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発明の名称 電動車走行システム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−60854(P2007−60854A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−245577(P2005−245577)
出願日 平成17年8月26日(2005.8.26)
代理人 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
発明者 西脇 敏夫
要約 課題
電動車に大規模な蓄電装置や発電装置を搭載することなく、電車線の配線長を有効に削減する。

解決手段
電動車4の集電子6と接触して当該集電子6に給電する電車線L1〜L5を間欠的に配線する。走行負荷が負の領域には電車線を配線せず、少なくとも、各停留場S1〜S5において電動車4が停車する位置と、その停車位置から発進加速が終了する地点Xに到達するまでの区間の一部または全部とを含む領域にそれぞれ電車線L1〜L5を配線する。
特許請求の範囲
【請求項1】
予め設置された軌道と、この軌道上を走行する電動車とを備えた電動車走行システムにおいて、
前記軌道に沿って間欠的に複数本の電車線が配線される一方、
前記電動車には、その走行中に前記電車線と接触して当該電車線から集電する集電子と、この集電子により集電される電力とは別に走行のための給電を行う車上給電手段とが搭載され、
前記電車線は、前記軌道に沿う領域のうち、当該電動車の走行負荷が負である区間を除く領域であって、少なくとも当該電動車の停車位置及び当該停車位置の下流側の加速走行区間の一部または全部を含む領域に配線され、
前記電動車は、前記電車線が配線されていない領域では、前記集電子による集電は行わずに前記車上給電手段により供給される電力を利用して走行する第1の走行状態で走行可能であり、前記電車線が配線された領域では、少なくとも前記集電子から集電される電力を利用して走行する第2の走行状態で走行可能となるように構成されていることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項2】
請求項1記載の電動車走行システムにおいて、前記電動車の走行負荷が負である区間であっても当該電動車の停車位置からその上流側の区間には前記電車線が延長され、かつ、この上流側区間の電車線の長さを前記停車位置よりも下流側の区間の電車線の長さに比べて小さくしたことを特徴とする電動車走行システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動車走行システムにおいて、各電車線の長さは、当該電車線の終端から次の電車線の始端までの非配線区間における走行に必要な電力が小さいほど短く設定されていることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電動車走行システムにおいて、前記軌道がカーブを開始する位置よりも下流側の区間であって前記電動車が前記カーブによる減速後に加速する区間の少なくとも一部を含む領域に前記電車線が配線されていることを特徴とすることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電動車走行システムにおいて、少なくとも一部の電車線が、前記軌道上を走行する電動車の集電子に対して接触する位置と接触しない位置とに切換可能であることを特徴とすることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動車走行システムにおいて、前記電車線の配線領域を除く領域中の所定位置に当該電車線とは別の給電手段による給電箇所が設定されていることを特徴とすることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項7】
請求項6記載の電動車走行システムにおいて、前記給電箇所が、前記電動車の停留場を含む区間であって複数の電動車の同時進入が禁止されている区間の手前側の位置に設定されていることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項8】
