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発明の名称 成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9320(P2007−9320A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2006−1477(P2006−1477)
出願日 平成18年1月6日(2006.1.6)
代理人 【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
発明者 松田 広志 / 中垣内 達也 / 二塚 貴之 / 高木 周作 / 長滝 康伸
要約 課題
特別な前組織制御が必要なく、焼鈍後のオーステンパ処理時間を十分に確保するためのライン仕様を有しない溶融亜鉛めっき製造ラインを用いて製造可能な、秀逸した加工性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。

解決手段
高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:1.4%以下(0%を含む)、Mn:0.08〜3%、P:0.003〜0.1%、S:0.07%以下、Al:0.1〜2.5%、Cr:0.1〜0.5%、N:0.007%以下、Si+Al≧0.5%であって、残部がFeおよび不可避不純物からなり、残留オーステナイトを体積分率で3%以上含み、かつ、残留オーステナイト粒の平均アスペクト比が2.5以下である。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:1.4%以下(0%を含む)、Mn:0.08〜3%、P:0.003〜0.1%、S:0.07%以下、Al:0.1〜2.5%、Cr:0.1〜0.5%、N:0.007%以下、Si+Al≧0.5%であって、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
残留オーステナイトを体積分率で3%以上含み、かつ、残留オーステナイト粒の平均アスペクト比が2.5以下であることを特徴とする成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
質量%で、V:0.005〜2%、Mo:0.005〜2%から選ばれる1種または2種の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
質量%で、Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.005%、Ni:0.005〜2.0%、Cu:0.005〜2.0%から選ばれる1種または2種以上の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:1.4%以下(0%を含む)、Mn:0.08〜3%、P:0.003〜0.1%、S:0.07%以下、Al:0.1〜2.5%、Cr:0.1〜0.5%、N:0.007%以下、Si+Al≧0.5%であって、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼板を、700〜900℃の第一温度域で15〜600秒間焼鈍した後、5℃/秒以上の冷却速度で360〜490℃の第二温度域まで冷却し、前記第二温度域での保持時間を下記の(1)式に基づいて制御することを特徴とする成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
5≦t≦200−0.003×(T−350) ・・・(1)
ただし、tは360〜490℃の温度域に保持される全時間(秒)であり、Tは360〜490℃の温度域に保持される全時間における平均温度(℃)である。
【請求項5】
前記鋼板は、質量%で、V:0.005〜2%、Mo:0.005〜2%から選ばれる1種または2種の元素をさらに含有することを特徴とする請求項4に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記鋼板は、質量%で、Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.005%、Ni:0.005〜2.0%、Cu:0.005〜2.0%から選ばれる1種または2種以上の元素をさらに含有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電気等の産業分野で使用される成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の見地から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。このため、車体材料を高強度化して薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しようとする開発が活発に行われている。しかし、一般的に鋼板の高強度化は成形加工性の低下を招く。そのため、高強度と高加工性を併せ持つ材料の開発が望まれている。
