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発明の名称 耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16302(P2007−16302A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2006−1034(P2006−1034)
出願日 平成18年1月6日(2006.1.6)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 林 謙次 / 大井 健次 / 柚賀 正雄 / 長尾 彰英
要約 課題
本発明は引張強度550MPa級以上として好適な耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法を提供する。

解決手段
質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2.0%、Nb:0.005〜0.06%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.006%、Pcm≦0.17%、必要に応じて更に、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、B、Ca、REMの一種又は二種以上、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼を、1000℃以上、1350℃以下に加熱後、熱間圧延し、Ar変態点以上から650℃以下まで加速冷却後、誘導加熱装置により、鋼板表面の最高到達温度Ac変態点以上、鋼板内部をAc変態点未満、且つ鋼板表面と板厚中心位置の最高到達温度の差が50℃以上となるように加熱し、その後、空冷し、鋼板板厚方向の最高硬さおよび溶接部硬さ248Hv以下する。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2.0%、Nb:0.005〜0.06%、Al:0.005〜0. 1%、N:0.0005〜0.006%、Pcm≦0.17%、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼を、1000℃以上、1350℃以下に加熱後、熱間圧延し、Ar変態点以上から650℃以下まで加速冷却後、誘導加熱装置により、鋼板表面の最高到達温度をAc変態点以上、鋼板内部をAc変態点未満、且つ鋼板表面と板厚中心位置の最高到達温度の差が50℃以上となるように加熱し、その後、空冷することを特徴とする耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【請求項2】
成分組成として、更に、Cu:0.05〜1%、Ni:0.05〜1%、Cr:0.05〜1%、Mo:0.03〜1.0%、V:0.005〜0.1%、 Ti:0.005〜0.06%、B:0.0003〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.005〜0.01%の一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【請求項3】
空冷後の鋼板板厚方向及び溶接後の溶接熱影響部の最高硬さが248Hv以下であることを特徴とする請求項1または2記載の耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【請求項4】
Ar変態点以上から650℃以下までの加速冷却時に、加速冷却開始後、鋼板表面温度が300℃になるまでに0.3秒以上の非水冷を1回以上、合計時間が15秒以下になるように施すことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼板(母材)および鋼板を溶接した後の溶接熱影響部の耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法に関し、引張強度550MPa級以上として好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
硫化水素(HS)によるSSC(硫化物(サルファイド)応力腐食割れ)は、HSによる腐食反応によって発生する水素が多量に鋼中に侵入し、硫化物(サルファイド)を起点として生じる水素割れの一種で、LPGタンク等各種貯蔵タンクや天然ガス輸送用パイプラインなどで発生することが多い。