請求項6または7記載の電動車走行システムにおいて、前記別の給電手段が非接触式のものであることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の電動車走行システムにおいて、前記給電箇所に前記電動車を誘導する誘導手段を備えることを特徴とすることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の電動車走行システムにおいて、前記電動車の走行空間から外れた位置に前記電車線とは別の給電手段が設けられていることを特徴とすることを特徴とする電動車走行システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の電動車走行システムにおいて、前記車上給電装置は、前記電車線から前記集電子を通じて取り込まれる電力を蓄える蓄電装置を含むことを特徴とする電動車走行システム。
【請求項12】
請求項11記載の電動車走行システムにおいて、前記電車線と前記集電子との接触可能時間が短いほど前記蓄電装置に対する充電速度を増大させる充電速度調節手段が設けられていることを特徴とする電動車走行システム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般鉄道、市内電車、新交通その他の各種交通システムに適用し得るものであり、架線その他の給電線からなる電車線からの給電により電動車が予め定められた軌道上を走行する電動車走行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような電動車走行システムとして、特許文献1に開示されるものが知られている。ここに記載される電動車は、給電用の架線に対して摺接する集電部材を備え、当該集電部材から取り込んだ電力を利用して走行するように構成されている。
【特許文献1】特開平7−7805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のように電動車が電車線から集電して走行を行うシステムでは、電車線の建設費が高く、その削減が求められる。また、電動車の走行のための動力源である電力を確保するために、電動車に設けられた集電子を電車線に常時摺接させながら走行する必要があるため、これら集電子及び電車線の磨耗は避けられず、その保守点検に要する費用も多大となる。さらに、電車線の設置による景観の悪化も課題となる。
【0004】
このような課題を解決するための手段として、電動車に蓄電装置や発電装置といった車上給電手段を搭載することにより、電車線からの集電を行わずして走行することを可能にしたシステムも提唱されているが、このような架線レス走行システムでは前記蓄電装置や発電装置として非常に規模が大きなものを電動車に搭載しなければならず、その分積載重量や乗車定員の制限が厳しくなり、また大幅なコスト高も免れ得ないという不都合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、電動車に大規模な蓄電装置や発電装置を搭載することなく、電車線の設置による諸課題の解決を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、予め設置された軌道と、この軌道上を走行する電動車とを備えた電動車走行システムにおいて、前記軌道に沿って間欠的に複数本の電車線が配線される一方、前記電動車には、その走行中に前記電車線と接触して当該電車線から集電する集電子と、この集電子により集電される電力とは別に走行のための給電を行う車上給電手段とが搭載され、前記電車線は、前記軌道に沿う領域のうち、当該電動車の走行負荷が負である区間を除く領域であって、少なくとも当該電動車の停車位置及び当該停車位置の下流側の加速走行区間の一部または全部を含む領域に配線され、前記電動車は、前記電車線が配線されていない領域では、前記集電子による集電は行わずに前記車上給電手段により供給される電力を利用して走行する第1の走行状態で走行可能であり、前記電車線が配線された領域では、少なくとも前記集電子から集電される電力を利用して走行する第2の走行状態で走行可能となるように構成されているものである。
【0007】
この構成によれば、複数本の電車線を間欠的に配線して配線省略領域を設けることにより、当該電車線の建設費の削減や、当該電車線と集電子との摺接による磨耗等による保守点検費用の削減、あるいは、路線区間の景観向上等を図りながら、当該電車線を全く用いないシステムに比べて車上給電手段に求められる給電能力を下げることができ、その結果、当該車上給電手段の小型化や低廉化を図ることが可能になる。
【0008】
