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発明の名称 硬化性組成物、インク組成物、インクジェット記録方法、印刷物、平版印刷版の製造方法、及び平版印刷版
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−84665(P2007−84665A)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
出願番号 特願2005−274211(P2005−274211)
出願日 平成17年9月21日(2005.9.21)
代理人 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
発明者 渡邉 孝太郎
要約 課題
放射線の照射に対して高感度で硬化し、高強度な皮膜形成が可能であり、かつ耐熱性に優れた硬化性組成物を提供すること。

解決手段
下記一般式(I)で表される部分構造と、下記一般式(II)で表される部分構造と、を有する化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。一般式(I)中、Aは、隣接する炭素原子と共に4員以上の2価の脂環式アルキル基を形成しうる原子団を表す。一般式(II)中、R1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。nは1以上の整数を示す。
特許請求の範囲
【請求項1】
下記一般式(I)で表される部分構造と、下記一般式(II)で表される部分構造と、を有する化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】


(一般式(I)中、Aは、隣接する炭素原子と共に4員以上の2価の脂環式アルキル基を形成しうる原子団を表す。一般式(II)中、R1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。nは1以上の整数を示す。)
【請求項2】
更に、放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項4】
着色剤を含有する請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
着色剤が顔料又は油溶性染料である請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
油溶性染料の酸化電位が1.0V(vsSCE)以上である請求項5に記載のインク組成物。
【請求項7】
インクジェット記録用である請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
被記録媒体上にインク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び
吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法であって、前記インク組成物が請求項3乃至請求項7いずれか1項に記載のインク組成物であるインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記活性放射線が、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にあり、かつ被記録媒体表面での最高照度が10〜2,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオードにより照射される紫外線である請求項8に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
【請求項11】
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物を支持体上に吐出する工程、及び
吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記支持体上に形成する工程、を含む平版印刷版の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、塗料、及び接着剤、等に好適に用いられる硬化性組成物、該硬化性組成物を含みインクジェット記録用として好適に用いられるインク組成物、インクジェット記録方法、及びこれを用いた印刷物、更に、該インク組成物を用いて得られる平版印刷版並びに平版印刷版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3員環、4員環などの環状エーテル化合物は、高い反応性を示すことが知られており、光カチオン重合や酸無水物を用いる熱重合が適用される硬化性組成物に含まれる重合性化合物として利用されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
また、分岐構造をもつ鎖で連結したエポキシ化合物が提案されているが、分岐構造をもった疎水的な鎖であるため、基板との密着性に問題があった。(例えば、下記特許文献3参照)。
【0003】
一方、画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。中でも、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを射出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
インクジェット方式によれば、普通紙のみならずプラスチックシート、金属板など非吸水性の被記録媒体にも印字可能であるが、印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっており、印字後の液滴の乾燥、硬化に要する時間が、印刷物の生産性や印字画像の鮮鋭度に大きく影響する性質を有している。
【0004】
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちに又は一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インクの高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、インクジェット記録の生産性向上、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不充分硬化に基づく低分子物質の揮発発生の防止など、多くの利益が生じる。また、高感度化は、特にインクジェット記録用インクにより形成された画像の強度を向上させ、特に、平版印刷版の形成に応用した場合、画像部の硬化強度が高まることになり、高耐刷性が得られることになる。
【0005】
このような放射線、例えば、紫外線による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、ラジカル重合を利用したインクジェット用紫外線硬化型インク組成物が開示されている(例えば、特許文献4〜8参照。)。また、インクジェット記録方法にて通常直接記録することが困難な支持体に対しても、滲みがなく、高感度で、被記録媒体への密着性が高い画像が記録可能で、かつ皮膚刺激性や感作性の少ない安全性が高いインクジェット記録用インクを提供すること等を目的として、特定のラジカル重合型アクリレート化合物群からなる重合性化合物と色材とを含有する組成物が提案されている(例えば、特許文献9、10参照。)。これらのラジカル重合型インクは、硬化速度に優れ、滲みのない画像を形成しうるものの、硬化時の体積収縮により、被記録媒体との密着性が低下するという問題を有していた。
【0006】
このため、被記録媒体への密着性を向上させる目的で、紫外線硬化時の収縮率が小さいカチオン重合型インク組成物が提案されている(例えば、特許文献11参照。)。但し、これらカチオン重合型インクは、経時で発生した酸に基づく反応により、保存時の安定性が充分ではなく、実用化には大きな障害となっていた。このため、保存安定性を改良する試みとして、塩基性化合物や熱塩基発生剤を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献12〜14参照。)が、塩基性化合物が露光により発生した酸の機能を阻害するためにインクの硬化感度が低下するという新たな問題が発生することがわかった。
【0007】
さらに、上記した従来の硬化性組成物は、高温環境下に保存した場合に硬化反応が進行してしまうという問題があった。
【0008】
以上のように、UV硬化型のインク組成物などに適用でき、放射線の照射に対して高感度で、高強度な皮膜を形成しうるとともに、耐熱性にも優れた硬化性組成物は、未だ提供されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平11−43540号公報
【特許文献2】特開平11−60702号公報
【特許文献3】特開2005−41892号公報
【特許文献4】特開昭63−235382号公報
【特許文献5】特開平3−216379号公報
【特許文献6】特開平5−214280号公報
【特許文献7】特公平6−21256号公報
【特許文献8】特公平6−62905号公報
【特許文献9】特開2003−192943公報
【特許文献10】特開2003−192944公報
【特許文献11】特開平9−183928号公報
【特許文献12】特開2003−312121公報
【特許文献13】特開2003−341217公報
【特許文献14】特開2004−91558公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高強度な皮膜形成が可能であり、かつ耐熱性に優れた硬化性組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、被記録媒体上への密着性が優れたインク組成物、及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、放射線の照射により高感度で硬化可能なインク組成物を用いて得られた印刷物、平版印刷版、及び、平版印刷版の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 下記一般式(I)で表される部分構造と、下記一般式(II)で表される部分構造と、を有する化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【0011】
【化1】


