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小型クローラ式トラクタ - ヤンマー株式会社
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発明の名称 小型クローラ式トラクタ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−118910(P2007−118910A)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
出願番号 特願2005−317650(P2005−317650)
出願日 平成17年10月31日(2005.10.31)
代理人 【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
発明者 横山 和寿 / 辻田 正文 / 山下 友実子
要約 課題
旋回半径を可変しうる小型クローラトラクタを提供する。

解決手段
機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用の油圧変速機構が連結され、前記油圧変速機構は、油圧無段変速旋回用ポンプおよび油圧無段変速旋回用モータとを含み、前記油圧無段変速旋回用ポンプは可変容量ポンプであり、前記油圧無段変速旋回用モータは可変容量モータであることを特徴とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
両端に従動アイドラを回転可能に支持するクローラフレームとリアアスクルに装着された駆動スプロケットとを有し、かつ前記従動アイドラと前記駆動スプロケットとの間にクローラが巻装されるクローラ式走行装置を上部車体の下部に備えた小型クローラ式トラクタにおいて、
機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用の油圧変速機構が連結され、
前記油圧変速機構は、油圧無段変速旋回用ポンプおよび油圧無段変速旋回用モータとを含み、
前記油圧無段変速旋回用ポンプは可変容量ポンプであり、前記油圧無段変速旋回用モータは可変容量モータである、小型クローラ式トラクタ。
【請求項2】
可変モーターの切換は、手動レバーまたはソレノイドによるものである、請求項1記載の小型クローラ式トラクタ。
【請求項3】
更に、ギヤの切換で走行の変速を行うギヤ切換式走行変速機構を備え、走行変速機構の副変速軸に前記油圧無段変速旋回用ポンプを連結させたことを特徴とする、請求項1記載の小型クローラ式トラクタ。
【請求項4】
前記油圧無段変速旋回用モータは、トランスミッションの上部に配置される、請求項1または2記載の小型クローラ式トラクタ。
【請求項5】
前記クローラフレームは少なくとも2つの支持部材によって前記上部車体に固設され、かつ固設箇所は、前記クローラ式走行装置の先端部より車両の後方であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに小型クローラ式トラクタ。
【請求項6】
前記クローラフレームは少なくとも2つの支持部材によって上部車体に固設され、かつ前記上部車体の全長(L1)に対する前記クローラ走行装置の接地長さ(L2)が0.5以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の小型クローラ式トラクタ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧無段変速旋回用ポンプ(HST旋回用ポンプ)および油圧無段変速旋回用モータ(HST旋回用モータ)を配する小型クローラ式トラクタに関し、より詳細には、HST旋回用ポンプが可変容量ポンプであり、HST旋回用モータが可変容量モータである、旋回半径可変の小型クローラ式トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の小型ホイール式トラクタ97の斜視図である。このトラクタ97は、後輪駆動4輪車であり、一般に、このようなホイール型トラクタは、油圧によって駆動される耕運用アタッチメント、畦整形用アタッチメント、土壌消毒用アタッチメント、栽培床作成用アタッチメント、種芋植え付け用アタッチメント、マルチ作業用アタッチメントなどの作業機が取付けられることが一般的である。しかしながら、ホイール型トラクタ97は接地圧が高いため、軟弱地や不整地での走行性が十分でない場合があり、特に小型トラクタの場合には、小型ゆえに牽引力が十分でない場合がある。このような場合、ホイール型トラクタ97を小型クローラ式トラクタに改良できれば、接地圧を低減できるため軟弱地や不整地での走行性を向上させることができ、同時に牽引力を増強させることができる。
