aO は酸素の活量、[%C]は溶鋼中の炭素濃度(質量%)、[%O]は溶鋼中の酸素濃度(質量%)であり、(3)式におけるTは絶対温度(K)である。また、ここに示す酸素は、溶銑或いは溶鋼に溶解した状態の酸素であり、溶存酸素または溶解酸素と呼ばれている。
【0004】
【数1】


【0005】
これらの(1)式〜(3)式からも明らかなように、脱炭反応によって生成するCOガス分圧(PCO)が1気圧(1013hPa)の状態では、換言すれば転炉における大気圧下での脱炭精錬では、炭素濃度を0.01質量%以下にまで脱炭しようとする場合には、溶存酸素濃度をおよそ0.24質量%以上にする必要がある。溶存酸素をこのような高い濃度レベルにすると、鉄の酸化が激しくなり、転炉における鉄歩留まりは大幅に低下してしまう。また、供給する酸素と鉄とが反応して鉄酸化物が形成されることから、転炉において溶存酸素濃度をこのような高い濃度にすることは、実際には極めて困難である。
【0006】
そこで、極低炭素鋼を溶製する場合には、前述したように脱ガス設備を利用し、生成するCOガス分圧(PCO)を下げ、上記(1)式の反応を進行させている。この場合には、溶存酸素濃度を過剰に高くしなくても上記(1)式の反応は進行する。
【0007】
このように、脱ガス設備における溶鋼の脱炭精錬では、溶存酸素を有する溶鋼を減圧下に曝せば(1)式に示す脱炭反応が進行するが、脱炭反応を促進させるために、例えばRH真空脱ガス装置においては、浸漬管口径の拡大、環流用Arガス吹き込み量の増大などの溶鋼の環流量を増大させる対策が実施されていた(例えば特許文献1参照)。しかしながら、浸漬管口径を拡大した場合には、浸漬管の寿命が短くなり、また、環流用Arガスの吹き込み量を増大した場合には、スプラッシュの発生が激しく、真空槽内でのスプラッシュの付着により操業性が損なわれるなどといった問題があった。
【0008】
そこで、これらの問題を解決するために、真空槽内に設置した上吹きランスから酸素ガスを減圧下の溶鋼湯面に向けて吹き付けて、脱炭精錬する方法が提案された(例えば特許文献2参照)。酸素ガスを供給することにより、溶鋼中の溶存酸素が確保され、脱炭反応は促進される。また、脱炭反応により生成するCOガスが、上吹きランスから供給される酸素ガスによって燃焼してCO2 ガスとなり、この燃焼熱によってスプラッシュの付着が抑制されるという効果も発揮される。
【0009】
しかしながら、近年の高生産性を目的とする操業形態においては、特許文献2の方法でも問題のあることが分かった。つまり、酸素ガスを減圧下の溶鋼湯面に供給する必要があることから、雰囲気圧力の真空度が余り高くならないという点である。酸素ガスの供給を必要としない脱炭精錬の末期でも、スプラッシュによる上吹きランス噴射孔の閉塞を防止するために不活性ガスをパージ用ガスとして連続的に供給する必要があり(例えば特許文献3参照)、特に、脱炭速度が遅くなる脱炭精錬末期において所望する真空度が得られず、脱炭速度が遅くなり、処理時間が延長する、或いは、脱炭精錬終了時の炭素濃度が極限まで低下しないといった問題が発生した。
【特許文献1】特開昭58−11721号公報
【特許文献2】特開平1−246314号公報
【特許文献3】特開平7−316634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉における大気圧下での脱炭精錬によって得た溶鋼を、真空脱ガス設備の大気圧よりも低い減圧下において脱炭精錬して極低炭素鋼を溶製するに当たり、減圧下での脱炭精錬を迅速に行うことができると同時に、炭素濃度の極めて低い溶鋼を溶製することのできる極低炭素鋼の溶製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の発明に係る極低炭素鋼の溶