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発明の名称 伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板とそれらの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9317(P2007−9317A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−311396(P2005−311396)
出願日 平成17年10月26日(2005.10.26)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 岩間 隆史 / 川邉 英尚 / 長滝 康伸 / 田中 靖
要約 課題
従来のDP鋼と同等の特性を保ちながら、伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供する。

解決手段
C:0.03〜0.15%、Mn:1.4〜3.5%、P:0.05%以下、S: 0.01%以下、Al:0.15%以下、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.04%、B:0.0003〜0.0020%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト相とオーステナイト低温変態相を含む組織を有し、前記フェライト相の平均結晶粒径dαの1.5倍以上の粒径を持つ前記オーステナイト低温変態相の面積AMLと、前記オーステナイト低温変態相の総面積AMの比率AML/AMが0.30以上である高強度冷延鋼板または溶融亜鉛めっき鋼板。
特許請求の範囲
【請求項1】
mass%で、C:0.03〜0.15%、Mn:1.4〜3.5%、P:0.05%以下、S: 0.01%以下、Al:0.15%以下、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.04%、B:0.0003〜0.0020%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト相とオーステナイト低温変態相を含む組織を有し、前記フェライト相の平均結晶粒径dαの1.5倍以上の粒径を持つ前記オーステナイト低温変態相の面積AMLと、前記オーステナイト低温変態相の総面積AMの比率AML/AMが0.30以上であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板。
【請求項2】
mass%で、C:0.03〜0.15%、Mn:1.4〜3.5%、P:0.05%以下、S: 0.01%以下、Al:0.15%以下、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.04%、B:0.0003〜0.0020%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト相とオーステナイト低温変態相を含む組織を有し、前記フェライト相の平均結晶粒径dαの1.5倍以上の粒径を持つ前記オーステナイト低温変態相の面積AMLと、前記オーステナイト低温変態相の総面積AMの比率AML/AMが0.30以上であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
さらに、mass%で、Si:0.4%未満を含有することを特徴とする請求項1に記載の伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板。
【請求項4】
さらに、mass%で、Si:0.4%未満を含有することを特徴とする請求項2に記載の伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
さらに、mass%で、Cr:0.05〜0.5%、V:0.005〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%のうち1種以上含有することを特徴とする請求項1または3に記載の伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板。
【請求項6】
さらに、mass%で、Cr:0.05〜0.5%、V:0.005〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%のうち1種以上含有することを特徴とする請求項2または4に記載の伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
請求項1、3、5のいずれかに記載の成分からなる鋼を、
熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を行い高強度冷延鋼板を製造するに際し、
前記熱間圧延では、仕上げ圧延温度をAr3以上、巻取り温度を450℃以上700℃以下とし、
前記連続焼鈍では、(0.85Ac3+0.15Ac1)以上(1.4Ac3−0.4Ac1)以下の温度範囲で30s以上240s以下保持した後、15℃/s未満の速度にて冷却し、450℃以上600℃以下の温度範囲にて10s以上120s以下保持した後冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記仕上げ圧延温度が(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下であることを特徴とする請求項7に記載の伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
【請求項9】
請求項2、4、6のいずれかに記載の成分からなる鋼を、
熱間圧延、冷間圧延を行い、溶融亜鉛めっき工程を経て溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに際し、