【0003】
このような要求を満たす材料として、残留オーステナイトの変態誘起塑性を利用したTRIP鋼が注目を浴び、これまでにその効果を有効に活用するために種々の鋼板が開発されてきた。例えば、特許文献1には、化学成分および鋼板中の残留オーステナイト量を制御することによるプレス成形性に優れた鋼板が開示されており、特許文献2にはそのような鋼板の製造方法が開示されている。特許文献3には、5%以上の残留オーステナイトを含む加工性(特性に局部延性)に優れる鋼板が開示されている。特許文献4には、3%以上の残留オーステナイトを含有し、かつ、その平均軸比を3〜20とし、母相の平均硬度を270Hv以下とすることにより伸びフランジ性と張出し性を両立させた鋼板が開示されている。
【0004】
また特許文献5,6には、焼き戻しマルテンサイトまたは焼き戻しベイナイトを50%以上含有し、かつ、3%以上の残留オーステナイトを含有することにより、高延性と高伸びフランジ性を両立した鋼板が開示されている。特許文献7には、残留オーステナイトの体積分率とそのC含有量およびフェライト相のアスペクト比を適正にすることにより、予加工を施した後の成形性に優れる鋼板とその製造方法が開示されている。
【0005】
さらに特許文献8には、3%以上の残留オーステナイトを含有し、かつ、その粒の70%以上は短径/長径の比が0.2〜0.4、すなわち、アスペクト比が2.5〜5である強度−伸びバランスおよび疲労特性に優れる高張力溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。また特許文献9では、特許文献8に開示された鋼板を、さらに低温変態相中のマルテンサイトの比率が20%以下で、かつ、低温変態相中のベイナイトと主相のフェライトの硬度比が2.6以下とすることにより、穴拡げ性にも優れる鋼板としている。
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下に述べる問題がある。すなわち、特許文献1,2に開示された鋼板では、TRIP効果の活用により延性は十分に得られるものの、伸びフランジ性はフェライト−マルテンサイト二相鋼以下の特性となる。特許文献3に開示された鋼板では、高歪域まで歪誘起変態を起こし難くすることにより局部伸びを向上させているが、打ち抜き端面等の強加工を受けた部分では歪誘起変態を起こしてしまうので、その後の伸びフランジ性の向上効果は小さい。特許文献4に開示された鋼板では、3%以上の残留オーステナイトを含有し、かつ、その平均軸比を3〜20とすることが必要であるが、このように平均軸比を3以上の所謂ラス状とするためには、最終的な熱処理工程でベイナイト変態を十分に進める必要がある。つまり、最終熱処理工程のオーステンパ時間を長くする必要があるが、特に従来の溶融亜鉛めっきラインでは時間確保が難しく、ライン速度を低減する等の対応が必要となり、生産性が低下する。
【0007】
特許文献5,6に開示された鋼板では、焼き戻しマルテンサイトまたは焼き戻しベイナイトを50%以上含有し、かつ、3%以上の残留オーステナイトを含有することが必要であるが、前組織をベイナイトやマルテンサイト組織にする場合、熱延工程で通常の条件とは異なる熱処理を施すかまたは連続焼鈍を2回施す必要がある。こうして熱延工程でベイナイトやマルテンサイト組織を生成させた場合には、熱延工程終了後の鋼板強度が高く、冷間圧延時の冷圧負荷が増加するため、ライン制約を受ける。また、焼鈍工程を2回繰り返すと、製造コストが著しく増加する。
【0008】
特許文献7に開示された鋼板では、残留オーステナイトの体積分率、C含有量、フェライト相のアスペクト比を適正にすることが必要であるが、アスペクト比の増加およびC濃化促進のためには、ベイナイト変態温度域で比較的長時間保持する所謂オーステンパ処理が必要である。このため、焼鈍後のオーステンパ処理時間を十分に確保するためのライン仕様を有しない溶融亜鉛めっき製造ラインにおいては、通板速度を低下させる等の対応が必要となり、生産性の著しい低下を招く。特許文献8,9に開示された鋼板では、最終焼鈍前の組織をベイナイトやマルテンサイト等の低温変態相を含む組織で構成する必要があり、このような組織は熱延工程で生成させるかまたは焼鈍工程を2回繰り返して生成させる必要がある。このような工程を設けることには、前述の通り、ライン制約を受けたり製造コストの増加を招くという問題がある。
【特許文献1】特許第2660644号公報
【特許文献2】特許第2704350号公報
