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発明の名称 表面処理鋼板およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9231(P2007−9231A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−187523(P2005−187523)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
発明者 岡井 和久 / 松田 武士 / 樋貝 和彦 / 山地 隆文
要約 課題
耐食性、耐水性及び耐疵つき性を両立できる表面処理鋼板及びその製造方法を提供する。

解決手段
鋼板の表面に、水性エポキシ樹脂(a)、水性ウレタン樹脂(b)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(c)、リン酸化合物(d)を含有し、(a)と(b)の合計量の全固形分100質量部に対して(c)が1〜300質量部、(d)が0.1〜50質量部で、かつ、(a)の固形分質量/(b)の固形分質量が95/5〜5/95である表面処理組成物から形成される第1層皮膜を有し、さらに、皮膜形成有機樹脂と潤滑剤とを含有し、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対して潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物から形成される第2層皮膜を有し、かつ、潤滑剤の粒子径と第2層皮膜の厚さとの関係が潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15を満足し、第1層皮膜と第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmである表面処理鋼板。
特許請求の範囲
【請求項1】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、
水性エポキシ樹脂(a)、水性ウレタン樹脂(b)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(c)、リン酸化合物(d)を含有し、(a)と(b)の合計量の全固形分100質量部に対して(c)が1〜300質量部、(d)が0.1〜50質量部で、かつ、(a)の固形分質量/(b)の固形分質量が95/5〜5/95である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより鋼板の表面に形成される第1層皮膜を有し、
さらに、該第1層皮膜の上部に、皮膜形成有機樹脂と潤滑剤とを含有し、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対して潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し乾燥することにより形成される第2層皮膜を有し、
かつ、前記潤滑剤の粒子径と前記第2層皮膜の厚さとの関係が下記式を満足し、
前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmであることを特徴とする表面処理鋼板。
潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15
【請求項2】
前記第1層皮膜形成用の表面処理組成物は、さらにCo化合物を、水性エポキシ樹脂(a)と水性ウレタン樹脂(b)の合計量の全固形分100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板。
【請求項3】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、
水性エポキシ樹脂(a)、水性ウレタン樹脂(b)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(c)、リン酸化合物(d)を含有し、(a)と(b)の合計量の全固形分100質量部に対して(c)が1〜300質量部、(d)が0.1〜50質量部で、かつ、(a)の固形分質量/(b)の固形分質量が95/5〜5/95である表面処理組成物を塗布し、
乾燥することにより、第1層皮膜を鋼板の表面に形成し、
次いで、該第1層皮膜の上部に、皮膜形成有機樹脂と潤滑剤とを含有し、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対して潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、潤滑剤の軟化点以下の温度で乾燥することにより、第2層皮膜を形成し、
かつ、前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmとなるように第1層皮膜及び第2層皮膜が形成されることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、家電、建材等の用途に好適な、六価クロム等の有害物質を全く含まない、耐白錆性、耐水性及び耐疵つき性を有する非クロム型表面処理鋼板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主要成分とした六価クロムを含有する処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は耐食性に優れ且つ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。しかしながら、クロメート処理による皮膜は、公害規制物質である六価クロムを含有しているため好ましくなく、六価クロムを用いない表面処理鋼板が要望されている。
【0003】
さらに、表面処理鋼板の多くは、加工され、加工後にアルカリ脱脂され、そのまま、あるいは塗装して使用されることが多い。このような中で、最近では、工程の簡略化、コストの低減を目的に、アルカリ脱脂を省略する方法も検討されている。例えば、この脱脂工程が省略可能な鋼板として、潤滑性や耐磨耗性の良好な有機樹脂皮膜を有する鋼板や、さらにワックスを有機樹脂皮膜中に添加した鋼板が開発され、実用化されている。
具体的には、
(1)鋼板表面に、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系樹脂にワックスを分散させた皮膜を形成する方法(特許文献1)や、ウレタン樹脂と硬化剤とシリカとポリオレフィンワックスを含む水系金属表面処理組成物による皮膜を形成させる方法(特許文献2)
