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発明の名称 セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−56102(P2007−56102A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−241351(P2005−241351)
出願日 平成17年8月23日(2005.8.23)
代理人 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平
発明者 大松 禎 / 深川 伸隆 / 高橋 修
要約 課題
偏光板用の保護フィルムとして使用する場合の、高温高湿における耐久性が向上したセルロースアシレートフィルムの提供。高温高湿における耐久性に優れる偏光板や光学補償機能の付いた偏光板、前記偏光板を用いた液晶表示装置の提供。

解決手段
添加剤を含有するセルロースアシレートフィルムであって、所定の方法で測定されたときの偏光子中への添加剤泳動量が0mg/m2以上100mg/m2以下であるセルロースアシレートフィルム、及び、溶媒を除いた全成分中に1質量%以上含まれる添加剤が、全て分子量とlogP値の積が1500以上であり、該添加剤の1種類以上を該固形分の総質量に対して1〜30質量%の範囲で含むセルロースアシレート溶液を流延製膜し作製するセルロースアシレートフィルムの製造方法、並びにこれらのセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置。
特許請求の範囲
【請求項1】
添加剤を含有するセルロースアシレートフィルムであって、下記で定義される偏光子中への添加剤泳動量が0mg/m2以上100mg/m2以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(偏光子中への添加剤泳動量:偏光子の片側の面に、上記セルロースアシレートフィルムを、接着剤を使用せずに直接密着して合わせ、偏光子の反対側の面には、添加剤を含まないセルロースアシレートフィルムを、接着剤を使用して貼り合せて積層物を形成させ、更に該積層物の、添加剤を含まないセルロースアシレートフィルムをガラス板側にして、粘着剤によりガラス板に貼り合せた状態のものを作製し、それぞれの部材が密着した状態を維持したまま60℃、95%RHの雰囲気下に120時間静置後の偏光子中に存在する添加剤の量)
【請求項2】
フィルムの総質量に対する割合(平均含有率)が1質量%以上となる1種類以上の添加剤の、分子量とlogP値の積が、いずれも1500以上である請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項3】
添加剤のフィルム膜厚方向の分布が、少なくとも一方のフィルム表面から5μm深さまでの部分における添加剤の含有率が、フィルム全膜厚における添加剤の平均含有率に対して50%以下となるような分布である請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項4】
セルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項5】
2層以上の積層体の少なくとも片側の最表層に、分子量とlogP値の積が1500以上の添加剤のみを含む層を有する請求項4に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項6】
セルロースアシレートフィルムの密度が1.31g/cm3以上である請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項7】
溶媒を除いた全成分中に1質量%以上含まれる添加剤が、全て分子量とlogP値の積が1500以上であり、該添加剤の1種類以上を溶媒を除いた全成分の総質量に対して1〜30質量%の範囲で含むセルロースアシレート溶液を流延製膜し作製することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項8】
セルロースアシレート溶液を金属支持体上に流延する流延工程と、流延したドープ膜を金属支持体から剥離し、剥離した直後から該ドープ膜の溶媒含量が10質量%となるまでの乾燥時間が10分以上となるように乾燥する乾燥工程とを含む請求項7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項9】
セルロースアシレート溶液を、それぞれ複数の異なるダイから積層して流延し製膜することにより、少なくとも一方のフィルム表面から5μm深さまでの部分の総質量に対する5μm深さまでの部分に含まれる添加剤の含有率が全膜厚におけるフィルム質量に対する全膜厚中に含まれる添加剤の平均含有率に対して50%以下となるようにする請求項7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項10】
セルロースアシレート溶液を、それぞれ複数の異なるダイから積層して流延し製膜することにより、少なくとも一方のフィルム表面から5μm深さまでの最表層が、分子量とlogP値の積が1500以上の添加剤のみを含むように形成する請求項7に記載のセルロ
ースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項11】
セルロースアシレート溶液を金属支持体上に流延する流延工程と、流延したドープ膜を金属支持体から剥離し、剥離したドープ膜を少なくとも溶媒含率が10質量%となるまで、テンターで保持しながら、ドープ膜のガラス転移温度Tg(℃)に対して、下記数式(1)を満たす乾燥温度Td(℃)の条件で乾燥する乾燥工程とを含む請求項7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
数式(1):Tg≦Td≦Tg+50
【請求項12】
偏光子の両面に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が、請求項1〜6のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、または請求項7〜11のいずれかに記載の製造方法により作製されたセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項13】
保護フィルムの少なくとも片方の面上に、光学異方性層を有する請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
保護フィルムの少なくとも片方の面上に、位相差フィルムが積層されてなる請求項13に記載の偏光板。
【請求項15】
液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも1方の偏光板が請求項12〜14のいずれかに記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、消費電力の小さい少スペースの画像表示装置として年々用途が広がっている。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であったが、近年、VAモード、IPSモード等の高視野角液晶モードが実用化されており、これによりテレビ等の高視野角が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
【0003】
これに伴い、液晶表示装置に用いられる偏光板に対しても一段と高い性能が要求され始めており、偏光板にある種の光学補償機能を付与したものが広く用いられるようになってきている。
【0004】
液晶表示装置用の偏光板としては、ヨウ素で染色されたポリビニルアルコール系フィルムを延伸した偏光子に、両側から偏光板保護フィルムを貼り合わせたものを用いることが一般的である。偏光板への光学補償機能の付与は、偏光板の保護フィルムに光学異方性層を塗布するか又は、延伸ポリマーフィルム等の位相差フィルムを貼り合わせることが一般的である。従来、偏光板保護フィルムには、ポリカーボネート、ポリエチレンフタレート等の他のポリマーフィルムに比べてレターデーションが小さく、また偏光子との貼り合わせ適性が良好なセルロースアシレートフィルムが使用されてきた。
【0005】
一方、液晶表示装置における他の課題として、一般的に用いられる上記のポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子を含む偏光板の耐久性が十分ではなく、温湿度による劣化が起こってしまい、経時での偏光度低下によるコントラストの低下により表示品質が劣化することが問題となっている。
【0006】
偏光板の劣化の要因の一つとしては、水分によるものが考えられている。偏光子は、通常延伸したポリビニルアルコールのホウ酸架橋により配向が固定されているが、雰囲気中の水分の影響により、ポリビニルアルコールの架橋剤であるホウ酸が抜けてポリビニルアルコールの配向規制力を低下させ、結果的に偏向度が低下して偏光板の劣化を招くと考えられている。
一方、保護フィルム中の透湿度を低下させることで、水分による劣化を減じ、偏光板保護フィルムの性能変化を小さくする技術が提案されており(特許文献1)、結果的に水分に対する偏光板耐久性を向上させることができるものと考えられる。
【特許文献1】特開2005−89668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、様々な使用環境における偏光板性能の耐久性を向上させる、偏光板用保護フィルムとして有用なセルロースアシレートフィルムを提供することである。
【0008】
また、本発明の別の目的は、光学性能と耐久性に優れる偏光板を得ることである。
【0009】
また、本発明の更なる目的としては、耐久性に優れ、更に液晶表示装置用の光学補償性
能に優れた、偏光板を得ることである。
【0010】
更なる別の目的としては表示性能と耐久性に優れる液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが偏光板耐久性を向上させることを目的に鋭意検討した結果、偏光板劣化のその他の原因として、従来考えられていなかったことだが、偏光板の保護フィルムとして使用しているセルロースアシレートフィルム中に含まれる添加剤が、経時的に偏光子の側に移動し、また場合によっては更にこの添加剤が分解することで、ポリビニルアルコールの配向規制力を低下させるか、又は直接ヨウ素に作用して偏光度を低下させ、結果的に偏光板の耐久性を劣化させることがあることがわかった。そこで、該添加剤の偏光子への泳動を抑制することで、偏光板耐久性をより向上させることができるものと考えた。
【0012】
本発明者らがさらに鋭意検討した結果、セルロースアシレート中に含有する添加剤の分子量とlogP値の積を特定の範囲内とすることで、温湿度による経時での偏光子への添加剤の泳動を抑制でき、偏光板の耐久性を向上させることができることを見出した。
【0013】
また製膜する方法として、テンター乾燥工程においてフィルムの自己支持性があり、且つ溶媒含有率が多い状態での乾燥速度を特定の範囲とするか、又は共流延法により複数層を積層したフィルムを製膜することで、面状を悪化させることなくフィルム表面近傍の添加剤含有率を低下させることができ、それにより添加剤の泳動を抑制することが可能となることを知った。
【0014】
また別の方法としては、テンター乾燥工程においてフィルムの自己支持性があり、且つ溶媒含有率が多い状態での乾燥温度をフィルムのTgより大きくすることで、面状を維持したままセルロースアシレートフィルム中の自由体積を低減させることができ、このことによりさらに添加剤の泳動を抑制することが可能となって、偏光板の耐久性をより向上させることができることがわかった。
【0015】
すなわち、本発明は以下の手段により解決することができることを見出した。
【0016】
[1]添加剤を含有するセルロースアシレートフィルムであって、下記で定義される偏光子中への添加剤泳動量が0mg/m2以上100mg/m2以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(偏光子中への添加剤泳動量:偏光子の片側の面に、上記セルロースアシレートフィルムを、接着剤を使用せずに直接密着して合わせ、偏光子の反対側の面には、添加剤を含まないセルロースアシレートフィルムを、接着剤を使用して貼り合せて積層物を形成させ、更に該積層物の、添加剤を含まないセルロースアシレートフィルムをガラス板側にして、粘着剤によりガラス板に貼り合せた状態のものを作製し、それぞれの部材が密着した状態を維持したまま60℃、95%RHの雰囲気下に120時間静置後の偏光子中に存在する添加剤の量)
【0017】
[2]フィルムの総質量に対する割合(平均含有率)が1質量%以上となる1種類以上の添加剤の、分子量とlogP値の積が、いずれも1500以上である上記[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[3]添加剤のフィルム膜厚方向の分布が、少なくとも一方のフィルム表面から5μm深さまでの部分における添加剤の含有率が、フィルム全膜厚における添加剤の平均含有率に対して50%以下となるような分布である上記[1]又は[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0018】
[4]セルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体からなるものである上記[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
[5]2層以上の積層体の少なくとも片側の最表層に、分子量とlogP値の積が1500以上の添加剤のみを含む層を有する上記[4]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[6]セルロースアシレートフィルムの密度が1.31g/cm3以上である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0019】
[7]溶媒を除いた全成分中に1質量%以上含まれる添加剤が、全て分子量とlogP値の積が1500以上であり、該添加剤の1種類以上を溶媒を除いた全成分の総質量に対して1〜30質量%の範囲で含むセルロースアシレート溶液を流延製膜し作製したことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0020】
[8]セルロースアシレート溶液を金属支持体上に流延する流延工程と、流延したドープ膜を金属支持体から剥離し、剥離した直後から該ドープ膜の溶媒含量が10質量%となるまでの乾燥時間が10分以上となるように乾燥する乾燥工程とを含む上記[7]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0021】
[9]セルロースアシレート溶液を、それぞれ複数の異なるダイから積層して流延し製膜することにより、少なくとも一方のフィルム表面から5μm深さまでの部分の総質量に対する5μm深さまでの部分に含まれる添加剤の含有率が全膜厚におけるフィルム質量に対する全膜厚中に含まれる添加剤の平均含有率に対して50%以下となるようにする上記[7]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0022】
[10]セルロースアシレート溶液を、それぞれ複数の異なるダイから積層して流延し製膜することにより、少なくとも一方のフィルム表面から5μm深さまでの最表層が、分子量とlogP値の積が1500以上の添加剤のみを含むように形成する上記[7]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0023】
[11]セルロースアシレート溶液を金属支持体上に流延する流延工程と、流延したドープ膜を金属支持体から剥離し、剥離したドープ膜を少なくとも溶媒含率が10質量%となるまで、テンターで保持しながら、ドープ膜のガラス転移温度Tg(℃)に対して、下記数式(1)を満たす乾燥温度Td(℃)の条件で乾燥する乾燥工程とを含む請求項7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
数式(1):Tg≦Td≦Tg+50
【0024】
[12]偏光子の両面に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、または上記[7]〜[11]のいずれかに記載の製造方法により作製されたセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
【0025】
[13]保護フィルムの少なくとも片方の面上に、光学異方性層を有する上記[12]に記載の偏光板。
[14]保護フィルムの少なくとも片方の面上に、位相差フィルムが積層されてなる上記[13]に記載の偏光板。
【0026】
[15]液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、その少なくとも1方の偏光板が上記[12]〜[14]のいずれかに記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0027】
様々な使用環境における偏光板性能の耐久性を向上させる、偏光板用保護フィルムとして有用なセルロースアシレートフィルム、光学性能と耐久性に優れる偏光板、さらには耐久性とともに液晶表示装置用の光学補償性能に優れた偏光板、表示性能と耐久性に優れる液晶表示装置を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<セルロースアシレートフィルム>
以下に本発明のセルロースアシレートフィルムの詳細を説明する。
【0029】
[フィルム中の添加剤の高温高湿条件における移動量]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板用の保護フィルムとして使用する場合、高温高湿条件での偏光板の耐久性を向上させるためには、耐久性試験後のフィルム中に含まれる添加剤の偏光子への移動量(添加剤泳動量)を小さくする必要がある。
【0030】
本発明における高温高湿条件での耐久性試験におけるセルロースアシレート中に含まれる添加剤の偏光子への移動量は、以下のモデル系にて評価する。すなわち、添加剤を含むセルロースアシレートフィルムを偏光子の片方の面に直接密着して合わせ、また偏光子の反対側の面には、添加剤を含まないセルロースアセテートフィルム(アセチル置換度2.86、膜厚80μm、密度1.295)を接着剤を使用して貼り合せてモデル偏光板を作製し、更に該モデル偏光板の添加剤を含まないセルロースアセテートフィルムをガラス板側にして、粘着剤にてガラス板に貼り合せた状態のものを作製し、このガラス板に貼り合わされたモデル偏光板を60℃、95%RHの条件下に120時間静置経時し、経時後の偏光子側に移動した添加剤量を、HPLCを用いて定量することで、偏光子中へ移動した添加剤量を求める。
【0031】
本発明におけるセルロースアシレートフィルム中の添加剤の前記測定条件における移動量は、具体的には0mg/m2以上100mg/m2以下であり、0mg/m2以上50mg/m2以下であることが好ましく、0mg/m2以上10mg/m2以下であることが更に好ましく、0mg/m2以上5mg/m2以下であることがもっとも好ましい。移動量が100mg/m2より大きい場合には、添加剤が移動したことにより偏光子中のPVA又はヨウ素の配向度を低下させることで偏光度を低下させてしまい、結果的に偏光板の耐久性を劣化させてしまう。
【0032】
〔セルロースアシレート〕
本発明のセルロースアシレートフィルムを形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきたトリアセチルセルロースに代表されるセルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることができる。
【0033】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745号(7頁〜8頁)に記載されているが、本発明は、該記載に制限されるものではない。
【0034】
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素数が2のアセチル基から炭素数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換するアセチル基及び/又は炭素数3〜22のアシル基の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTM D−817−91に準じて実施することができる。
【0035】
本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることが望ましい。さらには置換度が2.60〜2.99であることが望ましく、2.65〜2.98であることがより望ましい。
【0036】