【特許文献3】特許第3317303号公報
【特許文献4】特開2000−54072号公報
【特許文献5】特開2002−302734号公報
【特許文献6】特開2002−309334号公報
【特許文献7】特開2001−254138号公報
【特許文献8】特開2004−256836号公報
【特許文献9】特開2004−292891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、特別な前組織制御が必要なく、また焼鈍後のオーステンパ処理時間を十分に確保するためのライン仕様を有しない溶融亜鉛めっき製造ラインを用いて製造可能であり、秀逸した加工性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記課題を解決すべく、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の機械特性に影響を与える原因について検討した。具体的には、化学成分、オーステンパ条件と生成組織(残留オーステナイトの状態)の関係を詳細に調査し、さらにその生成組織と機械特性の関係を明確にした。その結果、Cr量を適当量(0.1〜0.5%)添加することにより、Cr無添加鋼やCr多量添加鋼とは異なる挙動を示すこと、さらにその特性を積極的に活用することにより、従来とは異なった機械特性に優れる鋼板が得られることを知見した。
【0011】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:1.4%以下(0%を含む)、Mn:0.08〜3%、P:0.003〜0.1%、S:0.07%以下、Al:0.1〜2.5%、Cr:0.1〜0.5%、N:0.007%以下、Si+Al≧0.5%であって、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
残留オーステナイトを体積分率で3%以上含み、かつ、残留オーステナイト粒の平均アスペクト比が2.5以下であることを特徴とする成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(2)上記(1)において、質量%で、V:0.005〜2%、Mo:0.005〜2%から選ばれる1種または2種の元素をさらに含有する成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(3)上記(1)または(2)において、質量%で、Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.005%、Ni:0.005〜2.0%、Cu:0.005〜2.0%から選ばれる1種または2種以上の元素をさらに含有する成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:1.4%以下(0%を含む)、Mn:0.08〜3%、P:0.003〜0.1%、S:0.07%以下、Al:0.1〜2.5%、Cr:0.1〜0.5%、N:0.007%以下、Si+Al≧0.5%であって、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼板を、700〜900℃の第一温度域で15〜600秒間焼鈍した後、5℃/秒以上の冷却速度で360〜490℃の第二温度域まで冷却し、前記第二温度域での保持時間を下記の(1)式に基づいて制御することを特徴とする成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
5≦t≦200−0.003×(T−350) ・・・(1)
ただし、tは360〜490℃の温度域に保持される全時間(秒)であり、Tは360〜490℃の温度域に保持される全時間における平均温度(℃)である。
(5)上記(4)において、前記鋼板は、質量%で、V:0.005〜2%、Mo:0.005〜2%から選ばれる1種または2種の元素をさらに含有することを特徴とする成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(6)上記(4)または(5)において、前記鋼板は、質量%で、Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.005%、Ni:0.005〜2.0%、Cu:0.005〜2.0%から選ばれる1種または2種以上の元素をさらに含有することを特徴とする成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別な前組織制御を必要とすることなく、また焼鈍後のオーステンパ処理時間を十分に確保するためのライン仕様を有しない溶融亜鉛めっき製造ラインを用いて製造可能な、成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板について詳細に説明する。
