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高分子膜を用いた重層化細胞培養物 - 富士フイルム株式会社
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発明の名称 高分子膜を用いた重層化細胞培養物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−82528(P2007−82528A)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
出願番号 特願2005−364861(P2005−364861)
出願日 平成17年12月19日(2005.12.19)
代理人 【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
発明者 藤田 正晴 / 戸田 悟
要約 課題
動物から分離培養した肝細胞などの細胞を長期間生存させることが可能である重層化細胞培養物を提供すること。

解決手段
第一の培養細胞層の上面に、シート状の高分子膜上に形成されている第二の培養細胞層を、該第二の培養細胞層の面が第一の培養細胞層の上面と接触するように、積層することによって得られる、重層化細胞培養物。
特許請求の範囲
【請求項1】
第一の培養細胞層の上面に、シート状の高分子膜上に形成されている第二の培養細胞層を、該第二の培養細胞層の面が第一の培養細胞層の上面と接触するように、積層することによって得られる、重層化細胞培養物。
【請求項2】
高分子膜が、細胞外マトリクス成分からなる膜、合成高分子または天然高分子からなる膜、又は合成高分子または天然高分子上に細胞外マトリクスをコートして得られる膜である、請求項1に記載の重層化細胞培養物。
【請求項3】
高分子膜が、コラーゲン、架橋コラーゲン、またはその混合物からなる膜である、請求項1又は2に記載の重層化細胞培養物。
【請求項4】
高分子膜が、透明で平面性を有する多孔質膜である、請求項1から3の何れかに記載の重層化細胞培養物。
【請求項5】
第一の培養細胞層と第二の培養細胞層とが、異なる細胞の細胞層である、請求項1から4の何れかに記載の重層化細胞培養物。
【請求項6】
第一の培養細胞層が単一種の細胞から形成されており、かつ第二の培養細胞層も単一種の細胞から形成されている、請求項1から5の何れかに記載の重層化細胞培養物。
【請求項7】
培養液中で培養されている第一の培養細胞層を含む容器の該培養液の上面に、シート状の高分子膜上に形成されている第二の培養細胞層を、該第二の培養細胞層の面が第一の細胞層の上面と接触できるように第二の培養細胞層を下側かつ高分子膜を上側となるように置き、次いで、容器内の培養液を除去して、第二の培養細胞層を第一の培養細胞層に接触させて第一の培養細胞層と第二の培養細胞層とを積層することによって作製される、請求項1から6の何れかに記載の重層化細胞培養物。
【請求項8】
第一の培養細胞が肝細胞である、請求項1から7の何れかに記載の重層化細胞培養物。
【請求項9】
第二の培養細胞が血管平滑筋細胞または内皮細胞である、請求項1から8の何れかに記載の重層化細胞培養物。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載の重層化細胞培養物を化学物質の存在下で培養することを含む、化学物質の毒性を評価する方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、重層化細胞培養物に関し、具体的には、肝細胞を含む細胞層及び血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、脂肪細胞、血球細胞、及びマクロファージからなる群より選択される1種以上の細胞を含む細胞層の重層化により得られた重層化細胞培養物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャーレ上で単層培養した肝細胞は長期間その機能を維持させたまま生存させることが困難であることから、動物から分離しシャーレ上に播種した肝細胞と他の細胞を重層化する方法の研究がなされている。このような方法の具体例としては、例えば、細胞培養担体及び該担体を用いた細胞の培養方法(特許文献1)、及び熱応答性高分子を用いた細胞積層化法(非特許文献1)などが現在までに報告されている。そして、これらの方法を用いた細胞培養の研究によれば、株化肝細胞ではなく初代分離肝細胞を使用した研究が動物種間の代謝パターンの探索に有用である可能性が示されている。
【0003】
特許文献1には、細胞を積層化する方法が記載されている。多孔性膜上にアルギン酸カルシウム層およびコラーゲン層を載せた3層膜を作製し、その上に内皮細胞等の細胞を培養する。別に培養した肝細胞培養器の上で、前記細胞培養物を、細胞側を肝細胞側にして重層化した後、キレート剤を添加することによってアルギン酸カルシウム層を可溶化し、多孔質膜を除去する方法である。しかし、この方法では、多孔質膜とアルギン酸層を除去するためにキレート剤を使用するため、培養細胞の生育に障害を与えるという問題点がある。
