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発明の名称 成膜装置及び成膜方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−31737(P2007−31737A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−212346(P2005−212346)
出願日 平成17年7月22日(2005.7.22)
代理人 【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明
発明者 新川 高見
要約 課題
エアロゾル速度を制御することにより、均一な膜質を有する構造物を形成することができるAD法による成膜方法、及び、成膜装置を提供する。

解決手段
成膜装置は、原料粉が配置される容器を有し、該容器内にガスを供給して原料粉を分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部1〜4と、基板が配置される成膜チャンバ8と、成膜チャンバ内に配置され、エアロゾル生成部によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射する噴射ノズル11と、噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度に関する情報を取得する圧力ゲージ6及び13と、噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度を調節するガス供給調節部7a、7b、及び、真空バルブ10と、圧力ゲージ6及び13によって取得された情報に基づいて、ガス供給調節部7a、7b、又は、真空バルブ10をフィードバック制御するフィードバック制御部14とを含む。
特許請求の範囲
【請求項1】
原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜装置であって、
原料粉が配置される容器を有し、前記容器内にガスを供給して原料粉を分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、
基板が配置される成膜室と、
前記成膜室内に配置され、前記エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度に関する情報を取得する速度情報取得手段と、
前記噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度を調節するエアロゾル速度調節手段と、
前記速度情報取得手段によって取得された情報に基づいて、前記速度調節手段をフィードバック制御する制御手段と、
を具備する成膜装置。
【請求項2】
前記速度情報取得手段が、前記噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度を測定する、請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記速度情報取得手段が、超音波ドップラー測定法、マイクロ波ドップラー法、レーザ・ドップラー法、又は、ハイスピードカメラシステムを用いることにより、エアロゾルの速度を測定する、請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記速度情報取得手段が、前記容器内の圧力、及び/又は、前記成膜室内の圧力を測定する、請求項1記載の成膜装置。
【請求項5】
前記速度調節手段が、前記容器内に供給されるガスの流量を調節する、請求項1〜4のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項6】
前記速度調節手段が、前記容器内の圧力、及び/又は、前記成膜室内の圧力を調節する、請求項1〜5のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記速度情報取得手段によって取得された情報に基づいて、前記噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度が均一になるように、前記速度調節手段をフィードバック制御する、請求項1〜6のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項8】
原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法による成膜方法であって、
容器に配置された原料粉を、前記容器内にガスを供給して分散させることによりエアロゾルを生成するステップ(a)と、
ステップ(a)において生成されたエアロゾルを、成膜室内に配置された噴射ノズルから基板に向けて噴射することにより、原料粉を基板上に堆積させるステップ(b)と、
ステップ(b)において前記噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度に関する情報を取得するステップ(c)と、
ステップ(c)において取得された情報に基づいて、前記噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度をフィードバック制御するステップ(d)と、