まず、本発明に至った経緯について説明する。図1はオーステンパ時間とTS×T.Elバランスの関係を示す図である。A鋼はCr含有量が0.3%の鋼であり、一方、B鋼はCr無添加鋼である。図1に示すように、A鋼はB鋼と比較して、短時間のオーステンパ処理でも優れた機械特性が得られている。また、A鋼はオーステンパ処理を長時間行った場合も、優れた特性の状態で安定しているのに対し、B鋼ではオーステンパ処理時間の増加にともなって機械特性が向上した後、さらに長時間のオーステンパ処理を行うと特性が低下しており、優れた特性が得られる範囲が狭いことがわかる。短時間のオーステンパ処理で特性確保が可能ということは、長時間のオーステンパ処理ができないCGLラインでの製造時において、通板速度を低下させることなく製造可能なことを示しており、量産性(生産性)の面で有利である。また、鋼板を実機にて製造する際には、同一の鋼種であっても板厚の違い等により通板速度を変化させる場合があるが、機械特性がオーステンパ時間によって大きく変化しないということは、鋼板量産時の機械特性の安定性を確保する面から有利である。
【0014】
図2は、図1に示したA鋼を条件X1,X2で、B鋼を条件Y1,Y2でそれぞれ熱処理した鋼板の伸びフランジ性を限界穴拡げ率λ(%)(測定方法等の詳細は後述する)で評価した結果を示す図である。この図から、これらはTS×T.Elバランスは同等であるものの、Cr添加鋼であるA鋼の伸びフランジ特性は、Cr無添加鋼であるB鋼に比べて、優れていることがわかる。
【0015】
発明者らは、Cr添加の有無によってこのような差が生じる原因について詳細に調査した。その結果、従来、TRIP鋼で高延性を得るためには、ベイナイト変態により残留オーステナイト中へのC濃化を促進することにより、より高延性が得られるとされてきたが、Crを適当量添加した場合には、ベイナイト変態があまり進行せずに残留オーステナイトが比較的塊状に近い場合においても、十分な特性が得られることを知見した。
【0016】
この点についてさらに詳細に説明する。図3は残留オーステナイト粒のアスペクト比とTS×T.Elバランスの関係を示す図、図4は残留オーステナイト粒のアスペクト比と限界穴拡げ率λの関係を示す図である。これらの図に示すように、Cr無添加鋼では、アスペクト比が低い場合には穴拡げ率は高く、伸びフランジ性も良好であるが、TS×T.Elバランスは低くなる。逆に、アスペクト比が高い場合には、TS×T.Elバランスは向上するものの、伸びフランジ性は低下する。これに対して、Crを適当量添加した場合(Cr:0.1〜0.5%)には、アスペクト比が高い場合にはCr無添加鋼と同様の傾向を示すが、アスペクト比が低い場合においてもTS×T.Elバランスが低下しないことがわかる。また、Cr添加量が0.5%を超えた場合には、高アスペクト比の材料は得られず、低アスペクト比でTS×T.Elバランスは低く、かつ、穴拡げ率の向上も認められなかった。
【0017】
このような結果から、Crを適当量添加し、かつ、低アスペクト比(2.5以下)にすることにより、高延性と高伸びフランジ性を両立することができる鋼板を得ることができることが見い出された。
【0018】
以上の結果に基づいて、Cr含有量とTS×T.Elバランスとの関係およびCr含有量と穴拡げ率との関係をそれぞれ図5,図6に示す。これら図5,6から、Cr含有量が本発明の範囲である0.1〜0.5%の範囲において、高延性と高伸びフランジ性が得られていることがわかる。
【0019】
このような現象が生じる理由は必ずしも明確ではないが、通常、TRIP鋼はベイナイト変態により残留オーステナイト中へCを濃化させてその安定性を高めることによりTRIP効果を有効に活用でき、高延性が得られるとされているのに対し、Crを適当量含有させた鋼板で得られたアスペクト比が低い状態はベイナイト変態があまり進行していない状態と考えられ、Crを適当量含有させた鋼板ではC濃化が少なくてもTRIP効果が有効に活用できている可能性等が考えられる。なお、Cr添加量を0.5%超とした場合にこの現象が消失する理由としては、安定度が著しく高くなり、TRIP効果が発現しなくなるという可能性が考えられる。
【0020】
本発明は、このように適当量のCrを含有させることにより、ベイナイト変態があまり進行していない、結晶粒のアスペクト比が低い状態の残留オーステナイトにおいても高延性を得ることができ、かつ、高伸びフランジ性との両立を達成可能とするものである。
【0021】
次に、本発明の鋼板の化学成分組成について説明する。なお、鋼板組成についての‘%’は‘質量%’をいう。
【0022】
C:0.05〜0.3%