【0012】
一般式(I)中、Aは、隣接する炭素原子と共に4員以上の2価の脂環式アルキル基を形成しうる原子団を表す。一般式(II)中、R1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。nは1以上の整数を示す。
【0013】
<2> 更に、放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する<1>に記載の硬化性組成物。
【0014】
<3> <1>又は<2>に記載の硬化性組成物を含むことを特徴とするインク組成物。
<4> 着色剤を含有する<3>に記載のインク組成物。
<5> 着色剤が顔料又は油溶性染料である<4>に記載のインク組成物。
<6> 油溶性染料の酸化電位が1.0V(vsSCE)以上である<5>に記載のインク組成物。
<7> インクジェット記録用である<3>乃至<6>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0015】
<8> 被記録媒体上にインク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び
吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法であって、前記インク組成物が<3>乃至<7>いずれか1項に記載のインク組成物であるインクジェット記録方法。
<9> 前記活性放射線が、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にあり、かつ被記録媒体表面での最高照度が10〜2,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオードにより照射される紫外線である<8>に記載のインクジェット記録方法。
<10> <8>又は<9>に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
【0016】
<11> <3>乃至<6>のいずれか1項に記載のインク組成物を支持体上に吐出する工程、及び
吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記支持体上に形成する工程、を含む平版印刷版の製造方法。
<12> <11>に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、UV硬化型インク等のインク組成物、塗料、接着剤等の他、レジスト、カラーフィルター、光ディスクなどの光造形材料として有用である。
特に、本発明の硬化性組成物は、インクジェット用インク組成物として好適に用いることができ、かかるインク組成物は、紫外線等の放射線により高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができることから、被記録媒体への密着性にも優れたインク組成物である。更には、保存安定性も良好である。
また、インクジェット記録方法を適用することで、非吸収性の被記録媒体上にインク組成物を射出した場合においても、高感度で硬化し、強度の高い画像部領域をデジタルデータに基づき直接形成しうる。従って、本発明のインク組成物は平版印刷版、特に、A2版以上の大面積の平版印刷版、の作製にも好適に使用され、これにより得られた平版印刷版は耐刷性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高強度な皮膜形成が可能であり、かつ耐熱性に優れた硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、被記録媒体上への密着性が優れたインク組成物、及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
また、本発明によれば、放射線の照射により高感度で硬化可能なインク組成物を用いて得られた印刷物、平版印刷版、及び、平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の硬化性組成物は、下記一般式(I)で表される部分構造と、下記一般式(II)で表される部分構造と、を有する化合物(以下、適宜「特定重合性化合物」と称する。)を含有することを特徴とする。
【0020】
【化2】


【0021】
一般式(I)中、Aは、隣接する炭素原子と共に4員以上の2価の脂環式アルキル基を形成しうる原子団を表す。一般式(II)中、R1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。nは1以上の整数を示す。
【0022】
本発明の硬化性組成物は、放射線の照射により硬化可能な組成物である。
本発明で言う「放射線」とは、その照射により組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。従って、本発明の硬化性組成物としては、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能な硬化性組成物であることが好ましい。
【0023】
本発明の硬化性組成物の特に好適な態様は、当該硬化性組成物を含んでなるインク組成物である。以下では、本発明の硬化性組成物の説明として、インク組成物(本発明のインク組成物)の構成を例として説明を行うが、当然のことながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
(特定重合性化合物)
本発明に係る特定重合性化合物について説明する。
特定重合性化合物は、前記下記一般式(I)で表される部分構造(以下、適宜「部分構造(I)」と称する。)と、前記一般式(II)で表される部分構造(以下、適宜「部分構造(II)」と称する。)と、をその分子構造内に有する化合物である。
【0025】
本発明に係る特定重合性化合物は、後述する、放射線の照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であることが好ましい。
【0026】
部分構造(I)中、Aは、隣接する炭素原子と共に4員以上の2価の脂環式アルキル基を形成しうる原子団を表す。該脂環式アルキル基としては、炭素原子数4〜12の脂環式アルキル基であることが好ましく、炭素原子数4〜9の脂環式アルキル基であることがより好ましく、炭素原子数5〜7の脂環式アルキル基であることが特に好ましい。
【0027】
部分構造(I)として具体的には、反応性の観点から、下記に示す部分構造であることが特に好ましい。
【0028】
【化3】