セルロースの水酸基に置換する炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル又は芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、i−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどの各基を挙げることができる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどの各基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。
【0037】
本発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基としては、作製されるフィルムのTgが低くなく、また弾性率が低くないため取扱い性が良好であることから、セルロースの水酸基に置換するアシル置換基がアセチル基のみからなる場合が好ましい。また置換度については、フィルムの光学異方性を所望の領域に制御する観点と、更に添加剤との相溶性、使用する有機溶媒への溶解性の観点で、用途によって異なるがフィルムの光学異方性を大きくしたい場合は置換度はより小さい方が好ましく、具体的には置換度が2.50〜3.00であることが好ましく、2.60〜2.90であることがより好ましく、2.65〜2.85であることが更に好ましい。またフィルムの光学異方性を小さくしたい場合は置換度をより大きくする方が好ましく、具体的には置換度が2.60〜3.00であることが好ましく、2.70〜2.99であることがより好ましく、2.80〜2.98であることが更に好ましい。
【0038】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎることがなければセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなりすぎることがなく、流延によりフィルム作製が困難になるなどの問題も生じない。重合度が低すぎることがなければ作製したフィルムの強度が低下するなどの問題が生じない。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0039】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましく、2.3〜3.3であることが最も好ましい。
【0040】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
【0041】
本発明におけるセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは水を含有しており、2.5〜5質量%の含水率が知られている。本発明でセルロースアシレートの含水率を1質量%以下にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明で用いるこれらのセルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0042】
本発明に用いるセルロースアシレートは、置換基、置換度、重合度、分子量分布などが前述した範囲であれば、それぞれ単独で又は異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0043】
〔添加剤〕
次に、本発明のセルロースアシレートフィルム中に含有される添加剤について可塑剤を例として説明する。
【0044】
[可塑剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムに用いることのできる可塑剤としては、特に限定しないが、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤などを好ましく用いることができる。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等があり、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等があり、これらを単独又は併用して用いるのが好ましい。
【0045】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムに含有することができるその他の可塑剤としては、特開2004−315613号公報に記載の化合物等を上げることができる。
【0046】
上記可塑剤として用いることのできる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜12である化合物が好ましい。化合物のlogP値が12以下であれば、セルロースアシレートとの相溶性が優れており、フィルムの白濁や粉吹きを生じるなどの問題が生じないので好ましい。またlogP値が0以上であれば、親水性が高くなりすぎてセルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させるなどの問題が生じないので好まし
い。
【0047】
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ震盪法により実施することができる。またオクタノール−水分配係数(logP値)は、実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,27巻、p.21(1987年)}、Viswanadhan’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,29巻、p.163(1989年)}、Broto’s fragmentation法{“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p.71(1984年)}などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法がより好ましい。ある化合物のlogPの値が、測定方法又は計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断するものとする。
【0048】
前記可塑剤として用いることのできる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
【0049】
また、本発明者らが鋭意検討した結果、添加剤として可塑剤を含有する本発明のセルロースアシレートフィルムを、偏光板用の保護フィルムとして使用する場合に、高温高湿条件における可塑剤の泳動を抑制し、結果的に高温高湿条件における偏光板耐久性を向上させる目的で、フィルム中の含有率が1質量%以上の可塑剤のlogP値と分子量との積が1500以上10000以下であることが好ましい。
【0050】
ここで、本発明におけるフィルム中の添加剤の平均含有率とは、フィルムの総質量に対する添加剤の質量の割合を示す。またフィルムの一部分(例えばフィルム表面から5μm深さまでの部分など)における添加剤の含有率とは、そのフィルムの部分の質量に対する、その部分に存在する添加剤の質量の割合を示す。フィルム中の添加剤の平均含有率が1質量%以上の場合には、添加剤の偏光子への泳動性が大きすぎなければ泳動量が大きくなって偏光板耐久性を悪化させることがないので、添加剤のlogP値と分子量の積が上記の範囲内となるように所望の添加剤(例えば可塑剤)の種類の中からを選択することが好ましい。一方、フィルム中の添加剤の平均含有率が1質量%より小さい場合には、偏光板耐久性試験における添加剤の泳動性が大きくても偏光板耐久性の悪化は大きくない。
【0051】
添加剤の泳動性がlogP値と分子量の積の範囲で規定できる理由は定かではないが、より疎水性の化合物の方が泳動量が小さいこと、同じ程度の親水性でも分子量が大きければ泳動距離はその分小さくなり、結果として泳動量が小さくなることなどが考えられる。logP値と分子量の積は、大きいほどより好ましく、1700以上であることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましく、3000以上であることがより更に好ましい。
また、これらの好ましい範囲は、後述する紫外線吸収剤等やほかの添加剤についても同様にあてはまる。
【0052】
さらに、セルロースアシレートフィルムへの溶解性の観点で、添加剤のlogP値と分子量の積は10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、6000以下であることが更に好ましい。10000以下であれば、セルロースアシ
レートフィルム中に添加して使用した場合に添加剤とセルロースアシレートフィルムとの相溶性が良好であり、添加剤のフィルム表面への泣き出しやフィルムが白く濁るなどの面状や光透過性に問題を生じることがないので好ましい。
また、これらの好ましい範囲は、後述する紫外線吸収剤等やほかの添加剤についても同様にあてはまる。
【0053】
これら前記のlogP値と分子量との積が1500以上となる可塑剤の例としては、リン酸エステル系では、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート等があげられ、またフタル酸エステル系では、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソノニルフタレート等があげられる。これら可塑剤は、単独で用いても、また2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0054】
本発明で好適に用いることのできる可塑剤は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また該可塑剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0055】
上記可塑剤は、セルロースアシレートの0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0056】
上記可塑剤を添加する時期は、ドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0057】
[紫外線吸収剤]
次に、本発明のセルロースアシレートフィルムに使用することができる添加剤の次の例として紫外線吸収剤について説明する。
【0058】
本発明の紫外線吸収剤の紫外領域の吸収帯範囲は、偏光子や液晶の劣化防止の観点から波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0059】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、特開平8−337574号、特開平6−148430号の各公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0060】
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0061】
また、市販品として、「チヌビン(TINUVIN)109」、「チヌビン(TINUVIN)171」、「チヌビン(TINUVIN)326」、「チヌビン(TINUVIN)328」{何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}を好ましく使用できる。
【0062】
一般に、液晶表示装置に用いられる光学部材には、透過率が優れたものが要求されており、可視域における分光透過率が優れていることが要求される。本発明のセルロースアシレートフィルムが上記紫外線吸収剤を含有する場合には、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、且つ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることが望ましい。
【0063】
上述のような、本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
【0064】
また、本発明の紫外線吸収剤は、特に高温高湿条件における偏光板耐久性を向上させる観点で、前記可塑剤と同様に、フィルム中の含有率が1質量%以上となる場合には、化合物の分子量とlogP値の積が1500以上となる化合物であることが好ましい。logP値と分子量の積は、大きいほどより好ましく、1700以上であることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましく、3000以上であることがより更に好ましい。
【0065】
これらの範囲を満たす紫外線吸収剤の例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ペンチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等があげられる。
【0066】
また、これらの紫外線吸収剤は、取り扱い性とドープへの溶解性の観点で、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。またレターデーションを低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0067】
(紫外線吸収剤の添加量)
上述した本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜10質量%であることが特に好ましい。
【0068】
(紫外線吸収剤の添加方法)
またこれら紫外線吸収剤は、単独で用いても、2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
また紫外線吸収剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ作製工程の最後に行ってもよい。
【0069】
[劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤など]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、前記可塑剤、紫外線吸収剤の他に、用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、剥離剤、光学特性調整剤、赤外吸収剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤の混合や、同様の可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。
【0070】
また、光学特性調整剤としては、フィルムのRe/Rthを任意に制御可能な化合物であれば良く、例えば特開2005−99191号、特開2005−113108号各公報に記載の化合物を使用することが出来る。
さらにまた、赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されたものが使用できる。
さらにこれら添加剤を添加する時期は、ドープ作製工程(セルロースアシレート溶液の作製工程)において何れの時期でもよいが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加するのがよい。更にまた、各添加剤の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
またさらに、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよく、例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0071】
[各添加剤添加の比率]
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、各添加剤の分子量とlogP値の積が1500以上である添加剤の総量は、溶媒を除いた全成分の総質量に対して1〜30%であることが望ましい。より好ましくは1〜25%であり、さらに望ましくは1〜20%である。これらの添加剤としては、上述したように、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤などであり、それらそれぞれの分子量とlogP値の積は1500以上であることが望ましく、1700以上であることがより望ましく、2000以上であることがさらに望ましく、3000以上がより更に望ましい。これら添加剤の総量が5質量%以上であれば、セルロースアシレート単体の性質が出にくくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度などの変動が抑制できるので好ましい。またこれら化合物の総量が30質量%以下であれば、セルロースアシレートフィルム中に各添加剤がよく相溶して、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じにくいので好ましい。
【0072】
[添加剤の膜厚方向の分布]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板用の保護フィルムとして使用した場合の、高温高湿条件における添加剤の偏光子への泳動による偏光板性能の劣化を抑制するため、添加剤のフィルム表面近傍(表層部分)に存在する添加剤の割合を低減させることが好ましい。すなわち、添加剤のフィルム膜厚方向の分布が、フィルム表面から深さ5μmまでの表層部分における添加剤の含有率が、フィルム全体(全膜厚)における添加剤の平均含有率に対して50%以下となるような分布であることが好ましく、0%以上40%
以下であることがより好ましく、0%以上30%以下であることが更に好ましい。
【0073】
フィルムの各部分における添加剤の含有率、及びフィルム全体部分(全膜厚)における添加剤の平均含有率は、以下のようにして求めた。すなわち、フィルム試料を表面からミクロトームで5μm毎の層に剃り落とし、剃り落としたフィルム表面からの深さの異なる各層の試料について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でフィルム各層中の添加剤量を定量し、下記数式(2)により各層毎の添加剤の含有率(Ce)を求め、これら全データの平均をフィルム全体の平均含有率(Ct)とした。
数式(2):各層中の添加剤の含有率(Ce)(質量%)=(剃り落とした試料中の添加剤質量)/(剃り落とした試料の質量)×100
【0074】
また上記のフィルム各層の添加剤含有率のうち、特にフィルム表層部分(フィルム表面から深さ5μmまでの部分)の添加剤含有率(Cs)とし、下記数式(3)に従って「フィルム表面近傍の添加剤分布」を求めた。
数式(3):フィルム表面近傍の添加剤分布(%)={表層5μmの添加剤含有率(Cs)}/{フィルム全体の添加剤平均含有率(Ct)}×100
【0075】
また、別の好ましい分布としては、フィルムの表層部分(表面から深さ5μmの部分)に含まれる添加剤の分子量とlogP値の積が、すべて1500以上であることが好ましい。フィルムの表層部分における添加剤が全て上記範囲内を満たすことにより、偏光板耐久性試験における添加剤の泳動量を抑制することができ、偏光板耐久性を向上させることができる。表層部分に含まれる添加剤の分子量とlogP値の積は大きいほどより好ましく、1700以上であることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましく、3000以上であることがより更に好ましい。さらに、セルロースアシレートフィルムへの溶解性の観点で、添加剤のlogP値と分子量の積は10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、6000以下であることが更に好ましい。
【0076】
〔その他の添加物〕
本発明のセルロースアシレートフィルムには、前記添加剤の他に、種々の添加物(マット剤微粒子など)を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程(セルロースアシレート溶液の作製工程)における何れでもよいが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加し調製する工程を行ってもよい。
【0077】
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/L以上が好ましく、100〜200g/L以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0078】
