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多軸車両及びその操舵制御装置 - 株式会社小松製作所
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発明の名称 多軸車両及びその操舵制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−223500(P2007−223500A)
公開日 平成19年9月6日(2007.9.6)
出願番号 特願2006−48244(P2006−48244)
出願日 平成18年2月24日(2006.2.24)
代理人 【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
発明者 松田 智夫
要約 課題
6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両において、簡単な構成で小回り性能を向上させる。

解決手段
最前車軸22と最後車軸28の間に配置された1以上の中間車軸24、26に設けられた中間駆動輪34L、R、36L、Rを使って旋回を行う。旋回を行うとき、旋回外側の中間駆動輪34L、36Lの速度Voutを車速V0より高く制御し、且つ、旋回内側の中間駆動輪34R、36Rの速度Vinを車速V0より低く制御する。外側と内側の中間駆動輪の速度Vout、Vinは、操舵輪32L、R、34L、Rだけで旋回するときより小さい半径で旋回できるように、車速V0と操舵輪32L、R、34L、Rの操舵角ψとに応じて制御される。旋回時、中間駆動輪34L、R、36L、R以外の駆動輪32L、R、38L、Rへの動力伝達を切って、これらの駆動輪を遊動状態にする。
特許請求の範囲
【請求項1】
最前車軸(22)と最後車軸(28)と1以上の中間車軸(24、26)とを含む3以上の車軸を備えた多軸車両(20)において、
前記1以上の中間車軸(24、26)に設けられた1対以上の中間駆動輪(34L、34R、36L、36R)と、
少なくとも前記最前車軸(22)及び前記最後車軸(28)に設けられた2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)と、
旋回運動を行うときに、旋回の内側の中間駆動輪(34R、36R)の速度(Vin)と外側の中間駆動輪(34L、36L)の速度(Vout)とを異なる速度に制御する操舵制御装置(180)と、
旋回運動を行うときに、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に作用する外力、又は所望の旋回半径に応じて、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に働く横力が小さくなるように前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対の操舵角度を調整する操舵角度調整装置と、
を備えた多軸車両。
【請求項2】
請求項1記載の多軸車両(20)において、
旋回運動を行うときに、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に働く横力により、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に作用する外力を計測する計測手段を更に備え、
前記操舵角度調整装置が、前記計測手段によって計測される前記外力が最小になるように前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対の操舵角度を調整する多軸車両。
【請求項3】
請求項1記載の多軸車両(20)において、
前記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に働く横力が最小になるように幾何学的な計算を行った上で、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対の操舵角度を精密に調整するようにした多軸車両。
【請求項4】
請求項1記載の多軸車両(20)において、
前記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に働く横力が可能な限り小さくなるように前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対の操舵角度を大まかに可変調整するようにした多軸車両。
【請求項5】
請求項1記載の多軸車両(20)において、
前記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に働く横力が可能な限り小さくなるように前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対の操舵角度を断続的に可変調整するようにした多軸車両。
【請求項6】
請求項1記載の多軸車両(20)において、
前記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対に働く横力が可能な限り小さくなるように前記2対以上の操舵輪(32L、32R)、(38L、38R)の双方又は何れか一方の対の操舵角度を予め左/右方向に1つずつ設定された角度値に基づいて可変調整するようにした多軸車両。
【請求項7】
請求項1記載の多軸車両(20)において、
前記最後車軸(28)に設けられた1対の車輪(38L、38R)が、直進時には固定輪とし、旋回時には自動的に転舵可能になるよう構成される多軸車両。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか1項記載の多軸車両(20)において、
前記中間駆動輪(34L、34R、36L、36R)以外に、少なくとも前記最前車軸又は前記最後車軸に設けられた1対以上の駆動輪(32L、32R、38L、38R)を備え、
前記操舵制御装置(180)は、
旋回運動を行うときに、前記最前車軸及び前記最後車軸の双方に設けられた車輪(32L、32R、38L、38R)が遊動輪となるように、前記中間駆動輪以外の駆動輪(32L、32R、38L、38R)への駆動力の伝達を断つ動力伝達制御手段(192、64、74)を有する多軸車両。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7の何れか1項記載の多軸車両(20)において、
前から順に第1軸(22)、第2軸(24)、第3軸(26)及び第4軸(28)からなる、軸間距離がほぼ均等な、4つの車軸を備え、
前記第2軸(24)と第3軸(26)に設けられた2対の車輪(34L、34R、36L、36R)が前記中間駆動輪に相当し、
少なくとも前記第1軸(22)を含む1又は複数の車軸に設けられた1対又は複数対の車輪(32L、32R、34L、34R)が前記操舵輪に相当する多軸車両。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項記載の多軸車両(20)において、
前記操舵制御装置(180)は、
前記操舵輪の操舵角(ψ)を検出する操舵角検出手段(186)と、
前記多軸車両の運転速度(V、VL、VR)を検出する運転速度検出手段(188、204、182L、182R、184L、184R)と、
前記操舵角検出手段によって検出される前記操舵角(ψ)と、前記運転速度検出手段によって検出される前記運転速度(V、VL、VR)とに基づき、前記内側の中間駆動輪の速度(Vout)と前記外側の中間駆動輪の速度(Vin)を制御する中間駆動輪速度制御手段(200、202、206)と、
を有する多軸車両。
【請求項11】
請求項10記載の多軸車両(20)において、
中間駆動輪速度制御手段(200、202、206)は、前記操舵角検出手段によって検出された前記操舵角度(ψ)と、前記運転速度検出手段によって検出された前記運転速度(V、VL、VR)とに基づき、前記操舵輪による舵きりだけで旋回する場合の旋回半径(R)より小さい旋回半径(R0S)で旋回運動を行えるように、左側の中間駆動輪の目標速度(VLS)と右側の中間駆動輪の目標速度(VRS)を決定し、前記左側と右側の中間駆動輪の目標速度(VLS、VRS)のうちの少なくとも一方に基づいて、前記内側と外側の中間駆動輪の夫々の速度(Vout、Vin)を制御する多軸車両。
【請求項12】
請求項11記載の多軸車両(20)において、
前記運転速度検出手段は、前記左側の中間駆動輪の速度(VL)と前記右側の中間駆動輪の速度(VR)を夫々検出する中間駆動輪速度検出手段(182L、182R、184L、184R)を含み、
中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、前記中間駆動輪速度検出手段により検出された前記左側と右側の中間駆動輪の速度(VL、VR)のうちの前記外側の中間駆動輪の速度(Vout)に相当する一方と、前記左側と右側の中間駆動輪の目標速度(VLS、VRS)のうちの前記外側の中間駆動輪の目標速度(VoutS)に相当する一方とに基づいて、前記内側と外側の中間駆動輪の夫々の速度(Vout、Vin)を制御する多軸車両。
【請求項13】
請求項10記載の多軸車両(20)において、
前記運転速度検出手段は、前記多軸車両(20)の代表点(30)の速度(V)を検出する手段(188、204)を含み、
前記中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、前記運転速度検出手段により検出された前記代表点の速度(V0)に基づいて、前記内側の中間駆動輪の速度(Vin)が前記代表点の速度(V0)より低く且つ前記外側の中間駆動輪の速度(Vout)が前記代表点の速度(V0)より高くなるように、前記内側と外側の中間駆動輪の速度(Vout、Vin)を制御する多軸車両。
【請求項14】
請求項1乃至請求項9の何れか1項記載の多軸車両(20)において、
左側の中間駆動輪(34L、36L)と右側の中間駆動輪(34R、36R)とを夫々独立して制動する制動手段(112L、114L、112R、114R)を更に備え、
前記操舵制御装置(180)が、
旋回運動を行うとき、前記制動手段を制御して前記左側と右側の中間駆動輪に夫々加えられる制動力を調整する制動力制御手段(192、122L、124L、122R、124R)を有する多軸車両。
【請求項15】
請求項14記載の多軸車両(20)において、
前記内側と外側の中間駆動輪(34L、36L、34R、36R)がディファレンシャルギア(60、70)を介して結合され、
前記制動力制御手段が、旋回運動を行うとき、前記内側と外側の中間駆動輪の速度を異ならせるために、前記内側の中間駆動輪に制動力を与えるよう前記制動手段を制御する(308、310)多軸車両。
【請求項16】
請求項14記載の多軸車両(20)において、
前記制動力制御手段が、