前記熱間圧延では、仕上げ圧延温度をAr3以上、巻取り温度を450℃以上700℃以下とし、
前記溶融亜鉛めっき工程では、(0.85Ac3+0.15Ac1)以上(1.4Ac3−0.4Ac1)以下の温度範囲で30s以上240s以下保持した後、15℃/s未満の速度にて冷却し、450℃以上600℃以下の温度範囲にて10s以上120s以下保持した後冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記仕上げ圧延温度が(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下であることを特徴とする請求項9に記載の伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は主にメンバー、ロッカー等の自動車の構造部品に使用される、伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板とそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の衝突安全性能を高める(自動車が走行中に物体と衝突した際、衝撃に対する部材のエネルギー吸収能を高め、乗員への衝撃負荷を低減させることで乗員の生命の安全性を高める)目的や、排気ガス規制に伴う燃費向上を目的とした車体軽量化(部品の薄肉化)を図る目的で、メンバー、ロッカー等の各種自動車構造部品に高強度鋼板の適用が進められている。
【0003】
一方で、鋼板の高強度化に伴い、プレス成形性を支配する重要な特性である延性や伸びフランジ成形性が低下するため、プレス成形時の割れなどの不具合が多くなる傾向にある。そのため、部品によっては高強度鋼板の適用が非常に困難になっているのが現状である。延性低下に関しては、部品形状の見直しやデュアルフェイズ(DP)鋼および残留γ鋼などの適用により解決される場合がある。しかし、伸びフランジ成形性低下による割れに関しては、残留γ鋼や従来のDP鋼では十分な伸びフランジ成形性が無いため、部品形状見直しによる成形性改善が出来ない場合は、高強度鋼板の適用が不可能となってしまい、自動車メーカーが必要とする水準の車体軽量化が達成されなくなってしまう。そのため、今後、より高度になると思われる車体軽量化のニーズに応えるには、伸びフランジ成形性に優れた高強度鋼板が必要となるのは明らかである。
【0004】
このような現状の中で、高強度鋼板としては、比較的特性バランスに優れている点で、従来よりDP鋼が汎用的に使用されている。
【0005】
例えば、DP鋼の伸びフランジ成形性向上に関しては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載の発明が挙げられる。
【0006】
特許文献1では、連続溶融亜鉛めっき工程において、焼鈍後の冷却を2段階に変化させ、合金化後の冷却速度を制御することで均一微細組織を得て、その結果、高強度で高穴拡げ率を達成できる旨が記載されている。
【0007】
特許文献2においては、鋼板表層のSiを低めに制御することでめっき性を確保し、内層のSiを高めることで、ベイナイト中のセメンタイトを微細化し、伸びフランジ成形性を向上させる旨が記載されている。
【0008】
特許文献3においては、マルテンサイトを微細化することで、伸びフランジ成形時にフェライト/マルテンサイト界面のボイドの生成を抑制し、成形性を向上させる旨が記載されている。
【0009】
特許文献4においては、ベイナイトを必須とした合金相構成で、C、Si、Mnとベイナイト面積率制御およびMnSなどの析出物低減することで、伸びフランジ成形性を向上させる旨が記載されている。
【0010】
特許文献5においては、熱間圧延の仕上げ圧延温度と巻取り温度の制御によりフェライト+セメンタイトの熱延組織を得、その後、冷間圧延に続く焼鈍工程において、γ単相域焼鈍後、2相域で焼鈍することにより、バンド組織の無い組織が安定して得ることで曲げ性を向上させる旨が記載されている。
【0011】
特許文献6においては、Ti、Nbなどのマイクロアロイを添加することにより、析出強化および細粒化強化を有効活用する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平4-173946号公報
【特許文献2】特開平6-116681号公報
【特許文献3】特開2003-213369号公報
【特許文献4】特開2004-346362号公報
【特許文献5】特許3610883号公報
【特許文献6】特開昭57-85963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1および特許文献5では急速冷却が必要なため、特許文献2では表層/内部の傾斜組成を持つ鋼を鋳造するため、新たな設備導入や増強の必要がある。また、製造時におけるCALでの冷速のバラツキもしくは鋳造条件のバラツキによる材質への影響が大きいため生産性を阻害しかねる等の問題がある。
【0013】
特許文献3では、第2相分率が実質20%以下であり、780MPa超級の高強度鋼板への適用は困難であることから、将来的に継続されると予想される車体軽量化への寄与が困難となること、および上記特許文献1、2、5に関するものと同様の問題がある。
【0014】
特許文献4では、Siが0.4mass%以上が必須であるため、冷延鋼板では化成処理性、溶融亜鉛めっき鋼板ではめっき品質の安定性の低下が懸念され、製品の安定供給が困難となることが考えられる。
【0015】