特に、前記配線省略領域、すなわち車上給電手段による供給電力で走行する領域として、走行負荷が負の領域(例えばブレーキ領域)を含めることにより、当該車上給電手段の負担を効果的に軽減することができるとともに、少なくとも、電車線と集電子との摺接を伴うことなく当該電車線から給電ができる停車位置、及び、この停車位置からの発車で大きな電力を要する加速領域には電車線を配線することにより、当該電車線から電動車への効果的な給電を行うことが可能となり、総じて、前記車上給電手段に求められる給電能力を有効に抑えることが可能となる。
【0009】
特に、車上給電装置として蓄電(充電)装置を具備するものにおいて、発進後の所定領域でも集電を行うことにより、停車中のみ蓄電(充電)を行うシステムに比して急速充電を緩和することができ、これにより、一般に短時間充電で発生し易い充電損失を削減することにも寄与し得る。また、発進直後の速度は最大速度よりも低いので、集電子との摺接による電車線の磨耗損傷も有効に抑制される。
【0010】
また、前記電動車の走行負荷が負である区間であっても当該電動車の停車位置からその上流側の区間、すなわち停止間際で車速が極めて低い走行区間には前記電車線を延長し、かつ、この上流側区間の電車線の長さを前記停車位置よりも下流側の区間の電車線の長さに比べて小さくするようにしてもよい。このような構成によれば、停車位置直前の低速運転中に集電を行うことによって、短い距離ながらも集電時間を稼ぐことが可能になる。
【0011】
ここで、前記各電車線の長さは一定でもよいが、当該電車線の終端から次の電車線の始端までの非配線区間における走行に必要な電力が小さいほど当該電車線を短くすれば、電車線の配線長さを抑えながら、その走行区間に見合った電力供給を行うことができる。
【0012】
また、前記電車線は、前記軌道がカーブを開始する位置よりも下流側の区間であって前記電動車が前記カーブによる減速後に加速する区間を含む領域に配線することにより、車上給電手段の負担をより軽減することが可能になる。
【0013】
また、少なくとも一部の電車線が、前記軌道上を走行する電動車の集電子に対して接触する位置と接触しない位置とに切換可能な構成とすれば、当該電車線から電動車への給電が不要なときは当該電車線を前記集電子と接触しない位置に切換えることにより、当該電車線と集電子との不必要な摺接をなくしてその磨耗損傷をより効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明では、前記電車線の配線領域を除く領域中の所定位置に当該電車線とは別の給電手段による給電箇所が設定されていてもよい。
【0015】
前記給電箇所としては、電動車の非常停止が予想される箇所等が好適である。例えば、前記電動車の停留場を含む区間であって複数の電動車の同時進入が禁止されている区間が設定されている場合において、その区間内の停留場で先行電動車が滞留しているときに後続の電動車が前記区間の手前で臨時停車しなければならないことがあり得るので、当該区間の手前側の位置に前記給電箇所を設定すれば効果的である。
【0016】
前記「別の給電手段」としては、例えば非接触式のものが好適である。
【0017】
また、前記給電箇所を設定する場合、その給電箇所に前記電動車を誘導する誘導手段を備えることが、より好ましい。
【0018】
また、前記電動車の走行空間(すなわち当該電動車がその走行時に通過する空間)から外れた位置に前記電車線とは別の給電手段を設けるようにしてもよい。
【0019】
前記車上給電装置としては、例えば、前記電車線から前記集電子を通じて取り込まれる電力を蓄える蓄電装置が好適である。その場合、前記電車線と前記集電子との接触可能時間が短いほど前記蓄電装置に対する充電速度を増大させる充電速度調節手段を設けるようにすれば、前記接触可能時間が短いときは充電速度を上げることによってその時間内で必要電力の充電を確保する一方、前記接触可能時間が長くて余裕のあるときは充電速度を下げて充電効率の向上を図ることいったことが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、電動車に大規模な蓄電装置や発電装置を搭載することなく、電車線の配線長さを有効に減らしてその建設費の削減等を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示す電動車走行システムは、予め設置された軌道(図例ではループ軌道)に沿って電動車4を走行させるものである。この軌道の沿線には、複数箇所(図例では5箇所)に停留場(プラットホーム)S1,S2,S3,S4,S5が設置される。
【0023】
