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発明の名称 核酸の分離精製方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−68452(P2007−68452A)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
出願番号 特願2005−258131(P2005−258131)
出願日 平成17年9月6日(2005.9.6)
代理人 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平
発明者 三好 隼人 / 佐々木 翼 / 小林 貴之
要約 課題
動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物組織由来の成分から調製した核酸を含む溶液中の核酸を、固相表面に吸着させた後、洗浄等を経て、回収液を用いて脱着させて核酸を分離精製する方法において、迅速、高収量、高純度で核酸を得る方法を提供すること。

解決手段
核酸を含む試料溶液、核酸を固相に吸着させるための溶液及び回収溶液をそれぞれ用いて、固相に核酸を吸着させ次いで脱着させる工程を含む、核酸分離精製方法において、該核酸を含む試料溶液として、動物組織及び硬タンパク質を含む組織を酸及びアルカリ処理を施し、更に硬タンパク質を含む骨など組織を用いる場合は、熱水処理を施しことも可能であり、上記処理後に組織溶解液を加える工程により得られた試料溶液を用い、且つ固相として多糖構造を有する有機高分子からなる固相を使用する核酸分離精製方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
(1)固相に核酸を吸着させるための溶液を調製する工程、
(2)上記、固相に核酸を吸着させるための溶液を、固相に接触させて該固相に核酸を吸着させる工程、
(3)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程、及び(4)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程、
を有する核酸分離精製方法において、
上記固相に核酸を吸着させるための溶液が、動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物組織由来の成分に酸又はアルカリ処理をおこなった後、組織溶解液を加えて得られた核酸を含む試料溶液に、さらに前処理液を加えて得られた溶液であり、上記固相が多糖構造を有する有機高分子からなる固相であることを特徴とする核酸分離精製方法。
【請求項2】
(1)固相に核酸を吸着させるための溶液を調製する工程、
(2)上記、固相に核酸を吸着させるための溶液を、固相に接触させて該固相に核酸を吸着させる工程、
(3)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程、及び(4)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程、
を有する核酸分離精製方法において、
上記固相に核酸を吸着させるための溶液が、動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物組織由来の成分に酸又はアルカリ処理をおこなった後、前処理液とタンパク質分解酵素を加えて得られた溶液であり、上記固相が多糖構造を有する有機高分子からなる固相であることを特徴とする核酸分離精製方法。
【請求項3】
上記、酸又はアルカリ処理後に熱水処理による抽出工程を含む請求項1または2に記載の核酸分離精製方法。
【請求項4】
硬タンパク質を含む動物組織が骨、軟骨、歯、腱、皮、爪および毛髪の中から選ばれる、請求項1〜3のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項5】
組織溶解液が、界面活性剤、緩衝剤、核酸安定化剤、アルカリ金属のハロゲン化物、カオトロピック塩、タンパク質分解酵素及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む溶液である、請求項1、3または4に記載の核酸分離精製方法。
【請求項6】
前処理液が、消泡剤、核酸安定化剤、カオトロピック塩、界面活性剤及び緩衝剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む溶液である、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項7】
界面活性剤がノニオン界面活性剤である、請求項5または6に記載の核酸分離精製方法。
【請求項8】
ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン系界面活性剤である、請求項7に記載の核酸分離精製方法。
【請求項9】
ポリオキシエチレン系界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン系界面活性剤である、請求項8に記載の核酸分離精製方法。
【請求項10】
緩衝剤がBisTris(Bis(2−hydoroxyethyl)iminotris(hydroxymethyl)methane)である、請求項5〜9のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
【請求項11】
多糖構造を有する有機高分子が、アセチルセルロースである、請求項1〜10のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項12】
多糖構造を有する有機高分子が、アセチルセルロース又はアセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を、鹸化処理した有機高分子である、請求項1〜10のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項13】
鹸化処理した後の、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物の鹸化率が5%以上である、請求項12に記載の核酸分離精製方法。
【請求項14】
鹸化処理した後の、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物の鹸化率が10%以上である、請求項12に記載の核酸分離精製方法。
【請求項15】
多糖構造を有する有機高分子が、再生セルロースである、請求項1〜10のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項16】
固相が多孔性膜である、請求項1〜15のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項17】
多孔性膜が表裏非対称性の多孔性膜である、請求項16に記載の核酸分離精製方法。
【請求項18】
多孔性膜が平均孔径0.1〜10.0μmの多孔性膜である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
多孔性膜が厚さ10〜500μmの多孔性膜である、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
固相に核酸を吸着させるための溶液が、さらに水溶性有機溶媒を添加して得られる、請求項1〜19のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項21】
水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールから選ばれる少なくとも一つを含む、請求項20に記載の核酸分離精製方法。
【請求項22】
動物組織に組織溶解液を加えて得られた試料溶液から、さらに未溶解の残渣組織成分を取り除く工程を含む、請求項1〜21のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項23】
少なくとも2つの開口を有する容器内に固相を収容した核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う、請求項1〜22のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項24】
(a)固相、
(b)該固相を収容する少なくとも2つの開口を有する容器、及び
(c)該容器の一の開口に結合された圧力差発生装置、
を含む核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う請求項1〜22のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項25】
圧力差発生装置が加圧の装置である請求項24に記載の核酸分離精製方法。
【請求項26】
圧力差発生装置が減圧の装置である請求項24に記載の核酸分離精製方法。
【請求項27】
圧力差発生装置が、容器の一の開口に着脱可能に結合されている請求項24〜26の何
れかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項28】
以下の工程を含む請求項24又は25に記載の核酸分離精製方法。
(1a)動物組織に組織溶解液を加えて処理することで組織を溶解し、核酸を含む試料溶液を調製する工程、
(1b)上記核酸を含む試料溶液に前処理液を加えて、固相に核酸を吸着させるための溶液を調製する工程、
(2a)上記固相に核酸を吸着させるための溶液を、固相を収容する少なくとも2つの開口を有する容器の一の開口に注入する工程、
(2b)上記一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した固相に核酸を吸着させるための溶液を他の開口より排出することにより、該溶液を容器内の固相に接触させて核酸を該固相に吸着させる工程、
(3a)前記一の開口から圧力差発生装置を外し、該一の開口に洗浄液を注入する工程、(3b)上記一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した洗浄液を上記他の開口より排出することにより、洗浄液を容器内の固相に接触させて固相を洗浄する工程、
(4a)前記一の開口から圧力差発生装置を外し、該一の開口に回収液を注入する工程、(4b)上記一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した回収液を前記他の開口より排出させることにより、回収液を容器内の固相に接触させて固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
【請求項29】
上記(4a)の工程の前に、
(3c)固相にDNA分解酵素溶液を接触させた後、洗浄液を用いて固相を洗浄する工程、
を行うことを含む、請求項28に記載の核酸分離精製方法。
【請求項30】
洗浄液が、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれる少なくとも一つを20〜100質量%含む溶液である、請求項1〜29のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項31】
回収液が塩濃度0.5mol/L以下の溶液である、請求項1〜30のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
【請求項32】
(i)核酸分離精製ユニットと、(ii)組織溶解液もしくはタンパク質分解酵素、(iii)前処理液、(iv)洗浄液、ならびに(v)回収液の試薬とを含む請求項1〜31の何れかに記載された方法を行うための試薬キット。
【請求項33】
請求項1〜32の何れかに記載された方法を行うための装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物組織中の核酸を分離精製する方法に関する。より詳細には、本発明は、核酸を分離精製する方法において使用する固相、核酸を含む試料溶液及び処理液、並びにこれらを使用して核酸を分離精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸は、様々な分野で種々の形態で使用されている。例えば、組換え核酸技術の領域においては、核酸をゲノム核酸、核酸プローブ、及びプラスミド核酸の形状で用いることが要求される。
【0003】
診断分野においても、核酸は種々の形態で種々の目的に用いられている。例えば、核酸プローブは、ヒトの病原体の検出及び診断に日常的に用いられている。また核酸は遺伝障害の検出や食品汚染物質の検出にも用いられている。さらに、核酸は遺伝地図の作製やクローニング、遺伝子組換えによる形質発現、遺伝子診断・鑑定におよぶ種々の目的のために、所定の核酸に関する位置確認や同定、単離において日常的に用いられている。
【0004】
しかし、多くの場合、核酸は極めて少量でしか入手できず、そしてその単離と精製との操作が煩雑であり多くの時間を要する。この時間を要する煩雑な工程は、核酸の損失に結びつきやすいという問題があった。また、動物組織、骨、歯、血液、尿及びバクテリアのカルチャーから得られた試料から核酸を精製する場合には、コンタミネーションが生じるという問題があった。
【0005】
上記問題を解決し、簡便かつ効率よく核酸を分離精製する方法の一つとして、固相に核酸を吸着させる溶液及び固相から核酸を脱着させる溶液をそれぞれ用いて、表面に水酸基を有する有機高分子からなる固相に核酸を吸着及び脱着させることによって、核酸を分離精製する方法が、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−128691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したような、核酸を分離精製する方法を実施する際、特に、動物組織を処理した溶液から核酸を分離精製する際には、動物組織から得られる試料溶液に含まれる不要物が多く問題があった。このため、微小の動物組織から目的の核酸を迅速に高収量でかつ高純度で回収することが望まれていた。従って本発明の目的は、動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物組織由来の成分から調製した核酸を含む溶液中の核酸を固相表面に吸着させた後、洗浄等を経て脱着させて核酸を分離精製する方法において、迅速、高収量、高純度で核酸を得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又動物組織由来の成分に酸又はアルカリ性溶液を添加し、組織を軟化させた後、硬タンパク質を含む骨などの組織を用いる場合には熱水処理を施した、動物組織に組織液溶解液を加えて核酸を含む試料溶液を調製する。さらに前処理液を加えて固相に核酸を吸着させるための溶液を調製し、溶液中の核酸を固相に吸着させる際に、固相として多糖構造を有する有機高分子からなる固相を用いることで、目的の核酸が迅速、高収量、高精製度で回収できることを見出した。本発明においては特に、アセチルセルロース又はアセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理した有機高分子からなる固相
を用いることで、劇的に目的の核酸の収量と純度が向上することが判明した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物由来の成分を酸又はアルカリ処理、硬タンパク質を含む骨などの組織を用いる場合には熱水処理を施した、後に組織液溶解液を加えて調製した核酸を含む溶液中の核酸を固相に吸着させるための溶液及び固相から核酸を脱着させる溶液(回収液)をそれぞれ用いて固相に核酸を吸着及び脱着させる工程を含む、核酸分離精製方法において、固相に多糖構造を有する有機高分子からなる固相、好ましくはアセチルセルロース又はアセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理した有機高分子からなる固相を用いることを特徴とする核酸分離精製方法が提供される。
【0009】
本発明は、以下の構成により前記目的を達成したものである。
1.
(1)固相に核酸を吸着させるための溶液を調製する工程、
(2)上記、固相に核酸を吸着させるための溶液を、固相に接触させて該固相に核酸を吸着させる工程、
(3)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程、及び(4)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程、
を有する核酸分離精製方法において、
上記固相に核酸を吸着させるための溶液が、動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物組織由来の成分に酸又はアルカリ処理をおこなった後、組織溶解液を加えて得られた核酸を含む試料溶液に、さらに前処理液を加えて得られた溶液であり、上記固相が多糖構造を有する有機高分子からなる固相であることを特徴とする核酸分離精製方法。
2.
