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発明の名称 成膜方法及び成膜装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−63582(P2007−63582A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−248084(P2005−248084)
出願日 平成17年8月29日(2005.8.29)
代理人 【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明
発明者 新川 高見
要約 課題
AD法において、成膜に寄与しなかった粒子を除去することにより、メカノケミカル反応によって粒子が互いに結合した緻密な膜を形成することができ、且つ、構成の簡単な成膜装置を提供する。

解決手段
原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部と、基板が配置される成膜室8と、該成膜室内に配置され、供給された流体を基板に向けて噴射する噴射ノズル9と、エアロゾル生成部において生成されたエアロゾルを噴射ノズルに供給するための供給経路と、該供給経路を開閉するバルブ6と、噴射ノズルから噴射させるためのガスを供給するガス供給部7とを含む。
特許請求の範囲
【請求項1】
原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させて膜を形成するエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法であって、
原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、
工程(a)において生成されたエアロゾルを噴射ノズルから噴射させて、成膜室内に配置された基板に吹き付けることにより、前記基板上に膜を形成する工程(b)と、
工程(b)の後に、前記噴射ノズルに対する原料粉の供給を遮断すると共に、前記噴射ノズルにガスを供給して、工程(b)におけるエアロゾルの噴射速度よりも速い速度でガスを噴射させることにより、前記基板上に形成された膜にガスを吹き付ける工程(c)と、
を具備する成膜方法。
【請求項2】
工程(c)が、工程(a)において原料粉を分散させるガスとは組成が異なるガスを噴射させることを含む、請求項1項記載の成膜方法。
【請求項3】
工程(c)が、工程(a)において原料粉を分散させるガスよりも質量が小さいガスを噴射させることを含む、請求項2記載の成膜方法。
【請求項4】
工程(b)及び(c)を所定の回数繰り返す工程をさらに具備する請求項1〜3のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項5】
原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させて膜を形成するエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法であって、
原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)、
工程(a)において生成されたエアロゾルを噴射ノズルから噴射させて、前記成膜室内に配置された基板に吹き付けることにより、前記基板上に膜を形成する工程(b)と、
工程(b)の後に、工程(a)において生成されたエアロゾルを、工程(b)におけるエアロゾルの噴射速度よりも速い速度で噴射させて、前記基板上に形成された膜に吹き付ける工程(c)と、
を具備する成膜方法。
【請求項6】
工程(b)及び(c)を所定の回数繰り返す工程をさらに具備する請求項5記載の成膜方法。
を具備する成膜方法。
【請求項7】
原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させて膜を形成するエアロゾルデポジション法が用いられる成膜装置であって、
原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、
基板が配置される成膜室と、
前記成膜室内に配置され、供給される流体を前記基板に向けて噴射する噴射ノズルと、
前記エアロゾル生成手段において生成されたエアロゾルを前記噴射ノズルに供給するための供給経路と、
前記供給経路を開閉するバルブと、
前記噴射ノズルから噴射させるためのガスを前記噴射ノズルに選択的に供給するガス供給手段と、
を具備する成膜装置。
【請求項8】
前記噴射ノズルからガスを噴射させる場合に、エアロゾルの前記噴射ノズルへの供給を遮断するように前記バルブを制御すると共に、前記噴射ノズルにガスを供給するようにガス供給手段を制御する制御手段をさらに具備する請求項7記載の成膜装置。