前記内側の中間駆動輪がロックしたことを検出する内輪ロック検出手段(344)と、
前記内輪ロック検出手段により前記内側の中間駆動輪のロックが検出されたとき、前記内側の中間駆動輪の制動を緩和すると共に、前記外側の中間駆動に制動力を与えるよう前記制動手段を制御する内輪ロック解除手段(346)と、
を有する多軸車両。
【請求項17】
請求項14記載の多軸車両(20)において、
前記制動力制御手段が、
前記内側と外側の中間駆動輪に夫々加えられる制動力を制御するために、前記内側と外側の中間駆動輪を夫々制動する時間を制御する制動時間制御手段(342、344、346)、
を有する多軸車両。
【請求項18】
請求項17記載の多軸車両(20)において、
前記制動力制御手段が、
パルス幅制御の方法により周期的に制動と非制動を交互に繰り返し、前記内側と外側の中間駆動輪の速度を制御するために1周期内での制動時間のデューティ比を制御し、前記内側の中間駆動輪のロックを防止するために各周期の長さを制御するパルス幅制御手段(342、344、346)、
を有する多軸車両。
【請求項19】
最前車軸(22)と最後車軸(28)と1以上の中間車軸(24、26)とを含む3以上の車軸を備え、前記1以上の中間車軸(24、26)に設けられた1対以上の中間駆動輪(34L、34R、36L、36R)と、少なくとも前記最前車軸又は前記最後車軸に設けられた1対以上の操舵輪(32L、32R、34L、34R)とを有した多軸車両(20)のための操舵制御装置(180)において、
前記多軸車両が旋回運動を行うときに、旋回の内側の中間駆動輪(34R、36R)の速度(Vin)と外側の中間駆動輪(34L、36L)の速度(Vout)を異なる速度に制御する中間駆動輪速度制御手段、
を備えた多軸車両の操舵制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両に関し、特に多軸車両を小半径で旋回させるための操舵制御技術に関する。本発明は、例えば、軸間距離がほぼ均等な4車軸を有する8輪車両に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の旋回半径を小さくするための操舵装置が開発されている。特許文献1には、4輪車両において、進行方向に対する前側旋回内輪に制動をかけることが開示されている。また、特許文献2には、同じく4輪車両において、進行方向に対する後側旋回内輪に制動をかけることが開示されている。
【0003】
ところで、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を持つ多軸車両では、小半径での回転は4輪車両より困難である。一例として、4車軸を持つ8輪車両を例に取って説明する。
【0004】
8輪車両では、通常、第1軸と第2軸から成る前2軸に結合された4輪が操舵輪であり、第3軸と第4軸から成る後2軸の4輪は非操舵輪である。前2軸の操舵輪の向きを変えることで、旋回が行われる。旋回中心は、最前部の操舵輪である第1軸の内輪の中心軸の延長線と、非操舵輪である第3軸と第4軸間の中線の延長線の交点となるが、両線間のスパンが大きいため、旋回中心は車体からかなり離れ、よって、最小旋回半径が大きい。このような8輪車両に特許文献1,2に開示された技術を応用して、旋回時に前2軸又は後2軸の内輪に制動をかけたとしても、4輪車両のようには効果的に旋回半径が小さくならない。
【0005】
8輪車両に関して、別の原理に基づく操舵装置が、例えば、非特許文献1の第34頁に開示されている。この記事によれば、ドイツで1975年に開発されたダイムラーベンツ社製の8輪車両「ルクス」に採用された操舵装置は、時速30km以下で操舵する時には、前2軸を転舵するだけでなく、後2軸を逆位相に転舵する。このように前2軸と後2軸を逆位相に転舵する操舵装置は、8WS(Eight Wheel Steering System)と呼ばれる。
【0006】
8WSを採用することにより、前2軸だけで操舵する場合と比べて、旋回中心が車体により近づき、最小旋回半径が小さくなる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−49019号公報(例えば、請求項1)
【特許文献2】特開平11−49020号公報(例えば、請求項1)
【非特許文献1】雑誌「PANZER」、2005年7月号、アルゴノート社(例えば、第34頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、8WSでは、前2軸と後2軸を逆位相で転舵するための操舵装置の構造が複雑であり、また、車体の後2軸が配設された場所に操舵機構を収容する空間を設ける必要があるから、車体後部の乗員席や貨物室の容量が低減する虞がある。そこで、このような不具合を抑制するための手段を、本発明者等は、先に特願2005−244283で提案した。本発明者等が上記特許出願において開示した技術内容の概要は、3軸以上の車軸を持つ多軸車両が旋回運動を行うときに、旋回の外側の中間駆動輪の速度を、旋回の内側の中間駆動輪の速度よりも速く制御するようにしたことである。
【0009】
しかし、上記特許出願で開示された構成を備える多軸車両では、車輪と路面との間の摩擦係数が高くなるにつれて、旋回半径が大きくなるという問題が生じる。本発明は、この問題についても改善を図ろうとするものである。
【0010】
本発明の第1の目的は、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両において、効果的に小回り性能を向上させることにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両において、車輪と路面との間の摩擦係数が高くなったとしても、それによって旋回半径が大きくなるのを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの側面に従えば、最前車軸と最後車軸と1以上の中間車軸とを含む3以上の車軸を備えた多軸車両は、上記1以上の中間車軸に設けられた1対以上の中間駆動輪と、少なくとも上記最前車軸及び上記最後車軸に設けられた2対以上の操舵輪と、旋回運動を行うときに、旋回の内側の中間駆動輪の速度と外側の中間駆動輪の速度とを異なる速度に制御する操舵制御装置と、旋回運動を行うときに、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に作用する外力、又は所望の旋回半径に応じて、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に働く横力が小さくなるように上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対の操舵角度を調整する操舵角度調整装置と、を備える。
【0013】
この多軸車両によれば、最前車軸と最後車軸との間に配置された1以上の中間車軸に設けられた1対以上の中間駆動輪を使って、前進時にも後退時にも旋回運動を行うことができる。旋回外側の中間駆動輪と内側の中間駆動輪の速度をどのように異ならせるかを制御することで、旋回半径の大きさが制御できる。そのため、操舵輪による舵きりだけで旋回する場合より小さい旋回半径で旋回することが可能である。また、旋回運動を行うときに、2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に働く横力が小さくなるように2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対の操舵角度を調整するようにしたので、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両において、車輪と路面との間の摩擦係数が高くなったとしても、それによって旋回半径が大きくなるのを抑制することができる。
【0014】
本発明の一つの側面に係る好適な実施形態では、旋回運動を行うときに、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に働く横力により、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に作用する外力を計測する計測手段を更に備え、上記操舵角度調整装置が、上記計測手段によって計測される上記外力が最小になるように上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対の操舵角度を調整する。
【0015】
上記とは別の実施形態では、上記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に働く横力が最小になるように幾何学的な計算を行った上で、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対の操舵角度を精密に調整するようにしている。
【0016】
また、上記とは別の実施形態では、上記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に働く横力が可能な限り小さくなるように上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対の操舵角度を大まかに可変調整するようにしている。
【0017】
また、上記とは別の実施形態では、上記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に働く横力が可能な限り小さくなるように上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対の操舵角度を断続的に可変調整するようにしている。
【0018】
また、上記とは別の実施形態では、上記操舵角度調整装置が、旋回運動を行うときに、所望の旋回半径に応じて、上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対に働く横力が可能な限り小さくなるように上記2対以上の操舵輪の双方又は何れか一方の対の操舵角度を予め左/右方向に1つずつ設定された角度値に基づいて可変調整するようにしている。
【0019】
また、上記とは別の実施形態では、上記最後車軸に設けられた1対の車輪が、直進時には固定輪とし、旋回時には自動的に転舵可能になるよう構成されている。
【0020】
中間駆動輪以外に、少なくとも最前車軸又は最後車軸に一対以上の駆動輪が設けられている場合には、上記操舵制御装置は、旋回運動を行うときに、上記中間駆動輪以外の駆動輪への駆動力の伝達を断ち、それにより、最前車軸及び最後車軸の双方に設けられた車輪が遊動輪となるように制御することができる。これにより、最前車軸及び最後車軸の双方の車輪が、中間駆動輪による旋回運動に支障を与えることが防止されるので、小半径での旋回がより容易になる。
【0021】