【0003】
このような技術として、例えばホイール式トラクタの操舵機構部を共用して、新たな小型クローラ式トラクタに改良するものがある(特許文献1)。該特許文献1は、クローラ式とホイール式での旋回機構の相違、すなわちホイール式のトラクタをクローラ式に改造した場合に、旋回内側の左右いずれかのブレーキペダルを踏み込んで片側のブレーキ装置を作動させ、片側の駆動スプロケットを制動して旋回内側のクローラを減速して車体を旋回させたのでは旋回操作性が良好ではない点に鑑みてなされたものであり、円形のステアリングハンドルの回転操作によって小型クローラ式トラクタの車体を旋回できるようにするとともに、ホイール式トラクタに備えられている操舵機構部を利用して部品を共用化することによりコストダウンを図ることを目的としたものである。
【0004】
また、ホイール式作業車両は、多少バランスが悪い場合でもホイールが接地していれば走行可能であるのに対して、クローラ式作業車両ではクローラの前端部が浮き上がり、牽引力が不足する場合がある。また、小型クローラ式トラクタは、主として湿田用に使用されるため、地上高を高く設定する必要がある。このような、トラクタの前後バランス及び地上高を簡単かつ安価な構成にて調整する技術も既に開示されている(特許文献2)。該特許公報2には、駆動スプロケットと従動アイドラとの間にクローラを卷装した左右クローラ式走行装置を備えたトラクタであって、前記駆動スプロケットと従動アイドラとを支持するクローラフレームを、車両フレームに対して前後方向、およびまたは上下方向に取り付け位置を調整可能に形成した小型クローラ式トラクタが開示されている。該特許公報2に開示される小型クローラ式トラクタは、トラクタ部分が中型または大型のものを対象としていると推定され、駆動スプロケットと従動アイドラとを支持するクローラフレームを車両に取り付ける支持部材の先端部が、クローラ式走行装置の先端部より前部でトラクタ下部に取り付けられている。
【0005】
一方、特に中型、大型のトラクタにおいて、小型クローラ式トラクタの駆動系を簡潔なものとし、かつ旋回性を改良する技術も開発されている(特許文献3)。例えば、特許文献3には、機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる油圧無段変速旋回機構(旋回用HST機構)を連結させた前輪駆動のクローラ形トラクタであって、旋回用HST機構を可変容量ポンプと定容量モータとに分割し、遊星ギヤ式デフ機構の入力軸に定容量モータを連結させた小型クローラ式トラクタが開示されている。このトラクタは、走行変速機構の副変速後の出力で上記可変容量ポンプと連結され、車速と操向モータの回転を比例させることで、旋回半径を一定にさせ、ホイルトラクタと同様の操作フィーリングを確保することができる、という。
【0006】
また、ミッション構造を改善して、軽量・シンプル・低コストで、全長が短くても前後バランスおよび取り扱い性のよい作業機構成を備えた小型クローラ式トラクタとして、ミッションケースとアクスルケースとを一体的に構成し、左右一対のクローラ走行装置の間に横架される前後連結フレームによってミッションケースを支持し、該連結フレームの前方にアクスルケースを配置した前輪駆動の小型クローラ式トラクタも開示されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2000−159143号公報
【特許文献2】特開2002−145134号公報
【特許文献3】特開2004−17841号公報
【特許文献4】特開2004−66913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したように、小型クローラ式トラクタは、接地圧が低いため、湿田での作業に適し、作業機の牽引力を増強させることができるが、特許文献1に示すように、単にホイール式トラクタの駆動輪を駆動スプロケットとして使用したのでは、湿田での作業に適する地上高を確保することができない場合がある。特に、小型クローラ式トラクタは、左右、上下バランスの調整がより強く求められるため、このような制御がより簡便に調整できれば便利である。この場合、前記特許文献2のように、クローラフレームに取り付け孔を開穿し、車両フレームに該取り付け孔に対応する被取り付け孔を開穿し、これらによって前後、上下方向にずらして固定する方法では、固定箇所が多くて操作が煩雑である。また、小型クローラ式トラクタは、左右クローラ式走行装置がホイールと比較して重いため総重量も重くなりやすく、軽量化の必要性がより強く望まれる。
