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発明の名称 含フッ素化合物の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−55916(P2007−55916A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−241202(P2005−241202)
出願日 平成17年8月23日(2005.8.23)
代理人 【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
発明者 花木 直幸 / 佐久間 俊光 / 伊藤 孝之
要約 課題
1,2−置換含フッ素化合物の製造方法を提供する。

解決手段
一般式(I)で表わされる化合物を用いる一般式(II)で表わされる含フッ素化合物の製造方法。
特許請求の範囲
【請求項1】
一般式(I)で表わされる化合物を用いることを特徴とする、一般式(II)で表わされる含フッ素化合物の製造方法。
【化1】


(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表わす。Rは置換または無置換のアルキル基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
【化2】


(式中、R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表わす。但しR21、R22、R23、R24の少なくとも1つはフッ素原子またはフッ素原子で置換されている1価の置換基を表わす。R25は置換または無置換のアルキル基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
【請求項2】
一般式(I)で表わされる化合物において、RおよびRが、それぞれ独立に水素原子、またはフッ素原子を除く1価の置換基であることを特徴とする、請求項1記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項3】
一般式(I)で表わされる化合物において、RおよびRがいずれも水素原子であって、一般式(II)で表わされる化合物において、R21およびR22がいずれもフッ素原子であることを特徴とする、請求項1記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(I)で表わされる化合物が下記一般式(III)で表わされる化合物であり、一般式(II)で表わされる化合物が下記一般式(IV)で表わされる化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の含フッ素化合物の製造方法。
【化3】


(式中、R35は置換または無置換のアルキル基を表わす。R36は水素原子または1価の置換基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
【化4】


(式中、R45は置換または無置換のアルキル基を表わす。R46は水素原子または1価の置換基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
【請求項5】
下記一般式(IV)で表される化合物。
【化5】


(式中、R45は置換または無置換のアルキル基を表わす。R46は水素原子または1価の置換基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性材料、医薬品など、およびその合成中間体として有用な、含フッ素化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、種々の機能性化合物およびその合成中間体として有用な化合物である。中でも二重結合を有する含フッ素化合物は、その二重結合を反応性基として用いることで新たな含フッ素化合物へと変換することができ、特に二重結合を重合性基として用いることで各種含フッ素ポリマーを合成することができることから、高収率、簡便かつ汎用性の高い二重結合を有する含フッ素化合物の合成法の開発が望まれている。
この二重結合を有する含フッ素化合物の製造方法として、1,2−ジハロゲン化合物を亜鉛、マグネシウム、LiAlH4−塩化チタンなどの金属反応剤やリン反応剤と反応させて脱ハロゲン化する反応が既に知られている(特許文献1、2、3、4および非特許文献1参照)。しかし、二重結合を有する含フッ素化合物の製造方法において1,2−ジハロゲン化合物として一般的な1,2−ジクロロ化合物を原料として用いる場合には、1,2−ジクロロ化合物のフルオロ化の際に塩素原子が移動して異性体混合物になってしまうことが報告されている(非特許文献2および3)。そのため、この生成物を脱ハロゲン化反応に用いた場合に高い収率は望めない。このように、これまでに知られている二重結合を有する含フッ素化合物の製造方法は問題を有していた。
【特許文献1】米国特許第2886607号明細書
【特許文献2】特開2003−156835号公報
【特許文献3】米国特許第4533741号明細書
【特許文献4】米国特許第4908461号明細書
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journalof Organic Chemistry)、1992年、57巻、5018ページ
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journalof Organic Chemistry)、1993年、58巻、1704ページ
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・フルオリン・ケミストリー(Journal ofFluorine Chemistry)、2001年、112巻、109ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、二重結合を有する含フッ素化合物の合成原料として好適な、含フッ素化合物、特に1,2−置換含フッ素化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、二重結合を有する含フッ素化合物を高収率で合成するためには、その原料として適合した1,2−置換含フッ素化合物を純度良く合成することが重要であるという事実に基づき、収率および選択性の高い所望の1,2−置換含フッ素化合物の合成方法を詳細に検討した結果、1−ハロ−2−アルコキシ構造を有する特定の化合物をフッ素化する場合に、上述の非特許文献3で報告されているような異性体が生じないことを見出した。本発明はこの知見に基づき為すに至ったものである。すなわち、本発明の目的は、下記の手段によって達成された。
【0005】
(1)一般式(I)で表わされる化合物を用いることを特徴とする、一般式(II)で表わされる含フッ素化合物の製造方法。
【0006】
【化1】


【0007】
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表わす。Rは置換または無置換のアルキル基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
【0008】
【化2】


【0009】
(式中、R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表わす。但しR21、R22、R23、R24の少なくとも1つはフッ素原子またはフッ素原子で置換されている1価の置換基を表わす。R25は置換あるいは無置換のアルキル基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
(2)一般式(I)で表わされる化合物において、RおよびRが、それぞれ独立に水素原子、またはフッ素原子を除く1価の置換基であることを特徴とする、(1)記載の含フッ素化合物の製造方法。
(3)一般式(I)で表わされる化合物において、RおよびRがいずれも水素原子であって、一般式(II)で表わされる化合物において、R21およびR22がいずれもフッ素原子であることを特徴とする、(1)記載の含フッ素化合物の製造方法。
(4)一般式(I)で表わされる化合物が下記一般式(III)で表わされる化合物であり、一般式(II)で表わされる化合物が下記一般式(IV)で表わされる化合物であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項記載の含フッ素化合物の製造方法。
【0010】
【化3】


【0011】
(式中、R35は置換または無置換のアルキル基を表わす。R36は水素原子または1価の置換基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
【0012】
【化4】


【0013】
(式中、R45は置換あるいは無置換のアルキル基を表わす。R46は水素原子または1価の置換基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
(5)一般式(I)で表される化合物を液相中で直接フッ素化することを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1項記載の含フッ素化合物の製造方法。
(6)一般式(III)で表わされる化合物が、クロトン酸あるいはクロトン酸エステルから合成することを特徴とする、(3)記載の含フッ素化合物の製造方法。
(7)(1)記載の方法で製造された一般式(II)で表わされる化合物を用いて、一般式(V)で表わされる化合物を製造することを特徴とする、二重結合を有する含フッ素化合物の製造方法。
【0014】
【化5】


【0015】
(式中、R51、R52、R53、R54は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表わす。但しR51、R52、R53、R54の少なくとも1つはフッ素原子またはフッ素が置換されている1価の置換基を表わす。)
(8)一般式(II)で表わされる化合物を用いて、一般式(V)で表わされる化合物を製造する反応において、還元作用を有する粉末状金属として亜鉛、マグネシウム、アルミニウムおよび鉄の中から選ばれた少なくとも1種の金属を用いることを特徴とする、(7)記載の二重結合を有する含フッ素化合物の製造方法。
(9)下記一般式(IV)で表される化合物。
【化6】