好適な実施形態では、前から順に第1軸、第2軸、第3軸及び第4軸から成る、軸間距離がほぼ均等な、4つの車軸を備えた8輪車両に、本発明が適用される。この8輪車両では、4対の車輪の全部が駆動輪であり、第1軸と第2軸の2対の車輪が操舵輪であり、第2軸と第3軸の2対の車輪が中間駆動輪である。そして、その2対の中間駆動輪を使って小半径の旋回を行うことができ、且つ、2対の中間駆動輪で旋回を行っている間、第1軸と第4軸の2対の駆動輪は、そこへの動力伝達が切断されて、遊動状態になる。
【0022】
このような4軸車両だけでなく、3軸車両や、5軸以上の車軸を持つ車両にも、本発明は適用可能である。
【0023】
本発明に従う多軸車両の操舵制御装置は、操舵輪の操舵角を検出する操舵角検出手段と、多軸車両の運転速度を検出する運転速度検出手段と、操舵角検出手段によって検出される操舵角と、運転速度検出手段によって検出される運転速度とに基づき、内側の中間駆動輪の速度と外側の中間駆動輪の速度を制御する中間駆動輪速度制御手段とを有することができる。この構成によれば、前進・後退に関わらず検出された操舵角度や車速(車両代表点速度)等の現在の運転状態に応じて、内側と外側の中間駆動輪の速度が制御されるので、現在の運転状態に適した旋回半径やヨー角速度などの旋回条件で旋回運動を行うことが可能であり、よって、旋回時における操作性、操縦性並びに安定性を得ることができる。
【0024】
上述したように検出された現在の運転条件(操舵角度や運転速度など)に基づいて内側と外側の中間駆動輪の速度を制御する場合、その運転条件の下で操舵輪による舵きりだけで旋回したとした場合の旋回半径(通常旋回半径)より小さい旋回半径で旋回運動が行えるように、左側と右側の中間駆動輪の夫々の目標速度を決定し、夫々の目標速度を使って内側と外側の中間駆動輪の夫々の速度を制御するようにすることができる。例えば、好適な実施形態では、検出された運転条件から定まる通常旋回半径に、1.0より小さい係数(例えば、0.8程度)を乗算して目標旋回半径を決定し、その小さい目標旋回半径で旋回できるように左側と右側の中間駆動輪の夫々目標速度が決定される。その結果、操舵輪による舵きりだけで旋回する場合より小さい旋回半径での旋回が自動的に実現される。
【0025】
好適な実施形態では、運転速度検出手段は、左側の中間駆動輪の速度と右側の中間駆動輪の速度を夫々検出する。そして、中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、検出された左側と右側の中間駆動輪の速度のうち、外側の中間駆動輪の速度に相当する一方が、上述した左側と右側の中間駆動輪の目標速度のうち、外側の中間駆動輪の目標速度に相当する一方とに基づいて、旋回内側と外側の中間駆動輪の夫々の速度を制御する。この構成によれば、特に極低速で旋回する場合、所望精度で車輪速度を検出するための所要時間が長くなって制御応答性が低下しても、左右の駆動輪のうちより高速である方の旋回外側の駆動輪の検出速度に基づいて制御が行われるので、制御応答性の低下の問題を緩和することができる。
【0026】
また、好適な実施形態では、上記運転速度検出手段は、多軸車両の代表点の速度を検出する手段を含み、中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、検出された代表点の速度に基づいて、内側の中間駆動輪の速度が代表点の速度より低く且つ外側の中間駆動輪の速度が代表点の速度より高くなるように、内側と外側の中間駆動輪の速度を制御する。この構成により、検出された代表点の速度(現在の車速)に適した旋回半径やヨー角速度等の旋回条件で旋回運動を行うことが可能であり、旋回時における操作性、操縦性並びに安定性を得ることができる。
【0027】
本発明に従う多軸車両は、左側の中間駆動輪と右側の中間駆動輪とを夫々独立して制動する制動手段を備え、操舵制御装置は、その制動手段を制御する制動力制御手段を有するように構成されてもよい。制動力制御手段は、旋回運動を行うとき、左側と右側の中間駆動輪に夫々加えられる制動力を調整することができる。この構成によれば、前進・後退に関わらず、左右の中間駆動輪への制動力の調整により、旋回運動を、例えば次のように制御することができる。
【0028】
即ち、好適な実施形態では、内側と外側の中間駆動輪がディファレンシャルギアを介して結合されている。そして、上記制動力制御手段は、旋回運動を行うとき、内側と外側の中間駆動輪の速度を異ならせるために、内側の中間駆動輪に制動力を与えるよう上記制動手段を制御する。この構成によれば、内側の中間駆動輪に制動力を与えることで、内側の中間駆動輪の速度を落し、同時に外側の中間駆動輪の速度を上げて、旋回半径を小さくすることができる。
【0029】
更に、好適な実施形態では、上記制動力制御手段が、内側の中間駆動輪がロックしたことを検出する内輪ロック検出手段と、内側の中間駆動輪のロックが検出されたとき、内側の中間駆動輪の制動を緩和すると共に、外側の中間駆動に制動力を与えるよう制動手段を制御する内輪ロック解除手段とを有する。この構成によれば、外側の中間駆動輪に制動力を与えることで、内側の駆動輪に生じた車輪ロックを解除することができる。これにより、旋回中に車輪に無理な横力が働くのを防止するとともに、路面状況に応じて旋回半径が大きくばらつくことを予防できる。
【0030】
このように、本発明に係る多軸車両の好適な実施形態は、上述した制動力制御手段の働きによって、安定な走行状態を保ちながら旋回半径を小さくすることができる。
【0031】
また、上述した制動力制御手段は、内側と外側の中間駆動輪に夫々加えられる制動力を制御するために、内側と外側の中間駆動輪を夫々制動する時間を制御するように構成されてよい。その場合、制動力制御手段は、パルス幅制御の方法により周期的に制動と非制動を交互に繰り返し、内側と外側の中間駆動輪の速度を制御するために1周期内での制動時間のデューティ比を制御し、また、中間駆動輪のロックを防止するために各周期の長さを制御するように構成されてよい。このようなパルス幅制御の方法を採用し、中間駆動輪の速度制御をデューティ比の調整で行い、ロック防止を周期の調整で行うことにより、安定した制御を実現することができる。
【0032】
本発明の別の側面に従えば、上述したような多軸車両における操舵制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、3軸以上の車軸を有する多軸車両において効果的に小回り性能を向上させることができる。
【0034】
また、本発明によれば、3軸以上の車軸を有する多軸車両において車輪と路面との間の摩擦係数が高くなったとしても、それによって旋回半径が大きくなるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る多軸車両の操舵制御装置について説明する。
【0036】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る多軸車両における操舵制御の概要を説明する。
【0037】
図1に示すように、この実施形態に係る多軸車両20は、前から順に第1軸22、第2軸24、第3軸26、及び第4軸28から成る4車軸を備えた8輪車両である。4車軸22、24、26、28の軸間距離はほぼ均等であって、第1、2軸22、24間距離が短く、第2、3軸24、26間距離が長く、且つ第3、4軸26、28間距離が近いというような車軸配置ではない。必ずしも、軸間距離がほぼ均等であるという車軸配置でなければ本発明が適用できないわけではないが、この車軸配置は、本発明による小回り性能の向上という効果を得るために好ましいものである。
【0038】
第1軸22と第2軸24から成る前2軸に設けられた2対の車輪32L、32R、34L、34Rは、アッカーマンリンク(図示せず)に結合された方向可変の操舵輪である。他方、第3軸26と第4軸28から成る後2軸に設けられた2対の車輪36L、36R、38L、38Rは、方向不変の非操舵輪である。また、第2軸24と第3軸26とから成る中間2軸に設けられた2対の車輪34L、34R、36L、36Rは、エンジン(図示せず)からの駆動力を受ける駆動輪である。また、最前の第1軸22の左右車輪32L、32Rと、最後の第4軸28の左右車輪38L、38Rは、何れも、後に説明するクラッチにより、駆動輪と遊動輪とに切り替えることができる。この明細書では、中間2軸24、26の駆動輪34L、34R、36L、36Rを、第1、4軸22、28の駆動輪32L、32R、38L、38Rから区別するために、「中間駆動輪」と呼ぶ。
【0039】
この実施形態に係る多軸車両20に搭載された、本発明の原理に従う旋回制御装置は、操舵輪32L、32R、34L、34Rの旋回操舵が行われると、左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rの回転速度を異なる速度に制御する。左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rとの間の速度差により、強制的に多軸車両20の進路が変更されるので、操舵輪32L、32R、34L、34Rの舵きりのみで旋回する場合より小さい半径で、多軸車両20が旋回する。
【0040】
一例として、右方向に旋回する場合を想定して、より具体的に説明する。この場合、旋回外側(左側)の中間駆動輪34L、36Lは高い走行速度Voutで走行するように回転速度が制御され、これに対し、旋回内側(右側)の中間駆動輪34R、36Rは低い走行速度Vinで走行するように回転速度が制御される。ここで、旋回外側の2つの中間駆動輪34L、36Lは、まとめて、巨大な1つの中間駆動輪40Lと見做すことができ、同様に、旋回内側の2つの中間駆動輪34R、36Rも、まとめて、巨大な1つの中間駆動輪40Rと見做すことができる。従って、外側と内側の巨大な中間駆動輪40Lと40Rが夫々異なる走行速度VoutとVinで走行すると見做すことができ、旋回外側の中間駆動輪34L、36L(40L)が描く旋回半径は概ね図示のような大半径Routとなり、旋回内側の中間駆動輪34R、36R(40R)が描く旋回半径は概ね図示のような小半径Rinとなる。
【0041】
ここで、多軸車両20の代表点30を多軸車両20の車体の長さと幅の中央付近に設けた場合、この代表点30の走行速度V0と旋回半径R0と旋回のヨー角速度ωについて、次の関係式100が近似的に成立する。式100において、記号Hは、左右の中間駆動輪40L、40R間の距離を表し、この距離Hは概略的には車体の幅にほぼ相当する(以下、この距離Hを「車幅」という)。
【0042】
【数1】


ここで、代表点30は車体の中央付近に配置されているから、代表点30の旋回半径R0は、次式102で表される。
【0043】
【数2】


よって、次の関係式104が近似的に成立する。
【0044】
【数3】