(2)ポリビニルフェノール誘導体とシランカップリング剤とワックスを配合した皮膜を形成する方法(特許文献3)
(3)水性樹脂とシランカップリング剤とリン酸化合物を含有する皮膜を下層成分として、その上層にポリオレフィンワックスディスパージョンを含有する有機樹脂皮膜を形成する方法(特許文献4)
(4)下層に酸化物を含有するリン酸及び/又はリン酸化合物皮膜、その上層に自己補修性防錆顔料を含む有機樹脂皮膜を形成させる方法(特許文献5、特許文献6)
が開示されている。
【特許文献1】特開2000−52478号公報
【特許文献2】特開2000−239690号公報
【特許文献3】特開2001−234350号公報
【特許文献4】特許3464652号公報
【特許文献5】特開2002−53979号公報
【特許文献6】特開2002−53980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には以下に述べるような問題点がある。
特許文献1及び2(上記(1))に記載の方法は、耐疵つき性への効果はみられるが、亜鉛めっき表面にクロメート処理を施した鋼板のため、6価クロムを含有しないという本来の目的を達していない。また、亜鉛めっき上にリン酸亜鉛処理を施した鋼板では、6価クロムは含有しないものの、リン酸亜鉛皮膜上に上記皮膜を形成するだけでは耐食性が劣る。
【0005】
特許文献3(上記(2))に記載の方法は、皮膜形成樹脂がフェノール系樹脂であり皮膜の柔軟性が低いため、耐疵つき性が劣っている。また皮膜中に添加されるワックスの粒子径や、ワックスの軟化点と皮膜乾燥温度の関係を限定した記述はない。
【0006】
特許文献4(上記(3))に記載の方法は、ポリオレフィンワックスに加えさらに耐磨耗性に優れるウレタン系樹脂を用いることで耐疵付き性への効果は大きいが、ウレタン系樹脂とシリカとポリオレフィンワックスによる防錆効果はほとんどみられず、耐食性が十分とはいえない。また下層皮膜によって耐食性を得る手法ではあるが、クロメート皮膜同等の耐食性を得るために必要なリン酸成分が多くなり、皮膜中に残存するリン酸成分が湿潤環境下で吸水することで皮膜が白化してしまい、耐水性が劣る。
【0007】
特許文献5及び6(上記(4))に記載の方法は、上層に特定の自己補修性発現物質を添加することにより下層、上層皮膜の双方で耐食性への寄与効果があり耐食性には優れるが、自己補修性発現物質の粒子が皮膜表面から突出していると耐疵つき性が劣る。また、下層のリン酸化合物の影響で含有量が多くなると皮膜が白化してしまい、耐水性が十分ではない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、皮膜中に6価クロムなどの公害規制物質を含有することなく、耐食性、耐水性及び耐疵つき性を両立できる表面処理鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、優れた耐食性、耐水性及び耐疵付き性を両立させるには、第1層にめっき皮膜表層を不活性化させた有機・無機複合層を、第2層に第1層との強固な密着性を有する有機皮膜と潤滑性を併せもつ二層皮膜構造が最も効果的であることを見出した。すなわち、第1層皮膜を水性樹脂とリン酸化合物とシランカップリング剤を含有する表面処理組成物により形成し、第2層皮膜を有機樹脂と潤滑剤とを特定の割合で含有する塗料組成物で形成し、さらに、第2層皮膜に含まれる潤滑剤の粒子径を、潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15の範囲に制御することにより、上記のような複合的な機能が発揮され、優れた耐食性、耐水性及び耐疵付き性が得られることが判った。また第1層皮膜中にCoの金属化合物を配合することにより、耐食性がさらに改善されると同時に湿潤環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)が抑制されることも判った。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、
水性エポキシ樹脂(a)、水性ウレタン樹脂(b)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(c)、リン酸化合物(d)を含有し、(a)と(b)の合計量の全固形分100質量部に対して(c)が1〜300質量部、(d)が0.1〜50質量部で、かつ、(a)の固形分質量/(b)の固形分質量が95/5〜5/95である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより鋼板の表面に形成される第1層皮膜を有し、さらに、該第1層皮膜の上部に、皮膜形成有機樹脂と潤滑剤とを含有し、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対して潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し乾燥することにより形成される第2層皮膜を有し、かつ、前記潤滑剤の粒子径と前記第2層皮膜の厚さとの関係が下記式を満足し、前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmであることを特徴とする表面処理鋼板。
潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15
[2]前記[1]において、前記第1層皮膜形成用の表面処理組成物は、さらにCo化合物を、水性エポキシ樹脂(a)と水性ウレタン樹脂(b)の合計量の全固形分100質量部に対して0.01〜50質量部含有することを特徴とする表面処理鋼板。
[3]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、水性エポキシ樹脂(a)、水性ウレタン樹脂(b)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(c)、リン酸化合物(d)を含有し、(a)と(b)の合計量の全固形分100質量部に対して(c)が1〜300質量部、(d)が0.1〜50質量部で、かつ、(a)の固形分質量/(b)の固形分質量が95/5〜5/95である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより、第1層皮膜を鋼板の表面に形成し、次いで、該第1層皮膜の上部に、皮膜形成有機樹脂と潤滑剤とを含有し、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対して潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、潤滑剤の軟化点以下の温度で乾燥することにより、第2層皮膜を形成し、かつ、前記第1層皮膜と前記第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmとなるように第1層皮膜及び第2層皮膜が形成されることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐食性、耐水性及び耐疵つき性に優れた表面処理鋼板を提供することが可能となる。また、本発明の表面処理鋼板は、上記性能を有する上に、六価クロム等の有害物質を全く含まないので、環境面からも優れた材料といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の詳細とその限定理由を説明する。