【0003】
SSCの発生にはミクロ組織や非金属介在物が影響を与えるが、鋼の硬さの影響が最も大きくビッカース硬さ248Hv以下とした場合、その発生が抑制されることが知られている。
【0004】
そのため、SSCの発生が懸念される腐食環境で使用される鋼材では、鋼材表面硬度や溶接部の硬さをビッカース硬さ248Hv以下(ロックウエル硬さ22HRC以下)とすることが強く求められる。
【0005】
鋼構造物には、調質型溶接構造用高張力鋼が用いられることが多いが、成分組成として添加される合金成分が多いため、鋼板の表層部分や溶接部が硬化しやすい。
高強度化に伴いその傾向が顕著となるため、主に、引張強度550MPa級以上の鋼を対象として、それらの硬化を防止する種々の技術が提案されている。
【0006】
特許文献1は、耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法に関し、焼入れされた鋼板表面にエレクトロンビームやレーザビームなどを照射し、表面部を焼き戻して軟化させることを提案している。
【0007】
特許文献2は、鋼板表面部を軟化させるため、熱間圧延後の冷却を一端中断し、鋼板表面温度をAc変態点以上に復熱させ、鋼板表面に生成したベイナイト相の一部を軟質なフェライト相とし、再び冷却することを提案している。
【0008】
特許文献3は、引張強度550MPa級以上の高張力鋼に耐SSC特性を付与するため、鋼の成分組成をNb添加系とし直接焼入れ焼戻しと組合わせることにより母材強度を確保し、更に、Nb添加系において低CーB無添加系とすることにより溶接部の硬さを低減させることを提案している。
【特許文献1】特開平4−17613号公報
【特許文献2】特開平3−188216号公報
【特許文献3】特開平2−8322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載のように、鋼板の表裏面に対し、エレクトロンビームやレーザビームなどを照射することを実操業に適用した場合は生産性を著しく阻害する。
【0010】
特許文献2記載のように、一旦冷却された鋼板表面を、冷却を中断させることによりAc1変態点以上に復熱させたり、ベイナイト相の一部をフェライト相に変態させるためには比較的長時間を要し、冷却初期段階において板厚中心部の冷却速度を低下させることとなり、加速冷却の高い冷却速度による冷却効果を損なう。
【0011】
特に、引張強度550MPa級以上の高張力鋼の場合、多量の合金元素により焼入れ性が高いため鋼板表面の硬さを安定して低減するのは困難である。更に、特許文献2には、溶接部のSSC特性に関する記載はない。
【0012】
特許文献3は、母材の高張力化とHAZ硬さの低減を同時に達成することが目的で、鋼板表面硬度についての記載がなく、直接焼入れは高冷却速度であるため、特許文献3記載の発明に係る鋼の場合、鋼板表面硬度の上昇が懸念される。
【0013】
また、一般的に引張強度550MPa以上の鋼板では、焼入れや水冷後に焼戻しを行うことにより、生産性が低下し、製造コストを上昇させている。
【0014】
そこで、本発明は、生産性良く、鋼板(母材)及び鋼板を溶接した後の溶接熱影響部の耐SSC特性に優れる引張強度550MPa以上の鋼板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は冷却装置の下流側に、誘導加熱装置を配置し、引張強度550MPa以上の鋼板を対象に、水冷後、誘導加熱装置により焼戻した後の板厚方向の硬度及び鋼板を溶
接した後の溶接熱影響部について種々検討を行った。
【0016】
その結果、鋼板をNb添加系とし、鋼板の板厚方向の各部が適切な最高到達温度となるように誘導加熱した場合、母材強度を損なわずに鋼板表面及び鋼板を溶 接した後の溶接熱影響部の硬度をHv248以下とし、耐SSC特性に優れる引張強度550MPa以上の鋼板が得られることを見出した。
【0017】
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、1.質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2.0%、Nb:0.005〜0.06%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.006%、Pcm≦0.17%、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼を、1000℃以上、1350℃以下に加熱後、熱間圧延し、Ar変態点以上から650℃以下まで加速冷却後、誘導加熱装置により、鋼板表面の最高到達温度をAc変態点以上、鋼板内部をAc変態点以下、且つ鋼板表面と板厚中心位置の最高到達温度の差が50℃以上となるように加熱し、その後、空冷することを特徴とする耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【0018】