を具備する成膜方法。
【請求項9】
ステップ(c)が、前記噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度を測定することを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
ステップ(c)が、超音波ドップラー測定法、マイクロ波ドップラー法、レーザ・ドップラー法、又は、ハイスピードカメラシステムを用いることにより、エアロゾルの速度を測定することを含む、請求項9記載の成膜方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、前記容器内の圧力、及び/又は、成膜室内の圧力を測定することを含む、請求項8記載の成膜方法。
【請求項12】
ステップ(d)が、前記容器内に供給されるガスの流量を調節することを含む、請求項8〜11のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項13】
ステップ(d)が、前記容器内の圧力、及び/又は、前記成膜室内の圧力を調節することを含む、請求項8〜12のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項14】
ステップ(d)が、前記噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度が均一になるようにフィードバック制御することを含む、請求項8〜13のいずれか1項記載の成膜方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料粉を基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)の分野においては、誘電体、圧電体、磁性体、焦電体、半導体のように、電圧を印加することにより所定の機能を発現する電子セラミックス等の機能性材料を含む素子を、成膜技術を用いて製造する研究が盛んに進められている。
【0003】
例えば、インクジェットプリンタにおいて高精細且つ高画質な印字を可能とするためには、インクジェットヘッドのインクノズルを微細化すると共に高集積化する必要がある。そのため、各インクノズルを駆動する圧電アクチュエータについても、同様に、微細化及び高集積化することが求められる。そのような場合に、バルク材よりも薄い層を形成でき、且つ、微細なパターン形成が可能な成膜技術は有利である。
【0004】
最近では、成膜技術の1つとして、セラミックスや金属等の成膜技術として知られるエアロゾルデポジション法(以下において、「AD法」という)が注目されている。AD法とは、原料の粉体(原料粉)をエアロゾル状態にして、それをノズルから基板に向けて噴射することにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、気体中に浮遊している固体や液体の微粒子のことをいう。なお、AD法は、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれている。
【0005】
AD法においては、原料粉が基板や先に形成された構造物に衝突することによって破砕し、その際に生じた活性な新生面において原料粉の微粒子同士が結合するというメカニズムによって膜が形成される。この成膜メカニズムは、メカノケミカル反応と呼ばれている。このようなAD法によれば、緻密で強固な膜を形成することができるため、種々の機能性膜が適用される機器の性能を向上させることが期待されている。
【0006】
関連する技術として、特許文献1には、セラミック微粒子を含むエアロゾルを高速で基板に吹き付けてセラミック構造物を形成させるガスデポジション法において、セラミックの一次粒子を多く含む、経時的に安定した量のエアロゾルを発生させ、セラミック構造物の堆積高さを調節するために、エアロゾル中のセラミック微粒子の量をセンサにより感知し、センサから出力される信号をフィードバックするセラミック構造物作製装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、超微粒子をエアロゾル化し搬送気体と共に基材に吹き付けることにより薄膜を形成するガスデポジション法において、エアロゾル化した超微粒子の一部を粒子計測装置へ導入し、粒子計測装置で超微粒子の粒径分布、粒子濃度のいずれか又は両方を計測し、搬送気体の流量、加熱エネルギーのいずれか又は両方を制御する超微粒子膜形成装置が開示されている。
【0008】
AD法により、緻密で膜厚の揃った高品質の膜を形成するためには、原料粉の組成等に応じて、基板材料や、成膜温度や、エアロゾルの濃度や、噴射圧力等の成膜条件を満たしておく必要がある。例えば、原料粉が基板に衝突する際の衝突エネルギーが小さい場合には、原料粉の破砕に至らないので、メカノケミカル反応による緻密な膜を形成することができなくなってしまう。反対に、衝突エネルギーが大きすぎる場合には、原料粉が先に形成された膜に衝突した際に膜を削ってしまい(ブラスト)、成膜を妨げる結果となってしまう。さらに、それらの成膜条件が安定していないと、膜質や膜厚が不均一になってしまう。そのため、上記の特許文献1においては、構造物の堆積高さを調節するために、エアロゾル中のセラミック粒子(原料粉)の濃度を測定してフィードバック制御することにより、エアロゾル濃度の安定化を図っている。また、特許文献2においては、エアロゾル微粒子の粒径の均一化及び濃度の安定化を図るための制御を行っている。