【請求項9】
前記制御手段が、前記ガス供給手段によって供給されたガスの噴射速度がエアロゾルの噴射速度よりも速くなるように制御を行う、請求項8記載の成膜装置。
【請求項10】
前記制御手段が、前記ガス供給手段によって供給されるガスの供給量を増加させる、請求項9記載の成膜装置。
【請求項11】
前記制御手段が、成膜チャンバ内の圧力を低下させる、請求項9又は10記載の成膜装置。
【請求項12】
前記制御手段が、前記エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルと、前記ガス供給手段によって供給されたガスとが、前記噴射ノズルから交互に噴射されるように、前記バルブ及び前記ガス供給手段の動作を制御する、請求項8〜11のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項13】
前記ガス供給手段が、前記エアロゾル生成手段の前記容器に供給されるガスとは組成が異なるガスを供給する、請求項7〜12のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項14】
前記ガス供給手段が、前記エアロゾル生成手段の前記容器に供給されるガスよりも質量の小さいガスを供給する、請求項13記載の成膜装置。
【請求項15】
原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させて膜を形成するエアロゾルデポジション法が用いられる成膜装置であって、
原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、
基板が配置される成膜室と、
前記成膜室内に配置され、前記エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射する噴射ノズルと、
前記エアロゾル生成手段において生成されたエアロゾルを前記噴射ノズルに供給するための供給経路と、
前記噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度が所定の期間において速くなるように制御を行う制御手段と、
を具備する成膜装置。
【請求項16】
前記制御手段が、前記エアロゾル生成手段において原料粉を分散させるガスの流量を増加させるように、前記エアロゾル生成手段を制御する、請求項15記載の成膜装置。
【請求項17】
前記制御手段が、前記成膜室内の圧力を低下させるように、前記成膜室内の圧力を制御する、請求項15又は16記載の成膜装置。
【請求項18】
前記噴射ノズルに搬送されるエアロゾルに、前記エアロゾル生成手段において原料粉を分散させるガスよりも質量が小さい第2のガスを混合するためのガス供給手段をさらに具備し、
前記制御手段が、所定の期間において第2のガスを供給するように、前記ガス供給手段を制御する、
請求項15〜17のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項19】
前記制御手段が、エアロゾルの噴射速度を速くするための制御を、所定の期間ごとに繰り返して行う、請求項15〜18のいずれか1項記載の成膜装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料粉を基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)の分野においては、誘電体、圧電体、磁性体、焦電体、半導体のように、電圧を印加することにより所定の機能を発現する電子セラミックス等の機能性材料を含む素子を、成膜技術を用いて製造する研究が盛んに進められている。
【0003】
例えば、インクジェットプリンタにおいて高精細且つ高画質な印字を可能とするためには、インクジェットヘッドのインクノズルを微細化すると共に高集積化する必要がある。そのため、各インクノズルを駆動する圧電アクチュエータについても、同様に、微細化及び高集積化することが求められる。そのような場合に、バルク材よりも薄い層を形成でき、且つ、微細なパターン形成が可能な成膜技術は有利である。
【0004】
最近では、セラミックスや金属等の成膜技術として知られるエアロゾルデポジション法(以下において、「AD法」という)が注目されている。AD法とは、原料の粉体(原料粉)をエアロゾル状態にして、それをノズルから基板に向けて噴射することにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、気体中に浮遊している固体や液体の微粒子のことをいう。なお、AD法は、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれている。
【0005】