電動車4は、図例では前後2つの車両4a,4bを具備し、その前側車両4aから上向きに集電子6が突設されている。そして、この電動車4の走行時における前記集電子6の移動軌跡上に、前記各停留場S1,S2,S3,S4,S5に対応して5本の電車線L1,L2,L3,L4,L5が配線されている(詳細後述)。これらの電車線L1〜L5は、架線その他の給電線により構成され、前記集電子6と接触することにより当該集電子6を通じて電動車4に必要電力を供給する。
【0024】
前記電動車4の構成を図2に示す。この電動車4の車両4aには、図略の走行装置及び前記集電子6の他、走行切換手段である車上走行制御装置5及び遮断器8,9と、車上給電ユニット10とが搭載されている。
【0025】
前記遮断器8は、前記集電子6と、図略の走行装置を含む車上電力系統及び前記車上給電ユニット10との間に介在し、前記走行制御装置5からの切換指令信号により、前記集電子6と前記車上電力系統及び車上給電ユニット10とを電気的に接続する状態と遮断する状態とに切換えられる。同様に、遮断器9は、車上給電ユニット10と前記遮断器8及び車上電力系統との間に介在し、前記走行制御装置5からの切換指令信号により、前記車上給電ユニット10と前記遮断器8及び車上電力系統とを電気的に接続する状態と遮断する状態とに切換えられる。
【0026】
車上給電ユニット10は、充放電制御装置11及び蓄電ユニット12からなる蓄電部を備え、前記集電子6による集電系統とは別に前記走行装置に対して電力を供給する機能を有する。なお、この車上給電ユニット10は、図1に二点鎖線で示されるような発電制御装置13及び発電装置14からなる発電部を備えるものであってもよく、あるいは前記蓄電部及び発電部の双方を具備するものであってもよい。
【0027】
前記車上走行制御装置5は、遠隔地に設けられた運行管理装置2と通信を行い、この運行管理装置2から送信される制御指令に基づいて、電動車4の集電および走行状態を監視する。また、電車線等の軌道側設備に異常がある場合、走行停止等の指令を状況に応じて電動車4に送信する。前記車上走行制御装置5と運行管理装置2は、電動車走行路部全長にわたって布設された通信線(ループ線)と、前記電動車4側に搭載された図略の車上信号送受信器とを介して信号を相互に伝達するように構成される。
【0028】
また、この運行管理システムは、前記電動車4及び運行管理装置2に加え、停留場手前から列車進行方向に沿って停車位置まで列車下部の軌道に複数設置された列車位置検出器(以降、地上子と言う)及び関連付帯設備を含んでおり、前記運行管理装置2は、図略の信号機及び電動車4と相互に情報交換を行うことにより、1)電動車4が信号停止しているか否か、2)信号停止しているときの電動車4と信号機との相対位置関係、3)電車線の異常(例えば通電異常)の有無、といった情報について認識をしている。
【0029】
運行管理装置2は、電動車4が停止すべき停留場に接近すると前記地上子により電動車停止目標位置と現在位置との距離を認識し、電動車4に減速信号を発して所定位置への停止誘導を行う。さらに、停止位置にある地上子によって正常な位置に電動車4が停止したことを認識し、その認識に基づき、停留場における乗客案内放送開始→ホームドア開→電動車4のドア開→所定時間停止後のドア閉→列車発進の各指令を順次発する機能も有している。
【0030】
このように、運行管理装置2は、その機能の一部として前記の電動車制御機能をもつが、さらに、諸種の管理制御プログラム及びデータの入力あるいは車輌部・軌道部その他に状態検知センサーを付加することによって、運行管理装置2により広範な機能をもたせることが可能となる。
【0031】
前記電動車4は、電車線が配線されていない領域では、前記集電子6による集電は行わずに前記車上給電ユニット10により供給される電力を利用して走行する第1の走行状態で走行する一方、電車線が配線されている領域では前記集電子6から集電される電力を利用して走行する第2の走行状態で走行することが可能となっている。前記第1の走行状態は遮断器9を閉じることにより実現され、前記第2の走行状態は遮断器8を閉じることにより実現される。
【0032】
なお、この第2の走行状態では、遮断器9は、原則として閉じておき、集電した電力の一部を蓄電ユニット12に蓄電し、第1の走行状態を可能とする電力を蓄える。また、電動車4が電車線の設置区間を通過すると(すなわち第2の走行状態が終わると)、集電子への不要な電圧の印加を避けるために遮断器8を開いてもよい。
【0033】