これらの微粒子は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μmの二次粒子を形成しており、フィルム中では一次粒子の凝集体として存在して、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。二次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。一次、二次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0079】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、「アエロジルR972」、「アエロジルR972V」、「アエロジルR974」、「アエロジルR812」、「アエロジル200」、「アエロジル200V」、「アエロジル300」、「アエロジルR202」、「アエロジルOX50」、「アエロジルTT600」{以上、日本アエロジル(株)製}などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、「アエロジルR976」及び「アエロジルR811」{以上、日本アエロジル(株)製}の商品名で市販されており、使用することができる。
【0080】
これらの中では「アエロジル200V」及び「アエロジルR972V」が、一次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0081】
本発明において、二次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るため、微粒子の分散液を調製する際に、いくつかの手法が考えられる。例えば、溶媒と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液を予め作製し、この微粒子分散液を、別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレート溶液(ドープ液)と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。他にも、溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶媒などと混合して分散するときの、二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0082】
使用される溶媒は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましい。
【0083】
〔セルロースアシレート溶液の有機溶媒〕
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、この方法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。
【0084】
本発明では、セルロースアシレート溶液を、後述する流延工程にて金属支持体上に流延して形成した未乾燥状態のドープ膜のゲル化を促進させ、剥離性を良化させ、また一方で作製するフィルムの弾性率を高くする目的で、セルロースアシレートを溶解する有機溶媒として、少なくとも2種類以上のアルコール系溶媒を含有することが好ましい。アルコール系溶媒としては、炭素数1〜8のアルコールであればいずれのアルコールを用いてもよい。また、少なくとも1種類は炭素数3〜8のアルコールであることが好ましく、炭素数
4〜6であることがより好ましい。また、溶媒組成中のアルコール含率は0.1〜40質量%のいずれでもよく、1.0〜30質量%がより好ましく、2.0〜20質量%が更に好ましい。
【0085】
また、本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル及び、炭素数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。主溶媒としては、塩素系溶媒か、又は酢酸エステルであることが好ましく、メチレンクロリド、又は酢酸メチルであることがより好ましい。
【0086】
以上、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては、塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としてもよい。
【0087】
その他、本発明のセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876号公報、特開平12−95877号公報、特開平10−324774号公報、特開平8−152514号公報、特開平10−330538号公報、特開平9−95538号公報、特開平9−95557号公報、特開平10−235664号公報、特開平12−63534号公報、特開平11−21379号公報、特開平10−182853号公報、特開平10−278056号公報、特開平10−279702号公報、特開平10−323853号公報、特開平10−237186号公報、特開平11−60807号公報、特開平11−152342号公報、特開平11−292988号公報、特開平11−60752号公報、特開平11−60752号公報などに記載されている。これらの特許によると、本発明におけるセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0088】
〔セルロースアシレートフィルムの各製造工程〕
[溶解工程]
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ溶液)の調製に際して、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解でもよく、また冷却溶解法又は高温溶解方法でもよく、さらにはこれらの組み合わせで実施されてもよい。
【0089】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、高温高湿条件における添加剤のフィルムからの泳動を低減させる目的で、使用する化合物とセルロースアシレートとの相互作用をより有効にするために、溶解工程において下記数式(4)で表される条件を満たす加熱溶解工程を含むことが好ましい。
数式(4):BP(℃)+5≦加熱温度(℃)≦BP(℃)+70(℃)
[但し、BP(℃)は前記セルロースアシレート溶液において使用する溶媒のうち最も沸点の低い溶媒の沸点を表す。]
【0090】
化合物とセルロースアシレートとの相互作用をより有効にするため、加熱温度範囲は、下記数式(4−1)の範囲であることが好ましく、下記数式(4−2)の範囲であることがより好ましく、下記数式(4−1)の範囲であることが更に好ましい。
数式(4−1):BP(℃)+10≦加熱温度(℃)≦BP(℃)+65(℃)、
数式(4−2):BP(℃)+20≦加熱温度(℃)≦BP(℃)+60(℃)、
数式(4−3):BP(℃)+30≦加熱温度(℃)≦BP(℃)+55(℃)。
【0091】
また、本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、濾過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程も好ましく用いられる。
【0092】
(ドープ溶液の透明度)
本発明におけるセルロースアシレート溶液である、ドープ溶液(以下、単にドープということがある)の透明度としては、85%以上であることが望ましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることが望ましい。本発明においては、セルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解している。具体的なドープの透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計{例えば“UV−3150”、(株)島津製作所製}で550nmの吸光度を測定する。溶媒のみを予めブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度とドープの吸光度との比からドープの透明度を算出する。
【0093】
[流延、乾燥、巻き取り工程]
次に、本発明におけるセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いたフィルムの製造方法について述べる。
【0094】
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供される、溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)で調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調整をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、次いでドープを加圧型ダイの口金(スリット)から、エンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを、乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して、巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせは、その目的により変わる。
【0095】
本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途としての、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0096】
(添加剤の泳動を抑制する第一の手段)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法において、偏光板の保護フィルムとして使用した場合の、高温高湿条件における添加剤の泳動を抑制する第一の手段としては、添加剤の表面(表層部)含率を低減させる目的で、テンター部乾燥工程における乾燥条件を特定の範囲内とすることが好ましい。すなわち、セルロースアシレート溶液(ドープ)を支持体上に流延し、自己支持性を有する生乾きの状態で支持体より剥離した溶媒含率が20〜50質量%のドープ膜に対し、溶媒含率が10質量%となるまでの乾燥時間が10分以上となるように充分に乾燥速度を遅くすることにより、フィルム表面近傍の添加剤含率を低下させることができる。ここで、本発明における自己支持性を有する状態とは、ドープがゲル化して膜としての形態を維持できる状態であり、支持体より剥離する時に、剥離できない部分が生じたり、場合によっては破れてしまうなどの問題が無く剥離でき、膜として取り扱える状態のことを示す。
【0097】
この理由は定かではないが、セルロースアシレートや溶媒との親和性・相溶性の良好なlogP値が0〜12の化合物においては、フィルム表面からの溶媒の揮散に伴って、膜厚方向の表面から中央部分にいくにつれて溶媒の濃度が高くなるように濃度勾配が形成されるのに対応して、添加剤の溶媒中の濃度が表面から中央部分に近づくにつれて相対的に低濃度となるように、添加剤濃度の濃度勾配が形成され、その濃度勾配を解消するように添加剤が移動して、結果的に添加剤がよりフィルム膜厚方向の中央部分へと拡散して移動することによるものと考えられる。
【0098】
また、添加剤の表面(表層部)含率を低下させる別の方法としては、共流延法を用いて、最表層に添加剤含率の低い層を形成させる方法が挙げられる。この際、フィルムの表層5μmにおける添加剤質量の平均含量が、フィルム全体の添加剤質量の平均含率の50%以下であることが好ましく、0%以上40%以下であることがより好ましく、0%以上30%以下であることが更に好ましい。
【0099】
(添加剤の泳動を抑制する第二の手段)
また、偏光板の保護フィルムとして使用した場合の、高温高湿条件における添加剤の泳動を抑制する第二の手段としては、分子量とlogP値の積が1500以上の疎水性が高く泳動性の低い添加剤のみを含むセルロースアシレート溶液を、共流延法を用いてフィルムの表層部に最表層として形成することで、フィルム膜中に含有される添加剤の泳動を抑制することができる。この際、フィルム表層部分の添加剤は、分子量とlogP値の積が1500以上であることが好ましく、1700以上であることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましく、3000以上であることがより更に好ましい。さらに、セルロースアシレートフィルムへの溶解性の観点で、添加剤のlogP値と分子量の積は10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、6000以下であることが更に好ましい。また、この際、作製したフィルム試料の少なくとも一方の最表層における添加剤の含有率(フィルムの表面〜5μmの深さ部分における、その部分のフィルム質量に対する添加剤質量の割合)が、フィルム全体における添加剤の平均含有率(フィルム全体の総質量に対する、添加剤の質量の割合)に対して50%以下となることが好ましく、0%以上40%以下となることがより好ましく、0%以上30%以下となることが更に好ましい。
【0100】
(添加剤の泳動を抑制する第三の手段)
また、偏光板の保護フィルムとして使用した場合の、高温高湿条件における添加剤の泳動を抑制する第三の手段としては、高温高湿条件における添加剤の泳動の自由度を低下させるために、フィルムの自由体積を低減させる目的で、テンター部乾燥工程における乾燥条件を特定の範囲内とすることが好ましい。すなわち、セルロースアシレート溶液(ドープ)を支持体上に流延し、自己支持性を有する生乾きの状態で支持体より剥離した溶媒含率が10〜40質量%のドープ膜に対し、フィルムの搬送のテンションが60〜120N/mの範囲内において、乾燥温度Td(℃)と乾燥工程におけるドープ膜(乾燥途中の溶媒を含む膜の状態を含む)のガラス転移温度Tg(℃)との関係が、下記一般式(1)となるようにすることで、フィルムの面状を悪化させることなく、フィルムの緩和収縮により自由体積が低下し、フィルム密度が高くなり、結果的にフィルム膜中に含有する添加剤の泳動を抑制することができる。
一般式(1):Tg≦Td≦Tg+50。
【0101】
(フィルムの密度)
得られるフィルム密度としては、1.31g/cm3以上が好ましく、1.32g/cm3以上がより好ましく、1.33g/cm3以上が更に好ましい。
【0102】
本発明のセルロースアシレートフィルムの密度については、次の方法により測定した。すなわち、測定装置として“AccuPyc1330−01”{(株)島津製作所製}を使用し、25℃、10%RHの条件に1日以上調湿したセルロースアシレートフィルムサンプルを用いてn=10で測定した平均値より求めた。
【0103】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法においては、前記したこれらの製造方法を組み合わせた製造方法とすることも好ましい。
【0104】
(フィルムの厚さ)
作製されるセルロースアシレートフィルムの厚さは10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、30〜100μmがさらに好ましい。
【0105】
〔セルロースアシレートフィルム物性評価〕
[物理的特性]
(フィルム加熱処理後の添加剤揮散量)
本発明のセルロースアシレートフィルムに用いることができる添加剤は、80℃で240時間状態調節したフィルムからのその化合物の揮散量が0%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは0%以上25%以下以下であり、0%以上20%以下であることがさらに好ましい。
【0106】
なお、フィルムからの揮散量は、80℃で240時間状態調節したフィルム及び状態調節していないフィルムをそれぞれ溶媒に溶かし出し、高速液体クロマトグラフィーにて化合物を検出し、化合物のピーク面積をフィルム中に残存した化合物量として、下記数式(5)により算出する。
数式(5):揮散量(質量%)={(未処理品中の残存化合物量)−(処理品中の残存化合物量)}/(未処理品中の残存化合物量)×100。
【0107】
(フィルムの保留性)
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、フィルムに添加した各種化合物の保留性が要求される。
具体的には、本発明のセルロースアシレートフィルムを80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合のフィルムの質量変化が、0〜5%であることが好ましい。より好ましくは0〜3%であり、さらに好ましくは0〜2%である。
【0108】
(保留性の評価方法)
フィルム試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下で24時間状態調節後の質量を測定したのち、80±5℃、90±10%RHの条件下で48時間放置した。状態調節後の試料の表面を軽く拭き、23℃、55%RHで1日状態調節後の質量を測定して、以下の数式(6)に従って保留性を計算する。
数式(6):保留性(質量%)={(放置前の質量−放置後の質量)/放置前の質量}×100。
【0109】
(フィルムの残留溶媒量)
本発明のセルロースアシレートフィルムに対する残留溶媒量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。残留溶媒量を1.5質量%以下とすることでカールを抑制できる。1.0質量%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による製膜時の残留溶媒量を少なくすると自由体積が小さくなることが主要な光学的、物性的効果要因になるためと思われる。
【0110】
(フィルム、及びドープ膜のガラス転移温度Tg)
本発明のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgは、80〜165℃であることが好ましい。耐熱性の観点から、Tgが100〜160℃であることがより好ましく、110〜150℃であることが特に好ましい。
【0111】
ガラス転移温度Tgの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料10mgを、常温から200℃まで昇降温速度5℃/分で示差走査熱量計(例えば“DSC2910”、T.A.インスツルメント社製)で熱量測定を行い、ガラス転移温度Tgを算出する。また、フィルム試料を作製途中の残留溶媒を含むドープ膜については、試料を密閉容器内に密閉した後、同様にしてガラス転移温度Tgを求めた。
【0112】
(フィルムの平衡含水率)
本発明のセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃、80%RHにおける平衡含水率が、0〜4質量%であることが好ましい。0.1〜3.5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることが特に好ましい。平衡含水率が4%以下であれば、レターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎることがなく好ましい。
【0113】
平衡含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置“CA−03”及び“VA−05”{共に三菱化学(株)製}にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0114】
(フィルムの透湿度)
本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z−0208をもとに、60℃、95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算することによって求められる。本発明におけるフィルムの透湿度は、セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ小さくなり、膜厚が薄ければ大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも、基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、下記数式(7)に従って行うことができる。
数式(7):80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚(μm)/80(μm)。
【0115】
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁「蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)」に記載の方法を適用することができる。具体的には、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを、25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置“KK−709007”{東洋精機(株)製}にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、下記数式(8)に従って求めた。
数式(8):透湿度=調湿後質量−調湿前質量
【0116】
