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発明の名称 異方性の小さい鋼板およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9272(P2007−9272A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−190935(P2005−190935)
出願日 平成17年6月30日(2005.6.30)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 峰地 暢子 / 杉原 玲子 / 井上 正
要約 課題
異方性の小さい鋼板およびその製造方法を提供する。

解決手段
C:0.0080〜0.0200%、Si≦0.02%、Mn:0.15〜0.25%、P≦0.020%、S≦0.015%、N≦0.0035%、Al:0.065〜0.200%、Ti:0.5≦(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)C≦2.0(式中各元素記号は、各元素の含有量(質量%))を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が20.0μm以下であり、-0.2≦Δr≦0.2である鋼板。この組成の鋳片を、直接、又は再加熱によって1050℃〜1300℃の温度に均熱保持した後、Ar3変態点以上の終了温度で熱間圧延を施し、次いで、酸洗後、80〜90%の圧延率で冷間圧延を施し、次いで、再結晶温度〜850℃の焼鈍温度で連続焼鈍ラインによる焼鈍を行い、調質圧延を施す製造方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
質量%で、C:0.0080〜0.0200%、Si≦0.02%、Mn:0.15〜0.25%、P≦0.020%、S≦0.015%、N≦0.0035%、Al:0.065〜0.200%、Ti:0.5≦(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)C≦2.0(式中各元素記号は、各元素の含有量(質量%))を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が20.0μm以下であり、-0.20≦Δr≦0.20である異方性の小さい鋼板。
【請求項2】
請求項1に記載の組成を有する鋳片を、直接、又は再加熱によって1050℃〜1300℃の温度に均熱保持した後、Ar3変態点以上の終了温度で熱間圧延を施し、
次いで、酸洗後、80〜90%の圧延率で冷間圧延を施し、
次いで、再結晶温度〜850℃の焼鈍温度で連続焼鈍ラインによる焼鈍を行い、調質圧延を施すことを特徴とする異方性の小さい鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り成形およびDI成形用材料に関し、主に乾電池缶等に使用して好適な異方性の小さい鋼板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IF鋼(Interstitial free steel)は、固溶しているC、Nが存在しないため、基本的に非時効であり、優れたプレス成形性を有しているため、乾電池缶用鋼板など絞り成形およびDI成形用材料として広く用いられている。例えば、乾電池缶は、鋼板に深絞り加工およびしごき加工を組み合わせることにより形成され、具体的には、絞りカップを形成した後しごき加工を施すDI成形、絞りカップを形成した後、引張りと曲げ曲げ戻し加工、さらに必要に応じしごき加工を加えたストレッチドロー成形、何段階かの絞り成形を施した後、しごき加工を施す多段絞り成形などの方法により形成される。このように製造される乾電池缶においては、加工後の缶円周方向の缶高さが不揃いになると不揃いの部位を切り落とす際に材料屑が多く発生し、歩留が低下するため、缶高さが不揃いにならないこと、すなわち耳発生を抑制することが要求される。この耳高さは冷延鋼板のr値(ランクフォード値)の面内異方性の指標であるΔrと良い相関があり、Δrが0に近づくと、耳高さは低くなることが一般的に知られている。ここで、Δr=(r0+r90−2×r45)/2である。r0は圧延方向のr値、r45は圧延方向から45°方向のr値、r90は圧延方向から90°方向のr値を示す。
【0003】
上記のように、IF鋼を絞り成形およびDI成形用材料として加工して用いる場合は、異方性の小さいことが重要となる。これに対して、従来技術としては、例えば、特許文献1、特許文献2が提案されている。特許文献1および特許文献2は、各種IF鋼について、異方性の小さい鋼板およびその製造方法を提供するものであり、例えば、特許文献1においては、図3(Δrの冷間圧延率依存性)で、Nb含有極低炭素鋼板(以下、Nb-IF鋼)について、圧延率84〜91%の範囲で-0.2≦Δr≦0.2の異方性の小さい鋼板が得られている。
