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発明の名称 ハイブリッド電気自動車の制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−230384(P2007−230384A)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
出願番号 特願2006−54848(P2006−54848)
出願日 平成18年3月1日(2006.3.1)
代理人 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
発明者 緒方 誠
要約 課題
クラッチ接続時のエンジン回転数の急増を防止して運転フィーリングの低下を防止するようにしたハイブリッド電気自動車の制御装置を提供する。

解決手段
エンジン2の駆動力と電動機6の駆動力とが車両の駆動輪16に伝達可能であると共に、エンジン2と駆動輪16との機械的な接続がクラッチ4によって切断可能であって、電動機6が発生可能な上限トルクが要求トルク以上であるときにはクラッチ4を切断して要求トルクを発生するように電動機6を制御する一方、上限トルクが要求トルクより小さいときにはクラッチ4を接続してエンジン2のトルクと電動機6のトルクとの合計が要求トルクとなるようにエンジン2及び電動機6を制御し、車両が走行中に電動機6の回転数が所定回転数以上となったときには上限トルクが要求トルク以上のときであってもクラッチ4を接続する。
特許請求の範囲
【請求項1】
エンジンの駆動力と電動機の駆動力とが車両の駆動輪に伝達可能であると共に、上記エンジンと上記駆動輪との機械的な接続がクラッチによって切断可能なハイブリッド電気自動車の制御装置において、
上記電動機の回転数を検出する回転数検出手段と、
上記回転数検出手段によって検出された回転数に応じ上記電動機が発生可能なトルクとして上限トルクを設定すると共に、上記車両の走行に必要なトルクとして上記エンジン及び上記電動機の少なくとも一方から出力すべき要求トルクを設定し、上記上限トルクが上記要求トルク以上であるときには上記クラッチを切断して上記要求トルクを発生するように上記電動機を制御する一方、上記上限トルクが上記要求トルクより小さいときには上記クラッチを接続して上記エンジンのトルクと上記電動機のトルクとの合計が上記要求トルクとなるように上記エンジン及び上記電動機を制御し、上記車両が走行中に上記回転数検出手段によって検出された回転数が所定回転数以上となったときには上記上限トルクが上記要求トルク以上のときであっても上記クラッチを接続する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
上記上限トルクは、上記車両の運転者が減速操作を実行したときに、上記回転数検出手段によって検出された回転数において上記電動機が発生可能な上限減速トルクであり、上記要求トルクは、上記減速操作に基づいて定められる要求減速トルクであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
上記要求減速トルクは、上記回転数検出手段によって検出された回転数に応じ上記エンジン及び上記電動機の出力軸と上記駆動輪との間に介装された変速機の変速段毎に個別に設定され、上記要求減速トルクが設定されている上記電動機の回転数領域の少なくとも一部において、高速側変速段に対応する要求減速トルクであるほど大きい値を有していることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
上記上限トルクは、上記回転数検出手段によって検出された回転数において上記電動機が発生可能な上限駆動トルクであり、上記要求トルクは、上記車両の駆動に必要とされる要求駆動トルクであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド電気自動車の制御装置に関し、特にエンジンの駆動力と電動機の駆動力とがそれぞれ車両の駆動輪に伝達可能なハイブリッド電気自動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンと電動機とを車両に搭載し、エンジンの駆動力と電動機の駆動力とをそれぞれ車両の駆動輪に伝達可能とした、いわゆるパラレル型ハイブリッド電気自動車が開発され実用化されている。
このようなパラレル型ハイブリッド電気自動車として、エンジンと自動変速機とを機械的に断接するクラッチを設け、このクラッチの出力軸と自動変速機の入力軸との間に電動機の回転軸を連結したハイブリッド電気自動車が、例えば特許文献1によって提案されている。
【0003】
特許文献1に示されるようなハイブリッド電気自動車においては、クラッチを接続してエンジンと電動機の両方から駆動輪に駆動力を伝達可能とした状態と、クラッチを切断して電動機の駆動力のみを駆動輪に伝達可能とした状態とに切り換えられるようになっている。
例えば、アクセルペダルの踏み込みが解除され、車両のブレーキが作動していない状態でハイブリッド電気自動車が減速走行しているときには、エンジンのみを動力源とした同程度の車両が同様の減速を行うときに得られる減速度とほぼ同じ減速度を得ることができる減速トルクが要求減速トルクとして設定され、この要求減速トルクが得られるように電動機及びエンジンが制御される。このとき、電動機は発電機作動することにより回生制動力を発生し、回生制動エネルギを電力に変換してバッテリを充電することにより減速時のエネルギ回収を行うようにしている。このような要求減速トルクは、適正な車両減速度が得られるようにするため、変速機の入力回転数、即ち電動機の回転数が高いほど大きく設定される。
【0004】
一方、電動機にはその仕様によって発生可能な回生制動トルクの上限値である上限減速トルクが定められており、この上限減速トルクは電動機の特性により、低回転域でほぼ一定の値となると共に、高回転域では回転数の上昇と共に減少するようになっている。