AD法においては、原料粉が基板や先に形成された構造物に衝突することによって破砕し、その際に生じた活性な新生面において原料粉の微粒子同士が結合するというメカニズムによって膜が形成される。この成膜メカニズムは、メカノケミカル反応と呼ばれている。AD法によれば、緻密で強固な膜を形成することができるため、種々の機能性膜が適用される機器の性能を向上させることが期待されている。
【0006】
関連する技術として、特許文献1には、膜内の超微粒子材料の接合が充分で、組織が緻密であり、表面が平滑であり、かつ密度の均一な膜を製造するために、超微粒子材料を基板表面上に吹き付けによって供給して形成した堆積膜によって超微粒子材料の膜を形成する超微粒子材料吹き付け成膜方法であって、超微粒子材料の吹き付けの流れの少なくとも一部分が基板表面に斜めに入射する成膜方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、エアロゾルデポジション法において、構造物作製時に基板や基板上の構造物に付着した凝集粉により、欠陥が生じるのを防止するために、脆性材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けてノズルより噴射して、エアロゾルを基板表面に衝突させ、この衝突の衝撃によって微粒子を破砕及び変形させて接合させ、微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させる複合構造物作製装置において、構造物形成に寄与しなかった基板及び基板上の構造物に付着した凝集粉を除去するために、エアーブロー機能を備える複合構造物作製装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−20878号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2005−76104号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなAD法においては、原料粉の粒径がなるべく均一であることが望ましい。その理由は、エアロゾル粒子の衝突エネルギーには、噴射されたエアロゾル粒子が有する運動エネルギーが用いられるが、この運動エネルギーは、原料粉の質量に依存するからである。そのため、例えば、原料粉に粒径の小さな粒子が含まれている場合には、十分な運動エネルギーを得ていない粒子が基板等に衝突することにより、メカノケミカル反応を起こさないまま、圧粉体の状態で膜中に取り込まれてしまう。それにより、膜の緻密度が低下するという問題が生じている。また、そのような膜をアニールすることにより、圧粉体の部分がポア(気孔又は空隙)となってしまうので、例えば、膜を圧電体として利用する場合には、ポアを起点とする絶縁破壊が生じ易くなってしまう。
【0009】
ところが、原料粉の粒径を完全に均一にすることは極めて困難である。そのため、このような問題を解決するために、特許文献1においては、ノズルの噴射角度を変化させてエアロゾルを膜に吹き付け、又は、硬度の高い粒子や粒径の大きい粒子を粉砕用粒子として膜に吹き付けることにより、成膜に寄与しなかった粒子を除去したり、或いは、形成された膜を押圧することにより、膜を平坦化している。しかし、特許文献1に開示されている装置は繁雑であると共に、形成された膜に異物が混入するおそれもある。
【0010】
また、特許文献2においては、エアーブロー装置を用いることにより、成膜に寄与しなかった粒子を除去している。しかし、特許文献2に開示されている装置も構成が煩雑であると共に、エアーブローによってエアロゾルの気流が乱れるため、安定した成膜を行うことができなくなるおそれがある。
【0011】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、AD法において、成膜に寄与しなかった粒子を除去することにより、メカノケミカル反応によって粒子が互いに結合した緻密な膜を形成することができる成膜方法を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、そのような成膜方法を実施するために、装置構成の簡単な成膜装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る成膜方法は、原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させて膜を形成するエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法であって、原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルを噴射ノズルから噴射させて、成膜室内に配置された基板に吹き付けることにより、基板上に膜を形成する工程(b)と、工程(b)の後に、噴射ノズルに対する原料粉の供給を遮断すると共に、噴射ノズルにガスを供給して、工程(b)におけるエアロゾルの噴射速度よりも速い速度でガスを噴射させることにより、基板上に形成された膜にガスを吹き付ける工程(c)とを具備する。