【特許文献1】特開平7-3395号公報
【特許文献2】特開2003-119547公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載のようなNb-IF鋼ではΔrの冷間圧延率依存性が大きいことが判明した。Δrの冷間圧延率依存性が大きいと、製造条件のばらつきに伴ってΔrが大きく変化しやすいため、安定製造が難しい。かつ同一コイル内でΔrの値がばらつくことは、プレス加工時に耳の出方に偏りが現れることによる歩留の低下および加工効率の低下の要因となる。このことから、Δrの冷間圧延率依存性は小さいことが望まれる。さらに、90%を超えるような高い圧延率では設備にかかる負荷が大きく、製造効率の低下が問題となる。一方、冷間圧延率は粗粒化による肌荒れ防止のため、80%以上とすることが望まれている。
【0005】
ここで、上記のようなNb-IF鋼においては、固溶Cを固定するためにNbを添加するが、TiにもNbと同様に固溶Cを固定する効果があるため、Nbに代えてTiを利用することも考えられる。しかしながら、本発明者らが検討した結果、Nb-IF鋼においては上記の結果が得られているが、Ti含有極低炭素鋼板(以下、Ti-IF鋼)では、冷間圧延率90%以下で-0.20≦Δr≦0.20の異方性の小さい鋼板を安定して得ることは困難であった。
【0006】
以上より、本発明は、かかる事情に鑑み、異方性の小さい鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
なお、本発明において異方性が小さいとは、-0.20≦Δr≦0.20であることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
異方性の小さい鋼板を得るべく検討した結果、Δrの冷間圧延率依存性に大きく影響を及ぼす成分元素を制御することで、Δrの冷間圧延率依存性が小さく、製造条件のばらつきによるΔrの変化が小さい、異方性の小さい鋼板が得られることを見出した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0010】
本発明の鋼板は、その目的を達成するため、質量%で、C:0.0080〜0.0200%、Si:≦0.02%、Mn:0.15〜0.25%、P:≦0.020%、S:≦0.015%、N:≦0.0035%、Al:0.065〜0.200%、Ti:0.5≦(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)C≦2.0(式中各元素記号は、各元素の含有量(質量%))を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が20.0μm以下であり、-0.20≦Δr≦0.20であることを特徴とする。また、本発明の鋼板は、上記の組成を有する鋳片を直接、又は再加熱によって1050℃〜1300℃の温度に均熱保持した後、Ar3変態点以上の終了温度で熱間圧延を施し、次いで、酸洗後、80〜90%の圧延率で冷間圧延を施し、次いで再結晶温度〜850℃の焼鈍温度で連続焼鈍ラインによる焼鈍を行い、調質圧延を施すことで製造される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Δrの冷間圧延率依存性が小さく、製造条件のばらつきによるΔrの変化が小さい、異方性の小さい鋼板が得られる。そして、このような特性により、優れた乾電池缶用途の鋼板を提供できる。さらに、本発明の鋼板の用途は制約されるものではなく、家電用鋼板、自動車用鋼板など、さまざま用途の鋼板として適宜適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明を完成するに至った経緯について説明する。
本発明者らは、まず、従来技術について検討した。表1に示す鋼板を用い、冷間圧延時の圧延率を変化させて、Δrの冷間圧延率依存性を調査した。なお、冷間圧延率(%)は、冷間圧延率(%)=100×{(冷間圧延前の板厚)−(冷間圧延後の板厚)}/(冷間圧延前の板厚)として求めたものである。得られた結果を、冷延圧延率とΔrとの関係として、図1に示す。なお、冷間圧延時の圧延率を変化させた以外は全て同じ条件で製造した。また、Δrは得られた各鋼板について、JISZ2201の13号B試験片を使用し、圧延方向に平行、45°及び90°の3方向のr値であるr0、r45、r90をJISZ2241に従って測定し、Δr=(r0+r90−2×r45)/2として求めた。ここで、表1に示す比較例の鋼板No.6(Ti-IF鋼)は特許文献1で開示されている成分の鋼板であり、No.8は、特許文献2で開示されている成分組成範囲の鋼板である。また、No.7は、Ti-Nb複合添加のIF鋼である。
