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発明の名称 耐低温割れ性に優れた高張力鋼材およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9325(P2007−9325A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2006−146080(P2006−146080)
出願日 平成18年5月26日(2006.5.26)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 長尾彰英 / 大井健次
要約 課題
耐低温割れ性に優れた高張力鋼材およびその製造方法を提供。

解決手段
質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Mo:0.01〜1%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、P:0.03%以下、S:0.03%以下を含有し、かつNb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%の一種または二種以上、必要に応じて、Cu、Ni、Cr、W、B、Ca、REM、Mgの一種または二種以上、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、Ar変態点以上の温度から500℃以下の温度まで焼入れた後、焼戻し開始温度から所定の焼戻し温度までの鋼材中心部の平均昇温速度を1℃/s以上として焼戻し、Mo及びNb、V、Tiの一種または二種以上を含有する平均粒子径20nm以下の析出物を5個/250000nm以上含む。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Mo:0.1〜1%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、P:0.03%以下、S:0.03%以下を含有し、かつNb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%から選ばれる一種または二種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で、Mo及びNb、V、Tiから選ばれる元素の一種または二種以上を含有する平均粒子径20nm以下の析出物を5個/250000nm以上鋼中に含むことを特徴とする耐低温割れ特性に優れた高張力鋼材。
【請求項2】
更に、鋼組成が、質量%で、Cu:2%以下、Ni:4%以下、Cr:2%以下、W:2%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐低温割れ性に優れた高張力鋼材。
【請求項3】
更に、鋼組成が、質量%で、B:0.003%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.01%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐低温割れ性に優れた高張力鋼材。
【請求項4】
ミクロ組織が、残留オーステナイトを0.5〜5%の体積分率で含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の耐低温割れ性に優れた高張力鋼材。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の成分組成を有する鋼片をAr変態点以上の温度から500℃以下の温度まで焼入れた後、焼戻し開始温度から所定の焼戻し温度までの鋼材中心部の平均昇温速度を1℃/s以上として焼戻すことを特徴とする耐低温割れ特性に優れた高張力鋼材の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐低温割れ性に優れた高張力鋼材およびその製造方法に関し、特に引張強度が600MPa以上の耐低温割れ性に優れる高張力鋼材として好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設産業機械・タンク・ペンストック・ラインパイプ等の鋼材使用分野では、構造物の大型化を背景として、使用する鋼材の高強度化が進んでいる。
【0003】
しかし、このような鋼材の高強度化は、一般的に溶接時の低温割れ感受性を高めることが知られており、溶接施工時に、予熱処理や後熱処理によって、HAZの硬化抑制や脱水素の助長を行ったり、また、低水素系溶接棒の使用によって、水素量を低減したりすることによって低温割れが防止されてきた。
【0004】