また、一般にDP鋼はCおよびMn、Cr、Mo等の焼入れ強化元素にて成分設計される。しかし780MPa級以上の強度になると、CおよびMn、Cr、Mo等の焼入れ強化元素のみの強化ではスポット溶接の炭素当量の増大により、十分なスポット溶接継手特性(十字引張強度)を維持出来ない課題がある。これに対し、溶接性におよぼす影響を最小限にして強化する方法として、析出強化および細粒化強化がある。この析出強化および細粒化強化を有効活用する技術として、特許文献1および6で開示されているように、Ti、Nbなどのマイクロアロイ添加が行なわれてきた。しかし析出強化、細粒化強化は、伸びフランジ成形性に対しては向上効果があるものの、一般に、延性を劣化させたり、降伏強度が上昇してプレス成形性を損なう等の問題が有る。また、フェライト析出強化による強化代は、製造条件(スラブ加熱、熱延、冷延、焼鈍熱サイクル)に影響されやすいため、実生産においては材質の不安定化の原因となりやすい。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑み、従来のDP鋼と同等の特性を保ちながら、伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らが鋭意研究した結果、オーステナイト低温変態相の結晶粒径が、伸びフランジ成形性に影響をおよぼす因子であることを新たに見出した。また、オーステナイト低温変態相の結晶粒粗大化は、粒成長をピン止めする炭化物の溶解により成し得るものであり、Nb、Tiの成分範囲の制御と、焼鈍温度および冷却停止保持温度を中心とする焼鈍条件を規定することにより達成されることも見出した。そして、オーステナイト低温変態相の結晶粒を粗大化することにより、従来鋼で得られるオーステナイト低温変態相と比較して濃化元素量(主にC)が少なくなり、フェライト相との強度差が低減し、伸びフランジ成形性が向上すると考えられる。
【0018】
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]mass%で、C:0.03〜0.15%、Mn:1.4〜3.5%、P:0.05%以下、S: 0.01%以下、Al:0.15%以下、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.04%、B:0.0003〜0.0020%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト相とオーステナイト低温変態相を含む組織を有し、前記フェライト相の平均結晶粒径dαの1.5倍以上の粒径を持つ前記オーステナイト低温変態相の面積AMLと、前記オーステナイト低温変態相の総面積AMの比率AML/AMが0.30以上であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板。
[2]mass%で、C:0.03〜0.15%、Mn:1.4〜3.5%、P:0.05%以下、S: 0.01%以下、Al:0.15%以下、N:0.01%以下、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.04%、B:0.0003〜0.0020%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、フェライト相とオーステナイト低温変態相を含む組織を有し、前記フェライト相の平均結晶粒径dαの1.5倍以上の粒径を持つ前記オーステナイト低温変態相の面積AMLと、前記オーステナイト低温変態相の総面積AMの比率AML/AMが0.30以上であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
[3]前記[1]において、さらに、mass%で、Si:0.4%未満を含有することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板。
[4]前記[2]において、さらに、mass%で、Si:0.4%未満を含有することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
[5]前記[1]または[3]において、さらに、mass%で、Cr:0.05〜0.5%、V:0.005〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%のうち1種以上含有することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板。
[6]前記[2]または[4]において、さらに、mass%で、Cr:0.05〜0.5%、V:0.005〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%のうち1種以上含有することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
[7]前記[1]、[3][5]のいずれかに記載の成分からなる鋼を、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を行い高強度冷延鋼板を製造するに際し、前記熱間圧延では、仕上げ圧延温度をAr3以上、巻取り温度を450℃以上700℃以下とし、前記連続焼鈍では、(0.85Ac3+0.15Ac1)以上(1.4Ac3−0.4Ac1)以下の温度範囲で30s以上240s以下保持した後、15℃/s未満の速度にて冷却し、450℃以上600℃以下の温度範囲にて10s以上120s以下保持した後冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
[8]前記[7]において、前記仕上げ圧延温度が(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
[9]前記[2]、[4]、[6]、[8]のいずれかに記載の成分からなる鋼を、熱間圧延、冷間圧延を行い、溶融亜鉛めっき工程を経て溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに際し、前記熱間圧延では、仕上げ圧延温度をAr3以上、巻取り温度を450℃以上700℃以下とし、前記溶融亜鉛めっき工程では、(0.85Ac3+0.15Ac1)以上(1.4Ac3−0.4Ac1)以下の温度範囲で30s以上240s以下保持した後、15℃/s未満の速度にて冷却し、450℃以上600℃以下の温度範囲にて10s以上120s以下保持した後冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[10]前記[9]において、前記仕上げ圧延温度が(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0019】