【0029】
部分構造(I)は、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基が挙げられる。
【0030】
部分構造(I)は、特定重合性化合物中に1個含まれていてもよいし、2個以上含まれていてもよいが、特定重合性化合物中に1個含まれる態様が好ましい。
【0031】
部分構造(I)は、特定重合性化合物の主骨格にAを介して結合する形態で存在する。部分構造(I)は、特定重合性化合物の主骨格の末端部分に存在してもよいし、該主骨格中に存在してもよい。
【0032】
部分構造(II)中、R1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。
1で表されるアルキレン基としては、炭素原子数2〜12(好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6)のアルキレン基が挙げられる。具体的には、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0033】
1で表されるシクロアルキレン基としては、炭素原子数4〜12(好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7)のシクロアルキレン基が挙げられる。具体的には、シクロヘプチル基、シクロへキシル基、シクロペンチル基、ビシクロ環基等の基から水素原子を1個除した基が挙げられる。
1で表されるアリーレン基としては、炭素原子数6〜12(好ましくは6〜12、より好ましくは6〜8)のアリーレン基が挙げられる。具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ベンジル基が好ましく、フェニル基、ベンジル基等の基から水素原子を1個除した基が挙げられる。
【0034】
1は、導入可能な場合、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。しかし、置換基を有さないアルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基が好ましい。
【0035】
nは1以上の整数を示し、1〜8の整数が好ましく、1〜6の整数がより好ましく、2〜4の整数が特に好ましい。
【0036】
部分構造(II)は、部分構造(I)中のAに含まれる炭素原子に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す等の連結基を介して連結することができる。
部分構造(II)は、特定重合性化合物中に1個含まれていてもよいし、2個以上含まれていてもよい。
【0037】
また、特定重合性化合物は、部分構造(I)及び部分構造(II)以外の他の部分構造をその分子構造中に含んでいてもよい。
【0038】
特定重合性化合物としては、部分構造(I)が特定重合性化合物中に1個含まれていて、更に、炭素数6環状構造であり、部分構造(II)は、R1が炭素数1〜4のアルキル基、nが2〜4の整数である組み合わせが、特に好ましい態様である。
【0039】
以下、本発明に係る特定重合性化合物の代表的な具体例〔例示化合物(1)〜(18)〕を挙げるが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0040】
【化4】


【0041】
【化5】


【0042】
【化6】


【0043】
特定重合性化合物の製造方法を以下に具体的に説明する。但し、特定重合性化合物の製造方法はこれらの方法に限定されるものではない。
【0044】
特定重合性化合物は、例えば、下記の製造方法により製造することができる。
【0045】
(1)原料
特定重合性化合物を製造する際の原料について説明する。
特定重合性化合物の原料としては、脱ハロゲン化水素反応であるモトイの方法(Motoi、et. Al. ,Bull. Chem. Soc.Jpn.61,1998 )に準拠して、オキセタン化合物を製造できるものであれば、いずれの原料も使用することができる。具体的には、下記一般式(III)で表される環状エポキシアルコール化合物と、下記一般式(IV)で表されるハロゲン基又はスルホン酸エステル等の脱離基を有するエーテル化合物とのエーテル化反応により、特定重合性化合物を製造することができる。
【0046】
【化7】


【0047】
[一般式(III)中、Aは隣接する炭素原子と共に4員以上の2価の脂環式アルキル基を形成しうる原子団を表す。mは1以上の整数を表す]
【0048】
【化8】