【特許文献1】特開2001−348659号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2003−313656号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来においては、エアロゾル粒子の速度を制御するという観点はなかった。ここで、エアロゾル粒子の衝突エネルギーには、噴射されたエアロゾル粒子が有する運動エネルギーが用いられる。この運動エネルギーKは、エアロゾル粒子の質量m及び速度vを用いて、K=(1/2)mvによって表される。この式より明らかなように、運動エネルギーKは速度の2乗に比例しているため、エアロゾル粒子の速度が僅かに変化しただけでも、大きな衝突エネルギーの変化につながる。即ち、エアロゾルの速度が安定していない場合には、膜質や膜厚の安定しない、低品質の膜が形成されてしまう。
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、エアロゾルの速度を制御することにより、均一な膜質を有する構造物を形成することができるAD法による成膜方法、及び、そのような成膜方法が用いられる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る成膜装置は、原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜装置であって、原料粉が配置される容器を有し、該容器内にガスを供給して原料粉を分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成手段と、基板が配置される成膜室と、該成膜室内に配置され、エアロゾル生成手段によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射する噴射ノズルと、該噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度に関する情報を取得する速度情報取得手段と、噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度を調節するエアロゾル速度調節手段と、速度情報取得手段によって取得された情報に基づいて速度調節手段をフィードバック制御する制御手段とを具備する。
【0012】
また、本発明に係る成膜方法は、原料粉を基板に吹き付けることにより、原料粉を基板上に堆積させるエアロゾルデポジション法による成膜方法であって、容器に配置された原料粉を、該容器内にガスを供給して分散させることによりエアロゾルを生成するステップ(a)と、ステップ(a)において生成されたエアロゾルを、成膜室内に配置された噴射ノズルから基板に向けて噴射することにより、原料粉を基板上に堆積させるステップ(b)と、ステップ(b)において噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度に関する情報を取得するステップ(c)と、ステップ(c)において取得された情報に基づいて、噴射ノズルから噴射されるエアロゾルの速度をフィードバック制御するステップ(d)とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、噴射ノズルから噴射されたエアロゾルの速度に関する情報を取得し、その情報に基づいて各部をフィードバック制御するので、エアロゾル速度を常に安定させておくことができる。従って、均一な膜質及び膜厚を有する高品質の構造物を作製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る成膜装置は、エアロゾル生成室1、振動台2、巻き上げガスノズル3、及び、圧調整ガスノズル4を含むエアロゾル生成部と、エアロゾル搬送管5と、第1圧力ゲージ(真空計)6と、ガス供給調節部7a及び7bと、成膜チャンバ8、噴射ノズル11、及び、基板ステージ12を含む成膜部と、排気管9と、真空バルブ10と、第2圧力ゲージ(真空計)13と、フィードバック制御部14とを含んでいる。
【0015】
エアロゾル生成室1は、原料粉15が配置される容器であり、ここでエアロゾルの生成が行われる。また、エアロゾル生成室1は、原料粉15を攪拌するために、所定の周波数で振動する振動台2の上に設置されている。
巻き上げガスノズル3は、外部のガスボンベから供給されたキャリアガスをエアロゾル生成室1内に導入することにより、サイクロン流を生成する。それにより、エアロゾル生成室1内に配置された原料粉15が巻き上げられて分散し、エアロゾルが生成される。
【0016】
一方、圧調整ガスノズル4は、外部のガスボンベから供給されたキャリアガスをエアロゾル生成室1内に導入することにより、エアロゾル生成室1内のガス圧を調整する。このようにエアロゾル生成室1内の圧力を制御することにより、エアロゾル生成室1内に発生する気流(巻き上げガス)の速度が制御される。