【0008】
加えて、小型クローラ式トラクタであっても、中型や大型の小型クローラ式トラクタと同様に、優れた操作フィーリングを確保することが好ましい。しかしながら、旋回フィーリングを改善するために使用される、機体を旋回させる操向用の油圧変速機構、機体を前後進させる前後進切換え機構、旋回用油圧変速機構の可変容量ポンプなどを、単に小型クローラ式トラクタに転用することは構造上、困難である。特に、特許文献3や特許文献4記載の小型クローラ式トラクタは、フロントアスクルケースをエンジン前方下部にトランスミッションと分離して別体的に設けた前輪駆動方式であり、後輪駆動系とはその構造が異なる。従って、小型後輪駆動のホイール式トラクタの基本構造を利用し、低コストで小型の後輪駆動の小型クローラ式トラクタを製造することは容易でない。
【0009】
加えて、上記特許文献4記載の旋回機構は、車速と左右走行クローラの回転差とを比例させることで旋回半径を一定とさせ、これによってホイルトラクタと同様の操作フィーリングを確保することができるが、車速と旋回半径とを対応させと高速走行時に高速で旋回してしまう。従って、同一の車速において旋回半径を可変できればより乗り心地や作業性が向上する。
【0010】
そこで本発明は、後輪駆動の小型ホイール式トラクタの構造を可能な限り利用し、湿田に適する地上高を確保でき、操作フィーリングに優れ、かつ旋回パターンを変更しうる小型クローラ式トラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、小型クローラ式トラクタの製造に際して、ホイール式トラクタの基本構造を共用すれば安価に小型クローラ式トラクタが製造できること、その際、機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用の油圧変速機構を連結し、前記油圧変速機構を、油圧無段変速旋回用ポンプおよび油圧無段変速旋回用モータとで構成し、かつ前記油圧無段変速旋回用ポンプを可変容量ポンプとし、合わせて前記油圧無段変速旋回用モータを可変容量モータとし、前記容量可変モータの容量を変化させることで旋回半径のパターンを変更させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容量可変モータを使用することで、簡便に旋回半径のパターンを変更させることができる。
【0013】
本発明によれば、機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用の油圧変速機構が連結され、かつ走行変速機構の副変速軸に前記油圧無段変速旋回用ポンプが連結されるため、旋回フィーリングに優れる。
【0014】
本発明によれば、可変容量モータがトランスミッションの上部に配置されるため、モータの修理などを容易に行うことができる。
【0015】
本発明の小型クローラ式トラクタは、前記クローラフレームは少なくとも2つの支持部材によって上部車体に固設され、かつクローラ式走行装置が車体全長に対して短いため、旋回性に優れる。
【0016】
本発明の小型クローラ式トラクタは、ホイール式トラクタに備えられている共用部分を利用して製造することができ、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第一は、両端に従動アイドラを回転可能に支持するクローラフレームとリアアスクルに装着された駆動スプロケットとを有し、かつ前記従動アイドラと前記駆動スプロケットとの間にクローラが巻装されるクローラ式走行装置を上部車体の下部に備えた小型クローラ式トラクタにおいて、機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用の油圧変速機構が連結され、前記油圧変速機構は、油圧無段変速旋回用ポンプおよび油圧無段変速旋回用モータとを含み、前記油圧無段変速旋回用ポンプは可変容量ポンプであり、前記油圧無段変速旋回用モータは可変容量モータである、小型クローラ式トラクタである。