しかし、予熱処理・後熱処理・低水素系溶接棒の使用は、その効果に限度があり、十分に溶接低温割れの防止が出来ない場合もあった。そこで、更に鋼材の耐低温割れ特性を向上させるべく、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等で、MnSの生成の抑制によって低温割れ感受性を低減させる方法やVNの生成によって低温割れ感受性を低減させる方法、Ti酸化物やSi−Mn−Ti−Al系複合酸化物(オキシサイド)を積極的に生成させて水素をトラップし、HAZの拡散性水素量を低下させる方法等が提案されている。
【特許文献1】特開昭57−2246号公報
【特許文献2】特開昭62−54862号公報
【特許文献3】特開平8−176724号公報
【特許文献4】特開2001−348649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載されている方法によっても、強度レベルが高くなると、特に水素量が高い溶接材料を用いて低い入熱量で溶接を行った場合には、低温割れの発生を防止できないため、特に強度が900MPa以上の高いレベルで、より耐低温割れ特性に優れた高張力鋼材ならびにその製造方法が求められていた。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、強度が600MPa以上で、特に900Mpa以上の耐低温割れ性に優れた高張力鋼材ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
低温割れは、室温で鋼中を拡散可能ないわゆる拡散性水素が応力集中部に集積し、その量が材料の限界値に到達すると発生するとされており、そのため、耐低温割れ性を向上させる一つの指針として応力集中部に集積する拡散性水素の量を減少させることが挙げられる。
【0008】
本発明者らは、鋼材の耐低温割れ性を向上させるために鋭意研究を重ねた結果、特に合金炭化物等の析出物形成元素であるMo,Nb,V,Tiの添加量と焼戻し処理時における鋼材の板厚方向中心部の昇温速度を規定することによって、析出物の微細分散化および残留オーステナイトの適正量の確保を達成し、これらの析出物や残留オーステナイトによる拡散性水素のトラップ量の増大を通じて、応力集中部に集積する拡散性水素量が減少し、従来材よりも耐低温割れ性に優れた高張力鋼材を得ることが可能となることを見出した。
【0009】
本発明は得られた知見に基づき、更に検討を加えてなされたものであって、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Mo:0.1〜1%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、P:0.03%以下、S:0.03%以下を含有し、かつNb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%から選ばれる一種または二種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で、Mo及びNb、V、Tiから選ばれる元素の一種または二種以上を含有する平均粒子径20nm以下の析出物を5個/250000nm以上鋼中に含むことを特徴とする耐低温割れ特性に優れた高張力鋼材。
【0010】
2.更に、鋼組成が、質量%で、Cu:2%以下、Ni:4%以下、Cr:2%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする1に記載の耐低温割れ性に優れた高張力鋼材。
【0011】
3.更に、鋼組成が、質量%で、B:0.003%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.01%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする1または2記載の耐低温割れ性に優れた高張力鋼材。
【0012】
4.ミクロ組織が、残留オーステナイトを0.5〜5%の体積分率で含むことを特徴とする1乃至3の何れか一つに記載の耐低温割れ性に優れた高張力鋼材。
【0013】
5.1乃至3の何れか一つに記載の成分組成を有する鋼片をAr変態点以上の温度から500℃以下の温度まで焼入れた後、焼戻し開始温度から所定の焼戻し温度までの鋼材中心部の平均昇温速度を1℃/s以上として焼戻すことを特徴とする耐低温割れ特性に優れた高張力鋼材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引張強度が600MPa以上、特に900MPa以上の、耐低温割れ性に優れた高張力鋼材が得られ、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[成分組成]
本発明における成分の限定理由について述べる。化学成分組成を示す%は、何れも質量%である。
C:0.02〜0.25%