2.成分組成として、更に、Cu:0.05〜1%、Ni:0.05〜1%、Cr:0.05〜1%、Mo:0.03〜1.0%、V:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.06%、B:0.0003〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.005〜0.01%の一種又は二種以上を含有することを特徴とする1記載の耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【0019】
3.鋼板板厚方向及び溶接後の溶接熱影響部の最高硬さが248Hv以下であることを特徴とする1または2記載の耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【0020】
4.Ar変態点以上から650℃以下までの加速冷却時に、加速冷却開始後、鋼板表面温度が300℃になるまでに0.3秒以上の非水冷を1回以上、合計時間が15秒以下になるように施すことを特徴とする1乃至3の何れか一つに記載の耐SSC特性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鋼材(母材)及び鋼板を溶接した後の溶接熱影響部の耐SSC特性に優れる、例えば、ASTM A841Gr.B Cl.2:550MPa級鋼、JIS SPV490:610MPa級鋼など引張強度550MPa以上の鋼板が生産性良く製造可能で、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明では、鋼板の成分組成、熱間圧延ー冷却および焼戻し条件を規定する。
[成分組成] %は質量%を示す。
【0023】
C:0.03〜0.09%
Cは、高張力鋼板としての母材強度確保に必要な元素である。0.03%未満では焼入性が低下し、また、Nb、V、Moなど析出強化型元素の炭化物を形成するためのC量が不十分となるため、Cu、Ni、Cr、Moなどの焼入性向上元素の多量添加が必要となり、コスト高、溶接性の劣化を招く。そのため、0.03%以上を添加する。
【0024】
一方、鋼板表面や溶接部を硬化させる元素であり、これらの硬さを248Hv以下とするため、0.09%以下にする。
【0025】
Si:0.01〜0.55%
Siは母材強度および溶接継手強度を確保するため0.01%以上添加する。一方、0.55%を超える多量の添加は溶接割れ感受性と溶接継手靭性を劣化させるため、0.55%以下とする。
【0026】
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、母材強度および溶接継手強度を確保するため、0.5%以上添加する。一方、2.0%を超える多量の添加は溶接割れ感受性を劣化させ、必要以上の焼入性をもたらし母材靭性および継手靭性を劣化させるため、2.0%以下、好ましくは、1.6%以下とする。
【0027】
Nb:0.005〜0.06%
Nbは誘導加熱装置により加熱される鋼板内部で、Ac1変態点以下に加熱される領域
において析出強化し、焼戻し軟化抵抗を増大させ、顕著な強度低下が生じることを防止するため0.005%以上を添加する。一方、多量の添加は強化に寄与せず、逆に、溶接継手靭性を劣化させるため0.06%以下、好ましくは、0.04%以下とする。
【0028】
Nbを上記の範囲で添加すると、Ac変態点温度以下に加熱される領域では、強度(硬さ)は低下しないが、Ac変態点を超えて加熱される領域では急激に低下する。
【0029】
これにより、Ac変態点を超えない温度に加熱される、少なくとも板厚の1/4厚さ位置より板厚中心部側の領域においては、十分な強度(硬さ)を確保し、且つ、Ac変態点以上に加熱される表層近傍については硬さを著しく低減させ、Hv248以下とすることが可能となる。
【0030】
Al:0.005〜0.1%
Alは鋼の脱酸剤として添加され、通常0.005%以上は含有する。しかし、0.1%を超える添加は母材靭性を損なうため、0.005〜0.1%とする。結晶粒の微細化による母材靭性確保のためには0.01%以上添加することが好ましい。