(1)固相に核酸を吸着させるための溶液を調製する工程、
(2)上記、固相に核酸を吸着させるための溶液を、固相に接触させて該固相に核酸を吸着させる工程、
(3)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程、及び(4)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程、
を有する核酸分離精製方法において、
上記固相に核酸を吸着させるための溶液が、動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物組織由来の成分に酸又はアルカリ処理をおこなった後、前処理液とタンパク質分解酵素を加えて得られた溶液であり、上記固相が多糖構造を有する有機高分子からなる固相であることを特徴とする核酸分離精製方法。
3.
上記、酸又はアルカリ処理後に熱水処理による抽出工程を含む前記1または2に記載の核酸分離精製方法。
4.
硬タンパク質を含む動物組織が骨、軟骨、歯、腱、皮、爪および毛髪の中から選ばれる、前記1〜3のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
5.
組織溶解液が、界面活性剤、緩衝剤、核酸安定化剤、アルカリ金属のハロゲン化物、カオトロピック塩、タンパク質分解酵素及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む溶液である、前記1、3または4に記載の核酸分離精製方法。
6.
前処理液が、消泡剤、核酸安定化剤、カオトロピック塩、界面活性剤及び緩衝剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む溶液である、前記1〜5のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
7.
界面活性剤がノニオン界面活性剤である、前記5または6に記載の核酸分離精製方法。8.
ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン系界面活性剤である、前記7に記載の核酸分離精製方法。
9.
ポリオキシエチレン系界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン系界面活性剤である、前記8に記載の核酸分離精製方法。
10.
緩衝剤がBisTris(Bis(2−hydoroxyethyl)iminotris(hydroxymethyl)methane)である、前記5〜9のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
11.
多糖構造を有する有機高分子が、アセチルセルロースである、前記1〜10のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
12.
多糖構造を有する有機高分子が、アセチルセルロース又はアセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を、鹸化処理した有機高分子である、前記1〜10のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
13.
鹸化処理した後の、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物の鹸化率が5%以上である、前記12に記載の核酸分離精製方法。
14.
鹸化処理した後の、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物の鹸化率が10%以上である、前記12に記載の核酸分離精製方法。
15.
多糖構造を有する有機高分子が、再生セルロースである、前記1〜10のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
16.
固相が多孔性膜である、前記1〜15のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
17.
多孔性膜が表裏非対称性の多孔性膜である、前記16に記載の核酸分離精製方法。
18.
多孔性膜が平均孔径0.1〜10.0μmの多孔性膜である、前記16又は17に記載の方法。
19.
多孔性膜が厚さ10〜500μmの多孔性膜である、前記16〜18のいずれかに記載の方法。
20.
固相に核酸を吸着させるための溶液が、さらに水溶性有機溶媒を添加して得られる、前記1〜19のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
21.
水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールから選ばれる少なくとも一つを含む、前記20に記載の核酸分離精製方法。
22.
動物組織に組織溶解液を加えて得られた試料溶液から、さらに未溶解の残渣組織成分を取り除く工程を含む、前記1〜21のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
23.
少なくとも2つの開口を有する容器内に固相を収容した核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う、前記1〜22のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
24.
(a)固相、
(b)該固相を収容する少なくとも2つの開口を有する容器、及び
(c)該容器の一の開口に結合された圧力差発生装置、
を含む核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行う前記1〜22のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
25.
圧力差発生装置が加圧の装置である前記24に記載の核酸分離精製方法。
26.
圧力差発生装置が減圧の装置である前記24に記載の核酸分離精製方法。
27.
圧力差発生装置が、容器の一の開口に着脱可能に結合されている前記24〜26の何れかに記載の核酸分離精製方法。
28.
以下の工程を含む前記24又は25に記載の核酸分離精製方法。
(1a)動物組織に組織溶解液を加えて処理することで組織を溶解し、核酸を含む試料溶液を調製する工程、
(1b)上記核酸を含む試料溶液に前処理液を加えて、固相に核酸を吸着させるための溶液を調製する工程、
(2a)上記固相に核酸を吸着させるための溶液を、固相を収容する少なくとも2つの開口を有する容器の一の開口に注入する工程、
(2b)上記一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した固相に核酸を吸着させるための溶液を他の開口より排出することにより、該溶液を容器内の固相に接触させて核酸を該固相に吸着させる工程、
(3a)前記一の開口から圧力差発生装置を外し、該一の開口に洗浄液を注入する工程、(3b)上記一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した洗浄液を上記他の開口より排出することにより、洗浄液を容器内の固相に接触させて固相を洗浄する工程、
(4a)前記一の開口から圧力差発生装置を外し、該一の開口に回収液を注入する工程、(4b)上記一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した回収液を前記他の開口より排出させることにより、回収液を容器内の固相に接触させて固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
29.
上記(4a)の工程の前に、
(3c)固相にDNA分解酵素溶液を接触させた後、洗浄液を用いて固相を洗浄する工程、
を行うことを含む、前記28に記載の核酸分離精製方法。
30.
洗浄液が、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれる少なくとも一つを20〜100質量%含む溶液である、前記1〜29のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
31.
回収液が塩濃度0.5mol/L以下の溶液である、前記1〜30のいずれかに記載の核酸分離精製方法。
32.
(i)核酸分離精製ユニットと、(ii)組織溶解液もしくはタンパク質分解酵素、(iii)前処理液、(iv)洗浄液、ならびに(v)回収液の試薬とを含む前記1〜31の何れかに記載された方法を行うための試薬キット。
33.
前記1〜32の何れかに記載された方法を行うための装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、動物細胞から調製した核酸を含む試料溶液から純度の高い核酸を高収量で効率よく分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による核酸分離精製方法について具体的に説明する。
本発明の核酸分離精製方法は、
(1)組織、硬タンパク質を含む組織又は組織由来の成分をアルカリ又は酸処理おこなう工程
(2)硬タンパク質を含む骨など組織を用いるときのみ熱水処理をおこなう工程
(3)固相に核酸を吸着させるための溶液(以下、「核酸吸着用溶液」とも称する)を調製する工程(以下、「溶液調製工程」とも称する)、
(4)上記、固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)を固相に接触させて、該固相に核酸を吸着させる工程(以下、「吸着工程」とも称する)、
(5)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程(以下、「洗浄工程」とも称する)、及び
(6)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程(以下、「回収工程」とも称する)、
を少なくとも含むものである。
すなわち、本発明では、動物組織から調製した核酸を含む試料溶液に前処理液を加えて、固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)としたのち、この核酸吸着用溶液を固相に接触させることにより、試料溶液中の核酸を固相に吸着させ、洗浄液により洗浄し、次いで、固相に吸着させた核酸を、回収液を用いて固相から脱着させる。好ましくは、動物組織から調製した核酸を含む試料溶液は、動物組織に界面活性剤、緩衝剤、核酸安定化剤、アルカリ金属のハロゲン化物タンパク質分解酵素及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む組織溶解液を加える工程で得られる。また、核酸吸着用溶液は、得られた核酸を含む試料溶液に、消泡剤、核酸安定化剤、カオトロピック塩、界面活性剤及び緩衝剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む前処理液を添加した溶液であることが好ましい。
【0012】
<溶液調製工程>
〔核酸を含む試料溶液〕
試料溶液における「試料」とは、核酸を含む任意の動物組織から得られる試料を意味する。試料中の核酸の種類は1種類でも2種類以上の複数でもよい。個々の核酸の長さも特に限定されず、例えば、数bp〜数Mbpの任意の長さの核酸を使用することができる。取り扱い上の観点からは、核酸の長さは一般的には、数bp〜数百kbp程度である。
【0013】
本発明において「核酸」は、一本鎖又は二本鎖の、DNA又はRNAのいずれでもよく、また、分子量の制限もない。
【0014】
[動物組織とその溶解]
本発明において使用できる動物組織に制限はないが、腎臓、肝臓、膵臓、心臓、肺、脳などの動物の臓器及びその一部、あるいは動物の尾、耳などの体の一部が対象となる。
また、組織から分離された細胞や、動物それ自体や組織から得られる液体・固体成分も対象にできる。培養された細胞、自立増殖できる細胞、細胞内で増殖できる粒子も対象にできる。また、動物組織を擦って採取した物も対象にできる。
採取した試料は、そのまま使用しても、凍結して使用しても良い。また、凍結保存された物でも良く、そのままでも解凍して使用しても良い。さらには、保存溶液に保存された物、薄片状に保存された物、樹脂などに包埋された物なども使用できる。試料は後述する組織溶解液を保存溶液として用いて保存しても良い。
【0015】