【0004】
非特許文献1には、細胞を積層化する方法を示す。熱応答性高分子の上に内皮細胞などを培養した後、温度を20℃に低下させてPVDF膜に転写する。別に培養した肝細胞培養器の上で、前記PVDF膜を細胞側を肝細胞側にして重層化した後、PVDF膜を剥離する方法である。しかし、この方法では、温度を20℃まで低下させることにより細胞の生育に障害を与えることなどの問題点がある。
【0005】
【非特許文献1】M.Harimoto,et al.,Biomed.Mater.Res.62,464-470,2002
【特許文献1】特許第3261456号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、動物から分離培養した肝細胞などの細胞を長期間生存させることが可能である重層化細胞培養物を提供することである。さらに本発明が解決しようとする課題は、該重層化細胞培養物を用いて化学物質の長期曝露に対する毒性を評価可能である方法を提供し、動物を用いた安全性評価を最小限とし、肝細胞としてヒトを含む動物の初代肝細胞を用いヒトへの毒性発現を高確率で予想可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行い、肝細胞を含む細胞層と血管平滑筋細胞を含む細胞層等との重層化細胞培養物が、単層培養した初代肝細胞と比較して、5〜10倍程度の長期間、肝細胞の代謝能を維持できることを見出した。本発明はこれらの知見を基に完成されたものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、第一の培養細胞層の上面に、シート状の高分子膜上に形成されている第二の培養細胞層を、該第二の培養細胞層の面が第一の培養細胞層の上面と接触するように、積層することによって得られる、重層化細胞培養物が提供される。
【0009】
好ましくは、高分子膜は、細胞外マトリクス成分からなる膜、合成高分子または天然高分子からなる膜、又は合成高分子または天然高分子上に細胞外マトリクスをコートして得られる膜である。
【0010】
好ましくは、高分子膜は、コラーゲン、架橋コラーゲン、またはその混合物からなる膜である。
好ましくは、高分子膜は、透明で平面性を有する多孔質膜である。
好ましくは、第一の培養細胞層と第二の培養細胞層とは、異なる細胞の細胞層である。
好ましくは、第一の培養細胞層は単一種の細胞から形成されており、かつ第二の培養細胞層も単一種の細胞から形成されている。
【0011】
好ましくは、本発明の重層化細胞培養物は、培養液中で培養されている第一の培養細胞層を含む容器の該培養液の上面に、シート状の高分子膜上に形成されている第二の培養細胞層を、該第二の培養細胞層の面が第一の細胞層の上面と接触できるように第二の培養細胞層を下側かつ高分子膜を上側となるように置き、次いで、容器内の培養液を除去して、第二の培養細胞層を第一の培養細胞層に接触させて第一の培養細胞層と第二の培養細胞層とを積層することによって作製される。
【0012】
好ましくは、第一の培養細胞は肝細胞である。
好ましくは、第二の培養細胞が血管平滑筋細胞または内皮細胞である。
【0013】
本発明の別の側面によれば、本発明の重層化細胞培養物を化学物質の存在下で培養することを含む、化学物質の毒性を評価する方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、肝細胞などの細胞の機能を長期間維持できる重層化細胞培養物が提供される。該重層化細胞培養物を用いた物質の安全性評価方法は、薬剤等の物質の長期にわたる代謝及び毒性の判断に有用である。また、本発明の重層化細胞培養物では、温度変化もキレート剤も使用しないため、細胞へのダメージ少ないという利点がある。さらに、本発明においてコラーゲン膜を作成する場合は、使用時に物理的・機械的に取り扱い性が向上し、取り扱い性が悪化することなく薄層化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本明細書において、重層化細胞培養物とは2個以上の細胞層の重層化により得られる培養物をいい、2個以上の細胞層が重層化細胞培養物となったあと、実質的に1個の細胞層を形成しているものも含む。本発明において、重層化される細胞層及び重層化細胞培養物はシート状のものが好ましい。
【0016】
本発明の重層化細胞培養物は、上記細胞層として肝細胞を含む細胞層を含むことが好ましい。肝細胞を含む細胞層及び肝細胞を含む細胞層以外の他の細胞層は、いずれも1個以上であればよく、いずれも1個であるのが好ましい。肝細胞を含む細胞層及び肝細胞を含む細胞層以外の他の細胞層は互いに隣接させて重層化されているものが好ましいが、隣接させて重層化させる際には、両細胞層の間に細胞を含まない層が存在していてもよい。細胞を含まない層としては、高分子含水ゲル層又は細胞接着性ゲル層などが挙げられるが、細胞接着性ゲル層が好ましい。両細胞層の間には細胞を含まない層が存在しない方がより好ましい。また、両細胞層の間には、空隙が存在していてもよいが、空隙の距離は10μm以下であるのが好ましい。