【0031】
N:0.0005〜0.006
Nは、Al、Tiなどと析出物を形成することで結晶粒を微細化し靭性を向上させる効果があるため0.0005%以上とする。一方、0.006%を超えて過剰に添加すると母材および溶接部の靭性を劣化させるため、0.0005〜0.006%以下とする。
【0032】
Pcm
Pcm(=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B)は溶接熱影響部の硬さを248Hv以下とするため、0.17%以下とする。
【0033】
以上が本発明の基本成分組成であるが、更に所望する特性を向上させるため、Mo、V、Cu、Ni、Cr,Ti、B、Ca、REMの一種または二種以上を添加する。
【0034】
Mo、V
Mo、Vは誘導加熱装置による加熱によって、Ac1変態点以下に加熱される鋼板内部
において顕著な強度低下が生じないように、析出強化および焼戻し軟化抵抗を増大させる。
【0035】
Moを添加する場合は、その作用効果を得るため、下限を0.03%、溶接性の確保と必要以上の焼入性を防止するため、上限を1.0%とする。
【0036】
Vを添加する場合は、その作用効果を得るため下限を0.005%、0.1%を超える添加は溶接割れ感受性を劣化させるため、上限を0.1%とする。
【0037】
MoとVは其々、母材強度と溶接継手強度を確保する上で有効に働くので、選択的に添加しても良い。
【0038】
Cu、Ni、Cr
Cu、Ni、Crは更に高強度を必要とする場合や、耐候性を必要とする場合に、1種または2種以上を添加する。Cu、Ni、Crを添加する場合は、その作用効果を得るため、其々の下限を0.05%、上限を1%とする。
【0039】
Ti、B
Tiはミクロ組織の細粒化や、B添加鋼の場合には焼入性に有効な固溶Bの確保のために添加する。添加する場合は、その作用効果を得るため、下限を0.005%、一方、過剰に添加すると母材および溶接部の靭性を損ねることから上限を0.06%以下、好ましくは0.02%以下とする。
【0040】
Bは、極微量の添加で焼入性を高め、高強度鋼において合金元素量を低減させる効果が得られるが、過剰に添加するとBNを形成し逆に焼入性を低下させる。添加する場合はその作用効果を得るため、下限を0.0003%とし、一方、溶接熱影響部が著しく硬化するため、上限を0.002%とする。
【0041】
Ca、REM
CaおよびREMは、靭性を劣化させるMnSの形態を変化させる効果があり圧延方向と垂直方向の靭性向上に有効である。過剰の添加は鋼の清浄度を劣化させ内部欠陥の原因となるため、添加する場合、Caはその作用効果を得るため、下限を0.0005%、上限を0.005%とし、REMはその作用効果を得るため、下限を0.005%、上限を0.01%とする。
【0042】
尚、本発明鋼においてP,Sは不純物元素であり、靭性や溶接性を劣化させるため低減した方が好ましいが、極度の低減はコスト高となる。好ましくは、Pは0.020%以下、Sは0.005%以下とする。
【0043】
本発明鋼は上述した成分組成とすることにより、加速冷却により硬化した領域を再加熱した場合、Ac変態点以上の二相域温度に加熱された場合は、Ac変態点未満に加熱された場合と比較して顕著に軟化する。
【0044】
[熱間圧延ー冷却条件]
スラブ加熱温度は、鋼中の成分を均一化とNbなどの析出強化元素を固溶させるため1000℃以上、好ましくは1050℃以上とする。加熱温度が過剰に高い場合は、結晶粒が粗大化し母材の靭性劣化を招く恐れがあるために1350℃以下、好ましくは1250℃以下とする。
【0045】
熱間圧延は、母材の靭性を向上させ、より安定に確保する観点から、1050℃以下の温度域で20%以上の累積圧下を付与することが望ましい。これにより、γ粒の再結晶に伴い組織が細粒化し、母材の靭性を向上させる。同様の効果を狙い、各圧延パス毎の圧下量を5%以上、さらには10%以上とすることが望ましい。
【0046】
熱間圧延後の冷却は加速冷却(5℃/sec以上の冷却速度で冷却)とする。加速冷却の開始温度は加速冷却の冷却効果を十分に得、かつ安定して高い強度を確保するためAr変態点以上の温度から冷却する。
【0047】
加速冷却は目標とする強度・靭性や能率などを考慮して停止温度を設定することができるが、本発明では、冷却効果を十分に得、引張強度550MPa以上の強度を確保するために650℃以下まで冷却する。
【0048】