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべてmass%である。
【0020】
また、本発明において、高強度冷延鋼板とは、例えば、メンバー、ロッカー等の自動車の構造部品として好適な引張り強さが590MPa以上の冷延鋼板である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来のDP鋼と同等の特性を保ちながら、伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。そして、本発明の高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板は、今後増加することが予想される、自動車構造部品用鋼板の高強度化の要求に適用可能となることから、自動車業界における本発明の利用価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板は、Nb、Tiを中心に下記に示す成分組成に制御し、オーステナイト低温変態相の結晶粒が粗大化した粗大相の割合、すなわち、フェライト相の平均結晶粒径dαの1.5倍以上の粒径を持つオーステナイト低温変態相の面積AMLと、オーステナイト低温変態相の総面積AMの比率AML/AMが0.30以上とすることを特徴とする。そして、このような鋼板は、熱間圧延、冷間圧延後、Ac3点近傍で焼鈍後、冷却サイクルを制御することで得られる。また、本発明の鋼板は前記特徴を有することで、オーステナイト低温変態相の粗大化を促進しフェライト相と第2相の合金相間の硬度差を低減することが可能となり、従来のDP鋼と同等の特性を保ちながら、伸びフランジ成形性の向上を図ることが可能となる。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明における鋼の化学成分の限定理由について説明する。なお、化学成分に関する%はmass%をいう。
【0025】
C:0.03〜0.15%
Cは鋼の強化に有効な元素であり、強化能を得るためには、0.03%以上の添加を必要とする。一方、C量が0.15%を超えると第2相の硬化が顕著となり、伸びフランジ成形性が低下する。以上から、C量は0.03%以上0.15%以下の範囲とする。
【0026】
Mn:1.4〜3.5%
Mnは鋼の焼入れ強化に有効な元素であり、添加を必要とする。しかし、Mn量が1.4%未満の場合、焼入れ性が低下し、加熱後の冷却段階で、延性を劣化させるパーライトが形成され易くなる。一方、Mn量が3.5%を超えると、溶製された鋼をスラブに鋳造する際、スラブ表面やコーナー部に割れが発生し易くなる。さらに、スラブを熱間圧延し、引き続いて冷間圧延および焼鈍を施して得られた鋼板では、表面欠陥が顕在化する。以上より、Mn量は1.4%以上3.5%以下の範囲とする。
【0027】
P≦0.05%
Pは鋼の強化に有効な元素であり、適宜添加することができる。しかし、スポット溶接における十字引張強度確保の観点から、P量は0.05%以下とする。
【0028】
S≦0.01%
Sは鋼中に過剰に存在すると、スラブ加熱時にオーステナイトの結晶粒界に偏析し、熱間圧延の際、鋼板表層部から赤熱脆性が起こり易くなる。特に、S量が0.01%を超えると、この悪影響が懸念される。このため、S量は0.01%以下とする。スポット溶接における十字引張強度確保の観点からは、0.005%以下がより好ましく、さらに、穴拡げ性の観点から、0.002%以下とするのがさらに好ましい。
【0029】
N≦0.01%
Nは鋼中に過剰に存在すると、鋳造時にスラブ表面に割れが発生するばかりか、溶融亜鉛を施す場合に亜鉛めっき後の鋼板の延性も劣化する。これらは、N量が0.01%を超えると顕著となるため、N量は0.01%以下とする。より好ましくは、0.006%以下である。
【0030】
Al≦0.15%
Alは焼鈍時に、めっき性を阻害する表層へのMn、Si系の酸化物の形成を抑制し、めっき表面外観を向上させる効果がある。材質的にはAc3変態点を上昇させ、フェライト+オーステナイト2相域を拡大することで、適正焼鈍温度範囲を拡大する効果もある。しかし0.15%を超えるとAc3点が上昇し過ぎ、製造不能となるため、Al量は0.15%以下の範囲とする。より好ましくは0.05%以下である。
【0031】
Nb:0.005〜0.04%
Nbは本発明において重要な元素である。Nbは鋼中において固溶状態で存在し、また、炭化物を形成することにより、熱間圧延時にオーステナイトを細粒化して、これから変態するフェライト、パーライト等の熱延板組織を微細化し、冷間圧延後、焼鈍段階で形成されるフェライトおよびオーステナイトの微細化および析出強化付与にも寄与する。その際、後述する本発明で規定する温度範囲にて焼鈍することで炭化物が溶解し、オーステナイトの粗大化を促進する。その結果、冷却時に起こるオーステナイト粒界からのフェライト生成を抑制し、冷却停止後、後述する温度範囲で保持することにより、フェライト中のNbC再析出および低温でのフェライト生成(ベイニティックフェライト、アシキュラーフェライトなど低温変態フェライト)が促進され、硬度の高いフェライトが生成する。さらに、オーステナイトの粗大化については、オーステナイト中の元素濃化(主にC)を抑制するため、最終的に生成する低温変態相の強度を低減することが出来る。さらに冷却時にNbCが再析出することも、オーステナイト中のC量低減、すなわち、最終的に生成する低温変態相の強度低減を助長するものと考えられる。以上より、従来のDP鋼と比較してフェライトとオーステナイト低温変態相の硬度差がより低減し、伸びフランジ成形性が安定的に向上する効果を得るために、Nb量は0.005%以上とする。そして、0.005%未満では組織の粗大化が顕著となり高強度が得られない他、理由が明確ではないが延性が低下してしまう。一方、Nb量が0.04%を超えると、炭化物溶解によるオーステナイト粗大化効果が得られないため、上記効果が得られない。以上より、Nb量は0.005%以上0.04%以下の範囲とする。より好ましくは、0.010%以上0.025%以下である。