このため、車両減速時には上限減速トルクが要求減速トルク以上となる場合と、上限減速トルクが要求減速トルクより小さくなる場合とがある。そこで、上限減速トルクが要求減速トルク以上である場合にはクラッチを切断し、電動機の回生制動トルクのみで要求減速トルクが得るようにすることによって車両減速時のエネルギ回収を最大限に行う一方、上限減速トルクが要求減速トルクより小さい場合にはクラッチを接続し、電動機の回生制動トルクとエンジンの減速トルクとを合わせて要求減速トルクを得るようにすることが考えられる。
【0005】
また、車両を駆動する場合の駆動トルクについても、電動機には減速トルクの場合と同様に発生可能な駆動トルクの上限値である上限駆動トルクが定められている。この上限駆動トルクについても上限減速トルクの場合と同様に、電動機の低回転域で大きく、高回転域では回転数の上昇と共に徐々に減少する傾向にある。このため、車両発進加速時などのような場合に、上限駆動トルクが車両の駆動に必要な要求駆動トルク以上であるときにはクラッチを切断し、電動機の駆動トルクのみで要求駆動トルクが得られるようにする一方で、車両走行中に要求駆動トルクが上限駆動トルクより大きくなったときにはクラッチを接続し、電動機の駆動トルクとエンジンの駆動トルクとを合わせて要求駆動トルクを得るようにすることが考えられる。
【特許文献1】特開平5−176405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、例えば降坂路において運転者がアクセルペダルを解放して減速走行を意図すると、アクセルペダルの解放時点では電動機の回転数が十分に低いため、上限減速トルクの方が要求減速トルクより大きく、クラッチを切断して電動機の回生制動のみにより要求減速トルクを発生させて走行するが、降坂路の勾配が急であるために走行速度が次第に上昇すると共に電動機の回転数も上昇し、その結果として要求減速トルクが増大する一方で上限減速トルクが減少することがある。このような場合には上限減速トルクが要求減速トルクより小さくなった時点でクラッチが接続されるが、このときには電動機の回転数がかなり上昇している場合もあり、エンジンの回転数はクラッチ接続前のアイドル回転数から一気に上昇することになる。
【0007】
このように、降坂時などで電動機の回転数が上昇した状態でクラッチが接続されることにより、それまで静かに運転していたエンジンの回転数が突然上昇すると、運転者は車両に異常が発生したと誤解したり、不快感を覚えたりするという問題がある。
車両駆動時においても、比較的高い走行速度で走行中に要求駆動トルクが小さい場合には、上限駆動トルクの方が大きくなり、クラッチが切断されて電動機のみで駆動を行うことがある。このような状態でアクセルペダルが踏み込まれ、要求駆動トルクが増大することによって要求駆動トルクの方が上限駆動トルクより大きくなると、要求駆動トルクが上限駆動トルクより大きくなった時点でクラッチが接続される。このときにも電動機の回転数は高速走行によってかなり上昇している場合もあり、エンジンの回転数はクラッチ接続前のアイドル回転数から一気に上昇することになる。
【0008】
従って、このような場合にもそれまで静かに運転していたエンジンの回転数が突然上昇することにより、運転者は車両に異常が発生したと誤解したり、不快感を覚えたりするという問題がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クラッチ接続時のエンジン回転数の急増を防止して運転フィーリングの低下を防止するようにしたハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置は、エンジンの駆動力と電動機の駆動力とが車両の駆動輪に伝達可能であると共に、上記エンジンと上記駆動輪との機械的な接続がクラッチによって切断可能なハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記電動機の回転数を検出する回転数検出手段と、上記回転数検出手段によって検出された回転数に応じ上記電動機が発生可能なトルクとして上限トルクを設定すると共に、上記車両の走行に必要なトルクとして上記エンジン及び上記電動機の少なくとも一方から出力すべき要求トルクを設定し、上記上限トルクが上記要求トルク以上であるときには上記クラッチを切断して上記要求トルクを発生するように上記電動機を制御する一方、上記上限トルクが上記要求トルクより小さいときには上記クラッチを接続して上記エンジンのトルクと上記電動機のトルクとの合計が上記要求トルクとなるように上記エンジン及び上記電動機を制御し、上記車両が走行中に上記回転数検出手段によって検出された回転数が所定回転数以上となったときには上記上限トルクが上記要求トルク以上のときであっても上記クラッチを接続する制御手段とを備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、回転数検出手段によって検出された電動機の回転数に応じ電動機が発生可能なトルクとして設定した上限トルクが、車両の走行に必要なトルクとして設定した要求トルク以上であるときには、クラッチを切断して電動機が要求トルクを発生するように制御される一方、上限トルクが要求トルクより小さいときにはクラッチを接続してエンジンのトルクと電動機のトルクとの合計が要求トルクとなるようにエンジン及び電動機が制御される。そして、車両が走行中に回転数検出手段によって検出された電動機の回転数が所定回転数以上となったときには、上限トルクが要求トルク以上のときであってもクラッチが接続される。
【0011】
具体的には、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記上限トルクは、上記車両の運転者が減速操作を実行したときに、上記回転数検出手段によって検出された回転数において上記電動機が発生可能な上限減速トルクであり、上記要求トルクは、上記減速操作に基づいて定められる要求減速トルクであることを特徴とする(請求項2)。
