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発明の名称 成膜方法及び構造物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−23379(P2007−23379A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2006−4123(P2006−4123)
出願日 平成18年1月11日(2006.1.11)
代理人 【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明
発明者 高田 真宏 / 中村 隆 / 佐々木 勉 / 新川 高見
要約 課題
原料粉を基板に向けて噴射することにより、原料粉を基板上に堆積させるAD法において、原料粉を分散性に着目することにより、緻密で高品質な膜を作製できる成膜方法を提供する。

解決手段
エアロゾルデポジション法により基板上に膜を形成する方法であって、粒径の変動係数が0.68以下である粉体を原料粉として用い、該原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(b)とを含む。
特許請求の範囲
【請求項1】
エアロゾルデポジション法により基板上に膜を形成する方法であって、
粒径の変動係数が0.68以下である粉体を原料粉として用い、該原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、
工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(b)と、
を具備する成膜方法。
【請求項2】
工程(a)が、粒径の変動係数が0.6以下である粉体を原料粉として用いることを含む、請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
工程(a)が、粒径の変動係数が0.58以下である粉体を原料粉として用いることを含む、請求項2記載の成膜方法。
【請求項4】
工程(a)が、粒径の変動係数が0.57以下である粉体を原料粉として用いることを含む、請求項3記載の成膜方法。
【請求項5】
工程(a)が、酸化物を含む粉体を原料粉として用いることを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項6】
工程(a)が、組成に鉛(Pb)を含有する酸化物の粉体を原料粉として用いることを含む、請求項5記載の成膜方法。
【請求項7】
工程(a)が、組成に鉛(Pb)、チタン(Ti)、及び、ジルコニウム(Zr)を含有すると共に、ホウ素(B)、カドミウム(Cd)、ニオブ(Nb)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、鉄(Fe)、タングステン(W)、及び、ランタン(La)の内の1つ以上を含有する酸化物の粉体を原料粉として用いることを含む、請求項6記載の成膜方法。
【請求項8】
工程(a)が、光散乱法によって求められる中心粒径が0.1μm以上2.2μm以下である原料粉を用いることを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項9】
工程(a)の前に、原料粉に対して湿式による分級処理、乾式による分級処理、熱エネルギーの供給、静電気による分級処理の内のいずれかを施すことにより、原料粉の径を揃える工程(c)をさらに具備する請求項1〜8のいずれか1項記載の成膜方法。
【請求項10】
工程(c)が、原料粉に対してマイクロ波を照射することを含む、請求項9記載の成膜方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の成膜方法を用いて形成された厚さ1μm〜800μmの膜を具備する構造物。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料粉を基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させるエアロゾルデポジション法を用いた成膜方法、及び、そのような成膜方法を用いることよって作製された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)の分野においては、誘電体、圧電体、磁性体、焦電体、半導体のように、電圧を印加することにより所定の機能を発現する電子セラミックス等の機能性材料を含む素子を、成膜技術を用いて製造する研究が盛んに進められている。
【0003】
例えば、インクジェットプリンタにおいて高精細且つ高画質な印字を可能とするためには、インクジェットヘッドのインクノズルを微細化すると共に高集積化する必要がある。そのため、各インクノズルを駆動する圧電アクチュエータについても、同様に、微細化及び高集積化することが求められる。そのような場合に、バルク材よりも薄い層を形成でき、且つ、微細なパターン形成が可能な成膜技術は有利である。