【0012】
本発明の表面処理鋼板のベースとなる鋼板は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板である。
亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、Zn−Niめっき鋼板、Zn−Feめっき鋼板(電気めっき、合金化溶融亜鉛めっき)、Zn−Crめっき鋼板、Zn−Mnめっき鋼板、Zn−Coめっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Niめっき鋼板、Zn−Cr−Feめっき鋼板、Zn−Al−Mgめっき鋼板(例えばZn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、Zn−Alめっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)である。さらにこれらのめっき層に少量の異種金属元素あるいは不純物としてニッケル、コバルト、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、鉛、アンチモン、錫、銅の1種または2種以上を含有しためっき鋼板および/またはシリカなどの金属酸化物、ポリマーなどを分散しためっき鋼板(例えば、Zn−SiO2分散めっき鋼板)などを用いることもできる。
また、上記のようなめっきのうち、同種または異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
【0013】
アルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−Siめっき鋼板である。
【0014】
また、めっき鋼板としては、鋼板面にあらかじめNiなどの薄目付けのめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。めっきの方法としては、電解法(水溶液中での電解、非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法も採用することができる。
【0015】
また、化成処理皮膜をめっき皮膜表面に形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、あらかじめめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理、酸性の表面調整処理)等の処理を施しておくことも可能である。また、表面処理鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、必要に応じてあらかじめめっき表面に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を含む酸性またはアルカリ性水溶液による表面調整処理を施しておくこともできる。また電気亜鉛めっき鋼板を下地鋼板として用いる場合には、黒変を防止する目的で電気めっき浴に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を添加し、めっき皮膜中にこれらの金属を1ppm以上含有させておくこともできる。この場合、めっき皮膜中の鉄族金属濃度の上限については特に限定はない。
【0016】
次に、上記亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される表面処理皮膜(第1層皮膜)およびこの皮膜形成用の表面処理組成物について説明する。
本発明の表面処理鋼板において亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される表面処理皮膜は、水性エポキシ樹脂(a)と、水性ウレタン樹脂(b)と、メルカプト基を有するシランカップリング剤(c)と、リン酸化合物(d)を含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された表面処理皮膜である。
【0017】
ここで、まず、水性エポキシ樹脂(a)について説明する。
水性エポキシ樹脂(a)はエポキシ基含有樹脂(A)に第1級、第2級アミン化合物(B)を反応させてなる生成物を使用したエポキシエマルションである。
エポキシ基含有樹脂(A)は、分子中にエポキシ基を1個以上含有する樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーとその他のモノマーとを共重合してなるアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂及びこれらの樹脂の付加物もしくは縮合物を1種で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0018】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、このグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは1種で、または2種以上混合して使用する事ができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での被覆形成性を必要とする場合には数平均分子量が1,500以上であることが好適である。
【0019】
上記変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基または水酸基に各種変性剤を反応させた樹脂を挙げることができる。例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などである。
【0020】
