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発明の名称 表面処理鋼板およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9232(P2007−9232A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−187524(P2005−187524)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 岡井 和久 / 松田 武士 / 樋貝 和彦 / 山地 隆文
要約 課題
耐食性、耐水性、耐疵つき性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法を提供する。

解決手段
鋼板の表面に、水性樹脂、メルカプト基を有するシランカップリング剤、リン酸化合物を含有する表面処理組成物から形成される第1層皮膜を有し、さらに、皮膜形成有機樹脂(A)と、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、(a)リン酸塩、(b)Caイオン交換シリカ、(c)モリブデン酸塩、(d)酸化ケイ素、(e)トリアゾール類、チオール類等の中から選ばれる有機化合物、の中から選ばれる防錆添加成分(Y)と、潤滑剤(Z)とを含む塗料組成物から形成される第2層皮膜を有し、かつ、潤滑剤(Z)の粒子径と第2層皮膜の厚さが潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15を満足し、第1層皮膜と第2層皮膜の合計膜厚が、0.1〜5μmである表面処理鋼板。
特許請求の範囲
【請求項1】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、
水性樹脂(I)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(II)、リン酸化合物(III)を含有し、(I)の固形分100質量部に対して(II)が1〜300質量部、(III)が0.1〜50質量部である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成される第1層皮膜を有し、
さらに、該第1層皮膜の上部に、
皮膜形成有機樹脂(A)と、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、
下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、
潤滑剤(Z)とを含み、
前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して該防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である
塗料組成物を塗布し、乾燥することにより形成される第2層皮膜を有し、
かつ、前記潤滑剤(Z)の粒子径と前記第2層皮膜の厚さとの関係が下記式を満足し、
前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が、0.1〜5μmであることを特徴とする表面処理鋼板。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15
【請求項2】
前記第1層皮膜形成用の表面処理組成物は、さらにCo化合物を、水性樹脂の固形分100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項3】
前記水性樹脂がエポキシ系樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の表面処理鋼板。
【請求項4】
前記亜鉛系めっき鋼板において、めっき皮膜中のNi含有量が20〜1000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の表面処理鋼板。
【請求項5】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、
水性樹脂(I)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(II)、リン酸化合物(III)を含有し、(I)の固形分100質量部に対して(II)が1〜300質量部、(III)が0.1〜50質量部である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより第1層皮膜を鋼板の表面に形成し、
次いで、該第1層皮膜の上部に、
皮膜形成有機樹脂(A)と、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、
下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、
潤滑剤(Z)とを含み、
前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して該防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である
塗料組成物を塗布し、潤滑剤の軟化点以下の温度で乾燥することにより形成される第2層皮膜を有し、
かつ、前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmとなるように第1層皮膜及び第2層皮膜が形成されることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、家電、建材等の用途に好適な、六価クロム等の有害物質を全く含まない、耐白錆性、耐水性及び耐疵つき性を有する非クロム型表面処理鋼板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主要成分とした六価クロムを含有する処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は耐食性に優れ且つ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。しかしながら、クロメート処理による皮膜は、公害規制物質である六価クロムを含有しているため好ましくなく、六価クロムを用いない表面処理鋼板が要望されている。
【0003】
さらに、表面処理鋼板の多くは、加工され、加工後にアルカリ脱脂され、そのまま、あるいは塗装して使用されることが多い。このような中で、最近では、工程の簡略化、コストの低減を目的に、アルカリ脱脂を省略する方法も検討されている。例えば、この脱脂工程が省略可能な鋼板として、潤滑性や耐磨耗性の良好な有機樹脂皮膜を有する鋼板や、さらにワックスを有機樹脂皮膜中に添加した鋼板が開発され、実用化されている。
具体的には、
(1)鋼板表面に、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系樹脂にワックスを分散させた皮膜を形成する方法(特許文献1)や、ウレタン樹脂と硬化剤とシリカとポリオレフィンワックスを含む水系金属表面処理組成物による皮膜を形成させる方法(特許文献2)
(2)ポリビニルフェノール誘導体とシランカップリング剤とワックスを配合した皮膜を形成する方法(特許文献3)
(3)水性樹脂とシランカップリング剤とリン酸化合物を含有する皮膜を下層成分として、その上層にポリオレフィンワックスディスパージョンを含有する有機樹脂皮膜を形成する方法(特許文献4)
(4)下層に酸化物を含有するリン酸及び/又はリン酸化合物皮膜、その上層に自己補修性防錆顔料を含む有機樹脂皮膜を形成させる方法(特許文献5、特許文献6)
が開示されている。
【特許文献1】特開2000−52478号公報
【特許文献2】特開2000−239690号公報
【特許文献3】特開2001−234350号公報
【特許文献4】特許3464652号公報
【特許文献5】特開2002−53979号公報
【特許文献6】特開2002−53980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には以下に述べるような問題点がある。
特許文献1及び2(上記(1))に記載の方法は、耐疵つき性への効果はみられるが、亜鉛めっき表面にクロメート処理を施した鋼板のため、6価クロムを含有しないという本来の目的を達していない。また、亜鉛めっき上にリン酸亜鉛処理を施した鋼板では、6価クロムは含有しないものの、リン酸亜鉛皮膜上に上記皮膜を形成するだけでは耐食性が劣る。
【0005】