【0013】
また、本発明の1つの観点に係る成膜装置は、原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させて膜を形成するエアロゾルデポジション法が用いられる成膜装置であって、原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、基板が配置される成膜室と、該成膜室内に配置され、供給された流体を基板に向けて噴射する噴射ノズルと、エアロゾル生成手段において生成されたエアロゾルを噴射ノズルに供給するための供給経路と、該供給経路を開閉するバルブと、噴射ノズルから噴射させるためのガスを供給するガス供給手段とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成膜工程の後で、原料粉等の粒子をほとんど含まないガスを膜に吹き付けることにより、成膜に寄与しなかった粒子を除去できるので、エアロゾルの吹き付けに影響を与えることなく安定した成膜を行うことができると共に、異物が混入しているおそれのない緻密な膜を容易に作製することができる。また、本発明によれば、噴射ノズルへのエアロゾルの供給を遮断すると共に、その噴射ノズルにガスを供給して噴射させるので、エアロゾルの吹き付け及びガスの吹き付けを、簡単な装置構成で順次行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る成膜装置は、エアロゾル生成室1、振動台2、巻き上げガスノズル3、及び、圧力調整ガスノズル4を含むエアロゾル生成部と、ガス供給調節部3a及び4aと、エアロゾル搬送管5と、エアロゾル搬送管5に設けられたバルブ6と、ガス供給部7及びガス供給調節部7aと、成膜チャンバ8、噴射ノズル9、及び、基板ステージ10を含む成膜部と、排気管11と、真空バルブ12と、制御部13とを含んでいる。制御部13は、本実施形態に係る成膜装置の各部の動作を制御している。
【0016】
エアロゾル生成室1は、原料粉20が配置される容器であり、ここでエアロゾルの生成が行われる。また、エアロゾル生成室1は、原料粉20を攪拌するために、所定の周波数で振動する振動台2の上に設置されている。
巻き上げガスノズル3は、外部のガスボンベから供給されるキャリアガスをエアロゾル生成室1内に導入することにより、サイクロン流を生成する。それにより、エアロゾル生成室1内に配置された原料粉20が巻き上げられて分散し、エアロゾルが生成される。
【0017】
一方、圧力調整ガスノズル4は、外部のガスボンベから供給されるキャリアガスをエアロゾル生成室1内に導入することにより、エアロゾル生成室1内のガス圧を調整する。このようにエアロゾル生成室1内の圧力を制御することにより、エアロゾル生成室1内に発生する気流(巻き上げガス)の速度が制御される。
巻き上げガスノズル3及び圧力調整ガスノズル4によって供給されるキャリアガスとしては、ヘリウム(He)、酸素(O)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、又は、それらの混合ガス、或いは、乾燥空気等が用いられる。
【0018】
ガス供給調節部3a及び4aは、制御部13の制御の下で、巻き上げガスノズル3及び圧力調整ガスノズル4を介してエアロゾル生成室1に供給されるキャリアガスの流量を調節する。ガス供給調節部3a及び4aとしては、マスフローコントローラ等の電磁式制御に対応できるものが用いられる。
エアロゾル搬送管5は、エアロゾル生成室1内において生成されたエアロゾルを、成膜チャンバ8に配置されている噴射ノズル9に供給するための供給経路である。
【0019】
バルブ6は、制御部13の制御の下で、エアロゾル搬送管5におけるエアロゾルの通路を閉じることにより、エアロゾル生成部側から成膜部側へのエアロゾルの供給を遮断する。バルブ6としては、電磁式制御に対応するバルブであれば、L字バルブ、ストレートバルブ、バタフライバルブ、ゲート式バルブ等のいずれの形式を用いることができる。ここで、バタフライバルブとは、バタフライの角度を変化させることにより、バルブの開閉度を調節するバルブのことである。
【0020】
ガス供給部7は、外部のガスボンベから供給されるガスを、エアロゾル搬送管5に供給する。ガス供給部7から供給されるガスとしては、ヘリウム(He)、酸素(O)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、又は、それらの混合ガス、或いは、乾燥空気等が用いられる。このガスの組成は、エアロゾルのキャリアガスと同じであっても良いし、異なっていても良い。このガスは、後述するように、噴射ノズル9から噴射されることにより、基板上に形成された膜の表面から、成膜に寄与しなかった粒子を除去するために用いられる。従って、粒子除去効果を高めるためには、ガスの流速をより早くすることが望ましく、そのために、ヘリウムのように、比較的(例えば、キャリアガスよりも)質量の小さいガスを用いることが望ましい。