Cは、オーステナイトを安定化させる元素であり、マルテンサイト量の確保および室温でオーステナイトを残留させるために必要な元素である。C量が0.05%未満では、製造条件の最適化を図ったとしても、鋼板の強度の確保と同時に残留オーステナイト量を確保し、所定の特性を引き出すことが難しくなる。一方、C量が0.3%を超えると、溶接部および熱影響部の硬化が著しく、溶接性が劣化する。こうした観点から、C含有量を0.05〜0.3%の範囲内とする。好ましくは、0.05〜0.2%である。
【0023】
Si:1.4%以下(0%を含む)
Siは、鋼の強化に有効な元素である。また、フェライト生成元素であり、オーステナイト中へのCの濃化促進および炭化物の生成を抑制することから、残留オーステナイトの生成を促進する働きがあるので、複合組織鋼およびTRIP鋼に添加されることが多い。一方、Siの過剰添加は、フェライト中への固溶量の増加による加工性、靱性の劣化、赤スケール等の発生による表面性状や溶融めっきを施す場合はめっき付着・密着性の劣化を引き起こす。したがって、Si含有量を1.4%以下(0%を含む)とする。
【0024】
Mn:0.08〜3%
Mnは、鋼の強化に有効な元素である。また、オーステナイトを安定化させる元素であり、マルテンサイトや残留オーステナイトの体積の増加に必要な元素である。この効果は、Mnが0.08%以上で得られる。一方、Mnを3%を超えて過剰に添加すると、第二相分率過大や固溶強化による強度上昇が著しくなる。したがって、Mn含有量を0.08〜3%とする。
【0025】
P:0.003〜0.1%
Pは、鋼の強化に有効な元素であり、この効果は含有量が0.003%以上で得られる。しかし、0.1%を超えて過剰に添加すると、粒界偏析により脆化を引き起こし、耐衝撃性を劣化させる。したがって、P含有量を0.003〜0.1%とする。
【0026】
S:0.07%以下
Sは、MnS等の介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるので、極力低い方がよいが、製造コストの面から、S含有量を0.07%以下とする。
【0027】
Al:0.1〜2.5%
Alは、フェライト生成元素であり、オーステナイト中へのCの濃化促進および炭化物の生成を抑制することから、残留オーステナイトの生成を促進する働きがある。また、Alは、Siによるめっき性およびめっき表面性状の劣化を抑制する働きがあり、この効果は、Al≧0.1%で得られる。このように、Alは複合組織鋼およびTRIP鋼に多量に添加される場合があるが、過剰な添加はフェライトの脆化を招き、材料の強度−延性バランスを劣化させることになる。また、2.5%を超えて添加すると、鋼板中の介在物が多くなり、延性を劣化させる。したがって、Al含有量を0.1〜2.5%とする。
【0028】
Cr:0.1〜0.5%
Crは、フェライト生成元素であり、オーステナイト中へのCの濃化促進および炭化物の生成を抑制することから、残留オーステナイトの生成を促進する働きがある。Crを適当量添加した場合、オーステナイトが比較的塊状に近い場合においても良好な強度−延性バランスが得られ、高延性と高伸びフランジ性を両立可能となる。この効果は、Crを0.1〜0.5%添加することにより得られるので、Cr含有量を0.1〜0.5%とする。
【0029】
N:0.007%以下
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素であり、少ないほどよく、0.007%を超えると耐時効性の劣化が顕著となる。したがって、N含有量を0.007%以下とする。
【0030】
Si+Al≧0.5%
上述したように、SiおよびAlはともにフェライト生成元素であり、残留オーステナイトの生成を促進する働きがあるが、この作用を得るためには、Si+Al≧0.5%とする必要がある。このため、Si+Al≧0.5%とする。
【0031】
以上の成分の他、以下のV,Moの1種または2種を選択成分として添加することができる。
V:0.005〜2%
Vは、焼鈍温度からの冷却時にパーライトの生成を抑制するため、必要に応じて添加することができる。この効果は、含有量が0.005%以上で得られる。しかし、2%を超えて添加すると、フェライト量が過少となり、加工性が低下する。したがって、Vを添加する場合にはその含有量を0.005〜2%とする。
【0032】
Mo:0.005〜2%
Moは、耐遅れ破壊性等に有効であるため、必要に応じて添加することができる。この効果は含有量が0.005%以上で得られる。しかし、含有量が2%を超えると、加工性が低下するようになる。したがって、Moを添加する場合にはその含有量を0.005〜2%とする。
【0033】
さらに以下のTi,Nb,B,Ni,Cuの1種または2種以上を選択成分として添加することができる。
Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.1%
