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発明の名称 セルロース化合物フィルム、偏光板、液晶表示装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−84664(P2007−84664A)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
出願番号 特願2005−274103(P2005−274103)
出願日 平成17年9月21日(2005.9.21)
代理人 【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
発明者 松海 法隆 / 上平 茂生 / 岡村 寿 / 深川 伸隆
要約 課題
光学フィルムとして好ましいレターデーション値を有するフィルムを形成できるセルロース化合物組成物を提供する。

解決手段
延伸された、少なくとも1種のレターデーション剤とセルロース化合物とを含有するセルロース化合物フィルムであって、面内に関して、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有するセルロース化合物フィルム。また、このセルロース化合物フィルムにおいて、少なくとも1種のレターデーション剤を、縮環成分を有するものとする。
特許請求の範囲
【請求項1】
延伸された、少なくとも1種のレターデーション剤とセルロース化合物とを含有するセルロース化合物フィルムであって、面内に関して、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有することを特徴とする、セルロース化合物フィルム。
【請求項2】
少なくとも1種のレターデーション剤が、縮環成分を有することを特徴とする、請求項1に記載のセルロース化合物フィルム。
【請求項3】
少なくとも1種のレターデーション剤が、縮環成分と、縮環成分の中心軸の方向に対して実質的に直交する方向の化合物構成成分とを有し、且つ縮環成分の中心軸における長さAに対する、縮環成分の中心軸の方向と実質的に直交する方向の化合物構成成分の長さBの比(A:B)が、1:1.1〜1:10であることを特徴とする、請求項1または2に記載のセルロース化合物フィルム。
【請求項4】
少なくとも1種のレターデーション剤が、下記一般式(1)〜(6)のいずれかの式で表されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース化合物フィルム。
【化1】


一般式(1)〜(6)中、Xは−O−、−S−、または−N(R)−を表し、Rは、水素原子、または無置換もしくは置換アルキル基を表し、Yは、単結合、無置換もしくは置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、または無置換もしくは置換芳香族基を表し、Yは、水素原子、シアノ基、無置換もしくは置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、無置換もしくは置換芳香族基、またはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表し、Z〜Zは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、または臭素原子)、シアノ基、アルキル基、またはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表し、n1〜n7は、それぞれ独立して、0〜4のいずれかの整数を表す。Rは、一般式(7)または(8)で表される基である。
【化2】


一般式(7)〜(8)中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、または無置換もしくは置換アルキル基を表し、Lは、単結合、−O−、−OCO−、または−OCO−O−を表す。
【請求項5】
前記セルロース化合物が、セルロースアシレートであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース化合物フィルム。
【請求項6】
偏光子の両面に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも1枚が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース化合物フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
保護フィルムの少なくとも片方の面上に光学異方性層を有することを特徴とする、請求項6に記載の偏光板。
【請求項8】
液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも1方の偏光板が請求項6または7に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース化合物フィルム、並びに、前記セルロース化合物フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学的異方性が要求される用途に使用できるセルロースアセテートフィルムが提案されている(例えば特許文献1及び2)。前記特許文献1及び2では、セルローストリアセテートでレターデーション値を実現するために、少なくとも2つの芳香環を有する芳香族化合物、中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物を添加し、延伸処理を行っている。光学補償シートをはじめとする光学フィルムは、使用用途の拡大から光学的異方性(Re:フィルム面内のレターデーション値)に対する要求範囲が広くなり、自在に屈折率を制御する必要がある。しかし、特許文献1及び2では、延伸方向に大きな屈折率を発現することは可能であるが、面内に対して、延伸直交方向に大きな屈折率を発現することはできていない。そのため、光学補償にとって屈折率の大きさ、方向を制御することは重要な課題である。
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0911656A2号明細書
【特許文献2】特開2003−344655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光学フィルムとして好ましいレターデーション値を有するセルロース化合物フィルムを提供することにある。従来は達成できなかった、面内に対して、延伸直交方向に大きな屈折率を発現するフィルムを提供し、該フィルムを用いた偏光板、および液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、下記手段により達成された。
(1)延伸された、少なくとも1種のレターデーション剤とセルロース化合物とを含有するセルロース化合物フィルムであって、面内に関して、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有することを特徴とする、セルロース化合物フィルム。
(2)縮環成分と、縮環成分の中心軸の方向に対して実質的に直交する方向の化合物構成成分とを有し、且つ縮環成分の中心軸における長さAに対する、縮環成分の中心軸の方向と実質的に直交する方向の化合物構成成分の長さBの比(A:B)が、1:1.1〜1:10であるレターデーション剤を少なくとも1種と、セルロース化合物とを含有するセルロース化合物組成物。
(3)下記一般式(1)〜(6)のいずれかの式で表されるレターデーション剤を少なくとも1種と、セルロース化合物とを含有する(2)項に記載のセルロース化合物組成物。
【0006】
【化1】