【0021】
ガス供給調節部7aは、制御部13の制御の下で、ガス供給部7から供給されるガスの流量を調節している。ガス供給調節部7aとしては、マスフローコントローラ等の電磁式制御に対応できるものが用いられる。
【0022】
成膜チャンバ8の内部は、排気管11に接続されている排気ポンプによって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。真空バルブ12は、制御部13の制御の下でバルブの開閉動作を行うことにより、成膜チャンバ8内の圧力を調節する。真空バルブ12としては、電磁式制御に対応できるものであれば、L字バルブ、ストレートバルブ、バタフライバルブ、ゲート式バルブ等のいずれを用いても良い。
【0023】
噴射ノズル9は、所定の形状及び大きさの開口を有しており、エアロゾル生成室1からエアロゾル搬送管5を介して供給されたエアロゾルや、ガス供給部7から供給されたガスを、開口から基板21に向けて噴射する。
【0024】
基板21が戴置されている基板ステージ10は、基板21と噴射ノズル9との相対位置及び相対速度を制御するための3次元的に移動可能なステージである。この相対速度を調節することにより、1往復あたりに形成される膜の厚さを制御することができる。
【0025】
制御部13は、エアロゾル生成室1において生成されたエアロゾルと、ガス供給部7から供給されたガスとが、噴射ノズル9から交互に噴射されるように各部を制御する。例えば、エアロゾルを噴射させる場合には、バルブ6を開くと共に、ガス供給調節部7aにガスの供給を停止させる。反対に、ガスを噴射させる場合には、バルブ6を閉じると共に、ガス供給調節部7aにガスの供給を開始させる。また、制御部13は、ガス供給部7から供給されるガスが所望の速度で噴射されるように、各部を制御する。例えば、ガスの噴射速度を上げるためには、ガス供給調節部7aにガスの供給量(流量)を増加させたり、成膜チャンバ8内の圧力を低下させる。
【0026】
次に本発明の第1の実施形態に係る成膜方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。この成膜方法は、図1に示す成膜装置において用いられる。
まず、図1に示す成膜装置において、原料粉20をエアロゾル生成室1に配置すると共に、基板21を基板ステージ10上にセットして所定の成膜温度に保つ。また、エアロゾル生成室1内の圧力、及び、成膜チャンバ8内の圧力を所定の値に設定する。
【0027】
次に、図2の(a)に示すように、噴射ノズル9からエアロゾルを噴射させて基板21に吹き付けることにより成膜を行う。エアロゾルは、エアロゾル生成室1内の圧力と成膜チャンバ8内の圧力との間に差を与えることにより、エアロゾル生成室1からエアロゾル搬送管5を介して成膜チャンバ8側に吸引され、その圧力差に応じた速度で噴射ノズル9から噴射される。その際に、基板ステージ10を所定の速度で移動させて、ノズルから噴射されるエアロゾルによって基板21上の所定の領域を所定の回数スキャンすることにより、その領域に膜30が形成される。この膜30は、メカノケミカル反応によって概ね緻密になっているが、圧粉体が堆積している部分が局所的に存在している。
【0028】
次に、図1に示すバルブ6を閉じてエアロゾルの供給を遮断すると共に、ガス供給部7からエアロゾル搬送管5を介して、噴射ノズル9にガスを供給する。それにより、原料粉等の粒子をほとんど含まないガスが噴射ノズル9から噴射される。そして、図2の(b)に示すように、噴射ノズル9から噴射されたガスを基板21上の膜30に吹き付ける。膜30に堆積している圧粉体は下層との結合が弱いので、このようなガスの吹き付けによって除去される。
【0029】
このような成膜工程とガス吹付け工程とを、膜30が所望の厚さになるまで繰り返す。成膜工程におけるスキャン回数とガス吹付け工程におけるスキャン回数との割合は限定されないが、圧粉体を効果的に除去するためには、成膜を1スキャン行う毎にガス吹付け処理を1スキャン行う、即ち、成膜とガス吹付け処理とを交互に行うことが望ましい。それにより、緻密で良質な膜を形成することができる。
【0030】
なお、本実施形態に係る成膜方法においては、ガス吹付け処理を、成膜前の基板21に対して行っても良い。それにより、基板21に付着した汚れを除去して、基板21を清浄化することができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態に係る成膜方法について、図1及び図3を参照しながら説明する。