(式中、R45は置換または無置換のアルキル基を表わす。R46は水素原子または1価の置換基を表わす。Xは塩素原子または臭素原子を表わす。)
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法を用いることで、簡便に、高収率で、高位置選択的で、含フッ素化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を詳細に説明する。本発明は、一般式(II)で表わされる含フッ素1−ハロ−2−アルコキシ化合物を製造する方法において、一般式(I)で表わされる1−ハロ−2−アルコキシ化合物を原料として用いるものである。
【0018】
以下、本発明における各化合物について説明する。
まず、一般式(I)で表わされる化合物について説明する。
一般式(I)において、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表わす。1価の置換基としてはいずれのものであってもよい。例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数20以下のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数30以下のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、炭素数20以下のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、炭素数30以下のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、炭素数20以下のアルキルカルボニル基(例えばアセチル)、炭素数30以下のアリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、アミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、炭素数20以下のアシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、イミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数20以下のアルコキシ基(例えばメトキシ)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えばフェノキシ)、炭素数20以下のアシルオキシ基(例えばアセトキシ)、炭素数20以下のアルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、炭素数30以下のアリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、スルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、炭素数20以下のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、炭素数30以下のアリールチオ基(例えばフェニルチオ)、炭素数20以下のアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、炭素数30以下のアリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、ヘテロ環基などを挙げる事ができる。置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。さらに置換基中のアルキル基は任意の位置に不飽和結合を形成していてもよい。
【0019】
、R、R、Rとして好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数20以下のアリール基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数20以下のアリールオキシ基、炭素数10以下のアルキルカルボニル基、炭素数20以下のアリールカルボニル基である。より好ましくは、水素原子、フッ素原子、炭素数8以下のアルキル基、炭素数15以下のアリール基、炭素数8以下のアルコキシ基、炭素数15以下のアリールオキシ基である。より好ましくは水素原子、炭素数5以下のアルキル基、炭素数10以下のアリール基、炭素数5以下のアルコキシ基、炭素数10以下のアリールオキシ基である。
【0020】
およびRは、水素原子、またはフッ素原子を除く1価の置換基であることが好ましく、少なくとも一方は水素原子を表わす場合がさらに好ましい。より好ましくはRおよびRのいずれも水素原子である場合である。
【0021】
は置換または無置換のアルキル基を表わす。アルキル基としては直鎖のものでも分岐のものでも良い。好ましくは直鎖の場合である。アルキル基の炭素数としてはいずれであってもよいが、炭素数1〜10の場合が好ましい。より好ましくは1〜5である。さらに好ましくは1〜3である。特に好ましくは1である。
で表わされるアルキル基が置換基を有する場合、置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。置換基を有する場合の置換基として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基である。さらに好ましくはハロゲン原子である。特に好ましくはフッ素原子である。Rとして好ましくは、無置換のアルキル基、ハロゲン原子が置換したアルキル基である。より好ましくは、無置換あるいはハロゲン原子が置換した炭素数5以下のアルキル基である。さらに好ましくは、無置換あるいはフッ素原子または塩素原子が置換した炭素数3以下のアルキル基である。特に好ましくは無置換アルキルである。最も好ましくはメチル基である。
【0022】
、R、R、RおよびRから選ばれる任意の置換基間で結合して環を形成してもよい。形成する環は一般式(I)で定義されている炭素原子を含んで形成される炭化水素環や酸素原子を含んで形成されるヘテロ環で環であってもよいし、これらの原子とは別に酸素、窒素などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。これら環上には任意の置換基を有していても良い。置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。
また、Xは塩素原子または臭素原子を表わす。好ましくは塩素原子である。
【0023】
一般式(I)で表わされる化合物はどのような方法で合成したものであってもよい。例えば、マイケル・ビー・スミス(Michael B.Smith)、ジェリー・マーチ(Jerry March)著「マーチズ・アドバンスド・オーガニック・ケミストリー(March’s Advanced Organic Chemistry)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、2001年刊)1043〜1044ページに記載の二重結合に対する付加反応などを用いて合成することができる。しかし、基質によっては位置選択性が生じてしまう例がSynthesis 2003,46に記載されているので、後述する一般式(III)で表わされる化合物の合成方法のように、位置選択性が生じない合成ルートを用いることが好ましい。
【0024】
続いて一般式(II)で表される含フッ素化合物について説明する。
一般式(II)において、R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表わす。R21、R22、R23、R24の例としては、上述した一般式(I)におけるR、R、R、Rの例が挙げられる。
【0025】