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両の運転者が減速操作を実行したときに、電動機の回転数に応じて設定した上限減速トルクが、上記減速操作に基づいて定められる要求減速トルク以上であるときには、クラッチを切断して電動機が要求減速トルクを発生するように制御される一方、上限減速トルクが要求減速トルクより小さいときにはクラッチを接続してエンジンのトルクと電動機のトルクとの合計が要求減速トルクとなるようにエンジン及び電動機が制御される。そして、回転数検出手段によって検出された電動機の回転数が所定回転数以上となったときには、上限減速トルクが要求減速トルク以上のときであってもクラッチが接続される。
【0012】
更に具体的には、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記要求減速トルクは、上記回転数検出手段によって検出された回転数に応じ上記エンジン及び上記電動機の出力軸と上記駆動輪との間に介装された変速機の変速段毎に個別に設定され、上記要求減速トルクが設定されている上記電動機の回転数領域の少なくとも一部において、高速側変速段に対応する要求減速トルクであるほど大きい値を有していることを特徴とする(請求項3)。
【0013】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両の運転者が減速操作を実行したときに、電動機の回転数に応じて設定した上限減速トルクが、使用中の変速段に対応した要求減速トルク以上であるときには、クラッチを切断して電動機が要求減速トルクを発生するように制御される一方、上限減速トルクが上記要求減速トルクより小さいときにはクラッチを接続してエンジンのトルクと電動機のトルクとの合計が上記要求減速トルクとなるようにエンジン及び電動機が制御される。そして、回転数検出手段によって検出された電動機の回転数が所定回転数以上となったときには、上限減速トルクが上記要求減速トルク以上のときであってもクラッチが接続される。
【0014】
また、上記要求減速トルクは、電動機の回転数領域の少なくとも一部において、高速側変速段に対応する要求減速トルクであるほど大きい値を有することにより、変速機から出力される変速段毎の減速トルク間の差が、要求減速トルクを各前進変速段で共通にした場合に比較して少なくなる。
また、上記上限トルクは、上記回転数検出手段によって検出された回転数において上記電動機が発生可能な上限駆動トルクであり、上記要求トルクは、上記車両の駆動に必要とされる要求駆動トルクであることを特徴とする(請求項4)。
【0015】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両の走行時において、電動機の回転数に応じて設定した上限駆動トルクが、車両の駆動に必要なトルクとして設定した要求駆動トルク以上であるときには、クラッチを切断して電動機が要求駆動トルクを発生するように制御される一方、上限駆動トルクが要求駆動トルクより小さいときにはクラッチを接続してエンジンのトルクと電動機のトルクとの合計が要求駆動トルクとなるようにエンジン及び電動機が制御される。そして、車両が走行中に回転数検出手段によって検出された電動機の回転数が所定回転数以上となったときには、上限駆動トルクが要求駆動トルク以上のときであってもクラッチが接続される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両が走行中に回転数検出手段によって検出された電動機の回転数が所定回転数以上となったときには、上限トルクが要求トルク以上のときであってもクラッチが接続されるようにしたので、電動機の回転数が大きく上昇する前にクラッチを接続して、クラッチ接続時のエンジン回転数の上昇による運転フィーリングの低下を防止することができる。
【0017】
また、請求項2のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両の運転者が減速操作を実行したときに上記のような効果を得ることができる。
更に、請求項3のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、要求減速トルクが変速段毎に個別に設定されると共に、高速側の変速段に対応するものほど大きめに設定されるので、変速機から出力される変速段毎の減速トルク間の差が、要求減速トルクを各前進変速段で共通にした場合に比較して少なくなる。この結果、上記の効果に加え、各変速段で得られる減速度の差を少なくし、シフトダウンの際に生じる変速ショックを低減して運転フィーリングをより一層向上することができるという効果がある。
【0018】
また、請求項4のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、クラッチを切断した状態で車両の駆動輪に駆動トルクを伝達して走行しているときに、電動機の回転数が大きく上昇する前にクラッチを接続して、クラッチ接続時のエンジン回転数の上昇による運転フィーリングの低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態であるハイブリッド電気自動車1の制御装置の要部構成図である。ディーゼルエンジン(以下エンジンという)2の出力軸にはクラッチ4の入力軸が連結されており、クラッチ4の出力軸は永久磁石式同期電動機(以下電動機という)6の回転軸を介して前進変速段(以下では単に変速段という)が5段の自動変速機(以下変速機という)8の入力軸が連結されている。また、変速機8の出力軸はプロペラシャフト10、差動装置12及び駆動軸14を介して左右の駆動輪16に接続されている。
【0020】
従って、クラッチ4が接続されているときには、エンジン2の出力軸と電動機6の回転軸の両方が、変速機8を介して駆動輪16と機械的に接続可能となり、クラッチ4が切断されているときには電動機6の回転軸のみが変速機8を介して駆動輪16と機械的に接続可能となる。