【0004】
最近では、成膜技術の1つとして、セラミックスや金属等の成膜方法として知られるエアロゾルデポジション法(以下において、「AD法」という)が注目されている。AD法とは、原料の粉体(原料粉)を含むエアロゾルを生成し、それをノズルから基板に向けて噴射することにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、気体中に浮遊している固体や液体の微粒子のことをいう。
【0005】
AD法においては、高速のガス流により加速された原料粉が、基板や先に形成された堆積物等の下層に衝突して食い込み、衝突の際に原料粉が破砕することにより新たに生成された破砕面が下層に付着する。このような成膜メカニズムはメカノケミカル反応と呼ばれている。このAD法によれば、不純物を含まない、緻密で強固な厚膜を形成することができる。そのため、例えば、圧電体をAD法によって作製することにより、圧電アクチュエータ等の機器の性能を向上させることが期待されている。なお、AD法は、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれている。
【0006】
しかしながら、現実には、AD法において成膜条件を整えることが困難であり、均一で安定した膜質を得ることができないという問題が生じている。
そのような問題を解決するために、特許文献1には、基板上にガスデポジション法を用いてセラミックス誘電体膜を形成する方法において、膜形成を行うセラミックス誘電体として、比表面積が1.0〜10m/g、または光散乱法より求められる平均粒径が0.1〜2μm、または走査型電子顕微鏡観察により求められる平均粒径が0.08〜1.2μmの値を有するセラミックス粉体を用いるセラミックス誘電体膜の形成方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、簡単な構成で不要な粒径の超微粒子を除去するために、超微粒子分級装置を超微粒子の搬送路の途中に配設するか、或いは、超微粒子の発生装置の後方に配設することによって、均質な超微粒子のみを被膜や薄膜或いは成形品の原料とすることが開示されている。
【0008】
特許文献3には、均一粒径、一定粒子濃度である超微粒子を効率的に生成するために、超微粒子をエアロゾル化に搬送基体と共に基材に吹き付けることにより、薄膜を形成するガスデポジション法において、エアロゾル化した超微粒子の一部を粒子計測装置へ導入し、粒子計測装置で超微粒子の粒径分布、粒子濃度のいずれか又は両方を計測し、搬送基体の流量、加熱エネルギーのいずれか又は両方を制御する超微粒子膜形成装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−152360号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平11−21677号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2003−313656号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来より、AD法における成膜条件として原料粉の平均粒径については検討されているが、原料粉の分散性については注目されていない。しかしながら、平均粒径を規定することによって作製された膜においては、依然として膜質にバラツキが生じており、緻密で高品質な膜を安定して得ることはできていない。
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、原料粉を基板に向けて噴射することにより、原料粉を基板上に堆積させるAD法において、原料粉の分散性に着目することにより、緻密で高品質な膜を作製できる成膜方法を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、そのような成膜方法を用いることによって作製された構造物を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る成膜方法は、エアロゾルデポジション法により基板上に膜を形成する方法であって、粒径の変動係数が0.68以下である粉体を原料粉として用い、該原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に原料粉を堆積させる工程(b)とを具備する。