21、R22、R23、R24として好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数20以下のアリール基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数20以下のアリールオキシ基である。より好ましくは、フッ素原子、炭素数8以下のアルキル基、炭素数15以下のアリール基、炭素数8以下のアルコキシ基、炭素数15以下のアリールオキシ基である。さらに好ましくはフッ素原子、フッ素原子で置換されている、炭素数8以下のアルキル基、炭素数15以下のアリール基、炭素数8以下のアルコキシ基、炭素数15以下のアリールオキシ基である。特に好ましくは水素原子がすべてフッ素原子で置換されている炭素数5以下のペルフルオロアルキル基および炭素数5以下のペルフルオロアルコキシ基である。
【0026】
21およびR22は、少なくとも一方はフッ素原子を表わす場合が好ましい。より好ましくはR21およびR22のいずれもフッ素原子である場合である。
【0027】
25は置換あるいは無置換のアルキル基を表わす。R25の例としては、上述したRの例が挙げられる。R25として好ましくは、フッ素原子が置換したアルキル基である。より好ましくは、2個以上のフッ素原子が置換した炭素数5以下のアルキル基である。さらに好ましくは、炭素数5以下のペルフルオロアルキル基である。特に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0028】
21、R22、R23、R24およびR25から選ばれる任意の置換基間で結合を形成することで環を形成してもよい。形成する環は一般式(II)で定義されている炭素原子を含んで形成される炭化水素環や酸素原子を含んで形成されるヘテロ環で環であってもよいし、これらの原子とは別に酸素、窒素などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。これら環上には任意の置換基を有していても良い。置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。
また、Xは塩素原子または臭素原子を表わす。好ましくは塩素原子である。
【0029】
一般式(II)は一般式(I)をフッ素化して得られる化合物であるが、対応する置換基であるRとR21、RとR22、RとR23、RとR24およびRとR25はそれぞれ同一の構造を表わしてもよいし、対応する置換基の構造が異なっていてもよいし、任意の位置にフッ素原子が置換された構造であってもよい。例えば、一般式(I)中にフェニル基があった場合、一般式(II)においてはペルフルオロシクロヘキシル基になっていてもよい。このような反応例は、J. Fluorine Chem.2001,112,109などに記載されている。またフッ素原子置換フェニル基であってもよい。
【0030】
本発明における一般式(I)で表わされる化合物は、一般式(III)で表わされる構造である場合がより好ましい。また、一般式(II)で表わされる化合物は、一般式(IV)で表わされる構造である場合がより好ましい。また、本発明の別の実施態様は一般式(IV)で表わされる化合物である。
以下一般式(III)および(IV)について説明する。
【0031】
一般式(III)において、R35は置換あるいは無置換のアルキル基を表わす。R35としては上述のRの例として示したものが挙げられる。好ましくは炭素数5以下のアルキル基である。さらに好ましくはメチル基、エチル基である。特に好ましくはメチル基である。
【0032】
36は水素原子または1価の置換基を表わす。R36としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数20以下のアリール基、炭素数20以下のアリールオキシ基、炭素数10以下のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数20以下のアリールカルボニルオキシ基、炭素数10以下のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数20以下のアリールスルホニルオキシ基、フルオロスルホニル基である。より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、炭素数15以下のアリール基、炭素数8以下のアルコキシ基、炭素数15以下のアリールオキシ基である。特に好ましくは炭素数5以下のアルキル基および炭素数5以下のアルコキシ基である。
は塩素原子または臭素原子を表わす。好ましくは塩素原子である。
【0033】
一般式(IV)において、R45は置換または無置換のアルキル基を表わす。R45としては上述のR25の例として示したものが挙げられる。好ましくは1個以上のフッ素原子で置換されている炭素数5以下のアルキル基である。より好ましくは炭素数5以下のペルフルオロアルキル基である。特に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0034】
46は水素原子または1価の置換基を表わす。R46としては上述のR36の例として示したもの、およびそれらがフッ素化されたものが挙げられる。R46は好ましくはフッ素原子、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基、炭素数20以下のアリール基、炭素数20以下のアリールオキシ基、炭素数10以下のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数20以下のアリールカルボニルオキシ基、炭素数10以下のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数20以下のアリールスルホニルオキシ基、フルオロスルホニル基である。より好ましくはフッ素原子、1個以上のフッ素原子で置換されている炭素数8以下のアルキル基、炭素数15以下のアリール基、炭素数8以下のアルコキシ基、炭素数15以下のアリールオキシ基である。特に好ましくはフッ素原子、炭素数5以下のペルフルオロアルキル基および炭素数5以下のペルフルオロアルコキシ基である。
は塩素原子または臭素原子を表わす。好ましくは塩素原子である。
【0035】
一般式(IV)で表される化合物は、好ましくは一般式(III)をフッ素化して得られる化合物であるが、対応する置換基であるR35とR45およびR36とR46は、それぞれ同一の構造を表わしてもよいし、対応する置換基の構造が異なっていてもよいし、任意の位置にフッ素原子が置換された構造であってもよい。
【0036】
一般式(II)および一般式(IV)で表わされる化合物中に存在するフッ素原子は、いずれの方法を用いて導入しても良い。例えば、アール・シー・ラロック(R.C.Larock)著「コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメイション−ア・ガイド・トゥー・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ−(Comprehensive Organic Transformations -A Guide to Functional Group Preparations-)」(ブイ・シー・エッチ(VCH)社、ニューヨーク、1989年刊)307〜383ページにまとめられている方法を参考にフッ素原子を導入した化合物を製造することができる。
【0037】
本発明においては、一般式(IV)で表わされるようなフッ素原子を複数個有する化合物を製造することが好ましく、中でも一般式(IV)で表わされる化合物を一般式(III)で表わされる化合物から合成することがより好まく、そのため、C−H結合をC−F結合に変換する方法によって合成することが特に好ましい。以下、化合物中のC−H結合をC−F結合に変換する反応について説明する。
【0038】
化合物中の(大部分または全ての)C−H結合をC−F結合に変換する方法としては、三フッ化コバルトを用いる方法、電解槽中で、電気分解したフッ化水素をフッ素源としてフッ素化反応を行う方法(以下、電解フッ素化という。)および液相中でフッ素ガスを用いて直接フッ素化を行う方法(以下、液相直接フッ素化という。)等が知られており、本発明においてはこれらの反応を利用することができる。但し、三フッ化コバルトを用いる方法や電解フッ素化によるフッ素化反応は、異性化反応が起こる問題や、主鎖の切断や再結合反応が起こる問題があり、所望の化合物を純度良く得るのは困難なことから、本発明においては、液相直接フッ素化反応を用いるのがより好ましい。