本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、400〜1800g/m2・24hであることが好ましい。500〜1600g/m2・24hであることがより好ましく
、600〜1500g/m2・24hであることが特に好ましい。透湿度が1800g/m2・24h以内であれば、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えることがなく、また、本発明のセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えることがないので好ましい。さらにこのような光学補償フィルムや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合にも、色味の変化や視野角の低下を引き起こすことがないので好ましい。一方、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m2・24h以上であれば、偏光子の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられることがなく、優れた接着性を発揮するので好ましい。
【0117】
(フィルムの寸度変化)
本発明のセルロースアシレートフィルムの寸度安定性は、60℃で90%RHの条件で24時間状態調節した場合(高湿)の寸度変化率及び90℃、5%RHの条件下に24時間状態調節した場合(高温)の寸度変化率がいずれも0%以上0.5%以下であることが好ましい。より好ましくは0%以上0.3%以下であり、さらに好ましくは0%以上0.15%以下である。
【0118】
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ{新東科学(株)製}にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、パンチ間隔の原寸(L0)とした。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L1)を測定、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。全ての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定し、下記数式(9)及び(10)に従って寸度変化率を求めた。
数式(9):60℃、90%RH(高湿)の寸度変化率={|L0−L1|/L0}×100、
数式(10):90℃、5%RH(高温)の寸度変化率={|L0−L2|/L0}×100。
【0119】
(フィルムの吸湿膨張係数)
本発明のセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0120】
(フィルムの音速)
本発明のセルロースアシレートフィルムを伝わる音速については、絶対値は特に限定されないが、幅方向の音速VTと長手方向の音速VMとの比(VT/VM)が、0.67〜1.50であることが望ましい。より望ましくは、その比が0.69〜1.45であり、さらに望ましくは、0.71〜1.40である。比(VT/VM)が0.67〜1.50以下であれば、耐久性試験時のカールや光学性能の変化が大きくなることがないので好ましい。
【0121】
音速の具体的な測定方法としては、NOMURA製音速測定装置“SST−110”を用い、25℃、55%RHの雰囲気中で6時間以上調湿したフィルムについて、25℃、55%RHの雰囲気にて、幅方向及び長手方向の音速度を求め、それらの比を求める。
【0122】
(フィルムの引張弾性率)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、長手方向(MD)と幅方向(TD)の引張弾性率(Mt)のうち、少なくとも一方が200〜600kgf/mm2(1.96MPa〜5.88kPa)であることが好ましく、より好ましくは250〜550kgf/mm2(2.45MPa〜5.39MkPa)であり、さらに好ましくは300〜500kgf/mm2(2.94MPa〜4.90MPa)である。
【0123】
引張弾性率の具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン(株)製万能引張試験機“STM T50BP”を用い、23℃、70%RH雰囲気中、引張速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
【0124】
(フィルムの貯蔵弾性率)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、幅方向(TD)と長手方向(MD)の貯蔵弾性率(Ms)が、共に15000〜80000kgf/cm2(1.47MPa〜7.85MPa)であることが好ましい。より好ましくは、幅方向(TD)と長手方向(MD)の貯蔵弾性率が、共に18000〜75000kgf/cm2(1.76MPa〜7.35MPa)である。さらに好ましくは、幅方向(TD)と長手方向(MD)の貯蔵弾性率が、共に20000〜70000kgf/cm2(1.96MPa〜6.86MPa)である。但し、MsTは幅方向(TD)の貯蔵弾性率であり、MsMは長手方向(MD)の貯蔵弾性率である。
具体的な測定方法は、温度を変化させながらの動的粘弾性測定により貯蔵弾性率をもとめた。
【0125】
(フィルムの破断伸度、破断強度)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、破断伸度が10%以上60%以下が好ましく、より好ましくは15%以上50%以下、さらに好ましくは20%以上40%以下である。また破断強度は10kgf/mm2以上20kgf/mm2(98〜196MPa) 以下が好ましく、より好ましくは11kgf/mm2以上19kgf/mm2(108〜186MPa)以下、さらに好ましくは12kgf/mm2以上18kgf/mm2(118〜176MPa) 以下である。
【0126】
破断伸度、破断強度の具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン(株)製万能引張試験機“STM T50BP”を用い、23℃、60%RHの雰囲気中、引張速度10%/分での延伸処理により破断点の伸度及び破断点での強度を測定して求める。
【0127】
(カール)
本発明のセルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値は、−10/m〜+10/mであることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムには後述する表面処理、光学異方性層を塗設する際のラビング処理などの実施、配向膜、光学異方性層の塗設や貼合などを長尺で行う際に、本発明のセルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値が上記の範囲内であれば、フィルムのハンドリングに支障をきたしたり、フィルムの切断が起きたりすることがなく、またフィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触して発塵することがないので、フィルム上への異物付着は少なく、後述するように本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムの支持体として用いる場合に光学補償フィルムの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えることはなく好ましい。また、カールを上記の範囲とすることで光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光子貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができて好ましい。
【0128】
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従って測定することができる。
【0129】
(引裂き強度)
JIS K−7128−2:1998の引裂き試験方法に基づく引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)の値が、本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚が20〜80μmの範囲において、2g以上であることが好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更には6〜25gである。また、60μm厚み換算値で8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。
具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後、軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
【0130】
[光学的特性]
(高湿度処理後のフィルムの光学性能変化)
本発明のセルロースアシレートフィルムの、環境変化による光学性能の変化については、60℃、90%RHの環境下に240時間状態調節したフィルムのRe(400)、Re(700)、Rth(400)及びRth(700)の変化量が0nm以上5nm以下であることが好ましい。より好まししくは0nm以上12nm以下であり、0nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。なお、Re(λ)、Rth(λ)は、測定波長λnmにおけるRe、Rthの値をそれぞれ表し、例えばRe(400)は測定波長400nmにおけるReの値である。
【0131】
(高温度処理後のフィルムの光学性能変化)
また、80℃で240時間状態調節したフィルムのRe(400)、Re(700)、Rth(400)及びRth(700)の変化量が0nm以上15nm以下であることが好ましい。より好ましくは0nm以上12nm以下であり、0nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。
【0132】
(セルロースアシレートフィルムのレターデーションの面内バラツキ)
本発明のセルロースアシレートフィルムは次の数式(11)を満たすことが好ましい。
数式(11):|Re(max)−Re(min)|≦3で、且つ|Rth(max)−Rth(min)|≦5
(式中、Re(max)、Rth(max)は任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値、Re(min)、Rth(min)は最小値である。)
【0133】
(延伸前後における正面レターデーションReの変化)
帯状のフィルムから試料、長手方向100mm×幅方向100mmを切り出し、固定一軸延伸機を用いて温度140℃の条件下で長手方向(MD)と平行又は巾方向(TD)と平行に延伸を行った。延伸前後における各試料の正面レターデーションReは自動複屈折計[例えば“KOBRA21ADH”{王子計測機器(株)製}]を用いて測定した。遅相軸の検出は上記のレターデーション測定の際に得られる配向角から決定した。
【0134】
偏光子直近に配置されるセルロースアシレートフィルムは、延伸によってReの変化が小さいことが好ましく、具体的にはRe(n)をn(%)延伸したフィルムの正面レターデーション(nm)、Re(0)を延伸していないフィルムの正面レターデーション(nm)としたときに、下記数式(12)の関係を有することが好ましく、下記数式(12−1)の関係を有することがさらに好ましい。
数式(12):|Re(n)−Re(0)|/n≦1.0、
数式(12−1):|Re(n)−Re(0)|/n≦0.3。
【0135】
(遅相軸を有する方向)
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護フィルムに用いる場合、偏光子が機械搬送方向(又は長手方向)(MD)に吸収軸を持つため、セルロースアシレートフィルムは遅相軸がMD近傍又はTD近傍にあることが望ましい。遅相軸を偏光子の透過軸と平行又は直交させることにより、光漏れや色味変化を低減できる。近傍とは、遅相軸とMD又はTDとのなす角度が0〜10°、好ましくは0〜5°の範囲にあることを表す。
【0136】
(固有複屈折が正であるセルロースアシレートフィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルム面内において、遅相軸を有する方向に延伸すると正面レターデーションReが大きくなり、遅相軸を有する方向と垂直な方向に延伸すると正面レターデーションReが小さくなる。このことは固有複屈折が正であることを示しており、フィルム中で発現したReを打ち消すには、遅相軸と垂直方向に延伸することが有効である。この方法としては例えば、フィルムがMDに遅相軸を有している場合に、MDと垂直な方向(TD)にテンター延伸を用いて正面Reを小さくすることが考えられる。逆の例として、TDに遅相軸を有している場合には、MDに平行な搬送ロールの張力を強めて延伸することによって、正面Reを小さくすることが考えられる。
【0137】
(正面レターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRthの測定)
本発明のセルロースアシレートフィルムの正面レターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRthは次のようにして測定した。
【0138】
Re(λ)は、自動複屈折計[例えば“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及びフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の、計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に“KOBRA 21ADH”が算出する。ここで平均屈折率の仮定値は「ポリマーハンドブック」(JOHN WILEY & SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。
【0139】
主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、“KOBRA 21ADH”はnx、ny、nzを算出する。
【0140】
(フィルムのヘイズ)
本発明のセルロースアシレートフィルムのヘイズは0.0%〜2.0%であることが好ましい。より好まししくは0.0%〜1.5%であり、0.0%〜1.0%であることがさらに好ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。
ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、60%RHでヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)}を用いてJIS K−6714に従って測定する。
【0141】
(フィルムの光弾性係数)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、幅方向及び長手方向の光弾性係数が共に25×10-13cm2/dyne(2.5×10-13N/m2)以下であることが望ましい。よ
り望ましくは、搬送方向とフィルム面内で直交する方向の光弾性係数及び搬送方向の光弾性係数が共に22×10-13cm2/dyne(2.2×10-13N/m2)以下であり、さらに望ましくは、幅方向(TD)と長手方向(MD)の光弾性係数が共に20×10-13cm2/dyne(2.0×10-13N/m2)以下である。
【0142】
具体的な測定方法としては、本発明のセルロースアシレートフィルム試料12mm×120mmの幅方向(TD)又は長手方向(MD)に対して引張応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター“M150”{日本分光(株)製}で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
【0143】
上記したセルロースアシレート及びそのフィルムに係わる各種物性は、前述の溶解工程、流延工程、乾燥工程における各条件を適宜調節することにより達成され得る。
【0144】
(透過率の測定法)
試料20mm×70mmを、25℃、60%RHで透明度測定器{“AKA”光電管比色計、KOTAKI製作所製}で可視光(615nm)の透過率を測定する。
【0145】
[フィルム表面の性状]
(表面形状)
本発明のセルロースアシレートフィルムの表面は、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることが好ましい。好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.2μm以下である。膜表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することができる。
【0146】
(表面エネルギーの測定法)
本発明のセルロースアシレートフィルムの表面エネルギーは、以下の方法により測定できる。
すなわち、試料を水平な台の上に水平にのせ、試料表面に一定量の水、及びヨウ化メチレンをのせてから一定時間後の試料表面での水、及びヨウ化メチレンの接触角を求める。測定した接触角から、Owensの方法により表面エネルギーを求める。
【0147】
<光学フィルム>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学フィルムの用途と写真感光材料に適用される。特に光学フィルムの用途としては液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、2枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された2枚の偏光板、及び該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも1枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VA及びHANが好ましい。とくにIPS及びVAが好ましい。
【0148】
〔機能層〕
上記の光学フィルム用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することができる。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。
【0149】
本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発
明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0150】
〔用途〕
本発明のセルロースアシレートフィルムの用途について説明する。
【0151】
[偏光板]
本発明のセルロースアシレートフィルムは特に偏光板用の保護フィルム用として有用である。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶セルへ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。プロテクトフィルムには、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いてもよい。
【0152】
(偏光子)
偏光子は、Optiva社製のものに代表される塗布型偏光子、又は偏光子の基材を構成するポリマーフィルムと、ヨウ素もしくは二色性色素からなる偏光子が好ましい。
【0153】
偏光子におけるヨウ素及び二色性色素は、ポリマーフィルム中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、ポリマー分子に沿って配向するか、又は二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
【0154】
現在、汎用の偏光子は、延伸したポリマーフィルムを、浴槽中のヨウ素又は二色性色素の溶液に浸漬し、ポリマーフィルム中にヨウ素又は二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。汎用の偏光子は、ポリマーフィルム表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素又は二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素又は二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
【0155】