製方法は、転炉における脱炭精錬によって得た溶鋼を、真空脱ガス設備の大気圧よりも低い減圧下において脱炭精錬して極低炭素鋼を溶製するに際し、前記真空脱ガス設備における脱炭精錬開始前の溶鋼の炭素濃度が0.02〜0.06質量%の範囲で、溶鋼の溶存酸素濃度が0.04質量%以上であり、且つ、該溶存酸素濃度と前記炭素濃度との比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34以上になるように予め溶鋼の成分を調整するとともに、真空脱ガス設備では減圧下の溶鋼に酸素ガスを供給せずに脱炭精錬することを特徴とするものである。
【0012】
第2の発明に係る極低炭素鋼の溶製方法は、第1の発明において、前記転炉における脱炭精錬の末期に、転炉内に供給する酸素ガスの供給流量を低下する、上吹き酸素ランスの高さ位置を上昇する、転炉内溶鋼の攪拌強度を低下する、のうちの何れか1つの対策または何れか2つ以上の対策を実施して、前記溶存酸素濃度を調整することを特徴とするものである。
【0013】
第3の発明に係る極低炭素鋼の溶製方法は、第1の発明において、前記転炉から取鍋への溶鋼の出鋼時に出鋼流に向けて酸素ガスを吹き付ける、出鋼後の取鍋内の溶鋼に酸素ガスを吹き込む、のうちの何れか1つの対策または双方の対策を実施して、前記溶存酸素濃度を調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、真空脱ガス設備における脱炭精錬の前までに、溶鋼中の炭素濃度を0.02〜0.06質量%の範囲とし、同時に、溶鋼中の溶存酸素濃度を、0.04質量%以上で且つ溶鋼中の炭素濃度に応じて溶存酸素濃度と炭素濃度との比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34以上になるように調整するので、真空脱ガス設備における脱炭反応に必要な酸素は溶存酸素として確保され、真空脱ガス設備では外部から酸素ガスを供給する必要がなく、また、酸素ガスを供給する必要がないことから酸素ガス供給用上吹きランスのパージ用ガスも自ずと必要とせず、従って、減圧雰囲気の真空度を設備の上限値にまで高めることができる。その結果、真空脱ガス設備における脱炭速度が促進され、短時間で脱炭精錬を完了することができると同時に、炭素濃度の極めて低い溶鋼を溶製することが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
高炉から出銑された溶銑をトーピードカーや溶銑鍋などの溶銑保持・搬送用容器で受銑し、大気圧下で脱炭精錬を行う次工程の転炉に搬送する。この搬送途中で、予備脱硫処理や予備脱燐処理などの溶銑予備処理が施されることもあるが、本発明においては実施しても実施しなくても、どちらでも構わない。
【0017】
転炉における溶銑の脱炭精錬は、生石灰などを媒溶剤として用いた通常の精錬を実施する。但し、この媒溶剤の添加量は、溶銑の予備脱燐処理に応じて設定する。即ち、予備脱燐処理によって溶銑中燐濃度が極低炭素鋼鋼材の製品レベルまで低下している場合には生石灰の添加量を少なくし、溶銑中燐濃度が高い場合には生石灰の添加量を多くする。そして、脱炭用の酸素ガスを上吹きまたは底吹き、若しくは上底吹きして、脱炭精錬を行う。また、転炉底部に設けた羽口から攪拌用ガスを吹き込んで、炉内の溶銑或いは溶鋼を攪拌する。
【0018】
転炉における脱炭精錬終了時の溶鋼中炭素濃度は、0.02〜0.06質量%とする。0.02質量%未満まで脱炭精錬した場合には、鉄及びマンガンの酸化が著しくなり、鉄及びマンガンの歩留まりが低下して製造コストの上昇を招くので好ましくない。一方、脱炭精錬終了時の溶鋼中炭素濃度が0.06質量%を超える場合には、次工程の真空脱ガス設備における脱炭精錬の負担が重くなり、処理時間が延長するなどして製造コストの上昇を招くので好ましくない。脱炭精錬終了時の溶鋼中炭素濃度の前記成分範囲への調整は、転炉内への脱炭用酸素ガスの供給量の調整によって実施する。