上記アクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する不飽和モノマーとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分を溶液重合法、エマルション重合法又は懸濁重合法等によって合成される樹脂を挙げることができ、上記重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−、iso−もしくはtert―ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドの炭素数1〜4アルキルエーテル化物、N、N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0021】
エポキシ基を有する不飽和モノマーとしてはグリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、3,4エポキシシクロヘキシル−1−メチル(メタ)アクリレート等エポキシ基と重合性不飽和基を持つものであれば、特に制限されるものではない。
【0022】
また、アクリル系共重合体樹脂はポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
【0023】
エポキシ基含有樹脂(A)として特に好ましいのは、ビスフェノールAとエピパロヒドリンとの反応生成物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、該樹脂の製造法は当業界において周知の事柄である。
【0024】
上記(B)成分である第1級、第2級アミン化合物は、エポキシ基含有樹脂の水分散性を発現する為に必須のものである。その具体例としては、モノエチルアミン、モノn-またはiso-プロピルアミン、モノn-またはiso-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2´(アミノプロポキシ)エチルエーテル等の第1級アミン化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−または−ios−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級アミン化合物等が挙げられる。その中でも特に反応のし易さ、制御、水分散性の観点からジエタノールアミンを用いるのが好適である。
また変性する量はエポキシ樹脂中のエポキシ基に対して20モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50〜60モル%の範囲である事が水分散性、防食性の点で好ましい。
【0025】
水性エポキシ樹脂(a)を得るためには、エポキシ基含有樹脂(A)と第1級、第2級アミン化合物(B)との反応が通常10〜300℃、好ましくは50〜150℃の温度で約1〜8時間程度であることが望ましい。この反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の水酸基を含有するアルコール類やエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を例示でき、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、塗膜形成性等の面からは、ケトン系またはエーテル系の溶剤が特に好ましい。
【0026】
水性エポキシ樹脂(a)に含まれるアミノ基に対して、周知の中和剤である酢酸、蟻酸、燐酸等を用いて中和、水分散する事が可能である。その中和当量は特に制限されるものではないが、アミノ基に対して0.2〜0.8当量、好ましくは0.3〜0.7当量、より好ましくは0.4〜0.6当量が分散液性状、耐水性の点で最適である。
【0027】
本発明の水性エポキシ樹脂はそのまま塗布乾燥することにより、金属、木材などとの密着性のよい皮膜を形成できるが、より緻密なバリア皮膜を形成するためには、本発明の水性エポキシ樹脂に硬化剤を配合し、有機皮膜を加熱硬化させることが望ましい。硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂化合物などを挙げることができる。
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物(複素環を含む)、芳香族イソシアネート化合物、これらのイソシアネート化合物を多価アルコールで部分反応させた化合物などを挙げることができ、これらのポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の一部又は全部がブロック剤によりブロックされていてもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば以下のものが例示できる。
m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、o−またはp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、上記の化合物単独またはそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ペンタエリスリトールなどの4価アルコール、ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物である。これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0028】
また、ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類、エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル類、フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール類、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム類などが使用でき、これらの1種または2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート化合物を得ることができる。
【0029】
上記アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。アミノ樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をアルキルエーテル化したメチロール化メラミン樹脂が好適である。
【0030】