巻き上げガスノズル3及び圧調整ガスノズル4によって供給されるキャリアガスとしては、酸素(O)、窒素(N)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、それらの混合ガス、或いは、乾燥空気等が用いられる。
【0017】
エアロゾル搬送管5は、エアロゾル生成室1内において生成されたエアロゾルを、成膜チャンバ8に配置されているノズル11に搬送する。
第1圧力ゲージ6は、エアロゾル生成室1内の圧力を計測し、その計測結果を表す電圧信号をフィードバック制御部14に出力する。第1圧力ゲージ6としては、U字管マノメータ、マクラウド真空計、ブルドン真空計、隔膜真空計、ピラニー真空計、熱電対真空計、サーミスタ真空計、電離真空計、B−A型真空計、アルファトロン真空計、ペニング真空計、マグネトロン真空計、クヌーセン真空計、粘性真空計等の内から、エアロゾル生成室1内の圧力の大きさに応じて適切なものが選択して使用される。圧力ゲージ6の方式は特に限定されないが、手軽さ、電気的な制御のし易さ、測定範囲の広さ等の観点から、ピラニー真空計を用いることが望ましい。
【0018】
ガス供給調節部7a及び7bは、圧調整ガスノズル4及び巻き上げガスノズル3を介してエアロゾル生成室1に供給されるキャリアガスの流量を調節する。また、ガス供給調節部7a及び7bの動作は、フィードバック制御部14によって制御されている。ガス供給調節部7a及び7bとしては、通常のフローメータを用いることもできるが、マスフローコントローラ等の電磁式制御に対応できるものを用いることが好ましい。
【0019】
成膜チャンバ8の内部は、排気管9に接続されている排気ポンプによって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。真空バルブ10は、フィードバック制御部14の制御の下でバルブの開閉動作を行うことにより、成膜チャンバ8内の圧力を調節する。真空バルブ10としては、L字バルブ、ストレートバルブ、バタフライ型バルブ、ゲート式バルブ等を用いることができる。ここで、バタフライバルブとは、バタフライの角度を変化させることにより、バルブの開閉度を調節するバルブのことである。本実施形態におけるように、フィードバック制御部14によって制御する場合には、バタフライ型バルブのように電磁式で作動するバルブを用いることが好ましい。
【0020】
噴射ノズル11は、所定の形状及び大きさの開口を有しており、エアロゾル生成室1からエアロゾル搬送管5を介して供給されたエアロゾルを、開口から基板16に向けて高速で噴射する。
基板16が戴置されている基板ステージ12は、基板16とノズル11との相対位置及び相対速度を制御するための3次元的に移動可能なステージである。この相対速度を調節することにより、1往復あたりに形成される膜の厚さを制御することができる。
【0021】
第2圧力ゲージ13は、成膜チャンバ8内の圧力を計測し、その計測結果を表す電圧信号をフィードバック制御部14に出力する。第2圧力ゲージ13についても、第1圧力ゲージ6と同様に、種々の方式を用いた真空計の内から、圧力に応じて適切なものを選択して使用される。
【0022】
フィードバック制御部14は、第1圧力ゲージ6からの出力信号、及び、第2圧力ゲージ13からの出力信号を常にモニタし、出力信号に変化が生じた場合に、ガス供給調節部7a、7b、又は、真空バルブ10を制御することにより、キャリアガスの流量や、エアロゾル生成室1内の圧力や、成膜チャンバ8内の圧力等を調節する。例えば、真空ポンプの能力が低下して成膜チャンバ8内の圧力が上昇した場合には、フィードバック制御部14が、真空バルブ10を開くことによって成膜チャンバ8内の圧力を低下させる。それにより、エアロゾル生成室1内の圧力、及び、成膜チャンバ8の内の圧力、又は、それらの圧力の差をフィードバック制御して、エアロゾル速度が所定の範囲内に維持される。なお、フィードバック制御部14は、ガス供給調節部7a、7b、及び、真空バルブ10の内の少なくとも1箇所を制御すれば良い。
【0023】
このような成膜装置において、原料粉15をエアロゾル生成室1に配置すると共に、基板16を基板ステージ12上にセットして所定の成膜温度に保つ。また、エアロゾル生成室1内の圧力、及び、成膜チャンバ8内の圧力を所定の値に設定する。これらの圧力差により、エアロゾル生成室1において生成されたエアロゾルがエアロゾル搬送管5を介して成膜チャンバ8側に吸引され、噴射ノズル11から噴射される。そして、エアロゾルが吹き付けられた基板16上の領域に、メカノケミカル反応によって膜が形成される。その間に、フィードバック制御部14が各部をフィードバック制御することにより、エアロゾル生成室1と成膜チャンバ8との間の圧力差が一定に保たれるので、安定した速度でエアロゾルを噴射させ続けることができる。
【0024】
実施例として、図1に示す成膜装置により、次の成膜条件の下で、基板上に20μmの膜を形成する実験を行った。この実施例においては、図1に示す圧力ゲージ6及び13として、株式会社アルバック(ULVAC)製のG−TRANピラニーゲージを用い、ガス供給調節部7bとして、日本エム・ケー・エス株式会社製のガス供給システムであるMass−Floを用い、真空バルブ10として、株式会社フジ・テクノロジー製のバタフライバルブBV−Nシリーズ)を用いた。そして、エアロゾル速度を維持するための制御は、巻き上げガスノズル3の流量を調節して、エアロゾル生成室1内の圧力を制御することにより行った。即ち、エアロゾル生成室1内の圧力が低下した場合にはキャリアガスの流量を増加させ、エアロゾル生成室1内の圧力が上昇した場合にはキャリアガスの流量を低減させることにより、エアロゾル生成室1内の圧力を一定に保った。