本願において、膜とは、厚さが800μm程度までの構造物を含むものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、AD法により成膜を行う際に、粒径の変動係数が0.68以下である粉体を原料粉として用いるので、原料粉中の粉体を高い割合で成膜に寄与させることができる。従って、ビッカース硬度が高く、緻密で高品質な膜を安定して形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜方法において用いられる成膜装置の構成を示す模式図である。図1に示す成膜装置においては、エアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が用いられる。この成膜装置は、エアロゾル生成室1と、エアロゾル生成室1に配置されている巻き上げガスノズル2、圧調整ガスノズル3、及び、エアロゾル搬送管4と、成膜チャンバ5と、排気ポンプ6と、噴射ノズル7と、基板ホルダ8とを含んでいる。
【0014】
エアロゾル生成室1は、原料粉が配置される容器である。エアロゾル生成室1には、エアロゾル生成室1に振動等を与えることにより、その内部に配置された原料粉を攪拌するための容器駆動部1aが設けられている。
【0015】
エアロゾル生成室1に配置されている巻き上げガスノズル2には、キャリアガスを供給するためのガスボンベが接続されている。巻き上げガスノズル2は、ガスボンベから供給されたガスをエアロゾル生成室1内に噴射することにより、サイクロン流を生成する。それにより、エアロゾル生成室1内に配置された原料粉が巻き上げられて分散し、エアロゾルが生成される。
【0016】
一方、圧調整ガスノズル3には、エアロゾル生成室1内のガス圧を調整するための圧調整ガスを供給するガスボンベが接続されている。圧調整ガスの流量を調節してエアロゾル生成室1内の圧力を制御することにより、エアロゾル生成室1内に発生する気流(巻き上げガス)の速度が制御される。
キャリアガス及び圧調整ガスとしては、窒素(N)、酸素(O)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、乾燥空気等が用いられる。
【0017】
エアロゾル生成室1に配置されているエアロゾル搬送管4は、エアロゾル生成室1内において巻き上げられた原料粉を含むエアロゾルを、成膜チャンバ5に配置されているノズル7に搬送する。
【0018】
成膜チャンバ5の内部は、排気ポンプ6によって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。
噴射ノズル7は、所定の形状及び大きさの開口を有しており、エアロゾル生成室1からエアロゾル搬送管4を介して供給されたエアロゾルを、開口から基板10に向けて高速で噴射する。
【0019】
基板ホルダ8は、基板10を保持している。また、基板ホルダ8には、基板ホルダ8を3次元的に移動させるための基板ホルダ駆動部8aが設けられている。これにより、噴射ノズル7と基板10との3次元的な相対位置及び相対速度が制御される。この相対速度を制御することにより、1往復あたりに形成される膜の厚さを制御することができる。
【0020】
このような成膜装置において、原料粉をエアロゾル生成室1に配置すると共に、基板10を基板ホルダ8にセットして所定の成膜温度に保つ。そして、成膜装置を駆動して噴射ノズル7からエアロゾルを噴射しながら、基板を所定の速度で移動させる。それにより、エアロゾル(原料粉)が、基板10や基板10上に先に堆積した構造物に衝突して食い込み(「アンカーリング」と呼ばれる)、さらに、衝突の際に原料粉が変形又は破砕することによって生じた活性な新生面において粒子同士が結合することにより、原料粉が基板上に堆積する。図2に示すように、そのようにして形成された膜20は、基板との境界領域に形成されたアンカー部(アンカーリングによって形成された領域)において、基板10と強固に密着していると共に、新生面における粒子の結合(メカノケミカル反応)により極めて緻密な構造を有している。
【0021】
図1に示す成膜装置に配置される原料粉の材料としては、AD法による成膜が可能であれば、金属又は非金属の酸化物、炭化物、又は、窒化物等、いかなる材料であっても用いることができる。例えば、酸化物セラミックス等の酸化物や、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の鉛(Pb)を含有する酸化物が挙げられる。また、PZTを作製する場合には、その組成にホウ素(B)、カドミウム(Cd)、ニオブ(Nb)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、鉄(Fe)、タングステン(W)、及び、ランタン(La)の内の1つ以上が添加されているものを用いても良い。
【0022】