【0018】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1は本発明の一実施例に係る小型クローラ式トラクタの側面図、図2は同トラクタにおける走行部の斜視図、図3は同トラクタの断面平面図、図4は同トラクタにおける駆動部の断面側面図、図5は同トラクタの差動構造を示す図、図6は、クローラ走行装置のフレーム構造の斜視図、図7は従来のホイール型トラクタを示す斜視図であり、図8は、上部車体の全長(L1)に対するクローラ走行装置の接地長さ(L2)の比を説明する図である。
【0019】
(1)機体
図1に示すように、本発明の小型クローラ式トラクタ(機体1)は、該機体1の上方に位置する上部車体90と、下方に位置するクローラ式走行装置80とからなり、前記上部車体90の前方には図示しないエンジンを覆うボンネット2と、該ボンネット2の後ろに機体1の操縦を行うための運転席4が配設されている。該運転キャビン4の前方には機体1の操行を司るステアリングハンドル9が配設され、後方には座席8が、該座席8の左右には、機体の走行や作業機の上げ下げ等を操作するための主変速レバー(図示せず)、副変速レバー(図示せず)及びPTO操作レバー(図示せず)などが配設されている。また、機体が横転したときに運転者を守るため、4本の安全フレームが前記運転席4全体を覆うように形成されている。また、上部車体90の後方には作業に応じて取り外し可能な作業機6を取り付けることができる。なお、本発明の農業用トラクタは、車両下部にフロントフレーム100が配置される。
【0020】
本発明のクローラ式トラクタは、図1に示すように、クローラフレームの両端に従動アイドラが回転可能に支持され、かつリアアスクルに装着された駆動スプロケットが前記クローラフレームに固設され、前記駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間にクローラが巻装されるクローラ式走行装置を上部車体の下部に備える、いわゆる後輪駆動のクローラ式トラクタである。フローラフレームの両端に従動アイドラが配置されるため、駆動スプロケットが従動アイドラの上部に配置され、駆動スプロケットの高い地上高を確保することができる。
【0021】
前記クローラ式走行装置80は、図2に示すように、進行方向に延設された左右2本のクローラフレーム81L、81Rと、このクローラフレーム81L、81R間を連結する前後2本のサイドフレーム82、83とを有し、前記クローラフレーム81L、81Rの前後端には、それぞれ従動アイドラ85が回転自在に支持され、該2つの従動アイドラ85R、85F間には複数のイコライザ転輪86が回転自在に支持されている。そして、これら2つの従動アイドラ85R、85Fとイコライザ転輪86との上部に駆動スプロケット60が配設され、この駆動スプロケット60を頂点とし、前記2つの従動アイドラ85R、85F間を結ぶ線を底辺として、略三角形状にクローラベルト95が巻回され、クローラ式走行装置80を形成している。本発明では、クローラフレームの両端に従動アイドラを配置するものであるが、図2に示すように、クローラフレーム81Lに接続部材85'を介して従動アイドラ85Rを接続してもよい。また、クローラフレームは直線である場合に限定されず湾曲してもよく、または図2に示すように前方に屈曲を有し、その先端に従動アイドラ85Fを接続するものであってもよい。なお、図中84(R、L)、87(R、L)は、クローラフレーム81と上部車体90とを連結する支持部材である。
【0022】
(2)走行系統
本発明の小型クローラ式トラクタは、ギヤの切換で走行の変速を行うギヤ切換式走行変速機構を備え、かつ機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用のHST旋回用ポンプとHST旋回用モータとを含む油圧変速機構を連結している。例えば図3に示すように、前記エンジン3からの駆動力は、トランスミッションケース23内に配置されたギヤ切換式走行変速機構である主副変速装置39で変速された後、左右のリアアスクルケース40L、40Rに配設された差動機構50L、50Rに入力され、前記クローラ式走行装置80の駆動スプロケット60L、60Rを駆動させる車軸89を回転させる。
【0023】