【0025】
成膜条件
原料粉:PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)粒子、40g
基板:YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)
基板温度:600℃
巻き上げガス流量:4.75リットル/分
圧調整ガス流量:3.5リットル/分
エアロゾル生成室内圧力:93kPa
成膜チャンバ内圧力:80Pa
【0026】
また、比較例として、図1に示す成膜装置において、エアロゾル速度のフィードバック制御を行うことなく同様の膜を形成する実験を行った。成膜条件は実施例と同様に設定した。
さらに、実施例により得られた4枚のPZT膜と、比較例により得られた4枚のPZT膜のビッカース硬度を測定することにより、膜質を評価した。なお、ビッカース硬度は、株式会社島津製作所製の微小硬度計DUH−W201において、荷重を10g印加することにより10回測定し、それらの値の平均を取ることにより求めた。
【0027】
それにより、次に示す結果が得られた。
成膜チャンバ エアロゾル生成室 ビッカース硬度
実施例(1−1) 80Pa 93kPa 600
〃 (1−2) 80Pa 93kPa 590
〃 (1−3) 80Pa 93kPa 580
〃 (1−4) 80Pa 93kPa 620
比較例(1−1) 80Pa 93kPa 590
〃 (1−2) 80Pa 90kPa 560
〃 (1−3) 80Pa 88kPa 480
〃 (1−4) 80Pa 87kPa 500
【0028】
このように、実施例については、フィードバック制御を行った結果、成膜チャンバ内及びエアロゾル生成室内においてほぼ安定した圧力を得ることができた。従って、主にそれらの圧力差によって定まるエアロゾルの速度も安定していたものと考えられる。一方、比較例については、成膜チャンバ内の圧力は約80Paに安定していたが、エアロゾル生成室内の圧力は、93kPaから87kPaまで徐々に下降してしまった。従って、エアロゾルの速度も常に変動していたものと考えられる。
【0029】
また、形成された膜のビッカース硬度については、実施例と比較例との間において明確な差が現れた。即ち、実施例におけるビッカース硬度の変動幅は40以内に収まっているのに対して、比較例におけるビッカース硬度の変動幅は、110とかなり大きくなっている。この結果より、フィードバック制御を行うことによって膜質のばらつきを抑制できることが確認された。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、エアロゾル速度を決定する要素となるエアロゾル生成室内の圧力と成膜チャンバ内の圧力との差を所定の範囲に保つようにフィードバック制御することにより、膜質が均一な構造物を形成することが可能となる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置について、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る成膜装置は、図1に示す第1圧力ゲージ6及び第2圧力ゲージ13並びにフィードバック制御部14の替わりに、速度ゲージ(速度測定器)20及びフィードバック制御部21を有している。その他の構成については、図1に示す成膜装置におけるものと同様である。
【0032】
速度ゲージ20は、噴射ノズル11から噴射されたエアロゾルの速度を測定し、エアロゾル速度に関する情報をフィードバック制御部21に出力する。速度ゲージ20としては、超音波ドップラー測定法、マイクロ波ドップラー法、レーザ・ドップラー法、ハイスピードカメラシステム等の測定方式による測定機器を用いることができる。具体的には、株式会社トキメック製の超音波気体流量計MGF−10(超音波ドップラー速度計)、日本カノマックス株式会社製のSmart LDVシステムや2D−FDVシステム(レーザ・ドップラー速度計)、日本カノマックス株式会社が取り扱うラ・ヴィジョン(La Vision)社のフロー・マスター(Flow Master)PIV(可視化画像流速計測システム)シリーズのように、粒子の位置認識が可能なハイスピードカメラシステム等を用いることができる。これらの内でも、真空中にエアロゾルが噴射される環境下では、超音波による計測が困難になる場合も考えられるので、ハイスピードカメラシステムや、レーザ・ドップラー速度計や、マイクロ波ドップラー速度計を用いることが比較的望ましい。特に、光学系の構成が容易であることや、速度測定範囲が広範である等の理由から、ハイスピードカメラシステムを用いることが望ましい。
【0033】
また、必要に応じて、成膜チャンバ8に適切な窓を設けたり、成膜チャンバ8内に光学系を設置しても良い。その場合には、成膜に用いられなかった原料粉による汚染を防ぐために、窓にワイパーを取り付けたり、窓や光学系に付着した原料粉をエアーで飛ばす機構等を設けることが望ましい。
【0034】