【0013】
【表1】


【0014】
図1より、No.6の鋼板においては、圧延率90%以下では、Δrは0.20を超えており、-0.20≦Δr≦0.20の異方性の小さい鋼板を製造するためには圧延率90%を超えて製造しなければならない。よって、設備負荷、製造効率等を考慮すると、No.6の鋼板においては、-0.20≦Δr≦0.20の異方性の小さい鋼板を製造することはかなり難しいことがわかる。また、No.7、No.8の鋼板において、圧延率90%以下で-0.20≦Δr≦0.20を確保できる冷間圧延率範囲は、それぞれ87〜90%、83〜90%という高冷間圧延率側の狭い範囲である。よって、No.6の鋼板同様に、やはり、No.7、No.8の鋼板においても製造効率の良好な圧延率90%以下として-0.20≦Δr≦0.20の異方性の小さい鋼板を製造することはかなり難しいことがわかる。
【0015】
次に、上記の結果をもとに、Δrの冷間圧延率依存性を小さくし、製造条件のばらつきによるΔrの変化を小さくすることを目的として、成分元素に着目し、検討を行った。その結果、Al添加量を多くすることがΔrの冷間圧延率依存性を小さくすることに対して有効であることを新たに知見した。このメカニズムは明確ではないが、おそらく、固溶Alが鋼板の集合組織に影響を及ぼした効果と推定される。
【0016】
以上より、本発明は、Ti-IF鋼において、Al添加量を多くすることによりΔrの冷間圧延率依存性を小さくすることを最大の特徴とし、本発明の鋼板は、C:0.0080〜0.0200%(重量%、以下同じ)、Si:≦0.02%、Mn:0.15〜0.25%、P:≦0.020%、S:≦0.015%、N:≦0.0035%、Al:0.065〜0.200%、Ti:0.5≦(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)C≦2.0を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均結晶粒径が20.0μm以下、-0.20≦Δr≦0.20で構成される。以下、本発明における鋼板の化学成分の限定理由について説明する。
【0017】
C:本発明において重要な元素である。Ti-IF鋼は一般的に熱延板結晶粒径が粗大になりやすく、そのため、冷延焼鈍板の結晶粒径が大きくなるために缶体加工時の肌荒れが問題となる。本発明では、微細な炭化物を析出させることで熱延板の結晶粒径を小さくすることを目的とするため、下限は0.0080%とする。一方で、過度にCを含有すると固溶Cによる硬質化による加工性の劣化が現れ、また、後述する範囲でTiを添加しても、固溶Cの絶対量が多くなりすぎるため降伏伸びが発生し、缶体加工時にストレッチャー・ストレインに代表される不均一変形が起こるため、上限を0.0200%とする。以上より、Cは0.0080%以上0.0200%以下とする。
【0018】
Si:不可避的に含有される不純物元素であり、0.02%を超えて含有すると硬質化やめっき性の劣化を招くため、Siは0.02%以下に制限する。
【0019】
Mn:Sによる熱延中の赤熱脆性を防止するために有効な元素であるが、過度に添加すると硬質化による加工性の劣化が現れる。よって、Mnは、0.15%以上0.25%以下とする。
【0020】
P:不可避的に含有される不純物元素である。0.020%を超えて含有すると硬質化により加工性を劣化させるため、Pは0.020%以下に制限する。
【0021】
S:不可避的に含有される元素である。熱延中の赤熱脆性を生じる不純物成分であり、極力少なくすることが好ましい。特に、0.015%を超えて含有するとその悪影響が顕著となるため、Sは0.015%以下に制限する。
【0022】
N:不可避的に含有される不純物元素である。過度にNを含有すると、TiN量が多くなる。TiNは非常に硬質であり、かつ高温で析出して鋼板中で粗大化することで、缶体の表面欠陥や穴あきの原因となる。よって、Nは0.0035%以下に制限する。なお、TiNの粗大化を抑制し、表面欠陥をより低減するために、好ましくは0.0020%以下、より好ましくは0.0015%以下とする。
【0023】
Al:製鋼における脱酸に必要な成分である。かつ、上述したように、本発明においては重要な要件である。
ここで、図1に示した実験結果のうち、鋼No.7を除くTi添加鋼について、冷間圧延率が80〜90%での冷間圧延率によるΔrの変化をdΔr/dCRで算出し、Al量とdΔr/dCRとで整理した。得られた結果を図2に示す。ここで、dΔr/dCRは以下により算出した。
dΔr/dCR=(d90-d80)/(CR90-CR80
(d90:冷間圧延率90%の時のΔr、d80:冷間圧延率80%の時のΔr)
