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疲労特性に優れた熱間鍛造品およびその製造方法 - JFEスチール株式会社
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発明の名称 疲労特性に優れた熱間鍛造品およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−23321(P2007−23321A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−205166(P2005−205166)
出願日 平成17年7月14日(2005.7.14)
代理人 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作
発明者 木村 秀途 / 上井 清史 / 長谷 和邦 / 豊岡 高明
要約 課題
熱間鍛造工程において組織を適切に制御することにより、回転曲げ疲労強度が400MPa以上という、優れた疲労強度を持つ鍛造品の有利な製造方法について提案する。

解決手段
C:0.3〜0.9mass%、Si:0.01〜1.2mass%およびMn:0.01〜2.0mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材に、複数回の熱間鍛造を施して熱間鍛造品を製造するに際し、最終の鍛造工程において、少なくとも一部には、A点以上A点+100℃以下の温度域の下で複数方向成分の歪を加えること、かつ複数方向成分の2成分以上の歪が各々0.5以上であることとする。
特許請求の範囲
【請求項1】
C:0.3〜0.9mass%、
Si:0.01〜1.2mass%、
Mn:0.01〜2.0mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材に、複数回の熱間鍛造を施して熱間鍛造品を製造するに際し、A点以上A点+100℃以下の温度域の下で複数方向成分の歪を加えること、かつ複数方向成分の2成分以上の歪が各々0.5以上であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、鋼素材がさらに
Mo:0.05〜0.6mass%、
Al:0.01〜0.06mass%、
Ti:0.005〜0.1mass%、
Ni:1.0mass%以下、
Cr:1.0mass%以下、
V:0.3mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Nb:0.5mass%以下、
Ca:0.008mass%以下、
および
B:0.0005〜0.015mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記少なくとも一部が、疲労強度が求められる部位であり、該疲労強度が求められる部位以外の部位のうち、少なくとも冷間加工が施される部位においては、鍛造工程の最終段階の熱間鍛造温度がA点+100℃超であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品の製造方法。
【請求項4】
C:0.3〜0.9mass%、
Si:0.01〜1.2mass%、
Mn:0.01〜2.0mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成を有する鋼材からなる熱間鍛造品であり、疲労強度が求められる部位の平均結晶粒径が10μm以下であり、該疲労強度が求められる部位以外の部位のうち、少なくとも冷間加工が施される部位の平均結晶粒径が12μm以上であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品。
【請求項5】
請求項4において、鋼素材がさらに
Mo:0.05〜0.6mass%、
Al:0.01〜0.06mass%、
Ti:0.005〜0.1mass%、
Ni:1.0mass%以下、
Cr:1.0mass%以下、
V:0.3mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Nb:0.5mass%以下、
Ca:0.008mass%以下、
および
B:0.0005〜0.015mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記少なくとも一部が、疲労強度が求められる部位であり、該疲労強度が求められる部位以外の部位のうち、少なくとも冷間加工が施される部位においては、鍛造工程の最終段階の熱間鍛造温度がA点+100℃超であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、条鋼を用いた疲労特性に優れた熱間鍛造品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の熱間鋳造部品、たとえばホイールハブ、および等速ジョイント等や、産業機械の動力伝達部材等の機械構造部品は、機械構造用炭素鋼や合金鋼に熱間鋳造、または転造加工を行い、その後切削、冷間鍛造などを施して所定の形状に加工し製品とするものであり、これらが適用される自動車の軽量化のために、高疲労強度化が求められている。