【0019】
また、本発明では、次工程の真空脱ガス設備における脱炭精錬(「真空脱炭精錬」とも記す)の開始時には、溶鋼中の溶存酸素が0.04質量%以上であり、且つ、溶存酸素濃度と溶鋼中の炭素濃度との比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が溶鋼中炭素濃度に応じて1.34以上になるように調整する必要がある。つまり、高い濃度の溶存酸素を確保する必要がある。溶鋼中の溶存酸素濃度が0.04質量%未満では、溶存酸素濃度が低いために脱炭速度が遅く、処理時間が長くなり、好ましくない。また、比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34未満の場合には、酸素と炭素との化学当量的に酸素が不足し、数ppm程度の極めて低い濃度までは脱炭できないことから好ましくない。
【0020】
溶存酸素濃度の調整は、次のようにして実施する。1つの方法は、転炉における脱炭精錬末期に、意図的に溶存酸素濃度が高くなるような操業を実施する方法である。転炉脱炭精錬において、脱炭用酸素ガスの供給流量を低下した操業或いは供給圧力を低下した操業、所謂「ソフトブロー」の操業では、溶鋼中の炭素と供給する酸素との反応が遅れ、換言すれば脱炭酸素効率が低下して、供給した酸素ガスのうちで鉄の酸化反応に費やされる酸素ガスが多くなり、溶存酸素濃度が上昇することが知られている。つまり、溶鋼中の溶存酸素濃度を意図的に上昇させることが可能であることが知られている。従って、脱炭精錬末期をソフトブロー操業とするために、転炉内に供給する脱炭用酸素ガスの供給流量を低下する、或いは、上吹き酸素ランスの高さ位置(「ランス高さ」という)を上昇させる。脱炭用酸素ガスの供給流量を低下することにより、上吹き酸素ジェットの噴出速度が低下して脱炭酸素効率が低下し、同様に、ランス高さを大きくすることで、上吹き酸素ジェトの減衰が大きくなり、脱炭酸素効率が低下する。また、転炉脱炭精錬の末期に、溶鋼攪拌用の攪拌用ガス流量を低下することによっても、溶存酸素濃度を高くすることができる。これは、溶鋼の攪拌を弱くすることで溶鋼中炭素の反応サイトへの移動が遅れ、脱炭反応が阻害されて鉄の酸化が増加するためである。
【0021】
溶存酸素濃度を調整する他の1つの方法は、転炉で精錬された溶鋼に酸素ガスを供給して溶存酸素濃度を強制的に上昇させる方法である。この方法としては、例えば、転炉から取鍋に出鋼される出鋼流に向けて酸素ガスを吹き付け、吹き付けた酸素ガスを溶鋼中に溶解させる方法や、出鋼後の取鍋内の溶鋼に吹き込みランスなどを介して酸素ガスを吹き込み、吹き込んだ酸素ガスを溶鋼中に溶解させる方法を用いることができる。
【0022】
これらのうちの何れか1つの方法、或いは、複数の方法の組み合わせによって、溶存酸素濃度を0.04質量%以上で、且つ溶鋼中の炭素濃度に応じて溶存酸素濃度と炭素濃度との比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34以上になるように調整する。転炉内で調整する場合には、転炉からの出鋼時の溶鋼温度の低下に起因して溶存酸素濃度が低下することもあるので、この点に留意して溶存酸素濃度を調整する。
【0023】
転炉での脱炭精錬終了後、溶鋼を転炉から取鍋に出鋼する。出鋼時、溶鋼に巻き込まれて炉内スラグの一部が取鍋内に流出し、取鍋内の溶鋼上に滞留する。取鍋内に滞留するスラグは次工程の真空脱ガス設備における脱酸処理後に溶鋼中のAlなどの脱酸剤と反応して溶鋼の清浄性を損なうこともあるので、スラグ中に金属Alなどのスラグ改質剤を取鍋上方から添加してスラグを脱酸してもよい。尚、本発明においては、出鋼時、AlやSiなどの強脱酸元素による脱酸処理は当然ながら実施しない。