本実施形態に係る成膜方法は、本発明の第1の実施形態におけるガス吹付け処理の替わりに、噴射速度を上げたエアロゾルを膜30に吹き付けることを特徴としている。
【0032】
ここで、エアロゾルの噴射速度が成膜に適した速度よりも速い場合には、メカノケミカル反応によって原料粉を堆積させることはできず、反対に、形成された膜を削ってしまうブラスト現象が生じる。そこで、図3に示すように、噴射速度を上げたエアロゾルを膜30に吹き付けることにより、膜30に堆積している圧粉体を除去することができる。
【0033】
エアロゾルの噴射速度を上げるためには、例えば、次の3つの方法が考えられる。
第1の方法として、図1に示す巻き上げガスノズル3から供給されるガスの流量を増加させる。それにより、エアロゾル生成室1内の圧力が高くなるので、エアロゾルの噴射速度が速くなる。
【0034】
第2の方法として、図1に示す成膜チャンバ8の真空度を高くする。即ち、エアロゾル生成室1内の圧力と成膜チャンバ8内の圧力との差を大きくすることにより、エアロゾルがより強力に成膜チャンバ8側に吸引されるようになるので、エアロゾルの噴射速度が速くなる。
【0035】
第3の方法として、図1に示すガス供給部7から、キャリアガスよりも質量の小さいガスを供給して、エアロゾル搬送管5を通過するエアロゾルに混合する。それにより、キャリアガスが軽くなるので、エアロゾルの噴射速度が速くなる。
【0036】
本発明の第1及び第2の実施形態に係る成膜方法を用いてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)膜を作製する実験を行った。下記の実施例1〜6、及び、比較例における共通の成膜条件は、次の通りである。
原料粉:PZT粒子、40g(堺化学工業株式会社製のPZT−LQを200℃の
大気中で24時間乾燥させたもの)
基板:YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)基板 25mm角、厚さ1mm
(日本ファインセラミックス株式会社製)
基板温度:600℃
キャリアガスの種類:酸素
巻き上げガス流量:4リットル/分
圧力調整ガス流量:2.5リットル/分
【0037】
また、下記の実施例1〜6、及び、比較例においては、所定の方法によって膜を形成した後に、さらに、800℃で1時間のポストアニールを行った。膜質の評価(絶縁破壊電界の強度)は、このPZT膜について行われた。
【0038】
(実施例1)
図4に示すように、上記の条件の下で、基板上の所定の領域をエアロゾルによって2往復スキャンすることにより膜を形成した後に、成膜に寄与しなかった粒子を除去する処理として、1回分(片道分)のガス吹付け処理を行った。このガス吹付け処理においては、噴射ノズル9へのエアロゾルの供給を遮断すると共に、ガス供給部7から6.5リットル/分の酸素を供給することにより、粒子をほとんど含まない酸素ガスによって膜を片道分スキャンした。このような成膜工程とガス吹付け処理工程とを繰り返して、トータルで20往復分の成膜を行うことにより、厚さが約20μmのPZT膜を得た。
【0039】
(実施例2)
図5に示すように、上記の条件の下で、基板上の所定の領域をエアロゾルによって片道分(往路)スキャンすることにより膜を形成した後に、その領域を酸素ガスによって片道分(復路)スキャンするガス吹付け処理を行った。このガス吹付け処理における条件は、実施例1と同様である。このような成膜工程とガス吹付け処理工程とを繰り返して、トータルで20往復分の成膜を行うことにより、厚さが約20μmのPZT膜を得た。
【0040】
(比較例)
図6に示すように、上記の条件の下で、基板上の所定の領域をエアロゾルによって20往復スキャンすることにより、厚さが約20μmのPZT膜を得た。
【0041】
(結果1)
実施例1及び2、並びに、比較例の結果は、次の通りである。
ガス吹付け処理の割合 ガスの種類 絶縁破壊電界
実施例1 1回/2往復(4スキャン) Oガス 55kV/cm
実施例2 1回/0.5往復(1スキャン) Oガス 63kV/cm
比較例 なし 48kV/cm
ここで、ガス吹付け処理の割合は、(ガス吹付けのスキャン回数)/(成膜のスキャン量(スキャン回数))を表している。
上記の結果から、ガス吹付け処理を行うことにより、絶縁破壊電界の高い膜が得られることが確認された。また、ガス吹付け処理の割合が高いほど、膜の絶縁破壊電界が高くなることが明らかになった。
【0042】
(実施例3)
実施例1におけるのと同様に、2往復分の成膜と片道分のガス吹付け処理とを繰り返すことにより、厚さが約20μmのPZT膜を得た。また、ガス吹付け処理においては、実施例1に対して、図1に示すガス供給部7からのガス供給量を8リットル/分に増加させた。
【0043】