【0017】
肝細胞としては肝臓を構成する組織の細胞であればいずれを用いてもよい。肝細胞を含む細胞層以外の他の細胞層としては、動物由来細胞が好ましく、具体的には血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、脂肪細胞、血球細胞、マクロファージ(クッパー細胞を含む)、肝類洞内皮細胞、線維芽細胞からなる群より選択される1種以上の細胞を含む細胞層が挙げられる。これらの群のうち好ましいのは、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞または肝類洞内皮細胞である。本発明において用いられる細胞として動物から分離培養した細胞を用いる場合は、初代培養細胞でも、株化継代細胞でもよいが、肝細胞としては初代分離肝細胞を用いるのが好ましい。また、肝細胞及び動物由来細胞についてはいずれの哺乳動物の細胞でもよいが、特に、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ブタ、ミニブタ、ウサギ、ハムスター、ラット、又はマウスの細胞が好ましく、ヒト、ラット、マウス、又はウシの細胞がより好ましい。重層化されるそれぞれの細胞層に含まれる細胞は、同種の生物由来細胞でも、異種の生物由来細胞でもよい。
【0018】
重層化前の個々の細胞層の作成方法は特に制限されず、また細胞層として市販の細胞層を用いてもよい。好ましくは、個々の細胞層としてはシャーレ、マイクロプレート等、及び種々の細胞培養担体のうちのいずれかを用いて培養された培養細胞層を用いる。また、重層化の際基盤となる細胞層以外は、細胞層の脱離が可能な細胞担体上で形成されていることが好ましい。
【0019】
細胞培養担体としては、後述の細胞層の脱離が可能な細胞培養担体を含めた公知の細胞培養担体のいずれを用いてもよい。
【0020】
シート状の高分子膜の厚さは1μm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以上50μm以下である。本明細書において層の厚さは、特に言及のない限り充分に乾燥した状態で計測したものを示す。本明細書においては、この層の厚さを「乾燥膜厚」ということもある。層の厚さの計測は、電子顕微鏡断面像、マイクロメータ膜厚計、エリプソメーター、角度可変XPS、光干渉式膜厚計などを用いて行うことができ、好ましくはマイクロメータ膜厚計、電子顕微鏡断面像、光干渉式膜厚計を用いて行うことができる。
【0021】
また、多孔性高分子膜の孔径は0.01μm以上50μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下、さらに好ましくは0.4μm以上10μm以下である。
【0022】
高分子膜は、一般的に知られている種々の高分子薄膜の作製方法を用いて作製することができる。例えば、高分子含水ゲルの溶液をキャストする方法(キャスト法)やバーコーターで塗布する方法(バーコート法)、ギャップコーターで塗布する方法(ギャップコート法)などが挙げられるが、これらのうちバーコート塗布法、ギャップコート塗布法が好ましい。
【0023】
高分子膜としては、好ましくは、細胞外マトリクス成分からなる膜、合成高分子または天然高分子からなる膜、又は合成高分子または天然高分子上に細胞外マトリクスをコートして得られる膜を使用することができる。
【0024】
細胞外マトリクスは、一般的には「動物組織中の細胞の外側に存在する安定な生体構造物で、細胞が合成し、細胞外に分泌・蓄積した生体高分子の複雑な会合体」と定義されており(生化学辞典(第3版)p.570,東京化学同人(株))、細胞を物質的に支持する役割や細胞の活性を調節する役割(すなわち細胞外の情報を細胞に伝えその活性に変化を与える役割)等を担っている。「細胞外マトリクス成分」とは、細胞外マトリクスの構成成分を意味し、その具体例としては、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸など)、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン等を例示でき、これらのうち特に好ましいものとして、コラーゲン、アテロコラーゲン、マトリゲル(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸よりなるゲル)、ヒアルロン酸、及びゼラチンを例示できる。細胞外マトリックス成分は、常法に従って得ることができる。また、市販の細胞外マトリックス成分を使用してもよい。細胞接着性成分のゲル化は、常法に従って行なうことができる。例えば、細胞接着性成分がコラーゲンである場合には、0.3〜0.5%コラーゲン水溶液を37℃で10〜20分間インキュベーションすることにより、コラーゲンゲルを得ることができる。細胞外マトリックス成分のゲル化の際には、必要に応じてゲル化剤を使用してもよい。