(CR90:冷間圧延率90%の時の圧下率(=90%)、CR80:冷間圧延率80%の時の圧下率(=80%))
図2より、Alを添加することにより、冷間圧延率によるΔrの変化率、すなわちΔrの冷間圧延率依存性を小さくできることがわかる。そして、図2に示すように、Alを0.065%以上添加することで、Δrの冷間圧延率依存性が小さくなり、製造条件のばらつきによるΔrの変化を小さくできる。なお。Δrの冷間圧延率依存性をより小さくするためには、好ましくは0.080%以上である。しかし、過度に添加すると鋼板の硬質化を招く。以上より、Alは0.065%以上0.200%以下、好ましくは0.080%以上0.200%以下とする。
【0024】
Ti:鋼中固溶Cを炭化物として析出させることで、固溶Cによる深絞り性劣化を抑制する。そのためには、0.5≦(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)Cの範囲で添加することが重要である。なお、ここで前記式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)である。また、(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)Cが小さ過ぎると降伏伸びが発生し、缶体加工時にストレッチャー・ストレインに代表される不均一変形が起こるため、この観点からも0.5≦(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)Cとする必要がある。しかし、過度に添加すると再結晶温度の上昇を招くため、再結晶焼鈍温度を高温に設定することが必要となり、製造コストの観点から好ましくない。よって、(Ti-(48/14)N-(48/32)S)/(48/12)C≦2.0とする。
【0025】
なお、上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物とする。製造過程でSn、Pb等の各種元素が不純物として混入する場合があるが、このような不純物も本発明の効果にとくに影響を及ぼすものではない。
【0026】
以上が本発明の鋼板の化学成分に関するものであるが、本発明に於いては、例えば、乾電池缶用鋼板として用いた場合の、鋼板加工後の外観を考慮し、結晶粒径についても規定することとする。結晶粒径が大きいと、加工時に肌荒れが生じやすく、鋼板を加工した後の外観が劣化する。電池缶体加工時に肌荒れが生じない結晶粒径を、従来の知見に基づいて検討した結果、JISG0552で測定した平均結晶粒径で20.0μm以下であれば、缶体加工時に肌荒れに問題ないことが判った。したがって、平均結晶粒径の最大値は20.0μm以下とする。
【0027】
次に、本発明の異方性の小さい鋼板の製造条件の限定理由について説明する。
上記に規定する成分組成を有する鋼を溶製して、連続鋳造により鋳片とし、熱間圧延する。熱間圧延では、連続鋳造した鋳片を直接あるいは若干加熱してから圧延しても良いし、いったん冷却した鋳片を再加熱して圧延することもできる。再加熱する場合の加熱温度は1050℃以上1300℃以下とする。熱間圧延終了温度は、圧延後の結晶粒径を均一にするため、かつ熱延板段階での異方性を小さくするため、Ar3変態点以上とする。1050℃未満の加熱温度では、熱間圧延終了温度をAr3変態点以上とすることが困難となる。また、1300℃を超えると、鋳片表面に生成する酸化物量が多くなり、酸化物起因の表面欠陥が発生しやすくなるため望ましくない。
【0028】
次いで、熱間圧延した鋼板を酸洗し、80%以上90%以下の冷間圧延率で冷間圧延する。この時、酸洗は常法に従い行えばよい。冷間圧延率が80%未満では、再結晶焼鈍後の結晶粒径が粗大になり、缶体加工時に肌荒れが発生しやすくなるため望ましくない。一方、冷間圧延率が90%を超えるとΔrが増大し異方性が大きくなる。また、設備にかかる負荷も大きい。以上より、冷間圧延率は80%以上90%以下とする。
【0029】
なお、本発明の好適用途である乾電池缶用として本発明の鋼板を用いる場合、絞り加工試験の結果から、耳発生を抑制できるΔrの範囲は-0.20≦Δr≦0.20が適正であり、上記冷間圧延率であればΔrの範囲を適正範囲である-0.20≦Δr≦0.20とすることができる。また、加工方法に応じて、耳が大きく現れるためにΔrを厳しく管理する必要がある場合、-0.10≦Δr≦0.10を適正範囲とするのが望ましく、その場合、冷間圧延率は83%以上87%以下とする。
【0030】
次いで、連続焼鈍ラインにより再結晶温度以上で焼鈍を行う必要がある。一方、焼鈍温度が850℃を超えると、結晶粒径が粗大になり、肌荒れが発生しやすくなるため好ましくなく、上限は850℃とする。
【0031】