特許文献3(上記(2))に記載の方法は、皮膜形成樹脂がフェノール系樹脂であり皮膜の柔軟性が低いため、耐疵つき性が劣っている。また皮膜中に添加されるワックスの粒子径や、ワックスの軟化点と皮膜乾燥温度の関係を限定した記述はない。
【0006】
特許文献4(上記(3))に記載の方法は、ポリオレフィンワックスに加えさらに耐磨耗性に優れるウレタン系樹脂を用いることで耐疵付き性への効果は大きいが、ウレタン系樹脂とシリカとポリオレフィンワックスによる防錆効果はほとんどみられず、耐食性が十分とはいえない。また下層皮膜によって耐食性を得る手法ではあるが、クロメート皮膜同等の耐食性を得るために必要なリン酸成分が多くなり、皮膜中に残存するリン酸成分が湿潤環境下で吸水することで皮膜が白化してしまい、耐水性が劣る。
【0007】
特許文献5及び6(上記(4))に記載の方法は、上層に特定の自己補修性発現物質を添加することにより下層、上層皮膜の双方で耐食性への寄与効果があり耐食性には優れるが、自己補修性発現物質の粒子が皮膜表面から突出していると耐疵つき性が劣る。また、下層のリン酸化合物の影響で含有量が多くなると皮膜が白化してしまい、耐水性が十分ではない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、皮膜中に6価クロムなどの公害規制物質を含有することなく、耐食性、耐水性及び耐疵つき性を両立できる表面処理鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段を本発明者らが鋭意検討を行った結果、優れた耐食性、耐水性及び耐疵つき性を両立させるには、第1層にめっき皮膜表層を不活性化させた有機・無機複合層、第2層に第1層との強固な密着性を有する有機皮膜と自己補修性を有する防錆添加剤と潤滑性を併せもつ二層皮膜構造が最も効果的であることを見出した。すなわち、第1層皮膜を水性樹脂とリン酸化合物とシランカップリング剤を含有する表面処理組成物により形成し、第2層皮膜を有機樹脂と自己補修性物質と潤滑剤とを特定の割合で含有する塗料組成物で形成し、さらに、第2層皮膜に含まれる潤滑剤の粒子径を、潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15の範囲に制御することにより、上記のような複合的な機能が発揮され、優れた耐食性、耐水性及び耐疵つき性を得ることが判った。また第1層皮膜中にCoの金属化合物を配合することにより、耐食性がさらに改善されると同時に湿潤環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)が抑制されることも判った。
【0010】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、水性樹脂(I)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(II)、リン酸化合物(III)を含有し、(I)の固形分100質量部に対して(II)が1〜300質量部、(III)が0.1〜50質量部である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成される第1層皮膜を有し、さらに、該第1層皮膜の上部に、皮膜形成有機樹脂(A)と、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して該防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、乾燥することにより形成される第2層皮膜を有し、かつ、前記潤滑剤(Z)の粒子径と前記第2層皮膜の厚さとの関係が下記式を満足し、前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が、0.1〜5μmであることを特徴とする表面処理鋼板。
【0011】
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15
[2]前記[1]において、前記第1層皮膜形成用の表面処理組成物は、さらにCo化合物を、水性樹脂の固形分100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする表面処理鋼板。
[3]前記[1]または[2]のいずれかにおいて、前記水性樹脂がエポキシ系樹脂を含有することを特徴とする表面処理鋼板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかの亜鉛系めっき鋼板において、めっき皮膜中のNi含有量が20〜1000ppm以下であることを特徴とする表面処理鋼板。
[5]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、水性樹脂(I)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(II)、リン酸化合物(III)を含有し、(I)の固形分100質量部に対して(II)が1〜300質量部、(III)が0.1〜50質量部である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより第1層皮膜を鋼板の表面に形成し、次いで、該第1層皮膜の上部に、皮膜形成有機樹脂(A)と、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して該防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、潤滑剤の軟化点以下の温度で乾燥することにより形成される第2層皮膜を有し、かつ、前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmとなるように第1層皮膜及び第2層皮膜が形成されることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
【0012】
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐食性、耐水性及び耐疵つき性に優れた表面処理鋼板を提供することが可能となる。また、本発明の表面処理鋼板は、上記性能を有する上に、六価クロム等の有害物質を全く含まないので、環境面からも優れた材料といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の詳細とその限定理由を説明する。
【0015】
本発明の表面処理鋼板のベースとなる鋼板は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板である。
亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、Zn−Niめっき鋼板、Zn−Feめっき鋼板(電気めっき、合金化溶融亜鉛めっき)、Zn−Crめっき鋼板、Zn−Mnめっき鋼板、Zn−Coめっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Niめっき鋼板、Zn−Cr−Feめっき鋼板、Zn−Al−Mgめっき鋼板(例えばZn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、Zn−Alめっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)である。さらにこれらのめっき層に少量の異種金属元素あるいは不純物としてニッケル、コバルト、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、鉛、アンチモン、錫、銅の1種または2種以上を含有しためっき鋼板および/またはシリカなどの金属酸化物、ポリマーなどを分散しためっき鋼板(例えば、Zn−SiO2分散めっき鋼板)などを用いることもできる。
また、上記のようなめっきのうち、同種または異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
【0016】
また、亜鉛めっき鋼板は、Niを20〜1000ppm以下、より好ましくは25〜800ppm程度含有するのが望ましい。ここで、Ni含有量が20ppm以下では耐黒変性が十分ではなく、一方、1000ppmを超えると第1層および第2層皮膜形成後の色調(L値)が低下するため、無塗装のまま使用する場合には適さなくなる。
【0017】
アルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−Siめっき鋼板である。
【0018】
また、めっき鋼板としては、鋼板面にあらかじめNiなどの薄目付けのめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。めっきの方法としては、電解法(水溶液中での電解、非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法も採用することができる。