【0025】
また、コラーゲンは架橋していてもよい。架橋方法は一般的に知られている方法、たとえば熱架橋、電子線架橋、化学架橋などがある。
【0026】
化学架橋を行うときは、架橋剤を用いることができる。架橋剤は、膜の硬化を促進し、膜形成後の膨潤を防止する作用を有しているものから選択することができる。架橋剤の種類は、上記の作用を有し、かつ細胞の接着性や増殖性に実質的に影響を及ぼさない限り特に限定されず、無機又は有機の架橋剤のいずれを用いてもよい。例えば、クロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど);カルシウム塩(塩化カルシウム、水酸化カルシウムなど);アルミニウム塩(塩化アルミニウム、水酸化アルミニウムなど);アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒドなど);N-メチロール化合物(ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントインなど);ジオキサン誘導体(2,3-ジヒドロキシジオキサンなど)、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物類(カルベニウム、2-ナフタレンスルホナート、1,1-ビスピロリジノ-1- クロロ- 、ピリジニウム、1-モルホリノカルボニル-3-(スルホナトアミノメチル)-など);活性ビニル化合物(1,3-ビスビニルスルホニル-2- プロパノール、1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、ビニルスルホニル基を側鎖に有するビニル系ポリマー、1,3,5-トリアクリロイル-ヘキサヒドロ-s-トリアジン、ビス(ビニルスルホニル)メタンなど);活性ハロゲン化合物 (2,4-ジクロル-6- ヒドロキシ-s-トリアジン及びそのナトリウム塩など);ムコハロゲン酸類(ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸など);イソオキサゾール類;ジアルデヒド澱粉;又は、2-クロル-6- ヒドロキシトリアジニル化ゼラチンなどの架橋剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、活性ビニル化合物型架橋剤が好ましい。架橋剤の使用量は特に限定されないが、例えば、プロテアーゼ基質100gに対して0.1〜20mmol、さらに好ましくは0.3〜10mmol 程度を配合するのがよい。
【0027】
さらに、化学架橋を行う手段として、特開昭64-27471に記載されているようなトランスグルタミナーゼのような酵素を用いて架橋してもよい。トランスグルタミナーゼは、コラーゲンなどのタンパク質中のペプチド鎖何にあるグルタミン残基のγ―カルボキシアミト゛基のアシル転移反応を触媒する酵素であり、アシル受容体としてタンパク質中のリジン残基のε―アミノ基が作用すると、分子内および分子間にε―(Glu)−Lys架橋結合が形成される。
【0028】
熱架橋では、コラーゲンを熱処理することで架橋する方法であり、50〜200℃の範囲で行うのがよい。50℃より低いと架橋が不充分または架橋が行われなくなってしまう。一方、200℃を越えるとコラ−ゲンの変性が顕著であり細胞接着活性作用が損なわれてしまうからである。製造と活性の要因を考慮すると、好ましくは60〜180℃であり、90〜150℃が最も好ましい。
【0029】
放射線架橋では、コラーゲンに放射線を放射することで架橋する方法である。具体的には、紫外線照射、電子線照射、ガンマ線などの物理的エネルギーを照射することによって物理的架橋を生起させる。
【0030】
本発明で用いられる高分子膜のうち、合成高分子または天然高分子については、細胞の接着および育成に悪影響を与えるものでなければ特に限定はない。合成高分子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィンなどがあげられる。また、天然高分子としては、例えば、アミノ酸、たんぱく質、多糖類、天然ゴムなどがあり、具体的には、ゼラチン、でんぷん、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸などがあげられる。これらのうち、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0031】
高分子膜上に形成された培養細胞層は、透明な支持体と共にピンセット等で持ち上げることにより平面性を保ったまま細胞シートとして移動できるため、肝細胞を含む細胞層又は他の細胞層と本細胞培養担体上に形成された培養細胞層を用いることにより、本発明の重層化細胞培養物の作製を容易に行うことができる。
【0032】