【0032】
Ti:0.005〜0.05%
Tiは鋼中でCまたはNと微細炭化物や微細窒化物を形成することにより、熱延板組織ならびに焼鈍後の鋼板組織の細粒化および析出強化付与に有効に作用する。この効果を得るためには、Ti量は0.005%以上の添加を必要とする。一方、Ti量が0.05%を超えると、TiC、TiNが焼鈍中に溶解せずに残存し、上記Nbの項で述べたNbC溶解/再析出によるオーステナイト粗大化効果を抑制してしまう。以上より、Ti量は0.005%以上0.05%以下の範囲とする。
【0033】
B:0.0003〜0.0020%
Bは本発明において重要な元素である。Bは冷間圧延後、焼鈍加熱段階でオーステナイトの粒界に偏析するため、後の冷却過程にて起こるフェライトの生成を抑制し、Nbの作用と同様の理由で、低温変態フェライトの生成を促進する。この効果を得るためには、B量は0.0003%以上の添加を必要とする。一方、B量が0.0020%を超えると、上記効果が飽和するばかりか、熱間圧延時にオーステナイトの再結晶が著しく遅滞するため、熱間圧延の変形抵抗が上昇することや、熱延組織の不均一化を引き起こす。さらに、溶融亜鉛めっき後の合金化反応性が低下し、焼けムラと呼ばれる表面性状不良を引き起こす。以上より、B量は0.0003%以上0.0020%以下の範囲とする。
【0034】
本発明鋼は、上記の必須添加元素で目的とする特性が得られるが、所望の特性に応じて以下の元素を含有することができる。
【0035】
Si<0.4%
Siは鋼の強化および強度-延性バランスを向上させるのに有効な元素であり、適宜添加することができる。しかし、Si量が0.4%以上では、溶融亜鉛めっきにおける不めっきの発生や合金化処理反応性の低下を助長し、冷延鋼板として使用する場合には、化成処理性が低下するため、結果として表面品質や防錆性能が劣化する。よって、Siを含有する場合、含有量は0.4%未満とする。
【0036】
Cr、V、Moのいずれか1種以上
Cr:0.05〜0.5%
Crは鋼の焼入れ強化に有効な元素である。この効果を得るには、0.05%以上の添加を必要とする。しかし、Cr量が0.5%を超えるとこの効果は飽和し、一方で表面品質を著しく低下させる。よって、Crを含有する場合、含有量は0.05%以上0.5%以下の範囲とする。
【0037】
V:0.005〜0.5%
Vは鋼の強化に有効な元素であり、また、Vと形成される窒化物は焼鈍板組織の細粒化に寄与する。これらの効果を得るには、Vは0.005%以上の添加を必要とする。一方で、Vの添加量が0.5%を超えると、これらの効果は飽和する。よって、Vを含有する場合、含有量は0.005%以上0.5%以下の範囲とする。
【0038】
Mo:0.05〜0.5%
Moは鋼の焼入れ強化に有効な元素であり、この効果を得るには、0.05%以上の添加を必要とする。しかし、Mo量が0.5%を超えると、この効果は飽和する。よって、Moを含有する場合、含有量は0.05%以上0.5%以下の範囲とする。
【0039】
なお、上記以外の残部はFe及び不可避不純物からなる。不可避不純物として、例えば、Oは非金属介在物を形成し品質に悪影響を及ぼすため、0.003%以下に低減するのが望ましい。また、本発明では、本発明の作用効果を害さない微量元素として、Cu、Ni、W、Zr、Sn、Sbを0.1%以下の範囲で含有してもよい。
【0040】
次に、本発明の高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板の組織について説明する。
【0041】
AML/AM≧0.30
本発明の鋼板は、フェライト相とオーステナイト低温変態相で構成された組織を有することとする。なお、フェライト相とはポリゴナルフェライトおよびベイニティックフェライトを示し、オーステナイト低温変態相とはマルテンサイト、ベイナイト、パーライトを示すものである。
【0042】
そして、オーステナイト低温変態相の粗大化による伸びフランジ成形性向上効果を十分得るために、フェライト相の平均結晶粒径dαの1.5倍以上の粒径を持つオーステナイト低温変態相の面積AMLと、オーステナイト低温変態相の総面積AMの比率AML/AMは0.30以上とする。なお、ここで、フェライト相の平均結晶粒径dαは、鋼板圧延方向断面において任意に3箇所を選択し、ナイタールにてエッチングした後、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)にて1000〜3000倍にて撮影した写真および画像データより、JIS G0552に記載される方法で求めたものであり、AML/AMは、オーステナイト低温変態相の総面積AMおよびdαの1.5倍以上の結晶粒径を持つオーステナイト低温変態相の面積AMLを画像処理等で測定し求め、それを3視野分についてそれぞれ算出し、平均した値である。
【0043】
ここで、図1は、C0.06%、Si0.3%、Mn2.5%、P0.03%、S0.002%、sol.Al0.04%、N0.005%、Cr0.1%、V0.1%、Mo0.1%、Nb0.02または0.07%、Ti0.04%、B0.0010%の成分を有したスラブを仕上げ圧延温度870℃、巻取り温度600℃にて熱間圧延した後、焼鈍温度790〜940℃、焼鈍時間180s、冷却速度5℃/s、冷却停止温度500℃、冷却停止後保持時間70sにて連続焼鈍または連続溶融亜鉛めっきした鋼板のAML/AMを上記方法にて求め、焼鈍温度で整理したものである。図1より、AML/AM≧0.30とするためには、(0.85Ac3+0.15Ac1)以上(1.4Ac3−0.4Ac1)以下の焼鈍温度で焼鈍工程を施すことが必要であることが分かる。なお、焼鈍温度の限定理由については後述する。