電動機6は、バッテリ18に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることによりモータとして作動し、その駆動トルクが変速機8によって適切な速度に変速された後に駆動輪16に伝達されるようになっている。また、車両制動時には、電動機6が発電機として作動し、駆動輪16の回転による運動エネルギが変速機8を介し電動機6に伝達されて交流電力に変換されることにより回生制動トルクを発生する。そして、この交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後、バッテリ18に充電され、駆動輪16の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0021】
一方、エンジン2の駆動トルクは、クラッチ4が接続されているときに電動機6の回転軸を経由して変速機8に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪16に伝達されるようになっている。従って、エンジン2の駆動トルクが駆動輪16に伝達されているときに電動機6がモータとして作動する場合には、エンジン2の駆動トルクと電動機6の駆動トルクとがそれぞれ変速機8を介して駆動輪16に伝達されることになる。即ち、車両の駆動のために駆動輪16に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン2から供給されると共に、残部が電動機6から供給される。
【0022】
また、バッテリ18の充電率(以下SOCという)が低下してバッテリ18を充電する必要があるときには、電動機6が発電機として作動すると共に、エンジン2の駆動力の一部を用いて電動機6を駆動することにより発電が行われ、発電された交流電力をインバータ20によって直流電力に変換した後にバッテリ18に充電するようにしている。
車両ECU22(制御手段)は、車両やエンジン2の運転状態、及びエンジンECU24、インバータECU26並びにバッテリECU28からの情報などに応じて、クラッチ4の接続・切断制御及び変速機8の変速段切換制御を行うと共に、これらの制御状態や車両の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン2や電動機6を適切に運転するための統合制御を行う。
【0023】
そして車両ECU22は、このような制御を行う際に、アクセルペダル30の踏込量を検出するアクセル開度センサ32や、車両の走行速度を検出する車速センサ34及び電動機6の回転数を検出する回転数センサ(回転数検出手段)36の検出結果に基づき、車両の走行に必要な総駆動トルク並びに車両の減速時に必要な総減速トルクを演算し、これら総駆動トルク及び総減速トルクから、エンジン2が発生するトルク及び電動機6が発生するトルクを設定している。
【0024】
エンジンECU24は、エンジン2の始動・停止制御やアイドル制御、或いは排ガス浄化装置(図示せず)の再生制御など、エンジン2自体の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU22によって設定されたエンジン2に必要とされるトルクをエンジン2が発生するよう、エンジン2の燃料の噴射量や噴射時期などを制御する。
一方、インバータECU26は、車両ECU22によって設定された電動機6が発生すべきトルクに基づきインバータ20を制御することにより、電動機6をモータ作動または発電機作動させて運転制御する。
【0025】
また、バッテリECU28は、バッテリ18の温度や、バッテリ18の電圧、インバータ20とバッテリ18との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ18のSOCを求め、求めたSOCを検出結果と共に車両ECU22に送っている。
このように構成されたハイブリッド電気自動車1において、車両を走行させるために車両ECU22を中心として行われる制御の概要は以下の通りである。
【0026】
まず、車両が停車状態にあってエンジン2が停止していて、チェンジレバー(図示せず)がニュートラル位置にあるときに運転者がスタータスイッチ(図示せず)によってエンジン2を始動する操作を行うと、車両ECU22は変速機8がニュートラル位置となって電動機6と駆動輪16との機械的な接続が遮断されていると共にクラッチ4が接続されていることを確認した後、インバータECU26に対してエンジン2の始動に必要な電動機6の駆動トルクを指示すると共に、エンジンECU24にエンジン2を運転するよう指示する。
【0027】
インバータECU26は車両ECU22からの指示に基づき、電動機6をモータ作動させて駆動トルクを発生させ、エンジン2をクランキングし、エンジンECU24がエンジン2に燃料の供給を開始することによりエンジン2が始動する。エンジン2の始動完了後は、車両ECU22がクラッチ4を切断し、エンジン2はアイドル運転を行う。
このようにしてエンジン2を始動した後、車両が停止状態にあるときには、クラッチ4が切断されており、エンジン2はアイドル運転状態にある。そして、運転者がアクセルペダル30を踏み込むと、アクセル開度センサ32によって検出されたアクセルペダル30の踏込量に応じ、車両を発進させるために必要な電動機6の駆動トルクを車両ECU22が設定する。
【0028】
インバータECU26は、車両ECU22が設定したトルクに応じてインバータ20を制御し、バッテリ18の直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて電動機6に供給される。電動機6は交流電力が供給されることによってモータ作動して駆動力を発生し、電動機6の駆動力は変速機8を介して駆動輪16に伝達され、車両が発進する。
車両が発進加速して電動機6の回転数がエンジン2のアイドル回転数の近傍まで上昇すると、クラッチ4を接続してエンジン2の駆動力を駆動輪に伝達することが可能となり、車両ECU22は更なる車両の加速及びその後の走行のために、変速機8に伝達すべき駆動トルクを車両の運転状態に応じてエンジン2側と電動機6側に適切に振り分け、エンジンECU24やインバータECU26に指示すると共に、必要に応じて変速機8の変速段切換制御及びそれに伴うクラッチ4の断接制御を行う。
【0029】
即ち、車両ECU22は、図2に示すフローチャートに従い、所定の制御周期で駆動トルク制御を行う。