【0024】
次いで、溶鋼を収容した取鍋を真空脱ガス設備に搬送し、真空脱ガス設備において真空脱炭精錬を実施する。溶鋼を処理する真空脱ガス設備としてはRH真空脱ガス装置が広く使用されているので、RH真空脱ガス装置を使用した例で本発明を説明する。
【0025】
図1に、本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の例を縦断面概略図で示す。図1に示すように、RH真空脱ガス装置1は、上部槽6及び下部槽7からなる真空槽5と、下部槽7の下部に設けられた上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9とを備え、上部槽6には、排気装置(図示せず)と接続するダクト11と原料投入口12とが備えられ、また、上昇側浸漬管8には環流用ガス吹込管10が設けられている。環流用ガス吹込管10からは環流用ガスとしてArガスが上昇側浸漬管8の内部に吹き込まれる構造となっている。
【0026】
このように構成されているRH真空脱ガス装置1において、先ず、溶鋼3を収納する取鍋2を真空槽5の直下に搬送し、取鍋2を昇降装置(図示せず)によって上昇させ、上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9を取鍋2に収容された溶鋼3に浸漬させる。次いで、環流用ガス吹込管10から上昇側浸漬管8の内部にArガスを環流用ガスとして吹き込むとともに、真空槽5の内部をダクト11に連結される排気装置にて排気して真空槽5の内部を減圧する。真空槽5の内部が減圧されると、取鍋2に収容された溶鋼3は、環流用ガス吹込管10から吹き込まれるArガスとともに上昇側浸漬管8を上昇して真空槽5の内部に流入し、その後、下降側浸漬管9を介して取鍋2に戻る流れ、所謂、環流を形成してRH真空脱ガス精錬が施される。
【0027】
溶鋼3の環流が形成され、溶鋼3が真空槽5の減圧雰囲気に曝されると、前述した(2)式におけるPCOが大気圧下で実施した転炉脱炭精錬時に比べて大幅に小さくなり、溶鋼中の炭素と溶存酸素との反応が発生する。つまり、脱炭反応が発生し、溶鋼3に含まれる炭素はCOガスとなって排ガスとともに真空槽5からダクト11を介して排出され、溶鋼3に真空脱炭精錬が施される。この場合に、溶鋼3は脱炭反応に必要な酸素を溶存酸素として有しているため、真空槽5を環流する溶鋼3に酸素ガスのみならず、鉄鉱石などの固体酸素源を添加しなくても、極低炭素域まで脱炭することができる。
【0028】
このようにして真空脱炭精錬を継続し、溶鋼3の炭素濃度が0.01質量%以下の所定の値となったなら、原料投入口12から溶鋼3にAlなどの脱酸剤を添加して溶鋼3を脱酸処理する。Alなどの脱酸剤の添加により溶鋼3の溶存酸素は急激に減少し、脱炭反応が終了する。Alなどの脱酸剤を添加した後、溶鋼3の清浄性を確保するために、必要に応じて、溶鋼3の上に存在するスラグ4に金属Alなどからなるスラグ改質剤を添加してもよい。
【0029】
そして、脱酸剤添加後も更に数分間程度の環流を継続し、必要に応じてAl、Si、Mn、Nb、Ti、V、Bなどの成分調整剤を原料投入口12から溶鋼3に投入して溶鋼3の成分を調整する。成分調整後、真空槽5を大気圧に戻してRH真空脱ガス精錬を終了する。
【0030】