【0044】
板厚方向の硬度変動≦40Hv
また、本発明において、板厚方向の硬度変動は40Hv以下が好ましい。限定理由を以下に詳細に示す。板厚方向の硬度変動と引張強度・穴拡げ率の積(TS×λ)の関係について調査するため、C0.06%、Si0.3%、Mn2.5%、P0.03%、S0.002%、sol.Al0.04%、N0.005%、Cr0.1%、V0.1%、Mo0.1%、Nb0.02%、Ti0.04%、B0.0010%の成分を有したスラブを仕上げ圧延温度800〜900℃、巻取り温度600℃にて熱間圧延した後、焼鈍温度800〜900℃、焼鈍時間180s、冷却速度5℃/s、冷却停止温度500℃、冷却停止後保持時間70sにて連続焼鈍または連続溶融亜鉛めっきし、鋼板を製造した。得られた鋼板について、下記方法にて板厚方向の硬度変動を測定した。ここで、穴拡げ率λは伸びフランジ成形性を表す指標であり、鉄鋼連盟規格で定められている試験方法にて測定した。また、主に自動車の構造部品において、プレス成形における伸びフランジ成形の厳しい部位を基準とした場合、割れを起こさないためには、発明者らがこれまでに蓄積したデータよりTS×λ≧39000MPa・% (TS600MPaでλ65%、TS780MPaでλ50%、TS980MPa以上でλ40%)が必要であるため、この値を基準値とした。
【0045】
この調査結果より、硬度変動が40Hvを超えるとTS×λ<39000MPa・%となり、プレス成形時に伸びフランジ成形の厳しい部位において割れが発生しやすくなることがわかった。その理由としては、伸びフランジ変形時に、硬度差の大きい箇所よりボイドが発生しやすくなるためと考えられる。そのため、後述する焼鈍条件により、板厚方向の組織および析出物分布を均一化し、硬度変動を40Hv以下に抑制することで、伸びフランジ割れの危険性を著しく低減することが可能となる。
【0046】
なお、板厚方向の硬度変動は以下のように、測定することができる。鋼板圧延方向の断面において任意に3箇所を選択し、各位置において鋼板表裏各表層から0.1mmの領域を除く領域を板厚方向に0.05mmピッチにて荷重1kgfでビッカース硬度を測定し、その中の最大値と最小値の差を各位置で算出し、その平均値を「板厚方向の硬度変動」とする。
【0047】
次に、本発明の高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板は、前述の化学成分範囲に調整されたスラブを、熱間圧延、冷間圧延を行い、連続焼鈍、または、溶融亜鉛めっき工程を経て製造するに際し、前記熱間圧延では、仕上げ圧延温度をAr3以上、巻取り温度を450℃以上700℃以下とし、前記連続焼鈍または溶融亜鉛めっき工程では、(0.85Ac3+0.15Ac1)以上(1.4Ac3−0.4Ac1)以下の温度範囲で30s以上240s以下保持した後、15℃/s未満の速度にて冷却し、450℃以上600℃以下の冷却停止保持温度にて10s以上120s以下保持した後冷却することで得られる。
【0048】
まず、はじめに上記化学成分の鋼を溶製し、鋳造する。鋼の溶製、鋳造の方法は特に限定はなく、成分偏析等、特に組織の不均一など無ければ良い。また、鋳造されたスラブは、鋳造後、直ちに熱間圧延しても良いし、或いは、一旦冷却し、加熱してから圧延しても良い。粗圧延した後、仕上圧延を実施し、コイルに巻き取る。
【0049】
熱間圧延および冷間圧延工程
仕上げ圧延温度がAr3未満になると圧延後に加工組織が残存しやすくなり、熱延板強度が高くなる。また、後の冷間圧延における圧延負荷が増大し、生産性が低下する。よって、仕上げ圧延温度はAr3以上とする。
特に、仕上げ圧延温度を(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下とすることによりプレス成形性(TS×λ≧45000MPa・%かつTS×El≧18000MPa・%)が著しく向上する。仕上げ圧延温度がAr3+110℃より低い場合、熱間圧延後に、特に幅方向エッジ部など、一部熱間圧延により展伸された結晶粒径を有する未再結晶のオーステナイトと再結晶したオーステナイトが混在する場合がある。そして、整粒な再結晶オーステナイトからは整粒な組織が、元々展伸粒が存在している領域には層状の低温変態相が存在することになる。例えば製鋼段階での鋳造偏析に起因し、オーステナイト安定化元素であるMnが偏析していると、その領域のAr3変態点が低下し、低温までオーステナイト域となる。また温度が低下することにより未再結晶温度域と圧延終了温度が同じ温度域となり、結果的に熱間圧延中に未再結晶のオーステナイトが存在することが考えられる。このように、不均一な組織となると成形時の材料の均一な変形を阻害し、著しく優れた成形性を有することが困難となる場合がある。
一方、Ar3+180℃を超えると、高温域で短時間に成長しやすい酸化物量が増大し、地鉄-酸化物界面が荒れ、酸洗、冷間圧延後の表面品質が劣化する場合がある。ノッチ効果のような挙動を示す微小な凹凸の存在により、延性や伸びフランジ性が低下する場合がある。また結晶粒径が過度に粗大となり、成形時にプレス品表面荒れを生じる場合がある。よって、仕上げ圧延温度は(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下が好ましい。
以上より、本発明において、仕上げ圧延温度はAr3以上、好ましくは(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下とする。なお、仕上げ圧延温度はAr3以上で従来に比べ充分に優れた成形性を得ることができるが、難成形部品等に本発明を適用し、さらに優れた成形性を得ようとする場合には仕上げ圧延温度は(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下とすることが効果的であり好ましい。