【0039】
本発明においてフッ素化は、一般式(II)におけるX以外のフッ素化であり、好ましくはX以外のペルフルオロ化である。ここで、ペルフルオロ化とは化合物中の全てのC−H結合をC−F結合に変換し、また、炭素−炭素不飽和結合が存在する場合には飽和するまでフッ素原子を付加させることを意味する。
【0040】
本発明における液相直接フッ素化反応は、米国特許第5093432号明細書に記載されているのと同様な方法、すなわち、フッ素で飽和した溶媒中に、フッ素化をおこなう化合物及び窒素やヘリウム等の不活性ガスで希釈された理論量以上のフッ素ガスを同時に供給していく方法が好ましい。このときフッ素化をおこなう化合物は溶媒で希釈して添加してもよいし、希釈しないでそのまま添加してもよい。
【0041】
本発明において液相直接フッ素化反応に適した溶媒は、反応条件下フッ素ガスと反応しない溶媒、すなわちC−H結合及び、炭素−炭素不飽和結合を含まない溶媒であり、好ましくはペルフルオロアルカン類、または、塩素原子、窒素原子および酸素原子から選ばれる1種類以上の原子を構造中に有するペルフルオロ化合物である。
このような溶媒の例としては、ペルフルオロアルカン化合物[FC−72(商品名、住友スリーエム社製)等)、ペルフルオロエーテル化合物[FC−75、FC−77(共に商品名、住友スリーエム社製)等)、ペルフルオロポリエーテル化合物[商品名:クライトックス(KrytoxR、DuPont社商標)、フォブリン(FomblinR、AUSIMONT社商標)、ガルデン(GaldenR、AUSIMONT社商標)、デムナム{ダイキン工業(株)}等)、クロロフルオロカーボン類(CFC−11,CFC−113等)、クロロフルオロポリエーテル化合物、ペルフルオロトリアルキルアミン化合物、不活性流体(商品名:フロリナート、FluorinertR、3M社商標)等が挙げられる。
【0042】
上記反応における、反応温度は好ましくは−78℃〜100℃であり、さらに好ましくは−50℃〜80℃であり、より好ましくは−20℃〜50℃である。反応圧力は常圧〜2MPaが好ましく、より好ましくは常圧である。
フッ素化をおこなう化合物の供給後、フッ素化がペルフルオロ化まで達していない場合には、必要によりフッ素化をおこなう化合物以外のC−H及び/又は不飽和結合含有化合物をフッ素ガスとともに供給するか、または、フッ素ガスを供給しながら反応系に紫外線を照射することによりペルフルオロ化反応をより速やかに終了することができる。好ましいC−H及び/又は不飽和結合化合物としてはベンゼン、トルエン、ヘキサフルオロベンゼンなどが挙げられる。これらのC−H及び/又は不飽和結合化合物の添加量は、好ましくはフッ素化をおこなう化合物中の水素原子に対して0.1〜10モル%であり、より好ましくは0.1〜5モル%である。
【0043】
フッ素化反応の進行とともにフッ化水素が副生するが、このフッ化水素を除去するには、反応系中にフッ化水素捕捉剤を共存させる、または、反応器ガス出口でフッ化水素捕捉剤と出口ガスを接触させるのが好ましい。フッ化水素捕捉剤としてはトリアルキルアミン等の有機塩基およびNaFやKF等のアルカリ金属フッ化物が挙げられ、より好ましくはNaFである。
反応系中にフッ化水素捕捉剤を共存させる場合、フッ化水素捕捉剤の量は、フッ素化をおこなう化合物中に存在する全水素原子量に対して1〜20倍モルが好ましく、1〜5倍モルがより好ましい。
【0044】
1,2−ジクロロ化合物を直接フッ素化した例はJ.Org.Chem.1992,57,5018やJ.Org.Chem.1993,58,1704などにあるが、塩素原子の置換位置が反応中に移動してしまうことが合わせて報告されている。これを抑制する方法として、低温で反応をおこなうことがJ.Fluorine Chem.2001,112,109に報告されているが、収率が低下している上に完全に抑制できてはいない。実施例で示すように、本発明の一般式(I)で表わされる化合物を用いて直接フッ素化によって一般式(II)で表わされる化合物を合成した場合には、置換位置が移動した原子は確認できない。また、後述するが、一般式(II)で表わされる化合物は1,2−ジクロロ化合物の場合と同様に二重結合を有する化合物に変換することができる。
【0045】
続いて一般式(III)で表わされる化合物の合成方法について説明する。
一般式(III)で表わされる化合物は、いずれの方法を用いて合成したものを使用してもよい。一般式(III)の特徴的な構造である1−ハロ−2−アルコキシブタン構造の構築については、例えば二重結合にハロゲン原子とアルコキシ基を付加させる反応が、マイケル・ビー・スミス(Michael B.Smith)、ジェリー・マーチ(Jerry March)著「マーチズ・アドバンスド・オーガニック・ケミストリー(March’s Advanced Organic Chemistry)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、2001年刊)1043〜1044ページや、アール・シー・ラロック(R.C.Larock)著「コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメイション−ア・ガイド・トゥー・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ−(Comprehensive Organic Transformations -A Guide to Functional Group Preparations-)」(ブイ・シー・エッチ(VCH)社、ニューヨーク、1989年刊)327〜329ページなどにまとめられているので、これらを参考にすることができる。しかしこの形式の反応ではハロゲン原子とアルコキシ基の置換位置が異なる生成物が任意の割合で混合した混合物になる可能性がある。例えばSynthesis 2003,45には位置異性体が3:1〜4:1の割合で生じると記載されている。望まない位置異性体を含む場合には、望まない副反応が起こり生成物の純度および収率の低下を引き起こす可能性があるために好ましくない。
【0046】
一般式(III)で表わされる化合物は、上述の位置異性体を生じないような方法を用いて合成することが好ましい。1−ハロ−2−アルコキシブタン構造を有するC4ユニット(炭素数4の単位)を構築する好ましい合成ルートとしては、(1)クロトン酸またはクロトン酸エステルからハロゲン化剤(例えばNBSなど)を用いた4−ハロゲン化およびアルコキシ基の共役付加によって4−ハロ−3−アルコキシブタン酸およびその塩または4−ハロ−3−アルコキシブタン酸エステルを合成して、これを所望の官能基変換によって一般式(III)で表わされる化合物を合成する方法、(2)α−ハロアセトアルデヒドおよびその誘導体(例えばα−クロロアセトアルデヒドジメチルアセタールなど)と酢酸エステル誘導体をアルドール型反応させることによって4−ハロ−3−アルコキシブタン酸エステルを合成して、(1)と同様に一般式(III)で表わされる化合物へ誘導する方法、(3)マロン酸とα−ハロアルデヒドを反応させてKnoevenagel反応によって4−ハロ−2−ブテン酸を合成して、(1)と同様に一般式(III)で表わされる化合物へ誘導する方法、(4)α−ハロ酢酸エステルからホスホニウムイリドまたはリン酸エステルに誘導し、これとα−ハロアルデヒドと反応させてWittg反応またはHorner−Wadsworth−Emmons反応によって4−ハロ−2−ブテン酸エステルを合成して、(1)と同様に一般式(III)で表わされる化合物へ誘導する方法、などが挙げられる。ここで挙げた合成ルートでは、二重結合へのハロゲンとアルコキシ基の付加反応の選択性に依存せず、一般式(III)で表わされる化合物を位置異性体の混入無く得ることができる。
【0047】
好ましい合成ルート(1)について説明する。本ルートは一般式(III)で表わされる化合物のC4ユニットをクロトン酸骨格から誘導するものである。
合成ルート(1)
【0048】
【化7】