さらに、低温架橋性を増大させるため公知の硬化促進触媒を使用することが望ましい。硬化剤としてポリイソシアネート化合物を用いる場合の硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。硬化剤としてアミノ樹脂を用いる場合の硬化促進触媒としては、例えば、りん酸、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。
【0031】
次に上記(b)の成分である水性ウレタン樹脂について説明する。
水性ウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート化合物と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等のポリヒドロキシ化合物を反応させてなる生成物を使用したウレタンエマルションである。
ウレタンエマルションは、例えば、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素を持たない親水性有機溶剤の存在下または非存在下で、ポリイソシアネート化合物とポリヒドロキシ化合物とを、水酸基に対しイソシアネート基過剰で反応させることにより容易に得ることができ、必要に応じて該ポリマーとアミンと水とを混合してアミン伸長反応を行なった後、ノニオン性あるいはイオン性の乳化剤と混合して水を加えることで乳化分散させ、必要により前記有機溶剤を留去することにより得ることができる。
また、ウレタン樹脂骨格中にノニオン性、アニオン性又はカチオン性の親水性基を有するポリオールを用いることにより、乳化剤を用いずにウレタンエマルションが得られる。
【0032】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の如き脂肪族ジイソシアネート類、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の如き環状脂肪族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の如き芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネート類、又は上記有機ジイソシアネート類同志の環化重合体、更には上記有機ジイソシアネート類のイソシアヌレート・ビウレット体等が挙げられる。
【0033】
水性ウレタン樹脂としては、なかでも水性エポキシ樹脂との混合安定性から、ノニオン性もしくは、カチオン性ポリウレタンエマルションが好適である。
【0034】
本発明の表面処理組成物中の水性エポキシ樹脂(a)に対する水性ウレタン樹脂(b)の配合量は、固形分質量比として95/5〜5/95、好ましくは75/25〜25/75である。水性ウレタン樹脂を含有することにより、未添加の場合と比べ、耐白錆性を効果的に防ぐことができる。この理由は、水性ウレタン樹脂を特定比率、配合することにより表面処理組成物の造膜性が向上し、腐食因子の透過抑制ができ、また皮膜中の防錆成分の流出を防ぐことにより白錆発生を抑えることができると考えられる。
【0035】
表面処理組成物には上述した特定の水分散性樹脂以外にその他の水分散性樹脂および/または水溶性樹脂として、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン系樹脂、アルキッド系樹脂、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂の2種以上を全樹脂固形分中での割合で25質量部程度を上限として配合してもよい。
【0036】
次に、上記(c)の成分であるメルカプト基を有するシランカップリング剤について説明する。シランカップリング剤には他にグリシジル基やアミノ基、メルカプト基などの官能基を有するものがある。耐食性については、いずれのシランカップリング剤も効果があるものの、優れた耐水性も併せもつという観点からは、特にメルカプト基を有するシランカップリング剤が好ましい。耐食性が優れる理由としては水溶液中のシランカップリグ剤が加水分解することにより生じたシラノール基(Si−OH)がめっき皮膜表面と水素結合をし、優れた密着性を付与することが考えられるので、官能基による影響は小さい。しかし、耐水性においては、樹脂との結合を担う官能基の影響が大きく、より結合力の高いメルカプト基が最も耐水性に優れることになる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製「KBM−802」、「KBM−803」などを用いることができる。また、これらの1種を単独でまたは2種類を混合して使用することができ、他の官能基を有するシランカップリング剤と併用することも可能である。
【0037】
シランカップリング剤の配合量は、上記水性樹脂の全固形分(水性エポキシ樹脂(a)と水性ウレタン樹脂(b)の合計量)100質量部に対して、1〜300質量部、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは、15〜50質量部とする。シランカップリング剤の配合量が1質量部未満では耐水性が劣り、一方300質量部を超えると十分な皮膜が形成できないため、水分散性樹脂との密着性とバリア性を高める効果が発揮できず耐食性が低下する。
【0038】
次にリン酸化合物(d)について説明する。リン酸化合物(d)としては、リン酸イオンの骨格や縮合度等の限定はなく次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、ポリリン酸とそれらの塩を使用できる。このリン酸化合物は不活性なめっき皮膜表面に作用して金属表面を活性化させる作用を有する。そして、このように活性化されためっき金属表面と皮膜形成樹脂との密着性がシランカップリング剤を介して著しく向上する結果、耐食性が顕著に向上する。
【0039】
リン酸化合物の配合量は、水性樹脂の全固形分(水性エポキシ樹脂(a)と水性ウレタン樹脂(b)の合計量)100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは5〜30質量部とする。リン酸化合物が0.1質量部未満では耐食性が劣り、一方、50質量部超では皮膜形成後の外観ムラが生じやすい。
【0040】
さらに、本発明においては、表面処理組成物中に、アルカリ脱脂後耐食性および耐黒変性向上を目的として、Co化合物を配合することが好ましい。Coの供給源としては、例えば硝酸Co、硫酸Co、塩化Co等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。Coを配合することにより特にアルカリ脱脂後の耐食性が向上する理由は、アルカリ脱脂の際に下層皮膜中成分であるリン酸化合物の溶出が抑制されるためであると考えられる。皮膜中のリン酸化合物は腐食環境下で、リン酸イオンとなって溶出金属と錯形成反応を起こすことにより保護皮膜を形成するため、アルカリ脱脂後のリン酸化合物の溶出を抑制することにより、アルカリ脱脂後でも優れた耐食性を有する。