Cは、強度を確保するために含有するが、0.02%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.25%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。従って、C含有量を0.02〜0.25%に限定する。
【0016】
Si:0.01〜0.8%
Siは、製鋼段階の脱酸剤および強度向上元素として含有するが、0.01%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.8%を超えると粒界が脆化し、低温割れの発生を促進する。従って、Si含有量を0.01〜0.8%に限定する。
【0017】
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、強度を確保するために含有するが、0.5%未満ではその効果が不十分であり、一方、2.0%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。従って、Mn含有量を0.5〜2.0%に限定する。
【0018】
Mo:0.1〜1%
Moは、焼入れ性および強度を向上する作用を有すると同時に、炭化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐低温割れ性を向上させるために、必須の添加成分である。0.1%未満の添加ではその効果は充分ではなく、一方、1%を超える添加は経済性が劣る。従って、Moを添加する場合には、その含有量を0.1〜1%に限定する。特にMoは焼戻し軟化抵抗を大きくする作用を有し、強度を900MPa以上確保するために0.2%以上添加することが好ましい。
【0019】
Al:0.005〜0.1%
Alは、脱酸剤として添加されると同時に、結晶粒径の微細化にも効果があるが、0.005%未満の場合にはその効果が十分でないため下限を0.005%、好ましくは0.01%超えとする。一方、0.1%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。従って、Al含有量を0.005%以上、好ましくは0.01%超え〜0.1%に限定する。
【0020】
N:0.0005〜0.008%
Nは、Tiなどと窒化物を形成することによって組織を微細化し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させる効果を有するために添加する。0.0005%未満の添加では組織の微細化効果が充分にもたらされず、一方、0.008%を超える添加は固溶N量が増加するために母材および溶接熱影響部の靭性を損なう。従って、N含有量を0.0005〜0.008%に限定する。
【0021】
P:0.03%以下、S:0.03%以下
P、Sは、いずれも不純物元素であり、0.03%を超えると健全な母材および溶接継手を得ることができなくなる。従って、P、S含有量をそれぞれ0.03%以下に限定する。
【0022】
Nb、V、Tiの一種または二種以上
Nb、V、Tiは、一種または二種以上含有していれば、拡散性水素をトラップし、耐低温割れ性を向上させる効果を有するため、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%の一種または二種以上を含有する。
【0023】
Nb:0.001〜0.1%
Nbは、マイクロアロイング元素として強度を向上させると同時に、炭化物や窒化物、炭窒化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐低温割れ性を向上させる。0.001%未満の添加ではその効果は充分ではなく、一方、0.1%を越える添加は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Nbを添加する場合には、その含有量を0.001〜0.1%に限定する。
【0024】
V:0.001〜0.5%
Vは、マイクロアロイング元素として強度を向上させると同時に、炭化物や窒化物、炭窒
化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐低温割れ性を向上させる。0.001%未満の添加ではその効果は充分ではなく、一方、0.5%を超える添加は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Vを添加する場合には、その含有量を0.001〜0.5%以下に限定する。
【0025】
Ti:0.001〜0.1%
Tiは、圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイト粒の成長を抑制し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させると同時に、炭化物や窒化物、炭窒化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐低温割れ性を向上させる。