駆動トルク制御が開始されると、ステップS101でアクセル開度センサ32によって検出されたアクセルペダル30の踏込量を読み込み、次のステップS102では車速センサ34によって検出された車両の走行速度を読み込む。更に、次のステップS103では回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数Nmを読み込み、ステップS104に進む。
【0030】
ステップS104では、ステップS101で読み込んだアクセルペダル30の踏込量とステップS102で読み込んだ車両の走行速度とに基づき、車両の走行に必要な総駆動トルクを求め、この総駆動トルクと現在変速機8で使用中の変速段とに基づき変速機8に伝達すべき駆動トルクとして要求駆動トルクTdrを設定する。
【0031】
次のステップS105では、ステップS103で読み込んだ電動機6の回転数Nmにおいて電動機6が発生可能な駆動トルクの上限値を上限駆動トルクTduとして設定する。この上限駆動トルクTduは電動機6の仕様により電動機6の回転数に応じて定まるものであり、電動機6の温度やバッテリ18の温度、或いはSOCにより変動するものの、概して次のような特性を有している。即ち、上限駆動トルクTduは図4に示すように低い回転数の領域では一定の値を有する一方で、高回転側では電動機6の回転数の増大と共に減少するような特性を有している。車両ECU22はこのような上限駆動トルクTduを予め記憶しており、ステップS103で読み込んだ電動機6の回転数Nmに対応する上限駆動トルクTduを読み出して設定している。
【0032】
ステップS106に進むと、ステップS103で読み込んだ電動機6の回転数Nmが所定の回転数Nd以上であるか否かを判定する。この所定回転数Ndは例えば2000rpmであって、図4に示すように上限駆動トルクが電動機6の回転数の上昇に応じて減少するような領域(出力一定領域)に設定されている。電動機6の回転数Nmがこの所定回転数Ndより低い場合にはステップS107に進んで、ステップS105で設定された上限駆動トルクTduがステップS104で設定された要求駆動トルクTdr以上であるか否かを判定する。
【0033】
そして、上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上であると判定した場合には電動機6のみで要求駆動トルクTdrを発生可能であることから、ステップS109に進んで電動機6から要求駆動トルクTdrに等しい駆動トルクを発生させるようインバータECU26に指示し、今回の制御周期を終了する。インバータECU26はこれを受け、電動機6をモータ作動させると共にインバータ20を介してバッテリ18から電動機6に供給される電力を調整し、電動機6が要求駆動トルクTdrに等しい駆動トルクを発生するように制御を行う。
【0034】
次の制御周期では、上述のようにして再びステップS101乃至S103でアクセルペダル30の踏込量、車両の走行速度、及び電動機6の回転数Nmを読み込み、ステップS104及びS105で要求駆動トルクTdr及び上限駆動トルクTduを設定する。
そしてステップS106で電動機6の回転数Nmが依然として所定回転数Ndより低いと判定した場合には、ステップS107に進んで上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上であるか否かを判定する。
【0035】
従って、電動機6の回転数Nmが所定回転数Ndに達していない状態で、上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上である限りは、クラッチ4が切断状態に維持されると共に、電動機6が要求駆動トルクに等しい駆動トルクを発生するように制御され、電動機6の駆動トルクのみにより車両の駆動が行われる。
一方、ステップS105で設定された上限駆動トルクTduが、ステップS104で設定された要求駆動トルクTdrより小さい場合には、電動機6のみでは要求駆動トルクTdrに等しい駆動トルクを発生することができないため、ステップS107からステップS110に進んでクラッチ4を接続した後、ステップS111に進む。
【0036】
ステップS111において車両ECU22は、エンジン2の駆動トルクと電動機6の駆動トルクとを合わせて要求駆動トルクTdrが得られるように、エンジン2が発生すべき駆動トルクをエンジンECU24に指示し、また電動機6が発生すべき駆動トルクをインバータECU26に指示してその制御周期を終了する。エンジンECU24及びインバータECU26は車両ECU22が設定した駆動トルクを受けて、エンジン2及び電動機6をそれぞれ制御し、エンジン2及び電動機6の両方によって車両の駆動が行われる。
【0037】
次の制御周期でも、上述のようにしてアクセルペダル30の踏込量と車両の走行速度とに基づく要求駆動トルクTdrの設定、及び電動機6の回転数Nmに基づく上限駆動トルクTduの設定を行い、ステップS106で電動機6の回転数Nmが依然として所定回転数Ndより低いと判定した場合には、ステップS107に進んで上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上であるか否かを判定する。
【0038】
そして、上限駆動トルクTduが依然として要求駆動トルクTdrより小さければ、上述のようにしてクラッチ4の接続状態が維持されると共に、エンジン2及び電動機6の駆動トルクの合計が要求駆動トルクに等しくなるように制御が行われ、エンジン2及び電動機6の両方によって車両の駆動が行われる。
また、上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上となった場合には、前述のようにステップS108に進んでクラッチ4が切断され、電動機6のみにより車両の駆動が行われる。
【0039】
このように、電動機6の回転数Nmが所定回転数Ndに達していない状況では、上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上であるか否かによりクラッチ4の断接状態が制御されてエンジン2及び電動機6による駆動状態と電動機6のみによる駆動状態との切り換えが行われる。