【0049】
クロトン酸類のγ位がアリル位であることから、ラジカル的にハロゲン化することで4−ハロクロトン酸類が選択的に得られる。この反応は以下の文献に示されている。J.Med.Chem.1976,19,1069、Tetrahedron 1988,44,2541。所望のハロゲン原子でない場合のハロゲン原子の変換は以下の文献記載の反応を参考にできる。Can.J.Chem.1990,68,492。引き続きクロトン酸類がα,β−不飽和カルボニル化合物であることからアルコキシ基を共役付加させることで4−ハロ−3−アルコキシブタン酸類が得られる。この反応は以下の文献に示されている。C.R.Hebd.Seances Acad.Sci.1946,222,744、Bull.Soc.Chim.Fr.1959,1645。
【0050】
好ましい合成ルート(2)について説明する。本ルートは一般式(III)で表わされる化合物のC4ユニットをC2ユニット+C2ユニットのアルドール型反応によって構築するものである。
合成ルート(2)
【0051】
【化8】


【0052】
α−ハロアセトアルデヒドとエステルまたはその誘導体(例えば、ケテンシリルアセタールなどのエステルの金属エノラート)を、各種反応剤を用いてアルドール型反応させることによって4−ハロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルが1段階で得られる。この後に水酸基をアルキル化すれば4−ハロ−3−アルコキシブタン酸エステルに誘導できるが、最初からα−ハロアセトアルデヒドジアルコキシアセタールを原料として用いることで、直接4−ハロ−3−アルコキシブタン酸エステルが得られる。例えば以下の文献を参考にできる。Bull.Chem.Soc.Jpn.1995,68,1721、Synlett 1993,577、Tetrahedron 1988,44,4259、Chem.Lett.1984,1759、Bull.Chem.Soc.Jpn.1983,56,3195、Bull.Soc.Chim.Fr.1970,2962。
【0053】
エステルを用いた場合には自己アルドール反応(Claisen縮合)によって目的とする交差アルドール反応生成物が低収率になってしまうので、α−ハロ酢酸エステルと亜鉛を反応させて得られる亜鉛エノラートとα−ハロアセトアルデヒドまたはその誘導体を反応させるReformatsky反応でおこなうことがより好ましい。Reformatsky反応については、マイケル・ビー・スミス(Michael B.Smith)、ジェリー・マーチ(Jerry March)著「マーチズ・アドバンスド・オーガニック・ケミストリー(March’s Advanced Organic Chemistry)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、2001年刊)1212〜1213ページ、ラスズロ・ケルチ(Laszlo Kurti)、バーバラ・クザコ(Barbara Czako)著「ストラテジック・アプリケーションズ・オブ・ネームド・リアクションズ・イン・オーガニック・シンセシス(Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis)」(エルセビア(Elsevier)社、2005年刊)374〜375ページなどに記載されている。用いる金属としては上記文献に記載されている亜鉛と同様の反応性を示す金属を使用することができる。
亜鉛エノラート単独ではアセタールに対して求核付加できないが、各種酸触媒を併用することによってアセタールに対する求核付加ができるようになり、直接4−ハロ−3−アルコキシブタン酸エステルが得られる。例えば以下の文献を参考にできる。Synthesis 1990,305、J.Chem.Soc.Chem.Commun.1989,596。
【0054】
好ましい合成ルート(3)について説明する。本ルートは上述の合成ルート(1)の合成中間体の4−ハロ−2−ブテン酸骨格を別ルートで合成するものである。
合成ルート(3)
【0055】
【化9】