動物組織は、一般的に固体であるため、処理液で溶解するか又は物理的に破壊することが必要となる。本発明においては、最初にこれらの動物組織、硬タンパク質を含む動物組織又は動物組織由来の成分に酸又はアルカリを加えてこれらを軟化させる。この軟化処理後に硬タンパク質を含む骨などの組織から核酸を抽出する場合には熱水処理を施した後、組織溶解液を加える工程により溶解する。この際、動物組織を切断や凍結粉砕により、予め小片にしておくことが好ましい。例えば酸処理は1〜10%、好ましくは1〜5%、更に好ましくは1〜3%の酸溶液に短時間1〜48時間、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは1〜12時間浸す。アルカリ処理は1〜10%、好ましくは1〜5%、更に好ましくは1〜3%のアルカリ溶液に1〜100日間、好ましくは10〜50日間、更に好ましくは15〜30日間浸す。熱水処理は30〜100℃、好ましくは40〜80℃、更に好ましくは45〜60℃で1〜10時間おこなわれる。酸又はアルカリ処理及び熱水処理後、上記のような動物組織に組織溶解液を加え、溶液の温度を30℃〜75℃、好ましくは40℃〜65℃、更に好ましくは50℃〜60℃にして溶解する、例えば55℃に保った状態で、数時間から一晩あるいは数日間、シェーカー等を用いて溶液を攪拌しながら放置することで行うことができる。静置し時々攪拌してもよい。組織の溶解状態に応じて、組織溶解液の組成濃度を変えたり、処理温度、撹拌数、処理時間を変更したりすることができ、また組織溶解液に浸して静置しておくこともできる。また、骨など石灰化した組織を用いる場合は、脱灰することもできる。さらに別の方法として、組織を物理的な手段、例えばミルやホモジナイザーなどを利用して動物組織を断片化する工程を利用することもできる。
組織溶解液は目安として0.1mg〜200mg組織当たり、1〜2000μl使用でき、組織の状態により前記範囲より増減できる。また、組織から分離された液体の場合1μl〜2ml当たり、1〜2000μl使用でき、液体の状態により前記範囲より増減できる。細胞や粒子の場合10個〜1x108個当たり、1〜2000μl使用でき、細胞や粒子の状態により前記範囲より増減できる。
そのpHは、4〜12の範囲で使用でき、好ましくは6〜11、より好ましくは7.5〜9.5で用いる事ができる。これらの増減範囲は、抽出操作に適した体積で増減できる。
組織溶解液の組成は[組織溶解液及び前処理液の組成]において後述する。
【0016】
本発明では、上記のように、動物組織に酸又はアルカリ溶液及び組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液を用いる。又骨などの石灰化した組織は熱水処理をおこなうこともできる。これらの液に、未溶解の残渣組織成分が残った場合は、さらに遠心分離やフィルター濾過などで、未溶解の残渣組織成分を取り除く工程を行うのが好ましい。
【0017】
また、回収する目的の核酸がDNAの場合は、上記の動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液に、さらにRNA分解酵素溶液を添加することで、予めRNAを分解することもできる。また、目的の核酸がRNAの場合は、上記の動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液に、DNA分解酵素溶液を添加することで、予めDNAを分解することもできる。
酵素溶液には、緩衝剤を含有して良く、また1価または2価のアルカリ金属塩を含有しても良く、該アルカリ金属は1価のものと2価のものを組み合わせて用いてもよく、グリセロールなどの多価アルコール類を含有しても良い。
例えば、10〜100mg/mlのRNaseを組織溶解液200μl当たり0.1〜100μl添加する事ができ、試料の状態により前記範囲より増減できる。好ましくは、100mg/mlのRNaseを組織溶解液200μl当たり1〜50μl加えることができる。
これら酵素は、天然物でもよく、また、組換え体でも良く、複数混合して用いても良い。
【0018】
〔核酸吸着用溶液〕
上記の動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液は、その溶液中の核酸を可溶化するために前処理液で処理される。これにより、さらに細胞膜及び核膜が溶解されて、核酸が試料溶液中に分散して、核酸吸着用溶液となる。
前処理液は目安として、溶解した組織に対し溶解するとき使用した質量0.1mg〜200mg当たり、1〜2000μl使用でき、溶解した組織の量により前記範囲より増減できる。また、組織から分離された液体の場合1μl〜2ml当たり、1〜2000μl使用でき、液体の状態により前記範囲より増減できる。細胞や粒子の場合10個〜1x108個当たり、1〜2000μl使用でき、細胞や粒子の状態により前記範囲より増減できる。これらの増減範囲は、抽出操作に適した体積で増減できる。
そのpHは、3〜12の範囲で使用でき、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7で用いる事ができる。
前記の動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液と前処理液とを混合する場合、攪拌装置により30〜3000rpmで1秒から30分攪拌することができる。また、転倒混和を1回〜30回行う事もできる。また、ピペッティング操作を1回〜50回行う事ができる。また、タッピング操作を1回〜50回行うことができる。混合の方法は、これらのうち1つを行なってもよく、また、これらを併用してもよい。良く混合することが好ましい。
混合の後に、加温してもよい。例えば、30℃〜95℃に1分〜60分加温しても良い。好ましくは50℃〜75℃に1分〜15分加温することができる。
【0019】
[組織を軟化させる溶液の組成]
本発明で用いられる酸又はアルカリ溶液は、1〜10%(重量%)の溶液である。
酸溶液は塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸および酢酸、クエン酸などの有機酸の中から選ばれる少なくとも1つを含む溶液であることが好ましい。また、アルカリ溶液は金属の水酸化物、アミノ基を有する化合物の中から選ばれる少なくとも1つを含む溶液であることが好ましい。
【0020】
[組織溶解液及び前処理液の組成]
本発明で用いられる前記組織溶解液は、界面活性剤、緩衝剤、核酸安定化剤、アルカリ金属のハロゲン化物、カオトロピック塩、タンパク質分解酵素及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む溶液であることが好ましい。また上記前処理液は、消泡剤、核酸安定化剤、カオトロピック塩、界面活性剤及び緩衝剤の中から選ばれる少なくとも一つを含む溶液であることが好ましい。
【0021】
(界面活性剤)
本発明で用いる界面活性剤の具体例としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が好ましく用いられる。
【0022】
アニオン界面活性剤としては、硫酸エステル塩系界面活性剤、スルホン酸塩系界面活性剤、カルボン酸塩系界面活性剤、リン酸エステル塩系界面活性剤が挙げられ、アルキル硫酸エステル塩系界面活性剤が好ましい。特にドデシル硫酸ナトリウムが好ましい。好ましくは組織溶解液に含有され組織の溶解に作用させることができる。
【0023】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミドが挙げられ、ポリオキシエチレン系界面活性剤が好ましい。ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチ
レンアルキルエーテル系界面活性剤である。ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル系界面活性剤のなかでも、POEデシルエーテル、POEラウリルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEアルキレンデシルエーテル、POEソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、POEアルキルアミン、POEアセチレングリコールがさらに好ましい。これらの中でも特に好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタン系界面活性剤である。核酸を膜に吸着させるのに特に効果が有り好ましい。
【0024】
これらの界面活性剤は、単独で又は複数組み合わせて用いることができる。界面活性剤を使用できる濃度は、前処理液中に0〜100質量%となる範囲で選択できる。界面活性剤の前処理液における濃度は0.1〜20質量%であることが好ましい。作用濃度として0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
アニオン界面活性剤の場合は、前処理液中に、0.01〜50質量%となるように加える事ができる。好ましくは0.1〜20質量%の範囲で選択できる。作用濃度として0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
ノニオン界面活性剤の場合は、前処理液中に、0.01〜50質量%となるように加える事ができる。好ましくは0.1〜20質量%の範囲で選択できる。作用濃度として0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
また組み合わせて使用する場合にも好ましくは、アニオン界面活性剤が前処理液中に、0.1〜20質量%の範囲で、ノニオン界面活性剤が前処理液中に、0.1〜20質量%の範囲で含まれる範囲で選択できる。アニオン界面活性剤の作用濃度として0.05〜10質量%の範囲が好ましい。ノニオン界面活性剤の作用濃度として0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
組織溶解液における界面活性剤の濃度は、組織を溶解して膜へ吸着させる時の界面活性剤の濃度で、0〜100質量%となる範囲で選択でき、0.1〜20質量%であることが好ましい。作用濃度として0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
アニオン界面活性剤の場合は、0.01〜50質量%となるように加える事ができる。好ましくは0.1〜20質量%の範囲で選択できる。作用濃度はとして0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
ノニオン界面活性剤の場合は、0.01〜50質量%となるように加える事ができる。好ましくは0.1〜20質量%の範囲で選択できる。作用濃度はとして0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
また組み合わせて使用する場合にも好ましくは、アニオン界面活性剤が前処理液中に、0.1〜20質量%の範囲で、ノニオン界面活性剤が前処理液中に、0.1〜20質量%の範囲で含まれる範囲で選択できる。アニオン界面活性剤の作用濃度はとして0.05〜10質量%の範囲が好ましい。ノニオン界面活性剤の作用濃度はとして0.05〜10質量%の範囲が好ましい。
【0025】
(緩衝剤)
本発明で用いる緩衝剤の具体例としては、通常用いられるpH緩衝剤(buffer)を挙げることができる。好ましくは、生化学試験に通常用いられるpH緩衝剤が挙げられる。このような緩衝剤としては、クエン酸塩、リン酸塩又は酢酸塩からなる緩衝剤、Tris−HCl、TE(Tris-HCl/EDTA)、TBE(Tris-Borate/EDTA)、TAE(Tris-Acetate/EDTA)、グッド緩衝剤が挙げられる。グッド緩衝剤としては、MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)、Bis−Tris{Bis(2-hydoroxyethyl)iminotris(hydroxymethyl)methane}、HEPES{2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic asid}、PIPES{Piperaxine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)}、ACES{N-(2-Acetamino)-2-aminoethanesulfonic acid}、CAPS{N-Cyclohexyl-3-aminopropane-sulfonic acid}、TES{N-Tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethane-sulfonic acid}が挙げられる。
これらの緩衝剤は、前記組織溶解液及び前処理液中の濃度は1〜300mmol/Lであることが好ましい。より好ましくは、20〜150mmol/Lの範囲で選択できる。
【0026】
(核酸安定化剤)
本発明で用いる核酸安定化剤の具体例としては、ヌクレアーゼの活性を不活性化させる作用を有するものが挙げられる。動物組織によっては、核酸を分解するヌクレアーゼ等が含まれていることがあり、核酸をホモジナイズするとこのヌクレアーゼが核酸に作用し、収量が激減することがある。前記核酸安定化剤は、動物組織中の核酸を安定に存在させることができ、好ましい。
【0027】
ヌクレアーゼの活性を不活性化させる作用を有する核酸安定化剤としては、一般的に還元剤として使用される化合物を用いることができる。還元剤としては、水素、ヨウ化水素、硫化水素、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化化合物、アルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛等の電気的陽性の大きい金属、又はそれらのアマルガム、アルデヒド類、糖類、ギ酸、シュウ酸などの有機酸化物、メルカプト化合物等が挙げられる。中でもメルカプト化合物が好ましい。メルカプト化合物としては、N−アセチルシステイン、メルカプトエタノールや、アルキルメルカプタン等が挙げられる。特に、β−メルカプトエタノールが好ましい。メルカプト化合物は単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