【0049】
一般式(IV)中、R4は、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。R3は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す。nは1以上の整数を示す。Xはハロゲン基又はスルホン酸エステル基等の脱離基を表す。
【0050】
一般式(III)で表される環状エポキシアルコール化合物としては、3,4−エポキシシクロへキシルメタノ−ル、3,4−エポキシシクロへキシルエタノ−ル、3,4−エポキシシクロへキシルプロパノ−ル、3−メチル−3,4−エポキシシクロへキシルメタノール、4−メチル−3,4−エポキシシクロへキシルメタノール、3,4−エポキシシクロペンチルメタノ−ル、3,4−ジメチル−3,4−エポキシシクロへキシルメタノール、2,3−エポキシ−1,4−ビスメタノール、4,5−エポキシシクロヘプチルメタノール等の1種単独又は2種以上の組合せが挙げられる。
【0051】
一般式(IV)で表されるハロゲン基又はスルホン酸エステル等の脱離基を有するエーテル化合物としては、2−クロルエチルエチルエーテル、2−ブロムエチルエチルエーテル、3−クロルプロピルエチルエーテル、3−ブロムプロピルエチルエーテル、4−クロルブチルエチルエーテル、4−ブロムブチルエチルエーテル、2−ブロモエチルメチルエーテル、エチレングリコール2−ブロモエチルエチルエーテル、ビス(2−クロルエチル)エーテル、ビス(2−ブロムエチル)エーテル、ビス(3−クロルプロピル)エーテル、ビス(3−ブロムプロピル)エーテル、ビス(4−クロルブチル)エーテル、ビス(4−ブロムブチル)エーテル、ビス(2−ブロモエチル)エーテル、1,2−ビス(2−クロロエトキシ)エタン、1,2−ジブロモエタン等の1種単独又は2種以上の組合わせが挙げられる。
【0052】
一般式(III)で表される環状エポキシアルコール化合物と、一般式(IV)で表されるハロゲン基又はスルホン酸エステル等の脱離基を有するエーテル化合物との反応割合は特に制限されるものではないが、一般式(III)で表される環状エポキシアルコール化合物あたり、一般式(IV)で表されるハロゲン基又はスルホン酸エステル等の脱離基を有するエーテル化合物を0.1〜10モルの範囲内で反応させることが好ましい。更に、一般式(III)で表される環状エポキシアルコール化合物1モルあたり、一般式(IV)で表されるハロゲン基又はスルホン酸エステル等の脱離基を有するエーテル化合物を0.3〜3.0モルの範囲内で反応させることがより好ましい。
【0053】
(2)反応温度
特定重合性化合物を製造する際の反応温度について説明する。反応温度は、特定重合性化合物の収率等を考慮して定められるが、例えば、0〜100℃の範囲内の温度が好ましい。反応温度が0℃未満となると、反応原料の反応性が著しく低下し、収率が極端に低下する傾向があり、一方、反応温度が100℃を超えると、使用可能な有機溶媒の種類が限定される傾向がある。したがって、特定重合性化合物を製造する際の反応温度を、10〜90℃の範囲内の値とするのがより好ましく、20〜80℃の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0054】
(3)反応時間
特定重合性化合物を製造する際の反応時間について説明する。反応時間は、特定重合性化合物の収率や反応温度等を考慮して定められるが、例えば、0〜100℃の反応温度において、10分〜100時間の範囲内の値とするのが好ましい。反応時間が10分未満となると、未反応原料が多く残留する傾向があり、一方、反応時間が100時間を超えると、生産性が低下する傾向がある。したがって、特定重合性化合物を製造する際の反応時間を、30分〜50時間の範囲内の値とするのがより好ましく、1〜10時間の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0055】
(4)反応雰囲気(pH)
特定重合性化合物を製造する際の反応雰囲気(pH)について説明する。反応雰囲気(pH値)は、特定重合性化合物の収率等を考慮して定められるが、例えば、5〜14の範囲内の値とするのが好ましい。pH値が5未満となると、副反応が生じやすくなり、収率が低下する傾向があり、一方、pH値が14を超えると、使用原料の種類が過度に制限される傾向がある。したがって、特定重合性化合物を製造する際のpH値を、6〜14の範囲内の値とするのがより好ましく、7〜14の範囲内の値とするのがさらに好ましい。なお、このような範囲内の値にpH値を調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを添加使用することが好ましい。
【0056】
(5)相間移動触媒
特定重合性化合物を製造する際に使用する相間移動触媒について説明する。かかる相間移動触媒は、環状エポキシアルコール化合物とハロゲン基又はスルホン酸エステル等の脱離基を有するエーテル化合物との反応性を向上させるために添加するが、例えば、原料の総量を100質量部としたときに、相間移動触媒の添加量を0.1〜30質量部の範囲内の値とするのが好ましい。相間移動触媒の添加量が0.1質量部未満となると、原料同士の反応性が著しく低下し、収率が極端に低下する傾向があり、一方、相間移動触媒の添加量が30質量部を超えると、精製が困難となる傾向がある。したがって、特定重合性化合物を製造する際に使用する相間移動触媒の添加量を、原料100質量部あたり、1.0〜20.0質量部の範囲内の値とするのがより好ましく、2.0〜10.0質量部の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0057】
相間移動触媒の種類についても、特に制限されるものではないが、例えば、4級アンモニウム塩および4級ホスホニウム塩あるいはいずれか一方の化合物であることが好ましい。より具体的には、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルヘキサデシルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、トリエチルヘ
キサデシルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド等の1種単独あるいは2種以上の組合せが挙げられる。
【0058】
(6)有機溶媒
特定重合性化合物を製造する際に使用する有機溶媒について説明する。有機溶剤としては、原料について良溶媒であり、また、製造が容易となる観点から、大気圧下での沸点が250℃以下の液体であることが好ましい。このような有機溶媒の例を挙げると、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルおよびγ−ブチロラクトンなどのエステル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類の1種単独あるいは2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0059】
上記製造方法により得られた特定重合性化合物は、1H−NMR、IRスペクトルにより構造を確認することができる。
【0060】
特定重合性化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物を構成する全固形分に対し、1〜90質量%が好ましく、1〜70質量%がより好ましく、1〜50質量%が更に好ましい。
【0061】
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、特定重合性化合物と共に以下に詳述する他の重合性化合物(カチオン重合性化合物)を併用することができる。
本発明おいては、組成物の硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、特定重合性化合物と、他の重合性化合物として以下に説明するような、エポキシ化合物又は特定重合性化合物に含まれない他のオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
【0062】
(他の重合性化合物)
本発明に併用しうるカチオン重合性化合物は、後述する、放射線の照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、特定重合性化合物に含まれない他のオキセタン化合物などが挙げられる。
【0063】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、及び、芳香族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0064】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0065】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0066】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0067】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0068】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0069】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0070】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0071】
本発明に併用できる他のオキセタン化合物、具体的には前記部分構造(II)を有しない化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。本発明の硬化性組成物に併用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、インク組成物等に適用した場合において、硬化後の組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0072】
本発明に併用される分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0073】
【化9】


【0074】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0075】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0076】
【化10】


【0077】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は
、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0078】
【化11】


【0079】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
【0080】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0081】
【化12】


【0082】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0083】
【化13】


【0084】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0085】
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0086】
【化14】