また、巻取り温度については、700℃を超えると、スケールの成長により表面品質が劣化する。一方、450℃未満では熱延板強度が上昇し、後の冷間圧延における圧延負荷が増大し、生産性が低下する。よって、巻取り温度は450℃以上700℃以下とする。なお、熱間圧延後のスケール除去は、酸洗等の化学的手法、ショットブラスト等の物理的方法いずれも問わない。また、冷間圧延は通常の方法にて実施可能であり、圧下率は20%以上80%以下が好ましく、生産性の観点からより好ましくは30%以上65%以下である。
【0050】
焼鈍工程
連続焼鈍ライン、溶融めっきラインいずれの製造においても、焼鈍工程前に酸洗および脱脂処理等の表面清浄工程を行うことができる。また、昇温速度は特に制約はなく製造可能であるが、フェライト、オーステナイト変態前に再結晶を十分完了させるため、20℃/s以下が好ましい。
【0051】
ここで、上述する本発明範囲内の化学成分を有する高強度冷延鋼板および高強度溶融亜鉛めっき鋼板について、プレス成形性と焼鈍温度(保持は30s以上240s以下)および冷却停止保持温度(保持は10s以上120s以下)との関係について調査した。C0.08%、Si0.2%、Mn2.3%、P0.03%、S0.003%、sol.Al0.04%、N0.005%、Cr0.08%、Nb0.01%、Ti0.02%、B0.0010%の成分を有したスラブを仕上げ圧延温度860℃、巻取り温度550℃にて熱間圧延した後、焼鈍温度790〜900℃、焼鈍時間180s、冷却速度5℃/s、冷却停止保持温度410〜640℃、冷却停止後保持時間80sにて連続焼鈍または連続溶融亜鉛めっきし、鋼板を製造した。得られた鋼板に対して、プレス成形性を評価した。ここで、プレス成形性を表す指標として、既述のTS×λ≧39000MPa・%に加え、絞り成形部品などでは延性も考慮する必要があるため、TS×El≧11000MPa・%とし、両方を満たした場合には、曲げ、絞り、伸びフランジ成形の一般的な構造部品に対し汎用的に適用が可能(○で表記)であるものとし、どちらか一方または両方とも満たさない場合は成形性困難(×で表記)とした。結果を図2に示す。図2より、焼鈍温度範囲(0.85Ac3+0.15Ac1)〜(1.4Ac3−0.4Ac1)かつ冷却停止保持温度範囲450〜600℃の場合に、十分なプレス成形性が得られることがわかる。
【0052】
上記結果となった理由については、以下のように考えられる。焼鈍温度に関しては、(0.85Ac3+0.15Ac1)℃未満ではフェライトからオーステナイトへの変態が十分進まず、また、オーステナイト中でのNbCの溶解が十分進行しないことでAML/AM≧0.30を得ることが出来ない。一方、(1.4Ac3−0.4Ac1)℃を超えると、最終組織のフェライトの粗大化が顕著となることでAML/AM≧0.30を得ることができないとともに、理由は明らかではないが延性
が低下してしまう。
【0053】
なお、(0.85Ac3+0.15Ac1)と(1.4Ac3−0.4Ac1)それぞれの導出過程については以下の通りである。C0.08%、Si0.2%、Mn2.0〜3.0%、P0.03%、S0.003%、sol.Al0.04%、N0.005%、Cr0.08%、Nb0.01〜0.04%、Ti0.02%、B0.0010%の成分を有するスラブを仕上げ圧延温度860℃、巻取り温度550℃にて熱間圧延した後、焼鈍温度790〜1000℃、焼鈍時間180s、冷却速度5℃/s、冷却停止温度550℃、冷却停止後保持時間80sにて連続焼鈍した鋼板について、既出の方法にてAML/AMを求めた。そして、AML/AM≧0.30となる焼鈍温度の下限、上限について、Ac1およびAc3を変数として重回帰解析し係数を求めた結果、下限温度については(0.85Ac3+0.15Ac1)、上限温度については(1.4Ac3−0.4Ac1)が導き出された。
【0054】
また、焼鈍後の冷却停止保持温度に関しては、600℃を超えるとパーライトが生成しやすくなり、延性、伸びフランジ成形性が低下することおよび鋼板表層へのMnおよびSi等の酸化物生成を促進することから、化成処理および溶融亜鉛めっき性が劣化する。また、450℃未満では残留オーステナイトが生成しやすくなるため、伸びフランジ変形時の歪によるオーステナイトからマルテンサイト変態が起こり、伸びフランジ成形性が低下してしまう。
【0055】
以上より、焼鈍温度は(0.85Ac3+0.15Ac1)以上(1.4Ac3−0.4Ac1)以下の範囲とする。また、冷却停止温度は450℃以上600℃以下とする。
【0056】
さらに、上記焼鈍温度で保持する時間は、30s未満では再結晶後、フェライトからオーステナイトへの変態および粗大化が十分に進行しないためAML/AM≧0.30を得ることが出来ない。一方、240sを超えてもそれらの効果が飽和すると共に、生産性の低下にも繋がる。よって、上記焼鈍温度で保持する時間は30s以上240s以下とする。
【0057】
さらに、焼鈍後、冷却停止温度までの冷却速度は、15℃/s以上では、オーステナイト粒界からのポリゴナルフェライトの析出、成長に要する時間が短くなるため延性が低下する。よって、焼鈍後、冷却停止温度までの冷却速度は15℃/s未満とする。
【0058】
さらに、冷却停止温度域で保持する時間は、10s未満では、十分な効果が得られない。一方、120sを超えてもその効果は飽和し、生産性が低下する。よって、冷却停止温度域で保持する時間は10s以上120s以下とする。
【0059】
なお、上記焼鈍温度、保持時間、冷却速度、冷却停止温度、冷却停止温度での保持時間は、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて溶融めっきを行う場合、めっき層合金化処理を行う場合も含まれるものである。めっき層合金化を行なう場合は、合金化めっき層中のFe含有率が9〜12%となるように実施するのが好ましい。
【0060】
また、連続焼鈍後または溶融亜鉛めっき後の鋼板には、形状矯正、表面粗度等の調整のために、10%以下の調質圧延を加えてもよく、さらに得られた鋼板に化成処理などの表面