従来、疲労強度向上のためには、成分元素の添加、介在物の最大径の最小化と数の減少等が有効であることがわかっている。
【0003】
例えば、上記製品に供する鋼材に関して、Al、N、Ti、ZrおよびS等の各成分を適切に調整した上で、硫化物の最大径を10μm以下、かつ清浄度を0.05mass%以上とすることが、特許文献1に提案されている。
また、特許文献2には、熱間鍛造用の素材として、マルテンサイトを面積率で95〜100%で含有する鋼とすることで、熱間鍛造後に平均結晶粒径が10μm以下のフェライト−パーライトからなる組織の鍛造品を得ることが記載されている。
【特許文献1】特開平11−302778号公報
【特許文献2】特開2003−147481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高価な成分元素を添加し、さらに介在物の最大径を小さくし、且つ介在物の数を減少させても、熱間鍛造後の放冷過程において結晶粒が成長して粗大化し、上記製品に要求される高い疲労強度は得られないという問題があった。また、疲労強度の向上には結晶粒径の微細化が有効であることが知られており、上記特許文献2の技術のように結晶粒径を微細化した鍛造品であれば、疲労強度の向上も期待できるが、特許文献2の方法では、鍛造前の素材の組織をマルテンサイト組織とするものなので、鍛造用の素材の製造工程、特に熱間圧延工程において圧延後の再加熱や、その後の急冷処理が必要となり、生産性に問題がある。さらに、上記のハブや等速ジョイントをはじめとする鍛造品は、鍛造加工後に冷間加工や切削加工を施すことにより最終製品形状に成形されるが、強度上昇の目的で結晶粒径を微細化すると、逆に冷間加工時の必要荷重が上昇し過ぎたり、冷間加工時に割れが発生すると言う問題もある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み開発されたものであり、熱間鍛造工程において組織を適切に制御することにより、例えば部品の経量化、コンパクト化による発生応力の増大から要求される10回の回転曲げ疲労強度が600Mpa以上という、優れた疲労特性を持つ鍛造品の有利な製造方法について提案することを目的とする。また、本発明はさらに、優れた疲労特性を有するとともに、熱間鍛造後に冷間加工を施す際の冷間加工性が良好であり、容易に加工が行える熱間鍛造品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、特に鍛造温度に関して鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
(1)鍛造温度を高温γ域から低下するに従って、加えた歪の大小に関わらず結晶粒径は徐々に小さくなるが、細粒化の程度は飽和するとともに、本発明で所期したほどの疲労強度の向上は望めない。
(2)鍛造温度をA点以下とした場合には、フェライトが延ばされた組織を呈するだけであるから、本発明で所期する疲労強度の向上は勿論望めない。
(3)鍛造温度をA点以上A点+100℃以下の温度域とした場合は、加える歪により組織形態は著しく異なる。歪が小さい場合には、上記(1)と同様の組織および結晶粒径となり、本発明で所期したほどの疲労強度の向上は望めないが、歪が大きい場合は、2通りの組織形態となる。すなわち、歪は大きいが歪成分として単軸方向のみが大きい場合には、砕かれたパーライトとともに上記(2)の如きフェライトが延ばされた形態を示し、A点以下で鍛造した場合と近い組織が得られるため、疲労強度の向上は望めない。しかし、歪が複数方向の成分を有し各成分がともに比較的大きい場合には、結晶粒径は等軸で且つ著しく細かくなり、この状態において初めて疲労強度の格段の向上が発現する。具体的には、複数方向の成分からなる歪が加わるようにするとともに、そのうちの2成分以上の歪が各々0.5以上となるように、鍛造を行った場合に、疲労強度の格段の向上が実現する。
(4)鋼成分にTi、Nb、Vなどの炭化物生成元素を添加し、析出強化により高強度化する場合、(3)の鍛造条件での鍛造で析出炭化物の著しい微細化ならびに加速析出の効果を得ることができる。
(5)以上の鍛造条件とすることにより、高価な成分元素を添加せずとも上記の組織を再現することができ、または炭化物形成元素を添加する場合はその析出強化に対する効果の著しい昂進がもたらされ、疲労強度の向上が容易に期待できる。