【0087】
式(5)において、Ra8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル
基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0088】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021ないし0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に併用することができる。当該化合物は、同公報の段落番号[0022]ないし[0058]に詳細に記載されている。
本発明に併用される他のオキセタン化合物のなかでも、組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0089】
本発明において特定重合性化合物と他のカチオン重合性化合物が併用される場合、特定重合性化合物と他のカチオン重合性化合物との含有比としては、質量比で、10:1〜10:100が好ましく、10:3〜10:80がより好ましく、10:5〜10:60がさらに好ましい。
【0090】
(放射線の照射により酸を発生する化合物)
本発明の硬化性組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」とも称する。)を含有することが好ましい。本発明においては、放射線の照射により発生した酸により、前記した重合性化合物の重合反応が生起し、硬化する。
本発明のインク組成物に用いることのできる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0091】
このような光酸発生剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0092】
また、その他の本発明に用いられる活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同 Re 27,992号、特開平3−140140号等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker etal,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、同第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号等に記載のヨードニウム塩、
【0093】
J.V.Crivello etal,Polymer J.17,73 (1985)、J.V.Crivello etal.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt etal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello etal,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivelloetal,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivelloetal,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第3,902,114号、同4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−28237号、同8−27102号等に記載のスルホニウム塩、
【0094】
J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meier et al,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、T.P.Gill et al,Inorg.Chem.,19,3007(1980)、D.Astruc,Acc.Chem.Res.,19(12),377(1986)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、
【0095】
S.Hayase etal,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、E.Reichmanis etal,J.Pholymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,23,1(1985)、Q.Q.Zhu etal,J.Photochem.,36,85,39,317(1987)、B.Amit etal,Tetrahedron Lett.,(24)2205(1973)、D.H.R.Barton etal,J.Chem.Soc.,3571(1965)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein etal,Tetrahedron Lett.,(17),1445(1975)、J.W.Walker etal,J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busman etal,J.Imaging Technol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihan etal,Macormolecules,21,2001(1988)、P.M.Collins etal,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayase etal,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanis etal,J.Electrochem.Soc.,Solid State Sci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihan etal,Macromolcules,21,2001(1988)、 欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号等に記載のO−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、
【0096】
M.TUNOOKA etal,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner etal,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs etal,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachi etal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同044,115号、同第618,564号、同0101,122号、米国特許第4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号、特開平2−71270号等に記載のジスルホン化合物、特開平3−103854号、同3−103856号、同4−210960号等に記載のジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0097】
また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、M.E.Woodhouse et al,J.Am.Chem.Soc.,104,5586(1982)、S.P.Pappas et al,J.Imaging Sci.,30(5),218(1986)、S.Kondo etal,Makromol.Chem.,Rapid Commun.,9,625(1988)、Y.Yamada etal,Makromol.Chem.,152,153,163(1972)、J.V.Crivello et al,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,3845(1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。たとえば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0098】
さらにV.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad etal,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0099】
本発明に用いることができる光酸発生剤として好ましい化合物として、下記式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【0100】
【化15】


【0101】
式(b1)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオ
ン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-や以下に示す基などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0102】
【化16】


【0103】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0104】
【化17】


【0105】
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
【0106】
Rd1は、水素原子、アルキル基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
【0107】
Rc1、Rc3〜Rc5の有機基として、最も好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0108】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203
の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0109】
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)における対応する基を挙げることができる。
【0110】
なお、式(b1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、式(b1)で表される化合物のR201〜R203のうち少なくともひとつが、式(b1)で表される他の化合物におけるR201〜R203の少なくともひとつと直接、又は、連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0111】
更に好ましい(b1)成分として、以下に説明する化合物(b1−1)、(b1−2)、及び(b1−3)を挙げることができる。
【0112】
化合物(b1−1)は、上記式(b1)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0113】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
【0114】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
【0115】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0116】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0117】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうち、いずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0118】
次に、化合物(b1−2)について説明する。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0119】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができ、直鎖、分岐2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0120】
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができ、環状2−オキソアルキル基がより好ましい。
【0121】
201〜R203の直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基としては、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0122】
化合物(b1−3)とは、以下の式(b1−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0123】
【化18】


【0124】
式(b1−3)に於いて、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
x及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。
Zc-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0125】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
【0126】
1c〜R7cのシクロアルキル基として、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0127】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0128】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
【0129】
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1cからR5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、溶剤溶解性がより向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制されるので好ましい。
【0130】
x及びRyとしてのアルキル基、シクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。
x及びRyは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
【0131】
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基、シクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0132】
式(b2)、(b3)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。X-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0133】
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0134】
使用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、更に、下記式(b4)、(b5)、(b6)で表される化合物を挙げることができる。
【0135】
【化19】


【0136】
式(b4)〜(b6)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
206、R207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール
基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0137】
前記光酸発生剤のなかでも好ましくものとしては、式(b1)〜(b3)で表される化合物を挙げることができる。
本発明に用いることのできる(b)光酸発生剤の好ましい化合物例〔(b−1)〜(b−96)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
【化20】


【0139】
【化21】


【0140】
【化22】


【0141】
【化23】


【0142】
【化24】


【0143】
【化25】


【0144】
【化26】


【0145】
【化27】


【0146】
【化28】


【0147】
【化29】


【0148】
また、特開2002−122994号公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体なども好適に用いられる。
特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も本発明に好適に使用しうる。
【0149】
(b)光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の(b)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0150】
(着色剤)
本発明においては、着色剤を含有してもよい。
本発明に用いることのできる着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に好適に使用し得る着色剤は、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しないことが好ましい。これは、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないためである。
【0151】
<顔料>
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0152】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0153】
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0154】
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0155】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0156】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0157】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0158】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0159】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分であるカチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明が適用されるインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、カチオン重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0160】
顔料の平均粒径は、0.02〜0.4μmにするのが好ましく、0.02〜0.1μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02〜0.07μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0161】
<染料>
本発明に用いることのできる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0162】
本発明に用いることのできる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0163】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vs SCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vs SCE)以上のものが特に好ましい。
【0164】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0165】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0166】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0167】
−酸化電位−
本発明における染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年,Interscience Publishers社刊)や、A.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley &
Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とで作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
【0168】
以下に、本発明で使用しうる染料の具体例を示すが、本発明に用いられる染料は、下記の具体例に限定されるものでない。
【0169】
【化30】