核酸安定化剤は、前記組織溶解液及び前処理液における濃度は0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.3〜15質量%で、用いることができる。
【0028】
また、ヌクレアーゼの活性を不活性化させる作用を有する核酸安定化剤として、キレート剤を用いることができる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、EGTA等を挙げることができる。キレート剤は単独で又は複数組み合わせて用いることができる。例えば、EDTAは1〜300mmol/Lの作用濃度範囲で用いることができる。好ましくは組織溶解液に含有させることにより、内因性のヌクレアーゼ活性の不活化に作用させることができる。またキレート剤の前記組織溶解液及び前処理液における濃度は、1〜1000mmol/Lであることが好ましく、より好ましくは5〜100mmol/Lである。
【0029】
(アルカリ金属のハロゲン化物)
本発明で用いるアルカリ金属のハロゲン化物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、リチウムのハロゲン化物、好ましくは塩化物である。アルカリ金属のハロゲン化物は、前記組織溶解液における濃度は1〜200mMで、用いることができる。
【0030】
(タンパク質分解酵素)
本発明で用いるタンパク質分解酵素の具体例としては、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼが挙げられ、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を好ましく用いることができる。また、タンパク質分解酵素は、複数種以上のタンパク質分解酵素の混合物も好ましく用いることができる。
セリンプロテアーゼとしては、特に限定されず、例えばプロテアーゼKなどを好ましく用いることができる。システインプロテアーゼとしては、特に限定されず、例えばパパイン、カテプシン類などを好ましく用いることができる。金属プロテアーゼとしては、特に限定されず、例えばカルボキシペプチターゼ等を好ましく用いることができる。
【0031】
タンパク質分解酵素の前記組織溶解液における濃度は、添加時の全容積1mLあたり好ましくは0.001〜10IU、より好ましくは0.01〜1IUで用いることができる。また作用濃度として0.05〜20mg/mLで用いることができる。これら酵素は、天然物でもよくまた、組換え体でも良く、混合して用いても良い。安定的にタンパク質分
解酵素の作用を維持するために、組織溶解液に緩衝剤を加えることもできる。例えばTris−HClを1〜200mmol/L含有させることができる。
【0032】
また、タンパク質分解酵素は、核酸分解酵素を含まないタンパク質分解酵素を好ましく用いることができる。また、安定化剤を含んだタンパク質分解酵素を好ましく用いることができる。安定化剤としては、金属イオンを好ましく用いることができる。具体的には、マグネシウムイオンやカルシウムイオンが好ましく、例えば塩化マグネシウムや酢酸カルシウムなどの形で添加することができる。タンパク質分解酵素の安定化剤を含ませることにより、核酸の回収に必要なタンパク質分解酵素の微量化が可能となり、核酸の回収に必要なコストを低減することができる。タンパク質分解酵素の溶液に緩衝液を含有させたり、多価アルコールを加えたりすることができる。例えば、緩衝液としてTris−HClを0.1〜200mmol/L含有させたり、多価アルコールとしてグリセロールを1〜70容量%含有させたりすることができる。これらは単独でも組み合わせて用いることができる。
【0033】
(消泡剤)
本発明で用いる消泡剤の具体例としては、シリコン系消泡剤(例えば、シリコーンオイル、ジメチルポリシロキサン、シリコーンエマルジョン、変性ポリシロキサン、シリコーンコンパウンドなど)、アルコール系消泡剤(例えば、アセチレングリコール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、高級アルコール、ポリオキシアルキレングリコールなど)、エーテル系消泡剤(例えば、ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ−3−ヘプチルソルビトールなど)、油脂系消泡剤(例えば、動植物油など)、脂肪酸系消泡剤(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸など)、金属セッケン系消泡剤(例えば、ステアリン酸アルミ、ステアリン酸カルシウムなど)、脂肪酸エステル系消泡剤(例えば、天然ワックス、トリブチルホスフェートなど)、リン酸エステル系消泡剤(例えば、オクチルリン酸ナトリウムなど)、アミン系消泡剤(例えば、ジアミルアミンなど)、アミド系消泡剤(例えば、ステアリン酸アミドなど)、その他の消泡剤(例えば、硫酸第二鉄、ボーキサイトなど)などが挙げられる。好ましくは、シリコン系消泡剤、アルコール系消泡剤である。これらの消泡剤は、単独または組み合わせて用いてもよい。特に好ましくは、消泡剤として、シリコン系消泡剤とアルコール系消泡剤の2つの成分を組み合わせて使用することである。また、アルコール系消泡剤としては、アセチレングリコール系界消泡剤を使用することが好ましい。
【0034】
消泡剤は、得られた核酸吸着用溶液に直接添加してもよく、また前記の組織溶解液及び/又は前処理液に含有されていてもよい。消泡剤を前処理液に含有しない場合には、消泡剤を添加する時期は、前処理液を使用する前でも後でもよい。また、組織溶解液を使用する前に添加してもよい。
消泡剤は、組織溶解液及び/又は前処理液中における濃度は、0〜10質量%の範囲で選択できる。核酸吸着用溶液中における濃度は、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0035】
(カオトロピック塩)
本発明で用いるカオトロピック塩の具体例としては、グアニジン塩、イソチアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等を使用することができる。中でもグアニジン塩が好ましい。グアニジン塩としては、塩酸グアニジン、イソチオシアン酸グアニジン、チオシアン酸グアニジンが挙げられ、中でも塩酸グアニジンが好ましい。これらの塩は単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。前記の組織溶解液や前処理液、そして本発明の核酸の分離精製方法によって得られた核酸精製液中のカオトロピック塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4mol/L、さらに好ましくは、1〜3mol/Lである。
カオトロピック塩の代わりに、カオトロピック物質として尿素を用いることもできる。尿素は0〜10mol/Lの範囲で選択して良い。
【0036】
固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)は、さらに、水溶性有機溶媒を添加して得られた溶液であることが好ましい。すなわち、動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液に前処理液を加えて処理し、さらにこれに水溶性有機溶媒を添加して、核酸吸着用溶液を得ることが好ましい。核酸が可溶化し分散した核酸吸着用溶液中に、さらに水溶性有機溶媒を含有させることで、固相と接触させたとき、該核酸吸着用溶液中の核酸が効果的に固相に吸着されるため、好ましい。さらには、得られた核酸吸着用溶液中に塩が存在することが、可溶化された核酸を、より効果的に、固相に吸着させることができ好ましい。
【0037】
水溶性有機溶媒と塩の存在により、核酸の周りに存在する水分子の水和構造が破壊され、核酸は不安定な状態で可溶化することになる。この状態の核酸を、表面に水酸基を有する多糖構造の有機高分子からなる固相と接触させると、核酸表面上の極性基と固相表面の極性基間で相互作用し、核酸は固相表面上に吸着するものと考えられる。本発明の方法では、上記のとおり、可溶化した核酸吸着用溶液に水溶性有機溶媒を混合することと、得られた溶液中に塩が存在することが、核酸を不安定な状態にさせることができるため好ましい。
【0038】
(水溶性有機溶媒)
このような水溶性有機溶媒としては、アルコール類、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの中でも、アルコール類が好ましい。アルコール類としては、1級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれでもよい。中でもメタノール、エタノール、プロパノール及びその異性体、ブタノール及びその異性体を好ましく用いることができる。エタノールがさらに好ましい。これらの水溶性有機溶媒は単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これら水溶性有機溶媒の核酸吸着用溶液における最終濃度は、5〜90質量%であることが好ましい。さらに好ましくは20質量%〜60質量%である。エタノールを用いるとき、その添加濃度は、この範囲内で、且つ擬集物を生じない範囲でできるだけ高くすることが特に好ましい。
水溶性有機溶媒は、目安として、溶解した組織に対し溶解するとき使用した質量0.1mg〜200mg当たり、1〜2000μl使用でき、溶解した組織の量により前記範囲より増減できる。また、組織から分離された液体の場合1μl〜2ml当たり、1〜2000μl使用でき、液体の状態により前記範囲より増減できる。細胞や粒子の場合10個〜1x108個当たり、1〜2000μl使用でき、細胞や粒子の状態により前記範囲より増減できる。これらの増減範囲は、抽出操作に適した体積で増減できる。
水溶性有機溶媒は、前記したように前処理液を加えた後に単独で水溶性有機溶媒を加えてもよく、また前記処理液と混合してから動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液に加えても良い。さらには、また前記処理液と混合してから動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液に加え、その後でさらに水溶性有機溶媒を単独で加えても良い。
水溶性有機溶媒を添加した後に混合する場合、攪拌装置により30〜3000rpmで1秒から30分攪拌することができる。また、転倒混和を1回〜30回行う事もできる。また、ピペッティング操作を1回〜50回行う事ができる。また、タッピング操作を1回〜50回行うことができる。これらのうち1つを行ってもよく、また、これらを併用してもよい。良く混合することが好ましい。
【0040】
(核酸吸着用溶液中の塩)
核酸吸着用溶液中に存在することが好ましい塩としては、各種カオトロピック物質(グアニジウム塩、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム)や塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化アンモニウム等が挙げられ、特にグアニジウム塩が、細胞膜の溶解と核酸の可溶化の効果を併有するので特に好ましい。
【0041】
得られる核酸吸着用溶液のpHは、好ましくはpH3〜10、より好ましくはpH4〜9、さらに好ましくはpH5〜8のものが用いられる。
温度は、5℃〜50℃でよく、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜35℃の範囲から選択できる。
【0042】
また、得られる核酸吸着用溶液は、その表面張力が0.05J/m2以下であることが好ましく、粘度は1〜10000mPaであることが好ましく、比重は0.8〜1.2の範囲であることが好ましい。この範囲の溶液にすることで、吸着工程において、核酸吸着用溶液を前記固相に接触させて、核酸を吸着させた後に残った溶液を、洗浄工程において除去しやすくする。
【0043】
<吸着工程>
次ぎに、液中に核酸が可溶化し分散している、固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)を固相に接触させ、該固相に核酸を吸着させる。
【0044】
〔固相〕
本発明方法においては、多糖構造を有する有機高分子からなる固相が用いられる。多糖構造を有する有機高分子は、イオン結合が実質的に関与しない相互作用で核酸を吸着することができる。「イオン結合が実質的に関与しない」とは、固相側の使用条件で「イオン化」していないことを意味し、環境の極性を変化させることで、核酸と固相が引き合うようになると推定される。これにより分離性能に優れ、しかも洗浄効率よく、核酸を単離精製することができる。多糖構造を有する有機高分子は、親水基を有するため、環境の極性を変化させることで、核酸と固相の親水基同士が引きあうようになると推定される。
【0045】