この遮断器8を開く指令は、電動車の位置を把握している運行管理装置2からの指令であってもよいし、電動車4が自立して自らの位置を把握して自動で行なってもよい。電動車4が自己位置を検出する手段は特に問わず、GPS信号を利用してもよいし、当該電動車4と電車線との相対位置を検出するために設けられた近接スイッチ等の出力信号を用いてもよい。また、前記遮断器8を開く指令を運転手が手動で入力するようにしてもよい。
【0034】
運行管理装置2は、信号送受信器3を通じて前記車上走行制御装置5とデータの送受信を行うことにより、電動車4の遠隔走行制御を実行する。
【0035】
次に、前記各電車線L1〜L5が配線される領域について説明する。
【0036】
これら電車線L1〜L5が配線される領域は、各停留場S1〜S5に対応する停車位置と、この停車位置から発進して加速が終了する地点X(図1では停留場S1についてのみ図示している。)に至るまでの区間の一部または全部を含む領域となっている。つまり、電動車4が停車していてその集電子6と電車線L1〜L5とが摺接することなく比較的長い時間接触できる停車位置と、この停車位置からの発車直後でその加速に大きな電力を要する区間とにおいては、前記電車線L1〜L5から前記集電子6を通じて電動車4に給電できるようになっている。
【0037】
このようにして電車線の配線を間欠的に行うようにすれば、当該電車線が全領域にわたって配線されるシステムに比して、電車線の建設費を削減でき、また、当該電車線と集電子6との摺接による磨耗損傷を抑制してその保守点検費用を削減でき、景観の向上にも寄与することが可能となる。しかも、前記停車位置及びその直下流側の加速領域に電車線L1〜L5を配線することにより、当該電車線L1〜L5から電動車4への効果的な給電を行うことができ、電車線L1〜L5が配線されていない領域において車上給電ユニット10に求められる給電能力を抑えることにより、その小型化、低廉化も図ることが可能となる。
【0038】
なお、前記電車線L1〜L5の配線領域以外の領域は、全て非配線領域としてもよいし、その一部に局所的に別の電車線を配線するようにしてもよい。例えば、図1及び図3に示すように電動車4の急カーブが生ずる領域1aが存在する場合、そのカーブの手前で一旦減速した後に電動車4が再加速する必要があるので、その加速区間の一部または全部に図3に示すような電車線L6を配線することにより、効果的な給電ができる。また、急な上り勾配で走行負荷の大きい領域に電車線を配線しても効果的である。その他、停留場間の距離が非常に大きい場合に、その中間地点で電力を補給できるように電車線を適宜配線するようにしてもよい。
【0039】
一方、前記電動車4の走行負荷が負となるような走行領域(例えば停留場手前やカーブ手前の減速領域や下り勾配領域)では、車上給電ユニット10による給電は不要であり、逆にブレーキ領域では発電ブレーキを利用することによりエネルギーを回収して蓄電を行うことも可能であるので、このような領域には電車線を配線しないようにする。
【0040】
ただし、走行負荷が負である領域であっても、停留場の電動車停止位置より上流側の区間については電車線を配線する方法も考えられる。一般に、電動車4は、停留場に進入して最終停止位置に停車するにあたり、乗客の安全面を考慮して非常にゆっくりした速度を経て停止する。換言すれば、極く短い距離に相当の時間をかけて徐行し最終的に停止することになる。このように車速がきわめて低い減速区間において集電し、蓄電装置に充電するようにすれば、電車線の著しい磨耗損傷を伴うことなく、充電時間を大きくとることが可能となり、充電損失の減少を実現できる。
【0041】
前記各電車線L1〜L5の長さは、全て統一されていてもよいのであるが、その電車線から離れた後、次の電車線に到達するまでの区間を走行するのに必要な電力が小さい場合(例えば当該区間が短距離区間である場合や下り勾配の多い区間である場合)、前記電車線を短くしてもその後の走行に必要な電力は供給できることになる。このような観点から、図1に示すシステムにおいては、各電車線L1〜L5について、その終端から次の電車線の始端までの非配線区間における走行に必要な電力が小さいほど、当該電車線L1〜L5の配線長が短く設定されている。
【0042】
(集電状態の切換について)