【0019】
また、化成処理皮膜をめっき皮膜表面に形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、あらかじめめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理、酸性の表面調整処理)等の処理を施しておくことも可能である。また、表面処理鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、必要に応じてあらかじめめっき表面に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を含む酸性またはアルカリ性水溶液による表面調整処理を施しておくこともできる。また電気亜鉛めっき鋼板を下地鋼板として用いる場合には、黒変を防止する目的で電気めっき浴に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を添加し、めっき皮膜中にこれらの金属を1ppm以上含有させておくこともできる。この場合、めっき皮膜中の鉄族金属濃度の上限については特に限定はない。
【0020】
次に、上記亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される表面処理皮膜(第1層皮膜)およびこの皮膜形成用の表面処理組成物について説明する。
本発明の表面処理鋼板において亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される表面処理皮膜は、水性樹脂とメルカプト基を有するシランカップリング剤とリン酸化合物を含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された表面処理皮膜である。
【0021】
ここで、まず、水性樹脂について説明する。
水性樹脂とは水溶性樹脂の他にエマルジョンやディスパージョンのように水不溶性の樹脂が水中に分散された水分散性樹脂を含む。使用できる水性樹脂に特別な制約はなく、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができ、特別な制限はない。ただし耐食性の観点からは、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂を用いることが好ましく、中でもエポキシ樹脂が下地金属および上層皮膜との密着性を著しく向上させることが可能なため、より好ましい。
【0022】
次に、メルカプト基を有するシランカップリング剤について説明する。シランカップリング剤には他にグリシジル基やアミノ基、メルカプト基などの官能基を有するものがある。耐食性については、いずれのシランカップリング剤も効果があるものの、優れた耐水性も併せもつという観点からは、特にメルカプト基を有するシランカップリング剤が好ましい。耐食性が優れる理由としては水溶液中のシランカップリグ剤が加水分解することにより生じたシラノール基(Si−OH)がめっき皮膜表面と水素結合をし、優れた密着性を付与することが考えられるので、官能基による影響は小さい。しかし、耐水性においては、樹脂との結合を担う官能基の影響が大きく、より結合力の高いメルカプト基が最も耐水性に優れることになる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製「KBM−802」、「KBM−803」などを用いることができる。また、これらの1種を単独でまたは2種類を混合して使用することができ、他の官能基を有するシランカップリング剤と併用することも可能である。
【0023】
シランカップリング剤の配合量は、上記水性樹脂の全固形分100質量部に対して、1〜300質量部、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは、15〜50質量部とする。シランカップリング剤の配合量が1質量部未満では耐水性が劣り、一方300質量部を超えると十分な皮膜が形成できないため、水分散性樹脂との密着性とバリア性を高める効果が発揮できず耐食性が低下する。
【0024】
次にリン酸化合物(d)について説明する。リン酸化合物(d)としては、リン酸イオンの骨格や縮合度等の限定はなく次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、ポリリン酸とそれらの塩を使用できる。このリン酸化合物は不活性なめっき皮膜表面に作用して金属表面を活性化させる作用を有する。そして、このように活性化されためっき金属表面と皮膜形成樹脂との密着性がシランカップリング剤を介して著しく向上する結果、耐食性が顕著に向上する。
【0025】
リン酸化合物の配合量は、水性樹脂の全固形分100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは1〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部とする。リン酸化合物が0.1質量部未満では耐食性が劣り、一方、50質量部超では皮膜形成後の外観ムラが生じやすい。
【0026】
さらに、本発明においては、表面処理組成物中に、アルカリ脱脂後耐食性および耐黒変性向上を目的として、Co化合物を配合することが好ましい。Coの供給源としては、例えば硝酸Co、硫酸Co、塩化Co等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。Coを配合することにより特にアルカリ脱脂後の耐食性が向上する理由は、アルカリ脱脂の際に下層皮膜中成分であるリン酸化合物の溶出が抑制されるためであると考えられる。皮膜中のリン酸化合物は腐食環境下で、リン酸イオンとなって溶出金属と錯形成反応を起こすことにより保護皮膜を形成するため、アルカリ脱脂後のリン酸化合物の溶出を抑制することにより、アルカリ脱脂後でも優れた耐食性を有する。
【0027】
Coの配合量は、水性樹脂の固形分100質量部に対して、0.01〜50質量部、好ましくは0.5〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部とする。Coの配合量が0.01質量部未満では耐食性の向上効果が十分でなく、一方、50質量部を超えると処理液との反応性が強くなり外観ムラを生じやすくなる。
【0028】
次に、上記第1層皮膜(表面処理皮膜)の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜について説明する。
第2層皮膜は、皮膜形成有機樹脂(A)と、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(Y)と、潤滑剤(Z)とを含み、前記反応生成物(X)の固形分100質量部に対して該防錆添加成分(Y)の合計の含有量が1〜100質量部、潤滑剤(Z)の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、乾燥することにより形成される有機被膜である。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
皮膜形成有機樹脂(A)の種類としては、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(B)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はない。この皮膜形成有機樹脂(A)としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの樹脂の付加物又は縮合物などを挙げることができ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
特に、皮膜形成有機樹脂(A)としては、反応性、反応の容易さ、防食性などの点から、樹脂中にエポキシ基を含有するエポキシ基含有樹脂(D)が特に好ましい。例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂、及びこれらの樹脂の付加物若しくは縮合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂の1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。さらに、これらのエポキシ基含有樹脂(D)の中でも、めっき表面との密着性、耐食性の点からエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂が特に好適である。酸素などの腐食因子に対して優れた遮断性を有する熱硬化性のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂が最適であり、とりわけ高度な導電性及びスポット溶接性を得るために皮膜の付着量を低レベルにする場合には特に有利である。