【0007】
一般式(1)〜(6)中、Xは−O−、−S−、または−N(R)−を表し、Rは、水素原子、または無置換もしくは置換アルキル基を表し、Yは、単結合、無置換もしくは置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、または無置換もしくは置換芳香族基を表し、Yは、水素原子、シアノ基、無置換もしくは置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、無置換もしくは置換芳香族基、またはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表し、Z〜Zは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、または臭素原子)、シアノ基、アルキル基、またはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表し、n1〜n7は、それぞれ独立して、0〜4のいずれかの整数を表す。Rは、一般式(7)または(8)で表される基である。
【0008】
【化2】


【0009】
一般式(7)〜(8)中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、または無置換もしくは置換アルキル基を表し、Lは、単結合、−O−、−OCO−、または−OCO−O−を表す。
(4)前記セルロース化合物としてセルロースアシレートを含有することを特徴とする(2)または(3)項に記載のセルロース化合物組成物。
(5)(2)〜(4)のいずれか1項に記載のセルロース化合物組成物からなるセルロース化合物フィルム。
(6)(5)項に記載のセルロース化合物フィルムを延伸し、面内に関して、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有することを特徴とするセルロース化合物フィルム。
(7)偏光子の両面に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも1枚が、(1)、(5)または(6)項に記載のセルロース化合物フィルムであることを特徴とする偏光板。
(8)保護フィルムの少なくとも片方の面上に光学異方性層を有する(7)項に記載の偏光板。
(9)液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも1方の偏光板が(7)または(8)項に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセルロース化合物フィルムは、所望のRe値を満足した光学性能に優れたフィルムであり、光学性能に優れるものである。
本発明のセルロース化合物フィルムは、液晶表示装置用光学フィルムとして、特に光学補償シートとして好適に用いることができる。また、本発明のセルロース化合物フィルムを用いた偏光板は、液晶表示装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明の延伸されたセルロース化合物フィルムは、セルロース化合物を必須成分として含有し、かつ、少なくとも1種のレターデーション剤を含有し、面内に関して、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有する。上記のレターデーション剤は、縮環成分を有する化合物が好ましい。
さらに、レターデーション剤は、縮環成分と、図1の矢印1で示す縮環成分の中心軸の方向に対して、実質的に直交する矢印2で示す方向の化合物構成成分を有した化合物で、縮環成分の中心軸における長さAに対して、縮環成分の中心軸の方向と実質的に直交する化合物構成成分の長さBの比(A:B)が1:1.1〜1:10である化合物(以下、化合物(P)と称する)であることがさらに好ましい。長さの比(A:B)は、1:1.1〜1:8であることが好ましく、1:1.5〜1:8であることがさらに好ましい。
また、図2は、後述する例示化合物2の縮環成分の中心軸方向を矢印3で、縮環成分の中心軸の方向と実質的に直交する化合物構成成分の方向を矢印4で示したものである。図2中、矢印3の両端は、縮環成分の中心軸の化合物構成の両端、すなわち長さAを示し、一方、矢印4の両端は、縮環成分の中心軸の方向と実質的に直交する化合物構成成分の両端、すなわち長さBを示すものである。なお、図2では、環の構造式から矢印3の先端部分がはみ出て記載されているが、図中の環は骨格を示すものであり、矢印の先端は水素原子、または置換基を含む縮環成分の端を示すものである。
【0013】
さらに、化合物(P)は、下記一般式(1)〜(6)のいずれかの式で表される化合物であることが好ましい。
一般式(1)〜(6)で表される化合物に関して以下に詳細に説明する。
【0014】
【化3】