親水基とは、水との相互作用を持つことができる有極性の基(原子団)を指し、核酸の吸着に関与する全ての基(原子団)が当てはまる。親水基としては、水との相互作用の強さが中程度のもの(化学大事典、共立出版株式会社発行、「親水基」の項の「あまり親水性の強くない基」参照)がよく、例えば、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、オキシエチレン基などを挙げることができる。好ましくは水酸基である。
【0046】
(多糖構造を有する有機高分子)
多糖構造を有する有機高分子としては、セルロース、ヘミセルロース、デキストラン、アガロース、デキストリン、アミロース、アミロペクチン、デンプン、グリコーゲン、プルラン、マンナン、グルコマンナン、リケナン、イソリケナン、ラミナラン、カラギーナン、キシラン、フルクタン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、キチン、キトサン等を好ましく用いることができる。これらの多糖構造の誘導体を用いてもよい。例えば、多糖構造の水酸基が任意の置換度で、エステル化したもの、エーテル化したもの、ハロゲン化したものが挙げられる。多糖構造及びその誘導体の少なくともいずれかであれば前記に挙げた材料に限定されることなく用いることができる。これらの誘導体は、従来公知の方法で製造することができる。これらの誘導体は、従来公知の方法で製造することができる。特にエステル誘導体を好ましく用いることができる。また、エステル誘導体の鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0047】
上記多糖構造のエステル誘導体におけるエステルとしては、カルボン酸エステル、硝酸
エステル、硫酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ピロリン酸エステルが挙げられ、エステル誘導体がこれらのエステルから選ばれる少なくとも一つであるとが好ましい。また、これらエステル誘導体の鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0048】
上記カルボン酸エステルとしては、アルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルが挙げられ、エステルとしてカルボン酸エステルを用いる場合には、これらのカルボン酸エステルから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。また、これらカルボン酸エステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0049】
上記アルキルカルボニルエステルのアルキルカルボニル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、バレル基、ペプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基が挙げられ、カルボン酸エステルとしてアルキルカルボニルエステルを用いる場合には、これらのアルキルカルボニル基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。また、これらアルキルカルボニルエステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0050】
上記アルケニルカルボニルエステルのアルケニルカルボニル基としては、アクリル基、メタクリル基が挙げられ、カルボン酸エステルとしてアルケニルカルボニルエステルを用いる場合には、これらのアルケニルカルボニル基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。また、これらアルケニルカルボニルエステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0051】
上記芳香族カルボニルエステルの芳香族カルボニル基としては、ベンゾイル基、ナフタロイル基が挙げられ、カルボン酸エステルとして芳香族カルボニルエステルを用いる場合には、これらの芳香族カルボニル基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。また、これら芳香族カルボニルエステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0052】
前記硝酸エステルとしては、ニトロセルロース、ニトロヘミセルロース、ニトロデキストラン、ニトロアガロース、ニトロデキストリン、ニトロアミロース、ニトロアミロペクチン、ニトログリコーゲン、ニトロプルラン、ニトロマンナン、ニトログルコマンナン、ニトロリケナン、ニトロイソリケナン、ニトロラミナラン、ニトロカラギーナン、ニトロキシラン、ニトロフルクタン、ニトロアルギン酸、ニトロヒアルロン酸、ニトロコンドロイチン、ニトロキチン、ニトロキトサンなどが挙げられる。また、これら硝酸エステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0053】
前記硫酸エステルとしては、セルロース硫酸、ヘミセルロース硫酸、デキストラン硫酸、アガロース硫酸、デキストリン硫酸、アミロース硫酸、アミロペクチン硫酸、グリコーゲン硫酸、プルラン硫酸、マンナン硫酸、グルコマンナン硫酸、リケナン硫酸、イソリケナン硫酸、ラミナラン硫酸、カラギーナン硫酸、キシラン硫酸、フルクタン硫酸、アルギン酸硫酸、ヒアルロン酸硫酸、コンドロイチン硫酸、キチン硫酸、キトサン硫酸などが挙げられる。また、これら硫酸エステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0054】
前記スルホン酸エステルとしては、アルキルスルホン酸エステル、アルケニルスルホン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、芳香族アルキルスルホン酸エステルが挙げられ、エステルとしてスルホン酸エステルを用いる場合には、これらのスルホン酸エステルから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。また、これらスルホン酸エステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0055】
前記リン酸エステルとしては、セルロースリン酸、ヘミセルロースリン酸、デキストランリン酸、アガロースリン酸、デキストリンリン酸、アミロースリン酸、アミロペクチンリン酸、グリコーゲンリン酸、プルランリン酸、マンナンリン酸、グルコマンナンリン酸、リケナンリン酸、イソリケナンリン酸、ラミナランリン酸、カラギーナンリン酸、キシランリン酸、フルクタンリン酸、アルギン酸リン酸、ヒアルロン酸リン酸、コンドロイチンリン酸、キチンリン酸、キトサンリン酸が挙げられる。また、これらリン酸エステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0056】
前記ホスホン酸エステルとしては、セルロースホスホン酸、ヘミセルロースホスホン酸、デキストランホスホン酸、アガロースホスホン酸、デキストリンホスホン酸、アミロースホスホン酸、アミロペクチンホスホン酸、グリコーゲンホスホン酸、プルランホスホン酸、マンナンホスホン酸、グルコマンナンホスホン酸、リケナンホスホン酸、イソリケナンホスホン酸、ラミナランホスホン酸、カラギーナンホスホン酸、キシランホスホン酸、フルクタンホスホン酸、アルギン酸ホスホン酸、ヒアルロン酸ホスホン酸、コンドロイチンホスホン酸、キチンホスホン酸、キトサンホスホン酸などが挙げられる。また、これらホスホン酸エステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0057】
前記ピロリン酸エステルとしては、セルロースピロリン酸、ヘミセルロースピロリン酸、デキストランピロリン酸、アガロースピロリン酸、デキストリンピロリン酸、アミロースピロリン酸、アミロペクチンピロリン酸、グリコーゲンピロリン酸、プルランピロリン酸、マンナンピロリン酸、グルコマンナンピロリン酸、リケナンピロリン酸、イソリケナンピロリン酸、ラミナランピロリン酸、カラギーナンピロリン酸、キシランピロリン酸、フルクタンピロリン酸、アルギン酸ピロリン酸、ヒアルロン酸ピロリン酸、コンドロイチンピロリン酸、キチンピロリン酸、キトサンピロリン酸などが挙げられる。また、これらピロリン酸エステルの鹸化物も好適なものとして挙げられる。
【0058】
前記多糖構造のエーテル誘導体におけるエーテルとしては、多糖構造がセルロースの場合のエーテルの例を以下に挙げるが、多糖構造の種類、エーテルの種類を含めてこれらに限定されない。これらのエーテルには、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチル−カルバモイルエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルバモイルエチルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースである。
【0059】
前記多糖構造の水酸基が、任意の置換度でハロゲン化されたものについても好ましく用いることができる。
【0060】
多糖構造を有する有機高分子として好ましくは、アセチルセルロースが挙げられ、更にアセチル価の異なるアセチルセルロース混合物が挙げられる。アセチル価の異なるアセチルセルロース混合物として、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物を好ましく使用することができる。
【0061】
特にトリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物が好ましい。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合比(質量比)は、99:1〜1:99であることが好ましく、90:10〜50:50であることがより好ましい。
【0062】
多糖構造を有する有機高分子として好ましく用いられるアセチルセルロースの中でも、
特開2003−128691号公報に記載の、アセチルセルロースの表面鹸化物が特に好ましい。アセチルセルロースの表面鹸化物(以下、単に「鹸化物」ということもある。)としては、アセチル価の異なるアセチルセルロース混合物を鹸化処理したものが挙げられ、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物を好ましく使用することができる。より好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物を使用することであり、その混合比(質量比)もアセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物に前記したと同じ範囲である。この場合、鹸化処理の程度(鹸化率)で固相表面の水酸基の量(密度)をコントロールすることができるので好ましい。核酸の分離効率向上の観点から、水酸基の量(密度)が多い方が好ましい。鹸化処理により得られる固相の鹸化率(表面鹸化率)が5%以上100%以下であることが好ましく、10%以上100%以下であることが更に好ましい。また、固相における水酸基を有する表面積を大きくするという観点から、アセチルセルロースを鹸化処理して固相とすることが好ましい。固相は、表裏対称性の多孔性膜であってもよいが、表裏非対称性の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0063】
上記した鹸化物を得るには、鹸化処理を行う。ここで、鹸化処理とは、エステル基を有する有機高分子を鹸化処理液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)に接触させることをいう。これにより、鹸化処理液に接触した部分、すなわち、有機材料の表面が鹸化される。アセチルセルロースの場合には、鹸化処理液に接触した部分は、再生セルロースとなり水酸基が導入される。こうして作製された再生セルロースは、本来のセルロースとは、結晶状態等の点で異なっている。本発明において固相として、再生セルロースを含む固相を用いることが特に好ましい。
【0064】
また、鹸化率を変えるには、水酸化ナトリウムの濃度を変えて鹸化処理を行えばよい。鹸化率は、NMRにより、容易に測定することができる(例えば、カルボニル基のピーク減少の程度で定めることができる)。
【0065】
本発明における固相は、有機高分子からなる固相であり、該有機高分子そのものを固相として用いても、また、任意の材料に上記の有機高分子をコーティングして用いてもよい(この場合、任意の材料が有機高分子からなる固相で覆われた形状となる。)。有機高分子でコーティングされる材料としては、前記有機高分子でコーティングが可能であれば、有機材料、無機材料のいずれでもあってもよい。固相の形状としては、ビーズ状、ファイバー状などの表面に溶液が接触する形状、フィルター状などの溶液が内部通過可能な形状のいずれでもよい。