【0056】
Knoevenagel反応については、マイケル・ビー・スミス(Michael B.Smith)、ジェリー・マーチ(Jerry March)著「マーチズ・アドバンスド・オーガニック・ケミストリー(March’s Advanced Organic Chemistry)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、2001年刊)1225〜1228ページ、ラスズロ・ケルチ(Laszlo Kurti)、バーバラ・クザコ(Barbara Czako)著「ストラテジック・アプリケーションズ・オブ・ネームド・リアクションズ・イン・オーガニック・シンセシス(Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis)」(エルセビア(Elsevier)社、2005年刊)242〜243ページなどに詳しく説明されている。用いる塩基はいずれのものを使用しても良い。
【0057】
好ましい合成ルート(4)について説明する。本ルートは上述の合成ルート(1)の合成中間体の4−ハロ−2−ブテン酸骨格を別ルートで合成するものである。
合成ルート(4)
【0058】
【化10】


【0059】
Wittig反応およびHorner−Wadsworth−Emmons反応については、マイケル・ビー・スミス(Michael B.Smith)、ジェリー・マーチ(Jerry March)著「マーチズ・アドバンスド・オーガニック・ケミストリー(March’s Advanced Organic Chemistry)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、2001年刊)1231〜1237ページ、ラスズロ・ケルチ(Laszlo Kurti)、バーバラ・クザコ(Barbara Czako)著「ストラテジック・アプリケーションズ・オブ・ネームド・リアクションズ・イン・オーガニック・シンセシス(Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis)」(エルセビア(Elsevier)社、2005年刊)212〜215および486〜489ページなどに詳しく説明されている。
【0060】
本発明における一般式(III)で表わされる化合物の合成方法として好ましい合成ルート(1)〜(4)を挙げたが、位置異性体の混合物になり得ない合成ルートであればこれに限定せずいずれの合成ルートを経由してもよい。好ましくは上述の合成ルート(1)〜(4)であり、より好ましくは上述の合成ルート(1)、(2)および(3)である。さらに好ましくは合成ルート(1)および(2)である。特に好ましくは合成ルート(1)である。
【0061】
本発明によって得られる一般式(II)で表わされる化合物は、一般式(V)で表わされる二重結合を有する含フッ素化合物合成の出発原料として用いることができる。
以下、一般式(V)で表される二重結合を有する含フッ素化合物について説明する。
【0062】
一般式(V)において、R51、R52、R53、R54は水素原子または1価の置換基を表わす。R51、R52、R53、R54の例としては、上述した一般式(II)におけるR21、R22、R23、R24の例が挙げられる。好ましい場合も同じである。
51、R52、R53、R54から選ばれる任意の置換基間で結合を形成することで環を形成してもよい。形成する環は一般式(V)で定義されている炭素原子を含んで形成される炭化水素環であってもよいし、酸素、窒素などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。これら環上には任意の置換基を有していても良い。置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。
【0063】
一般式(V)における二重結合の構造は、R51とR54およびR52とR53が二重結合に対して同じ側(シス)、R51とR53およびR52とR54が二重結合に対して反対側(トランス)となっている構造で便宜的に記載しているが、本発明によって得られる一般式(V)の構造はこれに限定されず、R51とR54およびR52とR53がトランス、R51とR53およびR52とR54がシスとなっている構造である場合も本発明に含まれる。また、これら幾何異性体について任意の割合の混合物である場合も本発明に含まれる。
【0064】
続いて、本発明における一般式(II)で表わされる化合物から一般式(V)で表わされる化合物を製造する反応条件について説明する。
【0065】
一般式(II)で表わされる化合物から一般式(V)で表わされる化合物を製造する方法としては、いずれの反応条件であっても良いが、従来知られている1,2−置換化合物から二重結合を形成する反応に用いられている反応条件を参考にすることができる。例えば、マイケル・ビー・スミス(Michael B.Smith)、ジェリー・マーチ(Jerry March)著「マーチズ・アドバンスド・オーガニック・ケミストリー(March’s Advanced Organic Chemistry)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、2001年刊)1343〜1345ページ記載の解説および引用文献、アール・シー・ラロック(R.C.Larock)著「コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメイション−ア・ガイド・トゥー・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ−(Comprehensive Organic Transformations -A Guide to Functional Group Preparations-)」第2版(ワイリー・ブイ・シー・エッチ(Wiley-VCH)社、ニューヨーク、1999年刊)259〜268ページに挙げられている反応例などを参考にすることができる。
【0066】
例えば、亜鉛、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、スズ、クロム、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、パラジウム、銅、サマリウムなどの還元作用を有する粉末状金属および金属塩、TiCl/LiAlHなどの金属含有還元剤、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、チオウレア、硫化ナトリウムなどの反応剤を用いることができる。中でも、亜鉛を用いる場合が好ましい。(以下、本発明の一般式(II)におけるXとOR25が脱離して二重結合を形成する反応に主として機能するこれらの化合物を還元剤と称する。)
【0067】
亜鉛などの金属または金属塩を用いる場合において、金属を活性化する効果や、反応を促進する効果や、原料や生成物の安定性を向上させる効果などを有する添加剤を用いることもできる。例えば、ヨウ素、臭素、1,2−ジブロモエタン、四塩化チタン(Synthesis 1982,1025参照)、チオウレア(Synthetic Communications 1981,11,901参照)、トリメチルシリルクロリド(J.Org.Chem.1995,59,2671参照)、有機カルボン酸(特開平11-335309参照)などを用いることができる。反応前あるいは反応中に超音波を使用しても良い(J.Am.Chem.Soc.1990,112,6715参照)。またこれらを組み合わせておこなっても良い。
【0068】