【0030】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、若しくはこのグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性を必要とする場合には数平均分子量が1500以上であることが好適である。
【0031】
上記変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基または水酸基に各種変性剤を反応させた樹脂を挙げることができ、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などを例示できる。
【0032】
上記エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する不飽和モノマーとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分とを、溶液重合法、エマルション重合法または懸濁重合法などによって合成した樹脂を挙げることができる。
【0033】
上記重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−,iso−若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のC1〜24アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのC1〜4アルキルエーテル化物、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0034】
また、エポキシ基を有する不飽和モノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなど、エポキシ基と重合性不飽和基を持つものであれば特別な制約はない。
【0035】
また、このエポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
【0036】
前記エポキシ樹脂として特に好ましいのは、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応生成物である下記(1)式に示される化学構造を有する樹脂であり、このエポキシ樹脂は特に耐食性に優れているため好ましい。
【0037】
【化1】


このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂は当業界において広く知られている製造法を用いて製造することができる。また、上記化学構造式において、qは0〜50、好ましくは1〜40、特に好ましくは2〜20である。
【0038】
なお、皮膜形成有機樹脂(A)は、有機溶剤溶解型、有機溶剤分散型、水溶解型、水分散型のいずれであってもよい。
【0039】
本発明では皮膜形成有機樹脂(A)の分子中にヒドラジン誘導体を付与することを狙いとしており、このために皮膜形成有機樹脂(A)と反応させる活性水素含有化合物(B)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)であることが必要である。
【0040】
皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含有樹脂である場合、そのエポキシ基と反応する活性水素含有化合物(B)として例えば以下に示すようなものを例示でき、これらの1種または2種以上を使用できるが、この場合も活性水素含有化合物(B)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体であることが必要である。
・活性水素を有するヒドラジン誘導体
・活性水素を有する第1級または第2級のアミン化合物
・アンモニア、カルボン酸などの有機酸
・塩化水素などのハロゲン化水素
・アルコール類、チオール類
・活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤
また、前記活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物
(2)ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物
(3)1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物
(4)5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物
(5)5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物
(6)マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物
また、これらのなかでも、5員環または6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。
【0041】
これらのヒドラジン誘導体は1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
活性水素含有化合物(B)の一部として使用できる上記活性水素を有するアミン化合物の代表例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基を、ケトン、アルデヒド若しくはカルボン酸と例えば100〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミン、ケチミン、オキサゾリン若しくはイミダゾリンに変性した化合物
(2)ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−または−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン
(3)モノエタノールアミンのようなモノアルカノールアミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル付加反応により付加させて得られた第2級アミン含有化合物
(4)モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2′(アミノプロポキシ)エチルエーテルなどのアルカノールアミンの1級アミノ基をケチミンに変性した化合物
活性水素含有化合物(B)の一部として使用できる上記4級塩化剤としては、活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンはそれ自体ではエポキシ基と反応性を有しないので、これらをエポキシ基と反応可能とするために酸との混合物としたものである。4級塩化剤は、必要に応じて水の存在下でエポキシ基と反応し、エポキシ基含有樹脂と4級塩を形成する。
【0043】
4級塩化剤を得るために使用される酸は、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれでもよい。また、4級塩化剤を得るために使用される活性水素を有しないヒドラジン誘導体としては、例えば3,6−ジクロロピリダジンなどを、また、第3級アミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0044】
皮膜形成有機樹脂(A)と、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)は、皮膜形成有機樹脂(A)と活性水素含有化合物(B)とを10〜300℃、好ましくは50〜150℃で約1〜8時間程度反応させて得られる。
【0045】
この反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素等を例示でき、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、塗膜形成性などの面からは、ケトン系又はエーテル系の溶剤が特に好ましい。
【0046】
皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との配合比率は、固形分の割合で皮膜形成有機樹脂(A)100質量部に対して、活性水素含有化合物(B)を0.5〜20質量部、特に好ましくは1.0〜10質量部とするのが望ましい。