この実施形態に係る多軸車両20では、左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rが夫々ディファレンシャルギアで連結され、それらのディファレンシャルギアの入力軸にトランスミッションの出力軸の回転速度が与えられる。この場合、多軸車両20が直進走行する時の走行速度Vdは下式106で与えられる。
【0045】
【数4】


上記の式104と式106から、V0=Vdであり、代表点30の走行速度V0は、トランスミッションの出力軸の回転速度から読み取ることができる。
【0046】
代表点30の走行速度(以下、「代表速度」という)V0が或る値である時、旋回外側の中間駆動輪34L、36Lの走行速度(以下、「外側中間駆動輪速度」という)Voutを代表速度V0より大きい或る値になるよう制御すれば、旋回内側の中間駆動輪34R、36Rの走行速度(以下、「内側中間駆動輪速度」という)Vinは、上記式2に従って自動的に、代表速度V0より低い或る値に決まる。或いは、旋回内側の中間駆動輪34R、36Rに制動力を加えて、内側中間駆動輪速度Vinを代表速度V0より低い値に制御すれば、自動的に、外側中間駆動輪速度Voutは、上記式104に従って自動的に、代表速度V0より高い値に制御される。
【0047】
このように旋回時に内側中間駆動輪速度Vinと外側中間駆動輪速度Voutを異なる値に制御することにより、式100と式102により導かれる次の式108により決まる旋回半径R0に近い半径で、多軸車両20が旋回する。
【0048】
【数5】


ところで、上述した内側の中間駆動輪34R、36Rに制動力を加える制御において、中間駆動輪34R、36Rに制動をかけすぎてその車輪速度Vinがその目標値より低下してロックしそうになった場合、ディファレンシャルギアの作用で、外側中間駆動輪速度Voutがその目標値を超過してしまい、適正な半径と角速度での旋回ができないことになる。この問題を解決するため、この実施形態に係る多軸車両20の操舵制御装置は、外側中間駆動輪速度Voutがその目標値を大きく超過してしまった場合(或は、内側中間駆動輪速度Vinが車輪ロックが生じそうなほどに低下した場合)には、外側の中間駆動輪34L、36Lに制動力を与えることで、ディファレンシャルギアから内輪側に加速トルクを与え、下がり過ぎた内側中間駆動輪速度Vinを上昇させて目標値へ戻すことができる。
【0049】
このように、この実施形態に係る多軸車両20の操舵制御装置は、内側の中間駆動輪34R、36Rと外側の中間駆動輪34L、36Lの夫々に独立して制動力を加えることにより、所望の旋回半径と角速度での旋回を可能にする。
【0050】
中間駆動輪速度Vin、Voutを検出するための速度センサの構成には、種々のバリエーションが採用できる。この実施形態に係る多軸車両20では、一例として、各中間駆動輪に取付けた磁性体の歯車の回転を、磁気回路等を用いた電磁ピックアップでパルス信号として取込み計数するという構成の磁気式の回転数センサを採用する。この磁気式の回転数センサは、光学的なロータリエンコーダを用いた光学式の回転数センサに比べた場合、堅牢であるという利点を持つが、反面、構造的に角度分解能を非常に高くすることが難しい。そのため、磁気式の回転数センサによると、車輪の速度が低下するほど、パルス信号の発生間隔が長くなり、十分な精度で速度を検出するために必要な数のパルス信号を計数する所要時間が長くなり、操舵制御装置の応答時間が長くなる。この問題を軽減するため、この実施形態に係る多軸車両20の操舵制御装置は、左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rの双方に夫々取付けられた速度検出装置を備え、そして、旋回時には、旋回方向に応じて(例えば、操舵輪の操舵角に基づいて)、左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rのうちから外側の中間駆動輪(つまり、より高速に回転する方の駆動輪)を選択し、その外側の中間駆動輪に設けられた速度検出装置からのパルス信号に基づいて計算される外側の中間駆動輪速度Voutを用いて、上述したような操舵制御を行う。これにより、低速運転時の制御応答性の低下を軽減することができる。
【0051】
更に、滑り易い等の路面状況下では、内側中間駆動輪に過剰な制動力をかけると内側中間駆動輪がロックしてしまう。そこで、この実施形態に係る多軸車両20の操舵制御装置は、内側中間駆動輪速度Vinを、内側中間駆動輪のロック状態を検出するために利用する。そして、中間駆動輪のロックが検出された場合には、操舵制御装置は、内側中間駆動輪の制動を一時的に中止すると共に、外側中間駆動輪に一時的に制動力を加えることで、ディファレンシャルギアからのトルクによって、内側中間駆動輪のロックを解除する。
【0052】
車輪のブレーキの構成には、種々のバリエーションが採用できる。この実施形態に係る多軸車両20では、一例として、乾式のエアブレーキを使用する。乾式のエアブレーキの場合、ブレーキ内部の摩擦係数がブレーキの発熱によって変化して制動力を線形に制御することが難しく、また、エア配管の圧力伝達に応答遅れが存在する。そのため、制動力そのものをフィードバック制御すると、制御が発散する虞がある。そこで、この実施形態に係る多軸車両20の操舵制御装置は、回転数センサからのフィードバックに基づいて、適当なタイミングでブレーキをON-OFF制御するための構成を備える。具体的には、エア圧を増圧するための電磁弁を励磁する時間Ton((つまり、ブレーキをONにする時間であり、以下、「ブレーキオン時間」という)と、励磁を行わない時間Toff(つまり、ブレーキをOFFにする時間であり、以下、「ブレーキオフ時間」という)との間のデューティ比S=Ton/(Ton+Toff)と、ON-OFF周期T=(Ton+Toff)とが、フィードバック制御により自動調整される。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係る多軸車両20及び操作制御装置について、より具体的に説明する。
【0054】
図2は、本発明の一実施形態に係る多軸車両20の車輪駆動機構の構成を示す平面図である。
【0055】
図2に示すように、エンジン(図示省略)により駆動されるトランスミッション50の出力軸52が分配ギア54に接続され、分配ギア54の2つの出力軸56、58が夫々第2軸24と第3軸26のディファレンシャルギア60、70に接続される。ここで、分配ギア54の構成には、ディファレンシャルギア或いは単なる等速分配ギアを用いることができるが、この実施形態では説明を簡単にするため、入力軸52と2つの出力軸56の回転数が等しい等速分配ギアを用いるものとする。
【0056】
分配ギア54の出力軸56は、第2軸24のディファレンシャルギア60に接続されてこれを駆動するだけでなく、第2軸24のディファレンシャルギア60を貫通して、第1軸駆動クラッチ64の入力軸62に接続され、第1軸駆動クラッチ64の出力軸66は、第1軸22のディファレンシャルギア68に接続される。同様に、分配ギア54の出力軸58は、第3軸26のディファレンシャルギア70に接続されるだけでなく、第3軸26のディファレンシャルギア70を貫通して、第4軸駆動クラッチ74の入力軸72に接続され、第4軸駆動クラッチ74の出力軸76は第4軸28のディファレンシャルギア78に接続される。
【0057】
従って、第2軸24と第3軸26は常に分配ギア54からの動力により駆動されるので、第2軸24と第3軸26に結合された4つの中間駆動輪34L、34R、36L、36Rは常に駆動輪である。これに対し、第1軸24に結合された車輪32L、32Rは、第1軸駆動クラッチ64が接続されているときは駆動輪であるが、第1軸駆動クラッチ64が切り離されているときには遊動輪である。同様に、第4軸28に結合された車輪38L、38Rも、第4軸駆動クラッチ74が接続されているときは駆動輪であるが、第4軸駆動クラッチ74が切り離されているときには遊動輪である。
【0058】
この実施形態に係る多軸車両20の操舵制御装置は、中間駆動輪34L、34R、36L、36Rを使って上記のように旋回運動を行っている間、第1軸駆動クラッチ64と第4軸駆動クラッチ74の双方を切り離して、図3に示すように、第1軸22と第4軸28の車輪32L、32R、38L、38Rの全てを遊動状態にする。遊動状態にあるこれらの車輪32L、32R、38L、38Rは、エンジンの回転数に拘束されず、路面から受ける力で自由に回転できるので、中間駆動輪34L、34R、36L、36Rによる旋回運動を妨げない。
【0059】
図4は、この実施形態に係る多軸車両20に搭載されたエアブレーキの配管システムのうち、本発明の説明に必要な部分だけを示す。
【0060】
図4に示すように、8つの車輪のブレーキシリンダ110L、R〜116L、Rは、1つのブレーキペダル118により操作されるブレーキバルブ120の出力である2系統のブレーキ配管140、150の何れかに接続されている。運転者がブレーキペダル118を踏めば、エアタンク(図示せず)から供給された元配管160の高圧空気が8つのブレーキシリンダ110L、R〜116L、Rの全てに供給されて、8車輪全てに制動力が加えられ、他方、運転者がブレーキペダル118から足を離せば、8つのブレーキシリンダ110L、R〜116L、R内の高圧空気がブレーキバルブ120を通じて大気へ放出されて(点線矢印参照)、8車輪全ての制動力が消失する。
【0061】
第2軸と第3軸の4つの中間駆動輪用の4つのブレーキシリンダ112L、R、114L、Rへの配管には、自動増圧制御弁122L、R、124L、R、自動増圧チェックバルブ142L、R、144L、R、手動増圧チェックバルブ152L、R、154L、R並びに減圧絞り162L、R、164L、Rが設けられている。上述したブレーキペダル118の操作に応答したエア供給とは独立して、自動増圧制御弁122L、R、124L、Rの開閉によっても、元配管160の高圧空気が中間駆動輪用の4つのブレーキシリンダ112L、R、114L、Rへ供給されるようになっている。即ち、4つの中間駆動輪に対応した自動増圧制御弁122L、R、124L、Rを個別に励磁することにより、ブレーキシリンダ112L、R、114L、Rに個別に高圧空気を供給して、4つの中間駆動輪に個別に制動力を加えることができる。
【0062】
以下、4つの中間駆動輪中の第2軸右側車輪34R用のブレーキ系統を例にとり、図5〜図8を用いて、自動増圧制御弁の働きを説明する。
【0063】
図5と図6は、ブレーキペダル118が踏まれていないときに自動増圧制御弁122Rを開閉した場合の動作を示す。
【0064】
ブレーキペダル118が踏まれていないときに、自動増圧制御弁122Rが励磁されて開くと、図5に示すように、元配管160からの高圧空気が自動増圧制御弁122Rと自動増圧チェックバルブ142Rを通ってブレーキシリンダ112Rに流入する(矢印170)と共に、その一部が減圧絞り162Rとブレーキバルブ120を通って大気に放出される(矢印172)。自動増圧制御弁122Rの配管抵抗は減圧絞りに比べて十分低いので、自動増圧制御弁122Rを励磁し続ければ、ブレーキシリンダ112Rにはエアタンクの高圧空気とほぼ同じ圧力を加えることができる。その後、自動増圧制御弁122Rが遮断されると、図6に示すように、ブレーキシリンダ112R中の高圧空気が減圧絞り162Rとブレーキバルブ120を通って大気に放出される(矢印172)。