一般式(II)の化合物を原料として一般式(V)で表わされる化合物を製造する反応をおこなう場合において、溶媒を使用して反応をおこなってもよいし、無溶媒で反応をおこなってもよい。原料や生成物の物性、生じる副生成物などによって反応系が固化してしまう場合や攪拌が困難である場合には、溶媒を使用することが好ましい。溶媒としては、本発明の反応に悪影響を与えないものであればいずれのものを使用してもよい。例えば水、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、トルエンなどが挙げられる。水を用いる場合、本発明の反応における反応液の酸性度は任意であるが、用いる水の水素イオン濃度(pH)は特に限定されない。塩酸などを添加することでpH7以下の酸性水を用いてもよいし、水酸化ナトリウムなどを添加することでpH7以上のアルカリ水を用いてもよい。
また、複数の溶媒を組み合わせて使用してもよい。混合しない溶媒を使用して2相の反応系となってもよい。また溶媒として、イオン性液体、超臨界流体、フルオラス溶媒などを使用することもできる。
溶媒として好ましくはアルコール、酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドである。より好ましくは低級アルコール、酢酸、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、である。特に好ましくはイソプロパノール、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0069】
上記の反応は窒素ガスなどの不活性雰囲気下でおこなってもよいし、乾燥剤(例えばシリカゲル、塩化カルシウム、五酸化二リン)を使用して乾燥下でおこなってもよい。
【0070】
上記の反応における一般式(II)で表わされる化合物と還元剤を用いる比率はいずれの比率であってもよいが、(還元剤のモル数/一般式(II)のモル数)が1以上であることが好ましい。また、反応初期から全量混合していなくても、還元剤を徐々に添加して最終的に1以上になるように分割して添加してもよいし、一般式(II)で表わされる化合物を徐々に添加して最終的に1以上になっているように分割して添加してもよい。比率として好ましくは1以上100以下であり、より好ましくは1以上10以下であり、特に好ましくは1以上5以下である。
【0071】
上記の反応において、反応温度はいずれの温度であってもよいが、−20℃から200℃が好ましい。より好ましくは20℃から150℃であり、特に好ましくは40℃から120℃である。反応中に好ましい温度の範囲内で反応温度を変化させてもよい。
上記の反応時の圧力は、常圧でおこなうことが好ましいが、一般式(II)および(V)で表わされる反応原料および生成物の性質によっては加圧状態で反応をおこなってもよいし、分離・精製のために減圧状態で反応をおこなうこともできる。
【0072】
上記の反応において、一般式(II)で表わされる化合物および還元剤の添加順序はいずれであってもよい。例えば、一般式(II)の溶液に還元剤を添加してもよいし、還元剤を溶媒に分散させて一般式(II)の化合物を添加してもよいし、溶媒を攪拌しながら一般式(II)の化合物と還元剤を同時に添加してもよい。添加する一般式(II)で表わされる化合物および還元剤はこれら単独で添加してもよいし、溶媒に溶解または分散した状態で添加してもよい。
【0073】
還元剤は、一般式(II)で表わされる化合物と反応させる前に、例えば還元剤を溶媒に分散させて超音波をかける操作や、還元剤を活性化させる操作(例えば、亜鉛を用いた場合にヨウ素や1,2−ジブロモエタンを用いる操作など)や、還元剤の表面に生じている被膜を取り除く操作(例えば、亜鉛粉末を希塩酸中で攪拌することで、亜鉛表面の酸化被膜を取り除く効果があるとされる操作など)などの任意の前処理をおこなってもよい。金属反応剤の活性化については、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,164に詳しくまとめられており、亜鉛の場合にはルイス・エフ・フィーザー(Louis F.Fieser)、マリー・フィーザー(Mary Fieser)著「リエージェント・フォー・オーガニック・シンセシス(Reagents for Organic Synthesis)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、1967年刊)1276ページ記載の方法も参考にできる。前処理をおこなう際に用いた化合物は、そのまま本発明の反応系中に残存していてもよいし、任意の除去操作をおこなってから反応をおこなってもよい。
【0074】
上記の反応の後処理方法はいずれであってもよいが、得られた一般式(V)で表わされる化合物が容易に単離できることが好ましい。反応進行と共にあるいは反応完結後に冷却することで一般式(V)で表わされる化合物が析出してくるような反応系を用いた場合には、反応混合物を濾過することで一般式(V)で表わされる化合物が得られる。このような反応系ではない場合、適切な後処理をすることで一般式(V)で表わされる化合物を取り出すことができる。例えば、還元剤を失活させる任意の化合物を添加したり(例えば、ルイス酸性の反応剤に対してルイス塩基性化合物を添加する操作など)、反応系中から還元剤や残渣を取り除いたり(例えば、水溶性の還元剤であれば水を添加して洗浄する操作や、溶媒に溶解していないものを濾過で取り除く操作など)することで反応を停止させる処理などがおこなわれる。さらに任意の溶媒で抽出すること、あるいは析出する場合にはこれを濾過することで一般式(V)で表わされる化合物が得られる。
一般式(V)で表わされる化合物においては、少なくとも1つのフッ素原子を有しており、これ以外にも分子内にフッ素原子を有することで含フッ素化合物との親和性が高い場合には、水や一般的な有機溶剤とは混合しない含フッ素化合物(フルオラス溶媒)を抽出溶剤として用いることもできる。さらにこれを利用して抽出・洗浄により一般式(V)を純度良く得ることもできる。
また、特別な後処理をすることなく、反応後あるいは反応中に連続的に一般式(V)で表わされる化合物を反応系中から留出させて取り出すこともできる。
【0075】
得られた一般式(V)で表わされる化合物は、そのまま目的とする用途に使用してもよいし、この化合物が合成中間体であるならばそのまま次の反応に使用してもよいし、再結晶や蒸留、カラムクロマトグラフィーなどによる精製をおこなってから使用してもよい。精製が困難な不純物を含む場合には、反応生成物を別の化合物に変換して(例えば、水酸基をエステル化するなどの官能基変換や、塩にする方法など)分離精製を容易にする方法を取ることもできる。目的物あるいは不純物の一方のみを別の化合物に変換して分離することもできる。例えば、WO03/053899A1には不純物をクライゼン転位によって分離容易な化合物に変換してから蒸留することで、目的のジエン化合物を高純度で得る方法が記載されている。
【0076】
本発明においては、一般式(II)で表わされる化合物を合成する過程に異性化が起こってしまう反応や選択性が生じてしまう反応を用いていないために、異性体に由来する副生成物が混入せず、一般式(V)で表わされる化合物を純度良く製造することができる。よって、WO03/053899A1に記載されているような不純物を反応させるような高温にすることなく、一般式(V)で表わされる化合物を精製することができる。
【0077】
一般式(I)、(II)、および(V)で表わされる化合物の例を以下に、それぞれ(I−1〜44)、(II−1〜45)、および(V−1〜42)示すが、本発明はこれに限定されない。なお、一般式(III)で表わされる化合物は、一般式(I)で表わされる化合物のうち一般式(III)で定義された構造を有するもの、すなわち(I-1)〜(I-34)が例として挙げられるが、これに限定されない。また、一般式(IV)で表わされる化合物は、一般式(II)で表わされる化合物のうち一般式(IV)で定義された構造を有するもの、すなわち(II-1)〜(II-17)が例として挙げられるが、これに限定されない。
【0078】
【化11】