また、機能性材料として、次のような材料も用いることができる。PZT以外の圧電材料として、Pb(Mg1/3Nb2/3)O、Pb(Zn1/3Nb2/3)O、Pb(Ni1/3Nb2/3)Oや、それらの複合化合物や、それらとPZTとの複合化合物が挙げられる。また、磁性材料として用いられるFe、(Mn,Zn)Fe等のセラミックスや、誘電材料として用いられるTa、Nb、PbTiO、(Ca,Ba,Sr)TiO、(Li,K)(Nb,Ta)O、SrBi(Ta,Nb)、BiTi12等のセラミックスや、半導性材料として用いられるZrO、SnO、ZnO、La(Cr,Mn)O、TiO等のセラミックスや、導電性材料として用いられるIrO、LaNiO、(Ca,Sr,Ba)RuO、In-SnO等のセラミックスや、光学材料として用いられるSiO、YAl12、YFe12、(Pb,La)(Zr,Ti)O等のセラミックスや、超伝導材料として用いられるYBaCu、BiSrCaCu10、LaSrCuO等のセラミックスや、熱電変換材料として用いられるNa(Co,Cu)、(Bi,Pb)SrCo等のセラミックスが挙げられる。さらに、光電変換素子や半導体素子等において用いられるアモルファスシリコンや化合物半導体、耐熱材料等として用いられるMgO、SiC、Siや高強度材料等として用いられるAl、TiC、BC、BNを含む一般的なセラミックス、マイクロ磁気素子における機能性膜として用いられるPdPtMnやCoPtCr等の合金も挙げられる。
【0023】
また、本実施形態においては、原料粉として、粒径の変動係数が0.68以下、望ましくは0.6以下、さらに望ましくは0.58以下である粉体が用いられる。ここで、変動係数とは、実質的なデータのばらつきを評価する尺度であり、標準偏差を平均値で除することによって求められる。具体的には、次式(1)〜(3)に基づいて、変動係数covが算出される。
体積平均粒子径:MV=(V×d+V×d+…+V×d+…+V×d
/(V+V+…+V+…+V
=Σ(V×d)/Σ(V) …(1)
式(1)において、Vは各粒子の体積を示しており、dは各粒子の径を示している。
標準偏差:SD=(d(84%)−d(16%))/2 …(2)
式(2)において、d(84%)は、粒径分布の累積曲線が84%となる点の粒径であり、d(16%)は、粒径分布の累積曲線が16%となる点の粒径である。
変動係数:cov=SD/MV …(3)
【0024】
本実施形態において用いられる原料粉の条件をこのように規定する理由は、次のとおりである。AD法においては、ノズルから噴射された原料粉が基板等の下層に衝突した際に、原料粉が破砕することにより新たな破砕面が生成され、この破砕面が下層に付着するメカノケミカル反応により、膜が形成される。そのため、破砕面が生成されるためには、衝突時に原料粉が十分な運動エネルギーを有している必要がある。ここで、原料粉の運動エネルギーKは、mを原料粉の質量、vを衝突時における原料粉の速度として、K=(1/2)mvによって表される。なお、原料粉の速度vは、キャリアガスの流速等の成膜条件によって決定される。
【0025】
原料粉の質量mが小さい場合には、運動エネルギーKも小さくなるため、原料粉が下層に衝突しても原料粉は破砕し難くなり、その結果、原料粉は堆積し難くなる。また、堆積したとしても、メカノケミカル反応によって原料粉が下層に結合するのではなく、単に圧粉体の状態(粉体を押し固めた状態)で堆積するだけとなる。一方、原料粉の質量mが大きい場合には、運動エネルギーKも大きくなるため、原料粉が下層に衝突した際に、原料粉が破砕するだけでなく、先に堆積した構造物を削ってしまう。このように、質量が適切な範囲から外れている原料粉は、成膜に寄与できず、或いは、成膜を妨げることになる。
【0026】
従って、原料粉の粒径の分散性が高い場合には、成膜に寄与しない原料粉が多く含まれるエアロゾルが噴射されることになるので、形成される膜の膜質は低下してしまう。反対に、原料粉の粒径の分散性が低い場合には、噴射された多くの割合の原料粉が成膜に寄与することになるので、緻密度が高く、良質な膜が形成される。
このような理由から、本実施形態においては、原料粉の粒径の分散性が低くなるように、原料粉の変動係数を0.68以下に規定している。
【0027】
なお、原料粉の適切な粒径の範囲は、原料粉の種類や、エアロゾルの流速等の成膜条件によって異なるが、光散乱法により測定される体積中心粒子径(中心粒径)が、望ましくは、0.1μm以上2.2μm以下、さらに望ましくは、0.6μm以上2.2μm以下である原料粉が用いられる。
【0028】
変動係数と膜質との関係を明らかにするために、次のような実験を行った。