偏光子に用いられるポリマーフィルムは架橋していてもよい。架橋しているポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマー又はポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱又はpH変化により、ポリマー間で反応させて偏光子を形成することができる。また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0156】
架橋は一般に、ポリマー又はポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行うことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行ってもよい。
【0157】
偏光子に用いられるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマー又は架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレ
ン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー(例えば、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)が含まれる。水溶性ポリマー{例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール}が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0158】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、95〜100%が最も好ましい。
【0159】
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性又はブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、−COO-Na+、−Si(OH)3、−N+(CH33Cl-、−C919COO-、−SO3-Na+、−C1225などを導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、−COO-Na+、−SH、−SC1225を導入することができる。
【0160】
鹸化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコール及びアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。またポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号及び同9−316127号の各公報に記載がある。
【0161】
偏光子の基材を構成するポリマーの架橋剤の添加量を多くすることにより、偏光子の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、ヨウ素又は二色性色素の配向性のよさの観点から、ポリマーに対する架橋剤の添加量は50質量%以下とすることが好ましい。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%がより好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。
【0162】
ポリマーフィルムには、通常、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤がある程度含まれている。ただし、残存する架橋剤の量は、ポリマーフィルム中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。架橋剤の残存量が、バインダー層中に1.0質量%以下であれば、偏光子の耐久性に問題が生じにくいので好ましい。すなわち、架橋剤の残存量が多い偏光子を液晶表示装置に組み込み、長期使用したり、又は高温高湿の雰囲気下に長期間放置したりした場合にも、偏光度の低下が生じることがない。架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。
架橋剤としては、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も用いることができる。
【0163】
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素又はアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ、アミノ、ヒドロキシル等)を有することが好ましい。二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。二色性色素については、特開平1−161202号、同1−172906号、同1−172907号、同1−183602号、同1−248105号、同1−265205号、同7−261024号の各公報に記載がある。
【0164】
二色性色素は、遊離酸、又はアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩として用いられる。2種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光子、又は黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光子又は偏光板が、単板透過率及び偏光率とも優れており好ましい。
【0165】
本発明において、偏光板の単板透過率、平行透過率、直交透過率は、“UV3100PC”{(株)島津製作所社製}を用いて測定した。測定では、25℃、60%RH条件下、380nm〜780nmの範囲で測定し、単板、平行、直交透過率ともに、10回測定の平均値を用いた。
【0166】
偏光板耐久性試験は(1)偏光板のみと(2)偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けたものとの2種類の形態で次のように行った。
【0167】
偏光板のみの測定は、2つの偏光子の間に光学補償膜が挟まれるように組み合わせて直交させた同じものを2つ用意して測定した。
【0168】
ガラス貼り付け状態のものは、ガラス板の上に偏光板を光学補償層がガラス側にくるように貼り付けた試料(約5cm×5cm)を2つ作製する。単板透過率測定ではこの試料のフィルムの側を光源に向けてセットして測定した。2つの試料をそれぞれ測定し、その平均値を単板の透過率とした。偏光性能の好ましい範囲としては単板透過率(TT)、平行透過率(PT)、直交透過率(CT)の順でそれぞれ、40.0≦TT≦45.0、30.0≦PT≦40.0、CT≦2.0であり、より好ましい範囲としては40.2≦TT≦44.8、32.2≦PT≦39.5、CT≦1.6であり、さらに好ましい範囲としては41.0≦TT≦44.6、34≦PT≦39.1、CT≦1.3である。
【0169】
これらの透過率から偏光度Pが計算される。偏光度Pは大きいほど、クロス配置したときの漏れ光がすくなくなり偏光板の性能が高いことを示している。偏光度Pは95.0%以上であることが好ましく、より好ましくは96.0%以上、さらに好ましくは97.0%以上である。
【0170】
本発明の偏光板は、波長λにおける直交透過率をCT(λ)としたときに、CT(380)、CT(410)、CT(700)が下記数式(13)〜(15)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
数式(13):CT(380)≦2.0、
数式(14):CT(410)≦1.0、
数式(15):CT(700)≦0.5。
より好ましくは、下記数式(13−1)〜(15−1)の少なくとも1つ以上を満たすことであり、さらに好ましくは、下記数式(13−2)〜(15−2)の少なくとも1つ以上を満たすことである。
数式(13−1):CT(380)≦1.95、
数式(14−1):CT(410)≦0.9、
数式(15−1):CT(700)≦0.49、
数式(13−2):CT(380)≦1.90、
数式(14−2):CT(410)≦0.8、
数式(15−2):CT(700)≦0.48。
【0171】
本発明の偏光板は、60℃、95%RHの条件下に650時間静置した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記数式(16)、(17)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
数式(16):−0.6≦ΔCT≦0.6、
数式(17):−0.3≦ΔP≦0.0。
【0172】
本発明の偏光板はまた、80℃の条件下に650時間状態調節した場合の直交単板透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記数式(18)、(19)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
数式(18):−0.6≦ΔCT≦0.6、
数式(19):−0.3≦ΔP≦0.0。
また偏光板耐久性試験ではその変化量はより小さい方が好ましい。
【0173】
(液晶表示装置の構成)
液晶表示装置には、通常2枚の偏光板の間に液晶セルが配置されているが、本発明のセルロースアシレートフィルムは、どの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板の保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、本発明のセルロースアシレートフィルムを該保護フィルムに用いることが得に好ましい。
【0174】
本発明の偏光板を作製するに当たり、本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いるために、偏光子と貼り合わせる側の表面と、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光子との接着性を良好にすることが必要である。接着性が不充分の場合は、偏光板を作製した後に液晶表示装置等のパネルに適宜用いるための加工性が不良であったり、又は耐久性が不足して、長期の使用での剥れ等が問題となったりすることがある。
【0175】
接着には、接着剤を使用することもでき、接着剤の成分としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0176】
接着性を考慮するには表面エネルギーを指標に考えればよく、偏光子の主成分であるポリビニルアルコール又はビニル系ラテックスを主成分とする接着剤層の表面エネルギーと、貼り合せる保護フィルムの表面エネルギーがより近ければ貼合性と貼合した偏光板の加工性と耐久性がより向上される。これらのことから、偏光子又は接着剤と貼り合わせる側の、保護フィルムの表面エネルギーを親水化処理等の表面処理により所望の範囲内にすることで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光子との接着性を充分に付与することができる。
【0177】
親水化処理等の表面処理などを行う前の、製膜後のセルロースアシレートフィルムの表面エネルギーは、前記添加剤を使用するため疎水化されており、フィルムの光学特性や力学特性の湿度依存性や、前記貼合性を向上するための処理の容易性の観点から、30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましく、40mN/m以上48mN/m以下であることがより好ましい。処理前の表面エネルギーが30mN/m以上であれば、後述の親水化処理により貼合性を良好にするためには、それほど大きなエネルギーを必要としないですみ、結果的にフィルム特性を良好に維持でき、生産性との両立が容易になる。また処理前の表面エネルギーが50mN/m以下であれば、フィルム自身の親水性が大きくなりすぎることがなく、フィルムの光学性能や力学特性の湿度依存性があまり大きくなりすぎることがないので好ましい。
【0178】
また、ポリビニルアルコール表面の表面エネルギーは、併用する添加剤や乾燥の程度や用いる接着剤にもよるが60mN/m以上80mN/m以下の範囲にあることから、後述の親水化処理等の表面処理後の本発明のフィルムの、偏光子と貼り合せる側の面の表面エネルギーとしては、50mN/m以上80mN/m以下が好ましく、60mN/m以上75mN/m以下がより好ましく、65mN/m以上75mN/m以下が更に好ましい。
【0179】
(セルロースアシレートフィルムの表面処理)
本発明のフィルム表面の親水化処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、オゾン処理、酸処理、アルカリ処理等で該フィルム表面を改質する方法が挙げられる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.133〜2660Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。
【0180】
上記のような条件においてプラズマ励起されるプラズマ励起性気体としては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0181】
(アルカリ鹸化処理)
これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアセテートフィルムの表面処理としては極めて有効である。処理方法として、以下の方法が挙げられる。
【0182】
(1)浸漬法
アルカリ液の中にフィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/Lであり、特に好ましくは1〜2mol/Lである。好ましいアルカリ液の液温は25〜70℃、特に好ましくは30〜60℃である。アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0183】
鹸化処理することにより、フィルムの両面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、親水化された表面を偏光子と接着させて使用する。親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光子との接着性を改良するのに有効である。
【0184】
一方、浸漬法では保護フィルムが反射防止層を有する場合、その反射防止層を有する側の面(主面)までアルカリによるダメージを受けることがあるため、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる反射防止層の受けるダメージの指標として、反対側の主面の支持体の水に対する接触角を用いた場合、特に支持体がセルローストリアセテートであれば、好ましくは20゜〜50゜、より好ましくは30゜〜50゜、さらに好ましくは40゜〜50゜となる。この範囲で、反射防止フィルムの受けるダメージに実害がなく、且つ偏光子との接着性を保持できる。
【0185】
(2)アルカリ液塗布法
上記の浸漬法における反射防止フィルムへのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液を、反射防止層を有する主面とは反対側の面(裏面)のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。アルカリ液及び処理は、特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレットに記載の内容が挙げられる。ただし、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。
【0186】
(プラズマ処理)
本発明に用いられるプラズマ処理としては、真空グロー放電、大気圧グロー放電等によるものがあり、その他の方法としてフレームプラズマ処理等の方法があげられる。これらは、例えば特開平6−123062号公報、特開平11−293011号公報、同11−5857号公報等に記載された方法を用いることができる。
【0187】
プラズマ処理によれば、プラズマ中においたプラスチックフィルムの表面を処理することで、これに強い親水性を与えることができる。例えば、上記のグロー放電によるプラズマ発生装置中においては相対する電極の間にこれらの親水性を付与しようとするフィルムを置き、この装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加する事により、該気体をプラズマ励起させ電極間にグロー放電を行わせることにより表面処理が行える。中でも大気圧グロー放電によるものが好ましく用いられる。
【0188】
(コロナ放電処理)
表面処理のうち、コロナ放電処理は、最もよく知られている方法であり、従来公知のいずれの方法、例えば特公昭48−5043号公報、同47−51905号公報、特開昭47−28067号公報、同49−83767号公報、同51−41770号公報、同51−131576号公報等に開示された方法により達成することができる。コロナ処理に使用するコロナ処理機としては、現在プラスチックフィルム等の表面改質の手段として使用されている市販の各種コロナ処理機の適用が可能であり、中でもSOFTAL(ソフタル)社のマルチナイフ電極を有するコロナ処理機は多数本の電極で構成され、さらに電極の間に空気を送る構造となっており、フィルムの加熱防止やフィルム表面に出てくる低分子の除去等がおこなえるので、エネルギー効率が非常に高く、高コロナ処理が可能となるので、本発明には特に有用なコロナ処理機である。
【0189】
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板用保護フィルム等の目的で使用するためにはセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面の表面エネルギーを適当な範囲内にすることが必要であり、そのため前述のような表面処理を行う。一方、本発明のセルロースアシレートフィルムに表面処理を行うことにより、セルロースアシレートフィルム中に含有する添加剤の揮散/溶出/分解が発生する可能性があり、セルロースアシレートフィルムの光学性能やフィルム性能や耐久性が劣化する懸念がある。また揮散や溶出が発生する場合には更に処理系を汚染し処理性を低下させてしまい、連続的に処理を行うことができなくなる。そのため添加剤量の低下を抑制することが必要であり、表面処理による添加剤の添加量の変化量は、処理前の添加剤の全添加量の0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましい。
【0190】
[光学補償フィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
【0191】
従って本発明のセルロースアシレートフィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いる場合、併用する光学異方性層のRe(630)及びRth(630)は、Re(630)=0〜200nmで且つ|Rth(630)|=0〜400nmであることが好ましく、この
範囲であればどのような光学異方性層でもよい。
【0192】
本発明のセルロースアシレートフィルムが用いられる光学補償フィルムは、それが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式によっては制限されず、光学補償フィルムとして要求される、どのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成してもよいし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成する、すわなち位相差フィルムであってもよい。
【0193】
(液晶性化合物を含有する光学異方性層)
上記の液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物又は棒状液晶性化合物が好ましい。
【0194】
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献[C.Destradeらの“Mol.Crysr.Liq.Cryst.”、71巻、111頁(1981年);日本化学会編「季刊化学総説」No.22、「液晶の化学」第5章、第10章第2節(1994年);B.Kohneらの“Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.”、1794頁(1985年);J.Zhangらの“J.Am.Chem.Soc.”、116巻、2655頁(1994年)]に記載の化合物が含まれる。
【0195】
光学異方性層において、ディスコティック液晶性化合物の分子は、配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性化合物について、特開2001−4387号公報に開示されている。
【0196】
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0197】