この際、機体1を前後進させる前後進切換え機構7より後方の駆動系に機体1を旋回させるHST旋回用ポンプ72と、HST旋回用モータ73とが、それぞれ前記ミッションケース23の側方とミッションケース23内の差動機構50Lの上方とに設けられている。
【0024】
(3)動力伝達機構
図4に示すように、前記エンジン3からの出力は、クラッチハウジング5を経由して出力軸31から前後進切換え機構7へと入力される。該前後進切換え機構7では、機体1前進時には、前記出力軸31のギヤ33と主軸37に設けた前進ギア32とが噛合し、一方、機体1の後進時には、前記出力軸31と後進ギア34とが後進用カウンタ軸35のカウンタギア36を介して噛合することにより、機体1の前後進が行なわれる。該前後進切換え機構7を経た動力は主軸37を介して、さらに後方に配置される主副変速装置39へと伝達される。この主軸37と、該主軸37の上方に位置する主変速軸41とは、例えば主変速4段の場合には、異なる歯数を有する4つの主変速ギア42を介して連結される。この主変速ギア42は常に前記主軸のギア37と噛合し、共に回転される。一方、前記主変速ギア42は主変速軸41上に遊嵌され、図示しない主変速レバーによって前記4つの主変速ギア42の何れかを選択的に主変速軸41上に固定することにより、選択された主変速ギア42の歯数に応じて主変速軸41が回転駆動される。
【0025】
この駆動力は、主変速軸41後方に位置し該主変速軸41上に固設された2つのギア62から、副変速ギア46を介して副変速軸45へと伝達される。副変速2段の場合には、該副変速軸45上に異なる歯数を有する2つの副変速ギア46が摺動自在に形成され、図示しない副変速レバーによって、これら2つのギア46が副変速軸45上を前後に摺動し、選択的に前記主変速軸41上の何れかのギア62と噛合することにより、副変速後の動力が得られる。
【0026】
副変速後の動力は、副変速軸45後端に位置するベベルギア47を介して回転方向を前後方向から左右方向へと変え、後述するミッションケース23後方に位置する差動機構50L、50Rへと入力される。次いで、差動機構50L、50R内で動力は、スプロケット60L、60Rを駆動する駆動出力軸59L、59Rに伝達され、その他端に固設されたスプロケット60L、60Rが回転駆動される。
【0027】
(4)差動機構
図5に示すように、前記副変速軸45の駆動力は、該副変速軸45の後端に固設されたベベルギア47と、該ベベルギア47と噛合するピニオン軸22に固設されたベベルギア21とを介して、ピニオン軸22を回転駆動させる。次いで、ピニオン軸22の両端に固設された左右のギア25L、25Rと、左右の入力軸20L、20Rの一端に固設されたギア27L、27Rとが噛合し、前記ピニオン軸22の回転を左右の入力軸20L、20Rに分配させる。さらに、左右それぞれの入力軸20L、20Rの回転は左右の遊星ギア機構50L、50Rのサンギア51L、51Rへと入力される。なお、該遊星ギア機構50L、50Rは、サンギア入力軸20L、20Rに固設されたサンギア51L、51Rと、該サンギア51L、51Rの周りを自公転自在に設けられたプラネタリアギア53L、53Rと、該プラネタリアギア53L、53Rを軸支するとともにサンギア入力軸20L、20Rと車軸59L、59Rとに回転自在に遊嵌されたキャリア55L、55Rとからなり、該キャリア55L、55Rの外周には、さらにキャリアギア56L、56Rが形成されている。前記プラネタリアギア53L、53Rは、左右の駆動出力軸59L、59Rに固設された駆動出力ギア58L、58Rと噛合しており、該駆動出力ギア58L、58Rの回転により、駆動出力軸59L、59Rの他端に固設されたスプロケット60L、60Rが回転駆動される。
【0028】
一方、前記HST旋回用ポンプ72内には可動斜板が配設され、図示しない副変速アームを介してステアリングハンドル9に連係され、該ステアリングハンドル9の操作量に応じて前記HST旋回用ポンプ72からの吐出量が調節される。HST旋回用ポンプ72とHST旋回用モータ73とは、図示しない配管で連結されており、前記HST旋回用ポンプ72からの吐出量に応じてHST旋回用モータ73の出力回転数が制御される。HST旋回用モータ73の出力と前記主副変速装置39からの出力とが、上記差動装置50内で合成され、前記駆動スプロケット60L、60Rが差動回転され、機体1が旋回される。
【0029】