【0015】
一般式(1)〜(6)中、Xは−O−、−S−、または−N(R)−を表し、Rは、水素原子、または無置換もしくは置換アルキル基を表し、Yは、単結合、無置換もしくは置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、または無置換もしくは置換芳香族基を表し、Yは、水素原子、シアノ基、無置換もしくは置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、無置換もしくは置換芳香族基、またはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表し、Z〜Zは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、または臭素原子)、シアノ基、アルキル基、またはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表し、n1〜n7は、それぞれ独立して、0〜4のいずれかの整数を表す。Rは、一般式(7)または(8)で表される基である。
【0016】
【化4】


【0017】
一般式(7)〜(8)中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、または無置換もしくは置換アルキル基を表し、Lは、単結合、−O−、−OCO−、または−OCO−O−を表す。
【0018】
Xは−O−、−S−、−N(R)−を表し、Rは、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜6、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基)を表し、Xは、−O−、または−S−が好ましい。
【0019】
は、単結合、無置換もしくは置換アルキレン基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルケニレン基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルキニレン基(好ましくは、炭素数1〜10)、または無置換もしくは置換芳香族基を表し、分岐構造を有しても良い。Yは、水素原子、シアノ基、無置換もしくは置換アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルケニル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルキニル基(好ましくは、炭素数1〜10)、無置換もしくは置換芳香族基、またはアルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10、メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表す。置換アルキル基に関して、一つ以上の隣接していないCH基は−O−、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)O−、または−C(=O)−に置換されていてもよく、および/または、一つ以上のH原子はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10、例、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10、例、メチル基、エチル基、イソプロピル基)に置換されていてもよい。
の芳香族基は式(i)のいずれかで表される基が好ましく、式(ii)のいずれかで表される基がさらに好ましく、式(iii)のいずれかで表される基が特に好ましい。
【0020】
【化5】


【0021】
【化6】


【0022】
【化7】


【0023】
置換芳香族基に関して、芳香族基のCH基のH原子は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10、例、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、またはアルキル基(好ましくは、炭素数1〜10、例、メチル基、エチル基、イソプロピル基)に置換されていてもよい。
【0024】
〜Zは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、または臭素原子)、シアノ基、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10、例えば、メチル基、エチル基)、またはアルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10、メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基)を表し、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子)、またはアルキル基(メチル基、またはエチル基)であることが好ましく、ハロゲン基(塩素原子)、またはアルキル基(メチル基)であることがさらに好ましい。
【0025】
n1〜n7は、それぞれ独立して、0〜4のいずれかの整数を表し、0〜2であることが好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0026】
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、または無置換もしくは置換アルキル基であり、分岐構造を有しても良い。アルキル基の炭素原子数は、例えば、1〜30個であることができ、1〜20個であることが好ましく、1〜12個であることがさらに好ましい。置換アルキル基に関して、一つ以上の隣接していないCH基は−O−、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)O−、−C(=O)−に置換されていてもよく、および/または、一つ以上のH原子はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10、例、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10、例、メチル基、エチル基、イソプロピル基)に置換されていてもよい。
【0027】
Lは、単結合、−O−、−OCO−、または−OCO−O−を表す。
【0028】
以下に一般式(1)〜(6)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0029】
【化8】