(6)しかも、鍛造工程のうちの最終の鍛造工程のみ、かような鍛造条件とすることによって、十分に上記組織を再現することができ、前工程の熱間鍛造の影響は受けない。
(7)鍛造により鍛造品を成形するにあたり、疲労特性が要求される部位に対してかような鍛造条件を適用し、その後、冷間加工を施す部位の結晶粒径が微細化することを抑制でき、容易に冷間加工を実施できる鍛造品が得られる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
1.C:0.3〜0.9mass%、
Si:0.01〜1.2mass%、
Mn:0.01〜2.0mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材に、複数回の熱間鍛造を施して熱間鍛造品を製造するに際し、A点以上A点+100℃以下の温度域の下で複数方向成分の歪を加えること、かつ複数方向成分の2成分以上の歪が各々0.5以上であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品の製造方法。
【0008】
2.上記1において、鋼素材がさらに
Mo:0.05〜0.6mass%、
Al:0.01〜0.06mass%、
Ti:0.005〜0.1mass%、
Ni:1.0mass%以下、
Cr:1.0mass%以下、
V:0.3mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Nb:0.5mass%以下、
Ca:0.008mass%以下、
および
B:0.0005〜0.015mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品の製造方法。
【0009】
3.上記1または2において、前記少なくとも一部が、疲労強度が求められる部位であり、該疲労強度が求められる部位以外の部位のうち、少なくとも冷間加工が施される部位においては、鍛造工程の最終段階の熱間鍛造温度がA点+100℃超であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品の製造方法。
【0010】
4.C:0.3〜0.9mass%、
Si:0.01〜1.2mass%、
Mn:0.01〜2.0mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成を有する鋼材からなる熱間鍛造品であり、疲労強度が求められる部位の平均結晶粒径が10μm以下であり、該疲労強度が求められる部位以外の部位のうち、少なくとも冷間加工が施される部位の平均結晶粒径が12μm以上であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品。
【0011】
5.上記4において、鋼素材がさらに
Mo:0.05〜0.6mass%、
Al:0.01〜0.06mass%、
Ti:0.005〜0.1mass%、
Ni:1.0mass%以下、
Cr:1.0mass%以下、
V:0.3mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Nb:0.5mass%以下、
Ca:0.008mass%以下、
および
B:0.0005〜0.015mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする疲労特性に優れた熱間鍛造品。
【0012】
6.上記4または5において、前記少なくとも一部が、疲労強度が求められる部位であり、該疲労強度が求められる部位以外の部位のうち、少なくとも冷間加工が施される部位においては、鍛造工程の最終段階の熱間鍛造温度がA点+100℃超であることを特徴とする、疲労特性に優れた熱間鍛造品。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.3〜0.9mass%
Cは、母材の強度を上昇させるために必要な元素である。ここに、C含有量が0.3mass%に満たないと必要な強度上昇の効果が得られず、一方0.9mass%を超えると被削性や疲労強度、さらに鍛造性の低下を招くため、C量は0.3〜0.9 mass%の範囲に限定した。
【0014】
Si:0.01〜1.2mass%
Siは、脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方1.2mass%を超えると被削性および鍛造性の低下を招くため、Si量は0.01〜1.2mass%の範囲に限定した。
【0015】
Mn:0.01〜2.0mass%
Mnは、強度の向上だけでなく、疲労強度の向上に有効に寄与するが、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方2.0mass%を超えると被削性や鍛造性を劣化させるため、Mn量は0.01〜2.0mass%の範囲に限定した。
【0016】