【0041】
Coの配合量は、水性樹脂の全固形分(水性エポキシ樹脂(a)と水性ウレタン樹脂(b)の合計量)100質量部に対して、0.01〜50質量部、好ましくは0.5〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部とする。Coの配合量が0.01質量部未満では耐食性の向上効果が十分でなく、一方、50質量部を超えると処理液との反応性が強くなり外観ムラを生じやすくなる。
【0042】
次に、上記第1層皮膜(表面処理皮膜)の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜について説明する。
第2層皮膜は、第1層皮膜の上部に、皮膜形成有機樹脂と潤滑剤とを含有した塗料組成物を塗布し乾燥することにより形成される有機皮膜である。
【0043】
この有機皮膜は特に制限はなく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。特に耐食性の観点からは、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂を用いることが好ましい。
【0044】
前記OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、アルキド樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリフェニレン樹脂類及びこれらの樹脂2種以上の混合物もしくは付加重合物等が挙げられる。
【0045】
前記ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、単核型若しくは2核型の2価フェノールまたは単核型と2核型との混合2価フェノールを、アルカリ触媒の存在下にほぼ等モル量のエピハロヒドリンと重縮合させて得られる重合体である。単核型2価フェノールの代表例としてはレゾルシン、ハイドロキノン、カテコールが挙げられ、2核型フェノールの代表例としてはビスフェノールAが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドまたはポリアルキレングリコールを付加し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等を用いることができる。これらエポキシ樹脂は、特に低温での硬化を必要とする場合には、数平均分子量1500以上のものが望ましい。なお、上記エポキシ樹脂は単独または異なる種類のものを混合して使用することもできる。また、変性エポキシ樹脂とすることも可能であり、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基またはビドロキシル基に各種変性剤を反応させた樹脂が挙げられる。例えば乾性油脂肪酸中のカルボキシル基を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸、メタクリル酸等で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂にイソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂にアルカノールアミンを付加したアミン付加ウレタン変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0047】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、油変性ポリウレタン樹脂、アルキド系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0048】
前記アクリル樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリメタクリル酸及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル及びその共重合体、ウレタン−アクリル酸共重合体(またはウレタン変性アクリル樹脂)、スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられ、さらにこれらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
【0049】
前記アクリルシリコン樹脂としては、例えば、主剤としてアクリル系共重合体の側鎖又は末端に加水分解性アルコキシシリル基を含み、これに硬化剤を添加したもの等が挙げられる。これらのアクリルシリコン樹脂を用いた場合、優れた耐候性が期待できる。
【0050】
前記アルキド樹脂としては、例えば、油変性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、シリコン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、高分子量オイルフリーアルキド樹脂等を挙げることができる。
【0051】
前記エチレン樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、カルボキシル変性ポリオレフィン樹脂などのエチレン系共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン系アイオノマー等が挙げられ、さらに、これらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
【0052】
前記フッ素樹脂としては、フルオロオレフィン系共重合体があり、これには例えば、モノマーとしてアルキルビニルエーテル、シンクロアルキルビニルエーテル、カルボン酸変性ビニルエステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、テトラフルオロプロピルビニルエーテル等と、フッ素モノマー(フルオロオレフィン)とを共重合させた共重合体がある。これらフッ素樹脂を用いた場合には、優れた耐候性と優れた疎水性が期待できる。
【0053】
また、樹脂の乾燥温度の低温化を狙いとして、樹脂粒子のコア部分とシェル部分とで異なる樹脂種類、または異なるガラス転移温度の樹脂からなるコア・シェル型水分散性樹脂を用いることも可能である。また、自己架橋性を有する水分散性樹脂を用い、例えば、樹脂粒子にアルコキシシラン基を付与することによって、樹脂の加熱乾燥時にアルコキシシランの加水分解によるシラノール基の生成と樹脂粒子間のシラノール基の脱水縮合反応を利用した粒子間架橋を利用することも可能である。また、有機樹脂をシランカップリング剤を介してシリカと複合化させた有機複合シリケートも好適である。