まず、変動係数が0.68以下である粉体(実施例1〜7)、及び、変動係数が0.68より大きい粉体(比較例1及び2)を、以下の(1)〜(9)に示す方法により作製した。作製された粉体の単分散性評価は、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT−3000を用いて行った。この粒度分布測定装置は、測定原理として、マイクロトラック法(レーザ回折・散乱法又は光散乱法とも呼ばれる)を利用している。マイクロトラック法とは、粒子に光を照射した場合に、散乱される光量及びパターンが粒径に応じて異なるという現象を利用した粒度分布測定方法であり、乾式又は湿式で利用することができるという特徴を有している。本実施形態においては、分散媒体として、0.3%のヘキサメタリン酸水溶液を用いた湿式により測定を行った。
【0029】
(1)実施例1
原料として、株式会社富士セラミックス製の圧電セラミックスC−91H(PNN−PZT)を乳鉢によって軽く粉砕し、開口径が135μmの篩にかけた。なお、PNN−PZT(Pb(Ni1/3Nb2/3)O−PbTiO−PbZrO)は、ニッケル(Ni)及びニオブ(Nb)が添加されたリラクサ系のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。次に、粉砕されたPZT粉150gと、1.0mmφのアルミナビーズ625gと、イソプロピルアルコール(IPA)350gとを混合し、アシザワ・ファインテック株式会社製のビーズミルMINIZETA03を用いて3000rpmで20分間粉砕することにより、微粉砕粉末スラリーを得た。さらに、アルミナビーズを除去し、ロータリーエバポレータを用いてIPAを除去した後に、140℃で24時間真空乾燥させることにより、微粉砕粒子を作製した。この微粉砕粒子を、日本ニューマチック工業株式会社製の乾式分級機MP−150を用いて乾式分級した。なお、乾式分級工程においては、分級時の風量、ルーパー開度、センターネーブル径、供給ノズル径、及び、分散圧力を変化させることによりカットポイントを選択した。さらに、乾式分級された粒子を、サンノプコ株式会社製の水系分散剤SNディスパーサント5468を用いて湿式分級した。なお、湿式分級工程においては、沈降時間を変化させることにより、カットポイントを選択した。それによって得られた粉体を実施例1の原料粉とした。この原料粉の体積平均粒子径MVは1.8μm以上2.2μm以下の範囲に収まっており、変動係数covは0.328であった。
【0030】
(2)実施例2
実施例1におけるのと同様にして、圧電セラミックスC−91Hの微粉砕及び乾式分級を行った。この乾式分級によって得られた粉体を実施例2の原料粉とした。この原料粉の体積平均粒子径MVは2.026μm、標準偏差SDは0.862μm、変動係数covは0.425であった。
【0031】
(3)実施例3
フルウチ化学株式会社製のPNN−PZT粉体(9PZN−28PNN−26PZ−37PT)について、サンノプコ株式会社製の水系分散剤SNディスパーサント5468を用いることにより湿式分級を行った。それによって得られた粉体を実施例3の原料粉とした。この原料粉の体積平均粒子径MVは0.6μm以上0.8μm以下の範囲に収まっており(MV=0.716μm)、標準偏差SDは0.197μm、変動係数covは0.259であった。
(4)実施例4
フルウチ化学株式会社製のPNN−PZT粉体を、実施例4の原料粉として用意した。この原料粉の体積平均粒子径MVは0.651μm、標準偏差SDは0.222μm、変動係数covは0.341であった。
【0032】
(5)実施例5
堺化学工業株式会社製のPZT−LQ粉体を、実施例5の原料粉として用意した。この原料粉の体積平均粒子径MVは1.189μm、標準偏差SDは0.678μm、変動係数covは0.570であった。
【0033】
(6)実施例6
フルウチ化学株式会社製のPNN−PZ−PT粉体(50PNN−15PZ−35PT)を、実施例6の原料粉として用意した。この原料粉の変動係数covは0.664であった。
【0034】
(7)実施例7
フルウチ化学株式会社製のPNN−PZ−PT粉体に対し、分級処理を施すことなく、微粉を含んだ状態のままマイクロ波を照射することにより熱エネルギーを供給した。
このような処理を施すことにより、原料粉の内で自由エネルギーの高いもの、即ち、体積に対して表面積が大きい微粉の方から焼結が進行し、微粉が、より径の大きい粒子に取り込まれて結晶粒成長する現象が生じる。一方、自由エネルギーが比較的低い粗大粒子においては、焼結は進行し難い。その結果、微粉の割合が減少して粒径分布が小さくなる。それによって得られた原料粉の変動係数covは、0.588であった。以下において、原料粉の径を揃えることを整粒という。
【0035】
なお、実施例7においては、マイクロ波を照射する際に、松下電器産業株式会社製のパナソニック(Panasonic)マイクロ波陶芸窯(2.45GHz)を用いた。また、マイクロ波の照射条件については、成膜条件(成膜レート等)や形成された膜の評価(表面ラフネス、ビッカース硬度等)に基づいて、原料粉の温度(700℃〜1000℃)及び照射時間の最適値を求めた。