以上は基本成分について説明したが、さらなる疲労強度の向上を求める場合には、以下に述べる元素を適宜添加することが出来る。
Mo:0.05〜0.6mass%
Moは、フェライト粒の成長を抑制する上で有用な元素であるが、そのためには少なくとも0.05mass%を必要とする。一方、0.6mass%を超えて添加すると被削性の劣化を招くため、Mo量は0.05〜0.6mass%の範囲に限定した。
【0017】
Al:0.01〜0.06mass%
Alは、鋼の脱酸剤として作用する。しかしながら、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.06mss%を超えると被削性および疲労強度の低下を招くため、Al量は0.01〜0.06mass%の範囲に限定した。
【0018】
Ti:0.005〜0.1mass%
Tiは、TiNのピンニング効果により、結晶粒を微細化するために有用な元素であり、さらに加工誘起の炭化物析出による強化作用が強度向上に有効である。これらの効果を得るためには、少なくとも0.005mass%の添加を必要とする。一方、0.1mass%を超えて添加すると疲労強度の低下を招くため、0.005〜0.1mass%の範囲に限定した。
【0019】
Ni:1.0mass%以下
Niは、強度上昇およびCu添加時の割れ防止に有効であり、好ましくは0.05mass%以上で添加するが、1.0mass%を超えて添加すると焼割れを起こし易くなるため、1.0mass%以下に限定した。
【0020】
Cr:1.0mass%以下
Crは、強度上昇に有効であり、好ましくは0.05mass%以上で添加するが、1.0mass%を超えて添加すると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を促進し、粒界強度を低下させ、また疲労強度の低下も招くことから、1.0mass%以下に限定した。
【0021】
V:0.3mass%以下
Vは、炭化物となって析出することでピンニングによる組織微細化効果ならびに析出効果を発揮する有用元素であり、好ましくは0.005mass%以上で添加するが、0.3mass%を超えて添加しても効果が飽和するので、0.3mass%以下に限定した。
【0022】
Cu:1.0mass%以下
Cuは、固溶強化および析出強化によって強度を向上させる有用元素であり、また焼入性の向上にも有効に寄与するため、好ましくは0.1mass%以上で添加するが、含有量が1.0mass%を超えると熱間加工時に割れが発生し易くなり製造が困難となるため、1.0mass%以下に限定した。
【0023】
Nb:0.5mass%以下
Nbは、析出により粒成長をピンニングし、また鋼を強化する効果があり、好ましくは0.005mass%以上で添加するが、0.5mass%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.5mass%以下の範囲に限定した。
【0024】
Ca:0.008mass%以下
Caは、介在物を球状化し、疲労特性を改善する有用元素であり、好ましくは0.001mass%以上で添加するが、0.008mass%を超えて添加すると介在物が粗大化し疲労特性を劣化させる傾向にあるため、0.008mass%以下の範囲に限定した。
【0025】
B:0.004mass%以下
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用元素であり、好ましくは0.0003mass%以上で添加するが、0.004mass%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.004mass%以下に限定した。
残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としてはP、S、O、Nが挙げられる。
【0026】
以上、好適成分組成について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定することに加えて、以下に述べるとおり鍛造条件を調整することが必要不可欠である。
すなわち、鍛造条件として、鍛造温度をA点より100℃以上の高温γ域とした場合には、細粒化の程度は限られるため、所期したほどの疲労強度の向上は望めない。鍛造温度をAl点以下とした場合には、フェライトが延ばされた組織を呈するだけであるから、この場合も所期する疲労強度の向上は望めない。また、これらの温度域では歪の影響は僅かであり、歪を加えることによる組織形態の変化および疲労強度向上への多大な効果は期待できない。従って、疲労強度を確保するべき部位に対しての鍛造については、上記高温γ域並びにα域単相の温度域における、鍛造は適していない。
【0027】