ここで、加速冷却時の温度は板厚方向の平均温度により規定する。鋼板の板厚が大きい場合や冷却速度が速い場合には、板厚方向の各部位で温度履歴が異なるため平均温度を基準とする。
【0049】
尚、平均温度は、板厚、表面温度および冷却条件等が与えられた場合に、シミュレーション計算等により求められるものを用いることができる。例えば、差分法を用い、板厚方向の温度分布を平均化することにより得られた温度を平均温度とすることができる。
【0050】
さらに、Ar変態点以上から650℃以下までの加速冷却時に、加速冷却開始後、鋼板表面温度が300℃以下になるまでの加速冷却実施時の初期段階で強制冷却されない時間を1回以上設けることにより、鋼板表面の焼入れ固さを低減でき、焼戻しとの組合わせにより表層硬さを効果的に低減することが可能である。
【0051】
その効果は、非水冷時間が0.3秒以上で効果を発揮し、2回以上繰り返すことによっても更に低減効果を増す。但し、非水冷時間が合計15秒以上になると、表層のみならず、板厚1/4t位置の強度が低下する。そのため、1回の非水冷時間は0.3秒以上で非水冷の合計時間を15秒以下とする。
【0052】
非水冷は、例えば複数のゾーンからなる加速冷却装置の特定ゾーンの水冷を停止すればよく、非水冷のゾーンの長さと鋼板の搬送速度から非水冷時間を求めることができる。
【0053】
尚、非水冷とは冷却水を停止した後、鋼板が復熱する状態にあることを指し、鋼板表面に冷却水が残存していてもかまわない。
【0054】
[焼戻し条件]
本発明では焼戻し熱処理として誘導加熱を用いた再加熱処理を行う。加速冷却を行った鋼板では、特に板厚が厚い場合には、板厚方向の冷却速度が異なるために、板厚方向硬度差が存在し、表層は硬化する。
【0055】
そこで、通常のガス燃焼による雰囲気加熱炉の代わりに誘導加熱装置を用い、鋼板の表面部分に誘導電流を集中させることにより、鋼板内部に比べて表面部分の温度が高くなる温度分布を与える。
【0056】
焼戻しにおいては、鋼板表面の最高到達温度Ac変態点以上、鋼板内部(鋼板表面から板厚の1/4までを除いた部分)をAc変態点未満、且つ鋼板表面と板厚中心位置の最高到達温度の差が50℃以上となるように加熱する。
【0057】
鋼板表面を最高到達温度Ac変態点以上、Ac変態点未満の二相域温度に加熱すると、加速冷却により鋼板表面に生成した、硬質のベイナイトあるいはマルテンサイトの一部がオーステナイトに変態し、その後の遅い冷却過程で軟質のフェライトを生成させる。
【0058】
また、オーステナイトに変態しなかった残余の硬質のベイナイトあるいはマルテンサイトからなる焼戻しマルテンサイト領域も高温の焼戻し効果により硬さが低減する。これらの作用により、表層組織を軟質相を含む組織とし、表面部分の硬さを低下させ、優れた耐SSC特性を付与することが可能となる。
【0059】
一方、鋼板内部が、Ac変態点以上に加熱され、硬さが低減すると、引張り強度550MPa以上が得られなくなるため、Ac変態点未満となるように加熱する。
【0060】
また、鋼板表面と板厚中心位置の最高到達温度の差が小さい場合、鋼板表面と板厚中心位置の硬さの差が小さくならず、板厚方向の特性差が大きくなるため、鋼板表面と板厚中心位置の最高到達温度の差が50℃以上となるように加熱する。
【0061】
尚、鋼板の機械的性質は、通常、板厚の1/4、1/2および3/4から採取した試験片により評価するため、本発明では鋼板内部を板厚の1/4〜3/4の領域と定義する。
【0062】
鋼板表面の硬さとは、鋼板断面の板厚方向の硬さを表層下1mmより該ピッチで測定した時の、表層近傍における最高硬さの値をいう。
【0063】
溶接後の熱影響部硬さは、通常、溶接継手を作成した後、継手部断面の表層1mm位置の溶接金属から熱影響部、母材に至るまでを0.5mmピッチで硬さ(Hv10)を測定し、その最高硬さの値を指す。
【0064】
また、試験的には、鋼板の表面に実際の施工時と同じ、溶接ビードを置き、JIS最高硬さ試験に準じた硬さ測定を行い、その最高硬さの値を用いることもできる。
【0065】
誘導加熱装置の配置は、冷却装置下流側となる搬送ライン上でもオフラインでも構わないが、エネルギーコストの観点からは、加速冷却直後に加熱が可能な前者が好ましい。
【実施例】
【0066】
表1に実施例に用いた鋼の化学成分を示す。鋼Aは、請求項1記載の成分組成を満足する本発明の化学成分であり、Nbを含有するとともにCが0.09%以下,Pcmが0.17%以下に低く設定されている。
【0067】