【0026】
また、MoやNbと複合析出物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐低温割れ性を向上させる効果も有する。0.001%未満の添加ではその効果は充分ではなく、一方、0.1%を超える添加は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Tiを添加する場合には、その含有量を0.001〜0.1%に限定する。
【0027】
本発明では、所望の特性に応じてさらに以下の成分を一種以上含有することができる。Cu:2%以下
Cuは、固溶強化および析出強化により強度を向上する作用を有している。しかしながら、Cu含有量が2%を超えると、鋼片加熱時や溶接時に熱間での割れを生じやすくする。従って、Cuを添加する場合には、その含有量を2%以下に限定する。
【0028】
Ni:4%以下
Niは、靭性および焼入れ性を向上する作用を有している。しかしながら、Ni含有量が4%を超えると、経済性が劣る。従って、Niを添加する場合には、その含有量を4%以下に限定する。
【0029】
Cr:2%以下
Crは、強度および靭性を向上する作用を有しており、また高温強度特性に優れる。従って、高強度化する場合に積極的に添加し、特に引張強度900MPa以上の特性を得るために0.3%以上添加するのが好ましい。しかしながら、Cr含有量が2%を超えると、溶接性が劣化する。従って、Crを添加する場合には、その含有量を2%以下に限定する。
【0030】
W:2%以下
Wは、強度を向上する作用を有している。しかしながら、2%を超えると、溶接性が劣化する。従って、Wを添加する場合は、その含有量を2%以下に限定する。
【0031】
B:0.003%以下
Bは、焼入れ性を向上する作用を有している。しかしながら、0.003%を超えると、靭性を劣化させる。従って、Bを添加する場合には、その含有量を0.003%以下に限定する。
【0032】
Ca:0.01%以下
Caは、硫化物系介在物の形態制御に不可欠な元素である。しかしながら、0.01%を超える添加は、清浄度の低下を招く。従って、Caを添加する場合には、その含有量を0.01%以下に限定する。
【0033】
REM:0.02%以下
REMは、鋼中でREM(O、S)として硫化物を生成することによって結晶粒界の固溶S量を低減して耐SR割れ特性を改善する。しかしながら、0.02%を超える添加は、沈殿晶帯にREM硫化物が著しく集積し、材質の劣化を招く。従って、REMを添加する場合には、その添加量を0.02%以下に限定する。
【0034】
Mg:0.01%以下
Mgは、溶銑脱硫材として使用する場合がある。しかしながら、0.01%を超える添加は、清浄度の低下を招く。従って、Mgを添加する場合には、その添加量を0.01%以下に限定する。
【0035】
[ミクロ組織]
本発明における析出物の析出形態の限定理由について述べる。
Mo及びNb,V,Tiから選ばれる元素の一種または二種以上を含有する平均粒子径20nm以下、好ましくは15nm以下の析出物を、5個/250000nm以上の割合、好ましくは10個/250000nm以上を鋼中に含む。
【0036】
析出物の観察は、例えば、薄膜または抽出レプリカのサンプルを用いて、透過型電子顕微鏡にて行う。粒子径は、画像解析による円相当径にて評価し、平均粒子径は、例えば、500nm四方の視野中で観察される析出物を対象として、任意の5視野以上の単純平均値とする。
【0037】
Mo及びNb,V,Tiから選ばれる元素の一種または二種以上を含有する析出物は、大きさによらず拡散性水素をトラップする効果を有するが、平均粒子径が20nmより大きくなると格子整合性が低くなり、拡散性水素をトラップする力が弱くなるため、耐低温割れ性の向上効果が小さくなる。そこで平均粒子径を20nm以下、好ましくは15nm以下とする。
【0038】
また、Mo及びNb,V,Tiから選ばれる元素の一種または二種以上を含有する析出物の密度が5個/250000nm未満となると、これらの析出物によりトラップされる拡散性水素の量が少なくなり、耐低温割れ性の向上効果が小さくなる。そこで、5個/250000nm以上の割合、好ましくは10個/250000nm以上の割合で鋼中に含むとする。
【0039】
尚、Mo及びNb,V,Tiから選ばれる元素の一種または二種以上を含有する析出物とは、Moが必須元素として含有され、更にNb,V,Tiから選ばれる元素の一種または二種以上を含有する析出物である。
【0040】
本発明は、残留オーステナイトを0.5〜5%の体積分率で含むミクロ組織とするのが好ましい。残留オーステナイトは、水素の固溶度が高いため水素トラップサイトとして機能し、耐遅れ破壊特性を向上させるが、0.5%未満ではその効果が明確でなく、5%を超えると強度が低下するため、0.5〜5%、更に、好ましくは2〜4%とする。