具体的には、ステアリングハンドル9の左右旋回操作時には、該ステアリングハンドル9の操作量に応じて、前記HST旋回用ポンプ72の吐出量が変化され、これに伴い、HST旋回用モータ73のHSTモータ出力ギア38が回転駆動され、その回転に伴い、HSTモータ出力ギア38と噛合する左右2つの逆転ギア52L、52Rがそれぞれ逆回転される。該逆転ギア52L、52Rは、左右の旋回駆動軸43L、43Rのそれぞれ一端に固設されており、該旋回駆動軸43L、43Rを介して、旋回駆動軸43L、43Rの他端に固設された差動ギア44L、44Rが回転駆動され、このため左右の差動ギア44L、44Rが、それぞれ逆回転される。
【0030】
前記差動ギア44L、44Rは、キャリアギア56L、56Rと噛合して、左右のキャリア55L、55Rをそれぞれ逆回転させる。左右のキャリア55L、55Rに軸支されたプラネタリアギア53L、53Rは前記サンギア51L、51R周りを公転駆動するが、この際の公転速度の差により、前記左右の駆動出力軸59L、59Rが差動回転され、機体1が左方向若しくは右方向へと旋回される。
【0031】
機体直進時は、左右の駆動スプロケット60L、60Rの回転が等しい回転数となる場合であり、左右の駆動スプロケット60L、60Rの回転が異なる回転数となるときに機体1が旋回される。
【0032】
(5)油圧変速機構
本発明の小型クローラ式トラクタは、機体1を前後進させる前後進切換え機構7より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用のHST旋回用ポンプ72とHST旋回用モータ73とを含む油圧変速機構を連結している。HST旋回用ポンプ72とHST旋回用モータ73とは、図示しない配管で連結されており、前記HST旋回用ポンプ72からの操行油の吐出量とに応じて、さらにHST旋回用モータ73の出力回転数と回転方向とが制御される。
【0033】
本発明では、前記HST旋回用ポンプ72は可変容量ポンプである。可変容量ポンプを使用することで、運転者のステアリングハンドルの回動操作により、ステアリングハンドルから図示しないリンク機構を介してHST旋回用ポンプの容量を可変することができ、これにより該HST旋回用ポンプの出力を無段階に可変することができる。特に本発明では、機体を前後進させる前後進切換え機構より後方の駆動系に機体を旋回させる操向用の油圧変速機構が連結されるため、後進時にもステアリングハンドルが逆回転することがない。また、可変容量ポンプを使用するため、駆動系の動力に比例したポンプ吐出量を得ることができる。この際、可変容量ポンプに定容量モータを連結すると、主変速と副変速後とを和した動力をHST旋回用ポンプに導入することで、可変容量ポンプの吐出量の調整によって、車速と操向モータの回転とを比例させて旋回半径を一定にさせることができる。
【0034】
一方、本発明では、定容量モータに代えて可変容量モータを使用することを特徴とする。可変容量ポンプの使用による吐出量の変化に加えて、該可変容量モータを使用することで更に吐出量を変化させることができる。このため、可変容量ポンプによる吐出量を変更すると、HST旋回用モータ73のHSTモータ出力ギア38の回転駆動力が変化され、その回転に伴うHSTモータ出力ギア38と噛合する左右2つの逆転ギア52L、52Rの回転が変化され、最終的には、旋回駆動軸43L、43Rの他端に固設された差動ギア44L、44Rの回転駆動力が変化され、車速が同じ場合であっても旋回半径を変化させることができる。可変容量ポンプによって例えば2段階に吐出量を変化させた場合には、同じ走行速度でもハンドル切れ角を例えばスピンモードとソフトモードという2種類の旋回速度に制御することが可能となり、この旋回速度に対応して旋回半径を変えることができる。
【0035】
可変容量モータを使用した場合に、例えば上記したスピンモードやソフトモードに切り替えるには、手動レバーなどの機械的方法やソレノイドなどの電気的方法で行うことができる。これらの方法によれば、座席から離れることなく操作でき、容易に旋回半径を変更することができる。
【0036】
即ち、HST旋回用ポンプの容量に対してHST旋回用モータの容量を小とすることにより、機体の旋回半径を大きくすることができ、前記HST旋回用ポンプの容量に対してHST旋回用モータの容量を大とすることにより、機体の旋回半径を小とすることができる。
【0037】
よって、クローラ式トラクタでのピボットターンなどを行う際、前記旋回モードを変更することにより、作業状況に応じてピボットターン開始ステアリング角を、小さくしたり、大きくしたり設定変更することが可能である。