鋼B〜Fは、いずれも、請求項3記載の成分組成を満足する本発明の化学成分であり、それぞれ、鋼B:Cr−Mo−V系、鋼C:Mo−V系、鋼D:Cr−Mo−Ti系、鋼E:Cr−Mo−Ti−Ca系、鋼F:Cu−Ni−Cr−Mo−Ti−B−REM添加成分系となっている。
【0068】
鋼G、H、Iは比較例であり、鋼GはNbが添加されておらず、鋼HはPcmが、鋼IはCおよびPcmがそれぞれ本発明の規定を満足していない。
【0069】
表1に示す化学成分の鋼を溶製し、鋼塊を作製後、表2に示す製造条件にて所定の板厚に熱間圧延、冷却を行い、その後、誘導加熱装置により熱処理を行った。一部の鋼は、比較例として雰囲気炉熱処理を実施し供試鋼を得た。
【0070】
母材の機械的性質の評価として、ビッカース硬さ試験(荷重10kg、Hv10)、全厚の引張試験、シャルピー衝撃試験、溶接部の硬さ試験および耐SSC試験を行った。鋼板の表層最高硬さは、板厚方向断面の硬さを表層下1mmより1mmピッチで測定し、最高硬さの値とした。
【0071】
溶接部の硬さ試験は、被覆アーク溶接(溶接入熱12kJ/cm)により鋼板表面に溶接ビードを置き(予熱なし)、JIS最高硬さ試験に準じた硬さ測定:ビッカース硬さ試験(荷重10kg、Hv10)を実施し、溶接熱影響部の最高硬さを求めた。
【0072】
耐SSC試験は、鋼板表面および上記の溶接部表面から板状試験片(2mmt×5mm
W×70mmL)を採取し、4点曲げ試験によって、母材降伏応力の100%の応力を付
与し、720時間溶液中に浸食する試験を行った。
【0073】
試験溶液は、0.5%CHCOOH水溶液に、HSガスを通気し、HS濃度1000ppmとして用いた。試験終了後、光学顕微鏡にて割れの表面割れの有無を確認し、割れのない場合を○、割れの発生が認められる場合を×と評価した。
【0074】
実施例No.1、2、3、6、9、10、11、12は本発明例であり、誘導加熱により表面がAc1変態温度を超え、かつ板厚方向1/4がAc変態点以下であり、表層と板厚中心位置の温度差が50℃以上となるように加熱を行うことによって、全厚強度を確保しつつ、表面硬さを248Hv以下に低減している。
【0075】
また、溶接部硬さも248Hv以下を満足しており、耐SSC試験において鋼板、溶接部ともに割れは発生しておらず、良好な耐SSC特性を有している。
【0076】
実施例No.4、7は、表面の加熱温度がそれぞれ690℃、700℃とAc1変態点以下であり、鋼板の表面硬さが248Hv超えであり、母材の耐SSC試験において割れが生じている。
【0077】
実施例No.5は、誘導加熱を行わずガス燃焼による雰囲気加熱炉において焼戻し熱処理をおこなったものであり、鋼板表面の硬さが248Hvを超えているとともに、母材の耐SSC試験において割れが認められる。
【0078】
実施例No.8は、表層のみならず、1/4厚さ位置より内側までAc変態点温度まで加熱しその温度差も50℃未満の例であり、全厚試験片において強度が低下しているとともに、靭性も劣化する傾向にあり、また表層と板厚中心位置の硬さの差も大きい。
【0079】
実施例No.13はNbを含有しない鋼Gを用いて、本請求範囲の製造プロセスで製造した例であるが、Nbを含有しないため、全厚の引張強度が低くなっている。
【0080】
実施例No.14は、Pcmが高く、No.15はCおよびPcmが高い鋼H、Iを用い
て、本請求範囲の製造プロセスで製造した例であるが、母材の特性はいずれも満足しているものの、溶接部の最高硬さが248Hvを超えているとともに、溶接部の耐SSC試験において割れが認められる。
【0081】
更に、実施例11と同じ成分、同じ製造条件で、加速冷却の冷却パターンのみを変化させて鋼板を製造した(実施例No.16〜19)。尚、表2では、これらの実施例で得られた溶接部の試験結果が実施例No.11と同等の性能であったため、試験結果の記載を省略している。
【0082】
実施例No.16〜18は、加速冷却のパターンとして、冷却初期に1〜3回の非水冷を付与したもので、実施例No.16は5秒間の非水冷を1回、実施例No.17は3秒間の非水冷を2回、実施例No.18は2秒間の非水冷を3回付与した。
【0083】
これらの実施例では、いずれの特性も満足し、更に、表層硬さが実施例No.11のものより低減されていた。実施例No.19は非水冷時間が15秒を超えるようにした場合で、表層硬さは低減しているものの、強度が目標値に達しなかった。
【0084】
【表1】


【0085】
【表2】






 

 


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