本システムにおいて、少なくとも一部の電車線を、集電子と接触可能な位置と、集電子に接触しない位置とに切換できるようにすれば、集電の必要がないときには当該電車線を集電子に接触しない位置に切換えることによって、不必要な電車線と集電子との摺接を回避することができる。図4(a)(b)に示す例では、前記図3に示した電車線L6の一端が支点16を中心として回動可能となるように設置され、他端に回動駆動用シリンダ18が連結されており、同シリンダ18の伸縮により、前記電車線L6が図4(a)に示すように集電子と接触可能な位置と同図(b)に示すように集電子と接触しない位置とに切換えられるようになっている。前記電車線L6の回動の向きは、その配線形態によって設定すればよい。例えば、電車線L6が電動車4の上方に配線されている場合には当該電車線L6を上方に逃がすようにすればよいし、電車線L6が電車線の側方に配線されている場合にはその外側方に逃がすようにすればよい。
【0043】
この電車線の位置切換は、運行管理装置2の指令により行ってもよいし、電動車4が、自車の電力発生状態、及び、自車位置と電車線との相対位置を認識できるようにして、当該電動車4側で必要に応じて自動切換されるようにしてもよい。あるいは、運転手が自己の判断で手動で操作できるようにしてもよい。
【0044】
なお、前記電車線を可動とする代わりに、前記電動車4側の集電子6が電車線に対して接触する集電位置と当該電車線に接触しない非集電位置とに切換可能となるようにしてもよい。
【0045】
(他の給電手段について)
本発明では、前記電車線の配線領域を除く領域中の所定位置に当該電車線とは別の給電手段による給電箇所を設定するようにしてもよい。その給電箇所としては、電動車の非常停止が予想される箇所等が好適である。その例を図5に示す。
【0046】
同図に示すシステムでは、下り用軌道1Aと上り用軌道1Bとが並設されており、両軌道1A,1B間に停留場SA,SB,…が設けられている。図において、下り用軌道1Aは適当な間隔で区切られて閉塞区間EA1,EA2,EA3,EA4,EA5,EA6,EA7,…が設定されており、同様に上り用軌道1Bも適当な間隔で区切られて閉塞区間EB1,EB2,EB3,EB4,EB5,EB6,EB7,EB8,…が設定されている。そして、各閉塞区間でその区間内に複数の電動車が同時進入するのを禁止することにより、追突防止が図られている。
【0047】
このような閉塞区間が設定されたシステムにおいては、ダイヤの乱れにより、いずれかの閉塞区間内に先行の電動車が存在するときに後続の電動車が当該閉塞区間の手前で信号待ち停止(非常停止)しなければならない場合が生じる。前記ダイヤの乱れは、特に停留場での事情(乗客の乗降遅れや場内の事故、他列車の接続待ち等)に起因するものが多い。このように諸事情で信号待ち停止しなければならなくなった電動車に対し、適当な手段で電力を補給するようにすれば、その後支障なく再発進することをより確実にできる。また、空調設備や照明設備の作動確保も可能になる。
【0048】
そこで、図示のシステムでは、停留場SA,SBの間であって、下り用軌道1Aにおいては、停留場SBを含む閉塞区間EA5に先行電動車4が滞留した場合に後続車が原則として停止すべき位置(図例では閉塞区間EA3の前端位置)に給電スポット(給電箇所)SPAが設定され、同様に、上り用軌道1Bにおいては、停留場SBを含む閉塞区間EB7に先行電動車4が滞留した場合に後続車が原則として停止すべき位置(図例では閉塞区間EB5の前端位置)に給電スポット(給電箇所)SPBが設置されている。
【0049】
このようなシステムによれば、停留場SAまたは停留場SBで先行電動車4が滞留することにより後続車が閉塞区間EA3の前端位置や閉塞区間EB7の前端位置で臨時停車しなければならない事態が生じても、その後続車に対して効果的な給電を行うことができる。
【0050】
なお、このように停留場を含む閉塞区間を基準にして給電箇所を設定する場合、その給電箇所は全ての停留場について設定してもよいし、特に滞留が生じ易い停留場を含む閉塞区間の手前側にのみ設定するようにしてもよい。具体的な給電箇所の位置についても、前記停留場を含む閉塞区間よりも手前側となる範囲の中で適宜設定可能であり、例えば、図5に示す下り用軌道1Aについては、対象となる閉塞区間EA5から手前側に余裕を見越して区間EA2内に給電スポットSPAを設定してもよいし、逆に前記閉塞区間EA5の直前の区間EA4内に同給電スポットSPAを設定してもよい。
【0051】
また、給電箇所は図5に示すような閉塞区間EA5,EB7の手前側の位置に限らず、その他、臨時停車が予想される位置に適宜設定すれば良い。あるいは、適当な間隔をおいて複数の給電箇所を設定しておき、何らかのアクシデントが起った場合(例えば走行先で障害物を発見した場合)に側近の給電箇所で臨時停車して給電を受けるようにしてもよい。
【0052】