【0065】
図7は、自動増圧制御弁の励磁に伴うブレーキシリンダ内の圧力変化と制動力の時間的な関係を示したものである。
【0066】
図7に示すように、時刻t0で自動増圧弁の励磁がオンされると、配管中の空気の伝播遅れ時間(例えば、約20〜30ミリ秒)後に、ブレーキシリンダ圧力が上昇し始める(時刻t1)。ブレーキシリンダ圧力が所定のオフセット圧よりも高くなると、ブレーキ内部でバネを開放しようとする内蔵バネの力に打ち勝ってブレーキが閉まり、制動力が発生し始める(時刻t2)。
【0067】
その後、時刻t3で自動増圧弁の励磁がオフされると、配管中の空気の伝播遅れ時間後、ブレーキシリンダ圧力が低下し始める(時刻t4)。これは、ブレーキシリンダ中の高圧空気が減圧絞りとブレーキバルブを通って大気に放出されるために圧力が低下するものである。ブレーキシリンダ中の圧力がオフセット圧を下回ったとき(時刻t5)、ブレーキ内部の内蔵バネの力に負けてブレーキが開放され、制動力が消失する。
【0068】
図8は、自動増圧制御弁の励磁のオンとオフを交互に繰り返した場合の制動力の推移を示したものである。
【0069】
図8において、異なる長さのオン時間Ton1とTon2の時の制動力平均値F1とF3とを比較すれば分かるように、オン時間Tonを延ばせば制動力の平均値は上昇し、制動力の最大値に近づく。また、オン時間Ton1とオフ時間Toff1の時の制動力平均値F1とF2とを比較すれば分かるように、オフ時間Toff1を延ばせは制動力の平均値は減少し、ゼロに近づく。
【0070】
このように、励磁電流のパルス幅としてのオン時間Tonとオフ時間Toffとを調整することにより単位時間当りの制動力の平均値を制御することができる。即ち、自動増圧制御弁の励磁タイミングの調節によって、単位時間当りの制動力の平均値を制御することができる。
【0071】
次に、以上のような構成の車輪駆動機構を備えた多軸車両20に搭載された操舵制御装置について、詳細に説明する。
【0072】
図9は、この多軸車両20に搭載された操舵制御装置180の、本発明の原理に従う操舵制御に直接関わる部分の構成を示す。
【0073】
図9に示すように、操舵制御装置180は、例えばプログラムされたマイクロコンピュータを用いた電子制御ユニット(以下、「ECU」という)192を備える。ECU192は、4つの中間駆動輪34L、R、36L、Rに夫々設けられた回転数センサ182L、R、184L、Rから、4つの中間駆動輪34L、R、36L、Rの速度、即ち、第2軸左車輪速度V2L、第2軸右車輪速度V2R、第3軸左車輪速度V3L、第3軸右車輪速度V3Rを夫々表す信号を入力する。また、ECU192は、多軸車両20の運転席内の操舵ハンドル(図示せず)又は4つの操舵輪32L、R、34L、R等に設けられた操舵角センサ186から、操舵輪32L、R、34L、Rの操舵角度ψを表す信号を入力する。また、ECU192は、トランスミッションの出力軸52に設けられた回転数センサ188から、トランスミッション出力軸回転数N0を表す信号を入力する。
【0074】
更に、ECU192には、運転席内に設けられた制御選択スイッチ190が接続される。制御選択スイッチ190は、運転者により操作されて、本発明の原理に従う操舵制御をオンにするかオフにするかの選択信号を、ECU192に与える。ECU192は、制御選択スイッチ190から制御オン指令を受けた場合には、本発明の原理に従って中間駆動輪を使うことにより、操舵輪の舵きりだけに従う旋回半径より小さい旋回半径で旋回を行う運転モードを選択する(以下、この運転モードを「機動モード」という)が、他方、制御オフ指令を受けた場合には、旋回半径を小さくする制御を実行せず、操舵輪の舵きりに従った旋回半径で旋回する運転モードを選択する(以下、この運転モードを「通常モード」という)。
【0075】
ECU192は、4つの中間駆動輪34L、R、36L、Rに対する制動力を個別にオンオフ制御するための4つの自動増圧制御弁、即ち、第2軸左自動増圧制御弁122L、第2軸右自動増圧制御弁122R、第3軸左自動増圧制御弁124L並びに第3軸右自動増圧制御弁124Rへ、個別に励磁信号を出力する。ECU192は、また、第1軸駆動クラッチ64、及び第4軸駆動クラッチ74に対して、それを接続したり切り離したりするためのクラッチ制御信号を出力する。
【0076】
ECU192は、上述した各種の入力信号に基づいて、旋回運動時における中間駆動輪34L、R、36L、Rの夫々の最適速度を計算し、そして、中間駆動輪34L、R、36L、Rの実際の速度が夫々の最適速度になるように、上記励磁信号を用いて、中間駆動輪34L、R、36L、Rへの制動を制御する。特に機動モードが選択されている場合、ECU192は、旋回時には、操舵輪32L、R、34L、Rの舵きりだけで旋回するときよりも小さい旋回半径で旋回するように、中間駆動輪34L、R、36L、Rの速度を制御すると共に、その旋回に支障を与えないよう、第1、4軸駆動クラッチ64、74を切り離して第1軸と第4軸の車輪32L、R、38L、Rを遊動状態にする。
【0077】
上記構成によれば、第2軸24に設けられた1対の車輪34L、34Rと、第3軸26に設けられた1対の車輪36L、36Rとにおいて、旋回モーメントを発生させることができるので、土砂等の摩擦係数の小さな路面、即ち、低μ路面においては、多軸車両20の旋回半径を低減する効果が期待できる。しかし、コンクリート路面のように摩擦係数の大きな路面、即ち、高μ路面においては、操舵輪でも駆動輪でもない第4軸28に設けられた1対の車輪38L、38Rが、多軸車両20の進行方向(即ち、旋回方向)に対して大きな角度をなしているが故に、これらの車輪38L、38Rが、スリップすることも自転することもできずに、上記高μ路面との間で大きな摩擦力を発生させる。しかも、第4軸28は、車体中心(多軸車両20の中心)までの距離が大きいために、上記大きな摩擦力が、車体(多軸車両20)の旋回を妨げる大きなモーメントを発生させることになる。よって、上記構成の多軸車両20においては、路面の摩擦係数μの大きさにより、旋回半径が大きくばらついてしまうという虞があった。
【0078】
そこで、上述したように、路面の摩擦係数μの大きさによって多軸車両20の旋回半径に大きなばらつきが生じないようにするための手段として、第4軸28に設けられた1対の車輪38L、38Rに作用する横力が小さくなるよう、該1対の車輪38L、38Rを転舵する方法が想到される。即ち、多軸車両20の旋回時における上記1対の車輪38L、38Rの横力、或いは所望の旋回半径に応じて、第4軸28における操舵角度を自動調整する方法である。この方法は、基本的には上記1対の車輪38L、38Rの横力により、上記1対の車輪38L、38Rに掛かる応力を計測すると共に、計測した応力が最小になるよう、第4軸28における操舵角度を自動調整するものである。
【0079】
上記操舵角度の自動調整方法を簡単化したものとしては、所望の旋回半径に応じて、第4軸28における操舵角度を自動調整する方法、正確な操舵角度ではなく、大まかな操舵角度で第4軸28を操舵し、車輪38L、38Rの自転により、旋回モーメントへの妨げになる横力を充分に減少させる方法がある。また、上記操舵角度の自動調整方法を簡単化したものとしては、所謂飛び飛びの操舵角度値に基づいて、大まかな操舵角度で第4軸28を操舵し、車輪38L、38Rの自転により、旋回モーメントへの妨げになる横力を充分に減少させる方法がある。更に、1つの操舵角度値に基づいて、第4軸28を操舵する方法がある。この方法を採用した場合、例えば隘路走行のように、特定の大きな操舵角を必要とする場面では、操舵角を、目標となる小さな旋回半径に対応する大きな操舵角に切り替えれば、旋回モーメントへの妨げになる横力を充分に減少させることが可能である。
【0080】
第4軸28における操舵角度については、上記1対の車輪38L、38Rが自転することが可能なだけの角度が確保できればよいため、第2軸24に設けられた1対の車輪34L、34R間、第3軸26に設けられた1対の車輪36L、36R間に速度差を与えない場合に比べて小さな操舵角で済ませることができる。
【0081】
図10は、第4軸28に設けられた1対の車輪38L、38Rが転舵可能な構成の多軸車両20が、右旋回するときの状態を示す説明図である。
【0082】
既述のように、多軸車両20の旋回に際して、第4軸28に設けられた1対の車輪38L、38Rには、夫々車輪38L、38Rの向きを多軸車両20の進行方向に変えようとする外力が作用する。そのため、車輪38L、38Rの向きが固定されていると、上記の外力が車輪38L、38Rに横力として作用する。その結果、例えばコンクリート路面のような摩擦係数μの大きな路面上では、上記横力が大きくなり、それが多軸車両20の旋回を妨げる大きな力のモーメントとして作用し、それによって、多軸車両20は、期待した小さな旋回半径の軌跡ではなく、やや直進状態に近い大きな旋回半径の軌跡を描くことになる。
【0083】
そこで、図10では、第4軸28に設けられた車輪38L、38Rを図示のように転舵可能な構造とすることにより、多軸車両20が旋回時に受ける外力、或いは所望の旋回半径に応じて自動的に転舵するようにして、多軸車両20の旋回半径を、路面の摩擦係数μの大きさ如何に拘わらず、常に小さくすることを試みた。なお、図10において、図1で示した物と同一物には同一符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0084】
図11は、本発明の一実施形態に係る多軸車両20が備える第4軸28の操舵機構の構成、及びその動作の説明図である。
【0085】
図11で示す(第4軸28の)操舵機構は、左右の車輪38L、38Rの夫々に設けられているが、図11では、図示と説明の都合上、一方の側(例えば左側)の車輪(38L)の操舵機構のみを記載し、他方の側(例えば右側)の車輪(38R)の操舵機構については記載を省略する。
【0086】
図11(a)に示すように、上記操舵機構は、操舵シリンダ75と、ピストン棒77と、操舵アーム79と、を備える。操舵シリンダ75としては、例えば空気圧シリンダ、又は油圧シリンダ等の流体圧を利用したアクチュエータ、或いは電動モータ等の電気力を利用したアクチュエータ等が採用される。操舵シリンダ75の駆動は、後述する操舵角制御装置(図15において符号212で示す)により制御される。操舵シリンダ75の一端側は、図示のように、多軸車両20本体の固定点である回転中心81を介して略水平方向に揺動(回転)自在に多軸車両20本体に取付けられている。ピストン棒77は、操舵シリンダ75の他端側において所謂レシプロ動作を行うもので、その一端側が操舵シリンダ75内に没入しており、その他端側が接続点83を介して操舵アーム79に取付けられている。操舵アーム79は、その一端側が接続点83を介して略水平方向に回動自在にピストン棒77に取付けられていると共に、その他端側が多軸車両20本体の固定点である転舵中心85を介して多軸車両20本体に取付固定されている。