一方、鍛造温度をA点以上A点+100℃以下の温度領域とした場合、前述した如く、加える歪により組織形態とともに疲労強度は著しく異なるものとなる。換言すると、加える歪を適切に制御したとき、鍛造温度はA点以上A点+100℃以下とすることが有効である。従って、まず、疲労強度を確保するべき部位に対しては鍛造温度はA点以上A点+100℃以下に規制する必要がある。
【0028】
次に、かような温度域下にて、複数方向成分の歪を加えること、かつ複数方向成分の2成分以上の歪が各々0.5以上であること、の条件を満足する鍛造を施すことによって、鍛造を経た製品の組織における、結晶粒径は等軸で且つ微細になり、その結果疲労強度が格段に向上する。
【0029】
なぜなら、複数方向成分の歪を加えることによって、ランダムな粒界面に歪を導入することができるため、結果としてランダムな粒界面からのフェライト核生成が可能となる。さらに、複数方向成分の歪のうち、2成分以上の歪を各々0.5以上とすることによって、単位粒界面積当たりのフェライトの核生成数が劇的に増加し、生成したフェライトが互いにぶつかり合い成長が抑制されるので効果的に微細なフェライト粒が形成される。ちなみに、2成分以上の歪を各々0.5以上とすると、相当歪は1.0以上となる。
【0030】
なお、複数の鍛造工程全てを上述の条件とする必要はなく、前段で高温γ域の鍛造を実施しても、次工程の組織形成に影響を受けないので、最終の鍛造工程のみ上述の条件とすることにより、十分に微細かつ均一な所望の組織を再現することができる。勿論、全ての鍛造工程を上記条件とすることも可能であるが、逆に複数の鍛造工程全てを上述の条件とすると、鍛造温度低下により素材の変形抵抗が上昇し、全行程での鍛造荷重の上昇を招くため、鍛造機能力の観点から好ましくない。
【0031】
さらに、所望とする部位のみを上述の鍛造条件とすることが、鍛造荷重の上昇をより良く抑制できるために好適である。すなわち、ハブまたは等速ジョイント等の製品において高い疲労強度が要求される部位は限られているため、所望の部位のみにおいて、上述の鍛造条件を満足すれば、優れた疲労特性の製品が得られる。勿論、鍛造品の全ての部分を、上記条件にて鍛造することも可能であり、要求特性に応じて、本発明の適用範囲を決めればよい。
【0032】
ここで、熱間鍛造後に、冷間加工が施される場合には、疲労強度が要求される部位以外のうち、少なくとも冷間加工が施される部位については、A点+100℃超の温度域で最終の熱間鍛造を施すことが好ましい。これは、結晶粒径を微細化することにより、疲労強度は向上するものの、逆に冷間加工性は劣化してしまうため、冷間加工が施される部位については、鍛造温度をA点+100℃超として結晶粒径を大きくすることによって、冷間加工性を維持できるからである。
なお、A点以上A点+100℃以下の温度域において、2成分以上の歪が各々0.5以上である複数方向成分の歪を加えるように最終の熱間鍛造を行った部位は、平均結晶粒径が10μm以下の、高い疲労強度を有する組織となる。一方、A点+100℃超の温度域で最終の熱間鍛造を行った部位は、平均結晶粒径が12μm以上の、冷間加工に適した組織となる。
【0033】
ここで、上記の鍛造条件を満足するための方途について、具体的に説明する。
まず、疲労強度を必要とする部位についてA点以上A点+100℃以下の温度域に低下させるには、局部水冷を採用すればよく、特に方法は問わない。
【0034】
次に、上記条件の歪を部分的に加えるための手段の一例を、鍛造品としてハブを製造する場合について、図面を参照して説明する。
さて、ハブは、図1(a)に示す棒鋼(丸棒)を素材として加熱し、図1(b)、(c)および(d)に示す形状へ加工する各鍛造工程(図1の場合3つの鍛造工程)を経て製造されるのが一般的である。図1(d)に示す製品段階のハブ1において、符号1aで示すフランジ根元部は、その他の部分と比較にて高い疲労強度が要求される部位であり、従って、この部分に本発明を適用して疲労強度の向上をはかる場合について、図2を参照して説明する。
【0035】
すなわち、図2(a)〜(d)に示す、素材および各鍛造工程後の形状は、図1(a)〜(d)に示した工程に対応するものであり、図2(a)および(b)は図1(a)および(b)と同じ形状である。次いで、本発明では、図2(c)から(d)に示す最終の鍛造工程において、複数方向成分の歪であって、その2成分以上の歪が各々0.5以上となる歪を導入するために、図2(b)から(c)に至る最終の前段の鍛造において、図2(c)に丸で囲んで示す、図1(d)の1aに対応する部分1bを余盛した形状に成形しておいてから、最終のA点以上A点+100℃以下の温度範囲での鍛造工程に供し、この最終鍛造において1b部分に大きな歪とともに複数方向の歪を生じる加工を実現する。かくして得られる図2(d)に示すハブ1は、1a部分がとりわけ優れた疲労特性を有する製品に仕上がるのである。また、ハブでは、図2(d)に示す製品段階のハブ1において、例えば軸端部1cに対しては冷間かしめ加工が行われるため、この部分は結晶粒径が微細化していない方が好ましい。従って、A点以上A点+100℃以下の温度範囲での鍛造工程において、上記の軸端部1cの結晶粒径の微細化を防止する必要があり、そのためには、図2(c)における、最終製品の軸端部1cに対応する部分1dについて、鍛造温度をA点+100℃超とすることが有効である。