光学異方性層において、棒状液晶性化合物の分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、“Makromol.Chem.”,190巻、2255頁(1989年)、“Advanced Materials”,5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同第5622648号明細書、同第5770107号明細書、国際公開第95/22586号パンフレット、同第95/24455号パンフレット、同第97/00600号パンフレット、同第98/23580号パンフレット、同第98/52905号パンフレット、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。
【0198】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
前記した様に、本発明における光学異方性層は、ポリマーフィルムから形成してもよい
。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなど)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル及びセルロースエステル(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテートなど)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体又はポリマー混合物を用いてもよい。
【0199】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸のような伸張処理により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸又は二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、又はポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。また、光学補償フィルム及び偏光板の生産性の観点から、テンター延伸、又は二軸延伸がより好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0200】
(ポリマーの塗布による光学異方性層)
本発明における光学異方性層は、ポリマーの塗布により形成することもできる。
具体的には、溶媒に溶解させて液状化したポリマーを、本発明のセルロースアシレートフィルム上に展開して乾燥させ、得られた積層体に、その面内で分子を配向させる処理を施すことにより光学異方性層を形成することができる。これにより、所望の光学特性を付与した光学補償フィルムが得られる。分子配向処理としては、伸張処理、収縮処理又はこれらの両方が挙げられるが、生産性と制御の容易さの観点から伸張処理が好ましい。この際、本発明のセルロースアシレートフィルムは光学異方性が小さいため、均一な延伸フィルムが形成でき、また光学異方性層による光学補償効果に影響がなく、光学補償フィルムの光学設計も容易となる。
【0201】
上記ポリマーについては特に限定はなく、光透過性の適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。中でも、光透過率が75%以上、特に85%以上の透光性に優れるフィルムを形成しうるポリマーが好ましい。またフィルムの安定した量産性等の点より、延伸方向のレターデーションが大きくなる正の複屈折性を示す固体ポリマーが好ましく用いることができる。
【0202】
因みに、上記の塗布に用いられる固体ポリマーの例としては、ポリアミドやポリエステル(例えば特表平10−508048号公報記載)、ポリイミド(例えば特表2000−511296号公報記載)、ポリエーテルケトンや特にポリアリールエーテルケトン(例えば特開2001−49110号公報記載)、ポリアミドイミド(例えば特開昭61−162512号公報記載)やポリエステルイミド(例えば特開昭64−38472号公報記載)などがあげられる。複屈折性フィルムの形成には、その固体ポリマーの1種、又は2種以上を混合したものなどを用いうる。固体ポリマーの分子量について特に限定はないが、一般にはフィルムへの加工性などの点より質量平均分子量に基づいて2000〜100万、好ましくは1500〜75万、さらに好ましくは1000〜50万である。
【0203】
ポリマーフィルムの形成に際しては、安定剤や可塑剤や金属類等からなる種々の添加剤を、必要に応じて配合することができる。また固体ポリマーの液状化には、上記のように固体ポリマーを溶媒に溶解させて溶液とする方法と共に、熱可塑性の固体ポリマーを加熱して溶融させる方式などの適宜な方式を採ることができる。
【0204】
セルロースアシレートフィルム上に展開したポリマー(展開層)の固体化は、溶融液の
場合にはその展開層を冷却させることにより、また溶媒溶解溶液ではその展開層より溶媒を除去して乾燥させることにより行うことができる。その乾燥には自然乾燥(風乾)方式や加熱乾燥方式、特に40〜200℃の加熱乾燥方式、減圧乾燥方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を採ることができる。製造効率や光学的異方性の発生を抑制する点からはポリマー溶液を塗工する方式が好ましい。
【0205】
上記の溶媒としては、例えば塩化メチレン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランなど適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。溶液は、フィルム形成に適した粘度の点より、溶媒100質量部に対してポリマーを2〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、特に10〜40質量部溶解させたものが好ましい。
【0206】
液状化したポリマーの展開には、例えばスピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等のキャスティング法、押出法などの適宜なフィルム形成方式を採ることができる。中でも、厚さムラや配向歪ムラ等が少なくフィルムの量産性などの観点から、キャスティング法等の溶液製膜法が好ましく適用される。とくに、セルロースアシレートフィルム上に、溶媒に溶解させて液状化したポリマーを、共流延法により積層し成膜するのが好ましい。なおその場合、ポリイミドとしては芳香族二無水物とポリ芳香族ジアミンから調製された溶媒可溶性のもの(特表平8−511812号公報参照)が好ましく用いうる。
【0207】
前記のポリマーを液状化してセルロースアシレートフィルム上に展開し、伸張又は収縮処理する本発明で好適に採用される製造方法では、セルロースアシレートフィルム上層の展開層の形成過程でRthを制御し、積層体を伸張又は収縮処理することにより分子を配向させReを制御することができる。かかる役割分担方式には、例えば二軸延伸方式等の従来のRthとReを同時的に制御する方法に比べて少ない延伸率で目的を達成でき、RthとReの特性や光学軸の各精度に優れた二軸性光学補償フィルムが得られやすいという設計と製造における利点がある。
【0208】
前記の分子配向処理は、フィルムの伸張処理又は/及び収縮処理として施すことができ、その伸張処理は、例えば延伸などを行うことにより施すことができる。延伸には逐次方式や同時方式等による二軸延伸方式、自由端方式や固定端方式等の一軸延伸方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を適用することができる。ボーイング現象を抑制する点より一軸延伸方式が好ましい。
【0209】
この際、延伸温度は、従来に準じることができ、例えば前記固体ポリマーのガラス転移温度の近傍、ガラス転移温度以上が一般的である。また、本発明の延伸されたセルロースアシレートフィルムのレターデーションをより小さくする目的では、延伸温度はセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgの近傍である方がよく、Tg−20℃以上で延伸することが好ましく、Tg−10℃以上で延伸することがより好ましく、Tg以上で延伸することが更に好ましい。
【0210】
また、好ましい延伸倍率の範囲としては、延伸前のフィルム長に対する延伸後のフィルム長の倍率で、1.03倍以上、2.50倍以下が好ましく、より好ましくは、1.04倍以上、2.20倍以下であり、更に好ましくは1.05倍以上1.80倍以下である。延伸倍率が1.05倍以上であれば、前述の光学異方性層を形成する目的に合致した優れた光学異方性を発現させることができ、また2.50倍以下であれば、フィルムの耐久性試験後のカールや光学特性の変化が許容限度を超えることがないので好ましい。
【0211】
一方、収縮処理は、例えば高分子フィルムの塗工形成を基材上で行って、その基材の温
度変化等に伴う寸法変化を利用して収縮力を作用させる方式などにより行うことができる。その場合、熱収縮性フィルムなどの収縮能を付与した基材を用いることもでき、そのときには延伸機等を利用して収縮率を制御することが望ましい。
【0212】
上記の方法により作製される複屈折性フィルムは、液晶表示装置の視野角特性を改善する光学補償フィルムとして好適に用いられ、更に液晶表示装置の薄型化と生産工程数の低減による生産性向上のため、偏光板の保護フィルムとして偏光子に直接貼り合わせた形態で用いることが好ましい。この際、上記の光学補償フィルムを用いた偏光板をより低コストで生産性よく提供できることが求められ、偏光板までの作製工程をより生産性よく低コスト化することが望まれている。
【0213】
なおこのようにして得られた光学補償フィルムは、光学異方性層の面内のReの発現方向が偏光板の吸収軸に対し直行する方向になるように偏光子と貼り合わせた形態で使用される。また、ヨウ素とPVAからなる一般的な構成の偏光子は縦一軸延伸により作製され、偏光子の吸収軸は長手方向となる。更に、上記の複屈折フィルムを含有する光学補償フィルムを用いた偏光板を生産性よく低コストで提供するためには、上記の作製工程を一貫してロールtoロールで行うことがまず求められる。
【0214】
これらの要因で、とくに生産性の観点から、上記の複屈折フィルムを含有する光学補償フィルムの作製方法としては、本発明のセルロースアシレートフィルム上に上記のポリマーからなる展開層を積層した後、展開層のポリマーが幅方向に配向し、幅方向にReが発現するように伸張処理又は収縮処理を行うことが好ましい。このようにして作製したロール状の光学補償フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることで、そのままロールtoロールで有効な光学補償機能を有する偏光板の作成を行うことができる。
【0215】
ここで、本発明におけるロール状のフィルムとは、長手方向に1m以上の長さを有し、さらに長手方向に3周回以上巻かれた状態のフィルムを示す。またロールtoロールとは、ロール状のフィルムに対し、製膜や他のロール状フィルムとの積層/貼り合せや、表面処理、加熱/冷却処理、伸張処理/収縮処理、といった実施可能なあらゆる処理を施す前後でロール状の形態を維持することであり、特に生産性やコスト、取り扱い性の観点から、ロールtoロールで処理を行うことが好ましい。
【0216】
得られる複屈折性フィルムにおけるRthとReの大きさは、固体ポリマーの種類や、液状化物の塗工方式等の展開層の形成方式、乾燥条件等の展開層の固体化方式や、形成するフィルムの厚さなどにて制御することができる。フィルムの一般的な厚さは、0.5〜100μm、就中1〜50μm、特に2〜20μmである。
【0217】
また、上記の方法により得られる複屈折性フィルムにおける本発明のセルロースアシレートフィルムは、その音速、引張弾性率、貯蔵弾性率、光弾性係数等の物性値の、搬送方向とフィルム面内で直交する方向(幅方向=TD)/搬送方向(長手方向=MD)の比が、前述の範囲内となる。この方法にて作製した複屈折フィルムはそのまま用いてもよいし、接着剤等によりその他のフィルムに貼合してもよい。
【0218】
(一般的な液晶表示装置の構成)
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムに用いる場合は、偏光板の透過軸と、セルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、2枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された2枚の偏光板、及び該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも1枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
【0219】
液晶セルの液晶層は、通常は、2枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層又は(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
【0220】
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0221】
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体または偏光板の保護フィルムとして用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(“Jpn.J.Appl.Phys.”、36巻(1997年)、143頁及び1068頁)に記載がある。
【0222】
(STN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体または偏光板の保護フィルムとして用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性化合物のが90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0223】
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体または偏光板の保護フィルムとして用いてもよい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムのRe(630)を0〜150nmとし、Rth(630)を70〜400nmとすることが好ましい。Re(630)は、20〜70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に2枚の光学異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth(630)は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に1枚の光学異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth(630)は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0224】
(IPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、IPSモード及びECBモードの液晶セル
を有する、IPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体、又は偏光板の保護フィルムとしても用いることができる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。この態様においては、前記偏光板の保護膜と保護膜と液晶セルの間に配置された光学異方性層のレターデーションの値は、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
【0225】
(OCB型液晶表示装置及びHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体または偏光板の保護フィルムとしても用いてもよい。OCB型液晶表示装置又はHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置又はHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学的性質も、光学異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質及び光学異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置又はHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文{“Jpn.J.Appl.Phys.”、38巻(1999年)、2837頁}に記載がある。
【0226】
(反射型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償フィルムまたは偏光板の保護フィルムとしても用いてもよい。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
【0227】
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体または偏光板の保護フィルムとしても用いてもよい。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文{Kume et al.,“SID 98 Digest”、1089頁(1998年)}に記載がある。
【0228】
(自発光型表示装置)
本発明による光学補償フィルム、偏光板等は、自発光型の表示装置に設けて表示品位の向上などを図ることもできる。その自発光型の表示装置については特に限定はない。因みにその例としては、有機ELやPDP、FEDなどがあげられる。自発光型フラットパネルディスプレイにReが1/4波長の複屈折性フィルムを適用することにより直線偏光を円偏光に変換して、反射防止フィルターを形成することができる。
【0229】
前記において、液晶表示装置等の表示装置の形成部品は、積層一体化されていてもよいし、分離状態にあってもよい。また表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板や保護板などの適宜な光学素子を適宜に配置することができる。かかる素子は、光学補償フィルムと積層してなる上記した光学部材の形態にて表示装置の形成に供することもできる。
【0230】
[ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか又はそれらの全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
【0231】
[写真フィルム支持体]
さらに本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報に、カラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
【0232】
[液晶セルの透明基板]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、高温高湿条件における添加剤の移動が少なく、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
【0233】
液晶を封入する透明基板は、ガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、又は塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設けたりする方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
【0234】
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極極は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15質量%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報などに公開されている。
【実施例】
【0235】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されない。
【0236】
実施例1−1〜14、比較例1−1〜1−3及び参考例1−1
<セルロースアシレートフィルムの作製>
[セルロースアシレート原液の調製]
表1に記載の組成物を耐圧性のミキシングタンクに投入して1時間攪拌したのち、80℃に加熱しながら6時間攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート原液(T−1)〜(T−7)を調製した。
【0237】
【表1】