【0047】
また、皮膜形成有機樹脂(A)がエポキシ基含有樹脂(D)である場合には、エポキシ基含有樹脂(D)と活性水素含有化合物(B)との配合比率は、活性水素含有化合物(B)の活性水素基の数とエポキシ基含有樹脂(D)のエポキシ基の数との比率[活性水素基数/エポキシ基数]が0.01〜10、より好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4とすることが耐食性などの点から適当である。
【0048】
また、活性水素含有化合物(B)中における活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)の割合は10〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さら好ましくは40〜100モル%とすることが適当である。活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)の割合が10モル%未満では有機皮膜に十分な防錆機能を付与することができず、得られる防錆効果は皮膜形成有機樹脂とヒドラジン誘導体を単に混合して使用した場合と大差なくなる。
【0049】
本発明では緻密なバリア皮膜を形成するために、樹脂組成物中に硬化剤を配合し、有機皮膜を加熱硬化させることが望ましい。
【0050】
樹脂組成物皮膜を形成する場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方法、(2)メラミン、尿素及びベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルムアルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反応を利用する硬化方法、が適当であるが、このうちイソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を主反応とすることが特に好適である。
【0051】
上記(1)の硬化方法で用いるポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環族(複素環を含む)又は芳香族イソシアネート化合物、若しくはそれらの化合物を多価アルコールで部分反応させた化合物である。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば以下のものが例示できる。
(i)m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、o−またはp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート
(ii)上記(i)の化合物単独またはそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ペンタエリスリトールなどの4価アルコール、ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0052】
また、ポリイソシアネート化合物の保護剤(ブロック剤)としては、例えば、
(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類
(2)エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル
(3)フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール
(4)アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム
などが使用でき、これらの1種または2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート化合物を得ることができる。
【0053】
このようなポリイソシアネート化合物(E)は、硬化剤として皮膜形成有機樹脂(A)に対し、(A)/(E)=95/5〜55/45(不揮発分の質量比)、好ましくは(A)/(E)=90/10〜65/35の割合で配合するのが適当である。ポリイソシアネート化合物には吸水性があり、これを(A)/(E)=55/45を超えて配合すると有機皮膜の密着性を劣化させるおそれがある。さらに、有機皮膜上に上塗り塗装を行った場合、未反応のポリイソシアネート化合物が塗膜中に移動し、塗膜の硬化阻害や密着性不良を起こすおそれがある。このような観点から、ポリイソシアネート化合物(E)の配合量は(A)/(E)=55/45以下とすることが好ましい。
【0054】
なお、皮膜形成有機樹脂(A)は以上のような架橋剤(硬化剤)の添加により十分に架橋するが、さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触媒を使用することが望ましい。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。
【0055】
また、例えば皮膜形成有機樹脂(A)にエポキシ基含有樹脂を使用する場合、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポキシ基含有樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、ポリエステルなどの樹脂を混合して用いることもできる。
【0056】
次に、自己補修性発現物質である防錆添加成分(Y)について説明する。
防錆添加成分(Y)は、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上である。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
上記成分(a)であるリン酸塩は、単塩、複塩などの全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに限定はなく、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩または亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。
【0057】
また、上記成分(a)であるリン酸塩とともにカルシウム化合物を複合添加することにより、耐食性をさらに向上させることができる。カルシウム化合物は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種または2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してもよい。
【0058】
上記成分(b)であるCaイオン交換シリカは、カルシウムイオンを多孔質シリカゲル粉末の表面に固定したもので、腐食環境下でCaイオンが放出されて沈殿膜を形成する。
【0059】
Caイオン交換シリカとしては任意のものを用いることができるが、平均粒子径が6μm以下、望ましくは4μm以下のものが好ましく、例えば、平均粒子径が2〜4μmのものを用いることができる。Caイオン交換シリカの平均粒子径が6μmを超えると耐食性が低下するとともに、塗料組成物中での分散安定性が低下する。
【0060】
Caイオン交換シリカ中のCa濃度は1wt%以上、望ましくは2〜8wt%であることが好ましい。Ca濃度が1wt%未満ではCa放出による防錆効果が十分に得られない。なお、Caイオン交換シリカの表面積、pH、吸油量については特に限定されない。
【0061】
以上のようなCaイオン交換シリカとしては、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303(平均粒子径2.5〜3.5μm、Ca濃度3wt%)、SHIELDEX AC3(平均粒子径2.3〜3.1μm、Ca濃度6wt%)、SHIELDEX AC5(平均粒子径3.8〜5.2μm、Ca濃度6wt%)(以上、いずれも商品名)、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEX(平均粒子径3μm、Ca濃度6〜8wt%)、SHIELDEX SY710(平均粒子径2.2〜2.5μm、Ca濃度6.6〜7.5wt%)(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
【0062】
上記成分(c)であるモリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えば、オルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩などが挙げられる。また、単塩、複塩などの全ての塩を含み、複塩としてはリン酸モリブデン酸塩などが挙げられる。