フィードバック制御部21は、速度ゲージ20から出力されたエアロゾル速度に関する情報を常にモニタし、エアロゾル速度に変化が生じた場合に、エアロゾル生成室1内の圧力、及び、成膜チャンバ8の内の圧力、又は、それらの圧力差が所定の範囲内に維持されるように、ガス供給調節部7a、7b、及び、真空バルブ10の内の少なくとも1箇所を制御する。例えば、エアロゾル速度が所望の速度よりも遅い場合には、巻き上げガスノズル3又は圧調整ガスノズル4を介して供給されるキャリアガスの流量を増やしてエアロゾル生成室1内の圧力を上げたり、真空バルブ10を開いて成膜チャンバ8内の圧力を下げることにより、圧力差を大きくする。このようにして、圧力差に応じて変動するエアロゾルの速度を安定化させることができる。
【0035】
実施例として、図2に示す成膜装置により、次の成膜条件の下で、基板上の20μmの膜を形成する実験を行った。本実施例においては、図2に示す速度ゲージ20としてフローマスターPIVシステムを用い、このシステムに含まれる情報処理装置(PC)からフィードバック制御部21に速度情報が入力されるように制御系を構築した。また、速度情報としては、2次元画像によって示される速度分布の内で、噴射ノズル11から噴射された直後のエアロゾル速度を用いた。さらに、本実施例においては、ガス供給調節部7bとして、日本エム・ケー・エス株式会社製のガス供給システムであるMass−Floを用い、エアロゾル速度を維持するための制御を、巻き上げガスノズル3の流量のみを調節することにより行った。即ち、エアロゾル速度が低下した場合にはキャリアガスの流量を増加させ、エアロゾル速度が上昇した場合にはキャリアガスの流量を低減させた。
【0036】
成膜条件
原料粉:PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)粒子、40g
基板:YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)
基板温度:600℃
【0037】
また、比較例として、図2に示す成膜装置において、エアロゾル速度のフィードバック制御を行うことなく同様の膜を形成する実験を行った。成膜条件は実施例と同様に設定した。
さらに、実施例により得られた4枚のPZT膜と、比較例により得られた4枚のPZT膜のビッカース硬度を測定することにより、膜質を評価した。それにより、次に示す結果が得られた。
エアロゾル速度 ビッカース硬度
実施例(2−1) 150m/s 580
〃 (2−2) 150m/s 610
〃 (2−3) 150m/s 600
〃 (2−4) 150m/s 590
比較例(2−1) 150m/s 590
〃 (2−2) 140m/s 530
〃 (2−3) 130m/s 510
〃 (2−4) 130m/s 480
【0038】
上記結果から明らかなように、実施例については、ほぼ一定のエアロゾル速度を得ることができ、PZT膜の膜質もほぼ均一であった。それに対して、比較例については、エアロゾル速度が徐々に低下してしまい、それに伴い、形成されたPZT膜の膜質も大きく変化してしまった。
このように、本実施形態によれば、膜質に直接的に影響を与えるエアロゾル速度をフィードバック制御することにより、品質が安定した膜を形成することが可能となる。
【0039】
以上説明した本発明の第1及び第2の実施形態においては、膜質が均一な構造物を形成するために、エアロゾル速度を一定に維持するように各部をフィードバック制御した。しかしながら、目的に応じて、エアロゾル速度を変化させるように各部をフィードバック制御しても良い。例えば、緻密な膜から多孔質な膜に、膜質を傾斜的に変化させる場合には、エアロゾル速度を高速から低速に徐々に落としていく。また、膜と基板との密着性を高める場合には、成膜開始直後のエアロゾル速度を高速にする。反対に、膜を基板から剥離し易くする場合には、成膜開始直後のエアロゾル速度を低速にすることによって多孔質の膜を形成し、その後で、エアロゾル速度を所定の値まで回復させて緻密な膜を形成する。
【0040】
また、第1及び第2の実施形態において説明したキャリアガス流量やエアロゾル生成室内圧力以外にも、チャンバ内圧力や基板温度等の他の要素をフィードバック制御しても良い。例えば、成膜速度が低下した場合には、基板温度を低下させてキャリアガスと基板との温度差(又は、基板周囲の雰囲気の温度勾配)を低減させることにより、エアロゾルが基板により到達し易くなるので、成膜速度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、原料粉を基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法及び成膜装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 エアロゾル生成室
2 振動台
3 巻き上げガスノズル
4 圧調整ガスノズル
5 エアロゾル搬送管
6、13 圧力ゲージ
7a、7b ガス供給調節部
8 成膜チャンバ
9 排気管
10 真空バルブ
11 噴射ノズル
12 基板ステージ
14、21 フィードバック制御部
15 原料粉
16 基板
20 速度ゲージ




 

 


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