一方、ステップS103で読み込んだ電動機6の回転数Nmが所定回転数Nd以上となった場合には、ステップS107には進まずに、ステップS106からステップS110に進んでクラッチ4を接続すると共に、ステップS111でエンジン2及び電動機6の駆動トルクの合計が要求駆動トルクに等しくなるように制御が行われる。そして次の制御周期以降でも、電動機6の回転数Nmが所定回転数Nd以上である限りは、ステップS106からステップS110に進んでクラッチ4の接続が維持されると共に、ステップS111でエンジン2及び電動機6の駆動トルクの合計が要求駆動トルクに等しくなるように制御が行われる。
【0040】
このように、電動機6の回転数Nmが所定回転数Nd以上である場合には、上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdrに満たない場合に限らず、上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上の場合であっても、クラッチ4が接続されてエンジン2が電動機6と同じ回転数で回転することになる。
従って、例えば車両が降坂路を走行しているときのように要求駆動トルクTdrが比較的小さい状態を維持したまま走行速度が上昇して電動機6の回転数が上昇した場合、たとえ上限駆動トルクTduが要求駆動トルクTdr以上であっても、電動機6の回転数Nmが所定回転数Nd以上となれば、クラッチ4が接続状態とされる。このため、電動機6の回転数が高くなりすぎる前にクラッチ4が接続されるので、電動機6の回転数が高い状態で要求駆動トルクTdrが上限駆動トルクTduより大きくなることによってクラッチ4が接続され、エンジン2の回転数が突然急増するといったことがなくなり、運転フィーリングを向上させることができる。
【0041】
なお、上記駆動トルク制御とは別に、車両ECU22は必要に応じて変速機8の変速段を切り換える制御を行い、このときに必要に応じてクラッチ4の断接制御を行うが、変速段の切り換えに伴って行われるクラッチ4の断接制御は上記駆動トルク制御とは独立して行われる。
次に、アクセルペダル30の踏み込みが解除されて車両を減速走行させる場合について以下に説明する。
【0042】
車両ECU22は、アクセルペダル30の踏み込みが解除されたことを受け、上述した駆動トルク制御を中止すると共に、図3のフローチャートに従い、所定の制御周期で減速トルク制御を行うと共に、必要に応じて変速機8の変速段切換制御及びそれに伴うクラッチ4の断接制御を行う。
減速トルク制御が開始されると、まずステップS201で回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数Nmを読み込み、次のステップS202に進む。
【0043】
ステップS202では、ステップS201で読み込んだ電動機6の回転数Nmと現在変速機8で使用中の変速段とに基づき、車両に適度の減速度を得るために変速機8に伝達すべき減速トルクを要求減速トルクTbrとして設定する。
この要求減速トルクTbrは、図5に実線で示すように電動機6の回転数に応じ変速機8の変速段毎に個別に設定されている。なお、要求減速トルクは駆動トルクを正の値とした場合に負の値で表されるものであるが、以下の説明では特に断りがない限りその絶対値について述べるものとし、図5に示される要求減速トルクもその絶対値で表されているものとする。
【0044】
また、図5に示すように、高速側の変速段であるほど大きい要求減速トルクTbrが設定されるようになっている。
このように、高速側の変速段であるほど大きめの要求減速トルクが設定されることにより、変速機8を介して駆動輪に伝達される減速トルクの変速段毎の差を減らして、各変速段で減速時に得られる減速度の差を減らすと共に、シフトダウンの際の変速ショックを低減することができる。
【0045】
車両ECU22はこのような要求減速トルクTbrを予め記憶しており、ステップS201で読み込んだ電動機6の回転数Nmと現在使用中の変速段とに対応する要求減速トルクTbrを読み出して設定している。
次のステップS203では、ステップS201で読み込んだ電動機6の回転数Nmにおいて電動機6が発生可能な回生制動トルクの上限値を上限減速トルクTbuとして設定する。この上限減速トルクTbuは、電動機6の仕様により電動機6の回転数に応じて定まるものであり、電動機6の温度やバッテリ18の温度、或いはSOCにより変動するものの、概して次のような特性を有している。即ち、上限減速トルクTbuは図5中に一点鎖線で示すように低い回転数の領域では一定の値を有する一方で、高回転側では電動機6の回転数の増大と共に減少するような特性を有している。
【0046】
なお、上限減速トルクTbuも要求減速トルクTbrと同様に負の値で表されるものであるが、以下の説明では特に断りがない限りその絶対値について述べるものとし、図5に示される上限減速トルクTbuもその絶対値で表されている。
図5に示されるように、1速の変速段に対応する要求減速トルクTbrは、電動機6の回転数がN1以下のときに上限減速トルクTbu以下となり、電動機6の回転数がN1より高いときに上限減速トルクTbuより大となっている。2速乃至5速の各変速段に対応する要求減速トルクTbrについてもこれと同様に、電動機6の回転数がそれぞれN2、N3、N4、N5のときに上限減速トルクTbuとの大小関係が逆転するようになっている。
【0047】
車両ECU22はこのような上限減速トルクTbuを予め記憶しており、ステップS201で読み込んだ電動機6の回転数Nmに対応する上限減速トルクTbuを読み出して設定している。
次にステップS204に進むと、ステップS201で読み込んだ電動機6の回転数Nmが所定の回転数Nb以上であるか否かを判定する。この所定回転数Nbは前述の駆動トルク制御における所定回転数Ndと同様に例えば2000rpmであって、本実施形態では2速に対応した要求減速トルクTbrが上限減速トルクTbuと等しくなる電動機6の回転数N2より低く、且つ3速に対応した要求減速トルクTbrが上限減速トルクTbuと等しくなる電動機6の回転数N3より高い回転数となっている。