以上説明したように、本発明では、RH真空脱ガス装置1における脱炭精錬の前までに、溶鋼中の炭素濃度を0.02〜0.06質量%の範囲とし、同時に、溶鋼中の溶存酸素濃度を、0.04質量%以上で且つ溶鋼中の炭素濃度に応じて溶存酸素濃度と炭素濃度との比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34以上になるように調整するので、RH真空脱ガス装置1における脱炭反応に必要な酸素は溶存酸素として確保され、RH真空脱ガス装置1では酸素ガスを供給する必要がなく、また、酸素ガスを供給する必要がなくなることから酸素ガス供給用上吹きランスのパージ用ガスも自ずと必要とせず、従って、真空槽5の内部の真空度を設備の上限値にまで高めることができ、その結果、真空脱炭精錬時の脱炭反応が促進され、短時間で真空脱炭精錬を完了することができると同時に、炭素濃度の極めて低い溶鋼を溶製することが可能となる。
【0031】
尚、上記説明はRH真空脱ガス装置1を用いた例で説明したが、本発明はRH真空脱ガス装置1を用いることに限られるものではなく、DH真空脱ガス装置やVAD炉などの他の真空脱ガス設備を用いても、上記に沿って実施することができる。
【実施例1】
【0032】
高炉で溶製した溶銑をトーピードカーで受銑し、トーピードカーで脱燐処理及び脱硫処理の溶銑予備処理を施した後、酸素ガスを上底吹きする転炉に装入して脱炭精錬を実施した。この脱炭精錬の末期、上吹き及び底吹の酸素ガスの供給流量を減少させて、溶鋼中の溶存酸素濃度が0.04質量%以上で且つ比(溶存酸素濃度/炭素濃度)が1.34以上になるように調整した。転炉から取鍋への出鋼後の溶鋼成分は、C:0.02〜0.06質量%、Si:0.05質量%以下、Mn:0.3質量%以下、P:0.02質量%以下、S:0.003質量%以下、溶存酸素濃度は0.04質量%以上で、比(溶存酸素濃度/炭素濃度)は1.34〜2.75であった。
【0033】
この溶鋼を真空槽内の到達真空度が1torr(133Pa)以下である、図1に示すRH真空脱ガス装置に搬送して真空脱炭精錬を施し、極低炭素鋼を溶製した(「本発明例」という)。RH真空脱ガス装置では、酸素ガスも鉄鉱石などの固体酸素源も添加せずに真空脱炭精錬を実施した。この真空脱炭精錬の末期には、真空槽内の真空度は0.25torr程度まで低下した。そして、真空脱炭処理時間(t)と真空脱炭処理前の溶鋼中炭素濃度(Ci)と真空脱炭処理後の溶鋼中炭素濃度(Cf)とから、「脱炭速度=[ln(Ci/Cf)]/t」からなる式で脱炭速度を求めた。
【0034】
また、比較のために、上記と同一の条件で溶製した溶鋼を、上吹きランスの設置されたRH真空脱ガス装置に搬送して真空脱炭精錬を実施し、極低炭素鋼を溶製した(「比較例」という)。この場合、真空脱炭精錬に必要な酸素は溶鋼が溶存酸素として保有していることから、上吹きランスからは酸素ガスを供給しないで真空脱炭精錬を実施したが、上吹きランスのパージ用ガスとしてArガスを700〜900L(標準状態)/分程度上吹きランスから真空槽内に吹き込んだ。比較例においては、真空槽内の真空度は、真空脱炭精錬の末期においても0.5torr程度であった。この比較例においても上記の式を用いて脱炭速度を求めた。
【0035】
その結果、本発明例における脱炭速度の平均値は、比較例における脱炭速度の平均値に比べて約20%向上することが確認できた。つまり、本発明によって、真空脱炭処理時間を約20%短縮することができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を実施する際に用いたRH真空脱ガス装置の縦断面概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1 RH真空脱ガス装置
2 取鍋
3 溶鋼
4 スラグ
5 真空槽
6 上部槽
7 下部槽
8 上昇側浸漬管
9 下降側浸漬管
10 環流用ガス吹込管
11 ダクト
12 原料投入口




 

 


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