【0170】
【化31】


【0171】
【化32】


【0172】
【化33】


【0173】
【化34】


【0174】
【化35】


【0175】
【化36】


【0176】
【化37】


【0177】
【化38】


【0178】
【化39】


【0179】
【化40】


【0180】
【化41】


【0181】
【化42】


【0182】
これらの着色剤は組成物中、固形分換算で1〜20質量%添加されることが好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0183】
(その他の成分)
以下に、必要に応じて本発明に用いることのできる種々の添加剤について述べる。
【0184】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0185】
〔増感剤〕
本発明には、光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、(b)光酸発生剤に対し0.01〜1モル%で用いることが好ましく、0.1〜0.5モル%がより好ましい。
【0186】
〔酸化防止剤〕
組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0187】
〔褪色防止剤〕
本発明には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0188】
〔導電性塩類〕
本発明には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0189】
〔溶剤〕
本発明には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0190】
〔高分子化合物〕
本発明には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0191】
〔界面活性剤〕
本発明には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0192】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0193】
−インク組成物の好ましい態様−
本発明の硬化性組成物が適用されるインク組成物(本発明のインク組成物)は、上述のように、特定重合性化合物、放射線の照射により酸を発生する化合物、任意含有される他の重合性化合物、着色剤、等を含有するものである。これらの成分は、インク組成物全体の質量に対して、着色剤が好ましくは1〜10質量%、より好ましくは、2〜8質量%、特定重合性化合物を含む全重合性化合物が、好ましくは1〜97質量%、より好ましくは、30〜95質量%である。放射線の照射により酸を発生する化合物が、特定重合性化合物を含む全重合性化合物に対して、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは、0.1〜20質量%になるように含有することが適当である。
【0194】
本発明のインク組成物をインクジェット記録用インクとして使用する場合には、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40〜80℃、好ましくは25〜30℃)において、粘度が、好ましくは7〜30mPa・sであり、より好ましくは7〜20mPa・sである。例えば、本発明のインク組成物の室温(25〜30℃)における粘度は、好ましくは35〜500mPa・s、より好ましくは35〜200mPa・sである。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0195】
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/m、より好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0196】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出し、その後、射出されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
【0197】
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
【0198】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインク組成物が好適に適用されるインクジェット記録方法(本発明のインクジェット記録方法)について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、上記した本発明のインク組成物を、被記録媒体(支持体、記録材料等)上にインク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。硬化したインク組成物は、被記録媒体上に画像を形成する。
【0199】
本発明のインクジェット記録方法に適用しる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
また、本発明のインク組成物は、硬化時の熱収縮が少なく、基材(被記録媒体)との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
更に、本発明に適用しうる被記録材料としては、後述する平版印刷版の支持体が挙げられる。
【0200】
本発明のインクジェット記録方法に適用される活性放射線としては、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線などが挙げられる。活性放射線のピーク波長は、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。また、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜2,000mJ/cm2であり、さらに好ましくは、20〜1,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50〜800mJ/cm2である。
特に、本発明のインクジェット記録方法では、放射線照射が、発光波長ピークが350〜420nmであり、かつ、前記被記録媒体表面での最高照度が10〜1,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオードから照射されることが好ましい。
【0201】
上記の他、本発明のインクジェット記録方法に適用される諸条件及びインクジェット記録装置等の詳細事項については、本発明のインクジェット記録方法の好適な応用例である、本発明の平版印刷版及び平版印刷版の製造方法において後述する。
【0202】
本発明のインクジェット記録方法によれば、表面の濡れ性が異なる様々な支持体(被記録媒体)に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質を向上させることができる。なお、本発明により、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0203】
[平版印刷版及び平版印刷版の製造方法]
本発明の平版印刷版の製造方法は、本発明のインク組成物を支持体上に吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記支持体上に形成する工程、を含む平版印刷版の製造方法である。
また、本発明の平版印刷版は、上記本発明の平版印刷版の製造方法により製造された平版印刷版であり、支持体と、該支持体上に形成された疎水性画像とを有する。
【0204】
従来、平版印刷版としては、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するいわゆるPS版が広く用いられてきた。このPS版の製造方法としては、通常、リスフィルムを介してマスク露光(面露光)した後、非露光部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。しかし、近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するディジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が求められるようになった。特に、リスフィルムを使用することなく、レーザー光のような嗜好性の高い光をディジタル化された画像情報に従って走査し、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が開発されている。
【0205】
このような走査露光を可能にする平版印刷版を得るための方式として、インク組成物又はインクジェット記録用インク組成物によって直接平版印刷版を作製する方法が挙げられる。これは、支持体(好ましくは親水性の支持体)上に、インクジェット方式等によってインクを吐出し、これを活性放射線に露光することにより、インク組成物又はインクジェット記録用インクの部分を露光して、所望の画像(好ましくは、疎水性画像)を有する印刷版を得るものである。このような方式に適したインク組成物又はインクジェット記録用インクが、本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インクである。
【0206】
〔インク組成物を支持体上に吐出する工程〕
(支持体)
本発明の平版印刷版における支持体(被記録媒体)としては、特に限定されず、寸度的に安定な板状の支持体であればよい。支持体としては、親水性の支持体であることが好ましい。支持体としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0207】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知の素材のものを適宜利用することができる。
【0208】
支持体の厚さは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0209】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0210】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であることが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であることが好ましく、1.5〜4.0g/m2であることがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られるので好ましい。
【0211】
本発明の平版印刷版に用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ、陽極酸化皮膜を有する基板をそのまま用いてもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などを一層改良するため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理は、これらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
【0212】
<封孔処理>
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
中でも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理及び熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0213】
−無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理−
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。なかでも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0214】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、更に、リン酸塩化合物を含有することが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、機上現像性および耐汚れ性を向上させることができるので好ましい。
【0215】
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有することが好ましい。
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、機上現像性および耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0216】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であることが好ましく、1/30〜2/1であることがより好ましい。
水溶液の温度は、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、また、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
水溶液は、pH1以上であることが好ましく、pH2以上であることがより好ましく、また、pH11以下であることが好ましく、pH5以下であることがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回又は複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であることが好ましく、3秒以上であることがより好ましく、また、100秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。
【0217】
−水蒸気による封孔処理−
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧又は常圧の水蒸気を連続的に又は非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、また、105℃以下であることが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105〜1.043×105Pa)であることが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であることが好ましく、3秒以上であることがより好ましく、また、100秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。
【0218】
−熱水による封孔処理−
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)又は有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、また、100℃以下であることが好ましい。
熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であることが好ましく、3秒以上であることがより好ましく、また、100秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。
本発明に用いられる親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウムなどの水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが挙げられる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。この範囲であると、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られるので好ましい。
【0219】
本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物を、親水性支持体の表面上に吐出する場合、インク組成物又はインクジェット記録用インク組成物を好ましくは40〜80℃、より好ましくは25〜30℃に加熱して、インク組成物の粘度を好ましくは7〜30mPa・s、より好ましくは7〜20mPa・sに下げた後に吐出することが好ましい。特に、25℃におけるインク粘度が35〜500mP・sのインク組成物を用いると大きな効果を得ることができるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
【0220】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して、通常インク組成物又はインクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、延いては、は画質劣化を引き起こす。従って、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、温度の制御幅は、設定温度の±5℃、好ましくは設定温度の±2℃、より好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0221】
(インクジェット記録装置)
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、市販のインクジェット記録装置を用いて被記録媒体へ記録することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜1600×1600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0222】
上述したように、放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱および加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0223】
〔吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を支持体上に形成する工程〕
支持体の表面上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。このとき、インク組成物中に、重合開始剤(光開始剤)とともに、増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度な硬化反応を達成できる。
【0224】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜420nmであることが適当である。また、本発明では、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても充分な感度を有するものである。従って、活性放射線の出力は、例えば、2,000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2,000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1,000mJ/cm2、さらに好ましくは、50〜800mJ/cm2の照射エネルギーであることが適当である。また、活性放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2,000mW/cm2、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
【0225】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
【0226】
本発明においては、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、特に好ましくは50〜800mW/cm2である。
【0227】
本発明においては、インク組成物は、このような活性放射線に、例えば、0.01〜120秒、好ましくは、0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法としては、特開昭60−132767号公報に開示される内容が適用できる。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。
【0228】
このように、本発明の平版印刷版の製造方法によれば、本発明のインク組成物を用いて、活性放射線の照射により硬化し、疎水性画像を前記支持体表面上に形成することができる。
【実施例】
【0229】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0230】
[実施例1−1]
《インクの調製》
<イエローインク1>
・C.I.ピグメントイエロー13 5質量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩
(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6質量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−
3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 35質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン
(OXT−221:東亞合成(株)製) 40質量部
モノマー:下記化合物(a−1) 11質量部
【化43】