本発明における固相は、溶液が固相内部を通過可能なフィルター又は膜状の形態で使用することが好ましい。この場合、固相の厚さは10μm〜500μm、さらには50μm〜250μmであることが好ましい。この範囲内にあることが、洗浄性の観点から好ましい。またこのような溶液が内部を通過可能な固相(以下、「溶液貫流性固相」とも称する)は、多孔性膜であることが好ましい。多孔性膜の孔の平均孔径は0.1μm〜10μm、さらには1μm〜5μmであることが好ましい。この範囲内にあれば、核酸が吸着するのに十分な表面積が得られると共に、目詰まりもし難いので好ましい。このような固相の平均孔径は、バブルポイント法(ASTM F316−86、JIS K−3832に準拠)を用いて測定することができる。
【0066】
上記の溶液貫流性固相は、表裏非対称性の多孔性膜であることが好ましい。ここで、表裏非対称性とは、多孔性膜の一方の面から他方の面へと膜の物理的性質又は化学的性質が変化している性質を示す。
膜の物理的性質の例としては、平均孔径が挙げられる。また膜の化学的性質としては鹸
化度が挙げられる。
平均孔径が表裏非対称性の多孔性膜を本発明で使用する場合は、液の通過する方向に平均孔径が、大→小に変化するようにするのが好ましい。ここで、最大孔径と最小孔径の比が2以上である多孔性膜を用いることが好ましい。さらに好ましくは、最大孔径と最小孔径の比が5以上である。これにより、核酸が吸着するのに十分な表面積が得られるとともに、目詰まりし難い。
【0067】
また上記の溶液貫流性固相は、次の諸性質を有していることが好ましい。
空隙率:50〜95%、さらには65〜80%。
バブルポイント:0.1〜10kgf/cm2、さらには0.2〜4kgf/cm2
圧力損失:0.1〜100kPa、さらには0.5〜50kPa。この範囲内にあることで、過圧時に均一な圧力が得られるので好ましい。ここで、圧力損失とは、膜の厚さ100μm当たりの、水を通過させるのに必要な最低圧力である。
25℃で1kg/cm2の圧力で水を通過させたときの透水量(膜1cm2当たり1分間で):1〜5000mL、さらには5〜1000mL。
多孔性膜1mgあたりの核酸の吸着量:0.1μg以上、さらには0.9μg以上。
【0068】
核酸吸着用溶液を上記固相に通過させる場合の流速は、液の固相への適切な接触時間を得るために、固相の面積1cm2当たり、2〜1500μL/秒、さらには5〜700μL/秒であることが好ましい。液の固相への接触時間が該下限値以上であれば、十分な分離精製効果を得ることができるので好ましく、該上限値以下であれば操作性の点から好ましい。
【0069】
また使用する溶液が固相の内部を通過可能な場合には、使用する固相は1種類であってもよいが、複数を使用することもできる。複数の固相は、同一の素材であっても、異なるものであってよい。
【0070】
<洗浄工程>
以下、洗浄工程について説明する。
以上のようにして核酸を固相に吸着させた後、洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄することにより、核酸の回収量及び純度が向上し、必要な核酸を含む動物組織の量を微量とすることができる。また、洗浄工程や後述する回収工程を自動化することによって、操作が簡便かつ迅速に行うことが可能になるので好ましい。洗浄工程は、迅速化のためには1回の洗浄で済ませてもよく、また純度がより重要な場合には複数回洗浄を繰返すことが好ましい。
【0071】
〔洗浄液〕
洗浄液は、水溶性有機溶媒及び/又は水溶性塩を含んでいる溶液であることが好ましい。また必要に応じて緩衝剤、界面活性剤を含んでいてもよい。洗浄液は、固相に核酸と共に吸着した核酸吸着用溶液中の不純物を洗い流す機能を有する必要がある。そのためには、固相から核酸は脱着させないが不純物は脱着させる組成であることが必要である。この目的には、核酸がアルコール等の水溶性有機溶媒に難溶性であるので、核酸を保持したまま核酸以外の成分を脱着させるのに適している。また、水溶性塩を添加することにより、核酸の吸着効果が高まるので、不純物及び不要成分の選択的除去作用が向上するので好ましい。
【0072】
[水溶性有機溶媒]
洗浄液に含まれる水溶性有機溶媒としては、アルコール、アセトンなどを用いることができ、アルコールが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールが挙げられる。プロパノールとしては、イソプロパノール、n−プ
ロパノールのいずれでもよく、ブタノールも直鎖状でも分岐状でもよい。これらアルコールは、複数種類を使用することもできる。この中でも、エタノールを用いることが好ましい。洗浄液中に含まれる水溶性有機溶媒の量は、20〜100質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましい。
【0073】
[水溶性塩]
一方、洗浄液に含まれる水溶性塩は、ハロゲン化物の塩であることが好ましく、中でも塩化物がより好ましい。また、水溶性塩は、一価又は二価のカチオンであることが好ましく、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、中でもナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩が好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。
洗浄液のpHは、3〜11の物でよく、好ましくは5〜10、より好ましくは6.5〜8.5のものから選択できる。
【0074】
水溶性塩が洗浄液中に含まれる場合、その濃度は10mmol/L以上であることが好ましく、その上限は不純物の溶解性を損なわない範囲であれば特に問わないが、1mol/L以下であることが好ましく、0.1mol/L以下であることがより好ましい。よりさらに好ましくは、水溶性塩が塩化ナトリウムであり、とりわけ、塩化ナトリウムが20mmol/L以上含まれていることが好ましい。
【0075】
洗浄液は、カオトロッピック物質を含んでいないことが好ましい。それによって、洗浄工程に引き続く回収工程にカオトロピック物質が混入する可能性を減らすことができる。回収工程時に、カオトロピック物質が混入すると、しばしばPCR反応(ポリメラーゼ連鎖反応)等の酵素反応を阻害するので、後の酵素反応等を考慮すると洗浄液にカオトロッピク物質を含まないことが理想的である。また、カオトロピック物質は、腐食性で有害であるので、この点でもカオトロピック物質を用いないで済むことは、実験者にとっても試験操作の安全上極めて有利である。ここでカオトロピック物質とは、前記した尿素、グアニジン塩、イソチアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどである。
カオトロピック塩を含まないことで分光光度計の測定値260/230nmが、1.5より大きな値を示し、高純度な核酸を精製することができる。このことにより、精製した核酸を、PCRなどの分子生物学的実験を行うときに不都合を生じることなく高精度な実験を行うことができる。
【0076】
従来、核酸分離精製方法における洗浄工程に際して、洗浄液が核酸分離精製方法に使用する容器に対する濡れ性が高いため、しばしば容器中に残留して洗浄工程に続く回収工程の際に、洗浄液が回収液に混入して分離すべき核酸の純度の低下や、回収工程後に次の工程(例えば、PCR反応等)を行う場合における反応性の低下などの原因となっている。従って、容器を用いて核酸の吸着及び脱着を行う場合、吸着、洗浄時に用いる液、特に洗浄液が、回収工程や回収工程後の工程に影響を及ぼさないように、容器内に洗浄残液が残留しないようにすることが望ましい。
【0077】
従って、洗浄工程における洗浄液が回収工程の回収液に混入することを防止して、洗浄液の容器内への残留を最小限に留めるため、洗浄液の表面張力を0.035J/m2未満にすることが好ましい。表面張力が低いと、洗浄液と容器の濡れ性が向上し、残留する液量を抑えることができるので好ましい。
【0078】
洗浄液において水の割合を増やして洗浄効率を上げることもできるが、この場合、洗浄液の表面張力は上昇し、これによって残留する液量が増えてしまう。洗浄液の表面張力が0.035J/m2以上の場合は、容器の撥水性を高めることで、残留する液量を抑えることができる。容器の撥水性を高めることで、液滴を形成させ、その液滴が流れ落ちることによって残留する液量が抑制できる。撥水性を高める方法としては、容器表面にシリコ
ン等の撥水剤をコートするか、容器成型時にシリコン等の撥水剤を練り込む等の手段があるが、これに限らない。
【0079】
洗浄工程における洗浄液の液量は、2μL/mm2以上が好ましい。洗浄液量が多量であれば洗浄効果は向上する。しかし、200μL/mm2以下とすることで、操作性を保ち、試料の流出を抑止することができ好ましい。
一回に投入できる洗浄液は、核酸分離精製ユニットの容量範囲内で任意に選択できる。例えばカートリッジ容量が800μlで有れば、50〜800μlの範囲良い。好ましくは、400〜800μlにすることもできる。
洗浄液の総量は、カートリッジに投入した試料溶液の1/4量から10倍量を用いることができる。好ましくは、1/2量から4倍量の範囲から選択できる。
【0080】
洗浄工程において、洗浄液を固相に接触させる場合の流速は、固相の単位面積1cm2当たり、2〜1500μL/秒であることが好ましく、5〜700μL/秒であることがより好ましい。通過速度を下げて時間を掛ければ洗浄がそれだけ十分に行なわれることになる。しかし、前記の範囲とすることで、洗浄効率を落とすことなく、核酸の分離精製操作を迅速化できるので好ましい。
【0081】
洗浄工程において、洗浄液の液温は4〜70℃であることが好ましい。さらには、洗浄液の液温を室温とすることがより好ましい。また、洗浄工程において、洗浄工程と同時に核酸分離精製方法に使用する容器に器械的な振動や超音波による攪拌を与えることもできる。又は遠心分離を行うことにより洗浄することもできる。
【0082】
洗浄工程の前もしくは工程の途中において、回収する目的の核酸がDNAの場合は、固相にRNA分解酵素溶液を接触させることで、予めRNAを分解することもできる。また、目的の核酸がRNAの場合は、固相にDNA分解酵素溶液を接触させることで、予めDNAを分解することもできる。いずれの場合も、その後に洗浄液を用いて固相を洗浄し、RNA分解酵素又はDNA分解酵素を固相から除いておくことが望ましい。
【0083】
<回収工程>
次に、固相に吸着した核酸を脱着せしめるために、核酸を脱着せしめうる溶液である回収液を、洗浄後の固相に接触させる。固相と接触した後の回収液(以下、「精製後溶液」とも称する)には目的とする核酸が含まれているので、これを後に続く工程、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による核酸の増幅に提供する。
【0084】
動物組織から調製した核酸を含む試料溶液の体積に対して、回収液の体積を調整して核酸の脱着を行うことができる。使用する回収液量は、そのとき核酸分離精製に供せられる動物組織の量による。一般的によく使われる回収液量は数10から数100μLであるが、動物組織の量が極微量である時や、逆に大量の核酸を分離精製したい場合には回収液量は1μLから数10mLの範囲で変えることができる。
【0085】
〔回収液〕
回収液としては、好ましくは精製蒸留水、Trisバッファ、Tris/EDTAバッファ等が使用できる。回収液のpHは、pH2〜11であることが好ましい。さらには、pH5〜9であることが好ましい。また特にイオン強度と塩濃度は吸着核酸の溶出に効果を及ぼす。回収液は、塩濃度が0.5mol/L以下の溶液であることが好ましい。また回収液は、イオン強度が500mol/L以下、さらには290mmol/L以下、特には90mmol/L以下であることが好ましい。より好ましくは、20mmol/Lである。こうすることで、核酸の回収率が向上し、より多くの核酸を回収できることができる。
回収液の温度は、5℃〜90℃にする事ができる。好ましくは10℃〜50℃、より好ましくは15℃〜35℃にしても良い。
【0086】
回収液の体積を当初の核酸を含む試料溶液の体積と比較して少なくすることによって、濃縮された核酸を含む回収液を得ることができる。好ましくは、(回収液体積):(試料溶液体積)=1:100〜99:100であり、更に好ましくは、(回収液体積):(試料溶液体積)=1:10〜9:10である。これにより核酸分離精製後工程において濃縮のための操作をすることなく、簡単に核酸を濃縮できる。これらの方法により、動物組織に組織溶解液を加える工程で得られた試料溶液よりも核酸が濃縮されている核酸溶液を得る方法を提供できるので好ましい。
【0087】
回収液の注入回数は限定されるものではなく、1回でも複数回でもよい。通常、迅速、簡便に核酸を分離精製する場合は、1回の回収で実施するが、大量の核酸を回収する場合等複数回にわたり回収液を注入してもよい。
【0088】
また、回収工程において、核酸の回収液に回収した核酸の分解を防ぐための安定化剤を添加しておくことも可能である。安定化剤としては、抗菌剤、抗カビ剤や核酸分解抑制剤などを添加することができる。核酸分解抑制剤としては、核酸分解酵素の阻害剤が挙げられ、具体的にはEDTAなどが挙げられる。また別の実施態様として、回収容器にあらかじめ安定化剤を添加しておくこともできる。
【0089】
<核酸分離精製ユニット>
本発明の核酸分離精製方法は、少なくとも2つの開口を有する容器内に固相を収容した核酸分離精製ユニットを用いることが好ましい。以下、少なくとも2つの開口を有する容器内に固相を収容した核酸分離精製ユニットを核酸分離精製カートリッジともいう。