【0063】
上記成分(d)である酸化ケイ素は、コロイダルシリカ、乾式シリカのいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、水系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスC、スノーテックスS(以上、いずれも商品名)、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、カタロイドSI−350、カタロイドSI−40、カタロイドSA、カタロイドSN(以上、いずれも商品名)、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20〜50、アデライトAT−20N、アデライトAT−300、アデライトAT−300S、アデライトAT20Q(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
【0064】
また、溶剤系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルMA−ST−M、オルガノシリカゾルIPA−ST、オルガノシリカゾルEG−ST、オルガノシリカゾルE−ST−ZL、オルガノシリカゾルNPC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST−ZL、オルガノシリカゾルXBA−ST、オルガノシリカゾルMIBK−ST(以上、いずれも商品名)、触媒化成工業(株)製のOSCAL−1132、OSCAL−1232、OSCAL−1332、OSCAL−1432、OSCAL−1532、OSCAL−1632、OSCAL−1722(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
【0065】
特に、有機溶剤分散型シリカゾルは、分散性に優れ、ヒュームドシリカよりも耐食性に優れている。
【0066】
また、ヒュームドシリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R971、AEROSIL R812、AEROSIL R811、AEROSIL R974、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 300CF(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
【0067】
微粒子シリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制することができると考えられている。
【0068】
耐食性の観点からは、微粒子シリカは粒子径が5〜50nm、望ましくは5〜20nm、さらに好ましくは5〜15nmのものを用いるのが好ましい。
【0069】
上記成分(e)の有機化合物のうち、トリアゾール類としては、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾールなどが、またチオール類としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−メルカプトベンツイミダゾールなどが、またチアジアゾール類としては、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどが、またチアゾール類としては、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール類などが、またチウラム類としては、テトラエチルチウラムジスルフィドなどが、それぞれ挙げられる。
【0070】
有機皮膜中での上記防錆添加成分(Y)の合計の配合量(上記成分(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の自己補修性発現物質の合計の配合量)は、基体樹脂(反応生成物(X))の固形分100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜50質量部とする。防錆添加成分(Y)の配合量が1質量部未満では耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100質量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。
【0071】
以上述べた第2層皮膜である有機皮膜の防食機構については、次のように考えられる。
【0072】
すなわち、単なる低分子量のキレート化剤ではなく、皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘導体を付与することによって、(1)緻密な有機高分子皮膜により酸素や塩素イオンなどの腐食因子を遮断する効果が得られること、(2)ヒドラジン誘導体が第1層皮膜の表面と安定で強固に結合して不動態化層を形成できること、(3)腐食反応によって溶出した亜鉛イオンを皮膜中のフリーのヒドラジン誘導体基がトラップし、安定な不溶性キレート化合物層を形成するため、界面でのイオン伝導層の形成が抑制されて腐食の進行が抑制されること、などの作用効果により腐食の進行が効果的に抑制され、優れた耐食性が得られるものと考えられる。
【0073】
また、皮膜形成有機樹脂(A)として、特にエポキシ基含有樹脂を用いた場合には、エポキシ基含有樹脂と架橋剤との反応により緻密なバリア皮膜が形成され、このバリア皮膜は酸素などの腐食因子の透過抑制能に優れ、また、分子中の水酸基により素地との優れた結合力が得られるため、特に優れた耐食性(バリア性)が得られる。さらに、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)として、特に活性水素を有するピラゾール化合物または/および活性水素を有するトリアゾール化合物を用いることにより、より優れた耐食性(バリア性)が得られる。
【0074】
従来技術として皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘導体を混合した組成物を用いる方法が知られているが、この従来技術のように皮膜形成有機樹脂に単にヒドラジン誘導体を混合しただけでは、腐食抑制の向上効果はほとんど認められない。その理由は、皮膜形成有機樹脂の分子中に組み込まれていないヒドラジン誘導体は、キレート化合物を形成するものの、そのキレート化合物は低分子量のため緻密なバリア層にはならないためであると考えられる。これに対して、本発明のように皮膜形成有機樹脂の分子中にヒドラジン誘導体を組み込むことにより、格段に優れた腐食抑制効果が得られる。
【0075】
さらに、本発明では上記のような特定の有機高分子樹脂からなる有機皮膜中に、
上記の防錆添加成分(Y)(自己補修性発現物質)を適量配合することにより、特に優れた防食性能(自己修復効果)を得ることができる。そして、この特定の有機皮膜中に防錆添加成分(Y)(自己補修性発現物質)を配合したことにより得られる防食機構は以下のように考えられる。
【0076】
まず、上記(a)の成分は、腐食環境化において加水分解によってリン酸イオンに解離し、溶出金属と錯形成反応を起こすことにより保護皮膜を形成する。
【0077】
また、上記(b)の成分の場合は、腐食環境下でNaイオンなどのカチオンが侵入するとイオン交換作用によりシリカ表面のCaイオンが放出され、さらに、腐食環境下でのカソード反応によりOHイオンが生成してめっき界面近傍のpHが上昇するとCaイオン交換シリカから放出されたCaイオンがCa(OH)としてめっき界面近傍に沈殿し、緻密で難溶性の生成物として欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制する。また、溶出した亜鉛イオンはCaイオンと交換されてシリカ表面に固定される効果も考えられる。
【0078】
また、上記(c)の成分は、不動態化効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食環境下で溶存酸素と共にめっき皮膜表面に緻密な酸化物を形成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
【0079】
また、上記(d)の成分は、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制する。
【0080】