【0231】
<マゼンタインク1>
・C.I.ピグメントレッド57:1 5質量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩
(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6質量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−
3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 35質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン
(OXT−221:東亞合成(株)製) 40質量部
モノマー:前記化合物(a−1) 11質量部
【0232】
<シアンインク1>
・C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩
(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6質量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−
3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 35質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン
(OXT−221:東亞合成(株)製) 40質量部
モノマー:前記化合物(a−1) 11質量部
【0233】
<ブラックインク1>
・C.I.ピグメントブラック7 5質量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩
(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6質量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−
3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 35質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン
(OXT−221:東亞合成(株)製) 40質量部
モノマー:前記化合物(a−1) 11質量部
【0234】
以上の様にして調製した粗製の各色インク1を絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、各色のインク1とした。
【0235】
《インクジェット画像記録》(多色画像の評価)
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度100mW/cm2、に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0236】
上記調製した各色インクを用い、環境温度25℃にて、ブラック→シアン→マゼンタ→イエローの順に射出、Integration Technology社製メタルハライドランプVzero085により紫外線を1色毎に照射した。触診で粘着性が無くなる様、完全に硬化するエネルギーとして、1色あたりのトータル露光エネルギーが一律100mJ/cm2で露光した。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。更に、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、充分にインクが硬化し、未反応モノマーによる臭気が殆どしなかった。また、フィルムに記録したインクには充分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロテープ(登録商標)剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
【0237】
[実施例1−2]
<マゼンタインク2>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、化合物(a−1)11質量部を、下記化合物(a−2)11質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク2を調製した。
【化44】


【0238】
[実施例1−3]
<マゼンタインク3>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、化合物(a−1)を下記化合物(a−3)に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク3を調製した。
【化45】


【0239】
[実施例1−4]
<マゼンタインク4>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、化合物(a−1)11質量部を、下記化合物(a−4)11質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク4を調製した。
【化46】


【0240】
[実施例1−5]
<マゼンタインク5>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において、増感色素として用いた「9,10−ジブトキシアントラセン」3質量部を「Darocur ITX(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)」3質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク5を調製した。
【0241】
[実施例1−6]
<マゼンタインク6>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において用いた「C.I.ピグメントレッド57:1」5質量部を、下記に示す「油溶性染料M−1 酸化電位+1.37V」5質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク6を調製した。
【化47】


【0242】
[実施例1−7]
<マゼンタインク7>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において用いた「C.I.ピグメントレッド57:1」5質量部を、下記に示す「油溶性染料M−2(酸化電位 +0.94V)」5質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク7を調製した。
【0243】
【化48】