本発明の核酸分離精製方法に用いる核酸分離精製ユニットとして、さらには
(a)固相、
(b)該固相を収容する少なくとも2つの開口を有する容器、及び
(c)該容器の一の開口に結合された圧力差発生装置、
を含むことが好ましい。以下、核酸分離精製ユニットについて説明する。
【0090】
容器の材料に特別な限定はなく、固相が収容でき、かつ少なくとも2つの開口を設けることができるものであればよいが、製造の容易性からプラスチックが好ましい。例えば、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート等の透明あるいは不透明のプラスチックを用いるのが好ましい。
【0091】
前記容器に収容される固相の形状にも特別な限定はなく、円形、正方形、長方形、楕円、膜の場合には筒状、巻物状、あるいは表面に水酸基を有する有機高分子をコーティングしたビーズ等、任意の形状でよいが、製造適性の点からは、円、正方形、円筒状、巻物状等の対称性の高い形状又はビーズが好ましい。
【0092】
容器の内容積は処理すべき試料溶液の量によって決めることが好ましく、通常、収容される固相の体積で表す。すなわち、厚さが約1mm以下(例えば、50〜500μm程度)で、直径が約2mm〜20mmの固相を1枚〜6枚程度収容する大きさとすることが好ましい。
【0093】
固相の容器に接する側の端面は、試料溶液等が通過しない程度に、容器の内壁面に密着させることが好ましい。
【0094】
少なくとも2個の開口を有する容器の、固相から見て、試料溶液等の入り口に使用される開口に対する側(容器内の固相から開口側)は、容器の内壁に密着させずに空間を設け、試料溶液等が固相の全面にできるだけ均等に拡散する構造にすることが好ましい。
【0095】
核酸分離精製ユニットが、容器の一の開口に圧力差発生装置を結合する場合には、容器は、固相の収容部を持ち、収容部に固相を収容でき、固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)等の吸引及び排出に際して固相が収容部の外へは出てしまうことがなく、開口に圧力差発生装置、例えば注射器を接合できればよい。このためには、容器が当初は二つの部分に分かれており、固相を収容した後で一体化できることが好ましい。また、固相が収容部から外へ出ることをさけるためには、固相の上下に核酸を汚染しない材料で作製されたメッシュを置くことも好適な態様である。
【0096】
容器は、通常、固相を収容する本体と、蓋体に分かれた態様で作製され、いずれにも少なくとも1個の開口が設けられている。開口は核酸吸着用溶液、洗浄液及び回収液(以下、「核酸吸着用溶液等」と記すことがある)の入口及び出口として使用され、また容器内を減圧又は加圧状態にせしめうる圧力差発生装置に接続される。本体の形状に特に限定はないが、製造が容易で、試料溶液等が固相の全面に拡散し易くするには、断面を円形にすることが好ましい。断面を四角形にすることも、固相の裁断屑を発生させないために好ましい。
【0097】
上記の蓋は、圧力差発生装置によって容器内部を減圧又は加圧状態にできるように本体に接合されている必要があるが、この状態が達成できれば、接合方法は任意に選択できる。例えば、接着剤の使用、ねじ込み、はめ込み、ネジ止め、超音波加熱による融着等が挙げられる。
【0098】
圧力差発生装置としては、注射器、ピペッタ、又はペリスタポンプのような吸引(もしくは減圧)及び加圧が可能なポンプ等が挙げられる。これらの内、手動操作には注射器が、自動操作にはポンプが適している。また、ピペッタは片手操作が容易にできるという利点を有する。好ましくは、圧力差発生装置は、前記容器の一の開口に着脱可能に結合されている。
【0099】
なお、容器に3以上の開口を設けた場合には、減圧又は加圧操作に伴う液の吸引又は排出を可能にするため、余分の開口を一時的に封鎖できるようにすることが好ましい。
【0100】
〔核酸分離精製ユニットによる核酸の精製〕
次に、前記した核酸分離精製ユニットを使用した、核酸の精製方法について説明する。
【0101】
本発明の核酸分離精製方法では、好ましくは、少なくとも2つの開口を有する容器内に前記の固相を収容した核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行うことができる。
【0102】
さらに好ましくは、
(a)固相、
(b)該固相を収容する少なくとも2つの開口を有する容器、及び
(c)該容器の一の開口に結合された圧力差発生装置、
を含む核酸分離精製ユニットを用いて核酸の吸着及び脱着を行うことができる。
【0103】
この場合、本発明の核酸分離精製方法の第一実施態様は、以下の工程を含むことができる。
(1a)動物組織に組織溶解液を加えて処理することで組織を溶解し、核酸を含む試料溶
液を調製する工程、
(1b)上記核酸を含む試料溶液に前処理液を加えて、固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)を調製する工程、
(2a’)上記固相に核酸吸着用溶液に核酸分離精製ユニットを構成する容器の一の開口を挿入する工程、
(2a”)上記容器の他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にし、固相に核酸吸着用溶液を吸引し、固相に接触させる工程、
(2b’)上記容器の他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引されて容器内にある核酸吸着用溶液を容器外に排出することにより、再度該溶液を容器内の固相に接触させて核酸を該固相に吸着させる工程、
(3a’)上記容器の一の開口を洗浄液に挿入する工程、
(3a”)上記容器の他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にし、洗浄液を吸引して固相に接触させる工程、
(3b’)上記容器の他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引されて容器内にある洗浄液を容器外に排出することにより、再度洗浄液を容器内の固相に接触させて固相を洗浄する工程、
(4a’)上記容器の一の開口を、回収液中に挿入する工程、
(4a”)上記容器の他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にし、回収液を吸引して固相に接触させる工程、及び
(4b’)上記容器の他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引されて容器内にある回収液を容器外に排出することにより、回収液を容器内の固相に接触させて固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
【0104】
上記(2a”)、(3a”)、(4a”)の際には、固相のほぼ全体と接触する量の溶液を吸引することが好ましいが、圧力差発生装置内にまで吸引してしまうと装置を汚染するので、吸引する量は適量に調整することが好ましい。適量の溶液を吸引後、圧力差発生装置を用いてユニットの容器内を加圧して、吸引した溶液を排出する。この操作までに間隔を開ける必要はなく、吸引後直ちに排出してもよい。
【0105】
第一実施態様を行うための核酸分離精製ユニットにおいては、圧力差発生装置に結合される開口に対する側の固相の上には、ほぼ中央に穴を穿った部材を設けることが好ましい。この部材は、固相を押さえると共に、核酸吸着用溶液等を効率よく排出する効果を有するものであり、溶液が中央の穴に集まる様に、漏斗状又はお椀状等の斜面を有する形状にすることが好ましい。この穴の大きさ、斜面の角度、部材の厚さは、処理する核酸吸着用溶液等の量や固相を収容する容器の大きさ等を考慮して、当業者が適宜定めることができる。
この部材と当該開口の間には、オーバーフローした核酸吸着用溶液等を溜めることができ、圧力差発生装置内に吸引されることを防ぐための空間を設けることが好ましい。この空間の大きさも当業者が適宜選択することができる。なお、核酸を効率よく集めるためには、固相の全体が浸る以上の量の核酸吸着用溶液を吸引することが好ましい。
【0106】
また、吸引している開口の真下の部分に核酸吸着用溶液等が集中することを防いで、核酸吸着用溶液等が固相内を比較的均一に通過できるようにするため、固相とこの部材の間にも空間を設けることが好ましい。このためには、当該部材から固相に向けて複数の突起物を設けることが好ましい。突起物の大きさや数は当業者が適宜選択することができるが、空間を保持しながら固相の開口面積をできる限り大きく保つことが好ましい。
【0107】
本発明の核酸分離精製方法の第二実施態様は、以下の工程を含むことができる。
(1a)動物組織に組織溶解液を加えて処理することで組織を溶解し、核酸を含む試料溶液を調製する工程、
(1b)上記核酸を含む試料溶液に前処理液を加えて、固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)を調製する工程、
(2a)上記核酸吸着用溶液を、核酸分離精製ユニットを構成する容器の一の開口に注入する工程、
(2b)上記容器の一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した核酸吸着用溶液を上記容器の他の開口より排出することにより、該溶液を容器内の固相に接触させて、核酸を該固相に吸着させる工程、
(3a)上記容器の一の開口から圧力差発生装置を外し、該一の開口に洗浄液を注入する工程、
(3b)上記容器の一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した洗浄液を上記容器の他の開口より排出することにより、洗浄液を容器内の固相に接触させて固相を洗浄する工程、
(4a)上記容器の一の開口から圧力差発生装置を外し、該一の開口に回収液を注入する工程、
(4b)上記容器の一の開口に圧力差発生装置を結合して容器内を加圧状態にし、注入した回収液を上記容器の他の開口より排出させることにより、回収液を容器内の固相に接触させて固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
【0108】
上記本発明の核酸分離精製方法の第二実施態様における工程(2a)、(3a)及び(4a)において、核酸吸着用溶液を容器に注入する方法は、特に限定されるものではないが、ピペットやスポイトなどの実験用器具を使用するのが好ましい。これらの器具が、ヌクレアーゼフリーかつパイロジェンフリーであれば、より好ましい。
【0109】
動物組織に基づいて調製された各段階の溶液を混合する方法は、特に限定されない。例えば、混合する際、攪拌装置を使用する場合には30から3000rpmで1秒から3分間混合することが好ましい。これにより、分離精製される核酸収量を増加させることができるので好ましい。あるいは、転倒混和の場合には5から30回行うことで混合することが好ましい。また、ピペッティング操作の場合には、10から50回行うことによって混合することが好ましい。
【0110】
上記(4a)の工程の前に、
(3c)固相にDNA分解酵素溶液を接触させた後、洗浄液を用いて固相を洗浄する工程、
を行うことで、DNAとRNAを含む核酸混合物溶液からRNAのみを選択的に分離精製することもできる。DNA分解酵素溶液としては、特に限定無く、公知のいずれのDNaseも用いることが出来る。
【0111】
前記の核酸分離精製方法に使用するための試薬を試薬キットとすることができる。試薬キットには、(i)核酸分離精製カートリッジと、(ii)組織溶解液またはタンパク質分解酵素、(iii)前処理液、(iv)洗浄液、および(v)回収液の試薬を含む。
【0112】
以下に、内部に固相を収容した、少なくとも2つの開口を有する容器である核酸分離精製ユニット(核酸分離精製カートリッジ)と圧力差発生装置を用いて、動物組織に基づいて調製された核酸吸着用溶液から、核酸を分離精製する工程を自動で行う自動装置の例を示すが、自動装置はこれに限定されるものではない。
【0113】
上記の自動装置は、溶液が内部を通過可能な、核酸を吸着する固相を収容した核酸分離精製カートリッジを用い、該核酸分離精製カートリッジに、固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)を注入し加圧して、該核酸吸着用溶液中の核酸を前記固相に吸着させた後、該核酸分離精製カートリッジに洗浄液を分注し加圧して不純物を除去し、次
いで該核酸分離精製カートリッジに、回収液を分注し固相に吸着した核酸を脱着して回収液とともに回収する、分離精製動作を自動的に行う核酸分離精製装置であって、該核酸分離精製カートリッジ、該核酸吸着用溶液を収容する原料液容器、洗浄液の排出液を収容する廃液容器及び核酸を含む該回収液を収容する回収容器を保持する搭載機構、核酸分離精製カートリッジに加圧空気を導入する加圧空気供給機構、並びに該核酸分離精製カートリッジに洗浄液及び回収液を分注する分注機構を備えてなることを特徴とするものである。
【0114】
上記搭載機構は、装置本体に搭載されるスタンドと、該スタンドに上下移動可能に支持され上記核酸分離精製カートリッジを保持するカートリッジホルダーと、該カートリッジホルダーの下方で、該核酸分離精製カートリッジに対する位置を交換可能な状態で上記廃液容器及び上記回収容器を保持する容器ホルダーとを備えてなるものが好適である。