【0041】
残留オーステナイト量の測定は、例えば、X線回折によるオーステナイト格子定数のピークの定量化によって測定する。次に、本発明において好ましい製造条件について述べる。
【0042】
[焼入れ条件]
母材強度および母材靭性を確保するため、熱間圧延後、Ar変態点以上の温度から500℃以下の温度まで焼入れを行う。焼入れは0.5℃/s以上、好ましくは1℃/s以上の速度で冷却する。
【0043】
本規定により、オーステナイトからマルテンサイトもしくはベイナイトへの変態が完了し、母材が強化される。尚、本発明は、Ar変態点以上のオーステナイト単相組織の状態から焼入れを開始すれば、熱間圧延後に直接焼入れを行っても、熱間圧延材を再加熱後に焼入れを行っても良い。
【0044】
本発明ではAr変態点を求める式は特に規定しないが、例えばAr=910−310C(mass%)−80Mn(mass%)−20Cu(mass%)−15Cr(mass%)−55Ni(mass%)−80Mo(mass%)とする。
【0045】
[焼戻し条件]
焼戻し時、焼戻し開始温度から所定の焼戻し温度までの鋼材中心部の平均昇温速度を1℃/s以上、好ましくは2℃/s以上にする。再加熱焼入れなどにより一旦室温まで冷却した場合においても焼戻し時の平均昇温速度を1℃/s以上、好ましくは2℃/s以上にする。
【0046】
焼戻し時に生じる合金炭化物、合金窒化物、合金炭窒化物等の析出物の生成・成長挙動には焼戻し時の昇温速度が影響を及ぼし、板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s以上、好ましくは2℃/s以上とした場合、析出物の微細分散化が達成される。
【0047】
1℃/s未満では炭化物や炭窒化物が析出する前に粒界やラス界面にCが拡散するので、粗大な炭化物や炭窒化物しか得ることができず、水素のトラップサイトとなる炭化物や炭窒化物を微細分散させる効果が得られない。
【0048】
更に、焼戻し時に、600℃以上での昇温速度が10℃/s以上となる温度領域を持たせると、分散析出したセメンタイトのFeが合金元素に置き換わって微細な合金炭化物の析出を促進させて好ましい。
【0049】
引張強度900MPa以上に高強度化する場合は、焼戻し温度を450〜550℃の範囲にすることが高強度、且つ高靭性のバランスのよい特性を得るのに好ましい。
【0050】
また、焼戻し時の昇温過程は、所定の平均昇温速度が得られれば良く、直線的な温度履歴を取っても、途中温度で滞留するような温度履歴を取っても良く、特に規定しない。
【0051】
焼戻し温度における保持時間は、生産性や析出物の粗大化に起因する耐低温割れ性の劣化を防止すべく、60s以下とすることが望ましい。
【0052】
焼戻し後の冷却速度については、冷却中における析出物の粗大化を防止すべく、焼戻し温度〜200℃までにおける板厚中心部の平均冷却速度を0.05℃/s以上とすることが望ましい。
【0053】
以上の条件によって、上述の析出物による拡散性水素のトラップ量が増加するため、応力集中部に集積する拡散性水素量が減少し、従来の鋼材よりも耐低温割れ性が向上する。
【0054】
本発明においてはAr変態点以上から焼入れが可能なように鋼片を製造すれば良く、溶鋼から鋳片を製造する方法や、鋳片を圧延して鋼片を製造する方法は特に規定しない。転炉法・電気炉法等で溶製された鋼や、連続鋳造・造塊法等で製造されたスラブが利用できる。
【0055】
鋳片を圧延して鋼片を製造する際、Ar変態点以下に冷却することなく、そのまま熱間圧延を開始しても、一度冷却した鋳片をAc変態点以上に再加熱した後に熱間圧延を開始しても良い。
【0056】
Ar変態点以上で圧延を終了すれば、その他の圧延条件に関して特に規定するものではない。Ar変態点以上の温度の圧延であれば、再結晶域で圧延を行っても未再結晶域で圧延を行って良い。
【0057】
焼戻し時の加熱方式は、誘導加熱、通電加熱、赤外線輻射加熱、雰囲気加熱等、所要の昇温速度が達成される方式で良い。焼戻し時における平均昇温速度の規定は、板厚中心部にて行ったが、板厚中心部近傍はほぼ同様の温度履歴となるので、板厚の中心に限定するものではない。
【0058】
尚、本発明において規定する焼入れ温度、焼戻し開始温度などの温度は、板厚中心部での温度とする。
【0059】
本発明は鋼板に限定されるものではなく、形鋼、棒鋼など種々の形状の鋼材に適用可能である。
【実施例】
【0060】
本発明の有効性を実施例によって説明する。表1に示す化学成分の鋼A〜Pを溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行い鋼板とした。圧延後、引続き直接焼入れし、次いで、ソレノイド型誘導加熱装置を用いて焼戻し処理を行った。
【0061】