本細胞外マトリクスを作製する際、密着性を改善する目的で、カルボジイミド類を含んだ調製液を用いてもよい。カルボジイミド類及びN−ヒドロキシコハクイミドはいかなる層の調製液に添加してもよいが、高分子膜調製液もしくは予め高分子含水ゲルに含浸させておくこと、あるいは高分子膜塗布後に塩化カルシウムと共溶解した液に浸漬することが好ましい。該カルボジイミド類は水溶性のものが好ましく、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。該カルボジイミドを用いる場合その濃度としては0.01 mg/l以上200 g/l以下が好ましい。このときN−ヒドロキシコハクイミドを触媒として使用してもよく、濃度としては該カルボジイミドに対して1重量%以上50重量%以下が好ましい。本細胞外マトリクスにおいては、特に必要がない限りカルボジイミドは用いないほうがよい。
【0033】
高分子膜は、いかなる方法で滅菌されてもよいが、電子線、γ線、X線、紫外線などの放射線による滅菌が好ましく用いられ、電子線、γ線、紫外線がさらに好ましく用いられ、電子線滅菌が特に好ましい。電子線滅菌の照射線量としては0.1 kGy以上65 kGy以下が好ましく、1 kGy以上40 kGy以下が特に好ましい。EOG滅菌などの化学滅菌、高圧蒸気ガス滅菌などの高熱をかける滅菌は好ましくない。このように滅菌した細胞培養担体は無菌条件下であれば長期間に渡って室温保管が可能である。滅菌法は単独もしくは複数種の組み合わせで実施されてもよく、同一種の滅菌法を繰り返し使用してもよい。
【0034】
本高分子膜を用いて、肝細胞又は血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、脂肪細胞、血球細胞、及びマクロファージ等の他の細胞層に含まれる細胞を培養する際には、通常、細胞濃度5.0〜10×104cells/mlの培養液(例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地、Waymouth MB752/1培地、William's E培地)を高分子膜上に添加する。細胞の培養条件は、培養する細胞に従って適宜選択し得る。高分子膜上で細胞を培養する場合には、通常、高分子膜上にコンフルエントな単層の細胞層が形成されるまで行なう。
【0035】
本発明の重層化細胞培養物の培養は、培養器として、マルチウェルプレート、培養フラスコ、培養チューブ、シャーレ、マイクロプレート、インサートセルのいずれを用いて行ってもよいが、マルチウェルプレート、マイクロプレート、インサートセルを用いて行われるのが好ましい。培養の際には、例えば、10%FBS,0.5%マトリゲル,インスリン,デキサメサゾン,トランスフェリンおよびセレン塩,成長因子(FGF,EGF,VEGF)等を含むD-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地、Waymouth MB752/1培地、William's E培地等の培地を使用できる。
【0036】
本発明の重層化細胞培養物は、単層培養した肝細胞と比較して、長期間の細胞の代謝能を維持できるため、本発明の重層化細胞培養物を用いて長期にわたる肝細胞における物質の代謝を評価することが可能である。従って、本発明の重層化細胞培養物を用いて多様な物質の安全性をより確実に評価することがきできる。物質としては特に限定されないが、ヒトの体内に侵入する可能性のある薬物等の化学物質が挙げられる。
【0037】
本発明の物質の安全性評価方法は、好ましくは、
(1)本発明の重層化細胞培養物を含む培地中に物質を添加する工程、及び
(2)該物質の添加後の該培地中の産生物を分析する工程、
を含む。ここで、培地としてはD-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地Waymouth MB752/1培地、William's E培地等の培地を使用できる。分析としては、代謝産物の同定、定量等が挙げられ、具体的には、出発物質から毒性化又は無毒化された代謝産生物の同定、定量などが挙げられる。本発明の重層化細胞培養物を含む培地中の産生物を分析することにより、種々の動物の肝臓での代謝のパターンを短期間で判断することができる。
【0038】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
〔例1〕重層細胞用プレートの作製
12穴マイクロプレート(FALCON社製、No.3505)に滅菌済みステンレス製のスペーサーを敷き[図1の1)]、その上に18mm径カバーガラス(MATSUNAMI製)を敷く[図1の2)]。この中にリン酸緩衝液(PBS)(GIBCO製,No.20012-027)を2mL添加す
る[図1の3)]。この上から直径18mmの円形にカットした膜厚約30umのコラーゲン膜を載せ浮遊させる[図1の4)]。37℃、5%CO2条件下にて18時間静置した後、コラーゲン膜をピンセット等で完全に浸漬させる[図1の5)]。次に、ピペット等でPBSを除去する。さらに、10%FBSを含む10%FBS ダルベッコMEM培地(GIBCO社製)を2mL添加し、重層細胞用プレートを作製した。