【0054】
上記の有機樹脂は1種または2種類以上を混合して用いることができる。
さらに、耐食性や加工性の向上を狙いとして、特に熱硬化性樹脂を用いることが望ましいが、この場合、尿素樹脂(ブチル化尿素樹脂等)、メラミン樹脂(ブチル化メラミン樹脂)、ブチル化尿素・メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物、フェノール樹脂等の硬化剤を配合することができる。
【0055】
また、塗料組成物には、耐疵つき性(加工性)を向上させるために、潤滑剤を配合する。この潤滑剤としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びカルナウバワックスなどが挙げられる。潤滑剤の配合量は、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部とする。配合量が0.1質量部未満では耐疵つき性(加工性)が乏しく、一方、配合量が15質量部を超えると塗料密着性が低下するので好ましくない。また、潤滑剤の粒子径/第2層の皮膜厚=1.5〜15の範囲内とする。またこれらの潤滑剤は1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。潤滑剤の粒子径/第2層の皮膜厚が15を超えると皮膜の摺動時に潤滑剤が皮膜から剥離するため、耐疵つき性が低下し、また、1.5未満でも潤滑剤が第2層皮膜表面から十分に突出していないため、同様に耐疵つき性が低下する。また潤滑剤の軟化点は、皮膜乾燥温度以上であることが好ましい。軟化点が皮膜乾燥温度以下では、潤滑剤が溶融し本来の潤滑性が発揮されないため耐疵つき性が低下する。
【0056】
以上のより得られる表面処理組成物により形成される表面処理皮膜(第1層皮膜)の乾燥膜厚は0.01μm〜5μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.3〜2μmとする。乾燥膜厚が0.01μm未満では耐食性が不十分であり、一方、5μmを超えると導電性や加工性が低下する。また、有機被膜(第2層被膜)の皮膜厚は0.01μm以上5μm未満、好ましくは0.2〜3μm、さらに好ましくは0.4〜2μmとする。膜厚が0.01μm未満では潤滑剤が第2層皮膜表面から剥離しやすいため耐疵つき性が不十分であり、一方、5μmを超えると導電性が低下する場合がある。さらに、両皮膜の合計は0.1〜5μmの範囲とすることが導電性の観点から好ましい。
【0057】
次に本発明の表面処理鋼板の製造方法について説明する。
本発明の表面処理鋼板は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、まず、第1層皮膜形成用の表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより第1層皮膜を形成し、次いで、その上部に、第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、潤滑剤の軟化点以下の温度で乾燥することにより第2層皮膜を形成することにより得られる。この時、第1層皮膜と第2層皮膜の合計膜厚が0.1〜5μmとなるよう表面処理組成物と塗料組成物を塗布する。
【0058】
なお、めっき鋼板の表面は、上記処理液を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理等の前処理を施すことができる。
【0059】
このように、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に第1層を形成するには、上述した組成を有する処理液を乾燥皮膜厚が上記範囲となるようにめっき鋼板に塗布し、水洗することなく加熱乾燥させる。この時、表面処理組成物(処理液)はpH0.5〜6、好ましくは1〜4に調整することが好ましい。表面処理組成物のpHが0.5未満では処理液の反応性が強すぎるため外観ムラが生じ、一方、pHが6を超えると処理液の反応性が低くなり、めっき金属と皮膜との結合が不十分となり、耐食性が低下する。
【0060】
表面処理組成物をめっき鋼板面に形成する方法としては塗布法、浸漬法、スプレー法のいずれでもよい。塗布処理方法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどいずれの方法でもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、あるいは浸せき処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0061】
表面処理組成物をコーティングした後は、水洗することなく加熱乾燥を行う。加熱乾燥手段としては、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱処理は、到達板温で30℃〜300℃が好ましい。さらに好ましくは、40℃〜250℃の範囲で行う。30℃未満では皮膜中の水分が多量に残り、耐食性が不十分となる場合がある。また、300℃を越えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じ耐食性が低下する場合がある。
【0062】
以上のように亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に表面処理皮膜(第1層皮膜)を形成した後、その上層に第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布する。塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0063】
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。
【0064】
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は潤滑剤の軟化点以下の温度で行うこととする。加熱温度が潤滑剤の軟化点未満では皮膜中に水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。
【0065】
以上により、本発明の表面処理鋼板が得られる。なお、以上述べた第1層+第2層皮膜は、めっき鋼板の片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【実施例】
【0066】