(結果2)
実施例3の結果を、実施例1及び比較例と比較して次に示す。
ガスの流量 絶縁破壊電界
実施例3 8リットル/分 58kV/cm
実施例1 6.5リットル/分 55kV/cm
比較例 なし 48kV/cm
上記の結果から、ガス吹付け処理においてガスの流量を増加させることにより、膜の絶縁破壊電界が高くなることが明らかになった。
【0044】
(実施例4)
実施例1におけるのと同様に、2往復分の成膜と片道分のガス吹付け処理とを繰り返すことにより、約20μmのPZT膜を得た。また、ガス吹付け処理においては、実施例1に対して、図1に示すガス供給部7からヘリウムガスを供給した。また、ガスの流量については、実施例1と同様に、6.5リットル/分とした。
【0045】
(結果3)
実施例4の結果を、実施例1及び比較例と比較して次に示す。
ガスの種類 絶縁破壊電界
実施例4 ヘリウム 57kV/cm
実施例1 酸素 55kV/cm
比較例 なし 48kV/cm
上記の結果から、ガス吹付け処理において、より質量の小さいガスを用いることにより、膜の絶縁破壊電界が高くなることが明らかになった。これは、軽いガスを用いることにより、噴射ノズル9(図1)から噴射されるガスの流速が早くなるので、圧粉体等を吹き飛ばす効果が高まったためと考えられる。
【0046】
(実施例5)
図4に示すガス吹付け処理の替わりに、成膜に寄与しなかった粒子を除去する処理として、噴射速度を速くしたエアロゾルの吹付けを行った。このエアロゾル吹付け処理においては、圧力調整ガス流量を、成膜中の2.5リットル/分に対して、4リットル/分に増加させた。即ち、トータルのキャリアガス流量を6.5リットル/分から8リットル/分に増加させた。そして、2往復分の成膜と片道分のエアロゾル吹付け処理とを繰り返すことにより、約20μmのPZT膜を得た。
(実施例6)
図5に示すガス吹付け処理の替わりに、成膜に寄与しなかった粒子を除去する処理として、噴射速度を速くしたエアロゾルの吹付けを行った。このエアロゾル吹付け処理は、実施例5におけるものと同様である。そして、片道分の成膜と片道分のエアロゾル吹付け処理とを繰り返すことにより、約20μmのPZT膜を得た。
【0047】
(結果4)
実施例5及び6の結果を、比較例と比較して次に示す。
吹付け処理の割合 エアロゾルの流量 絶縁破壊電界
実施例5 1回/2往復(4スキャン) 8L/分 53kV/cm
実施例6 1回/0.5往復(1スキャン) 8L/分 55kV/cm
比較例 なし 48kV/cm
ここで、吹付け処理の割合は、(噴射速度を速くしたエアロゾル吹付けのスキャン回数)/(成膜のスキャン量(スキャン回数))を表している。
【0048】
上記の結果から、噴射速度を速くしたエアロゾルの吹付け処理を行うことによっても、膜の絶縁破壊電界が高くなることが確認できた。また、このエアロゾル吹付け処理を行うことにより膜の硬度が高くなり、このエアロゾル吹付け処理の割合が高くなるほど、その傾向は顕著となった。
【0049】
以上説明した本発明の第1及び第2の実施形態においては、図1に示すガス供給調節部3a、4a、及び、7a、並びに、バルブ6及び12の動作を制御部13によって自動制御しているが、それらの動作を手動で制御しても良い。その場合には、電磁式制御に対応していないバルブや通常のフローメータを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、原料粉を基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法及び成膜装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る成膜方法を説明するための模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る成膜方法を説明するための模式図である。
【図4】2往復分の成膜に対して1回分(片道分)のガス吹付け処理を行う場合におけるノズルのスキャン方法を示す図である。
【図5】片道分の成膜に対して1回分(片道分)のガス吹付け処理を行う場合におけるノズルのスキャン方法を示す図である。
【図6】成膜のみを行う場合におけるノズルのスキャン方法を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 エアロゾル生成室
2 振動台
3 巻き上げガスノズル
3a、4a、7a ガス供給調整部
4 圧力調整ガスノズル
5 エアロゾル搬送管
6 バルブ
7 ガス供給部
8 成膜チャンバ
9 噴射ノズル
10 基板ステージ
11 排気管
12 真空バルブ
13 制御部
20 原料粉
21 基板
30 膜




 

 


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