【0030】
【化9】


【0031】
【化10】


【0032】
【化11】


【0033】
【化12】


【0034】
【化13】


【0035】
【化14】


【0036】
【化15】


【0037】
【化16】


【0038】
【化17】


【0039】
本発明に用いられる一般式(1)〜(6)で表される化合物は、それに限定されるものではないが、例えば、ジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリー(J.Med.Chem.EN.)2003.3300-3307、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソシエティ(J.Am.Chem.Soc.)1959.6222-6226、テトラヒドロン(Tetrahedron.EN.)1993.3035-3042の記載に準じて合成することができる。
【0040】
前記一般式(1)〜(6)で表される化合物は、光学フィルム用レターデーション制御剤として用いることができ、特にセルロース化合物フィルム用レターデーション制御剤として有用である。これら化合物を含むフィルムの製造方法等の詳細は後述する。
【0041】
本発明に用いられるセルロース化合物組成物における、一般式(1)〜(6)で表される化合物の含有量は、セルロース化合物に対して0.01〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
また、本発明の好ましい実施態様は、この組成物からなるセルロース化合物フィルムである。
【0042】
本発明に用いられるセルロース化合物に関して詳細に説明する。本発明において、「セルロース化合物」とは、セルロースを基本構造とする化合物であって、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を含むものとする。セルロース化合物として好ましいものはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロース化合物を混合して用いても良い。以下、セルロースアシレートを例にして、本発明の好ましい態様を説明する。
【0043】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0044】
前記の特定のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基及び炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(4)及び(5)を満足するセルロースアシレートであることが好ましい。
数式(4):2.0≦A+B≦3.0
数式(5):0<B
ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
【0045】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
【0046】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著,「繊維学会誌」,第18巻,第1号,105〜120頁,1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
【0047】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率にできれば特に限定されない。本発明におけるこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0048】
本発明におけるセルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0049】
[セルロースアシレートへの添加剤]
本発明におけるセルロースアシレート溶液には、各調製工程において上記の一般式(1)で表される化合物以外にも用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤)を加えることができ、また一般式(1)で表される化合物を含む添加剤を添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0050】
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば凝固点が20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いたりすることができ、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。
【0051】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
【0052】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0053】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0054】
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
【0055】
これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0056】
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不用な着色が少ないことから、好ましい。
【0057】
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
【0058】
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%以上であれば添加効果が十分に発揮されうるので好ましく、添加量が5質量%以下であればフィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
【0059】
また紫外線吸収剤は、セルロースアシレート溶解時に同時に添加してもよいし、溶解後のドープに添加してもよい。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができるので好ましい。
【0060】
[劣化防止剤]
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
【0061】
[可塑剤]
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができ、本発明に用いられる可塑剤はこれら例示の可塑剤から選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
【0062】
[剥離促進剤]
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
さらに赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。
【0063】
[染料]
また本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
【0064】
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0065】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0066】
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0067】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0068】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化ケイ素微粒子の分散性がよく、二酸化ケイ素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化ケイ素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0069】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0070】
[化合物添加の比率]
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート重量に対して5〜45%であることが好ましい。より好ましくは10〜40%であり、さらに好ましくは15〜30%である。これらの化合物としては、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下が好ましく、2000以下がより好ましい。これら化合物の総量が5%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
【0071】
[セルロースアシレート溶液の有機溶媒]
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0072】
以上本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0073】
その他、本発明のセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許文献に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876号、特開平12−95877号、特開平10−324774号、特開平8−152514号、特開平10−330538号、特開平9−95538号、特開平9−95557号、特開平10−235664号、特開平12−63534号、特開平11−21379号、特開平10−182853号、特開平10−278056号、特開平10−279702号、特開平10−323853号、特開平10−237186号、特開平11−60807号、特開平11−152342号、特開平11−292988号、特開平11−60752号、特開平11−60752号などの各公報に記載されている。これらの特許文献によると本発明のセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0074】
[セルロースアシレートフィルムの製造工程]
(溶解工程)
本発明におけるセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