Ti,Nbは、鋼の析出強化に有効であるため、必要に応じて添加することができる。この効果は含有量がそれぞれ0.01%以上の場合に得られ、本発明で規定した範囲内であれば、鋼の強化に使用して差し支えない。しかし、Tiでは0.5%、Nbでは0.1%を超えて添加すると、加工性および形状凍結性が低下する。したがって、Tiを添加する場合にはその含有量を0.01〜0.5%とし、Nbを添加する場合にはその含有量を0.01〜0.1%とする。
【0034】
B:0.0003〜0.005%
Bはオーステナイト粒界からのフェライトの生成を抑制する作用を有するため、必要に応じて添加することができる。その効果は、含有量が0.0003%以上で得られる。しかし、0.005%を超えて添加すると、フェライト量が過少となり、加工性が低下する。したがって、Bを添加する場合にはその含有量を0.0003〜0.005%とする。
【0035】
Ni:0.005〜2.0%、Cu:0.005〜2.0%
Ni,Cuはオーステナイト安定化元素であり、オーステナイトを残留させるとともに強度上昇にも効果がある。その効果はそれぞれ0.005%以上で得られる。しかし、それぞれ2.0%を超えて添加すると鋼板の延性を低下させる。したがって、Niを添加する場合およびCuを添加する場合にはいずれもその含有量を0.005〜2.0%とする。
【0036】
なお、以上の元素および残部のFeの他、製造過程で各種不純物元素および製造過程で必須な微量添加元素等が不可避的に混入するが、このような不可避的な不純物は本発明の効果に特に影響を及ぼすものではなく、許容される。
【0037】
上記成分組成を有する本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、さらに、残留オーステナイトの体積分率および残留オーステナイト粒の平均アスペクト比を以下のように規定する。
【0038】
残留オーステナイト量:体積分率で3%以上
成形時における残留オーステナイトの歪誘起変態を有効に活用するためには、体積分率で3%以上必要であるため、残留オーステナイトを体積分率で3%以上とする。
【0039】
残留オーステナイト粒の平均アスペクト比:2.5以下
残留オーステナイト粒のアスペクト比を増加させすぎると、伸びフランジ性が劣化するため、残留オーステナイト粒の平均アスペクト比を2.5以下とする。
【0040】
次に本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の例について説明する。
上記化学成分組成を有する鋼板を、まず700〜900℃の第一温度域、具体的には、オーステナイト単相域もしくはオーステナイト相とフェライト相の2相域で、15〜600秒間焼鈍する。焼鈍温度が700℃未満の場合や焼鈍時間が15秒未満の場合には、鋼板中の炭化物が十分に溶解しないことや、フェライトの再結晶が完了せず目標となる特性が得られないことがある。一方、焼鈍温度が900℃を超える場合には、オーステナイト粒の成長が著しく、後の冷却によって生じる第二相からのフェライトの核生成サイトの減少を引き起こす場合がある。また、焼鈍時間が600秒を超える場合には、多大なエネルギー消費に伴うコスト増の問題が生じる。
【0041】
焼鈍後、5℃/秒以上の冷却速度で、350〜600℃の第二温度域まで冷却し、この温度域で5〜200秒保持する。冷却速度が5℃/秒未満の場合には、パーライトが析出し、未変態オーステナイト中の固溶Cが大幅に低下し、目標とする組織が得られないことがある。また、この温度域での保持時間が5秒未満であると、未変態オーステナイトの安定化が進まず、3%以上の残留オーステナイトが得られずに、十分な延性を確保できないことがあり、逆に200秒を超える場合には、ベイナイト変態が著しく進み、結果として残留オーステナイト粒の平均アスペクト比が2.5を超えて、伸びフランジ性が劣化することがある。また、保持温度域が600℃を超える場合には、未変態オーステナイト中から炭化物が析出し、逆に350℃未満の温度では、下部ベイナイト変態によりベイニティックフェライト中に微細炭化物が析出して、結果として安定した残留オーステナイトが十分に得られないことがある。
【0042】
本発明者らは、良好な特性の鋼板を一層安定して得られる熱処理条件について詳細に検討した。その結果、冷延後の鋼板の熱処理において、上記第二温度域を360〜490℃とより狭い範囲に規定し、当該温度域での保持時間を下記(1)式に基づいて制御することにより、安定して3%以上の残留オーステナイトを確保し、かつ残留オーステナイト粒の平均アスペクト比を2.5以下とすることが可能であることが明確となった。
5≦t≦200−0.003×(T−350) ・・・(1)
ただし、tは360〜490℃の温度域に保持される全時間(秒)、Tは360〜490℃の温度域に保持される全時間における平均温度(℃)である。