【0087】
図11(b)は、上記操舵機構において、車輪(38L)を右方向へ転舵させようとするときの、操舵アーム79、及びピストン棒77の動作を示す説明図である。図11(b)に示すように、操舵シリンダ75の駆動によってピストン棒77が矢印方向、即ち、操舵シリンダ75から突出する方向へ動作することで、操舵アーム79が接続点83を中心として時計方向に回動し、それにより、車輪(38L)が右方向へ転舵される。
【0088】
図11(c)は、上記操舵機構において、車輪(38L)を左方向へ転舵させようとするときの、操舵アーム79、及びピストン棒77の動作を示す説明図である。図11(c)に示すように、操舵シリンダ75の駆動によってピストン棒77が矢印方向、即ち、操舵シリンダ75内部に没入する方向へ動作することで、操舵アーム79が接続点83を中心として反時計方向に回動し、それにより、車輪(38L)が左右方向へ転舵される。
【0089】
換言すれば、多軸車両20に夫々の位置が固定された転舵中心85、及び回転中心81の2点を両端にして、長さが一定の操舵アーム79と、伸縮自在な操舵シリンダ75(ピストン棒77)とが、接続点83を介して連結され、リンク構造を呈している(図12参照)。
【0090】
上述した内容から明らかなように、図12で示した(第4軸28の)操舵機構のリンク構造では、操舵シリンダ75を駆動して操舵シリンダ75(ピストン棒77)を伸縮動作させることにより、操舵アーム79を転舵中心85廻りに旋回させることができる。操舵シリンダ75(ピストン棒77)が一定の長さを保持している状態、即ち、上記リンク構造が固定された状態で多軸車両20が旋回しようとすると、路面から車輪(38L)に横力が掛かって車輪(38L)の操舵角度が変わりそうになるが、上記固定されたリンク構造が、車輪(38L)の向きの変化を抑止するよう作用する。
【0091】
多軸車両20の旋回中に、車輪(38L)に作用する、車輪(38L)の方向を変えようとする外力は、例えば操舵アーム79における左右方向の曲げ歪を測定するためのセンサや、操舵シリンダ75(ピストン棒77)に作用する伸縮方向の力を測定するための力センサ等を、夫々適宜の部位に取付けることによって容易に検知することができる。車輪(38L)の操舵角度は、図12で示した(第4軸28の)操舵機構のリンク構造の状態に応じて定まる。よって、転舵中心85廻りの操舵アーム79の回転角度、接続点83廻りに、操舵アーム79と操舵シリンダ75(ピストン棒77)とが成す角度、回転中心81廻りの操舵シリンダ75の回転角度、及び操舵シリンダ75(ピストン棒77)の伸縮長さの何れか1つの物理量を精密に計測するセンサを用いることにより、車輪(38L)の操舵角度を検知することができる。
【0092】
仮に、採用されるセンサの分解能が粗いか、若しくは検出精度が悪い場合には、車輪(38L)の操舵角度を精密に検出することは困難であるが、車輪(38L)の操舵角度を大まかな精度で(或いは、飛び飛びの値で)、検出することが可能である。
【0093】
図13は、多軸車両20が直進方向から左/右に1段階分の角度だけ操舵されたときの操舵状態を検知するのに適したセンサの一例を示す説明図である。
【0094】
上記センサは、図13に示すように、操舵アーム79の転舵中心85側の端部に取付けられた鉄片87と、何れも電磁式の近接スイッチである直進スイッチ89、左折スイッチ91、及び右折スイッチ93と、で構成される。直進スイッチ89は、車輪(38L)が直進しているときの鉄片87の位置に対向する多軸車両20本体の位置に、左折スイッチ91は、車輪(38L)が直進方向から1段階分の角度だけ左折したときの鉄片87の位置に対向する多軸車両20本体の位置に、夫々取付けられる。また、右折スイッチ93は、車輪(38L)が直進方向から1段階分の角度だけ右折したときの鉄片87の位置に対向する多軸車両20本体の位置に取付けられる。
【0095】
上記構成において、例えば、直進していた多軸車両20が1段階分の角度だけ左折すると、それまで接点が閉じていて所定の電気信号を出力していた直進スイッチ89が、接点が開くことによって上記電気信号の出力を止め、その代わりにそれまで開いていた左折スイッチ91の接点が閉じることによって左折スイッチ91から所定の電気信号が出力されるので、多軸車両20が1段階分の角度だけ左折したことが検知される。直進していた多軸車両20が1段階分の角度だけ右折した場合や、1段階分の角度だけ右折していた多軸車両20が直進した場合についても、上記と同様である。
【0096】
なお、上記直進スイッチ89、左折スイッチ91、及び右折スイッチ93としては、電磁式の近接スイッチに代えて、機械式のリミットスイッチや、光学式の遮光検出スイッチ等を採用することも可能である。また、上述した4種類の物理量の何れか1つを精密に計測するセンサを用いることによっても、多軸車両20の1段階分の角度だけの左折/右折の検知に充分に対応可能である。
【0097】
図14は、第4軸操舵角度の算出原理、即ち、後述する(111)式に係わる説明図である。
【0098】
図14において、多軸車両20の旋回中心42は、代表点30を通る線分であって多軸車両20の長手方向に沿う中心線に直交する線分と、旋回しようとする車輪38L、38Rの夫々の車軸の延長線との交点に位置付けられる。これは、旋回しようとする車輪38L、38Rに作用する横力の大きさを、最小にするのに必要なためである。図14に示した例では、多軸車両20が右方向に旋回しようとしているので、多軸車両20が直進しているときの第4軸28と、右方向に旋回しようとしているときの旋回中心42と車輪38L、38Rの夫々の車軸とを結ぶ線分とのなす角θ、θとの間には、θ>θの関係が成立する。
【0099】
次に、代表点30と旋回中心42との間の距離が、代表点30の旋回半径の目標値であり、Rで示される。次に、多軸車両20の同一軸における左右の車輪(例えば38L、38R)の直径方向に沿う中心線間の距離をWで表すと、旋回中心42から多軸車両20の長手方向に沿って平行に延びる線分と多軸車両20が直進しているときの第4軸28の延長線との交点から(第4軸の)右車輪(38R)までの距離は、R−W/2で表される。他方、旋回中心42から多軸車両20の長手方向に沿って平行に延びる線分と多軸車両20が直進しているときの第4軸28の延長線との交点から(第4軸の)左車輪(38L)までの距離は、R+W/2で表される。更に、代表点30を通る上記線分と第4軸28との間の距離をAとすれば、θがtan−1(A/(R−W/2))によって、θがtan−1(A/(R+W/2))によって、夫々求めることができる(以下に、(111)式で示す)。
【0100】
図15は、ECU192に組み込まれた中間駆動輪の最適速度を演算する部分の機能的な構成を示す。図15に示す演算は、ECU192内でマイクロプロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより行われてもよいし、或は、ECU192内に組み込まれる専用ハードウェアロジック回路により行われてもよい。
【0101】
図15において、左最適速度VLSは、左側の2つの中間駆動輪34L、36Lに共通に適用される速度目標値としての最適車輪速度を示す。同様に、右最適速度VRSは、右側の2つの中間駆動輪34R、36Rに共通に適用される速度目標値としての最適車輪速度を示す。
【0102】
図15に示すように、運転者がステアリングハンドルを操作することにより生じた操舵角度ψは、操舵輪32L、R、34L、Rのアッカーマンリンクの構造に基づく変換関数(例えば、変換テーブル)を有する変換計算部200により、旋回半径Rに変換される。変換された旋回半径Rは、操舵輪32L、R、34L、Rの舵きりだけで旋回するときの旋回半径に相当し、以下、これを「通常旋回半径」という。乗算部202により、通常旋回半径Rに所定の縮小係数dが乗算されて、多軸車両20の代表点30の旋回半径の目標値R0Sが算出される。ここで、縮小係数dは、機動モードが選択されているときには1.0より小さい値、例えば0.8であり、通常モードが選択されているときには、1.0である。従って、代表点旋回半径目標値R0Sは、機動モードのときには、通常旋回半径Rよりも小さい半径に設定され、通常モードのときには、通常旋回半径Rと同じ半径に設定される。
【0103】
また、係数部204において、トランスミッション出力軸回転数Nに所定の係数kが乗算されて、代表点30の速度Vが算出される。ここで、係数kの値は、車両が直進しているときのトランスミッション出力軸回転数Nと代表点30の速度V(車速計で測定される速度)との間の比k=V/Nとして、予め求めておくことができる。
【0104】
最適速度計算部206にて、代表点旋回半径目標値R0S、代表点速度V、及び車幅Hから、下記の近似演算式110によって、左最適速度VLSと右最適速度VRSとが算出される。ここで、左最適速度VLSは、左側の2つの中間駆動輪34L、36Lに共通に適用される速度目標値である。同様に、右最適速度は、右側の2つの中間駆動輪34R、36Rに共通に適用される速度目標値である。下式110は、上述した式108から導かれるものであり、その中で、代表点旋回半径Rは、旋回中心が車体の右側にある(VLS=Vout、VRS=Vin)ときは正の値をとり、左側にある(VLS=Vin、VRS=Vout)ときには負の値をとる。
【0105】
【数6】


ECU192は、以上のようにして左右の最適速度VLS、VRSを決定し、そして、左右の中間駆動輪速度VL、VRが左右の最適速度VLS、VRSに夫々なるように、左右の中間駆動輪の制動を制御する。
【0106】
また、乗算部202において算出された代表点30の旋回半径の目標値R0Sは、最適速度計算部206と共に、第4軸操舵角目標値演算部208にも出力される。第4軸操舵角目標値演算部208において、代表点30と第4軸28との間の距離Aと、第4軸28における左右の車輪38L、38R間の距離Wと、代表点30の旋回半径の目標値R0Sとから、下記の算式(111)により、第4軸右車輪の操舵角目標値θと、第4軸左車輪の操舵角θとが算出される。上記算式(111)の根拠については、既に説明した。
【0107】
【数7】


【0108】
図16は、第4軸操舵角の制御系(制御ループ)の構成を示すブロック図である。
【0109】