【0079】
【化12】


【0080】
【化13】


【0081】
【化14】


【0082】
【化15】


【0083】
【化16】


【0084】
【化17】


【0085】
【化18】


【0086】
【化19】


【0087】
一般式(V)で表わされる化合物の例においては、幾何異性体のうちの一方のみを記述しているが、本発明の記述と異なる幾何異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0088】
本発明の化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得るものがある。本発明においては代表的な形の一つで記述しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0089】
本発明の化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【実施例】
【0090】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0091】
<参考例−1 例示化合物I-25の合成>
クロトン酸メチル 50.1g(0.5mol)を四塩化炭素に溶解し、N-ブロモコハク酸(NBS) 94.0g(0.528mol) アゾイソブチロニトリル(AIBN) 0.92g(5.6mmol)を室温で添加し、8時間加熱還流下で反応させた。反応液を放冷後、水を加え、飽和食塩水で洗浄、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後で減圧濃縮し、得られた粗生成物を減圧蒸留(65-67℃、1.3kPa)することで4-ブロモクロトン酸メチルが得られた。収量63.5g(収率71%)。
1H NMR(CDCl3) δ 3.76(s,3H,CH3),4.01 (dd,J=1.2 and 7.2Hz,2H,CH2),6.04(dt,J=1.2 and 15.3Hz,1H,CHCO),7.02(dt,J=7.5 and 15.3Hz,1H,CHCH2)。
【0092】
塩化リチウム 16.4g(0.39mol)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)250mlに溶解し、氷浴で内温を10〜22℃に維持しながら4-ブロモクロトン酸メチル 63.0g(0.352mol)/DMF 50ml溶液を20分間かけて添加した。得られた反応混合物を室温で1時間攪拌した後、水を加え、酢酸エチルで有機物を抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後で減圧濃縮し、得られた粗生成物を減圧蒸留(76℃、2.7kPa)することで4-クロロクロトン酸メチルが得られた。収量43.6g(収率92%)。
1H NMR(CDCl3) δ 3.77(s,3H,CH3),4.17 (dd,J=1.5 and 6.0Hz,2H,CH2),6.11(dt,J=1.5 and 15.3Hz,1H,CHCO),6.99(dt,J=6.0 and 15.3Hz,1H,CHCH2)。
MS(EI);m/z,(intensity;%) 136(9),134(26),105(32),104(12),103(100),102(20),99(17),85(10),77(9),75(29)。
【0093】
窒素雰囲気下で4-クロロクロトン酸メチル 2.7g(20mmol)を乾燥メタノールに溶解し、氷浴で内温を8〜12℃に維持しながらナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液) 4.27g(22mmol)を8分間かけて添加した。得られた反応混合物を室温で1時間攪拌した後、1mol/l塩酸を加え、酢酸エチルで有機物を抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後で減圧濃縮し、得られた粗生成物を減圧蒸留(85℃、2.7kPa)することで例示化合物I-25が得られた。収量2.42g(収率72%)。
1H NMR(CDCl3) δ 2.62 (dd,J=7.2 and 16.0Hz,1H,CHHCO),2.70(dd,J=5.2 and 16.0Hz,1H,CHHCO),3.44(s,3H,CH3),3.63(d,J=7.2Hz,2H,CH2Cl),3.72(s,3H,CH3),3.85-3.93(m,1H,CHOMe)。
【0094】
<参考例−2 例示化合物I-28の合成>
窒素雰囲気下で水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4) 4.46g(0.118mol)を乾燥ジエチルエーテル 200mlに分散し、氷浴で内温を5〜20℃に維持しながら例示化合物I-25 19.6g(0.118mol)/乾燥ジエチルエーテル 50ml溶液を15分間かけて添加した。得られた反応混合物を室温で3時間攪拌した後、無水硫酸ナトリウム 5.20gを加え、水 13.7mlを注意深く滴下した。得られた混合物を室温で攪拌し、固形分を濾過で取り除いた後で減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)によって精製することで例示化合物I-28が得られた。収量10.6g(収率65%)。
1H NMR(CDCl3) δ 1.88-2.00(m,2H,CH2CH2OH),2.11(t,J=5.3Hz,1H,OH),3.46(s,3H,CH3O),3.61(d,J=5.4Hz,2H,CH2Cl),3.62-3.70(m,1H,CHOMe),3.74-3.86(m,2H,CH2OH)。
【0095】
<参考例−3>
Synthesis 2003,45記載の方法を参考にしてクロロヒドリンの合成を試みた。すなわち、3-ブテン-1-オールとイソシアヌル酸クロリドをメタノール中で反応させたが、例示化合物I-28とその位置異性体である3-クロロ-4-メトキシ-1-ブタノールの混合物として得られ、その生成比は61:39であった。
【0096】
<参考例−4 例示化合物I-34の合成>
例示化合物I-28 10.5g(75.8mmol)、クロロジフルオロ酢酸 12.8g(92.4mmol)、p−トルエンスルホン酸1水和物 0.72g(3.79mmol)をヘキサン 200mlに分散し、外温を75℃に設定して共沸脱水しながら2時間反応させた。放冷後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、酢酸エチルで有機物を抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後で減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)によって精製することで、例示化合物I-34が得られた。収量14.5g(収率76%)。
1H NMR(CDCl3) δ 1.92-2.18(m,2H,CH2CH2O),3.43(s,3H,CH3),3.48-3.64(m,2+1H,ClCH2CHO),4.45-4.54(m,2H,CH2O)。
【0097】
<参考例−5 例示化合物I-1の合成>
窒素雰囲気下、例示化合物I-34 14.5g(57.7mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(THF) 100mlに溶解し、ドライアイス−メタノール浴で内温を-50℃以下に維持しながらジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL-H)(0.94mol/l ヘキサン溶液) 73ml(68.6mmol)を20分間かけて添加した。得られた反応溶液を-78℃で2時間反応させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)にて例示化合物I-34が消失して反応が完結したことを確認した後、2mol/l塩酸に添加し、酢酸エチルで有機層を抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後で減圧濃縮した。得られた粗生成物をトルエン 100mlに溶解し、氷冷下、塩化チオニル 4.2ml(58.4mmol)およびピリジン 4.8ml(59.5mmol)を順次ゆっくり添加した。得られた反応混合物を室温で2時間反応させた。不溶解物を濾別し、濾液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、酢酸エチルで有機物を抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後で減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)によって精製することで、例示化合物I-1が得られた。収量13.3g(収率85%)。
1H NMR(CDCl3) δ 1.82-2.10(m,2H,CH2CH2O),3.43(s,1.7H,CH3(isomer)),3.45(s,1.3H,CH3(isomer)),3.52-3.72(m,2+1H,ClCH2CHO),3.72-3.88(m,1H,CHHO),4.05-4.20(m,1H,CHHO),5.66(dd,J=3.0
and 6.9Hz,1H,CHCl)。
【0098】
<実施例−1 例示化合物II-1の製造>
原料供給口とフッ素およびヘリウムガス供給口とドライアイスで冷却した還流装置を経由してフッ素トラップに接続されている排気口を備えた500mlテフロン(登録商標)製容器に、フッ化ナトリウム 37.0gとFC-72 350mlを入れて、内温-15℃に冷却した後、ヘリウムガスを流速50ml/minで30分間吹き込んだ。引き続き20%F2/N2ガスを100ml/minで30分間吹き込んだ。内温を-20℃から-8℃に維持し、20%F2/N2ガスの流速を105ml/minから315ml/minに徐々に増やしながら、例示化合物I-1 10g(36.8mmol)を4時間かけてゆっくり添加した。20%F2/N2ガスの流速を100ml/minにして、ヘキサフルオロベンゼン 2.13g(11.5mmol)のFC-72 8ml溶液を20分間かけて添加し、引き続き20%F2/N2ガスの流速を200ml/minにして50分間反応させた。このとき内容物を一部取り出してガスクロマトグラフィーによって分析したところ、例示化合物I-1は消失していて、新たな生成物がシングルピークとして観測された。20%F2/N2ガスの供給を止めて、ヘリウムガスを流速100ml/minで1時間吹き込んだ。反応容器の内容物を取り出し、不溶物を濾過し、常圧で加温してFC-72を留去し、得られた粗生成物を減圧蒸留(58℃、5kPa)することで例示化合物II-1が得られた。収量11.5g(収率 67%)。
19F NMR(CDCl3) δ -52.3(m,3F,CF3O),-66.2(m,2F,CF2ClCCl),-70.6(m,2H,CF2ClCC),-76.4(dd,J=11.3 and 96.0Hz,1F,FCCl),-81.8(dd,J=22.6 and 146.8Hz,0.5F,CFFO(isomer)),-82.5(dd,J=22.6 and 146.8Hz,0.5F,CFFO(isomer)),-83.4(d,J=146.8Hz,0.5F,CFFO(isomer)),-84.1(d,J=146.8Hz,0.5F,CFFO(isomer)),-121.1(d,J=282.3Hz,0.5F,CFFOCF2(isomer)),-121.3(d,J=282.3Hz,0.5F,CFFOCF2(isomer)),-122.2(d,J=282.3Hz,0.5F,CFFOCF2(isomer)),-122.3(d,J=282.3Hz,0.5F,CFFOCF2(isomer)),-137.3(m,1F,FCOCF3)。
このとき、塩素原子の置換位置異性体の生成は、ガスクロマトグラフィーおよび19F NMRでは確認できなかった。
このように、本発明の一般式(I)で表わされる化合物を用いる製造方法により、例示化合物II-1を純度良く製造できた。
【0099】
<比較例−1>
原料として例示化合物I-1の代わりに3’,4’-ジクロロブトキシ-1,2-ジクロロ-2,2-ジフルオロエタンを用いて、実施例−1と同様の条件で反応をおこなったところ、例示化合物II-1とその位置異性体であるペルフルオロ(2’,3’-ジクロロブトキシ-1,2-ジクロロエタン)の混合物として得られ、その生成比は86:14であった。
この混合物の精製を鋭意検討したが、位置異性体を分離することは困難であり、実施例−1で得られた例示化合物II-1と同程度の純度まで向上させることはできなかった。
【0100】
以上より、本発明の製造ルートにおいては、反応の位置選択性に基づく分離困難な副生成物が混入することや、反応によって不要な異性体が生じることがないため、高収率で純度良く一般式(II)で表わされる化合物を合成できることがわかる。
【0101】
<参考例−6 例示化合物V-1の製造>
窒素雰囲気下、あらかじめ希塩酸中で攪拌し水洗・乾燥させた亜鉛粉末 0.56g(8.6mmol)をDMF 2.5mlに分散させ、トリメチルシリルクロリド(TMSCl) 0.04mlを添加し、室温で30分間攪拌した。オイルバスで外温を62℃に設定して、例示化合物II-1 0.5g(1.05mmol)を徐々に添加し、30分間反応させた。不溶物を濾別して、ガスクロマトグラフィーによる分析をおこない、別途合成した標品と比較することで例示化合物V-1が生成していることを確認した。この時、例示化合物V-1の生成率は面積比率50%であった。




 

 


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