【0036】
なお、複数方向成分の歪であって、その2成分以上の歪が各々0.5以上となる歪を導入するための処理としては、その他にも、上述のような円周方向に一様に余盛した形状のみならず、円周方向に不等高さの余盛加工を施してもよく、また、逆に凹みを設け最終鍛造工程で所望する部位に他の部位からの塑性流動が大きくなるような形状としてもよく、特に限定されるものではない。
ちなみに、各方向成分の歪量は有限要素法によって求めることができる。
【0037】
また、鍛造終了後の冷却は放冷で良いが、鍛造終了後〜400℃までの平均冷却速度が遅い場合にはフェライトの粒成長を生じ疲労強度の低下を招くため、平均冷却速度は0.3℃/s以上が好ましい。更に、好ましくは0.5℃/s以上である。前記、好適な平均冷却速度を得るには放冷でも十分であるが、熱容量が大きい大物製品の場合には衝風冷却等により為し得る。
【実施例1】
【0038】
JIS S48C(C:0.48mass%、Si:0.25mass%、Mn:0.7mass%、P:0.01mass%、S:0.01mass%、A点:730℃、A点:780℃)の鋼材を圧延して60mmφ×100mmの棒素材を得た後、種々の温度において、3方向(上、下および長手方向)からそれぞれ圧下率50%となるように、図3に示す工程に従って温間鍛造後空冷し、50×67×85mmの製品を得た。この鍛造によって、棒素材には、3方向の各々に0.7以上の歪が加わったことになる。
【0039】
かくして得られた製品について、平均結晶粒径の調査を、ナイタールにて腐食後、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で行うとともに、回転曲げ疲労試験片を採取して回転曲げ疲労試験に供した。これらの調査および試験結果を、図4にまとめて示す。
なお、回転曲げ疲労試験は、小野式回転曲げ疲労試験機にて、10mmφの平滑形状試験片を用いて、繰返し速度3600cycle/minにて実施し、1×10回破断強度を回転曲げ疲労強度として評価した。
【0040】
図4に示すように、本発明に従う条件の下に得られた製品では、結晶粒径が著しく細かくなるとともに、疲労強度の著しい向上も認められることがわかる。
【実施例2】
【0041】
JIS S53C(C:0.55mass%、Si:0.3mass%、Mn:0.65mass%、P:0.01mass%、S:0.005mass%、A点:730℃、A点:775℃)の鋼材を60mmφに棒圧延し、60mmφの1/4D部から20.8mmφ×47.3mm長さの素材を圧延方向から採取し、1120℃にて31mmφ×21.3mm長さへの据込み鍛造に引き続き、放射温度計にて測定した表面温度が750℃になったところで、後方押出し鍛造後空冷し、外径34.8mmφ×長さ33.3mm、内径25.0mmφ×27.9mmの製品を得た(図5参照)。この製品の図5に番号P〜Pを示した各部から、組織調査を実施した。これらの調査結果を表1に記載する。
なお、鍛造品各部位の歪量および温度は有限要素法により、クーロン摩擦係数0.2および公表されているS53Cの熱物性値を利用して算出した。また、結晶粒径調査は上記実施例1と同様である。
【0042】
表1に示す解析結果より、2成分以上の歪が各々0.5以上の値を示し、且つA点以上A点+100℃以下の温度域である部位の結晶粒径は著しく細かくなることが認められる。また、2成分以上の歪が各々0.5以上でも温度がA点以下の部位では、結晶粒は伸長した加工まま組織となり、A点+100℃超の部位では著しい細粒化は認められない。
これらの結果から、熱間鍛造に引き続く最終鍛造工程の鍛造条件としては、2成分以上の歪が各々0.5以上で、且つA点以上A点以下の温度域が好ましいことは明らかである。
【0043】
【表1】


【実施例3】
【0044】
表2に示す成分組成になる鋼材を棒素材に圧延後、この棒素材を、鍛造温度1120℃での熱間鍛造に引き続く最終鍛造工程を表3に示す鍛造条件とし、60×60×120mmの製品を得た。かくして得られた製品について、組織調査を行うとともに、回転曲げ疲労試験片および冷間圧縮試験片を採取して、それぞれ回転曲げ疲労試験および冷間圧縮試験に供した。これらの調査および試験結果を、表3に併記する。
【0045】
なお、鍛造時の歪量は、有限要素解析法により、クーロン摩擦係数を0.2として算出した。さらに、組織調査および回転曲げ疲労試験は上記の実施例1と同様である。