【0048】
電動機6の回転数NmがこのNbより低い場合にはステップS205に進んで、ステップS203で設定した上限減速トルクTbuが、ステップS202で設定した要求減速トルクTbr以上であるか否かを判定する。
そして、上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbr以上であると判定した場合には電動機6のみで要求減速トルクTbrを発生可能であることから、ステップS206に進んでクラッチ4を切断すると共に、ステップS207で電動機6から要求減速トルクTbrに等しい回生制動トルクを発生させるようインバータECU26に指示し、今回の制御周期を終了する。インバータECU26はこれを受け、電動機6を発電機作動させると共にインバータ20を介して電動機6からバッテリ18に供給される電力を調整し、電動機6が要求減速トルクTbrに等しい回生制動トルクを発生するように制御を行う。
【0049】
次の制御周期では、上述のようにして再びステップS201で電動機6の回転数Nmを読み込み、ステップS202及びS203で要求減速トルクTbr及び上限減速トルクTbuを設定する。
そしてステップS204で電動機6の回転数Nmが依然として所定回転数Nbより低いと判定した場合には、ステップS205に進んで上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbr以上であるか否かを判定する。
【0050】
従って、電動機6の回転数Nmが所定回転数Nbに達していない状態で、上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbr以上である限りは、クラッチ4が切断状態に維持されると共に、電動機6が要求減速トルクTbrに等しい回生制動トルクを発生するように制御され、車両の減速が行われる。
一方、ステップS203で設定された上限減速トルクTbuが、ステップS202で設定された要求減速トルクTbrより小さい場合には、電動機6のみでは要求減速トルクTbrに等しい回生制動トルクを発生することができないため、ステップS205からステップS208に進んでクラッチ4を接続した後、ステップS209に進む。
【0051】
ステップS209では、車両ECU22がエンジン2への燃料供給を停止するようエンジンECU24に指示し、エンジンECU24はこれに従ってエンジン2への燃料供給を停止する。
次のステップS210では、ステップS202で設定した要求減速トルクTbrから、ステップS209における燃料供給停止によってエンジン2が発生する減速トルクを減じることにより、電動機6が発生すべき回生制動トルクTbmを設定し、次のステップS211に進む。
【0052】
ステップS211では、ステップS210において上述のようにして設定された回生制動トルクTbmを電動機6が発生するよう、車両ECU22からインバータECU26に対して指示が出され、インバータECU26はこれに従って電動機6を制御し、その制御周期を終了する。
この結果、燃料供給が停止されたエンジン2による減速トルクと、発電機作動する電動機6の回生制動トルクTbmとが変速機8に伝達され、変速機8で変速された後に駆動輪16に伝達されて車両が減速する。このとき、エンジン2の減速トルクと電動機6の回生制動トルクTbmとの和は要求減速トルクTbrに等しいため、車両は適度の減速度で減速する。
【0053】
次の制御周期でも、上述のようにして要求減速トルクTbr及び上限減速トルクTbuの設定を行い、ステップS204で電動機6の回転数Nmが依然として所定回転数Nbより低いと判定した場合には、ステップS205に進んで上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbr以上であるか否かを判定する。
そして、上限減速トルクTbuが依然として要求減速トルクTbrより小さければ、上述のようにしてクラッチ4の接続状態が維持されると共に、エンジン2の減速トルク及び電動機6の回生制動トルクの合計が要求減速トルクTbrに等しくなるように制御が行われ、エンジン2及び電動機6の両方によって車両の減速が行われる。
【0054】
また、上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbr以上となった場合には、前述のようにステップS206に進んでクラッチ4が切断され、電動機6の回生制動力のみが変速機8に伝達されて車両の減速が行われる。
このように、電動機6の回転数Nmが所定回転数Nbに達していない状況では、上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbr以上であるか否かによりクラッチ4の断接状態が制御されてエンジン2及び電動機6による減速状態と電動機6のみによる減速状態との切り換えが行われる。
【0055】
一方、ステップS201で読み込んだ電動機6の回転数Nmが所定回転数Nb以上となった場合には、ステップS205には進まずに、ステップS204からステップS208に進んでクラッチ4を接続すると共にステップS209でエンジン2への燃料供給を停止し、上述したようにしてステップS210及びS211でエンジン2の減速トルク及び電動機6の回生制動トルクの合計が要求減速トルクTbrに等しくなるように制御が行われる。そして次の制御周期以降でも、電動機6の回転数Nmが所定回転数Nb以上である限りは、ステップS204からステップS208に進んでクラッチ4の接続が維持されると共にステップS209でエンジン2への燃料供給を停止し、ステップS210及びS211でエンジン2の減速トルク及び電動機6の回生制動トルクの合計が要求減速トルクTbrに等しくなるように制御が行われる。
【0056】