図16に示す制御ループは、図15で示した第4軸操舵角目標値演算部208から出力される第4軸右車輪の操舵角目標値θ、第4軸左車輪の操舵角θを受けて、例えば図11で示した構成を有する(左右の車輪38L、38R毎に設けられている)第4軸の操舵機構を制御する。上記制御ループは、加算器210と、操舵角制御装置212と、第4軸の操舵機構214と、操舵角センサ216と、で構成される。ここで、操舵角センサ216には、例えば既述の転舵中心85廻りの操舵アーム79の回転角度を精密に計測可能なセンサが採用されている。図16で示した制御ループは、実際には左右の車輪(38L、38R)毎に1つずつ設けられているが、図16では、図示と説明の都合上、1つの制御ループ(第4軸右車輪38Rの操舵角制御ループ)のみ記載する。
【0110】
図16において、第4軸操舵角目標値演算部208から加算器210を通じて第4軸右車輪38Rの操舵角目標値θが出力されると、操舵角制御装置212は、該操舵角目標値θに基づき、第4軸の(右車輪38R側の)操舵機構214に、駆動指令信号を出力する。この駆動指令信号を受けると、操舵機構214は、該駆動指令信号に基づき、(第4軸の)右車輪38Rを図11(b)で示したように右旋回させるべく、操舵アーム79を図11(b)で示した位置に転舵中心85を回動軸として回動させる。操舵アーム79の該回動動作は、操舵角センサ216によって検知され、操舵角センサ216から所定の電気信号が操舵角検出信号として加算器210にフィードバックされ、加算器210では、操舵角目標値θと上記操舵角検出信号との間の差分が演算され、該差分が操舵角制御装置212に出力される。
【0111】
図16に示した制御ループを用いる操舵角制御では、操舵角センサ216の操舵角検出精度や分解能が悪ければ、正確な操舵角で第4軸28に設けられた車輪(38L、38R)を転舵することはできない。しかし、そのような場合には、操舵角制御装置212における制御ゲインを小さくすることによって、上記車輪(38L、38R)の操舵角度は、上記車輪(38L、38R)に加わる外力が上記車輪(38L、38R)への操舵力として作用し、その結果、上記車輪(38L、38R)に加わる横力が小さくなる操舵角度に自然に収束する。従って、図16に示した制御ループにおける上記車輪(38L、38R)の操舵角の制御性能が悪くて(上記操舵角目標値θと上記操舵角検出信号との間の)制御偏差が残っていても、上記車輪(38L、38R)に作用する力により望ましい操舵角になる。よって、操舵角センサ216の操舵角検出精度や分解能が悪くて上記制御偏差が大きくなっても、さほど不具合は生じない。
【0112】
また、上記車輪(38L、38R)を操舵するのに必要な操舵角度についても、連続的な値ではなく、断続的な(飛び飛びの)値を採用することにしても差支えない。
【0113】
また、多軸車両20において、予め特定の(1段階だけの)左折角度、及び右折角度を設定しておき、厳密な操舵角度制御は行わずに車輪(38L、38R)自身に作用する力によって望ましい操舵角度になる効果を利用することも可能である。
【0114】
なお、多軸車両28を、旋回している状態から直進する状態に復帰させる場合には、図11で示した操舵シリンダ75を制御して、上記車輪(38L、38R)を直進状態にすると共に、多軸車両20の走行中に、上記車輪(38L、38R)の操舵軸が揺動しないよう、機械的にロックすればよい。
【0115】
図17は、操舵制御装置180のECU192で実行される、左右の中間駆動輪の制動の制御のための処理の流れを示す。
【0116】
図17において、ステップ300〜304は、既に図15を参照して説明した、左右の最適速度VLS、VRSを決定する処理である。ステップ306では、多軸車両20が行うべき運動がほぼ直進か、左旋回か、右旋回かが判断され、その結果、左旋回又は右旋回の場合にはステップ308又は310で制動制御が行われる。ステップ306、308及び310は、例えば次の(1)〜(3)に述べるようにして行うことができる。
(1) VLS≒VRSの場合
算出された左車輪速度VLSと右最適速度VRS とが比較される。両速度がほぼ等しければ、概ね直進すべきと判断される。この場合には、中間駆動輪34L、R、36L、Rの自動的な制動は行わない。
(2) VLS>>VRSの場合
この場合には、右旋回すべきと判断される。この場合、左側(つまり、旋回外側)の中間駆動輪34L、36Lの平均速度VLが左最適速度(目標値)VLSを下回ったかどうかがチェックされ、下回ったならば、右側(つまり、旋回内側)の自動増圧制御弁122R、124Rを励磁して右側中間駆動輪34R、36Rを制動する。既に説明したように、右側中間駆動輪34R、36Rを制動すれば、ディファレンシャルギアの作用により、自動的に左側中間駆動輪34L、36Lが加速されて左最適速度VLSに近づく。
(3) VLS<<VRSの場合
この場合には、左旋回すべきと判断される。この場合、右側(つまり、旋回外側)の中間駆動輪34R、36Rの平均速度VRが右最適速度(目標値)VRSを下回ったかどうかがチェックされ、下回ったならば、左側(つまり、旋回内側)の自動増圧制御弁122L、124Lを励磁して左側中間駆動輪34L、36Lを制動する。既に説明したように、左側中間駆動輪34L、36Lを制動すれば、ディファレンシャルギアの作用により、自動的に右側中間駆動輪34R、36Rが加速されて右最適速度VRSに近づく。
【0117】
図18は、右旋回を例にとり、右側(旋回内側)自動増圧制御弁122R、124Rの励磁に伴う車輪速度の変化例を示す。
【0118】
図18に示す例において、時刻t1以前は制御選択スイッチ190がオフになっており、通常モードが選択されている。このときは、左側中間駆動輪34L、36L及び右側中間駆動輪34R、36Rは、夫々、そのときの代表点速度V0と、操舵角度ψに従うアッカーマンリンクの作用で決まる走行速度で夫々回転する。
【0119】
時刻t1において制御選択スイッチ190がオンになって、機動モードが選択される。機動モードにおいて、VLS>>VRSであれば、右旋回を行うべきと判断され、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左最適速度VLSと比較される。図示の例では、時刻t1において、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左最適速度VLSを下回っているので、内側(右側)の自動増圧制御弁122R、124Rの励磁がオンにされる。それにより、内側(右側)の中間駆動輪速度VRが低下し、同時に、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが上昇する。
【0120】
励磁を開始してから時間がTon1だけ経過した時刻t2のとき、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左目標速度VLSに到達すると、その瞬間に内側(右側)の自動増圧制御弁122R、124Rの励磁がオフにされる。しかし、エアブレーキの動作遅れのため、すぐには内側(右側)の中間駆動輪34R、36Rの制動が解除されず、外側(左側)の中間駆動輪速度VLは目標速度VLSを若干超過することになる。その後、内側(右側)の中間駆動輪34R、36Rの制動が解除されると、トルクが減少した外側(左側)の中間駆動輪速度VLは緩やかに低下し始める。時刻tのとき再び外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左目標速度VLSを下回ると、上記と同様にして、それが左目標速度VLSに戻るまで再び内側の内側(右側)の自動増圧制御弁122R、124Rの励磁がオンにされる。
【0121】
このようにして、機動モードにおける旋回時には、より高速である外側中間駆動輪の速度が最適速度であるか否かがチェックされ、その結果に応じて、内側中間駆動輪を制動する合計時間が増減され、その結果、内側と外側の中間駆動輪の速度が、夫々の最適速度の近傍に制御される。
【0122】
ところで、路面の摩擦係数μが低く、制動力を与えた車輪がロックする場合には、操舵制御装置180のECU192は、次のようなロック解除処理を行う。
【0123】
図19は、操舵制御装置180のECU192で実行される、ロック解除のための処理の流れを示す。
【0124】
図19に示すように、ステップ320では、既に説明したような方法で、内側と外側の中間駆動輪の速度VinとVoutを、夫々の最適速度VRSとVLSに制御するよう(旋回方向により、VRSとVLSの何れが内側と外側に対応するかは異なる)、内側の中間駆動輪への制動が制御される。それと共に、ステップ322で、制動が掛けられた内側の中間駆動輪がロックしたかどうかがチェックされる。
【0125】
内側の中間駆動輪がロックしたことが検出された場合、ステップ324で、内側中間駆動輪を制動した時間である励磁オン時間Tonが、電磁弁や配管の応答時間で決まる最小時間Tminよりも長かったか短かったかがチェックされる。その結果、励磁オン時間Tonが最小時間Tminよりも短かった場合には、内側の路面の摩擦係数μが極めて低いと推定されるため、ロックした内側中間駆動輪をそのままスリップさせたままで、旋回運動を続ける。
【0126】
一方、ステップ324の判断で、励磁オン時間Tonが最小時間Tminよりも長かった場合には、励磁オン時間Ton(制動時間)を短縮すればロックを防止できる可能性がある。従って、この場合には、ステップ326で、内側中間駆動輪の制動を解除すると共に、外側中間駆動輪に短い時間だけ制動を与え、それにより、ディファレンシャルギアを通じてエンジントルクを内側中間駆動輪に供給することで内側中間駆動輪を強制的に駆動し、内側中間駆動輪の回転を加速してロックを解除する。更に、ステップ328で、次回のロックを防止するため、内側中間駆動輪の制動時間Tonを減らす目的で、外側中間駆動輪の目標速度VoutS(これは当初は、右旋回の場合は左最適速度VLSに、左旋回の場合は右最適速度VRSに等しく設定される)を、その現在値より所定の刻み幅Δvだけより低い値に変更する。
【0127】
他方、ステップ322で、内側中間駆動輪のロックが検出されなかった場合には、ステップ330で、外側中間駆動輪の目標速度VoutSが、右旋回の場合は左最適速度VLSに、左旋回の場合は右最適速度VRSに、等しく設定されているか又は低く設定されているかがチェックされる。その結果、等しく設定されているならば、制御はステップ320に戻る。他方、低く設定されている場合(即ち、上述のステップ328により低められていた場合)には、最早その低い値にしておく必要がないので、外側中間駆動輪の目標速度VoutSを刻み幅Δvだけ高い値に戻す。
【0128】
以上のようにして、内側中間駆動輪のロックが発生したら、外側中間駆動輪に制動が加えられて内側中間駆動輪のロックが解消されると共に、内側中間駆動輪の以後の制動の継続時間が減少させられて、次回のロックが予防される。
【0129】
以上説明した、この実施形態の操舵制御装置180における外側中間駆動輪速度の制御方法と内側中間駆動輪速度の緩和方法の要点は、次の通りである。
【0130】