(8)比較例1
実施例1におけるのと同様にして、圧電セラミックスC−91Hを乳鉢及びビーズミルにより粉砕して乾燥させた。それによって得られた微粉砕粒子を比較例1の原料粉とした。この原料粉の変動係数covは0.682であった。
(9)比較例2
実施例1におけるのと同様にして、圧電セラミックスC−91Hを乳鉢及びビーズミルにより粉砕した。それによって得られた微粉砕粒子を、0.5mmφ及び2mmφのアルミナビーズをそれぞれ用いて粉砕することにより、粒径分布の異なる2種類の粉体を得た。さらに、それらの粉体を混合することにより、ブロードな分散性を有する粉体を得た。この粉体を比較例2の原料粉とした。この原料粉の体積平均粒子径MVは2.046μm、標準偏差SDは1.586μm、変動係数covは0.775であった。
【0036】
図1に示す成膜装置において、このようにして作製された原料粉を用いると共に、次に示す成膜条件の下で成膜を行った。
成膜チャンバ内の圧力 50Pa
エアロゾル生成室内の圧力 70kPa
ノズル開口部のサイズ 5mm×0.35mm
キャリアガスの種類 酸素(O
キャリアガスの供給量 6〜7L/min
基板温度 600℃
ノズル開口と基板との距離 10mm
圧調整ガスの流量 2L/min
巻き上げガスの流量 4L/min
成膜面積 5×10mm
【0037】
さらに、形成された膜のビッカース硬度を測定した。測定の際には、株式会社島津製作所製の微小硬度計DUH−W201を用い、印加される荷重を10gとした。それにより、以下に示す結果が得られた。なお、ビッカース硬度は、比較例2を基準とした相対値によって表されている。
変動係数cov ビッカース硬度(相対値)
実施例1 0.328 4.9
実施例2 0.425 4.0
実施例3 0.259 4.5
実施例4 0.341 3.8
実施例5 0.570 5.0
実施例6 0.664 1.5
実施例7 0.588 3.8
比較例1 0.682 1.1
比較例2 0.775 1
【0038】
図3は、このような実験結果に基づいて得られた変動係数とビッカース硬度との関係を示すグラフである。図3より明らかなように、変動係数が0.68より大きい原料粉を用いた場合(比較例1及び2)には、あまり緻密な構造物は得られなかった。それに対して、変動係数が約0.68以下の場合には、比較的緻密な構造物が得られることが判明した。そして、変動係数が約0.68以下で、約0.58より大きい範囲においては、変動係数が小さいほど構造物の緻密度が上昇することがわかった。例えば、変動係数が0.66の場合には、ビッカース硬度は1.5に上昇している。また、変動係数が約0.6以下の場合には、ビッカース硬度が基準値(比較例2)の3倍以上である構造物を得ることができた。この値は、実用的にはほぼ十分であると言える。さらに、変動係数が約0.58以下の場合には、ビッカース硬度が基準値のほぼ4〜5倍程度となり、非常に緻密な構造物を得ることが確認された。特に、変動係数が約0.57の場合には、基準値の約5倍という高いビッカース硬度が得られている。
このような変動係数とビッカース硬度との相関は、膜厚が1μm〜10μm程度、約100μm、約300μm、約600μm、及び、約800μmの構造物のいずれにおいても見られた。
【0039】
以上の実施例においては、原料粉を分級するために、気流を利用した乾式分級処理、又は、液体を利用した湿式分級処理を行っているが、その他に、静電気による分級処理を行う微粉型静電気分級機(DMA)を利用しても良い。
【0040】
また、実施例7の結果より、原料粉に対して適切な条件の下で熱エネルギーを供給(マイクロ波照射)することにより変動係数を改善でき、その結果、ビッカース硬度を大幅に向上できることが明らかになった。このような熱エネルギーによる整粒効果を利用する場合には、従来の分級処理に要する時間及びコストを削減できると共に、安定した成膜を行うことが可能となる。
【0041】
ここで、上記の実施例7においては、原料粉に熱エネルギーを供給する際にマイクロ波を照射したが、マッフル炉等において、ヒータによる通常の加熱処理を行っても良い。しかしながら、通常の加熱処理に対して、マイクロ波照射を行う場合には次のような利点がある。即ち、通常の加熱処理においては、まず、ヒータにより炉内の雰囲気や治具が温められ、それらを介して試料(原料粉)が加熱される。そのため、例えば、マッフル炉を使用する場合には、原料粉の整粒効果が発現するまでに約3時間と長時間を要することとなる。それに対して、マイクロ波照射の場合には、原料粉に直接熱エネルギーを与えることにより原料粉は内部から加熱されるので、10分程度で同様の整粒効果を得ることができる。なお、ヒータを用いる場合には、原料粉の内部と外部とにおいて温度ムラが発生する可能性はあるが、原料粉の整粒効果が得られることは確認されている。
【0042】