【0238】
なお、表1における添加剤の略号は以下のとおりである。
TPP:トリフェニルホスフェート、
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェート、
EPEG:エチルフタリルエチルグリコレート、
DOP:ジオクチルフタレート、
TOP:トリオクチルホスフェート、
SN−1:
【0239】
【化1】


【0240】
CN−1:
【0241】
【化2】


【0242】
また、使用する化合物のlogP値と分子量とその積を本文中に記載の方法により求め、表2に記載した。
【0243】
【表2】


【0244】
UV−3:2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
UV−7:2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ペンチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
UV−21:オクチル−3−〔3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物、
UV−22:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、
UV−23:2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
UV−102:
【0245】
【化3】


【0246】
[添加剤溶液の調製]
耐圧性のミキシングタンクに、表3に記載の組成物を投入し、39℃にて攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液(U−1)〜(U−4)を調製した。
【0247】
【表3】


【0248】
[セルロースアシレートフィルム試料(001)の作製](比較例1−1)
耐圧性のミキシングタンクにて、セルロースアシレート原液(T−1)477質量部に、添加剤溶液(U−1)44質量部を添加して充分に攪拌し、ドープ(D−1)を調製した。調整したドープをドープ温度が35℃の状態で、バンド流延機にて、流延した後60℃の乾燥風にて乾燥を行い、残留溶媒含率40質量%の状態で自己支持性のあるドープ膜をバンドより剥離した。剥離したドープ膜を、ピンテンター工程において、フィルムの幅方向(流延の進行方向に対して直交する方向)の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で保持して、幅方向の延伸倍率が102%となるように固定し、搬送のテンションが130N/mとなるように張力をかけ、残留溶媒含率が10%質量以下となるまで60℃の乾燥風で乾燥した。この際、必要な乾燥時間は17分だった。また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは21℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは103℃であった。
【0249】
次に、ピンテンターで保持したドープ膜に張力130N/mをかけながら、熱処理装置のロール間を搬送することにより、残留溶媒含率が0.1質量%以下となるまでさらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(001)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0250】
[セルロースアシレートフィルム試料(002)の作製](比較例1−2)
セルロースアシレートフィルム試料(001)の作製方法において、ピンテンター工程における乾燥温度を80℃として、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでの時間を8分とする以外は同様にして、フィルム試料(002)を作製した。また、この際、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは21℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは103℃であった。
【0251】
[セルロースアシレートフィルム試料(003)の作製](比較例1−3)
セルロースアシレートフィルム試料(001)の作製方法において、ドープ(D−1)を使用する代わりに、セルロースアシレート原液(T−2)477質量部及び添加剤溶液(U−2)44質量部からなるドープ(D−2)を使用する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(003)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。また、この際、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは19℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは101℃であった。
【0252】
[セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製](実施例1−1)
耐圧性のミキシングタンクにて、セルロースアシレート原液(T−3)477質量部に、添加剤溶液(U−3)44質量部を添加したのち、80℃にて4時間充分に攪拌したのち室温放置して冷却し、ドープ(D−3)を調製した。調製したドープをドープ温度が35℃の状態で、バンド流延機にて流延した後、60℃の乾燥風にて乾燥を行い、残留溶媒含率40質量%の状態で自己支持性のあるドープ膜をバンドより剥離した。剥離したドープ膜を、ピンテンター工程において、フィルムの幅方向(流延の進行方向に対して直交する方向)の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で保持して幅方向の延伸倍率が102%となるように固定し、搬送のテンションが130N/mとなるように張力をかけ、残留溶媒含率が10質量%以下となるまで60℃の乾燥風で乾燥した。この際、必要な乾燥時間は17分だった。また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、残留溶媒含率が0.1質量%以下となるまでさらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(011)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0253】
[セルロースアシレートフィルム試料(012)の作製](実施例1−2)
セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製方法において、ピンテンター工程における乾燥温度を70℃とし、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでの時間を13分とする以外は同様にして、フィルム試料(012)を作製した。また、この際、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。
【0254】
[セルロースアシレートフィルム試料(013)の作製](実施例1−3)
セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製方法において、ピンテンター工程における乾燥温度を90℃とし、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでの時間を6分とする以外は同様にして、フィルム試料(013)を作製した。また、この際、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。
【0255】
[セルロースアシレートフィルム試料(014)の作製](実施例1−4)
セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製方法において、ドープ(D−3)を使用する代わりに、セルロースアシレート原液(T−4)477質量部及び添加剤溶液(U−3)44質量部からなるドープ(D−4)を使用する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(014)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。また、この際、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは20℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは101℃であった。
【0256】
[セルロースアシレートフィルム試料(015)の作製](実施例1−5)
セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製方法において、ドープ(D−3)を使用する代わりに、セルロースアシレート原液(T−5)477質量部及び添加剤溶液(U−3)44質量部からなるドープ(D−5)を使用する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(015)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。また、この際、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。
【0257】
[セルロースアシレートフィルム試料(016)の作製](実施例1−6)
セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製方法において、ドープ(D−3)を使用する代わりに、セルロースアシレート原液(T−6)477質量部及び添加剤溶液(U−3)44質量部からなるドープ(D−6)を使用する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(016)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。また、この際、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは21℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは103℃であった。
【0258】
[セルロースアシレートフィルム試料(021)の作製](実施例1−7)
セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製方法において、ピンテンター工程における乾燥温度を、テンター入り口付近で50℃とし、残留溶媒が10質量%となる出口付近を110℃となるように温度勾配をかけて乾燥させ、また搬送のテンションが90N/mとなるように張力をかける以外はフィルム試料(011)と同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(021)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は11分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは21℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは103℃であった。
【0259】
[セルロースアシレートフィルム試料(022)の作製](実施例1−8)
セルロースアシレートフィルム試料(021)の作製方法において、ピンテンター工程の搬送のテンションを110N/mとし、またテンター部における乾燥温度を、テンター入り口付近で50℃とし、残留溶媒が10質量%となる出口付近を120℃となるように
温度勾配をかけて乾燥する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(022)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は8分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。
【0260】
[セルロースアシレートフィルム試料(004)の作製](実施例1−9)
セルロースアシレートフィルム試料(021)の作製方法において、テンター部の搬送のテンションを160N/mとする以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(004)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は11分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。
【0261】
[セルロースアシレートフィルム試料(005)の作製](実施例1−10)
セルロースアシレートフィルム試料(022)の作製方法において、テンター部の搬送のテンションを50N/mとする以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(005)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は8分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。
【0262】
[セルロースアシレートフィルム試料(023)の作製](実施例1−11)
セルロースアシレートフィルム試料(022)の作製方法において、溶媒含量が10質量%となるテンター出口の乾燥温度を50℃とする以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(023)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は13分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。また、作製したフィルム試料は、フィルム幅前面に渡ってベコ状の膜厚ムラが発生した。
【0263】
[セルロースアシレートフィルム試料(024)の作製](実施例1−12)
セルロースアシレートフィルム試料(022)の作製方法において、ドープ(D−3)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(014)の作製で使用したドープ(D−4)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(024)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は11分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは20℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは101℃であった。
【0264】
[セルロースアシレートフィルム試料(025)の作製](実施例1−13)
セルロースアシレートフィルム試料(022)の作製方法において、ドープ(D−3)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(015)の作製で使用したドープ(D−5)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(025)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は11分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは22℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは105℃であった。
【0265】
[セルロースアシレートフィルム試料(026)の作製](実施例1−14)
セルロースアシレートフィルム試料022の作製方法において、ドープ(D−3)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(016)の作製で使用したドープ(D−6)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料026を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。この際、フィルム中の残留溶媒含率が40質量%から10質量%になるまでに要する時間は11分であり、また、バンドから剥離した直後のドープ膜のTgは21℃、残留溶媒が10質量%となったときのフィルムのTgは103℃であった。
【0266】
[セルロースアシレートフィルム試料(031)の作製](参考例1−1)
セルロースアシレートフィルム試料(001)の作製方法において、セルロースアシレート原液(T−1)477質量部及び添加剤溶液(U−1)44質量部からなるドープ(D−1)を使用する代わりに、セルロースアシレート原液(T−7)477質量部及び添加剤溶液(U−4)44質量部からなるドープ(D−7)を使用する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(031)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0267】
以上のセルロースアシレートフィルム試料の作製において用いられたドープの組成を表4に、それぞれのフィルム試料の加工条件を表5にまとめる。
【0268】
【表4】


【0269】
【表5】


【0270】
[表面処理]
次に、作製した延伸フィルム試料(001)に対し下記の表面処理を行った。
作製した延伸フィルム試料(001)を、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムの表面をアルカリ鹸化した試料を作製した。
また、作製した他のフィルム試料(002)〜(003)、(011)〜(016)、(021)〜(026)及び(031)についても、それぞれ同様に表面処理をした試料を作製した。
【0271】
[添加剤の表面存在率]
作製した各試料について、含有する添加剤の表面から5μm深さの添加剤含量を以下の方法により求め、フィルム全体の平均含量に対する割合から表面から深さ5μmの添加剤含率を求めた。
作製したフィルム試料の表面から5μm深さの添加剤含量は、ミクロトームを使用して表面から5μmの表層部分を剥ぎ取り、剥ぎ取った部分からテトラヒドロフラン(THF)で含有される添加剤を溶出させてHPLCで定量することにより求めた。
【0272】
[偏光子への移動量の評価]
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光子を得た。得られた偏光子の片方の面に、上記に従って表面処理したフィルム試料(031)を、後述する接着剤塗布液を用い、後述する偏光板作製と同様の方法にて貼り合わせ、更にフィルム試料(031)の偏光子と貼り合わせていない側の面をアクリル系の感圧粘着剤を用いてガラス板に貼り合わせた。また偏光子の反対側の面には、作製した本発明の各セルロースアシレートフィルム試料を、
接着剤を使用せずに密着して貼り合わせ、更に周辺を「NITTOテープ」でガラス板に貼り付けて保持し、モデル偏光板試料を作製した。
【0273】
作製したモデル偏光板試料を60℃、95%RHの条件下に120時間静置して経時させ、経時後のモデル偏光板試料から、接着剤を使用せずに貼り合わせた本発明のセルロースアシレートフィルムを取り除き、露出した偏光子の表面から偏光子部分を削り取ってサンプリングし、得られた偏光子サンプルをHPLC分析によるり定量することで、添加剤の偏光子へ移動した添加剤量を求めた。
【0274】
以上のフィルム評価の結果を表6に示す。
【0275】
【表6】


【0276】
実施例11−1〜11−14及び比較例11−1〜11−3
<偏光板の作製>
上記の表面処理済み延伸セルロースアシレートフィルム試料(001)〜(003)、(011)〜(016)及び(021)〜(026)を用い、下記の偏光板作製を行った。すなわち、作製した表面処理済みフィルム試料のセルロースアシレートフィルム表面に対し、下記の接着剤塗布液をそれぞれ20mL/m2塗布し、100℃で5分乾燥して接着剤付きフィルム試料とした。
【0277】
(接着剤塗布液)
下層塗布液A:
下記水溶性ポリマー(m) 0.5g
アセトン 40mL
酢酸エチル 55mL
イソプロパノール 5mL
【0278】
【化4】


【0279】
上層塗布液B:
ポリビニルアルコール 0.3g
「ゴーセノールNH−26」{日本合成化学工業(株)製}
界面活性剤「サポニン」(メルク社製) 0.03g
純水 57mL
メタノール 40mL
プロピレングリコールモノメチルエーテル 3mL
【0280】
次に、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光子を得た。
上記の接着剤付きフィルム試料(001)〜(003)、(011)〜(016)及び(021)〜(026)のそれぞれに対し、接着剤を塗設した側に偏光子がくるように偏光子の両側に貼り付け、偏光板試料(P001)〜(P003)、(P011)〜(P016)及び(P021)〜(P026)を作製した。
【0281】
[偏光板試料の評価]
作製した偏光板試料について、以下の方法で耐久性の評価を行った。
【0282】
(偏光板耐久性の評価)
作製した各偏光板試料について、波長400nm〜700nmにおけるクロスニコルで
の透過率を測定してその平均値を求め、次にこれらの偏光板試料を60℃、95%RHの条件下に2000時間静置した後、同様に平均値を求めて、耐久性試験の前後の差を求めることで、偏光板耐久性を評価した。
【0283】
得られた結果を表7に示す。
【0284】
【表7】


【0285】
以上の結果より、本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板用の保護フィルムとして使用した場合、高温高湿条件における耐久性試験後の添加剤の泳動を抑制することができ、結果的に偏光板耐久性を向上させることがわかった。
【0286】
実施例2−2〜9及び比較例2−1〜2−2
<セルロースアシレートフィルムの作製>
[セルロースアシレート原液の調製]
表8に記載の組成物を耐圧性のミキシングタンクに投入して1時間攪拌したのち、80℃に加熱しながら6時間攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート原液(T−11)及び(T−12)を調製した。
【0287】
【表8】