【0115】
また、前記加圧空気供給機構は、下端部より加圧エアを噴出するエアノズルと、該エアノズルを支持して前記カートリッジホルダーに保持された上記核酸分離精製カートリッジに対し前記エアノズルを昇降移動させる加圧ヘッドと、該加圧ヘッドに設置され前記搭載機構のラックにおける核酸分離精製カートリッジの位置決めをする位置決め手段とを備えてなるものが好適である。
【0116】
さらに前記分注機構は、前記洗浄液を分注する洗浄液分注ノズルと、前記回収液を分注する回収液分注ノズルと、前記洗浄液分注ノズル及び前記回収液分注ノズルを保持し、前記搭載機構においてカートリッジホルダーにより保持された核酸分離精製カートリッジ上を順に移動可能なノズル移動台と、洗浄液を収容した洗浄液ボトルより洗浄液を吸引し前記洗浄液分注ノズルに供給する洗浄液供給ポンプと、回収液を収容した回収液ボトルより回収液を吸引し前記回収液分注ノズルに供給する回収液供給ポンプとを備えてなるものが好適である。
【0117】
前記のような自動装置によれば、核酸分離精製カートリッジ、廃液容器及び回収容器を保持する搭載機構と、核酸分離精製カートリッジに加圧エアを導入する加圧エア供給機構と、核酸分離精製カートリッジに洗浄液及び回収液を分注する分注機構とを備え、前記固相部材を備えた核酸分離精製カートリッジに固相に核酸を吸着させる溶液を注入加圧し核酸を該固相部材に吸着させた後、洗浄液を分注して不純物を洗浄排出した後、回収液を分注して該固相膜部材に吸着した核酸を分離して回収する核酸分離精製工程を自動的に行って短時間で効率よく試料液の核酸を自動的に分離精製できる機構をコンパクトに構成することとができる。
【0118】
また、前記搭載機構を、スタンドと、核酸分離精製カートリッジを保持する上下移動可能なカートリッジホルダーと、廃液容器及び回収容器を交換可能に保持する容器ホルダーとを備えて構成すると、核酸分離精製カートリッジ及び両容器のセット並びに廃液容器と回収容器の交換が簡易に行える。
【0119】
さらに前記加圧エア供給機構を、エアノズルと、該エアノズルを昇降移動させる加圧ヘッドと、核酸分離精製カートリッジの位置決めをする位置決め手段とを備えて構成すると、簡易な機構で確実な加圧エアの供給が行える。
【0120】
さらにまた前記分注機構を、洗浄液分注ノズルと、回収液分注ノズルと、核酸分離精製カートリッジ上を順に移動可能なノズル移動台と、洗浄液ボトルより洗浄液を吸引し洗浄液分注ノズルに供給する洗浄液供給ポンプと、回収液ボトルより回収液を吸引し回収液分注ノズルに供給する回収液供給ポンプとを備えて構成すると、簡易な機構で順次洗浄液及び回収液の分注が行える。
【実施例】
【0121】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】
<実施例1>
(1)核酸分離精製ユニット(核酸分離製カートリッジ)の作製
内径7mm、核酸吸着性の多孔性膜の固相を収容する部分を持つ少なくとも2個の開口を有する容器(核酸分離精製カートリッジ)を耐衝撃性ポリスチレンで作製した。
【0123】
(3)核酸吸着性の多孔性膜として、トリアセチルセルロースの多孔性膜を鹸化処理した多孔性膜(孔径2.5μm、直径7mm、厚さ100μm、鹸化率95%)を使用し、上記(1)で作製した核酸分離精製カートリッジの多孔性膜固相収納部に収容した。
【0124】
(4)3%水酸化カルシウム溶液の調製
以下に示す3%水酸化カルシウム溶液を調製した。
【0125】
[3%水酸化カルシウム溶液]
水酸化カルシウム {和光純薬工業(株)製} 30g
蒸留水 970g
【0126】
(5)組織溶解液、前処理液及び洗浄液の調製
以下に示す処方の、動物組織からのDNA分離精製用の組織溶解液、前処理液、洗浄液及び回収液を調製した。
【0127】
[組織溶解液(組織からのDNA分離精製用)]
1mol/L Tris−HCL {和光純薬工業(株)製} 26g
塩化ナトリウム 3g
0.5mol/L EDTA {和光純薬工業(株)製} 140g
10質量%SDS{和光純薬工業(株)製} 160g
蒸留水 350g
pH8.2
【0128】
[前処理液(組織からのDNA分離精製用)]
グアニジン塩酸塩 {和光純薬工業(株)(株)製} 380g
Tween−20(ICN社製) 120g
アセチレングリコール(Air Products社製) 3g
シリコーンオイル{GE東芝シリコーン(株)製} 0.6g
BiS−Tris 15.5g
蒸留水 275g
pH6.0
【0129】
[洗浄液(組織からのDNA分離精製用)]
1mol/L Tris塩酸 {和光純薬工業(株)製} 8g
塩化ナトリウム {和光純薬工業(株)製} 4.5g
エタノール {和光純薬工業(株)製} 360g
蒸留水 350g
pH7.6
【0130】
[回収液(組織からのDNA分離精製用)]
1mol/L Tris塩酸{和光純薬工業(株)(株)製} 2.5g
蒸留水 250g
pH9.0
【0131】
(4)動物組織のアルカリ処理
ウシの脱灰した骨(オセイン)を、ヌクレアーゼフリーでかつパイロジェンフリーの1.5mLマイクロチューブ{プラチナチューブ;BM機器(株)製}の容器に入れ、前記4で調製した3%水酸化カルシウム溶液を添加し20℃以下で20日間攪拌した。その後、攪拌しながら多量の水で洗浄した。このアルカリ処理をおこなったオセインをL−オセインとする。
【0132】
(5)動物組織の溶解処理
L−オセイン250mgをヌクレアーゼフリーでかつパイロジェンフリーの1.5mLマイクロチューブ{プラチナチューブ;BM機器(株)製}の容器に入れ、前記、(3)で調製した組織溶解液180μLとタンパク質分解酵素のプロテアーゼK20mg/mL(SIGMA社製)溶液20μLを添加して攪拌し、55℃で2時間インキュベートすることで、動物組織を溶解した。遠心分離により未溶解の残渣組織を沈殿させ、その上澄みを別のヌクレアーゼフリーでかつパイロジェンフリーの1.5mLマイクロチューブ{プラチナチューブ;BM機器(株)製}の容器に入れた。
【0133】
(6)核酸吸着用溶液の調製
上記(5)で得られたそれぞれの試料溶液に、前記(3)で調製した前処理液180μLを添加して攪拌し、70℃で10分間インキュベートした。続いて、エタノール240μLを加え、攪拌して固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)を得た。
【0134】
(7)−1:核酸の分離精製操作(実施例)
次ぎに上記(6)で得られた核酸吸着用溶液を、前記(2)で作製した多孔性膜の固相を有する核酸分離精製カートリッジの一の開口に注入し、続いて該一の開口に圧力差発生装置(チュウビングポンプ)を結合して、核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した核酸吸着用溶液を、核酸吸着性多孔性膜の固相の中を通過させることで、該多孔性膜の固相に接触させ、核酸分離精製カートリッジの他の開口より排出することにより、多孔性膜の固相に核酸吸着用溶液中の核酸を吸着させた。続いて、該核酸分離精製カートリッジの一の開口に、前記(3)で調製した洗浄液750μlを注入し、該一の開口にチュウビングポンプを結合して、核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した洗浄液を、多孔性膜の固相中を通過させ、他の開口より排出することにより、多孔性膜に吸着した核酸を洗浄した。3回この操作を実施した。続いて、該核酸分離精製カートリッジの一の開口に、前記(3)で調製した回収液200μlを注入し、該核酸分離精製カートリッジの一の開口にチュウビングポンプを結合して、核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した回収液を、多孔性膜の固相中を通過させ、他の開口より排出することにより、多孔性膜に吸着した核酸を脱着させて核酸を含む液(精製後溶液)として回収した。この核酸分離精製操作(核酸を含む試料溶液を前記のカートリッジに注入してから回収するまで)は室温で行われ、この操作に要した時間は12分であった。
【0135】
(7)−2:核酸の分離精製操作(比較例)
上記(5)から(7)−1と同様の方法でオセイン250mgより核酸を含む液(精製後溶液)を回収した。
【0136】
(8)核酸の定量及び電気泳動
上記の実施例で回収した精製後溶液について、DNAのアガロースゲル電気泳動の結果を図1に示す。さらに、この精製後溶液のUV測定から換算したDNAの収量を表1に示
す。
【0137】
【表1】


【0138】
上記実施例の結果、図1の電気泳動の結果から明らかなように、本発明の方法を用いた実施例は、オセインをアルカリ処理により得られたL−オセインから多量のDNAを精製することができる。さらに、表1の結果から明らかなように、本発明の方法を用いることにより、動物組織より核酸を極めて効率よく分離離精製できることが分かる。
【0139】
以上のように、本発明の方法により、以前では抽出が困難であった組織から効率よくDNAを回収することが可能になった。
【0140】
<実施例2>
(1)核酸分離精製カートリッジの作製および(2)多孔性膜の収容
実施例1と同様に作成した。
【0141】
(3)動物組織由来成分の溶解処理
実施例1(4)で得られたL−オセインをヌクレアーゼフリーでかつパイロジェンフリーの1.5mLマイクロチューブ{プラチナチューブ;BM機器(株)製}の容器に入れ、蒸留水を添加し45℃で5時間熱水処理をおこなった。処理後後、上清を回収し乾燥させた。この乾燥した抽出物250mgに実施例1(3)で調製した組織溶解液180μLとタンパク質分解酵素のプロテアーゼK20mg/mL(SIGMA社製)溶液20μLを添加して攪拌し、55℃で2時間インキュベートすることで、動物組織を溶解した。遠心分離により未溶解の残渣組織を沈殿させ、その上澄みを別のヌクレアーゼフリーでかつパイロジェンフリーの1.5mLマイクロチューブ{プラチナチューブ;BM機器(株)製}の容器に入れた。
【0142】
(4)核酸吸着用溶液の調製
上記(2)で得られたそれぞれの試料溶液に、実施例1(3)で調製した前処理液180μLを添加して攪拌し、70℃で10分間インキュベートした。続いて、エタノール240μLを加え、攪拌して固相に核酸を吸着させるための溶液(核酸吸着用溶液)を得た。
【0143】
(5)−1:核酸の分離精製操作(実施例)
次ぎに上記(4)で得られた核酸吸着用溶液を、前記(2)で作製した多孔性膜の固相を有する核酸分離精製カートリッジの一の開口に注入し、続いて該一の開口に圧力差発生装置(チュウビングポンプ)を結合して、核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した核酸吸着用溶液を、核酸吸着性多孔性膜の固相の中を通過させることで、該多孔性膜の固相に接触させ、核酸分離精製カートリッジの他の開口より排出することにより、多孔性膜の固相に核酸吸着用溶液中の核酸を吸着させた。続いて、該核酸分離精製カートリッジの一の開口に、実施例1(3)で調製した洗浄液750μlを注入し、該一の開口にチュウビングポンプを結合して、核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した洗浄液を、多孔性膜の固相中を通過させ、他の開口より排出することにより、多孔性膜に吸着した核酸を洗浄した。3回この操作を実施した。続いて、該核酸分離精製カートリッジの一の開口に、前記(3)で調製した回収液200μlを注入し、該核酸分離精製カートリッジの一の開口にチュウビングポンプを結合して、核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した回収液を、多孔性膜の固相中を通過させ、他の開口より排出することにより、多孔性膜に吸着した核酸を脱着させて核酸を含む液(精製後溶液)として回収した。この核酸分離精製操作(核酸を含む試料溶液を前記のカートリッジに注入してから回収するまで)は室温で行われ、この操
作に要した時間は12分であった。
【0144】
(5)−2:核酸の分離精製操作(比較例)
上記(1)から(5)−1と同様の方法でオセイン250mgより核酸を含む液(精製後溶液)を回収した。
【0145】
(6)核酸の電気泳動
上記の実施例2で回収した精製後溶液について、DNAのアガロースゲル電気泳動の結果を図2に示す。
【0146】
上記実施例2の結果、図2の電気泳動の結果から明らかなように、本発明の方法を用いた実施例は、オセインをアルカリ処理及び熱水処理により得られた抽出物よりDNAを精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の方法に従って分離精製した核酸、比較例として分離精製した核酸及び分子量マーカーをアガロースゲル電気泳動して得られた写真である。
【図2】本発明の方法に従って分離精製した核酸、比較例として分離精製した核酸及び分子量マーカーをアガロースゲル電気泳動して得られた写真である。
【符号の説明】
【0148】
1:実施例、L−オセイン
2:比較例、オセイン
3:実施例、ゼラチン
M:100bp Ladder




 

 


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