【0040】
〔例2〕培養細胞層の作製
組織培養の技術〔第二版〕 日本組織培養学会編 朝倉書店 P135に記載の方法により採取したラット初代肝細胞を12穴マイクロプレート(FALCON社製、No.3505)に50000個/well播種し37℃、5%CO2条件下にて24時間培養(培地は10%FBSおよび0.5%マトリゲルを含むWilliam’s E培地 GIBCO社製)した。同じく例1で作製した培養細胞用12穴マイクロプレートにラット血管平滑筋細胞A-10(大日本製薬社製)を100000個/well播種し[図1の6)]、37℃、5%CO2条件下にて72時間培養(培地は10%FBS ダルベッコMEM培地 GIBCO社製を使用)して、ラット初代肝細胞層とラット血管平滑筋細胞層[図1の7)]を作製した。
【0041】
〔例3〕重層化細胞培養物の作製
血管平滑筋細胞を含むコラーゲン膜とカバーガラスをいっしょにピンセットで取出し[図1の8)]、上下を反転させる[図1の9)]。肝細胞の入ったウェル上で血管平滑筋細胞が下面になるようにして、カバーガラスを引き抜き[図1の10)]、コラーゲン膜をウェルの培地に浮かべる[図1の11)]。培地をピペットで少しずつ吸い取り、ウェル内の培地をすべて除去することにより、血管平滑筋細胞を含むコラーゲン膜と肝細胞を接着させる[図1の12)]。培地を除去した状態で、37℃、5%CO2条件下にて5分間静置し2種の細胞を完全に接着させる。その後、12ウェルプレートを37℃、5%CO2条件下にて18時間培養し、上述の肝細胞培養用培地を各ウェルあたり100μLずつ静かに添加[図1の13)]した後、37℃、5%CO2条件下にて18時間培養して2種の細胞を重層化する。
【0042】
〔例4〕重層化細胞培養物の培養
12ウェルプレートの培地を毎日除去し、新鮮な上述の肝細胞培養用培地を1mL添加[図1の14)]して37℃、5%CO2条件下にて培養を続ける。
【0043】
〔例5〕重層化細胞培養物におけるアルブミン産生量測定
ELISA(レビス アルブミンELISAキット ラット用)を用いてアルブミン量を経時測定した。結果を図2に示す。図2から分かるように、重層化細胞培養物に含まれるラット初代肝細胞は24日間以上P-450活性を80%以上維持した。それに対し、単層培養した初代肝細胞(作製手順の具体的な説明)では、7日間未満でP-450活性は80%以下に低下した。
【0044】
〔例6〕架橋コラーゲン膜作成
(1)架橋と膜厚
新田ゼラチン社製Cellmatrix I-Pの8 mlに10倍濃縮されたHam's F-12培地1 mlを添加して,氷冷下で3分間スターラー混合した後、この混合物にさらに氷冷下で緩衝液(NaHCO3 2.2 g又は4.7 gを0.05N NaOH水溶液100 mlに溶解したもの)1 mlおよびコラーゲンに対して0.05重量%のN,N-エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)を添加し、泡立てないように2分間混合し、37℃で2時間経時してゲル化させコラーゲンを作成した。この溶液をポリエチレンテレフタレート製フイルム上に表1の膜厚となるようにキャストした。その後、架橋コラーゲン膜を十分に水洗して細胞培養に用いた。また、N,N-エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)を添加しないサンプルも作成した。
【0045】
コラーゲン膜の強度は、以下の方法で測定した。コラーゲン膜を20×20mmに正方形サイズにしたもの10枚をそれぞれGIBCO社製MEM培地に37℃で1週間浸漬した後、ピンセットでコラーゲン膜をつまんだ時の状態を下記基準で判断し、コラーゲン膜10枚の平均を算出した。
【0046】
膜をピンセットつかむことができ、ちぎれがなく実用上問題なし: 100点
ピンセットでつかむことはできるが、ちぎれる場合がある: 50点
膜がゼリー状であり、ピンセットでつかめない。 : 10点
【0047】
【表1】


【0048】
本発明のコラーゲン膜を架橋したことで強度が得られ、薄層化しても機械的・物理的強度が低下せず、取り扱い性が保持できた。また、架橋したコラーゲン膜を用いて、例1〜例5と同様の効果が得られた。
【0049】
(2)架橋方法
コラーゲン膜をおよそ2μmの膜厚となるようにキャストすること、および表2のような条件で架橋すること以外は上記と同様にコラーゲンを作成した。膜強度の評価は、上記実施例と同様に行った。
【0050】
【表2】


【0051】
コラーゲン膜を架橋したことで強度が得られ、取り扱い性が向上した。架橋したコラーゲン膜を用いて、例1〜5と同様の効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、実施例の操作の概要を示す。
【図2】図2は、ラット初代肝細胞におけるアルブミン産生能の経時的変化を示す。




 

 


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