【0038】
なお、HST旋回用ポンプとHST旋回用モータの配置に限定はないが、HST旋回用ポンプ72はトランスミッション23の側部に、HST旋回用モータはトランスミッション23の上部に配置されることが好ましい。このように配置することで、図4に示すように副変速後の回転動力を、複数のカウンター軸61を経由した後、ベルト65駆動によりHST旋回用ポンプ入力軸63へと入力することができる。なお、HST旋回用ポンプを駆動するための回転動力をカウンタ軸から伝達する方法としては、上記のようにベルトに限定されるものでなく、チェーンやギヤなどであってもよい。このように、カウンタ軸よりベルト等を介して伝達することにより、HST旋回用ポンプの位置を任意の位置に配置することが可能となり、従来ではミッションケース23下部に配置することが多かったHST旋回用ポンプ72を、ミッションケース23の側面に配置することにより、機体1の地上最低高を高くすることができる。
【0039】
また、前記HST旋回用モータ73は、ミッションケース23の上方に配置され、HST旋回用モータ73を修理する場合にも、ミッションケース23内に貯留されるオイルがHST旋回用モータ73から流出することなく、HST旋回用モータのメンテナンスや交換など取り外しが容易になり、作業効率が向上する。更に、HST旋回用モータ73がミッションケース23の上部、特に差動機構50の上部に配置した場合には、HST旋回用モータ73から漏下するオイルを直接差動機構に流下させることができる。
【0040】
(6)上部車体とクローラ式走行装置
本発明のクローラ式トラクタにおいて、クローラ式走行装置の前記クローラフレームは、上部車体と少なくとも2つの支持部材によって固設されることが好ましい。このように少ない部材で固設されると、上部車体に簡便に左右クローラ式走行装置を取り付けることができ分離も容易であり、また、上部車体にオプションで追加した装置などによる重量バランスの変化に応じて、容易に前後に移動させることができる。
【0041】
上部車体と左右クローラ式走行装置との固定箇所は、上部車体との重量バランスによって決定されるため、上部車体が小型の場合には、左右一対のクローラフレーム(81L,81R)の上に支持部材(87R、87L、84R、84L)を介して上部車体(90)を載置および固定するだけで、上部車体を取り付けることができる。しかし、一のクローラフレームに対して一箇所のみで固定したのでは当該箇所のみにクローラフレームの全重量がかかり、後バランスとなるため湿田走行時や後部への作業機装着時にクローラ前部が浮くなどの問題が発生しうる。そこで少なくとも2つの支持部材によって固定する。この際、本発明では、前記した上部車体とクローラフレームとの固定箇所に加え、前記クローラ式走行装置の先端部より車両の後方で支持部材によって前記上部車体と固定させる。従来は、例えば特開2002−2523号公報に記載されるように、クローラ式走行装置よりも車体前部に延出する支持部材によって上部車体と固定していたが、本発明では後記するように駆動系の配置などを工夫して重量バランスを調整することで、前記クローラ式走行装置の先端部より後方で支持部材によって前記上部車体と固定できる。しかも、重心バランスに優れるため、クローラが短くても安定して走行することができる。
【0042】
本発明では、左右のクローラフレームは、それぞれ少なくとも2つの支持部材によって上部車体90に固設され、固設箇所はクローラ式走行装置80の先端部よりいずれも車両の後方である。例えば、図6に示すように、クローラフレーム81Lの前方および後方から上方へ向けて支持部材87R、87L、84R、84Lが配設され、これがそれぞれ上部車体90に固設される。上部車体90の固設箇所に限定はないが、たとえば支持部材87R、87L7は、上部車体90のクラッチハウジングの側面に固定することができ、支持部材84R、84Lは、リアアスクルケース40L、40Rに固定することができる。上部車体の固定箇所は特に限定されるものではないが、本発明では、前記支持部材87R、87L、84R、84Lと上部車体90との固設箇所が、クローラ式走行装置80の先端部より車両の後方側であるため、単に支持部材を介するのみでクローラ式走行装置80の上部に配置されるクラッチハウジングなどの構造物に固設することができ、上部車体下部に特別の固設箇所を設ける必要がない。このため、車両の総重量を低減することができる。