【0043】
図7に第二温度域での温度・保持時間とアスペクト比の関係を示す。
(1)式に基づいて制御することにより、安定して3%以上の残留オーステナイトを確保し、かつ残留オーステナイト粒の平均アスペクト比を2.5以下とすることが可能であることがわかる。
【0044】
第二温度域での保持の後に、溶融亜鉛めっきを施すが、このめっき浴温度は通常の450〜500℃の範囲であればよく、さらに加えて合金化処理を施す場合には、600℃以下で処理することが好ましい。これは、めっき浴温度が600℃超であれば、上述したように、未変態オーステナイト中から炭化物が析出して安定した残留オーステナイトを得ることができず、延性の劣化が生じるためである。
【0045】
なお、本発明の製造方法における一連の熱処理においては、規定した温度範囲内であれば、保持温度は一定である必要はなく、また冷却速度が冷却中に変化した場合においても、規定した範囲内であれば何ら問題はない。また、熱履歴さえ満足されれば、鋼板はいかなる設備で熱処理を施されても構わない。加えて、熱処理後に形状矯正のため本発明の鋼板に調質圧延してもよい。なお、本発明では、鋼素材を通常の製鋼、鋳造、熱延の各工程を経て製造することが好ましいが、例えば、薄手鋳造等により熱延工程の一部もしくは全部を省略して製造してもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更することなく、変更を加えることが許されることは言うまでもない。
表1に示す化学成分の鋼を溶製して得た鋳片を熱圧、酸洗、冷間圧延によって1.2mm厚の冷延鋼板とした。その後、表2,3に示す条件で熱処理後、463℃の亜鉛めっき浴で目付け量50/50g/mのめっきを施し、めっき層のFe%を9質量%となるように合金化処理を施した。得られた鋼板に対しては、0.3%の調質圧延を施した。なお、鋼材のN量は、0.0020〜
0.0060質量%であった。
【0047】
鋼板断面(圧延方向に平行な面)組織は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍で10視野観察し、観察された各残留オーステナイト粒のアスペクト比(長辺/短辺)を測定し、その平均値を平均アスペクト比とした。また、観察したSEM像を画像処理することで残留オーステナイト量を求めた。
【0048】
また、引張試験は、鋼板をJIS5号試験片に加工して行い、TS(引張り強さ)、T.El(全伸び)を測定し、強度と全伸びの積(TS×T.El)で表される強度−伸びバランスの値を求めた。なお、本発明では、TS×T.El≧19800MPa・%の場合を良好と判定した。
【0049】
伸びフランジ性は、得られた各鋼板を100mm×100mmに切断後、クリアランス12%で直径10mmの穴を打ち抜いた後、内径75mmのダイスを用いて9tonのしわ押さえ力で押さえた状態で、60°円錐のポンチを穴に押し込んで亀裂発生限界における穴直径を測定し、下記(2)式から限界穴拡げ率λ(%)を求め、この限界穴拡げ率の値から伸びフランジ性を評価した。なお、本発明では、限界穴拡げ率λ≧50%を良好と判定した。
限界穴拡げ率λ(%)={(D−D)/D}×100・・・(2)
但し、D:亀裂発生時の穴径(mm),D:初期穴径(mm)
【0050】
表2,3に上記試験結果を併記する。これらの結果から、本発明で規定する要件を満足する鋼板は、強度−伸びバランスの値と伸びフランジ性のバランスの両方に優れ、目標とした特性が得られていることがわかる。また、本発明で規定する要件を満足する条件で製造することにより、目標とした特性が安定して得られていることがわかる。
【0051】
【表1】


【0052】
【表2】


【0053】
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、軽量で高強度であり、しかも高い加工性が要求される自動車等の車両用鋼板として広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】0.3%Cr鋼とCr無添加鋼の、オーステンパ時間とTS×T.Elバランスの相関を示すグラフ。
【図2】0.3%Cr鋼とCr無添加鋼の限界穴拡げ率を示すグラフ。
【図3】残留オーステナイト粒のアスペクト比とTS×T.Elバランスの関係を示すグラフ。
【図4】残留オーステナイト粒のアスペクト比と限界穴拡げ率の関係を示すグラフ。
【図5】Cr添加量とTS×T.Elバランスの関係を示すグラフ。
【図6】Cr添加量と穴拡げ率の関係を示すグラフ。
【図7】第二温度域での平均保持温度と第二温度域での保持時間との関係を示すグラフ。




 

 


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