このように、電動機6の回転数Nmが所定回転数Nb以上である場合には、上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbrに満たない場合に限らず、上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbr以上の場合であっても、クラッチ4が接続されてエンジン2が電動機6と同じ回転数で回転することになる。
従って、例えば車両が2速の変速段で降坂路を走行中に減速走行に移行した場合で、はじめは上限減速トルクTbuが2速に対応した要求減速トルクTbr以上であってクラッチ4が切断された状態にあるとすると、走行速度の上昇と共に電動機6の回転数が上昇して所定回転数Nb以上となった時点、即ち上限減速トルクTbuが2速に対応した要求減速トルクTbrと等しくなる回転数N2まで上昇する前にクラッチ4が接続されることになる。
【0057】
このように、電動機6の回転数が高くなりすぎる前にクラッチ4が接続されるので、電動機6の回転数が高い状態で要求減速トルクTbrが上限減速トルクTbuより大きくなることによってクラッチ4が接続され、エンジン2の回転数が突然急増するといったことがなくなり、減速走行時においても運転フィーリングを向上させることができる。
このような効果は、図5に示すように電動機6の回転数がN1より高くなったときに上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbrより小さくなる1速の変速段を使用している場合にも同様に得ることができる。
【0058】
また、3速乃至5速の変速段を使用している場合には、電動機6の回転数が所定回転数Nbに達するよりも前に上限減速トルクTbuが要求減速トルクTbrを下回ってクラッチ4が接続されるので、クラッチ4の接続時にエンジン2の回転数が大きく上昇するようなことはない。
なお、車両減速時においても、上記減速トルク制御とは別に、車両ECU22は必要に応じて変速機8の変速段を切り換える制御を行い、このときに必要に応じてクラッチ4の断接制御を行うが、変速段の切り換えに伴って行われるクラッチ4の断接制御は上記減速トルク制御とは独立して行われる。
【0059】
以上で本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の制御装置についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、駆動輪16に駆動トルクを伝達する場合の駆動トルク制御と減速トルクを伝達する場合の減速トルク制御の両方で、電動機6の回転数Nmが所定回転数NdもしくはNb以上となったときにクラッチ4を接続するようにしたが、いずれか一方のみを行うようにするものであっても良い。
【0060】
即ち、例えば駆動トルクについては上限駆動トルクと要求駆動トルクとの大小関係を判定せず、エンジン2による駆動が可能となった時点でクラッチ2を接続するようにしたような場合には、上記減速トルク制御のみを行うようにしても良い。また、減速時の減速トルクの制御を上記実施形態とは別の形態で行うようにする場合には、上記駆動トルク制御のみを行うようにしても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、駆動トルク制御でクラッチ4を接続させる所定回転数Nd及び減速トルク制御でクラッチ4を接続させる所定回転数Nbのいずれも2000rpmとしたが、所定回転数Nd及び所定回転数Nbはこれに限られるものではなく適宜変更可能なものであって、両者が相違した回転数であっても良い。
特に減速トルクの場合には、上記実施形態において変速段が1速または2速である場合に、上限減速トルクが要求減速トルクより小さくなる前にクラッチ4の接続を行うようにしたが、所定回転数Nbを調整することにより、変速段がより高速段でも上限減速トルクが要求減速トルクより小さくなる前にクラッチ4が接続されるようにしたり、変速段が1速の場合だけ上限減速トルクが要求減速トルクより小さくなる前にクラッチ4の接続を行うようにしても良い。
【0062】
更に、上記実施形態では、エンジン2の減速トルクを併用する際にエンジン2への燃料供給を停止するようにしたが、これに加えてエンジン2の排気通路に排気ブレーキ装置を設け、この排気ブレーキ装置を作動させことによって、より大きな減速トルクが得られるようにしても良い。
また、上記実施形態では回転数センサ36で検出された電動機6の回転数に応じて上限駆動トルクTduや要求駆動トルクTdr、或いは上限減速トルクTbuや要求減速トルクTbrを設定するようにしたが、電動機6の回転数に代えて電動機6の回転数の変化に応じて変化する回転数、例えば変速機8の出力回転数などを検出し、これを電動機6の回転数に変換して用いるようにしても良い。
【0063】
なお、上記実施形態ではエンジン2をディーゼルエンジンとしたが、エンジン形式はこれに限られるものではなく、ガソリンエンジンなどでも良い。
また、上記実施形態において、電動機6を永久磁石式同期電動機としたが電動機の形式もこれに限られるものではなく、モータ作動及び発電機作動が可能なものであればよい。
更に、上記実施形態では変速機8を5段の前進変速段を有する自動変速機としたが、前進変速段の数や変速機の形式はこれに限られるものではなく、無段変速機や手動式の変速機などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の制御装置の全体構成図である。
【図2】図1の制御装置における駆動トルク制御の内容を示すフローチャートである。
【図3】図1の制御装置における減速トルク制御の内容を示すフローチャートである。
【図4】図2の駆動トルク制御で用いられる上限駆動トルクと電動機の回転数との関係を示す図である。
【図5】図3の減速トルク制御で用いられる上限減速トルクと電動機の回転数との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ハイブリッド電気自動車
2 エンジン
4 クラッチ
6 電動機
8 変速機
16 駆動輪
22 車両ECU(制御手段)
36 回転数センサ(回転数検出手段)




 

 


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