また、上記(e)の成分は吸着効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食によって溶出した亜鉛やアルミニウムが、上記(e)の成分が有する窒素や硫黄を含む極性基に吸着して不活性皮膜を形成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
【0081】
一般の有機皮膜中に上記(a)〜(e)の成分を配合した場合でも、ある程度の防食効果は得られるが、本発明のように特定の有機高分子樹脂からなるバリア性に優れた有機皮膜中に上記(a)〜(e)の自己補修性発現物質を配合したことにより、両者の効果(バリア性と自己補修性)が複合化し、これにより極めて優れた防食効果が発揮されるものと考えられる。
【0082】
また、上記(a)の成分とともにカルシウム化合物を複合添加した場合には、カルシウム化合物は、腐食環境下においてめっき金属よりも優先的に溶出することにより、めっき金属の溶出をトリガーとせずにリン酸イオンと錯形成反応を起こして緻密で難溶性の保護皮膜を形成し、腐食反応を抑制する。
【0083】
なお、以上述べた(a)〜(e)の成分のうちの2種以上を複合添加すれば、各々の成分による腐食抑制作用が複合化されるため、より優れた耐食性が得られる。
【0084】
さらに、有機皮膜中には上記の防錆添加成分に加えて、腐食抑制剤として、他の酸化物微粒子(例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモンなど)、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)、有機リン酸及びその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩、及びこれらの金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩など)などの1種または2種以上を添加することもできる。
【0085】
次に、皮膜の耐疵つき性(加工性)を向上させるために添加される潤滑剤(Z)について説明する。
潤滑剤(Z)としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びカルナウバワックスなどを挙げることができる。またこれらの潤滑剤(Z)は1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。潤滑剤(Z)の配合量は、基体樹脂(反応生成物(X))の固形分100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部とする。配合量が0.1質量部未満では耐疵つき性(加工性)が乏しく、一方、配合量が15質量部を超えると塗料密着性が低下するので好ましくない。
また、潤滑剤の粒子径/第2層の皮膜厚=1.5〜15の範囲内とする。潤滑剤の粒子径/第2層の皮膜厚が15を超えると皮膜の摺動時に潤滑剤が皮膜から剥離する。1.5未満では潤滑剤が第2層皮膜表面から十分に突出していないため耐疵つき性が低下する。
また潤滑剤の軟化点は、皮膜乾燥温度以上であることが好ましい。軟化点が皮膜乾燥温度以下では、潤滑剤が溶融し本来の潤滑性が発揮されないため耐疵つき性が低下する。
【0086】
以上より得られる表面処理組成物により形成される表面処理皮膜(第1層皮膜)の乾燥膜厚は0.01μm〜5μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.3〜2μmとする。乾燥膜厚が0.01μm未満では耐食性が不十分であり、一方、5μmを超えると導電性や加工性が低下する。また、有機被膜(第2層被膜)の皮膜厚を0.01μm以上5μm未満、好ましくは0.2〜3μm、さらに好ましくは0.4〜2μmとする。膜厚が0.01μm未満では潤滑剤が第2層皮膜表面から剥離しやすいため耐疵つき性が不十分であり、一方、5μmを超えると導電性が低下する。さらに、両皮膜の合計は0.1〜5μmの範囲とすることが導電性の観点から好ましい。
【0087】
次に本発明の表面処理鋼板の製造方法について説明する。
本発明の表面処理鋼板は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、まず、第1層皮膜形成用の表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより第1層皮膜を形成し、次いで、その上部に、第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、潤滑剤の軟化点以下の温度で乾燥することにより第2層皮膜を形成し得られる。この時、第1層皮膜と第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmとなるよう表面処理組成物と塗料組成物を塗布する。
【0088】
なお、めっき鋼板の表面は、上記処理液を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理等の前処理を施すことができる。
【0089】
このように、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に第1層を形成するには、上述した組成を有する処理液を乾燥皮膜厚が上記範囲となるようにめっき鋼板に塗布し、加熱乾燥させる。この時、表面処理組成物(処理液)はpH0.5〜6、好ましくは1〜4に調整することが好ましい。表面処理組成物のpHが0.5未満では処理液の反応性が強すぎるため外観ムラが生じ、一方、pHが6を超えると処理液の反応性が低くなり、めっき金属と皮膜との結合が不十分となり、耐食性が低下する。
【0090】
表面処理組成物をめっき鋼板面に形成する方法としては塗布法、浸漬法、スプレー法のいずれでもよい。塗布処理方法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどいずれの方法でもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、あるいは浸せき処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0091】
表面処理組成物をコーティングした後は、水洗することなく加熱乾燥を行う。加熱乾燥手段としては、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱処理は、到達板温で30℃〜300℃が好ましい。さらに好ましくは40℃〜250℃である。30℃未満では皮膜中の水分が多量に残り、耐食性が不十分となる場合がある。また、300℃を越えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じ耐食性が低下する場合がある。
【0092】
以上のように亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に表面処理皮膜(第1層皮膜)を形成した後、その上層に第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布する。塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0093】
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。
【0094】
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は潤滑剤の軟化点以下の温度で行うこととする。加熱温度が潤滑剤の軟化点を越えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
【0095】
以上により、本発明の表面処理鋼板が得られる。なお、以上述べた第1層+第2層皮膜は、めっき鋼板の片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【実施例】
【0096】
次に、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、以下「%」はいずれも質量基準によるものとする。
第1層皮膜形成用として、表1に示す水性樹脂、表2に示すシランカップリング剤、表3に示すリン酸化合物、表4に示す金属化合物を適宜配合した表面処理組成物を調製した。また、第2層皮膜形成用として、下記のように合成した基体樹脂(1)、(2)(表5)に、表6に示す防錆添加剤、表7に示す潤滑剤を適宜配合した塗料組成物を調製した。
【0097】
【表1】


【0098】
【表2】


【0099】
【表3】


【0100】
【表4】


【0101】
【表5】


【0102】
【表6】


【0103】
【表7】


[合成例1]