(1) 外側中間駆動輪速度の制御方法
外輪側の車輪速度を観測し、
A) 外側中間駆動輪速度が目標速度よりも低下したら、内側中間駆動輪を制動する時間の合計を増加させ、
B) 外側中間駆動輪速度が目標速度よりも増加したら、内側中間駆動輪を制動する時間の合計を減少させ、また、
C) 外側中間駆動輪速度が目標速度の上下の許容範囲にあれば、内側中間駆動輪を制動する時間の合計を今までどおりで維持する。
【0131】
(1) 内側中間駆動輪速度のロックの緩和方法
A) 内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonには基準値があり、これを初期値とし、
B) 内側中間駆動輪にロックが発生したら、内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonを短縮し、また、
C) 内側中間駆動輪にロックが発生しなければ、内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonを、上記基準値を上限として増加させる。
【0132】
以上のような制御を行うに当り、車輪の歪、近似式の影響或いは路面摩擦係数μの複雑な変化によるゲインの変化や、駆動軸のねじれやバックラッシュによる応答の遅れ等が発生するため、システムの制御誤差を抑制しつつ動作を安定化させるためには、積分動作等を含んだ見通しのよい制御則を組み込んだ制御器が必要である。その観点から、この実施形態における操舵制御装置180のECU192に組み込まれた制御システムは、パルス幅変調の方法による自動増圧制御弁の周期的なON-OFF制御を行う。そして、制御システムは、旋回半径の制御と、内輪ロックの抑制制御とを、独立した別の変数を用いて行う。
【0133】
即ち、この制御システムは、内側中間駆動輪を制動するための自動増圧制御弁を周期的にON-OFF制御しつつ、そのON-OFFの周期T(=Ton+Toff)の長さは変更せずに、1周期内でのデューティ比S(=Ton/T)を操作することにより、単位時間当りに内側中間駆動輪を制動する時間の合計を増減させ、それにより、外側中間駆動輪速度を制御する。また、この制御システムは、デューティ比Sは変更せずに、ON-OFF周期Tの長さを操作することにより、内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonが増減され、それにより、内側中間駆動輪のロックが緩和される。
【0134】
図20は、この制御システムの構成を示す。
【0135】
図20に示すように、この制御システム340では、既に説明したようにして算出された外側中間駆動輪の最適速度VoutS(右旋回の場合は左最適速度VLS、左旋回の場合は右最適速度VRS)を制御目標値とし、外側中間駆動輪速度Voutをフィードバック信号として速度偏差eが算出される。内部に積分動作の機能を有する制御器(例えばPIDコントローラ)342にて、速度偏差eに基づいて、内側中間駆動輪の制動用の自動増圧制御弁をON-OFF駆動するデューティ比Sを算出する。ここで、速度偏差eの積分値が大きくなると、デューティ比Sinも大きな値に算出され、速度偏差eの積分値が小さくなればデューティ比Sinも小さな値に算出される。
【0136】
また、この動作と並行して、ロック検出器344にて、内側中間駆動輪速度Vinが観測され、その値がゼロであった場合には内側中間駆動輪がロックしたものと判断され、内側中間駆動輪制動用の自動増圧制御弁のON-OFF駆動の周期Tが減少される(励磁オン時間Tonと励磁オフ時間Toffの比率を維持しながら、例えば夫々に1以下の係数を掛けてそれらの時間を減少させる)。
【0137】
演算器346にて、制御器342からのデューティ比Sと、ロック検出器344からの周期Tに基づいて、次の周期における励磁オン時間Ton(制動時間)と励磁オフ時間Toff(非制動時間)を算出し、それらの時間Ton、Toffに従って内側中間駆動輪制動用の自動増圧制御弁をON-OFF駆動する。
【0138】
ところで、図20には図示していないが、内側中間駆動輪のロックが生じた場合には、図19を参照して説明したように、外側中間駆動輪制動用の自動増圧制御弁を短時間のパルスで駆動して外側中間駆動輪を制動する。これにより内側中間駆動輪に強制的に駆動トルクを流入させて内側中間駆動輪のロックを解除することができる。但し、図19で説明したように、励磁オン時間Tonの値が電磁弁や配管の応答で決まる最小時間Tminよりも短かくなった場合には、内側中間駆動輪の路面の摩擦係数が極めて低いと見做し、ロックした内側中間駆動輪をそのままスリップさせた状態で旋回運動を行う。即ち、内側中間駆動輪の路面の摩擦係数μが極めて低いと、無理に内側中間駆動輪に駆動トルクを与えると空転する可能性があるため、外側中間駆動輪に短時間だけ制動を加える操作は省略する。
【0139】
以上、図15〜図20を参照して説明した、この実施形態における操舵制御装置による中間駆動輪に対する制御では、左側の第2軸の車輪と第3軸の車輪の平均速度を左側中間駆動輪速度VLとし、右側の第2軸の車輪と第3軸の車輪の平均速度を右側中間駆動輪速度VRとし、それらに基づいて左右各側における第2軸と第3軸の2つの車輪を一緒に制御するようにしているが、これは一つの例示に過ぎない。第2軸と第3軸の夫々について独立して別個に、上述した制御が行われてもよい。
【0140】
上述した実施形態に係る多軸車両20において、左右の中間駆動輪の速度を目標速度に合致するように調整するための構成、公知文献「ボッシュ 自動車ハンドブック 日本語第2版」(2003年4月22日発行、山海堂)の第606頁に紹介されているような、TCSバルブ(自動増圧制御弁)と公知のアンチロックブレーキングシステム(ABS)用の減圧と保持の機能を有するABSバルブとを組み合わせて、ディファレンシャルギアの左右の駆動輪の速度を制御して同期させる技術を採用するようにしてもよい。
【0141】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示に過ぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。上述したような4車軸をもつ8輪車両だけでなく、3車軸を持つ6輪車両や、5軸以上の車軸を持つ多軸車両にも、本発明を適用することができる。
【0142】
なお、上述した第4軸28に設けられた1対の車輪(38L、38R)については、直進時には固定輪とし、旋回時には自動的に転舵が可能な、例えばキャスタのような構成のものを採用しても差支えない。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の一実施形態に係る多軸車両20における操舵制御の概要を説明するための平面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る多軸車両20の車輪駆動機構の構成を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る多軸車両20において、第1、4軸駆動クラッチ64、74を切った状態を示す平面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る多軸車両20に搭載されたエアブレーキの配管システムのうち、本発明の説明に必要な部分だけを示す配管図。
【図5】ブレーキペダル118が踏まれていないときに自動増圧制御弁122Rが開かれた場合のエアブレーキの動作を示す説明図。
【図6】ブレーキペダル118が踏まれていないときに自動増圧制御弁122Rが閉じられた場合のエアブレーキの動作を示す説明図。
【図7】自動増圧制御弁の励磁に伴うブレーキシリンダ内の圧力変化と制動力の時間的な関係を示した図。
【図8】自動増圧制御弁の励磁のオンオフを交互に繰り返した場合の制動力の推移を示した図。
【図9】本発明の一実施形態に係る多軸車両20に搭載された操舵制御装置180の、操舵制御に直接関わる部分の構成を示すブロック図。
【図10】第4軸28に設けられた1対の車輪38L、38Rが転舵可能な構成の多軸車両20が、右旋回するときの状態を示す説明図。
【図11】本発明の一実施形態に係る多軸車両20が備える第4軸28の操舵機構の構成、及びその動作の説明図。
【図12】図11で示した操舵機構によって構成されるリンク構造を示した図。
【図13】多軸車両20が直進方向から左/右に1段階分の角度だけ操舵されたときの操舵状態を検知するのに適したセンサの一例を示す説明図。
【図14】第4軸操舵角度の算出原理に係わる説明図。
【図15】操舵制御装置180のECU192に組み込まれた中間駆動輪の最適速度を演算する部分の機能的な構成を示すブロック線図。
【図16】第4軸操舵角の制御系(制御ループ)の構成を示すブロック図。
【図17】操舵制御装置180のECU192で実行される、中間駆動輪の制動の制御のための処理のフローチャート。
【図18】右旋回を例にとり、右側(旋回内側)自動増圧制御弁122R、124Rの励磁に伴う車輪速度の変化例を示すタイムチャート。
【図19】操舵制御装置180のECU192で実行される、ロック解除のための処理のフローチャート。
【図20】操舵制御装置180のECU192に組み込まれた、外側中間駆動輪速度の制御と内側中間駆動輪のロックの緩和のための制御システムの構成を示すブロック線図。
【符号の説明】
【0144】
20 多軸車両
22 第1軸
24 第2軸
26 第3軸
28 第4軸
30 代表点
32L、32R、34L、34R 操舵輪
34L、34R、36L、36R 中間駆動輪
42 旋回中心
0 代表点の旋回半径
0 代表点の速度
Vout 外側の中間駆動輪の速度
Vin 内側の中間駆動輪の速度
60 第2軸ディファレンシャルギア
64 第1軸駆動クラッチ
68 第1軸ディファレンシャルギア
122L、122R、124L、124R 自動増圧制御弁
112L、112R 第2軸ブレーキシリンダ
114L、114R 第3軸ブレーキシリンダ
180 操舵制御装置
182L、182R、184L、184R 中間駆動輪の回転数センサ
186 操舵角センサ
188 トランスミッション出力軸の回転数センサ
192 電子制御ユニット(ECU)
200 変換計算部
202 乗算部
204 係数部
206 最適速度計算部
ψ 操舵角度
0S 旋回半径の目標値
LS 左側の中間駆動輪の最適速度
RS 右側の中間駆動輪の最適速度
RS 右側の中間駆動輪の最適速度
左側の中間駆動輪の速度
右側の中間駆動輪の速度
Vout 外側の中間駆動輪の目標速度
Vin 内側の中間駆動輪の目標速度
340 制御システム
342 制御部
344 ロック検出器
346 演算部
on 励磁オン時間(制動時間)
off 励磁オフ時間(非制動時間)
T 周期




 

 


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