【0288】
なお、表8における添加剤の略号は以下のとおりである。
DINP:ジイソノニルフタレート(分子量=418.6、logP=9.764)
【0289】
[セルロースアシレートフィルム試料(101)の作製](比較例2−1)
前記比較例1−1におけるドープ(D−1)を内層、上記セルロースアシレート原液(T−11)を外層として、ステンレス製支持体上に内部合流型ダイで共流延し、内層の両面に外層を設けた。この際内層に対する外層の流量が両面とも7%となるようにして流延した。その後、支持体上にて70℃の乾燥風にて乾燥を行い、残留溶媒含率40質量%の状態で自己支持性のあるドープ膜をバンドより剥離した。剥離したドープ膜をピンテンター工程において、フィルムの幅方向(流延の進行方向に対して直交する方向)の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で保持して、幅方向の延伸倍率が102%となるように固定し、搬送のテンションが130N/mとなるように張力をかけ、残留溶媒含率が10質量%以下となるまで60℃の乾燥風で乾燥した。この際、必要な乾燥時間は17分だった。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、残留溶媒含率が0.1質量%以下となるまでさらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(101)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0290】
[セルロースアシレートフィルム試料(102)の作製](比較例2−2)
セルロースアシレートフィルム試料(101)の作製方法において、内層用ドープとして(D−1)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(003)の作製で使用したドープ(D−2)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(102)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0291】
[セルロースアシレートフィルム試料(111)の作製](実施例2−1)
セルロースアシレートフィルム試料(101)の作製方法において、内層用ドープとして(D−1)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製で使用したドープ(D−3)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロ
ースアシレートフィルム試料(111)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0292】
[セルロースアシレートフィルム試料(112)の作製](実施例2−2)
セルロースアシレートフィルム試料(111)の作製方法において、内部合流型ダイで流延する場合の内層に対する外層の流量の比率を5%とする以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(112)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0293】
[セルロースアシレートフィルム試料(113)の作製](実施例2−3)
セルロースアシレートフィルム試料(101)の作製方法において、内層用ドープとして(D−1)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(014)の作製で使用したドープ(D−4)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(113)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0294】
[セルロースアシレートフィルム試料(114)の作製](実施例2−4)
セルロースアシレートフィルム試料(101)の作製方法において、内層用ドープとして(D−1)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(015)の作製で使用したドープ(D−5)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(114)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0295】
[セルロースアシレートフィルム試料(115)の作製](実施例2−5)
セルロースアシレートフィルム試料(101)の作製方法において、内層用ドープとして(D−1)を用いる代わりに、前記実施例1におけるセルロースアシレート原液(T−6)477質量部と添加剤溶液(U−2)44質量部からなるドープ(D−11)を調製して使用する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(115)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0296】
[セルロースアシレートフィルム試料(121)の作製](実施例2−6)
セルロースアシレートフィルム試料(101)の作製方法において、内層用ドープとして(D−1)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(011)の作製で使用したドープ(D−3)を用い、また外層用のドープとして上記セルロースアシレート原液(T−12)を使用する以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(121)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0297】
[セルロースアシレートフィルム試料(122)の作製](実施例2−7)
セルロースアシレートフィルム試料(121)の作製方法において、内層用ドープとして(D−3)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(014)の作製で使用したドープ(D−4)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(122)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0298】
[セルロースアシレートフィルム試料(123)の作製](実施例2−8)
セルロースアシレートフィルム試料(121)の作製方法において、内層用ドープとして(D−3)を用いる代わりに、前記セルロースアシレートフィルム試料(015)の作製で使用したドープ(D−5)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料(123)を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0299】
[セルロースアシレートフィルム試料(124)の作製](実施例2−9)
セルロースアシレートフィルム試料(121)の作製方法において、内層用ドープとして(D−3)を用いる代わりに、上記セルロースアシレートフィルム試料(115)の作製で使用したドープ(D−11)を用いる以外は同様の方法により、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム試料124を、長手方向(流延方向)100m、幅方向1.3mの大きさで作製した。
【0300】
以上のセルロースアシレートフィルム試料のそれぞれの加工条件を表9にまとめる。
【0301】
【表9】


【0302】
[表面処理]
次に、作製した延伸フィルム試料(101)に対し下記の表面処理を行った。
作製した延伸フィルム試料(101)を、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムの表面をアルカリ鹸化した試料を作製した。
また、作製した他のフィルム試料(102)、(111)〜(115)及び(121)〜(124)についても、それぞれ同様に表面処理をした試料を作製した。
【0303】
[光学性能の評価]
作製した各フィルム試料について、実施例1と同様にして添加剤の表面存在率、添加剤の移動量の評価を行った。評価の結果を表10に示す。
【0304】
【表10】


【0305】
実施例12−1〜12−9及び比較例12−1〜12−2
<偏光板試料の作製と評価>
作製した各フィルム試料について、実施例1と同様の方法にして偏光板試料(P101)〜(P102)、(P111)〜(P115)及び(P121)〜(P124)を作製し、耐久性の評価を行った。評価した結果を表11に示す。
【0306】
【表11】


【0307】
以上の結果より、本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板用の保護フィルムとして使用した場合、高温高湿条件における耐久性試験後の添加剤の泳動を抑制することができ、結果的に偏光板耐久性を向上させることが分かった。
【0308】
実施例3−1〜3−21及び比較例3−2〜3−5
<光学補償フィルムの作製>
[ポリマーの塗布による光学異方性層の形成]
2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'一ジアミノビフェニルから合成されたポリイミド{質量平均分子量(Mw)6万}の17質量%シクロヘキサノン溶液を、前記で作製したセルロースアシレートフイルム試料(001)上に塗布し、95℃で12分間乾燥処理して、残存溶媒量が6質量%で、厚さが6μm、|Rth(630)|が233nmであり、Re(630)が0nmの透明フィルムを得た。次に、フィルム試料(001)上にポリイミドが積
層された状態で、高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)−5℃で18%の横一軸延伸処理を行い、Re(630)が55nm、|Rth(630)|が238nmの光学異方性層を有する光学補償フィルム(001E)を得た。(比較例3−1)
【0309】
[試料002〜003、011〜016、021〜026、101〜102、111〜115、121〜124の光学補償フィルムの作製](実施例3−1〜3−21及び比較例3−2〜3−5)
また、実施例1及び比較例1、並びに実施例2及び比較例2で作製したセルロースアシレートフィルム試料(002)〜(003)、(011)〜(016)、(021)〜(026)、(101)〜(102)、(111)〜(115)及び(121)〜(124)についても、同様の方法により光学補償フィルム試料(002E)〜(003E)、(011E)〜(016E)、(021E)〜(026E)、(101E)〜(102E)、(111E)〜(115E)及び(121E)〜(124E)を作製した。
【0310】
[アルカリ鹸化処理]
次に、作製した各光学補償フィルム試料に対し、実施例1と同様の表面処理方法により表面処理済みの光学補償フィルム試料を作製した。
【0311】
実施例13−1〜13−21及び比較例13−1〜13−5
<偏光板試料の作製>
上記の表面処理済み光学補償フィルム試料(001E)〜(003E)、(011E)〜(016E)、(021E)〜(026E)、(101E)〜(102E)、(111E)〜(115E)及び(121E)〜(124E)を用い、偏光板作製を行った。
すなわち、作製した表面処理済み光学補償フィルム試料の光学異方性層が設置されていない側のセルロースアシレートフィルム表面に対し、実施例1と同様の接着剤塗布液をそれぞれ20mL/m2塗布し、100℃で5分乾燥して接着剤付きフィルム試料とした。
【0312】
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光子を得た。
【0313】
上記の接着剤付きの光学補償フィルム試料(001E)〜(003E)、(011E)〜(016E)、(021E)〜(026E)、(101E)〜(102E)、(111E)〜(115E)及び(121E)〜(124E)のそれぞれに対し、接着剤を塗設した側に偏光子がくるように貼り付け、さらに偏光子のもう一方の側に、実施例1及び実施例2で作製した、表面処理済みのセルロースアシレートフィルム試料(001)〜(003)、(011)〜(016)、(021)〜(026)、(101)〜(102)、(111)〜(115)及び(121)〜(124)に対し、同様に接着剤層をどちらか一方の面に塗設してから貼り合わせ、光学補償フィルム付き偏光板試料(P001E)〜(P003E)、(P011E)〜(P016E)、(P021E)〜(P026E)、(P101E)〜(P102E)、(P111E)〜(P115E)及び(P121E)〜(P124E)を作製した。
【0314】
更に、偏光子の両側に市販のセルロールアセテートフイルム「フジタックTD80UF」{富士写真フイルム(株)製、Re値は3nm、Rth値は50nm}を上記と同様の方法によりアルカリ鹸化処理、接着剤層の塗設、及び偏光子との貼り合わせを行い、偏光板(P301)を作製した。
【0315】
<液晶表示装置>
実施例4−1〜4−21及び比較例4−1〜4−5
[VA型液晶表示装置への実装評価]
(垂直配向液晶セルの作製)
ポリビニルアルコール3質量%水溶液に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(カップリング剤)を1質量%添加した。これを、ITO電極付きのガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるように実施した。セルギャップ(d)が約4.3μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.06)を注入し、垂直配向液晶セルを作製した。Δnとdとの積は260nmであった。
【0316】
この液晶セルに、前記の光学補償フィルム付き偏光板試料(P001E)の光学異方性層側を液晶セル側にし、粘着剤により貼り付け、更に液晶セルの片側に対向の偏光板と吸収軸が直交するように偏光板301を粘着剤により貼り付けVA型液晶表示装置を作製した。
【0317】
そのほかの光学補償フィルム付き偏光板試料(P002E)〜(P003E)、(P011E)〜(P016E)、(P021E)〜(P026E)、(P101E)〜(P102E)、(P111E)〜(P115E)及び(P121E)〜(P124E)に関しても同様にVA型液晶表示装置を作製した。
【0318】
[評価試験]
(パネル評価)
(作製した液晶表示装置の耐久性評価)
作製した液晶表示装置の、画像中央部における正面の黒輝度と耐久性試験後の黒輝度を測定し、経時前の白輝度に対する黒輝度の経時前後の黒輝度の差の割合(%)を耐久性前後の黒輝度上昇率として、液晶表示装置の耐久性を評価した。
(耐久性評価)=((経時後の黒輝度)―(経時前の黒輝度))/(経時前の白輝度)
【0319】
VA型液晶表示装置へ実装された偏光板の構成、及び上記評価試験の結果を表12に示す。
【0320】
【表12】


【0321】
表12より、本発明のフィルム試料を偏光板用保護フィルムとして使用した偏光板を用いた液晶表示装置により、高温高湿の耐久性試験後の黒輝度の上昇を抑制し、耐久性に優れる液晶表示装置を得られることが分かった。
【0322】
実施例5
[IPS型液晶表示装置への実装評価]
実施例1〜実施例2で作製したセルロースアシレートフィルム試料を用いて、液晶表示装置へ実装評価してその光学性能が十分であるか確認した。なお本実施例では、IPS型液晶セル、他の実施例ではVA型、OCB型液晶セルを用いるが、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板又は光学補償フィルムの用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
【0323】
前記比較例11−1で作製した偏光板試料(P001)に対し、「アートンフィルム」{JSR(株)製}を一軸延伸した光学補償フィルムを貼合して、光学補償機能を持たせた。この際、光学補償フィルムの正面レターデーションの遅相軸を偏光板試料(P001)の透過軸と直交させることで、正面特性を何ら変えることなく視覚特性を向上させることができる。光学補償フィルムの正面レターデーションRe(630)は270nm、膜厚方向のレターデーションRth(630)は0nmで、Nzファクターは0.5のものを用いた。
【0324】
作製した上記の偏光板試料(P001)と光学補償フィルムの積層体を2組作製して、光学補償フィルムが各々液晶セル側となるようにし:
偏光板試料(P001)と光学補償フィルムの積層体/IPS型の液晶セル/偏光板試料(P001)と光学補償フィルムの積層体、
の順番に重ね合わせて組み込んだ表示装置を作製した。この際、上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板試料(P001)の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5゜、ラビング方向:基板上下とも75゜とした。
【0325】
同様にして、実施例1〜2で作製したセルロースアシレートフィルム試料偏光板試料(P002)〜(P003)、(P011)〜(P016)、(P021)〜(P026)、(P101)〜(P102)、(P111)〜(P115)及び(P121)〜(P124)についても、上記の偏光板試料(P001)と同様の方法により偏光板を作製後、光学補償フィルムを貼合した積層体を2組用意して、IPS液晶セルと組み込んだ表示装置を作製した。
【0326】
作製した液晶表示装置の耐久性を実施例4と同様の方法により測定した。その結果、実施例4と同様に本発明の偏光板用保護フィルムを使用した液晶表示装置は、いずれも黒輝度の上昇の小さく、耐久性に優れることが分かった。
【0327】
実施例6
[VA型、OCB型液晶表示装置への実装評価]
実施例1〜実施例2で得た本発明のセルロースアシレートフィルム試料を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、本発明の実施例においては、いずれの場合においてもコントラスト視野角と色味視野角が良好であり、またこれらの表示性能の湿度依存性が良好であり、更に耐久性試験後のムラについても良好な性能が得られた。
【0328】
実施例7
[光学補償フィルム性能]
実施例1〜実施例2で得た本発明のセルロースアシレートフィルム試料を用いて、特開平7−333433号公報の実施例1に記載の方法により光学補償フィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルロースアシレートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判った。




 

 


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