前記のような給電箇所を設定する場合、その給電箇所に前記電動車を誘導する誘導手段を備えることが、より好ましい。図1及び図2に示すシステムにおいては、各停留場での停車と同様にして前記運行管理装置2が電動車4を前記給電箇所に誘導するようにすればよい。
【0053】
前記図5に示すシステムでは、さらに、停留場SA,SBの間で電車線が配線されていない領域の適所に、非常用の給電手段として、ほぼ等間隔で複数の給電ポスト17が設置されている。これらの給電ポスト17は、例えば電動車が他車輌等の事故などにより非常停止しなければならなくなり、かつ、その進行が許されない状態が長時間継続した場合の非常給電手段として有効である。
【0054】
これらの給電ポスト17は、電動車4の安全な走行のために当該電動車4の走行空間(すなわち当該電動車4がその走行時に通過する空間)と干渉しないように設定される建築限界内の位置であって、電動車4への給電に適した位置、例えば軌道側部に設置するのがよい。ここで「建築限界」とは、電動車が土木・建築物に当たらずに安全走行できるように設定された、当該土木・建築物の設置許容範囲の限界をいう。
【0055】
また、これら給電ポスト17の態様としては、自立スタンドとして設置してもよいし、軌道擁護壁や軌道基盤といった軌道敷地乃至は造成物に壁掛け若しくは埋設といった態様で設置してもよい。給電ポスト17と電動車4との接続については、両者を直結するようにしてもよいが、例えば給電ポスト17内にケーブルをリール巻状態で内蔵し、適宜引き出せるようにすれば、接続作業はより容易となる。
【0056】
(非接触集電装置の併用について)
前記給電スポットSPA,SPBをはじめとする各給電箇所で臨時的な給電を行うことや、電車線の総設置長さを削減することを目的として、電車線と集電子6とからなる接触式集電装置に加え、非接触式の集電装置を併用するようにしてもよい。その好適例を図6に示す。
【0057】
図示の電動車4には、前記図2に示した装備品に加え、非接触集電子20、電圧継電器22、電圧調整器24、遮断器26、及び電圧継電器28が搭載されている。
【0058】
非接触集電子20は、例えば電動車4の底部に設けられ、軌道側に設けられている給電手段から出力される電力を非接触状態で取り込むものであり、その集電には電磁誘導結合式、エネルギー照射式等、種々の方式を利用することが可能である。
【0059】
この非接触集電子20により取り込まれた電力は、電圧調整器24により電圧調整された後、遮断器26を経由して車上電力系統や車上給電ユニット10に供給されるようになっている。前記遮断器26は、集電子6側の遮断器8と並列で前記車上電力系統及び車上給電ユニット10の遮断器9に接続されている。従って、この遮断器26を閉じて前記遮断器8を開くことにより、非接触集電子20からの集電が可能となり、逆に前記遮断器26を開いて前記遮断器8を閉じることにより、(接触式)集電子6からの集電が可能となる。
【0060】
なお、前記電圧継電器22,28は、非接触式集電の電圧及び接触式集電の電圧を確認するためのものであり、各集電子20,6の下流側に接続されている。
【0061】
(電動車4での充電について)
前記車上給電ユニット10のように蓄電ユニット12を具備するものにおいて、その蓄電速度(充電速度)は常に一定に保つようにしてもよいのであるが、その場合、集電子6と電車線との接触可能時間が短いと、十分な電力を充電できないおそれがある。このような事態を避けるために充電速度を高めに設定すると、その分だけ充電効率は低下することになる。
【0062】
そこで、前記電車線と前記集電子6との接触可能時間が短いほど前記蓄電ユニット12に対する充電速度を増大させる(すなわち接触可能時間の長短にかかわらずその時間を有効に使用して充電する)ようにすれば、前記接触可能時間が短いときは充電速度を上げることによって必要電力の充電を確保する一方、前記接触可能時間が長くて余裕のあるときは充電速度を下げてその充電効率の向上を図ることができる。
【0063】
そのための装置の好適例を図7に示す。図示の装置は、前記図6に示した電動車4において、その車上給電ユニット10における充放電制御装置11に充電時間指令器30を付加したものである。
【0064】
この充電時間指令器30には、運行管理装置2から対象電動車4毎に出力される充電可能時間の指令信号が入力される。この充電可能時間は、予定される停留場停止時間及び発進後の集電時間によって決まり、これらの時間は、運行予定ダイヤにおいて運行列車毎及び停留場毎に計画される。前記運行予定ダイヤは、運行時間帯、停留場の見込み乗客乗降数、他線との連絡関係、軌道線形(直線、カーブ等)に左右される走行速度等に基づき定められる。