【0043】
加えて、本発明では、図9に示すように、上部車体の全長(L1)に対するクローラ走行装置の接地長さ(L2)、すなわちL2/L1は0.5以上である。本発明では、上記範囲にクローラ走行装置の接地長さを短くできるため旋回操作が容易になる。また、車体前方下部に空間が確保され圃場突出物の巻き込みを防止することができるため、圃場面の状態によらず旋回時が向上し、狭い圃場の角部でも安定した旋回作業が確保される。加えて、クローラ走行装置の接地長さが短いために総重量を低減できる。上記したように車両の総重量が低減されるため、このようにクローラ走行装置の接地長さが短くても接地圧を低く抑えることができ、旋回性も向上させることができる。なお、上部車体の全長(L1)には、前部または後部に取り付ける作業機の長さを含めない。
【0044】
本発明のクローラ式トラクタにおいて、上部車体へのクローラフレームの固定は、図6に示すように、支持部材(87R、87L)をボルトによって上部車体に固定し、および支持部材(84R、84L)をリアアスクルケース40L、40Rにボルトによって固定することが好ましい。ボルトであれば、新たな取付け具を使用することなく、簡便に取り付けることができる。
【0045】
(7)その他
減速は、前記ピニオン軸22の片端に設けられた複数のブレーキ板29を介して行われる。運転者の操作により図示しないブレーキペダルが操作されると、ブレーキアーム28が連動して回動し、該ブレーキアーム28の回動に伴いピニオン軸22にブレーキ作用を発生させ、機体1を減速させる。特に、前記ブレーキ板29は、前記ピニオン軸22の右端に位置しており、前記ブレーキ板や、ブレーキアームなどを収容する図示しないブレーキケースを、前記右側の遊星ギア機構を収容する右リアアスクルケース40Rと一体とすることができる。なお、前記HST旋回用モータ73が、左リアアスクルケース上に位置していると、前記右リアアスクルケース40Rに配置されたブレーキ機構と、前記左リアアスクルケース40Lに配置されたHST旋回用モータ73との重量が調和し、機体1の重量バランスを保つことができる。
【0046】
作業機の駆動は、PTO出力軸を介して行われる。図4に示すように、前記エンジン3の出力の一部が、前記前後進切換え機構7から、PTO変速ギア48を介してPTOカウンタ軸49に連結され、機体後方のPTO出力軸91に伝えられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の小型クローラ式トラクタの一例としての小型クローラ式トラクタを示す側面図である。
【図2】本発明の小型クローラ式トラクタにおける走行部の斜視図を示す斜視図である。
【図3】本発明の小型クローラ式トラクタの断面平面図である。
【図4】本発明の小型クローラ式トラクタにおける駆動部の断面側面図である。
【図5】本発明の小型クローラ式トラクタの差動構造を示す図である。
【図6】本発明の小型クローラ式トラクタのクローラ走行装置のフレーム構造の斜視図である。
【図7】従来のホイール型トラクタを示す斜視図である。
【図8】上部車体の全長(L1)に対するクローラ走行装置の接地長さ(L2)の比を説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
1 クローラ式トラクタ(車両)、2 ボンネット、3 エンジン、4 キャビン、5 クラッチハウジング、6 作業機、7 前後進切換え機構、8 運転席、9 ステアリングハンドル、20L、20R 入力軸、21 ベベルギア、22 ピニオン軸、23 ミッションケース、31 出力軸、37 主軸、38 HSTモータ出力ギア、39 主副変速装置、40L、40R リアアスクルケース、41 主変速軸、42 主変速ギア、45 副変速軸、49 PTOカウンタ軸、50L、50R 差動機構、58L、58R 駆動出力ギア、59L、59R 車軸(車軸)、60L、60R 駆動スプロケット(スプロケット)、61 カウンタ軸、63 旋回用HSTポンプ入力軸、72 旋回用HSTポンプ、73 旋回用HSTモータ、80 クローラ式走行装置、81L、81R クローラフレーム、84 支持部材、85 従動アイドラ、87 支持部材、91 PTO出力軸、95 クローラベルト、97 ホイール型トラクタ。




 

 


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