また、板厚中心部の平均昇温速度は、鋼板の通板速度によって管理した。なお、焼戻し温度にて保持する場合には、鋼板を往復させて加熱することによって、±5℃の範囲内で
保持を行った。
【0062】
また、加熱後の冷却は空冷とした。焼戻し温度や焼入れ温度などの板厚中心部における温度は、放射温度計による表面の逐次における温度測定結果から、伝熱計算によって求めた。
【0063】
表2に鋼板製造条件、析出物の平均粒子径、析出物の密度、残留オーステナイトの体積分率を、表3に得られた鋼板の降伏強度、引張強度、破面遷移温度(vTrs)、ルート割れが生じなくなる予熱温度(割れ停止温度)を示す。また、図1に母材のPcm値と割れ停止温度の関係を示す。
【0064】
析出物の大きさおよび密度は、透過型電子顕微鏡を用いて、抽出レプリカにより抽出した析出物を写真撮影し、500nm四方の視野中で観察される析出物を対象として、任意の5視野の平均を求めた。なお、粒子径は、画像解析による円相当径にて評価した。
【0065】
残留オーステナイトの体積分率は、X線回折によりオーステナイト格子定数のピークを定量化することによって測定した。
【0066】
また、降伏強度および引張強度は、全厚引張試験片により測定し、靭性は、板厚中心部より採取した試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって得られるvTrsで評価した。
【0067】
更に、割れ停止温度は、JIS Z 3158に記載のy型溶接割れ試験方法に従って溶接低温割れ試験を実施し、ルート割れ率が0となる温度とした。
【0068】
溶接材料は、低水素系の80kgf/mm級被覆溶接棒を用い、溶接入熱は17kJ/cmとした。
【0069】
なお、同一条件で溶接した溶着金属中の拡散性水素濃度は、JIS Z 3118に記載の鋼溶接部の水素量測定方法に従って求めた結果、溶着金属100gあたり2.8〜3.2mlであった。
【0070】
【表1】


【0071】
【表2】


【0072】
【表3】


【0073】
表3および図1から明らかなように、割れ停止温度はPcm値に依存するが、同一のPcm値の鋼で比較すると、請求項1乃至3の何れか一つに記載の本発明で規定する条件(成分組成、析出物の平均粒子径、密度)のいずれか1つ以上を満たさない比較鋼板の溶接継手に比べ本発明で規定する条件を満たす鋼板の溶接継手は、割れ停止温度が低く、低温割れ感受性が低い。以下、比較例について個別に説明する。
【0074】
鋼種Aにおいて、直接焼入れ開始温度がAr変態点未満の鋼板No.2は、析出物の密度が本発明範囲外で、本発明例の鋼板No.1に比べて割れ停止温度が高い。
【0075】
鋼種Bにおいて、直接焼入れ停止温度が500℃を超える鋼板No.4は、析出物の密度が本発明範囲外で、本発明例の鋼板No.3に比べて割れ停止温度が高い。
【0076】
鋼種C、D、E、F、Hにおいて、焼戻し開始から焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度が1℃/s未満の鋼板No.6、8、10、12、18は、析出物の密度が本発明範囲外の比較例で、それぞれ同一の鋼種において本発明例の鋼板No.5、7、9、11、17に比べて割れ停止温度が高い。
【0077】
鋼種G、I、J、Kにおいても、焼戻し開始から焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度が1℃/s未満の鋼板No.14、16、20、22、24、26、28、30は、析出物の平均粒子径、析出物の密度のいずれかまたは両方が本発明範囲外の比較例で、それぞれ同一の鋼種において本発明例の鋼板No.13、15、19、21、23、25、27、29に比べて割れ停止温度が高い。
【0078】
鋼種Lにおいては、焼戻し開始から焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度が1℃/s未満の鋼板No.32は、析出物の密度が本発明範囲外で、本発明例の鋼板No.31に比べて割れ停止温度が高い。
【0079】
鋼組成が本発明範囲を外れている鋼板No.33、34、35、36は、析出物の密度も本発明範囲外のため、それぞれ同様のPcmを有していて、かつ板厚が同じ本発明例の鋼板No.13、23、31、31に比較して、割れ停止温度が高い。
【0080】
実施例1〜36において残留オーステナイト量の体積分率が多いものは少ないものより、ルート割れ率が小さい傾向が認められた。尚、本発明例はいずれも引張強度600MPa以上であった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】母材のPCM値とルート割れが生じなくなる母材の予熱温度との関係を示す図。




 

 


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