EP828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量187)1870部とビスフェノールA912部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部、メチルイソブチルケトン300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂に対して、エチレングリコールモノブチルエーテル1500部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(分子量96)を96部とジブチルアミン(分子量129)を129部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン205部を加えて、固形分60%のピラゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂(1)とする。この基体樹脂(1)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を50mol%含む活性水素含有化合物との生成物である。
【0104】
[合成例2]
EP1007(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量2000)4000部とエチレングリコールモノブチルエーテル2239部を四つ口フラスコに仕込み、120℃まで昇温して1時間で完全にエポキシ樹脂を溶解した。このものを100℃に冷却し、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量84)を168部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン540部を加えて、固形分60%のトリアゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂(2)とする。この基体樹脂(2)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を100mol%含む活性水素含有化合物との生成物である。
次いで、処理原板として表8に示す各種めっき鋼板を用い、めっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥した後、上記第1層皮膜形成用の表面処理組成物を塗布し、各種温度で乾燥させた。次いで、その上部に上記第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、各種温度で乾燥させ、発明例および比較例の表面処理鋼板を得た。なお、第1層及び第2層皮膜の膜厚は、皮膜組成物の固形分(加熱残分)や処理時間等により調整した。
【0105】
【表8】


以上により得られた表面処理鋼板に対して品質性能(耐白錆性、耐黒変性、耐水性、耐疵つき性、塗料二次密着性)の各試験を行った。結果を表9に示す。なお、品質性能の試験条件及び評価基準は、以下の通りである。
【0106】
(1)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、120時間および240時間経過後の白錆面積率で評価した。
評価基準は以下の通りである。
◎ :白錆面積率5%未満
○ :白錆面積率5%以上、10%未満
○−:白錆面積率10%以上、25%未満
△ :白錆面積率25%以上、50%未満
× :白錆面積率50%以上、100%以下
【0107】
(2)アルカリ脱脂後耐白錆性
各サンプルについて、アルカリ脱脂材CLN−364S(日本パーカライジング(株)製)を20g/lの濃度で純水に溶解して60℃に加温し、1kgf/cm2の圧力で2分間スプレー処理した後、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、120時間経過後の白錆面積率で評価した。
評価基準は以下の通りである。
◎ :白錆面積率5%未満
○ :白錆面積率5%以上、10%未満
○−:白錆面積率10%以上、25%未満
△ :白錆面積率25%以上、50%未満
× :白錆面積率50%以上、100%以下
【0108】
(3)耐黒変性
各サンプルについて、80℃×98%RHの環境下で1日放置した後、色調変化ΔL(「試験後のL値」−「試験前のL値」)にて評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :ΔL≧−1
○ :−1>ΔL≧−2
△ :−2>ΔL≧−3
× :ΔL<−3
【0109】
(4)耐水性
各サンプルにろ紙を接触させた状態で60℃に加温した純水に30秒浸漬し、取り出し後濡れたろ紙が鋼板に十分に接触した状態で90秒放置した。その後、紙を取り除き水分を拭き取り、サンプル表面を目視で観察し下記基準にしたがって評価をした。
○ :白化なし
△ :斜めからみると確認できる白化
× :明らかな白化(斜めからみなくても確認できる)
【0110】
(5)耐疵付き性
ラビングテスター(太平理化工業(株)製)を用いて試験片を段ボールでラビング後、試験片の表面を目視で観察し、下記評価にしたがって評価をした。試験は500g、摺動距離60mm、速度120mm/s、ラビング回数1000回で行った。
◎:疵の本数が0本
○:疵の本数が1〜2本
△:疵の本数が3〜10本
×:疵の本数が11本以上
【0111】
(6)塗料二次密着性
各サンプルについて、メラミン系の焼き付け塗料(膜厚30μm)を塗装した後、沸水中に2時間浸漬し、直ちに、碁盤目(10×10個、1mm間隔)のカットを入れて接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:剥離なし
○:剥離面積率5%未満
△:剥離面積率5%以上、20%未満
×:剥離面積率20%以上
【0112】
【表9】


表9より、本発明例はいずれの性能も優れていることがわかる。発明例3、7〜15はベースめっき種を変更した結果であるが、いずれにおいても上記効果が得られており、特に、発明例3、16〜19は、下層皮膜の樹脂種を変更した結果であるが、この場合も同様に上記効果が得られている。また、発明例3、33〜40は上層樹脂種、防錆添加剤種を変更した結果であるが、いずれも優れた耐食性および耐水性、耐疵つき性が得られている。また、発明例3、24〜29では、下層皮膜の金属化合物の添加することによって、耐黒変性、アルカリ脱脂後耐白錆性に効果が見られ、特にCoを添加した場合にその効果が大きいことを示している。
【0113】
一方、比較例1、9、10は、下層皮膜の水性樹脂、シランカップリング剤、リン酸化合物のいずれかを添加していないため、耐白錆性が劣っている。
【0114】
比較例3〜8では、本発明範囲内のメルカプト基を有するシランカップリング剤を使用せずに、別のシランカップリング剤を使用しているため耐水性が劣っている。
【0115】
比較例2、11は、それぞれシランカップリング剤もしくはリン酸化合物を本発明範囲外で過剰に添加しているため、耐白錆性や耐水性が低下している。
【0116】
比較例13、14は、上層皮膜中の防錆添加剤を本発明範囲外で過剰に添加しているため、耐白錆性が低下している。
【0117】
本発明例43〜47は上層皮膜の潤滑剤の種類、粒子径を変更した結果であるが、いずれにおいても優れた耐疵つき性を有している。一方、式Aの下限未満および上限を超える比較例14、15では、耐疵つき性が低下している。
「潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15・・・・式A
比較例20、21は、潤滑剤の添加量が本発明範囲外であるため、耐疵つき性や塗料密着性が低下している。
【0118】
比較例22、23は、上層もしくは下層の皮膜厚が0すなわち皮膜を有していないため、耐食性、耐疵つき性が両立できていない。すなわち、発明例3、47〜49は下層と上層の合計の皮膜厚効果を示しており、合計皮膜厚が大きいほど、耐食性、耐疵つき性が向上する。また、下層単独皮膜および上層単独皮膜ではどちらも耐食性、耐疵つき性を両立できず、二層皮膜とすることが重要であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の表面処理鋼板は、耐白錆性、耐黒変性、耐水性、耐疵つき性、塗料密着性に優れるので、家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板として最適であることは勿論、それら以外にも、上記鋼板特性が要求される用途に対して用いることができる。




 

 


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