処理を施しても所望の特性に何ら悪影響をおよぼすことはない。
【0061】
以上の製造工程を経て、本発明の意図する伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
【0062】
上記製造方法に基づき、その実施形態の一例を示すと、C/0.06%、Si/0.2%、Mn/2.3%
、P/0.02%、Al/0.03%、S/0.002%、N/0.004%、B/0.0008%、Ti/0.02%、Nb/0.02%、Cr/0.08%、V/0.05%からなるスラブを仕上げ圧延温度860℃にて仕上げ板厚2.8mmで熱間圧延した後、610℃にて巻取る。得られたHOTコイルを酸洗後、板厚1.4mmに冷間圧延した鋼帯を連続溶融亜鉛めっきラインにて合金化溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する。溶融亜鉛めっきでは、ライン入り側にて脱脂を行なった後、850℃まで昇温速度10℃/sにて行ない、850℃で180s保持した後、冷却速度10℃/sにて520℃まで冷却する。その後470℃の亜鉛浴でめっきを施した後、エアワイパーにてめっき付着量を45g/m2に調整し、合金化炉で最高温度550℃にて合金化処理を行なう。この間の所要時間は90sであり、すなわち、470〜550℃の温度域で90s保持するものである。合金化処理後は冷却速度10℃/sにて室温まで冷却し、0.2%の圧下率にて調質圧延を行う。かくして得られた鋼板の板厚方向のHv変動およびAML/AMを既出の方法にて測定するとそれぞれ37、0.40であった。
【実施例1】
【0063】
表1に示す成分の鋼(鋼番1〜21)を実験室にて溶製した後、鋳造して、板厚50mmのスラブを作製した。このスラブに対して板厚30mmまで分塊圧延した後、大気炉にて1270℃で1hr加熱して、熱間圧延に供した。粗圧延および仕上圧延を経て板厚4.0mmの熱延板を作製した。圧延後、平均20℃/sの冷却速度で鋼板を冷却し、巻取相当の熱処理を1Hr保持にて行なった。次に、得られた熱延板を酸洗し、板厚1.6mmまで冷間圧延した。その後、100mm×150mmのサイズに剪断した供試材を酸洗した後、ソルトバスを使用して昇温、保持、冷却、保持、冷却のヒートサイクルによって熱処理を行なった。
【0064】
【表1】


【0065】
得られた供試材に対して、JIS5号引張試験片加工後、圧延方向に垂直な方向における引張試験に供し降伏強度(YP)、引張強度(TS)、降伏比(YR)、全伸び(El)を求め、さらに、既述の方法にて穴拡げ試験を実施し、穴拡げ率λを求めた。
【0066】
そして、圧延方向に平行な断面の板厚方向のビッカース硬度を任意に3箇所を選択し、各位置において鋼板表裏各表層から0.1mmの領域を除く領域を板厚方向に0.05mmピッチにて荷重1kgfで測定し、その中の最大値と最小値の差を各位置で算出し、その平均値を求め、板厚方向の硬度変動とした。
【0067】
また、一部の供試材に関しては、冷間圧延ままの状態から電解脱脂を行なった後、溶融亜鉛めっきシミュレーターを使用し、めっき特性(濡れ性、合金化性)も調査した。その内容は、還元性雰囲気(5%H2-N2)で焼鈍を820℃で180sec均熱した後、平均速度5℃/sで冷却して、470℃の溶融亜鉛めっき浴中に浸漬した後、550℃で60s合金化処理を施した。不めっきおよび合金化ムラの有無を目視にて判定し、いずれも無い場合を○、そうでない場合を×とした。
【0068】
さらに、一部の試料について、冷間圧延ままの状態からスプレーおよび浸漬脱脂を行なった後、表面調整、りん酸亜鉛処理を実施した。りん酸亜鉛処理性をあらわす指標として一般に用いられるP比にて評価した。P比はX線回折のピーク比P/(P+H)(P;フォスフォフィライトの回折ピーク値、H;ホパイトの回折ピーク値)にて計算し、0.85以上で○(自動車用鋼板として皮膜の耐食性十分)、0.85未満で×(耐食性不十分)とした。
【0069】
以上の結果を表2に示す。
【0070】
【表2】


【0071】
表2より、本発明例は、自動車の構造部品用として十分なプレス成形性(TS×λ≧39000MPa・%かつTS×El≧11000MPa・%)を持ち、特に伸びフランジ成形性に優れた高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板であることが分かる。
特に、No28〜32は、仕上げ圧延温度を(Ar3+110℃)以上(Ar3+180℃)以下と、好適範囲とした本発明例であり、より一層優れたプレス成形性(TS×λ≧45000MPa・%かつTS×El≧18000MPa・%)が得られていることがわかる。
【0072】
一方、比較例では、プレス成形性(TS×λ≧39000MPa・%もしくはTS×El≧11000MPa・%のいずれか一つ以上)が劣っている。
【0073】
また、表2、No23について、鋼成分であるSiを1.0%(Siを高めた鋼成分)とした以外はNo23と他の成分、プロセスが同一である供試材を作成し、他の供試材と同様に、上記方法にて、めっき特性(濡れ性、合金化性)、りん酸亜鉛処理性を調査した。その結果、めっき特性(濡れ性、合金化性)、りん酸亜鉛処理性共に劣っていることがわかった(表示せず)。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の高強度冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板は高強度でありながら伸びフランジ成形性に優れているので、メンバー、ロッカー等の自動車の構造部品を中心に有用な材料となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】焼鈍温度とAML/AMとの関係を示す図である。
【図2】プレス成形性と焼鈍温度および冷却停止保持温度との関係を示す図である。




 

 


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