また、マイクロ波の他にも、真空紫外線照射、紫外線照射、電子線照射、X線照射、固体レーザや炭酸ガスレーザを含むレーザ照射等によって原料粉にエネルギーを供給することにより、原料粉の整粒効果を得ることが可能である。
さらに、原料粉に熱エネルギーや上記の電磁波エネルギーを供給することにより、整粒効果に加えて、原料粉に付着している不純物(例えば、カーボン)を飛散させる効果も得られる。それにより、カーボン等の含有量が少ない膜を形成できるので、ポストアニール時における膜内からの気体の発生が抑制される。その結果、膜の基板からの剥離やヒロックの発生が防止されるという利点がある。加えて、マイクロ波照射により、原料粉の形状が球形に近づくことも、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により確認されている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、AD法に用いられる原料粉の変動係数を所定値以下に限定することにより、緻密で強固な構造物を得ることができる。さらに、そのようにして得られた構造物を所定の温度でアニールしても良い。それにより、構造物のビッカース硬度を更に向上させることができる。
【0044】
本実施形態に係る成膜方法を用いて機能性膜を作製する場合には、緻密な構造を得られることから、製造歩留まりの向上に加えて、膜の性能が向上することも期待される。例えば、圧電体を作製する場合には、高い圧電性能が得られるようになる。そのため、そのような圧電体を圧電アクチュエータや、インクジェットヘッド用の圧電素子や、超音波探触子において超音波を送受信する振動子(超音波トランスデューサ)に適用することにより、圧電素子等の動作効率や耐久性を含む品質、及び、製造歩留まりを向上させることができる。従って、そのような圧電素子等を含む機器全体の性能を向上させることが可能となる。
なお、圧電素子等を作製する場合には、予め電極が形成された基板上に、本実施形態に係る成膜方法を用いて圧電体を形成し、さらにその上に電極を形成すれば良い。
【0045】
以上説明した本発明の実施形態においては、AD法においてエアロゾルを生成する際に、原料粉が配置された容器(収納容器)にキャリアガスを導入しているが(図1参照)、エアロゾルを生成する機構は図1に示す構成に限定されない。即ち、原料粉がガス中に分散している状態を生成することができれば、様々な構成を用いることができる。例えば、収納容器から所定量の原料粉を取り出し、取り出された原料粉についてこれをエアロゾル化する構成としても良い。具体的には、原料粉の収納容器と、回転駆動することにより収納容器から所定のレート(供給速度)で連続的に原料粉の供給を受けてこれを搬送する原料粉供給部(粉末供給盤)と、原料粉供給部によって搬送された原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部(エアロゾル化部)とを含む構成が挙げられる。このような構成においては、原料粉供給部に、原料粉が投入される所定の幅の溝を形成することにより、安定した量の原料粉を供給することができると共に、原料粉供給部を回転駆動する速度を調整することにより、原料粉の供給量を制御することができる。そして、原料粉の搬送先においてその溝にキャリアガスを導入することにより、濃度の安定したエアロゾルを生成することができる。
【0046】
或いは、原料粉の収納容器において原料粉を攪拌すると共に、この収納容器に圧縮ガスを導入することにより、圧縮ガスと混合された所定量の原料粉を収納容器から取り出し、これを細径の穴から外部に排出することにより、圧縮ガスの膨張を利用して原料粉を分散させる構成も挙げられる。さらに、キャリアガスの流路に原料粉を連続的に供給して原料粉をキャリアガスに分散させることにより、エアロゾルを生成する構成を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、原料の粉体を基板に向けて噴射することにより膜を形成する成膜方法において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜方法が用いられる成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す成膜装置によって形成される膜を示す断面図である。
【図3】変動係数とビッカース硬度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 エアロゾル生成室
2 巻き上げガスノズル
3 圧調整ガスノズル
4 エアロゾル搬送管
5 成膜チャンバ
6 排気ポンプ
7 噴射ノズル
8 基板ホルダ
10 基板




 

 


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