【0065】
前記充電可能時間は、前記充電時間指令器30から充放電制御装置11に指令される。この充放電制御装置11は、その充電可能時間から充電速度を割り出し、その速度での蓄電ユニット12に対する充電を実行する。具体的には、集電開始時における蓄電ユニット12の端子電圧と、次の集電位置に対応して決定される目標充電電圧とに基づき、蓄電ユニット12の種類によって定まる充電促進特性を考慮した充電印加電圧調整を前記充電可能時間に沿って行うようにする。
【0066】
あるいは、充電開始電圧、充電完了目標電圧、及び充電可能時間をパラメータとし、蓄電ユニット12の特性に見合った最適充電電圧印加パターンを前記充放電制御装置11に記憶させて電動車固有の最適充電を行うようにすれば、より効率の高い充電を実現することが可能である。
【0067】
具体的な動作としては、前記電圧継電器22または28により接触式集電または非接触式集電が開始されたことを確認した上で前記の充電制御を開始すればよい。また、停留場までの臨時停止により非常給電する場合には、再発進可能時刻までは(充電せずに)電動車搭載の補機に優先給電し、再発進可能の指令または信号停止解除の確認を得た時点で充電を優先させるようにしてもよい。
【実施例1】
【0068】
各運転状態における所要電力Pについて考察する。この所要電力P〔kW〕は、加速度をα〔m/s〕、走行抵抗をR〔kgf/t〕、車体重量をW〔t〕、速度をV〔m/s〕、機械等効率をη、補機所要電力をPa〔kW〕とすると、次の(1)式により表すことができる。
【0069】
P=(31α+R)・W・(9.81/3600)・V・1/η+Pa …(1)
この(1)式における加速度αの係数(前記式では31)は、単なる質点を加速する場合の理論値であれば28.6となるものであるが、電動車には車輪を代表とする回転部があるため、その回転部の慣性モーメントを考慮して「31」となっている。この係数の具体的な数値は車両の形式によってある程度変動するが、前記(1)式は軌道走行車両に多用されている式である。そして、この式は、加速時には定速走行時よりも大きな電力を電動車に供給しなければならないことを示している。
【0070】
ここで、市内あるいは近郊輸送路線を想定した数値例として、加速最終速度を45〔km/h〕、発進からの平均加速度を3.0〔km/h/s〕、駅間長を1000〔m〕を設定する。さらに、標準的なゴムタイヤ新交通方式に対応するものとしてR=14.5〔kgf/t〕、W=45〔t〕、Pa=20〔kW〕を前記(1)式に代入すると、加速・定速(短距離/長距離)・減速停止の各運転状態における電力消費特性は次の表1のようになる。
【0071】
【表1】


【0072】
この表1において、「停留場出発加速」及び「停留場減速停止」走行における「走行所要長」94mは、電動車の加速または減速・停止を完了するのに要する距離に相当するものである。
【0073】
この表1によれば、同一距離の走行であっても、定常走行時に比して加速走行時の所要電力は非常に大きくなることが分かる。従って、加速走行に要する電力の少なくとも一部を電車線から集電した電力で賄うとすれば、無集電領域を走行するために必要とされる車上給電装置の容量が大幅に削減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動車走行システムの全体構成図である。
【図2】前記電動車走行システムにおける電動車の構成を示す図である。
【図3】前記電動車走行システムにおいて急カーブ直後に電車線を配線した例を示す図である。
【図4】(a)(b)は図3に示した電車線を可動にした例を示す図である。
【図5】停留場間に給電スポットを設定し、かつ、給電ポストを設置したシステムの例を示す図である。
【図6】前記電動車に非接触式集電装置を併設した例を示す図である。
【図7】図6に示す電動車に充電時間指令器を付加した例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
2 運行管理装置(誘導手段)
3 信号送受信器
4 電動車
5 車上走行制御装置
6 集電子
8,9 遮断器
10 車上給電ユニット
11 充放電制御装置(充電速度調節手段)
12 蓄電ユニット
17 給電ポスト(給電手段)
30 充電時間指令器(充電速度調節手段)
L1〜L5 電車線
EA5,EB7 停留場を含む閉塞区間
SPA,SPB 給電スポット(給電箇所)





 

 


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