また、冷間圧縮試験は、直径8mmφ×長さ12mmの円柱型圧縮試験片を採取し、この試験片を長さ方向に歪み速度を1/sとして3mmまで75%の冷間圧縮を行い、割れの有無で冷間加工性を評価した。
【0046】
【表2】


【0047】
【表3】


【0048】
表2から明らかなように、本発明に従い最終鍛造工程の鍛造温度をA点以上A点+100℃以下の温度域で、かつ複数方向成分の2成分以上の歪が各々0.5以上とした、発明例No.1、2、9〜12は、いずれも1×10回疲労強度が600MPa以上という優れた疲労強度を得ることができた。
これに対し、鍛造温度条件がA点+100℃超であるNo.3は結晶粒径が粗大となり、疲労強度が低い。また、鍛造温度条件がA点未満であるNo.4は加工組織が残存しており、疲労強度も低かった。さらに、鍛造温度条件がA点未満であり、かつ歪条件が2方向成分につき0.5以上を満足しないNo.6においても加工組織が残留してしまい、疲労強度が低い。
また、成分組成を満足しないNo.7、8およびNo.13〜15の比較例では、回転曲げ疲労強度の不足あるいは冷間加工性の低下を招いた。
【実施例4】
【0049】
JIS S48C(C:0.48mass%、Si:0.25mass%、Mn:0.7mass%、P:0.01mass%、S:0.01mass%、A点:730℃、A点:780℃)の鋼材を圧延して棒鋼となした後、この棒鋼を図2に示したように3段階の熱間鍛造を施して、自動車用のハブの形状に成形を行った。このとき、最も回転曲げ疲労強度が要求される部位であるフランジの根元部および、冷間かしめ加工が施される軸端部について、結晶粒径を種々変化させた。結晶粒径の調整は最終鍛造時の鍛造条件を変化させることで行った。すなわち、中間鍛造後の形状を、図2(c)に示すように、最終形状においてフランジの根元部1aに相当する1b部分に余盛のある形状とし、図2(c)から図2(d)に示す最終鍛造段階において、軸方向の歪量が0.7以上および円周方向の歪量が0.5以上となる条件とし、さらに図2(c)から図2(d)への鍛造段階において、加熱温度を900℃とし、鍛造前に1b部分および1d部分を局所的に冷却して表4に示す温度範囲に調整した後に、熱間鍛造を施した。得られたハブについて、組織観察、疲労試験および冷間圧縮試験を、以下の要領にて実施した。
【0050】
[組織観察]
得られたハブの軸端部1cおよびフランジの根元部1a(図2(d)参照)から、組織観察用サンプルを切り出し、平均結晶粒径の測定を行った。組織観察の方法は、実施例1と同様である。
[疲労試験]
図6に示すように、ハブ1のフランジ部1eにボルト孔2を穿孔し、ボルト3を用いて回転治具4に固定した。さらに、ハブ1の軸部1fの外周面に軸受けボール5を配置するとともにボール押さえ6を装着し、ボール押さえ6に一定の荷重(10kN)を付加した状態でハブ1を一定の回転速度(1500rpm)で回転させる耐久試験を行い、ハブ1が破壊するまでの時間を測定して評価した。表4には、この耐久試験結果を併せて示す。
[冷間圧縮試験]
ハブ1の軸端部1cより直径8mmφ×長さ12mmの円柱型圧縮試験片を採取し、この試験片の長さ方向に歪速度1/sで3mmまで75%の冷間圧縮を行い、割れの有無で冷間加工性を評価した。ここで、円柱試験片の長さ方向をハブの軸方向となるように採取した。
【0051】
【表4】


【0052】
表4より、フランジの根元部の平均結晶粒径が10μm以下であるNo.1〜5では、高い耐久性が得られていることがわかる。この中で、軸端部の鍛造温度をA点+100℃超としたNo.2〜5では軸端部の結晶粒径が12μm以上となり、また冷間圧縮試験による割れの発生も認められず、冷間加工性にも優れていた。
一方、フランジの根元部の鍛造温度を710℃とA点未満としたNo.6では、フランジの根元部に加工組織が残留していたため、耐久性が悪かった。
また、フランジの根元部の鍛造温度を890℃とA点+100℃超としたNo.7では、フランジの根元部の平均結晶粒径が大きくなっており、耐久性は悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ハブの製造における、従来の鍛造工程を示す図である。
【図2】ハブの製造における、本発明に従う鍛造工程を示す図である。
【図3】実施例1に係る3方向鍛造の模式図である。
【図4】鍛造条件と10回転曲げ疲労強度および製品粒径との関係を示す図である。
【図5】実施例2における後方押出し鍛造後の形状および鍛造温度、歪量、結晶粒径を測定した部位を示す模式図である。
【図6】ハブの耐久性試験を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ハブ
2 ボルト孔
3 ボルト
4 回転治具
5 軸受けボール
6 ボール押さえ




 

 


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