本発明において、ドープにおける一般式(1)〜(6)で表される化合物の含有量は、0.02〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。また、本発明におけるドープのセルロース化合物の含有量は、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
【0075】
本発明におけるセルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることが好ましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、商品名、島津製作所)で550nmの吸光度を測定する。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出する。
【0076】
(流延、乾燥、巻き取り工程)
次に、本発明におけるセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
【0077】
[延伸処理]
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することが好ましい。セルロースアシレートフィルムを幅方向に延伸する方法として、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
【0078】
フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦又は横だけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次2軸延伸でもよい。通常は1〜200%の延伸を行うが、好ましくは1〜100%、特に好ましくは1〜50%の延伸を行うのがよい。
【0079】
乾燥後得られる、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常、5〜500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用としては、40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0080】
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0081】
フィルムの幅方向のRe590値のばらつきは、±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。
【0082】
〔セルロースアシレートフィルムの光学特性〕
本明細書において、Reλ、Rthλは、それぞれ波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。Reλは“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}において、波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定される。Rthλは、前記Reλ、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向
から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の、合計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に“KOBRA 21ADH”が算出する。
ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
また、本発明において、「面内に関して、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有すること」とは、上記のReが負であることを意味する。
【0083】
[フィルムの透湿度]
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24hを超えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、本発明のセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求める。
【0084】
[フィルムの残留溶剤量]
本発明のセルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明に用いる透明支持体の残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
【0085】
[フィルムの吸湿膨張係数]
本発明のセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0086】
[表面処理]
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、0.133〜2660Pa(10-3〜20Torr)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0087】
[アルカリ鹸化処理]
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
【0088】
[機能層]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましく、VAモードまたはOCBモードの液晶表示装置がさらに好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0089】
[用途(偏光板)]
本発明のセルロースアシレートフィルムの用途について説明する。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
【0090】
[用途(光学補償フィルム)]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
【0091】
(一般的な液晶表示装置の構成)
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
【0092】
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0093】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
【0094】
(写真フィルム支持体)
さらに本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき、該特許文献に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
【0095】
(透明基板)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報などに公開されている。
【0096】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0097】
[実施例1]
セルロースアセテートフィルムの作製
下記のセルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
【0098】
別のミキシングタンクに、レターデーション制御剤として、例示化合物(2)(A:B=1:2.9)、(7)(A:B=1:2.7)、または下記比較化合物と、メチレンクロライド87質量部およびメタノール13質量部とを投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション制御剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液474質量部に各レターデーション制御(上昇)剤溶液36質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。各レターデーション制御剤溶液における添加剤の量は、ドープにおいてセルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加する量とした。
【0099】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフィルム(光学補償シート)について、波長590nmにおけるReレターデーション値を下記により測定した。結果を表1に示す。なお、表1のNo.1はレターデーション制御剤溶液を加えない以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。
【0100】
<Reの測定>
ReはKOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において波長590nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、面内の屈折率に関して、正のReは、延伸方向に最大の屈折率を有することを表し、負のReは、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有することを表す。
【0101】
【表1】


【0102】
比較化合物(特開2003−344655号公報に記載の化合物)
【化18】


【0103】
表1の結果から分かるように、公知の化合物(比較化合物)を用いたセルロース化合物フィルムは、Re20である。これに対して本発明の化合物を添加することにより、負のRe(−10)を発現することから、面内の屈折率に関して、延伸方向に対して直交方向に最大の屈折率を有するフィルムの作製が可能になることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】縮環成分と、縮環成分の中心軸の方向に対して実質的に直交する方向の化合物構成成分を有するレターデーション剤の説明図である。
【図2】例示化合物2の縮環成分の中心軸における長さAと、縮環成分の中心軸の方向と実質的に直交する化合物構成成分の長さBを示す説明図である。
【符号の説明】
【0105】
1 縮環成分の中心軸の方向を示す矢印
2 縮環成分の中心軸の方向に対して、実質的に直交する方向を示す矢印
3 縮環成分の中心軸の方向および長さAを示す矢印
4 縮環成分の中心軸の方向と実質的に直交する方向およびその化合物構成成分の長さBを示す矢印




 

 


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