【0244】
[比較例1−1]
<マゼンタインク8>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製)40質量部及び化合物(a−1)11質量部を、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製)51質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク8を調製した。
【0245】
[比較例1−2]
<マゼンタインク9>
実施例1−1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、化合物(a−1)11質量部を、下記比較用化合物11質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク9を調製した。
【化49】


【0246】
以上の実施例1−2〜1−7及び比較例1−1及び1−2において調製した粗製のマゼンタインク2〜9は、それぞれ絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、マゼンタインク2〜9とした。
【0247】
また、上記実施例及び比較例で作製したインク組成物において、インクの吐出温度でのインク粘度は、7〜20mPa・sの範囲内であった。
【0248】
《インクジェット画像記録》
以上のようにして調製した、実施例1−2〜1−7及び比較例1−1及び1−2のマゼンタインク2〜9と、実施例1で調製したマゼンタインク1を用いて、実施例1に記載の方法と同様にして、マゼンタ画像を作製した。
【0249】
<インクジェット画像の評価>
各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、下記に記載の方法に準じて、市販の再生紙上での硬化感度、密着性、耐熱性の評価を行った。評価結果は下記表1に示す。
【0250】
1.硬化感度の測定
紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなる露光エネルギー量(mJ/cm2)を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
【0251】
2.密着性
硬化皮膜に、碁盤目状にカッターで切れ目をいれた後、その表面に粘着テープを貼り付け、ついで、粘着テープを剥離した際の基材上の硬化皮膜の残存状態を目視観察した。
剥離が見られない場合をA、一部剥離が見られた場合をB、著しく剥離がみられた場合をC、硬化が不充分で評価できないものをDとして評価した。
【0252】
3.耐熱性
実施例及び比較例のマゼンタインク1〜9の各々を、60℃のオーブン中に4週間保存し、保存前後の25℃における粘度(mPa・s)をRE80型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0253】
【表1】


【0254】
表1に示されるように、実施例のマゼンタインク(本発明の硬化性組成物を適用したインク組成物)は、硬化感度が高く、密着性、耐熱性にも優れたインクであることが分かった。
【0255】
[実施例1−8]
(発光ダイオード(LED)による画像形成)
実施例1−1で調製したマゼンタインク1を使用し、また、Integration Technology社製メタルハライドランプVzero085の代わりに、紫外発光ダイオード(UV−LED)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット画像記録を行った。
本実施例ではUV−LEDとして日亜化学製のNCCU033を用いた。当該LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体(以下、メディアとも言う。)表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、及び露光時間はメディアの搬送速度及びヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
メディアとの距離及び搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cm2の間で調整することができる。
【0256】
[比較例1−3]
(発光ダイオード(LED)による画像形成)
実施例1−8において、マゼンタインク1の代わりに、比較例1−1にて調製したマゼンタインク8を用いた以外は、実施例1−8と同様にしてインクジェット画像記録を行った。
【0257】
《インクジェット画像の評価》
各形成した画像について、実施例1−1〜1−7、比較例1−1及び1−2と同様にして、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0258】
【表2】


【0259】
表1に示す紫外線ランプを用いた場合と、表2に示す紫外発光ダイオードを用いた場合とを比較すると、紫外発光ダイオードを用いた場合のほうが、放射線の照射に対して高感度であることが分かる。
【0260】
[実施例2−9〜2−16、比較例2−1〜2−3]
(支持体の作製)
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.025質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。なお、得られたアルミニウムの平均結晶粒径の短径は50μm、長径は300μmであった。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供しアルミニウム支持体を作成した。
【0261】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後には、ニップローラーで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。研磨剤の平均粒径は30μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は45mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0262】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間が0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.50g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0263】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間が0.8msec、duty比1:1、台形の炬形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気
量の総和で50C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.12g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0264】
(平版印刷版の作製と評価)
上記で作製したアルミニウム支持体上に、実施例1−1〜1−8、及び比較例1−1〜1−3と同様にして、各マゼンタインクで印字して画像を形成し、硬化させた。これを平版印刷版として、印刷用インクジェット画像の評価を行った。
【0265】
<インクジェット画像の評価>
各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、砂目立てしたアルミニウム支持体でのインク滲み、密着性、耐刷性の評価を行った。
【0266】
(砂目立てしたアルミニウム支持体におけるインク滲み評価)
砂目立てしたアルミニウム支持体上に印字した画像について、下記の基準に従いインク滲みの評価を行った。
○:隣接するドット間の滲みが無い
△:僅かにドットが滲む
×:ドットが滲み、明らかに画像がぼやける
【0267】
(砂目立てしたアルミニウム支持体における密着性の評価)
上記にて得た印字画像について、全く印字面に傷をつけない試料と、JIS K 5400に準拠して、印字面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個作った試料を作製し、各印字面上にセロテープ(登録商標)を貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った印字画像或いは碁盤目の状況について、下記の基準に則り評価した。
○:碁盤目テストでも、印字画像の剥がれが全く認められない
△:碁盤目テストでは若干のインク剥がれが認められるが、インク面に傷をつけなければ剥がれは殆ど認められない
×:両条件共に、簡単にセロテープ(登録商標)での剥がれが認められる
【0268】
(耐刷性の評価)
上記で作製した砂目立てしたアルミニウム支持体上に印字した画像を印刷版として、ハイデルKOR−D機で印刷後、刷了枚数を耐刷性の指標として相対比較した(実施例2−1を150とした)。数値が大きいものほど高耐刷であり好ましい。
【0269】
【表3】


【0270】
表3に示されるように、実施例2−1〜2−8は、インク滲み、密着性、耐刷性のいずれにおいても優れていることが分かる。




 

 


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