次に、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、以下「%」はいずれも質量基準によるものとする。
第1層皮膜形成用として、表1に示す水性樹脂、表2に示すシランカップリング剤、表3に示すリン酸化合物、表4に示す金属化合物を適宜配合した表面処理組成物を調製した。また、第2層皮膜形成用として、表5に示す皮膜形成有機樹脂、表6に示す潤滑剤を適宜配合した塗料組成物を調製した。
【0067】
【表1】


【0068】
【表2】


【0069】
【表3】


【0070】
【表4】


【0071】
【表5】


【0072】
【表6】


【0073】
次いで、処理原板として表7に示す各種めっき鋼板を用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥した後、上記第1層皮膜形成用の表面処理組成物を塗布し、各種温度で乾燥させた。次いで、その上部に上記第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、各種温度で乾燥させ、発明例および比較例の表面処理鋼板を得た。なお、第1層及び第2層皮膜の膜厚は、皮膜組成物の固形分(加熱残分)や処理時間等により調整した。
【0074】
【表7】


【0075】
以上により得られた表面処理鋼板に対して品質性能(耐白錆性、耐黒変性、耐水性、耐疵つき性、塗料二次密着性)の各試験を行った。結果を表8に示す。なお、品質性能の試験方法及び評価基準は、以下の通りである。
(1)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、96時間および168時間経過後の白錆面積率で評価した。
評価基準は以下の通りである。
【0076】
◎ :白錆面積率5%未満
○ :白錆面積率5%以上、10%未満
○−:白錆面積率10%以上、25%未満
△ :白錆面積率25%以上、50%未満
× :白錆面積率50%以上、100%以下
(2)アルカリ脱脂後耐白錆性
各サンプルについて、アルカリ脱脂材CLN−364S(日本パーカライジング(株)製)を20g/lの濃度で純水に溶解して60℃に加温し、1kgf/cm2の圧力で2分間スプレー処理した後、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、72時間経過後の白錆面積率で評価した。
評価基準は以下の通りである。
【0077】
◎ :白錆面積率5%未満
○ :白錆面積率5%以上、10%未満
○−:白錆面積率10%以上、25%未満
△ :白錆面積率25%以上、50%未満
× :白錆面積率50%以上、100%以下
(3)耐黒変性
各サンプルについて、80℃×98%RHの環境下で1日放置した後、色調変化ΔL(「試験後のL値」−「試験前のL値」)にて評価した。その評価基準は以下のとおりである。
【0078】
◎ :ΔL≧−1
○ :−1>ΔL≧−2
△ :−2>ΔL≧−3
× :ΔL<−3
(4)耐水性
各サンプルに紙を接触させた状態で60℃に加温した純水に30秒浸漬し、取り出し後濡れた紙が鋼板に十分に接触した状態で90秒放置した。その後、紙を取り除き水分を拭き取り、サンプル表面を目視で観察し下記基準にしたがって評価をした。
【0079】
○ :白化なし
△ :斜めからみると確認できる白化
× :明らかな白化(斜めからみなくても確認できる)
(5)耐疵付き性
ラビングテスター(太平理化工業(株)製)を用いて試験
片を段ボールでラビング後、試験片の表面を目視で観察し、下記評価にしたがって評価をした。試験は500g、摺動距離60mm、速度120mm/s、ラビング回数1000回で行った。
【0080】
◎:疵の本数が0本
○:疵の本数が1〜2本
△:疵の本数が3〜10本
×:疵の本数が11本以上
(6)塗料二次密着性
各サンプルについて、メラミン系の焼き付け塗料(膜厚30μm)を塗装した後、沸水中に2時間浸漬し、直ちに、碁盤目(10×10個、1mm間隔)のカットを入れて接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0081】
◎:剥離なし
○:剥離面積率5%未満
△:剥離面積率5%以上、20%未満
×:剥離面積率20%以上
【0082】
【表8】


【0083】
表8より、本発明例はいずれの性能も優れていることがわかる。特に、本発明例3、7〜15はベースめっき種を変更した結果であるが、いずれにおいても上記効果が得られている。また、本発明例22〜27では、下層皮膜の金属化合物の添加することによって、耐黒変性、アルカリ脱脂後耐白錆性に効果が見られ、特にCoを添加した場合にその効果が大きいことを示している。
【0084】
一方、比較例1、9、12は下層皮膜の水性樹脂、シランカップリング剤、リン酸化合物のいずれかを添加していないため、耐白錆性が劣っている。
【0085】
比較例3〜8では、本発明範囲内のメルカプト基を有するシランカップリング剤を使用せずに、別のシランカップリング剤を使用しているため耐水性が劣っている。
【0086】
比較例10、11は、エポキシ樹脂とウレタン樹脂を併用していないため、耐白錆性が劣っている。
【0087】
比較例2、13は、それぞれシランカップリング剤もしくはリン酸化合物を本発明範囲外で過剰に添加しているため、耐白錆性や耐水性が低下している。
【0088】
本発明例35〜39は上層皮膜の潤滑剤の種類、粒子径を変更した結果であるが、いずれにおいても優れた耐疵つき性を有している。一方、式Aの下限未満および上限を超える比較例14、15では、耐疵つき性が低下している。
「潤滑剤粒子径/第2層皮膜厚=1.5〜15・・・・式A
比較例2,21は、潤滑剤の添加量が本発明範囲外であるため、耐疵つき性や塗料密着性が低下している。
【0089】
比較例22、23は、上層もしくは下層の皮膜厚が0すなわち皮膜を有していないため、耐食性、耐疵つき性を両立できていない。すなわち、発明例3、39〜41は下層と上層の合計の皮膜厚効果を示しており、合計皮膜厚が大きいほど、耐食性、耐疵つき性が向上する。また、下層単独皮膜および上層単独皮膜ではどちらも耐食性、耐疵つき性を両立できず、二層皮膜とすることが重要であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の表面処理鋼板は、耐白錆性、耐黒変性、耐水性、耐疵つき性、塗料密着性に優れるので、家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板として最適であることは勿論、それら以外にも、上記鋼板特性が要求される用途に対して用いることができる。




 

 


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