焼鈍後、鋼板形状や表面粗さを整えることを目的とし、調質圧延を行う。調質圧延の伸び率(伸長率ともいう)は特に指定しないが、通常行われる範囲である、0.3%〜2.0%の範囲とすることが望ましい。
【0032】
以上により、本発明の鋼板は製造されるが、必要に応じて、Niめっき、Snめっき、Crめっきあるいはそれらの合金めっきを施しても良い。あるいは、めっき後に拡散焼鈍を施して拡散合金めっきにしても良い。かつ、それらの各種表面処理や樹脂被覆等を施した後、成型加工を施しても良い。あるいは、成型加工した後、各種表面処理や樹脂被覆等を施しても良い。
【実施例1】
【0033】
表1に示した成分をもつ鋼板を作製した。鋼板No.1〜5および12は本発明で規定した成分に関する条件を満足する鋼材であり、No.6〜11は本発明で規定した成分に関する条件を外れる鋼材である。鋼板の熱間圧延条件は、均熱温度1250℃、熱間圧延終了温度900℃とした。なお、Ar3変態温度は880℃である。Ar3変態温度はフォーマスタ試験で加熱した試験片をAr3変態温度付近で徐冷し、熱膨張をおこす温度を調査することで得られた。
【0034】
次いで、表2に示す条件で冷間圧延し、再結晶焼鈍を行った後、調質圧延を施した。調質圧延の伸長率は0.5%とした。なお、再結晶温度は、ビッカース硬度調査および金属組織の観察で調査した。再結晶温度は冷間圧延率が低い方が低くなるため、各鋼について最も低い再結晶温度となる70%冷間圧延後の試験片に各種温度で45秒間の熱処理を施した後、板厚断面の板厚1/2位置にて荷重(試験力)1.961N(200gf)でビッカース硬度測定(JISZ2244)を行った。なお、各熱処理温度は、700℃を始点として、10℃間隔で設定した。一般的に冷間圧延板に熱処理を施すと、再結晶の進行により硬度が急激に低下する温度区間が現れる。本発明の検討においては、硬度の急激な低下が止まる温度を調査し、かつ金属組織で見て100%再結晶が完了する最低温度を再結晶温度とした。
【0035】
以上により、得られた鋼板に対して、異方性の調査を行った。異方性は、得られた各鋼板について、JISZ2201の13号B試験片を使用し、圧延方向に平行、45°及び90°の3方向のr値であるr0、r45、r90をJISZ2241に従って測定し、Δr=(r0+r90−2×r45)/2として、Δrが±0.20の範囲を合格として判定した。
【0036】
また、冷延焼鈍板フェライト組織の平均結晶粒径を圧延方向の板厚断面の組織観察を行い、JISG0552に則って測定した。前述のように、結晶粒径が大きいと、缶体加工時に肌荒れが生じる。従って、缶体加工時に肌荒れが生じない結晶粒径の最大値を従来の知見に基づいて20.0μmとし、それ以下の結晶粒径の鋼板を合格とした。
【0037】
また、降伏点伸びに起因するひずみ時効が発生すると、缶体加工時にストレッチャー・ストレインに代表される不均一変形が起こることから成型用材料として好ましくないため、鋼板のひずみ時効性を調査した。鋼板のひずみ時効性は、調質圧延後30日経過後にJISZ2201の圧延方向を引張方向とする13号B試験片で引張試験をおこない、降伏点伸びを調査し、この降伏点伸びが現れた鋼板を不合格とした。
【0038】
また、生産性について、圧延率80〜90%の範囲で上記異方性、結晶粒径、降伏点伸びが全て合格になっているものを生産性合格として評価し、いずれかに不合格があるものを生産性不合格として評価した。
【0039】
【表2】


【0040】
表2より、本発明例においては、製造に適切な80〜90%の広い範囲において、Δrの冷間圧延率依存性が小さく、-0.20≦Δr≦0.20であり、異方性が小さい。
【0041】
一方、No1、2、6、7の比較例は、結晶粒径が大きいため、製造の条件としては不適切である。No11、12、16、17、21、22の比較例は、Δrの冷間圧延率依存性が大きい。
【0042】
また、鋼番号No.6〜9を用いた比較例では、-0.20≦Δr≦0.20を確保できる適正冷間圧延率が90%以上もしくは高冷間圧延率側の狭い範囲であり、Δrが大きい。
【0043】
鋼番号No.10、11を用いた比較例では、降伏点伸びが現れ、耐ひずみ時効性に劣るため、鋼板として不適切である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の鋼板は、Δrの冷間圧延率依存性が小さく、製造条件のばらつきによるΔrの変化が小さい、異方性の小さい鋼板であるため、乾電池缶等の素材を中心に、工業的に有用な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】Δrの冷間圧延率依存性を示す図である。
【図2】Δrの冷間圧延率による変化率とAl添加量との関係を示す図である。




 

 


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